仮面ライダーマックス

ブレイクハート・魂の闘い

第2章

 

 

 シェルビースターが現れた場所に戻ってきたノゾムたち。彼らはカズトの記憶を思い返すことで、兄、リクを見つけようとしていた。

「ここでカズトくんはオレたちと会ったんだね。」

 ユウキが周りを見回しながら、カズトに声をかける。

「カズトくんはどこからここまで来たの・・?」

 セイラがカズトに話を聞く。

「さっきの怪物から慌てて逃げてきたから・・お兄ちゃんともそのときに・・・」

「そうか・・それじゃ、この近くにいる可能性は・・・」

 カズトが答えて、ワタルが困った顔を浮かべる。

「カズトくんの家はどこにあるのかな?もしかしたら家に戻っているかもしれない。」

 タイチがカズトに家のことを聞く。

「うん・・こっちだよ・・」

 カズトが答えて、ノゾムたちが彼についていく。

「カズトくんのお兄ちゃんって、どんな人なの?」

 ワタルがカズトにリクのことを聞いてきた。

「かっこいいお兄ちゃんだよ。スポーツができて勉強もできて、困ったときは親切にしてくれるんだよ。」

「いいなぁ・・僕、一人っ子だから、お兄ちゃんに憧れたりするんだよねぇ・・」

 カズトが話して、ワタルが心を躍らせる。

「あ、でも今はお兄ちゃんやお姉ちゃんがたっくさんいるけどね。エヘヘヘ・・」

 ワタルがノゾムたちを見て、照れ笑いを見せた。

「ワタルくん・・そんなぁ。僕なんてそこまで・・」

 するとタイチが照れ笑いを見せて、ツバキたちも笑みをこぼした。

 その中でノゾムは笑みを見せてはいなかった。彼は本当の家族のあたたかさを感じてこなかったため、他の家族に対して複雑な気分を感じていた。

「早くアニキを見つけ出さないとな・・」

 ノゾムの呟きを聞いて、ツバキが小さく頷いた。

 そのとき、ツバキのスマートフォンに着信が入った。

「あ、ソウマくんからだよ。ソウマくんにも協力してもらえたらいいかな。」

 ツバキが取り出したスマートフォンを確かめてから、電話に出た。

 

 ツバキたちから話を聞こうと考えたソウマは、彼女に連絡を取った。

「ツバキ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・今、弟を捜している子と会って・・」

“弟って・・もしかしてカズトくんのこと!?・・お兄さんの名前は、リクくん・・!”

 ソウマが事情を話すと、ツバキが驚きを込めて答える。

「間違いないです!・・カズトがそこに・・!?

 ソウマに目を向けられて、リクが頷いた。

「ツバキ、今どこにいるんだ!?そっちに行くから!」

“動物公園から少し離れた広場だよ。”

「分かった!すぐに行くから待っててくれ!」

 ツバキとの連絡を終えて、ソウマがシゲル、リクと頷き合う。

「急いでツバキたちのところへ行くぞ。」

「ラッキーだったな。ノゾムたちが弟くんを見つけてくれてたからな。」

 ソウマがリクに呼びかけて、シゲルが気さくな笑みを見せる。

「ありがとうございます、ソウマさん、シゲルさん。」

「困った人を助けないわけにいかないからな。気にしなくていいぜ。」

 お礼を言うリクに、ソウマが笑みを見せて答える。彼らはノゾムたちのいる場所へ向かった。

 

 本格的な行動を始めようとしている一方、チェーンはある行動も並行して行っていた。それはノゾムたちビーストライダーの監視だった。

“ビーストライダー、マックスを監視中。”

“フォックス、オックスも監視中。マックスと合流する模様。”

 ゴウの元にチェーンの監視からの報告が届く。

「このままライダーたちの監視を続けろ。オレがヤツらの相手をする。」

“了解。”

 ゴウが呼びかけて、監視たちが答えて通信を終える。

「ゴウが直接出張る必要ないわよ。あたしに行かせてよ。」

「カリナだけにいい思いはさせられないって・・オレも行くぞ・・!」

 カリナとコウスケがゴウに出撃を名乗り出た。

「ならば2人ともついてこい。ただしムダな騒動はするな。」

 ゴウが許可を出して、カリナとコウスケが笑みを浮かべた。

 

 ノゾムたちはソウマたちが来るのを待つことになった。カズトはリクに会いたくてそわそわしていた。

「ソウマとシゲルもいるんだ。待っていれば必ず会える・・」

「ノゾムお兄ちゃんの言う通りだよ。お兄ちゃんも2人も強いんだから。」

 ノゾムがカズトに言いかけて、ワタルが続けて呼びかける。

「分かってるよ・・でもどうしてもドキドキしてきちゃって・・」

 カズトが戸惑いを見せながら返事をする。彼の様子を見て、タイチたちも笑みをこぼしていた。

「いいよね、兄弟、家族・・私のお父さんは、どうしているのかな・・・?」

 ツバキがテツロウのことを考えて、辛い表情を浮かべた。ノゾムがツバキのことを気にして、肩を落とす素振りを見せる。

「みんな、待たせたな。」

 そのとき、ソウマがシゲルたちと一緒に駆けつけて、ノゾムたちに声をかけてきた。

「お、お兄ちゃん・・・!」

 カズトがリクを見て動揺を浮かべた。

「お兄ちゃーん!」

「カズト!」

 カズトが駆け寄ってきて、リクが支えた。

「カズト・・よかった・・また会えてよかった・・!」

「お兄ちゃん・・お兄ちゃーん・・!」

 リクが安心の笑みを浮かべて、カズトが彼に泣きじゃくる。

「よかったね、カズトくん・・お兄ちゃんに会えて・・・!」

 タイチが2人の再会を見て涙を浮かべる。

「タイチさんも泣くことないですよ・・」

「ゴ、ゴメン、セイラさん・・もらい泣きしちゃって・・・!」

 セイラが微笑みかけて、タイチが照れ笑いを見せた。

「みなさん、弟がお世話になりました!ありがとうございました!」

「2人が無事に会えて、オレたちもよかったと思っているよ。」

 お礼を言うリクに、ユウキが微笑んで答えた。

「さて、乗りかかった船ってわけじゃないけど、リクたちを家まで送ることにするか。」

 シゲルがカズトたちを家まで送ることを提案した。

「え、あの・・僕たちの家、そんなにいいものじゃないですから・・・」

 するとリクが口ごもって、カズトも不安の表情を浮かべた。

「無理やり人の家に乗り込むようなことをするもんじゃないだろう・・オレたちはここまでだ・・」

 ノゾムにも言われて、シゲルが苦笑いを見せて提案を引っ込めた。

「それじゃ気を付けてね、カズトくん、リクくん。僕たちはあの先の動物公園にいるから、いつでも遊びに来ていいからね。」

「うん・・ありがとう、タイチさん、ワタルくん、みんな・・」

 タイチが呼びかけて、カズトが微笑んで感謝した。

「では失礼します。行こう、カズト。」

「うん、お兄ちゃん♪」

 リクとカズトが歩き出して、ノゾムたちと別れた。

「ん〜・・やっぱり心配になってくるな・・さっきもビースターに追われていたし・・」

 ソウマはリクたちへの心配を拭えずにいる。

「オレ、やっぱりついていくぞ・・一緒じゃなくても後を付けていくぐらいなら・・・!」

 ソウマがたまらずリクたちを追って走り出した。

「ソウマ!・・オレも一緒に行くよ・・!」

 シゲルが半ば呆れながら、ソウマを追いかけていった。

「ソウマくん!シゲルさん!」

 ツバキが声を上げるが、ソウマたちは行ってしまった。

「ソウマお兄ちゃんたちだけずるいよ〜・・」

 ワタルが不満を感じてふくれっ面を浮かべる。するとワオンが走り出して、ソウマたちを追いかけた。

「あっ!ワオン、待ってー!」

 ワタルが慌ててワオンを追いかける。

「まったく・・結局みんなでついていくことになるのか・・・」

 ノゾムは肩を落として、ツバキたちもソウマたちを追いかけることになった。

 

 カズトとリクを追いかけていくノゾムたち。ワタルはワオンが吠えないようになだめる。

「それだったら、最初からついていくって言えばよかったのに・・」

「まぁ、成り行きでこうなっちゃったんだけどね・・」

 不満を口にするノゾムに、タイチが苦笑いを見せる。

「静かにしろって・・2人に気付かれてしまうって・・・!」

 ソウマが振り向かずに注意を投げかける。

「そんなところで何をやってるんだぁ?」

「だから静かにしろって言ってるだろうが・・」

 しかしまた声がかかって、ソウマが不満を口にして振り向く。その先にはコウスケがいた。

「あいさつに伺ったわよ、ビーストライダーたち。」

 カリナもノゾムたちの前に現れて、笑みを見せる。

「お前たちは誰だ!?ビースターか!?

「間違いない・・2人ともビースターだ・・!」

 シゲルが問いかけると、ユウキが言いかける。

「オレたちのことに気付くとはさすがだなぁ・・」

 笑みをこぼすコウスケの姿に変化が起こる。彼はカメレオンの怪物、カメレオンビースターとなった。

「カメレオンなのに堂々と姿を見せるその神経、理解できないよ・・」

 カリナがため息をついてから、ワシの怪物、イーグルビースターとなった。

「またビースターが襲ってくるなんて!?

 タイチが声を上げて、ワタルが不安を浮かべる。

「こんなときに・・ブッ倒してやる・・!」

 ノゾムが言い放って、マックスカードを取り出した。

「ノゾムはリクたちのところへ行け!他のビースターが2人を狙っているかもしれない!」

 するとシゲルがノゾムに呼びかけてきた。

「アイツらはオレとシゲルだけで十分だぜ!」

 ソウマも言いかけて、自信を込めた笑みを浮かべた。

“フォックス!”

“オックス。”

 ソウマとシゲルがフォックスカード、オックスカードをビースドライバー、ビースブレスにセットした。

「変身!」

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

“スタートアップ・オックス。”

 2人がフォックス、オックスに変身して、コウスケとカリナに向かっていく。

「ソウマくん!シゲルさん!」

「そこまでいうならここは任せたぞ!」

 ツバキがソウマたちに叫んで、ノゾムがカズトとリクのいるほうへ走り出した。

「ノゾム!」

 タイチが慌ててノゾムを追いかけていく。

「ワタルくん、ワオンちゃん、行こう!」

「うんっ!」

 ツバキとワタル、ワオンもこの場を離れた。

「これで遠慮なく暴れられるな・・!」

「ビースターはオレが倒す!」

 シゲルとソウマが言い放って、コウスケとカリナを迎え撃つ。

 ソウマがスピードを上げてコウスケに詰め寄る。彼の速いパンチとキックが、コウスケに次々に命中していく。

「すばしっこいヤツだ・・だけどな、それでやられるオレじゃないぞ・・!」

 言いかけるコウスケに、ソウマが向かっていく。次の瞬間、コウスケの姿がソウマの視界から消えた。

「何っ!?・・アイツ、どこに行った・・!?

 ソウマが周りを見回して、コウスケの行方を探る。

「うっ!」

 次の瞬間、ソウマが突然横から押されたような衝撃を覚えてふらつく。

「何だ!?

 周りに誰もいないのに押されたことに、ソウマは疑問を覚える。

「ぐっ!」

 再び突然、フォックスのスーツから火花が散って、ソウマがふらつく。

「これは攻撃・・ということはアイツが・・・!」

 ソウマはコウスケの仕業だと気付く。しかしコウスケの姿がソウマの周りにない。

「となるとこれは・・・!」

 ソウマは1つの結論を見出して、気分を落ち着けて意識を集中する。

「そこだ!」

 ソウマが振り向き様に回し蹴りを繰り出す。

「うおっ!」

 キックが体に当たって、姿を現したコウスケがうめく。彼は自分の姿を消して攻撃を仕掛けていた。

「くっ・・まぐれ当たりだ・・オレの姿は見えないはずだからな・・!」

 コウスケは毒づきながら、再び姿を消した。しかしソウマは冷静だった。

 ソウマが横に動くと、彼のいた場所に風切り音が通った。直後にソウマが足を突き出した。

「ぐふっ!」

 姿を現したコウスケが地面を転がる。ソウマはコウスケの位置や動きを捉えていた。

「まさか、見えてるっていうのか・・!?

「姿は見えてない。ただそれでオレの不意を突けるほどの速さじゃないってことだ。」

 驚きも隠せなくなるコウスケに、ソウマが自信を見せて答える。彼は感覚を研ぎ澄ませて、コウスケの動きによる空気の流れを感じ取っていた。

「そんな芸当で、オレを見つけるなんて、あり得ない・・!」

 コウスケがソウマに追い詰められて後ずさりする。

 一方、カリナと交戦するシゲルだが、翼をはばたかせて上空を飛行するカリナにシゲルは攻撃を当てられないでいた。

「飛ばれちゃさすがに届かないじゃないか・・!」

 シゲルがカリナに対して不満を覚える。

「そういうなら飛んでみたら?そのときはあたしが叩き落としてやるよ!」

 カリナが上空からシゲルをあざ笑う。

「確かにできないな、“フライ”は・・だけど、“ジャンプ”はできるぞ!」

 シゲルは笑みをこぼすと、ウサギのアニマルカード「ラビットカード」を取り出した。

“ラビット。”

 シゲルがビースブレスにセットされているオックスカードを、ラビットカードと入れ替える。

“スタートアップ・ラビット。”

 オックスのスーツが黒から白に変わり、マスクの模様もウサギを思わせる形になった。シゲルは「ラビットフォルム」へと変身した。

「ウサギ?あたしには格好の餌食ってヤツよ!」

 カリナが笑みをこぼして、シゲルに向かって翼をはばたかせる。彼女の翼から羽根の矢が放たれる。

 シゲルは大きくジャンプして羽根の矢をかわす。彼はそのまま大きく飛び上がって、カリナに追いついた。

「なっ!?

 驚きの声を上げたカリナに、シゲルがパンチを繰り出した。パンチを当てられて落下するカリナだが、空中で体勢を整える。

「ここまで跳んでくるなんて・・でもマグレは2度は起きないわよ!」

 カリナがいら立ちを噛みしめて、再び上昇する。

「さっきよりも高く飛んだわよ!これでもう届かないわよ!」

「届かないかどうか、試してやるさ!」

 勝ち誇るカリナに言い返して、シゲルが大きくジャンプする。彼はさらに空中も足場にしてジャンプを繰り返す。

「そ、それはマグレ通り越して反則じゃないの!」

 驚くカリナの眼前にシゲルが迫った。

「これでマグレじゃないってことが分かっただろう!」

 シゲルが言い放って、足を振りかざしてカリナにキックを当てた。

「うあっ!」

 カリナが蹴り飛ばされて、今度は地上に叩き落とされた。

「お前たちはオレたちを甘く見ていたみたいだな。」

「小細工はオレたちには通用しないってことだ!覚悟するんだな!」

 シゲルが気さくに言って、ソウマが言い放つ。2人に対してカリナとコウスケは焦りを感じていた。

 

 カズトとリクを心配して、ノゾムたちは先を急いだ。カズトたちはカリナたちが現れたことに気付いていない。

「何も起こっていないみたいね・・」

「このままソウマたちがアイツらを倒してしまいそうだな・・」

 ツバキとノゾムが後ろに振り向いて、ソウマたちのことを口にする。タイチたちも事態が収束に向かうと思って、安心の笑みをこぼした。

 そのとき、ユウキ、セイラ、タツヤが近づいてくる足音を耳にした。

「誰かがこっちに近づいてきている・・・!」

「ソウマくんたちじゃない・・足音は1つだけだ・・!」

 セイラとタツヤが足音を聞いて、緊張を覚える。やがてノゾムたちの視界に、1つの人影が入ってきた。

「お前がビーストライダー、マックスか。」

 ノゾムたちの前に現れたのはゴウだった。

「お前は誰だ!?・・さっきのヤツらの仲間か・・!?

「オレの名はゴウ。お前たちの力、確かめさせてもらうぞ。」

 問いかけるノゾムに答えて、ゴウが呼びかける。

「オレたちの力!?・・お前、何を企んでいる!?

「オレはこの愚かな世界に復讐する。愚か者たちの愚かさを思い知らせるための・・」

 ノゾムが問い詰めて、ゴウは表情を変えずに答えていく。

「そのための力を、お前たちも持っているかもしれない。力を貸してもらうぞ。」

「ふざけるな・・一方的に従わされるのは、オレは我慢がならないんだよ・・・!」

 協力を求めるゴウに、ノゾムが怒りを覚える。彼は無理やり何かをさせられることに腹を立てている。

「従わないならば邪魔者でしかない。抵抗するなら叩きつぶすことになる。」

 ゴウは低い声で言うと、1枚のカードを取り出した。

「あれは、アニマルカード!?・・しかもそれは・・!?

 ツバキがカードを見て驚きの声を上げる。ゴウの腰にはビースドライバーが装着されていた。

“アックス!”

 ゴウがビースドライバーにアックスカードをセットした。

「変身・・・!」

“チャージ・アーックス!アクセ・エグゼ・ゼクスフォース!ゴッドライダー・アーックス!”

 ゴウの体を黒いスーツとマスクが包み込んだ。彼は漆黒の戦士へと変身した。

「その姿・・あのときのビーストライダー・・!?

 タイチがノゾム、ツバキとともに驚きを見せる。3人はこの戦士の姿を見た覚えがある。

「お前たちがあった“アックス”に変身したのはオレではない。オレたちを裏切って、ベルトとカードを持ち出したヤツだ。」

 ビーストライダー「アックス」に変身したゴウが語りかける。

「だがヤツはアックスの力を使いこなせていなかった。つまり、お前たちが戦ったことのあるアックスとは一味違うということだ。」

「そんなこと関係ない・・お前のように自分のことしか考えないヤツが許せない・・それだけだ・・!」

 話を続けるゴウに、ノゾムが怒りを口にする。

「お前がオレたちをどうかしようとするなら、オレはお前をブッ倒す!」

“マックス!”

 彼は手にしたマックスカードをビースドライバーにセットした。

「変身!」

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムもマックスに変身した。

「お前のマックスとしての力、見せてもらうぞ。」

「オレがお前の言った通りにすると思うな!」

 言いかけるゴウに、ノゾムが言い放つ。ノゾムが飛びかかってパンチを繰り出すが、ゴウに軽々とかわされる。

 ノゾムが続けて攻撃を仕掛けるが、ゴウは全て防御と回避をしていく。

(コイツ、言った通り、この前にヤツよりも強い・・!?

 ゴウ自身の強さを実感して、ノゾムが毒づく。

「ぐっ!」

 ゴウが振り上げた右足のキックを体に叩き込まれて、ノゾムがうめく。

「ノゾム!」

 地面に膝をついたノゾムに、ツバキが叫ぶ。

「この程度で参ったわけではないだろう?もっと力を見せてみろ。マックスの力を・・」

「何度も言わせるな・・オレは、お前の思い通りにはならない・・・!」

 ノゾムが力を振り絞って立ち上がって、またゴウに向かっていく。

「ノゾム、1人じゃムチャだ!」

 そのとき、呼びかけるユウキの姿に変化が起こった。彼は龍を思わせる姿に変わった。

 ユウキ、セイラ、タツヤもビースターである。3人は力を自己満足に使おうとは考えず、理不尽を強いる敵を倒すために使っている。

 ユウキもゴウに飛びかかって、ノゾムとともに攻め立てる。

「お前はビースターだったか。だがたとえビースターであろうと、オレは負けることはない。」

 ユウキのことを気に掛けながらも、ゴウは冷静さを絶やさない。

「お前はどこまでも思い上がりを!」

 ノゾムがさらに怒りを燃やして、ゴウを攻め立てる。ゴウはジャンプして、ノゾムとユウキを飛び越える。

「2人がかりでこの程度か。これでは拍子抜けだ・・」

 ゴウがノゾムたちを見てため息をつく。

「ノゾムくん!」

「ユウキさん!」

 タツヤとセイラもノゾムとユウキを助けようと飛び出す。タツヤがヘビのスネイクビースターに、セイラがネコのキャットビースターとなった。

 セイラたちも加勢して、ノゾムたちがゴウに向かっていく。4対1の状況で、ゴウは劣勢を強いられていく。

「さすがに4人相手では分が悪いか・・」

 ゴウが毒づいて、大きくジャンプして近くのビルの屋上に着地した。

「お前たちが力を合わせれば、革命を起こせるかもしれない。それに、ビーストライダーの力はまだまだこんなものではないだろう。」

 ゴウがノゾムたちを見下ろして言いかける。

「お前は何者だ!?何をしようとしているんだ!?

 ユウキがゴウに向かって問いかける。

「言ったはずだ。オレはこの愚かな世界に復讐する。そのために有力だったのだがな、お前たちは・・」

「ふざけるな!オレはお前の駒じゃない!」

 答えるゴウに、ノゾムが怒号を放つ。

「何が気に入らないが知らないが、お前たちのためにオレたちがムチャクチャにされてたまるか!」

「その考えが切り替わることを期待して、今回は引き上げることにする。考えを改めることだ。」

 ゴウはノゾムたちに告げると、大きくジャンプして去っていった。

「このまま逃がすか!」

 ノゾムが叫んで、トラのアニマルカード「タイガーカード」を取り出した。

“タイガー!”

 彼はビースドライバーにタイガーカードをセットして、左上のボタンを押した。

“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”

 すると1台のバイクがノゾムたちのいるほうへ駆けつけてきた。トラを思わせる姿のバイク「タイガーランナー」である。

 ノゾムはタイガーランナーに乗ると、ゴウを追って走り出した。

「ノゾム!」

「ノゾムだけに追跡させるわけにはいかない・・!」

 ツバキが叫んで、ユウキもノゾムを追いかけていった。

 

 コウスケ、カリナとの戦いを続けるソウマとシゲル。ソウマたちに追い込まれて、コウスケたちは危機感を感じていた。

「このままやられてたまるかよ・・!」

 コウスケがいら立ちを噛みしめて、ソウマたちを睨みつける。

「お前たち、引き上げるぞ。」

 そこへゴウがやってきて、コウスケたちに呼びかけてきた。

「ゴウ・・!」

「仕方ないね・・オックス、フォックス、これで済んだと思わないことね!」

 コウスケが声を上げて、捨て台詞を吐くカリナとともに離れた。

「フォックス、オックス、お前たちの力も捨てがたいもののようだ。その力、オレに貸してくれるとありがたい・・」

 ソウマとシゲルにも告げて、ゴウは去っていった。

「3人とも逃がしてしまった・・・」

「アイツら、何を企んでるんだ!?・・最後に現れたの、間違いなくこの前現れたビーストライダーだった・・!」

 シゲルが毒づいて、ソウマが疑問を感じていく。2人もアックスを見たことがあるが、変身しているのがゴウであることは知らなかった。

「ソウマくん、シゲルくん!」

 そこへタツヤがノゾム、ユウキ、セイラとともに駆けつけた。4人とも変身を解いていた。

“スリービースト。”

“シャットダウン。”

 ソウマとシゲルもノゾムたちに振り返って、変身を解いた。

「今の、この前の黒いライダーだったな・・あのビースター2人の仲間だったとはな・・」

「いや、あのライダー、中身はこの前会ったのとは別のヤツだ・・」

 ソウマが言いかけると、ノゾムがゴウのことを告げる。

「あのゴウという人、世界に復讐すると言っていた。そのために他のライダーや、オレたちの力を貸してほしいと・・」

 ユウキがゴウの話を口にする。

「自分の考えだけで、オレが言うことを聞くと思ったら大間違いだ・・!」

 ゴウの自分中心の言動に、ノゾムはいら立ちを浮かべていた。

「この先、また何か仕掛けてくる可能性は高いわね・・」

「狙いはビーストライダーを始めとした私たちの力・・近くにカズトくんとリクくんがいるから、2人が全く狙われていないとは言い切れない・・・」

 セイラとタツヤがゴウたちの目論みを推測する。

「ところで、リクたちは?・・それと、ツバキたちは・・?」

「ツバキたちはカズトたちの跡をつけてる。向こうは気付いてないみたいだが・・」

 ソウマが問いかけて、ノゾムが答える。

「オレたちもみんなのところへ戻ることにするか。」

 シゲルが呼びかけて、ソウマたちが頷く。ノゾムは気分を落ち着かせながら、ソウマたちとともにツバキたちのところに戻っていった。

 

 近くで騒ぎがあったのではないかということに、カズトもリクも気付いていた。不安を覚えた2人は、急ぎ足で家に戻っていた。

 リクたちの家は小さな一軒家。2人の母親は現在は亡くなっていて、父親も単身赴任で家を離れていた。

「お兄ちゃん・・お父さん、僕たちのことを心配してるかな・・?」

「そうかもね・・でもそれ以上に、お父さんは僕たちのことを信じているよ・・」

 不安を浮かべるカズトに、リクが励ましの言葉を送る。

「お兄ちゃん・・そうだね・・お父さんを安心させるためにも、僕もがんばるよ・・」

「その意気だ、カズト。お兄ちゃんも負けないくらいにがんばらないとな。」

 決意を見せるカズトに、リクが微笑んで頷いた。

「それじゃ家に入ろうか、カズト。」

「うんっ!」

 リクが呼びかけて、カズトが大きく頷く。2人は元気よく家の中に入っていった。

 

 

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