仮面ライダークロス
第49話「光と闇のクロス 魂の交錯」
キバーラの力を借りて、仮面ライダーキバーラに変身したまり。彼女は激闘を繰り返すライとノゾムの間に割って入った。
「キバーラ・・あの女の変身に協力したか。」
ライがまりとキバーラを見て、状況を認識する。
「私はこの戦いを止めに来た・・ライくん、そしてノゾムくんと戦うことになっても・・・!」
まりが言いかけて、ライからノゾムに視線を移した。
「邪魔をしてくるなら、誰だろうと容赦しない・・敵も、敵に味方するヤツも・・・!」
ノゾムがまりに対しても鋭く言いかける。
「それでも止める・・2人に、死んでほしくないから・・・!」
それでもまりの決意は変わらない。
「1対2ではなく1対1対1ということか?どちらでも私が勝つことに変わりはない。」
勝気の態度を崩さずに、ライがまりにも敵意を向ける。
「負けるつもりも勝つつもりもない・・止めるつもりだから・・・!」
まりが言い返して、ライに向かって突っ込んだ。まりの繰り出すパンチとキックを、ライが素早くかわしていく。
「ガムシャラだ・・まりちゃんは格闘技をしたことも特になくて、戦いをしたこともないから・・」
まりの戦い方を見て、かなたが不安を感じていく。
「しかしキバーラが戦い方を教えると言っているし、ガムシャラがライくんたちに動きを読ませないことになっているから、効果的にはなっているようだが・・」
聖也が冷静にまりの様子をうかがう。
「僕たちもやれるだけやって、まりちゃんに協力しましょう・・!」
「もちろんそのつもりだ。黙って見てばかりのつもりはない・・!」
かなたと聖也が声を掛け合って、ルシファードライバーとルシファーソウル、クラールドライバーとクラールソウルを手にした。
“クラールドライバー!”
聖也がクラールドライバーを装着して、クラールソウルを手にした。
“クラール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼はクラールソウルをクラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
聖也の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。彼はクラールへの変身を果たした。
“ルシファードライバー。”
“ルシファー!”
かなたがルシファードライバーを装着して、ルシファーソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウル。”
彼がルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。
「変身。」
かなたがルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。
“ダークチェンジ・ルシファー。”
紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとって、かなたはルシファーに変身した。
「クラールたちも回復したか。私が全員倒すだけだ。」
ライが冷静に告げて、クロスカリバーを構えた。
「我々は倒れない・・ライを倒させない・・!」
「僕たちは倒すためじゃない・・みんなそろって家に帰るために、戦うんだ!」
聖也とかなたが言いかけて、まりと合流した。
「かなたくん・・聖也さん・・・!」
まりが戸惑いを感じてから、ライに視線を戻す。
「そうまでしてアイツのことを・・そこまで助けたいってことか・・・」
ライを思う聖也たちの意思に、ノゾムが心を動かされる。
「しかし今のヤツの力は大きい・・倒すつもりでやらなければ、逆にやられることになるぞ・・・!」
ノゾムが投げかけた忠告に、聖也たちは頷いた。
ライがノゾムに向かって飛びかかって、クロスカリバーを振りかざす。ノゾムがクロスカリバーをかわして、ライの体にパンチを叩き込んだ。
少し押されるライだが、苦もなく平然としていた。
「全力で出さなければ、ライくんは止められない・・!」
“ヴァイス!”
聖也が覚悟を決めて、ヴァイスソウルを取り出した。
“ライダーソウール!”
彼はヴァイスソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。
“大革命・ヴァーイス!”
クラールの装甲とマスクが白くなった。聖也はヴァイスクラールへ変身した。
「強き正義で、悪に制裁を下す・・!」
聖也がライに告げて、ヴァイスブレイカーを手にした。ここで彼はもう1つライダーソウルを持っていたことに気付いた。
「これはディエンドのソウル・・・!」
聖也はライダーソウル「ディエンドソウル」を手にして見つめた。
「遠慮なく使わせてもらうぞ、このソウルを・・!」
聖也が呟いて、さらにゼロノスソウルを手にした。
“ゼロノス!”
“ディエンド!”
彼がゼロノスソウル、ディエンドソウルのスイッチを入れて、ヴァイスブレイカーの柄のくぼみにセットする。
“テクニックヴァーイス!”
ヴァイスブレイカーの刀身から黄色の光があふれ出した。
「テクニックブレイカー!」
聖也が振りかざしたヴァイスブレイカーの刀身から、光の刃が伸びた。光の刃が鞭のように伸びて、クロスカリバーの刀身に巻きついた。
「今だ!一気に決めろ!」
聖也が呼びかけて、かなたがクロノスソウルを手にした。
「これを使えば一気に体力を消耗してしまう・・でも一瞬でも確実に当てられるチャンスができるなら・・!」
“クロノス!”
最善の手段を考えたかなたがクロノスソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・クロノス。”
かなたの右足にエネルギーが集まった。同時に彼以外の時間が停止した。
「ルシファークリティカルクルセイド!」
かなたがジャンプして、ライの身に付けているクロスドライバー目がけてキックを繰り出した。
“ムテキエグゼイドパワー!”
そのとき、クロスカリバーとライの体から金色の光があふれ出した。次の瞬間、ライがかなたに対してクロスカリバーを振りかざしてきた。
「“ポーズ”の対抗手段は既に分かっている。“無敵”となっている私には通じない。」
「そんな・・!?」
時間停止を無敵状態で無効化したライに、かなたが絶望する。クロスカリバーがルシファーの装甲を切りつけて、火花を散らした。
「うあっ!」
かなたが突き飛ばされて倒れた。その瞬間に、止まっていた時間が動き出した。
「今のは・・時間が止まっていたのか!?・・かなたくん!?」
時間が止まっていたと推測した聖也が、かなたを見て叫ぶ。
「今のうちに・・ライを・・・!」
かなたが声を振り絞って、聖也たちに呼びかける。
そのとき、ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを3回押した。
“エクシードスマッシャー!”
彼の手元に剣の形をした武器が現れた。柄と刀身の間に1つの画面があった。エクシードフォルムの武器「エクシードスマッシャー」である。
「時間停止の中で動いていたのは、私とルシファーだけではない。マックスも強引に動いていた。」
ライがノゾムを見て呟いた。停止されていた時間の中で、ノゾムは強引に体と心を動かして、ゆっくりではあったが、ビースドライバーに手を伸ばしていた。
「怒りを強くして無理やり体を動かすとは、人間離れをしているな・・しかし人間を超えているのは、私も同じこと。」
ライが呟いてから、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加えた。
“ライダースマッシュ・オール!”
「オールクロスキック。」
クロスの装甲からまばゆい光があふれ出して、ジャンプした彼の両足に集まっていく。
「何をしてこようと、オレは敵の思い通りには絶対にならない・・!」
ノゾムが怒りをあらわにして、エクシードスマッシャーの画面にをスライドして、「X」を表示させた。
“エクシードチャージ!エクシードスマーッシュ!”
ノゾムの全身から光が放出される。飛び上がった彼がエネルギーを右足に集めて、ライのキックとぶつけ合った。
「うっ!」
2人のキックのぶつかり合いで爆発のような光がきらめいて、聖也たちがたまらず目を閉ざす。
ノゾムが強く地面に叩きつけられてうめく。ライは着地したが、激突の際に体力を大きく消耗して、一瞬ふらついた。
「今しか・・今しかライくんを止めるしかない!」
「サーベルを使うのよ!それに力を込めて!」
思い立ったまりに、キバーラが呼びかける。
「キバーラサーベル!」
まりが剣「キバーラサーベル」を手にして、刀身に白い光を宿らせた。
「ソニックスタッブ!」
彼女がライ目がけてキバーラサーベルを振りかざす。ライが回避が間に合わず、クロスの装甲を切りつけられた。
そのはずみでライからクロスドライバーが外れた。倒れた彼からクロスへの変身が解かれた。
「ライくん!」
まりが叫んで、ライに駆け寄って支える。
「しっかりして、ライくん!私だよ!まりだよ!」
まりが呼びかけるが、ライは目を覚まさない。そのとき、外れて地面に落ちたクロスドライバーから、黒い霧があふれ出した。
「な、何だ・・!?」
聖也がこの霧を見て緊張を覚える。クロスドライバーから出た黒い霧が集まって、形を成した。
「なっ!?」
聖也だけでなく、かなたとひろしも目を疑った。その姿かたちはクロス・オールフォームだが、全体的に装甲や仮面が黒くなっていた。
「黒い、クロス・・!?」
「ライがそこにいるのに、どうしてそこにクロスが・・!?」
聖也とかなたが黒いクロスを見て、驚きをふくらませていく。
「まさか、2つの人格が2つの肉体として別れることになるとは・・」
黒いクロスが自分の体を確かめてから、ライに視線を移す。
「あれはライくんではない・・ライくんの体を乗っ取っていたヤツだ・・!」
聖也が黒いクロスが、先ほどまで自分たちと戦っていた相手だと気付く。
「そうだ。十時ライとクロスドライバーから別れてはいるが、能力が衰えてはいない。私が全ての仮面ライダーの力を束ね、世界をも束ねる存在であることに変わりはない。」
黒いクロスが答えて、今の自分について告げる。
「黒いボディか。“ダーククロス”としておくか。」
「しかしお前はライくんではない・・遠慮なく倒せるというものだ・・!」
黒いクロス、ダーククロスに対して、聖也が戦いを挑もうとする。
「ムダだ。私との力の差は明らかだ。しかもお前たちには戦えるだけの体力は残っていない。」
ダーククロスから指摘されて、聖也が息をのむ。聖也もかなたたちも戦える余力がない。
「それでお前に屈するつもりは全くない・・・!」
ノゾムが立ち上がって、ダーククロスに鋭く言いかける。
「本当に強情なヤツだ・・だがその感情ほど、お前の肉体は完全無欠というわけではない。」
「ライから体が別れても、その思い上がりはそのままだな・・・!」
ため息をつくダーククロスに、ノゾムがゆっくりと近づいていく。
「これでみんなに遠慮する必要はない・・確実にお前を倒す・・!」
ノゾムが鋭く言って、ダーククロスに向かって拳を振りかざす。しかしダーククロスに手で軽々と受け止められた。
「やはりその怒りほど、パワーは残っていないようだ・・」
ダーククロスが低く告げて、握った右手をノゾムに叩き込んだ。
「ぐっ!」
ノゾムが強く突き飛ばされて、ライたちのそばから遠ざけられた。
「ノゾムくん!」
まりがノゾムに向かって叫んで、ダーククロスに目を向けた。
「とどめにはなっていないが、すぐには戻ってこれないだろう。お前たちから先にとどめを刺すとしよう。」
ダーククロスが言いかけて、まりとライに向かって前進する。
「まりちゃん、今度こそ逃げるんだ!いくらなんでも、まりちゃんにだって戦える力はもう・・!」
かなたが呼びかけるが、まりは逃げようとしない。
「ライくんやかなたくんたちを見捨てて、私だけ逃げるわけにいかない・・!」
「お前たちは逃げられはしない。どこへ行っても、私の全てを束ねる力の洗礼を受けることになる。」
立ち上がるまりの眼前まで、ダーククロスが近づいた。まりがキバーラサーベルを、ダーククロスに向かって突き出した。
しかしキバーラサーベルを装甲に突き立てられても、ダーククロスは平然としていた。
「もう不覚を取ることはない。確実にお前を倒す。」
ダーククロスがクロスカリバーを手にして、キバーラサーベルをはじき飛ばした。
「キャッ!」
まりがクロスカリバーに切りつけられて倒される。そのはずみでキバーラが離れて、まりの変身が解けた。
「まりちゃん!」
かなたがまりに向かって叫ぶ。キバーラも力を消耗して、まりの変身を促せなくなった。
「これで終わりだ。あと一撃でお前の命を絶つ。苦痛を感じる間もなく即死させる。」
ダーククロスが言いかけて、クロスカリバーを構えた。体を起こそうとするまりだが、回避が間に合わない。
ダーククロスがまり目がけてクロスカリバーを振り下ろした。だが直後にクロスカリバーがはじき返された。
「まりちゃんに手を出すな・・他のみんなにも・・!」
クロスカリバーを止めたのは、目を覚ましたライだった。
「ライ!」
「ライくん!」
かなた、聖也、まりがライに叫ぶ。
「目を覚ましたか、もう1人の私が。」
ダーククロスがライとの距離を取って呟く。
「オレの体を使って、みんなを傷付けて・・オレはお前を許さないぞ・・・!」
「矛盾した言い分だな。私とお前は同じ存在だった。今は別れているが、お前の中に、全てを束ねようとする考えがあったということだ。」
怒りをあらわにするライを、ダーククロスがあざ笑う。
「それはお前だけの考えだ・・オレは間違いを正そうという気持ちはあっても、世界を支配しようなんて考えは持っていない!」
「強情なことだ。どちらにしろ、お前でも私に勝つことは不可能だ。私のほうが自在にライダーの力を使いこなせる。」
自分の意思を言い放つライを、ダーククロスはさらにあざ笑う。
「お前はライダーソウルを使い分けしなければ、ライダーの全ての力を使いこなすことはできない。それがお前と私の決定的な差だ。」
「そんなものでオレに勝ったことにはならないぞ・・オレと仮面ライダーの強さは、魂と心が力とクロスしたときに引き出されるんだ・・!」
勝ち誇るダーククロスに、ライが感情を込めて言い返す。
「お前は全てのライダーの力を持ちながら、その強さがどういうものなのかを分かっていない・・少なくともオレは、お前やディケイドよりも、仮面ライダーがどういうものかは分かっている・・・!」
「理解する必要はない。ライダーの力は私の力なのだからな。」
「やっぱり分かっていない・・オレが、オレたちがそれを証明してみせる!」
ダーククロスに言い返して、ライがクロスドライバーを拾った。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
「ムチャをするな、ライくん!君1人では、アイツに勝つのはかなり難しいぞ!」
聖也が呼び止めるが、ライは顔を横に振った。
「これはオレとの戦い・・そして、仮面ライダーの魂を賭けた戦いでもあるんだ・・!」
「ライ・・・」
ライの決意を聞いて、かなたが戸惑いを浮かべる。
「だからオレは戦う・・仮面ライダーに込められた思いを、けがされてたまるか・・!」
「私がライダーをけがす悪といいたいのか・・だがお前たちも分かっているはずだ。仮面ライダーは、元々悪の組織によって生まれたことを。」
鋭く言いかけるライに対して、ダーククロスは笑みをこぼすばかりだった。
「改造人間である仮面ライダーは、悪の組織によって改造手術をされている。そうでないライダーはわずかだ。そしてそれ以外のライダーも、怪人に近しい存在、近しい能力を備えた者ばかり。力の酷使によって怪人化した者もいる。」
「だから、仮面ライダーには正義だけじゃなく、悪の魂を込められていると・・・!」
ダーククロスの話を聞いて、ライは仮面ライダーに込められている善悪を自覚していく。
「だが悪に植え付けられた力でも、大切なものを守るために使うことはできる!使い方を間違わなければ、力は強さにできる!」
ライが言い放って、ダーククロスに向かって走り出す。
「その強さが私に及ばないことを、お前の身をもって証明してやろう。」
ダーククロスが言いかけて、ライに向かって右手のパンチを繰り出した。
「ぐっ!」
ダーククロスのパンチを体に受けて、大きく突き飛ばされるライ。彼がその先の壁を突き破って、倉庫の中に飛び込んだ。
「ライくん!」
「ライ!」
聖也とまり、かなたがライに向かって叫ぶ。聖也とかなたが力を振り絞って立ち上がろうとする。
「ライくんだけには戦わせない・・私たちも戦うぞ・・!」
「おやっさん、まりちゃんとキバーラをお願い・・!」
聖也が決意を口にして、かなたがひろしに呼びかける。
「分かった・・2人ともムチャするなよ・・!」
ひろしが頷いて、まりに肩を貸す。キバーラが飛び上がってまりの肩に乗る。
「どいつもこいつも、往生際のわるいことだ・・」
ダーククロスがため息をついてから、聖也たちを迎え撃つ。ライが倉庫から出てきて、ふらつきながらもダーククロスに向かっていった。
ライの体を乗っ取っていたダーククロスによって、遠くまで飛ばされていた司と大樹。変身が解けていた司が、力を振り絞って立ち上がる。
「ずいぶん離されたようだな・・・アイツらだけで、今のクロスの相手ができるかどうか・・」
司がため息をついて、ライたちに対して危惧する。
「司が彼らの心配をするとはね。」
「冗談はやめろ、海東。ヤツを野放しにすれば、オレの戦いがやりづらくなるからな・・」
気さくに言いかける大樹に、司がため息まじりに言い返す。
「どうやら、こっちに飛ばされたヤツは、オレたちだけじゃないようだ・・」
司が呟いて、大樹とともに振り向いた。ダーククロスの攻撃で吹き飛ばされたノゾムも、ここにいた。
「お前は、ディケイド・・オレもお前たちも、ここまで飛ばされたということか・・・」
ノゾムが司を見て、力を振り絞って立ち上がる。
「全ての仮面ライダーの力が集まったことで生まれた人格は、ライから別れて別の体を持った。黒いクロスとして・・」
「そうか・・大体分かった。これでアイツらは、ためらいなくライダーの悪の化身を倒すことができるというわけか・・」
ノゾムの話を聞いて、司が納得する。
「オレも行く。ヤツは仮面ライダーの力を使って、全てを支配しようと企んでいるからな・・」
「待て・・・!」
ライたちのところへ戻ろうとした司を、ノゾムが呼び止めた。
「お前はオレが倒す・・思い上がっているお前を、オレは許さない・・・!」
ノゾムが司に向かって鋭い視線を向ける。
「お前は分かっていないのか?ヤツを倒さなければ、全てが終わるんだぞ。お前も、お前の居場所も・・」
「分かっていないのはお前のほうだ・・お前も何もかもムチャクチャにする敵だということを・・!」
呆れる司に対して、ノゾムがさらに鋭く告げる。
「光輝の言っていた通りのヤツだった・・自分のために、他のヤツを苦しめ、それでも平気でいる・・お前も、絶対に許してはならない敵だ!」
「否定はしない。なぜならオレは破壊者。世界を、そして仮面ライダーという夢を振り回す存在だからな。」
「自分の過ちを認めても、それを改めないなら、オレがお前を叩き潰すことに変わりはない!」
「やれやれ・・オメガのように強情なヤツだ・・」
怒りをむき出しにするノゾムに呆れ果てて、司がライダーカードを手にした。
「そこまで言い張るなら、どうなっても知らないぞ・・・変身。」
“Kamen ride,Decade.”
忠告を口にした司が、ライダーカードをディケイドライバーにセットして、ディケイドに変身した。
“マックス!”
ノゾムもビースドライバーにマックスカードをセットした。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムはマックスに変身した。
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ・・・!」
「オレの怒りは限界突破・・誰だろうと、敵になるなら必ず倒す・・!」
司とノゾムが言い放って、互いに距離を詰めていく。
「やれやれ。付き合ってられないね・・僕はこれで失礼するよ。生きていたら、また会おうね、司・・」
大樹はため息をついてから、ノゾムと司の前から立ち去っていった。
「あの黒いクロスならライたちが倒すだろう。ライも自分勝手なヤツを許せないからな・・」
「だからお前はオレを倒すというのか?・・矛盾しているな・・」
「それはお前たちだ・・矛盾をしていることを分かろうともせず、矛盾を身勝手とともに押し付けて平気な顔をしている・・・!」
「あくまでオレは敵か・・・そこまで言い張るなら、お前を倒すしかないな・・」
怒りを消さないノゾムと戦うことを決めた司。破壊者に対する激しい怒りが、ノゾムからも向けられることになった。
司たちと別れて、大樹は気ままな旅を再開しようとしていた。しかしそのとき、彼は異様な気配を感じて足を止めた。
「仮面ライダーの力を束ねる力が、解き放たれたようだね・・」
大樹が周りを見回して微笑む。地面から怪人や怪物、戦闘員たちが次々に現れた。歴代の仮面ライダーと戦った怪人たちである。
「クロスによって、怪人たちが呼び出されたか。ハイパーショッカーの誕生は、その前兆ということか。」
大樹が推測を交えて、自分たちが目の当たりにしている現象を理解する。
「ある世界にいた怪人によって、仮面ライダーの力を会わせる存在が生み出された。実験と改良を経て誕生したのがクロスだった。」
クロス誕生について推測した大樹。
「世界を、仮面ライダーの力を1つにしようとする企みが、クロスを生んだ・・仮面ライダーの力だけじゃなく、怪人の意思までも1つになって解放された・・怪人が次々に出てきたこの現象も、その1つか・・」
大樹がため息をついてから、ディエンドライバーを構えた。
「僕も、やらなくちゃならないみたいだね・・・変身。」
“Kamen ride,Diend.”
乗り気でない素振りを見せながら、大樹はディエンドに変身した。
「僕の邪魔はさせないよ。僕は僕のやりたいようにやるから・・」
大樹が笑みをこぼすと、近づいてきた怪人たちを迎え撃った。