仮面ライダークロス
第50話「仮面ライダー永遠あれ!」
ライの体から別れたことで、ダーククロスは仮面ライダーの中に秘められていた怪人の力が解き放たれた。その力に引き寄せられるように、世界中に怪人たちが続々と出現していた。
本能のままに暴れ出した怪人たちから、人々が慌てて逃げ出す。無差別に襲い掛かる怪人たちだが、ライたちとノゾムたちのいる場所を無意識に避けていた。
ライたちの驚異的な力を痛感して、怪人たちは彼らに近づかないようにしていた。
怪人たちが増えている中、ノゾムと司の攻防は続いていた。2人とも互いを倒すことに、ためらいはなかった。
「ライは仮面ライダーの力がどういうものなのかを分かろうとしている・・何のために戦うのか、その大切さを理解している・・!」
ノゾムが攻撃を続けながら、ライのことを考える。
「だがお前は違う!ライダーとその力を、自分のためだけに利用しているだけだ!」
「正義のためとか大事なもののためとか言うが、結局それも自己満足だ。そういう意味ではオレもお前も他のヤツも大差ない。」
「自己満足はお前だ!自分の愚かさを棚に上げて、他のヤツも悪いと決めつける・・思い上がりの考え方だ!」
指摘をする司に、ノゾムが怒りをふくらませる。
「世界が自分を中心に動いているなどと、死んでも思うな!何もかも自分の思い通りになると思うな!」
ノゾムが怒鳴り声を上げて、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
彼の右足に赤い光が集まっていく。
“Final attack ride,Decade.”
司がノゾムと同時にジャンプして、光のカードを通ってキックを繰り出した。司はノゾムのキックかわすと同時に、ビースドライバーにキックを当てて外した。
体勢を崩して倒れたノゾムから、マックスへの変身が解けた。
「これでケリが付いたか。とどめを刺させてもらう。」
司が告げて、ライドブッカーをガンモードにしてノゾムに向けた。
「ベルトはオレの後ろだ。戦える力はないぞ。」
「そんなことはない・・・!」
司に言い返すノゾムの体に変化が起こった。彼は怪人、ビースターの1人、ビーストビースターになった。
「お前も怪人になれるのか・・」
司が呟いた直後、ノゾムは一気にスピードを上げて駆け抜けて、ビースドライバーを拾い上げた。
「オレの体はビースターだ・・だが怪人として生きるつもりはない・・・!」
ノゾムがビースターから人間の姿に戻って、ビースドライバーを装着した。
“エックス!”
彼がアニマルカード「エックスカード」を手にして、ビースドライバーにセットした。
「変身!」
ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを押した。
“チャージ・エーックス!アンリミテッド・ハイパワー!ビース・エックスライダー!”
マックスに変身したノゾム。そのスーツは白く真ん中に縦のラインが入り、マスクも「X」の形のラインが入っていた。
マックスの強化形態「エックスフォルム」である。
ノゾムが続けてアニマルカード「エクシードカード」を2枚取り出した。
“エクシード!インフィニットマックス!”
彼が両腕に装備されている腕輪「エックスブレス」にエクシードカードをセットした。
“チャージ・エクシード!インフィニット・エックス!インフィニット・マックス!ビース・エクシードライダー!”
マックスのスーツが銀色に変わって、X字の金のラインが入った。ノゾムはマックスの最強形態「エクシードフォルム」となった。
「全ての力を引き出すか・・ならばオレも。」
司が呟いてから、ケータッチを手にして画面にタッチした。
“Kuuga,Agito,Ryuki,Faiz,Blade,Hibiki,Kabuto,Den-o,Kiba.”
“Final kamen ride,Decade.”
司はコンプリートフォームに変身して、ノゾムに近づいていく。
「オレは破壊者だ・・お前を倒し、混乱に陥っているこの世界も破壊する・・・!」
「オレの怒りは限界突破・・オレもお前を認めない!」
司が鋭く、ノゾムが怒りを込めて言い放つ。2人が同時にパンチを繰り出して、激しくぶつけ合う。
「ぐっ!」
ノゾムのパンチ力に押されて、司が突き飛ばされる。ノゾムが距離を詰めて、司にパンチを連続で叩き込んでいく。
司がノゾムをジャンプで飛び越えると、ケータッチを手にしてクウガのアイコンにタッチした。
“Kuuga.kamen ride,Ultimate.”
構えを取った司の隣に、クウガ・アルティメットフォームの幻影が現れた。ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを3回押した。
“エクシードスマッシャー!”
ノゾムの手元に剣の形をした武器が現れた。柄と刀身の間に1つの画面があった。エクシードフォルムの武器「エクシードスマッシャー」である。
ノゾムは続けてエクシードスマッシャーの画面をスライドする。彼は画面にゾウのアイコンを出してから、そばのボタンを押した。
“エレファントスマーッシュ!”
エクシードスマッシャーを左手に持ち替えたノゾムの体に、力が宿る。ジャンプしてキックを繰り出した司に対して、ノゾムが右手のパンチを繰り出した。
力の込められたノゾムのパンチは、クウガの力を宿した司のキックを押し返していく。
「どんな力を使ってこようと、身勝手を押し付けてくるなら、オレはお前を絶対に叩きつぶす!」
ノゾムが強引に右手を押し込んで、司のキックを打ち破った。司が激しく地面に叩きつけられて、地面を転がる。
「無理やりオレとクウガの力を押し込むとは・・!」
起き上がろうとする司が、体を駆け廻る激痛を感じてふらつく。
「お前の存在を認めない・・オレも光輝もライも、ライダーに憧れを抱いている人たちも・・!」
ノゾムが鋭く言って、エクシードスマッシャーの画面に「X」を表示させた。
“エクシードチャージ!エクシードスマーッシュ!”
全身から光を発して、大きくジャンプする。
“Final attack ride,Decade.”
司も大きくジャンプして、ノゾムと同時にエネルギーを集めた右足を伸ばした。2人のキックの激突で、きらめいた閃光で周囲が白んだ。
ノゾムのキックは司のキックを押しのけて、彼の体に直撃していた。
「大事なものを守ろうとする思いと、敵に対する怒りが、ホントの強さだ・・壊して傷つけるばかりのお前を、オレは絶対に許さない・・・!」
自分の感情を言い放って、ノゾムが司を地面に押し込む。
「お前といい、オメガといい、どいつもこいつもオレを否定してくれるな・・・」
「お前が否定や破壊をするから、自分が否定や破壊をされることを思い知れ・・・!」
不満を口にする司に、ノゾムが鋭く言い放つ。彼のキックの威力が光となって、司の姿が光の中に消えた。
光と土煙が治まって、ノゾムだけがその中心で立っていた。
「オレは戦う・・みんなを苦しめて平気な顔をする敵と・・・倒しても何度でも出てくるというなら、何度でも倒す・・・」
自分の意思を口にして、ノゾムが振り返る。
「ライ、お前も戦う道を選んだんだろう・・お前自身で答えを出して・・・」
ライのことを考えるノゾム。彼の前に怪人たちが現れた。
「今度の相手はお前たちか・・オレをどうにかしようとするなら、容赦しないぞ・・」
ノゾムが忠告を口にして、怪人たちに立ち向かった。
ライ、聖也、かなたがダーククロスとの激闘を繰り広げる。しかしダーククロスの力に、ライたちは歯が立たずに押し返されていく。
「お前たちが束になろうと、私を止めることはできない。」
ダーククロスが落ち着きを保ったまま、ライたちをあざ笑う。
「万が一にも私を倒すことになれば、1つになっているこの世界がどうなるか分からんぞ。」
「何っ・・!?」
ダーククロスが告げた言葉に、聖也が驚きを覚える。
「全てのライダーを束ねる力。それは世界の融合をも誘発している。融合している世界の1つにいる怪人組織によって、世界の融合が引き起こされ、ライダーの力を使いこなせる戦士も生み出された。その1人がクロスだ。」
「クロスに、そこまでの力が備わっているのか・・!?」
ダーククロスの話を聞いて、ライが動揺を浮かべて自分の両手を見つめる。
「クラールもルシファーも同じ技術を植え付けられているが、3人ともハイパーショッカーの想像以上の進化を遂げることになった。特にクロスは全ての仮面ライダーの、あらゆる要素を宿すまでになった。」
「ショッカーやゴルゴムによる改造、ミラーモンスターとの契約、オルフェノク、アンデッド、イマジン・・仮面ライダーの誕生や力の元となった悪の部分も・・」
「その悪の部分の集合体が、ライのもう1人の人格を生み出した・・それがお前なのだな・・!?」
ダーククロスが話を続けて、かなたが納得して、聖也が疑問を投げかける。
「その悪の部分こそ、世界の融合をもたらしているカギとなっている。私が倒れることにより、1つになっていた世界が別れることになるが、その衝動に耐えられず全ての世界が崩壊することになる。」
「そうなれば、何も残らない・・全てが消滅するから・・・!」
ダーククロスから語られた世界の破滅に、かなたが絶望を痛感する。
「世界の融合を導く力は、お前だけじゃなく、オレにもあるはずだ・・!」
そのとき、ライがダーククロスに言い返してきた。
「お前は元々はオレの中にあった存在だ。お前の持つ能力は、オレも持ってるってことになる・・!」
「ちょっと無理やりな理屈にも聞こえるけど・・・」
ライの口にした言い分に、ひろしが苦笑いを浮かべる。
「お前を倒しても、オレがいれば世界を安定させることができる・・!」
「フン。融合の解除の反動は、全てを滅ぼすほどの力。それ以上の力を備えなければ、世界をつなぎとめることもできない。」
前向きに言い放つライを、ダーククロスがあざ笑う。
「やってやるさ・・今のオレは1人じゃない・・オレたちだけでもない・・・!」
ライが意気込みを見せて聖也、かなたと目を合わせた。
「愚かしいお前たちも、私が排除してくれる。そして他のライダーたちにも、私の存在を思い知らせる。」
ダーククロスがクロスカリバーを手にして、ライたちに向かっていく。ライ、聖也、かなたがダーククロスを迎え撃つ。
ライと聖也が繰り出したパンチを、ダーククロスは素早く動いてかわした。
「クロックアップ!」
「歴代のライダーの能力を自在に使っている・・それも、ライくん以上に・・!」
ライと聖也がダーククロスの動きに毒づく。カブトソウルを使わずに、ダーククロスはクロックアップを発動させていた。
ダーククロスがクロスカリバーを振りかざして、赤い光の刃を飛ばした。
「うあっ!」
ライと聖也が光の刃に切りつけられて倒れる。
「あれは電王の・・ぐっ!」
電王の必殺技も使ってきたダーククロスに驚くかなたも、光の刃を当てられて突き飛ばされる。
「同時に攻撃を当てる!」
“リュウガ!”
かなたが指示を出して、リュウガソウルを手にした。ライと聖也もクロスドライバー、クラールドライバーの右のレバーを右手で上げて回転を加える。
“ライダースマッシュ・クロース!”
“ライダースマッシュ・クラール!”
2人の足にエネルギーが集まっていく。かなたもリュウガソウルをルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・リュウガ。”
かなたの足に黒い炎が集まる。3人が同時にジャンプして、ダーククロスに向かってキックを繰り出した。
「クロスライダーキック!」
「クラールライダーキック!」
「ルシファードラゴンキック!」
ライ、聖也、かなたのキックがダーククロスに直撃した。大きなダメージを与えられたと思ったライたちだが、ダーククロスは平然としていた。
「これだけまともに食らって効いてないはずは・・!?」
「まさか、無敵状態!?・・ムテキゲーマーの力を!?」
ライが驚いて、かなたがダーククロスの発動した無敵状態に気付く。
「そうだ。無敵になっていれば、いかなる攻撃も私には効かない。」
ダーククロスが語ってから、クロスカリバーに意識を傾けた。すると様々な武器が空間を通って現れた。
「大橙丸、バナスピアー・・鎧武・極アームズ・・!」
緊張をふくらませるかなたたちに向かって、武器が一斉に突っ込んできた。彼らが武器をぶつけられて突き飛ばされる。
ダーククロスがクロスカリバーの切っ先をライたちに向けた。クロスカリバーから赤い光が放出されて、ライたちに命中した。
「があぁっ!」
吹き飛ばされたライたちの変身が解けた。ダメージが増した彼らを、ダーククロスが追い詰めていく。
「みんな!」
ひろしがライたちに向かって叫んで、まりも焦りをふくらませる。キバーラは力を消耗していて、まりは変身することができない。
「お前たちが何をしても、他のライダーたちが束になろうと、私には勝てない。お前たちは諦めるしかない。」
ダーククロスがライに詰め寄って、クロスカリバーを構える。
「まずはお前だ。クロスは私1人で十分だ。」
ダーククロスがライ目がけて、クロスカリバーを振り下ろした。その瞬間、ライがとっさにクロスホッパーに変わって、ダーククロスを突き飛ばした。
「き、効いた!?」
「無敵状態じゃなくなっている・・!?」
聖也とかなたがダーククロスに対して驚く。ライの突撃を受けて、ダーククロスは押されて引き離されていた。
「ムテキゲーマーをずっと持続できるわけじゃない・・オレがライダーソウルを切り替えるように、他のライダーの能力を使うときには、それまで使っていた能力は解除しないといけない・・!」
ライが自分とダーククロスの能力について語る。オールフォームとダーククロスは、仮面ライダーやライダーソウルの能力を2つ以上同時に使うことはできない。
「ソウルをうまく取り替えていけば、その差は一瞬っていうぐらいまで埋められるけど、それでも差は差だ・・!」
「それで私に勝てると考えるのは、浅はかだ。」
勝機を見出すライだが、ダーククロスは動揺を見せない。
「その一瞬の隙も、お前たちは突くこともできない。」
「やる・・やってやる!そうしなければ、オレたちの居場所は守れないからな!」
勝利を確信するダーククロスの前で、ライはクロスホッパーから人の姿に戻った。
「オレは戦う・・怪人じゃなく、1人の人間として・・!」
「私は正義を貫く・・心ある人を守るための正義を・・!」
「僕もみんなを守るよ・・家族や仲間、みんなのいるこの世界も!」
ライに続いて、聖也とかなたも決意を言い放つ。
“カメン!”
“ヴァイス!”
“ルシファー!”
3人がそれぞれカメンソウル、ヴァイスソウル、ルシファーソウルを手にしてスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
“ライダーソウル。”
ライ、聖也、かなたがクロスドライバー、クラールドライバー、ルシファードライバーにセットした。
「変身!」
“超変身・カメーン!”
“大革命・ヴァーイス!”
“ダークチェンジ・ルシファー。”
3人はクロス・カメンフォーム、ヴァイスクラール、ルシファーに変身した。
“オール!”
ライは続けてオールソウルを手にして、スイッチを入れた。彼がクロスカリバーを引き抜いて、左のスロットにオールソウルをセットした。
“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”
カメンフォームの緑と赤の横のラインに金のラインが加わり、装甲から神々しい輝きが発せられた。ライはオールフォームに変身した。
「全てを、オレが正す!」
「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」
「この悪魔の力で、みんなを守る!」
ライ、聖也、かなたがダーククロスに向かって言い放つ。
「私が束ねる。仮面ライダーの力も、この世界も。」
「世界は世界に住むみんなの者だ・・誰だろうと、好き勝手に支配していいわけがない・・たとえ、仮面ライダーであっても!」
全てを掌握しようとするダーククロスに、ライが感情を込めて言い返す。
「お前を倒す!そして世界を、オレたちの居場所を守る!」
“響鬼!”
ライが響鬼ソウルを手にして、クロスカリバーの右のスロットにセットした。
“アームド響鬼パワー!”
クロスカリバーの刀身に赤い炎が灯る。
「響鬼・オールカリバー!」
ライがクロスカリバーを振りかざして、炎を宿した光の刃を放つ。
「ビルド・オールカリバー。」
ダーククロスもクロスカリバーを振りかざして、光の刃を出してライの刃とぶつけ合う。2つの光の刃が相殺されて、ともにかき消された。
“ドライブ!”
ライは続けてドライブソウルを取り出して、クリスカリバーにセットされている響鬼ソウルと入れ替えた。
“トライドロンドライブパワー!”
クロスカリバーの刀身に赤い光が宿る。
「ドライブ・オールカリバー!」
ライが再びクロスカリバーを振りかざした。放たれた光の刃は、先ほどよりも高速で飛んだ。
「うっ!」
ダーククロスが光の刃を装甲に当てられてうめく。
「ドライブのスピードを甘く見るな・・!」
「フン。スピードで不意を突くつもりだったが、決定力不足だ。」
鋭く言うライを、ダーククロスが鼻で笑う。
「今度は私から仕掛けさせてもらうぞ。オーズ・オールカリバー。」
ダーククロスがクロスカリバーの刀身から、紫の巨大な光の刃を出して振り下ろした。ライたちが横に動いて、光の刃をかわした。
“アギト!”
ライはアギトソウルを手にして、クロスカリバーにセットした。
“シャイニングアギトパワー!”
光を発したクロスカリバーが2本になって、ライの両手にそれぞれ握られた。
「アギト・クロスカリバー!」
ライがダーククロスに向かって飛びかかって、2本のクロスカリバーを振り上げた。ダーククロスがクロスカリバーで、ライのクロスカリバーの1本を受け止めたが、もう1本を叩き込まれて宙に跳ね上げられた。
“フォーゼ!”
ライはフォーゼソウルを手にして、1本に戻ったクロスカリバーにセットした。
“コズミックフォーゼパワー!”
クロスカリバーの刀身に、虹色の輝きが宿る。
「フォーゼ・クロスカリバー!」
ライが大きく飛び上がって、空中でダーククロスをクロスカリバーで切りつけた。
「くっ・・オメガ・オールカリバー・・・!」
ダーククロスが毒づきながら、クロスカリバーを振りかざして光の刃を飛ばした。ライはクロスカリバーを掲げて、光の刃を受け止めた。
「ライ!」
“ゴルドドライブ!”
かなたがゴルドドライブソウルを手にして、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・ゴルドドライブ。”
彼がスピードを上げて、ダーククロスに一気に詰め寄った。
「ゴルドルシファーキック!」
かなたが回転しながらキックを繰り出した。ダーククロスが無敵状態になって、かなたのキックを無力化した。
「高速で私の隙を突くことは不可能だ。たとえクロックアップやポーズを使ったところで。」
ダーククロスがかなたに告げて、スーパー1の力を発動して、左手に炎のエネルギーを集めた。
“ゲイツ!”
“ナイト!”
そのとき、聖也もヴァイスブレイカーを手にして、仮面ライダーゲイツのライダーソウル「ゲイツソウル」をナイトソウルとともにセットした。
“スピードヴァーイス!”
ヴァイスブレイカーから青い光があふれ出す。
「スピードブレイカー!」
聖也が投げつけたヴァイスブレイカーが、ダーククロスが繰り出そうとした左のパンチに命中した。ダーククロスが左腕にダメージを負って怯む。
「攻撃してくる瞬間にカウンターを狙えば、無敵を維持していられない!」
戻ってきたヴァイスブレイカーを手にして、聖也が言い放つ。
「それで勝ったと思わないことだ・・攻撃で完全に打ち倒すまで!」
ダーククロスが言い放って、クロスカリバーを構えた。今まで冷静沈着を保っていた彼が、感情を見せるようになった。
「ディケイド・オールカリバー!」
ダーククロスの姿が10人に増えた。
「10人に増えた!?」
「ディケイドも他のライダーの力を使うライダー・・その力も最大限に発揮しているというのか・・!?」
かなたが驚きの声を上げて、聖也が毒づく。
「だったらオレは・・!」
ライは対抗心を燃やして、新たにライダーソウルを取り出した。
“ジオウ!”
彼が仮面ライダージオウのライダーソウル「ジオウソウル」のスイッチを入れて、クロスカリバーにセットした。
“グランドジオウパワー!”
ライが構えるクロスカリバーから金色の光があふれ出す。彼の背後に、ジオウの最強形態、グランドジオウの幻影が現れた。
「ジオウ・オールカリバー!」
ライがダーククロスに向かって、クロスカリバーを振り下ろす。ダーククロスもクロスカリバーを振りかざして迎え撃つが、分身のうちの5人が吹き飛ばされて消えた。
「それで私に対抗できると思わんことだ・・!」
ダーククロスが声を振り絞って、ライを押し込もうとする。
「この状態でムテキゲーマーを発動させることはできない!」
“クローズ!”
聖也が勝機を見出して、クローズソウルを手にして、ヴァイスブレイカーにセットされているナイトソウルと入れ替えた。
“パワーヴァーイス!”
ヴァイスブレイカーから赤い光があふれ出して、刀身の1つから巨大な光の刃が伸びた。
「ゲイツの力はパワーとスピード、両方を備えている!パワーブレイカー!」
聖也がダーククロスに向かって、光の刃を振り下ろしてきた。ダーククロスの分身のうちの2人が、クロスカリバーで光の刃を受け止めた。
「今だ!」
聖也が呼びかけて、かなたが仮面ライダーウォズのライダーソウル「ウォズソウル」を手にした。
“ウォズ!”
“ダークチャージ・ウォズ。”
かなたがウォズソウルをルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。彼が「キック」の文字の形のエネルギーを回転させながら、ダーククロス目がけてキックを繰り出した。
「うぐっ!」
ダーククロスがキックを受けて、体勢を崩す。残りの分身たちもキックの威力で吹き飛んだ。
その瞬間に、ライが力を込めてクロスカリバーを振りかざした。
「ぐふっ!」
ダーククロスが体を切りつけられて大きく突き飛ばされた。
「バカな!?・・私が、これほどのダメージを・・・!?」
自分の体を傷付けられて、ダーククロスが怒りをふくらませていく。
「オレたちだけじゃない・・これが、今まで世界や命、大切なものを守ってきた、仮面ライダーの強さだ!」
ライが思いを込めて言い放つ。
世界や命、自由や正義、平和、それぞれの大切なもののために戦っている。仮面によって素顔を隠して戦う者、戦う力を得てそれぞれの戦いに身を投じる者、立場や意思、境遇は違ってもその意思と思いに共通する部分はある。
その意思と思いはライ、聖也、かなたの心にもある。
「そんなものが私を上回るなどありえない!私は全てを束ねるのだ!」
ダーククロスが怒号を放って、クロスカリバーを構える。
「お前はオレの体から出てきたくせに、ずいぶんと1人よがりだな・・しかも仮面ライダーの力をただの道具としか思っていない・・!」
ライがクロスカリバーの切っ先を、ダーククロスに向ける。
「自分が絶対だと思ってる・・そんなお前に、仮面ライダーという存在を理解することはできない!」
ライが言い放って、ダーククロスに近づいていく。
そのとき、突然地鳴りが起こって、ライたちが周囲を警戒する。
「な、何っ・・!?」
「ただの地震ではない・・世界の異変か・・!?」
ひろしと聖也が地震に耐えながら声を上げる。
「私がお前から別れたことで、世界の変動が起こっている・・空間の歪みも起きて、仮面ライダーに倒された怪人たちがよみがえっている・・」
「怪人たちが!?」
ダーククロスが世界の状況を語って、かなたが驚く。
「たとえ私を倒せたとしても、怪人たちによる世界の混乱を、お前たちだけで止めることは不可能だ・・お前たちに残されている道に、希望はない・・!」
ライたちに絶望を植え付けようとするダーククロス。しかしライは希望を見失ってはいない。
「何度も言わせるな・・オレは1人じゃない・・オレたちだけじゃない・・!」
「私たちがお前と戦っている間にも、仮面ライダーのみんなは、それぞれの場所でそれぞれの戦いをしている・・!」
ライと聖也が仮面ライダーたちのことを口にする。各地に現れた怪人たちを歴代の仮面ライダーたちが迎撃していることを、2人は理解して、かなたも気付いた。
「僕たちは信じる!仮面ライダーとその力を!ライダーの力を道具にしているお前に、僕たちは負けない!」
「たとえ仮面ライダーが束になろうとも、私には及ばない・・私こそが、世界を束ねる存在だ!」
かなたも言い放って、ダーククロスが感情を込めて言い返す。
「お前は世界をまとめることはできない!オレたちも、他のみんなも!」
ライがダーククロスに言い放って、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加えた。
“ライダースマッシュ・オール!”
全身から光を発する彼が、クロスカリバーを横に放ってジャンプする。
「あくまで従おうとしないなら、屈服させるまで!」
ダーククロスも全身から光を発して、大きくジャンプした。
「オールクロスキック!」
ライとダーククロスが同時にキックを繰り出してぶつけ合った。その衝撃が周囲を大きく揺さぶり、大量の破裂や爆発を引き起こす。
「同じクロスの力だろうと、私のほうが上・・!」
ダーククロスが勝ち誇ろうとしたときだった。ライの後ろに1号からジオウまでの歴代の仮面ライダーたちの幻影がいるのを、ダーククロスが目の当たりにした。
「これが、みんなが信じている仮面ライダーの強さだ!」
ライが声と力を振り絞って、キックを押し込んだ。彼がキックの押し合いに競り勝ち、ダーククロスにキックを命中させた。
「これが、仮面ライダーの真の強さ・・この私をも、上回るというのか・・・!?」
キックの威力がもたらした閃光に包まれて、ダーククロスがライダーたちの脅威を痛感する。彼の姿が閃光の中に消えた。
「倒した・・闇のクロスを倒した・・・!」
「あれはクロスでも仮面ライダーでもない・・ライやライダーを利用しようとした偽者ですよ・・・!」
勝利を確信する聖也と、ダーククロスを認めないかなた。弱まっていく光の中から、ライが出てきて着地した。
「仮面ライダーに秘められた悪の要素の集合体であるアイツを倒せた・・オレの悪い部分を・・・」
ライがひと息ついて、聖也とかなた、まりとひろしに視線を移す。
「今、いろんなところで怪人が出ている・・でも、ライダーのみんなが戦っている・・ライダーソウルを通じて、みんなのことが伝わってくる・・・」
ライがクロスカリバーを拾って、セットされているオールソウルを見つめる。
「怪人たちも退けられて、ハイパーショッカーも壊滅状態に・・私たちの戦いも、これでひと区切りついた付きそうだ・・」
聖也が言いかけて、ライとかなたが頷いた。
「ライくん・・みんな、無事だった・・・」
まりがライたちを見つめて、安心して微笑んだ。彼女とひろしはライたちをあたたかく迎えた。
ライたちの直感した通り、次々に現れた怪人たちは、各地で仮面ライダーたちによって倒されていった。
「クロスたちのほうは、決着がついたようだな。」
1号ライダーがひと息ついて、2号ライダーに声を掛けた。
「オレたちも、他のみんなもかたが付いた・・だが、問題はこれからだ。」
「1つになっている世界を今つなぎとめているのはクロス、ライくんだ。彼が今のこの世界をどうするか・・」
2号の言葉を受けて、1号がライのことを気に掛けた。
「ライくん、我々は君を信じている。君なら、世界を正しく導くことを。世界が滅びない選択をすることを。」
「そして我々はこれからも戦い続ける。悪から人々と世界を守るために。」
2号と1号がライへの信頼を胸に秘めた。世界がどのような形になっても、彼らは戦い続けるという決意を変えていなかった。
ダーククロスを倒したライたち。しかしまだ世界の行く末を決める役目が、ライには残っていた。
「ライくん、様々な世界が合わさって1つになっているが、不安定な状態になっている。1つのまま安定させるか、それとも元の世界に戻すか・・」
聖也がライから考えを聞く。かなた、まり、ひろしもライの答えに耳を傾ける。
「今の世界は、1つになったこの世界だけじゃない・・他にもいろんな世界が存在している・・オレたちが仮面ライダーになっていない世界や、ライダーも怪人も存在しない世界も・・」
ライが並行世界を思い出して、自分の考えをまとめた。
「オレたちが仮面ライダーになったこと、仮面ライダーのみんなと出会えたことは、オレたちにとって大切なことだ・・この出会いと強さを、なかったことにはできない・・・!」
「ライ・・・」
ライの正直な思いを聞いて、まりが戸惑いを感じていく。
「世界はこのまま、1つに留める・・仮面ライダーは、みんなの身近にいる、永遠のヒーローだ!」
言い放つライが意識を集中させた。彼はクロスになってからの戦いの日々、歴代の仮面ライダーたちとの出会いを思い出した。
みんなのいる世界、夢や希望が失われない世界を願い、ライは1つになっている今の世界の維持を念じた。
歪みが生じていた空間が安定に向かっていく。怪人たちの復活が止まり、残った怪人たちはライダーたちに倒されることになった。
ライによって、世界は1つのまま安定したのだった。
ハイパーショッカーは壊滅し、世界の命運を賭けた戦いにも終止符が打たれた。しかし仮面ライダーはそれぞれの場所で戦いを続けたり、日常を送ったりしていた。
ライたちも橘モーターショップでの仕事に戻った。聖也は混乱が沈静化していない世界の防衛のための組織を結成しようと考えて、ライたちの前から旅立った。
「聖也くん、うまく組織を結成できているだろうか・・」
「聖也さんならやれてますよ。もしかしたら、仮面ライダーの誰かと会っているかも。」
ひろしが疑問を口にして、かなたが笑みをこぼして答えた。
「仮面ライダーのみんなも、それぞれ生活や戦いをしている。オレたちもこうしてオレたちなりの生活をして、そして・・」
ライが仮面ライダーや世界のことを考える。
そのとき、ライは近くで騒ぎが起こっているのを感じ取った。今でもクロスホッパーとしての姿と能力は、彼から失われていない。
「また怪人が出たってこと・・・!?」
「あぁ・・ハイパーショッカーは壊滅しても、怪人全部がいなくなったわけじゃない・・まだ生き残りがいるみたいだ・・・!」
まりが不安を覚えて、ライが答える。ライはかなたと頷き合って、店の前に出た。
「オレたちが怪人を倒して、みんなを助ける・・それが仮面ライダーであり、オレたちのやることだ。」
「うん。僕もこの道を選んだんだ。僕自身の意思で、仮面ライダーとして戦うことを・・」
ライとかなたが決意を口にして、街に向かって歩き出す。
「仮面ライダーのみんなも、それぞれの戦い、それぞれの生き方をしている・・共通しているのは、大切なものを守り、大事にしていることだ・・」
ライがクロスソウルを取り出して、仮面ライダーたちの思いや意思を思い返していった。
身勝手な敵ならば怪人も人間も関係なく突き止めて倒す。ノゾムの戦う意思は変わっていなかった。
(オレは身勝手な敵を倒していく・・そいつがバケモノだろうと人間だろうと、仮面ライダーというヤツだろうと・・・!)
揺るがない決意を胸に秘めて、ノゾムは歩き出す。
(ライ、お前もお前の大切にしているもののために戦っていく・・そうだろう・・・?)
ライたちのことを考えて、ノゾムは彼らのことを信じていた。
(たとえオレとお前が戦うことになっても・・オレもお前も、ためらいも後悔もしないだろう・・・)
ライが自分の戦いを貫いていくと思って、ノゾムも自分の戦いを続けるのだった。
光輝もライの決断を認めて受け入れていた。
(僕たち仮面ライダーとともに生きていくのが、君の願いなんだね。)
ライの意思を受け止めて、光輝は微笑んでいた。
(仮面ライダーとの出会いと共闘。それをなかったことにすることはできない。それは僕も君も、みんなも同じだ。)
ライの仮面ライダーに対する思いを、光輝も信じていた。
(何が正義で、戦うために何が必要なのか。ライくんも答えを出している。君も、仮面ライダーの1人だ。)
ライの強さも意思を信じて、ノゾムも戦いに戻った。本当の正義と自由を守るための戦いに。
歴代の仮面ライダーとの出会いと協力、戦いを思い出していくライ。自分自身の答えを出した彼は、仮面ライダーとしての戦いの道をこのまま突き進もうとしていた。
(オレは戦う・・オレの大切な人、大切な場所を守るために・・・)
心の中で決意を強くして、ライが微笑んで頷いた。
「ライ、のんびりしていると先に行くよー!」
かなたが呼びかけて、ライを手招きする。
「分かった!すぐに行く!」
ライが答えて、かなたと一緒に走り出した。彼らは自分たちが見出した、仮面ライダーとしての戦いと道を進んでいった。
仮面ライダー。
世界や人々を脅かす怪人に、素顔を隠して戦い続ける戦士。
長い歴史の中、様々な世界で、数多くの仮面ライダーが登場した。
世界や地球、自由や命を守るため。大切なものを守るため。
仮面ライダーの歴史に、新たな1ページが加えられた。
そして仮面ライダーの物語は、これからも続いていく。