仮面ライダーマックス

ブレイクハート・魂の闘い

第3章

 

 

 1度撤退したゴウは、ノゾムたちビーストライダーと、彼らに協力しているユウキたちのことを考えていた。

「アイツ、すばしっこいだけじゃなく、勘も鋭いなんて・・!」

「空中に足を付けてジャンプを繰り返すなんて、聞いてないよ・・!」

 コウスケとカリナがソウマとシゲルの見せた能力に毒づく。

「ビーストライダーの本領はまだまだ隠されている。お前たちもそうなのだろう・・?」

 ゴウが言いかけて、コウスケたちに目を向ける。

「もちろんだ・・オレはまだまだこんなもんじゃない!」

「次はライダーたちを屈服させてやるよ・・!」

 コウスケとカリナがソウマたちへの怒りを噛みしめる。

「それに、他にも手は打ってある。真正面から攻め込むだけが戦いではない。正々堂々だけでは勝利はつかめない・・」

 ゴウが呟いて、椅子に腰を下ろす。

「思い知らせてやるぞ・・自己満足のためにオレを切り捨てた愚かさを・・・」

 世界への憎悪を強めて、ゴウは目つきを鋭くしていた。

 

 カズトとリクの家の近くにいたツバキ、タイチ、ワタル、ワオン。そこへノゾムたちが戻ってきた。

「2人の様子は・・?」

「無事に家に戻ったみたい・・さっきのライダーたちは2人を狙ったわけじゃなさそうだ。」

 ノゾムが声をかけて、タイチが答えて苦笑いを見せた。

「これがリクとカズトの家か。立派なところに住んでるんだな・・」

 ソウマがカズトたちの家を見て、感心の声を上げる。

「ヤツらの狙いがオレたちで間違いなさそうだな・・」

「もう充分だろ・・オレは戻るからな・・」

 シゲルが頷いて、ノゾムが動物公園へ戻っていく。

「僕たちもそうしよう。これ以上こんなことするのはよくないからね・・」

 タイチも頷いて、ツバキたちとともにカズトたちの家から離れた。2人が無事であると確信して。

 

 街外れに点在している小さな施設。その建物の1つに侵入する1つの影があった。

 夜の施設の中を影が進んでいく。影は建物の中の部屋の1つに入った。

 部屋の中の戸棚の1つから、影は1枚のカードを取り出した。

「これだ・・このカードを持っていけば・・・」

 影がカードを見つめて笑みをこぼす。影はすぐに部屋を、建物を出て施設を後にした。

 

 夜明けを迎えようとした時間帯。目を覚ましたゴウの前に、1人の男がやってきた。

「言われた通り、このカードを持ってきたぞ・・・」

 男がカードを取り出して、ゴウに差し出した。男は夜に施設に侵入した人物で、カードはアニマルカードだった。

「よし。これでアックスの力がさらに高まることになる・・」

 ゴウはカードを受け取って笑みを浮かべる。

「よくやった・・次の戦いで早速使わせてもらうぞ・・」

「ありがとう・・それで、私たちは助けてもらえるのか・・・!?

 言いかけるゴウに、男が礼を言ってから問いかける。

「それはこれから次第と言っていく。予想が当たれば作戦は成功し、オレたちもお前たちも真の自由を手にできる。」

 ゴウの言葉を聞いて、男が安心の笑みをこぼした。

「これで世界への復讐の達成にさらに近づくことができる・・」

 ゴウが歩き出して、待機していたコウスケ、カリナのそばに来た。

「休憩は十分だぞ、ゴウ・・」

「次はライダーとその協力者だけではない。世界全てが相手だ。」

 コウスケが強気な笑みを浮かべて、ゴウが言いかける。

「あたしもいつでも出れるよ。暴れたくてウズウズしてるんだから・・」

 カリナも笑みをこぼして、両手を握りしめていた。

「ついてこい、2人とも。お前たちもだ。」

 ゴウはコウスケとカリナだけでなく、周囲で待機していた黒服の男たちにも呼びかけた。チェーンの世界への復讐は、表立ったものになろうとしていた。

 

 通勤、通学で人々が行き交う駅前。その前の広場に続く大通りに、ゴウたちが現れた。

 周りの人とは違う風貌と雰囲気のゴウたちに、人々はたまらず足を止めた。

「何だ、あの人たちは?」

「何かのイベントか?」

 人々がゴウたちを見て疑問符を浮かべる。ゴウが首振りで合図を送ると、黒服の男たちが人々に向かってきた。

 男たちが人々に打撃を与えて倒していく。すると周りにいた人たちが緊張を覚えて逃げ出す。

「いけない!早く逃げないと!」

 人々が慌ててゴウたちから逃げていく。しかし数人が黒服の男たちに追いつかれて、殴られて倒される。

「何なんだ・・何なんだ、アンタたちは!?

 街の人がゴウたちの行動に、恐怖と不満を叫ぶ。

「お前たちにはオレの言う通りにしてもらう。いわゆる人質というものだ・・」

 ゴウがその男性に告げると、彼の胸ぐらをつかんで笑みを浮かべた。

 

 ゴウたちのことを気にしていたツバキたち。ノゾムもゴウたちに対していら立ちを感じていた。

「あのライダーのベルトも、お父さんたちが作ったものなのかな・・・?」

 ツバキがテツロウのことを気にして、ノゾムに話を切り出した。

「それをオレが分かるわけないだろうが・・そうだとしても、悪いことのために作ったんじゃない・・そうじゃないのか・・?」

「それは・・・」

 ノゾムの答えを聞いて、ツバキが戸惑いを覚える。

「どっちにしても、あのベルトを使っているのはアイツだ・・アイツがふざけたマネをしているから、オレは許せないんだよ・・・!」

「ノゾムは、私のお父さんのことは・・・」

「ツバキの父親には会ったことないから分かんないけど・・不満は全然ない・・それどころか、戦う力をくれたって意味で、オレは感謝している・・・」

「ノゾム・・・」

 ノゾムの正直な気持ちを聞いて、ツバキが安らぎを感じて笑みを浮かべた。

「オレはこれからも戦う・・身勝手を押し付けて平気な顔をする敵と・・・!」

「そして無事に戻ってきて・・それが私の願いで、きっとみんなもそう思っているから・・」

 揺るぎない意思を告げるノゾムに、ツバキが願いを投げかける。

「もちろんそのつもりだ・・オレは死んだりしない・・生きて戻ってくる・・・!」

「それもノゾムはそう言うと思っていた。そうじゃなきゃノゾムじゃないもんね。」

 ノゾムの答えを聞いて、ツバキが笑顔を見せた。

「ノゾム、ツバキちゃん、大変だよー!」

 そこへタイチが駆け込んできて、ノゾムたちに呼びかけてきた。

「どうしたんだ、タイチ・・?」

「昨日襲ってきた人たちが、TVに映っているんだ!」

 ノゾムが問いかけて、タイチが慌ただしく答える。

「ど、どういうことなの!?

 ツバキが驚きの声を上げてノゾム、タイチとともに別荘へ走り出した。

 

 別荘ではソウマ、シゲル、タイチ、ユウキ、セイラ、タツヤがTVのニュースを見て緊張を感じていた。そこへノゾム、ツバキ、タイチも駆けつけた。

 TVではゴウの世界に向けての呼びかけが始まっていた。

“オレたちはチェーンと名乗っておく。オレたちはこの世界の裏側で弄ばれてきた。命を命と思わない愚か者たちによって、オレたちは人の姿を持ちながら、人とは違う存在と化してしまった・・”

 ゴウが自分たちのことを語っていく。彼らのそばには街の人が数人、黒服の男たちに囲まれていた。

“オレたちの人生を狂わせた愚かなこの世界に復讐する。これはほんの手始めにすぎんのだ。”

 ゴウは話を続けて、人々に目を向ける。

“まずは日本政府の者に会わせろ。総理が最も都合がいいが、他の政党の党員でも構わん。聞かなかったり妙なマネをしたりすれば、コイツらを見殺しにすることと同じだと思え。”

 ゴウがTVを通じて日本政府に要求を突き付けてきた。黒服の男の1人が、人質の1人をつかみ上げた。

“1時間以内に返事がないときも同様だ・・まずは顔と顔を見せ合わなければ、話にもならないということだ・・”

 ゴウがそう告げると、彼らを移した中継が途切れた。

「アイツら、表立ってとんでもないマネをしてくれたな・・!」

 ソウマがゴウたちの行動に怒りを覚える。

「これじゃみんなが、日本が大ピンチだよ〜!」

 ワタルが頭を抱えて不安を浮かべる。

「このままアイツらの好き勝手で、オレたちの暮らしをムチャクチャにされてたまるか・・!」

 ノゾムが目つきを鋭くして、別荘から出ようとした。

「ノゾムお兄ちゃん、行くの・・・!?

「あぁ・・今度は逃がさない・・アイツらを必ずブッ倒してやる・・・!」

 ワタルが声をかけて、ノゾムが答える。彼はゴウたちへの怒りをたぎらせていた。

「オレも行くぞ・・オレもアイツらは許せないからな・・!」

「オレも一緒にやらせてもらうさ。じっとしてられないな・・」

 ソウマとシゲルもノゾムとともに飛び出そうとしていた。

「これ以上勝手なマネをされないうちに、急いで向かおうぜ。」

「言われなくてもそのつもりだ・・・!」

 ソウマが声をかけると、ノゾムが先に別荘を飛び出した。

「いつものように突っ走るな、アイツは・・ま、今回はこっちもせっかちになるけどな・・!」

「ツバキたちはここにいてくれ。危ないから来るんじゃないぞ・・!」

 シゲルが気さくに言って、ソウマがツバキたちに呼びかける。

「危なくなったら深追いしないで、すぐに戻ってきて・・」

「もちろんだ。ノゾムだけじゃなくて、オレたちもな。」

 ツバキの言葉にソウマが答える。彼とシゲルもノゾムに続いて飛び出した。

「オレも行くよ、ツバキさん・・!」

「私も・・」

「私もみんなと一緒に行くよ。」

 ユウキ、セイラ、タツヤもゴウたちのところへ向かった。

「セイラさん・・みんな・・・」

 タイチが心配をしながら、落ち着きを取り戻そうとしていた。

 

 ゴウたちは人質を連れて、国会議事堂を目指して移動していた。警察も彼らを監視していたが、人質がいるため武力行使に出られないでいた。

 そのとき、ゴウたちの近くについていた警官が、突然苦痛を覚えて倒れた。他の警官たちも何が起こったのか分からないまま、倒れて意識を失った。

「オレたちに妙なマネをするなって言ってるのに・・」

 倒れた警官たちのそばに、カメレオンビースターとなっているコウスケが現れた。彼は姿を消して、警官を襲っていた。

「さて、他にも獲物がゴロゴロしてるからな・・まだまだこれからだぁ・・」

 コウスケは期待をふくらませて、再び姿を消した。

 

 ゴウたちが国会議事堂に近づこうとしていたところへ、1台の黒い車が止まった。車から黒ずくめの男たちとともに、1人の初老の男が出てきた。

「私があなたたちとの交渉役を務めることになった如月(きさらぎ)です。よろしく。」

 男、如月がゴウたちに挨拶する。

「お前を代表と見なして要求する。まずはこの国の統率はオレたちが行うこととする。この世界の愚かさを正すために、オレが動向を見定める。

 ゴウが如月に要求を投げかける。

「君たちはこの国を、世界をどうするつもりだ?国民に対して何をしようというのだ?」

「言ったはずだ。オレは世界の愚かさを正すと。政府の人間だろうと民間人だろうと、愚かさの根源となりうる者は処罰の対象とする。」

 如月が投げかけた問いかけに、ゴウは答えて自分の意思を貫く。

「それは受け入れられない。国民を危険にさらすようなことを受け入れるわけにはいかない。」

 しかし如月はゴウの言葉を聞き入れない。するとゴウがため息をついてきた。

「分かっていないようだな・・オレは交渉をしているのではない。要求をしているのだ。」

 ゴウが目つきを鋭くして、如月が緊張を覚える。

「お前たちや他の者の許可を得る必要はない。お前たちが行動を起こさないから、オレたちが手を下さなければならなくなったのだ。」

「そのような一方的な考えで、国民が脅かされるようなことになってはならない!」

 冷たく告げるゴウに、如月が語気を強めて言い返す。彼は国民を巻き込む要求を拒絶していた。

「ならばお前だけでなく、そこにいる者たちの命も保証できないことになる・・」

 ゴウが告げると、黒服の男たちが銃を構えて、如月や人々に銃口を向けた。

「卑怯な・・そのようなやり方を認めるわけにはいかない!」

 如月が抗議を言い放った直後、男たちが銃を発砲した。弾丸は如月の足元に命中していた。

「許しを請うつもりなど毛頭ない。言うことが聞けなければ今度は当てるぞ・・・!」

 ゴウが鋭く言って、如月が緊張をふくらませて後ずさりする。周りにいた黒ずくめの男たちも拳銃を手にして、黒服の男たちに向かって発砲する。

 しかし弾丸はゴウたちに当たる前にはじかれた。

「な、何っ!?

 黒ずくめの男たちが突然のことに驚く。

(オレが来たからには、もうお前らはおしまいだぜ・・!)

 ゴウたちと如月たちのいる場所には、姿を消しているコウスケがいた。

「怯むな!撃て、撃て!」

「如月さん、すぐに避難を・・!」

 黒ずくめの男たちが発砲を続けながら、如月を車に乗せて避難させようとする。

「往生際の悪いヤツらが・・・!」

“アックス!”

 ゴウはいら立ちを噛みしめて、アックスカードをビースドライバーにセットした。

「変身・・・!」

“チャージ・アーックス!アクセ・エグゼ・ゼクスフォース!ゴッドライダー・アーックス!”

 彼はアックスに変身して、如月たちに向かって走り出す。

「何だ、あれは!?パワードスーツか!?

 如月がアックスの姿を見て驚きを隠せなくなる。

(これじゃオレがいなくても片付いたか・・だけどオレは退屈がイヤなんでな!)

 ゴウの行動を予測しながらも、コウスケは如月たちへの攻撃を続けて楽しむ。如月を乗せた車が走り出すと、ゴウがジャンプしてすぐに車の前に回り込んだ。

「うわっ!」

 ゴウに片手で車を止められて、如月と運転手がうめく。ゴウに押されて車が後ろにスリップして止まった。

 ゴウとボディガードが車から出て逃げ出そうとする。しかしゴウにすぐに回り込まれた。

「ムダだ。お前たちも他のヤツらも、オレから逃げることはできない・・」

 ゴウはそう言うと、ボディガードの1人の首をつかんで持ち上げた。逃げようとしても逃げ切れないと思ってしまい、如月はついに動けなくなってしまった。

 

 ゴウたちを追って急ぐノゾムたち。ユウキ、セイラ、タツヤはゴウたちの行方を感覚で追っていた。

「やっぱりアンタたちも現れたね!」

 そこへカリナが現れて、ノゾムたちに強気な笑みを見せてきた。

「この前のワシ女か。続きをやろうっていうのか・・!?

「誰がワシ女よ!?ふざけた名前で呼ぶんじゃないよ!」

 シゲルが投げかけた言葉に、カリナが不満をあらわにする。

「ここは私に任せて・・ノゾムさんたちは先に行って・・・!」

 セイラはノゾムたちに呼びかけて、キャットビースターになる。

「オレも一緒に戦うよ、セイラ・・!」

 ユウキもドラゴンビースターになって、セイラと並び立つ。

「そういえばビースターの味方がいるって聞いてたね・・でも、あたしに勝てると思ったら大間違いだよ!」

 カリナがあざ笑って、翼をはばたかせて飛翔した。

「ノゾムくんたちは先に行ってくれ。私たちがあのビースターを食い止める。」

「アンタたち・・・分かった・・!」

 タツヤの呼びかけに答えて、ノゾムが走り出した。

「このまま行かせはしないよ!」

 カリナがノゾム、ソウマ、シゲルを追いかけるが、セイラが飛び込んできて行く手を阻まれた。

「それはこっちのセリフよ!」

「くっ!ネコがあたしの高さに届くなんて・・!」

 言い放つセイラにカリナが毒づく。セイラがカリナに組み付いて地上に落とした。

「地上に落とせば勝ちだって思ってるわけ?全然甘いね!」

 カリナが笑みを浮かべて、翼をはばたかせて突風を放った。

「うあっ!」

 セイラが吹き飛ばされて、カリナから引き離される。

「セイラさん!」

 タツヤが叫んで、スネイクビースターとなってカリナに飛びかかる。カリナは飛び上がって、タツヤの突撃をかわす。

「たとえどれだけ数をそろえても、空を飛んでるあたしのほうが有利なんだよ!」

 カリナがユウキたちを見下ろしてあざ笑う。

「だったらお前に届くようにすればいい・・!」

 ユウキが全身に力を入れて、肉体を変化させた。その姿は以前よりも刺々しいものとなっていた。

 ユウキは足に力を入れて、大きくジャンプした。彼は一気にカリナの頭上まで飛び上がった。

「なっ!?

 驚きを覚えるカリナに向かって、ユウキが拳を振りかざす。殴られたカリナが地上に叩き落とされる。

「アイツ・・ジャンプが高いだけじゃない・・スピードもパワーもある・・・!」

 大きなダメージを受けて、カリナがうめく。ゆっくりと立ち上がる彼女の前に、ユウキが着地した。

「お前たちは何を企んでいる?・・世界をどうしようというんだ!?

 ユウキがカリナに向かって問い詰める。するとカリナが笑みを浮かべてきた。

「ゴウは世界への復讐を考えてる・・あたしはその戦いは面白そうかなって思ってね・・・!」

「そのために、関係のない人が巻き込まれてもいいっていうのか・・!?

 期待を込めて笑うカリナに、ユウキが怒りを覚える。

「関係ないっていうのはないんじゃないの?・・みんな、あたしらが苦しんでるのに、みんな知らずに他人事と思って気にもしなかったんだからね・・!」

「そんなこと・・誰もが確実に知る方法なんてありはしない・・まして誰かにその情報が抑えられていたら、知ろうとしても知ることができないのがほとんどだ・・!」

 さらにあざ笑うカリナに、タツヤが反論する。

「それで許してもらうなんて都合のいいこと言ってんじゃないよ!」

 カリナが笑みを消して、いら立ちをあらわにする。

「知らなかった、自分には関係ない・・そんなことで、お前らの犯している罪が許されると思うな!」

「それでみんなを巻き込んで傷つけても構わないというの・・!?

 怒鳴りかかるカリナに、セイラも怒りを覚える。

「そんな自分勝手で人を苦しめて平気な顔をすることを、オレたちは認めない!」

 ユウキが怒りの声を上げて、カリナに詰め寄る。

「アンタたちに認めてもらおうなんて、全然思ってないっつーの!」

 不満を言い放つカリナが、また翼をはばたかせた。地面から砂煙が舞い上がって、ユウキたちが腕を掲げて目を守る。

(このまま・・このまま逃がすわけにはいかない・・・!)

 ユウキは腕を振りかざして砂煙を払う。しかしカリナはそれまでの間に空に上がって逃げていた。

「早く追いかけないと・・誰かが襲われたら大変だ・・!」

 ユウキがカリナを追いかけようとした。そのとき、ユウキたちの前に数人のビースターが現れた。

「他のビースター!」

「あのライダーの仲間か・・!」

 セイラとタツヤがネズミの姿をしたマウスビースターたちを見て、身構える。

「ゴウさんたちの邪魔はさせねぇ!」

 マウスビースターたちがユウキに向かって飛びかかる。

「邪魔なのはお前たちのほうだ!」

 ユウキが叫んでセイラ、タツヤとともにマウスビースターたちを迎え撃った。

 

 ボディガードたちを倒して、ゴウが如月の胸ぐらをつかんで持ち上げる。

「は、放せ・・君たちは、このまま日本と全面戦争を仕掛けようというのか・・!?

 如月が声を振り絞って、ゴウに問い詰める。

「これは復讐だ・・お前たちにある選択肢は2つ。オレたちの言うことを聞くか、刃向かって死ぬかだ・・・!」

「そんなものはただの独裁だ・・認められるわけ・・・!」

 鋭く言いかけるゴウに、如月が言い返す。

「うあっ!」

 ゴウに投げ飛ばされて地面に強く叩きつけられて、如月が倒れて動かなくなった。

「己の身の程をわきまえず、どこまでも愚かさを繰り返す・・愚か者は、もはや救いようがない・・・!」

 敵を粛清して復讐を達成する以外に道がないと、ゴウは確信していた。

「・・・どうやらヤツらもかぎつけて来たようだ。」

 ゴウが呟いて振り返る。彼の前に、駆けつけたノゾム、ソウマ、シゲルが現れた。

「堂々と宣戦布告してくるとは、大胆不敵だな、お前・・」

「お前たちの好き勝手にはさせないぞ、チェーン!」

 シゲルが肩を落として、ソウマが怒りの声を上げる。

「お前たちのせいで、オレたちの暮らしをムチャクチャにされてたまるか・・!」

 ノゾムが怒りを口にして、マックスカードを取り出した。

“マックス!”

 彼はビースドライバーにマックスカードをセットして、左上のボタンを押した。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 ノゾムはマックスに変身して、ゴウに向かっていく。ノゾムが繰り出すパンチを、ゴウは軽々とかわしていく。

「お前たちがのうのうとしている間に、オレの暮らしは踏みにじられてきたのだ・・!」

 ゴウは鋭く言うと、1枚のアニマルカードを取り出した。

「あれはアニマルカード!」

「描かれているのは、クマ・・クマのカードか・・!」

 ソウマとシゲルがアニマルカード「ベアカード」を目にして声を上げる。

“ベア!”

 ゴウがビースドライバーにセットしているアックスカードを、ベアカードと入れ替える。

“チャージ・ベアー!ターボナックル・ターボタックル・バーストベアースターボ!”

 ビースドライバーから音声が発する。しかしアックスに変化は見られない。

「アイツが何も変わんないってことは・・・!」

 ソウマが言いかけて、周りに注意を向けた。

 次の瞬間、巨大な車が駆けつけて、ゴウとノゾムたちの間に割って入ってきた。頭部がクマのようになっている車だった。

「アイツの乗り物がやってきたか!」

 シゲルが車「ベアースターボ」を見て驚く。ゴウがベアースターボに乗って、ノゾムたちを見下ろす。

「いくら同じビーストライダーでも、コイツの相手は骨が折れるだろう。」

 ゴウが言いかけると、ベアースターボが走り出してノゾムたちに向かってくる。

「くっ!」

「うわっ!」

 ノゾムが横に飛んで、ソウマが慌ててベアースターボをかわす。

「ちくしょう・・こうなったら・・!」

“イグアナ。”

 シゲルが毒づいて、イグアナカードをビースブレスにセットして、リードライバーにかざした。

“スタートアップ・イグアナ。”

 彼は呼び出したイグアカードに乗って、ベアースターボを迎え撃つ。2台の車が激しくぶつかって、押し合いと力比べを演じる。

「同じ大型マシンでも、パワーの差というものはある・・」

 ゴウが呟いて、ベアースターボのハンドルのそばのスイッチを切り替える。ベアースターボの両側が動いて、両手が出てきた。

「何っ!?

 ベアースターボにイグアカートをつかまれて、シゲルが驚く。ベアースターボがイグアカートを持ち上げて、放り投げて地面に叩きつけた。

「シゲル!」

「イタタタ・・とんでもないクマだぞ・・!」

 ソウマが叫んで、シゲルが立ち上がって毒づく。イグアカートも自らの意思で体勢を整える。

「これじゃオレたちのバイクでもムチャか・・!」

「だったらオレ自身の力を上げればいいだけだ・・!」

 ソウマが焦りを感じて、ノゾムがアニマルカード「マキシマムカード」を取り出した。

“マキシマム!”

 ノゾムがビースドライバーにマキシマムカードをセットした。

“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”

 マックスのスーツとマスクが刺々しいものに変わる。ノゾムはマックスの強化形態「マキシマムフォルム」となった。

「姿を変えたところで、このクマを止められはしないぞ・・・!」

 ゴウが言い放って、ベアースターボがノゾムに向かっていく。ノゾムは大きくジャンプして、ベアールターボの突進をかわしてゴウの眼前まで近づいた。

 ゴウがとっさにノゾムにパンチを繰り出す。ノゾムが上半身を動かして、ゴウの攻撃をかわす。

「すばしっこいヤツだが、このアックスの真の力には及ばん・・・!」

「ぐっ!」

 ゴウがスピードを上げたパンチを繰り出して、ノゾムが打撃を受けてベアースターボから振り落とされた。

「ノゾム!」

 ソウマが飛び出して、滑り込んでノゾムを受け止めた。

「ふぅ・・危ないところだった・・・じゃない!」

 安心したところで、ベアースターボが向かってきたことに気付いて、ソウマが驚く。

「おわっ!」

 ベアースターボが振りかざした腕に叩きつけられて、ソウマがノゾムとともに突き飛ばされる。

「気を抜くのはまだ早いぞ。だがまとめてすぐに始末してやるぞ。」

 ゴウがノゾムたちを見下ろして言いかける。

「オレはお前たちには倒されない・・オレがお前たちをブッ倒す!」

 ノゾムがゴウを見上げて怒りの声を上げる。

“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ビースドライバーの左上のボタンを2回押して、両足にエネルギーを集めるノゾム。彼が大きくジャンプして、ゴウに向かってキックを繰り出す。

「クマの力、思い知ることだな・・・!」

“ベアチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ゴウが鋭く言って、ビースドライバーの左上のボタンを押す。ベアースターボの頭にエネルギーが集まる。

 ベアースターボが飛び上がって、突進を仕掛けてノゾムのキックとぶつかり合う。

 ベアースターボがノゾムのキックに突き飛ばされて、横になって倒れた。ノゾムも吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。

「ノゾム!」

「マキシマムのキックでも互角なのか・・!?

 ソウマが叫んで、シゲルが毒づく。マキシマムフォルムでも決定打を与えられず、ノゾムがいら立ちを強めていた。

 

 

 

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