仮面ライダークロス
第46話「総攻撃!ライダー対ハイパーショッカー」
本部に戻ったゾルたちが頭を下げた。彼らの前にある玉座に、司が腰を下ろした。
「まさか首領が既に来られていたとは・・・!」
「事前に来るとは言っていたが、クロスと戦っているところに出向くとまでは言ってなかったからな。」
ゾルが声を掛けると、司は落ち着いた態度で答える。
「だが、失敗を繰り返すのをいつまでも許すほど、オレは甘くはないぞ。」
「申し訳ありません・・我々もゾル大佐同様、全てを賭けて作戦に当たります・・!」
冷たく告げる司に、死神博士が覚悟を口にする。
「クロス、クラール、ルシファー、まずはこの3人のライダーを始末する・・!」
「他のライダーも倒し、世界への見せしめとしてくれる!」
地獄大使とブラック将軍も、ライたちへの憎悪をたぎらせる。
「少しは面白くなりそうか。ま、期待しないで待っているとしようか。」
司がため息まじりに言って、玉座にもたれた。ゾルたちは緊張を感じたまま、彼の前から退場した。
(1つに重なっているこの世界を、オレが支配する。別の世界のオレを倒そうとする世界もあるのだから、オレが変えなければならない・・)
世界を征服することに信念を燃やす司。彼は別の世界の自分が倒されたことを、強く懸念していた。
「ふえ!?仮面ライダーの1人が、ハイパーショッカーの首領だった!?」
ライから話を聞いて、ひろしが驚きの声を上げた。ライたちは司のことをひろしとまりに話した。
「アイツは破壊者だ。そのためにハイパーショッカーに身を置いて、ついには首領にまでなった・・・!」
「ディケイドはオメガに倒されている。でもディケイドの倒されていない世界も、今の世界の中に入ってるのかもしれない・・」
ライとかなたが司のことを口にする。彼らも様々な感情、複雑な気分を抱えていた。
「そのディケイドというライダーと話し合うことはできないの?同じ仮面ライダーなんだから、分かり合うことは・・」
まりが和解できると信じていた。
「それができない理由は3つ。1つは自分が正しいと思い上がっていること。他の人の言うことをまるで聞かない・・もう1つは破壊者であり、それを恥じようとせず、しかもその力を間違った使い方をしていることを、気にも留めない・・」
ライが彼女に司への不信感を告げる。
「それと、アイツは仮面ライダーを弄んでいる・・目的のためにどんなことでもやって、誰が傷つくことも気にしない・・・!」
「これだけ理由があれば、ライくんの怒りもごもっともか・・」
語っていくライに、聖也が納得する。
「しかもハイパーショッカーを動かしているなら、なおさらアイツをほっとくわけにはいかない・・!」
司の打倒という決意を強くするライ。彼がクロスソウルを手にして見つめる。
「他の仮面ライダーの力を使っている点では、オレたちも同じだ・・だけどオレたちは、ライダーのみなさんに感謝している・・みなさんがいなければ、オレは見境を失くしていたし、大切なものを守ることもできなかった・・・」
「私も正義に囚われて、大切なことを見失うところだった・・」
「僕もみんながいなかったら、ハイパーショッカーの言いなりになって、みんなを傷付けていたよ・・・」
それぞれの思いと仮面ライダーへの感謝を口にしていくライ、聖也、かなた。聖也とかなたもクラールソウル、ルシファーソウルを手にした。
「ライダーソウルは仮面ライダーの力、魂だ。その力を借りているオレたちは、その魂を共有している。」
「その魂を消さないためにも、オレたちは戦う。仮面ライダーの一員として・・」
「僕たちは戦う・・大事なものを守るために、ハイパーショッカーと・・・!」
ライ、聖也、かなたが決意を口にして頷き合う。彼らはハイパーショッカーとの全面対決を予感していた。
ライたちを倒すことを第一の目的として、ゾル、死神博士、地獄大使、ブラック将軍が橘モーターショップに向かっていた。イソギンジャガーの他、もう1人の怪人、ザンジオーも同行していた。
「今度は最初から、我々の真の姿を見せるとしよう・・」
「我らに出し惜しみする余裕はもうないからな・・・!」
「クロスは今度こそ、私が始末する・・!」
死神博士、地獄大使、ゾルがライたちへの敵意をふくらませていく。
「イソギンジャガー、ザンジオー、お前たちも失敗は許されんぞ・・!」
「はっ!お任せを、ブラック将軍!」
ブラック将軍の警告に、ザンジオーが答える。
「我々の力、見せつけてくれるぞ・・そして再び、栄光の道へ返り咲いてみせる・・!」
ブラック将軍が野心をむき出しにして、ゾルたちとともに前進していった。
ブラック将軍たちの接近に気付いて、ライが振り返る。
「ハイパーショッカーだ。それも幹部たち・・真っ直ぐこっちに向かってきている・・・!」
ライの言葉を聞いて、聖也たちも緊張を覚える。
「おやっさんとまりちゃんはここにいてくれ。オレたちがここに、アイツらを近づけさせない・・」
「ライ・・かなた、聖也くん、ムチャだと思ったらすぐに戻ってくるんだ。どんなことも、命あっての物種だからな。」
戦いに向かうライに、ひろしが呼びかける。
「もちろんです、おやっさん。まりちゃん、必ず3人そろって戻ってくるよ・・」
「ライくん・・うん・・・」
ライが答えて、まりが戸惑いを感じながら頷いた。
「幹部たちもディケイドも倒して、ハイパーショッカーを全滅させる・・!」
「僕たちが、平和な時間を取り戻すんだ・・!」
聖也とかなたが意思を口にして、ライが頷く。3人はブラック将軍たちを迎え撃つため、歩き出した。
橘モーターショップを出て少し離れたところで、ライたちはブラック将軍たちを目撃した。
「ハイパーショッカー・・また幹部全員で攻めてきたか・・!」
「クロス、クラール、ルシファー、今日が貴様らの最期の日だ!」
ライが鋭く言って、地獄大使が怒りをあらわにする。
「お前たちライダーの首、我々がもらい受ける・・・!」
「今こそ我らの真の姿を見せるとき!」
「とくと見よ、お前たち!我らの本領を!」
死神博士、地獄大使、ブラック将軍が言い放つ。
ゾルが帽子を外すと同時に、狼男に変身した。
死神博士たちもそれぞれ上着、マントを外した。すると彼らの姿がイカ、ヘビ、ヒルの怪人に変わった。
「狼男、イカデビル、ガラガランダ、ヒルカメレオン・・!」
「幹部4人全員、怪人としての正体を現したか・・!」
かなたと聖也が幹部たちの正体を見て呟く。死神博士、地獄大使、ブラック将軍はイカデビル、ガラガランダ、ヒルカメレオンとなった。
「お前たちを倒し、ハイパーショッカーの世界侵略を止める・・そしてアイツもオレたちが・・!」
狼男たちに言い放つライが、司への怒りも噛みしめていた。ライ、聖也、かなたがクロスドライバーとクロスソウル、クラールドライバーとクラールソウル、ルシファードライバーとルシファーソウルを取り出した。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
“クラール!”
“ライダーソウール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
彼の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。
“ルシファードライバー。”
“ルシファー!”
かなたがルシファードライバーを装着して、ルシファーソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウル。”
彼がルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。
「変身。」
かなたがルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。
“ダークチェンジ・ルシファー。”
紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとったかなた。ライ、聖也、かなたがクロス、クラール、ルシファーへの変身を果たした。
「全てを、オレが正す!」
「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」
「この悪魔の力で、みんなを守る!」
ライ、聖也、かなたが狼男たちに向かって言い放つ。
「行くぞ、仮面ライダー!」
「まとめて地獄に落ちるがいい!」
ヒルカメレオンとガラガランダも言い放って、狼男がライに向かって飛びかかる。
ライと狼男が組み付いて、聖也たちから離れていく。ライが足を出して、狼男を蹴り飛ばして引き離す。
「この前の仮も含め、貴様に引導を渡してくれるぞ・・!」
「お前たちのために、オレたちの居場所を壊されてたまるか・・!」
敵意をむき出しにする狼男に、ライが言い返す。
狼男がスピードを上げて、爪を振りかざす。クロスの装甲を切りつけられて、ライが突き飛ばされる。
「さすが幹部というだけの力はあるか・・だったら今度は・・!」
狼男たちの力を痛感してから、ライがクロスワイズソウルを取り出した。
“クロスワイズ!”
ライがクロスワイズソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼がクロスワイズソウルをクロスドライバーにセットした。
「大変身!」
ライがクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“大変身!クロスワーイズ!”
クロスの装甲に赤いラインが入って、マスクの形と目元も鋭くなった。ライはクロスワイズへと変身した。
狼男が再び飛びかかって、両手を振り下ろしてきた。ライが両手で狼男の腕を受け止めた。
「パワーはオレのほうが上回っているようだな・・!」
「おのれ、クロス・・力でもオレは負けはせんぞ・・!」
ライと狼男が力を振り絞って、押し込もうとする。ライが狼男を持ち上げて、そのまま投げ飛ばした。
狼男が空中で体勢を整えて、ライを鋭く睨みつける。
「おのれ・・イソギンジャガー!ザンジオー!」
狼男に呼ばれて、イソギンジャガーとザンジオーが駆けつけて、ライの挟み撃ちを企む。
「クロス、確実にお前の息の根を止める!」
「我ら2人も加勢させてもらうぞ!」
イソギンジャガーとザンジオーが言い放って、ライに向かって同時に走り出す。ライがジャンプしてかわして、イソギンジャガーが突撃を止められずに互いにぶつかってしまう。
着地したライがイソギンジャガーたちに振り返ってから、クロスドライバーの右レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“ライダースマッシュ・クロスワーイズ!”
ライのまとうクロスの装甲から光があふれ出す。ジャンプした彼の繰り出した右足の足裏にあるX字から、光が3つ放たれてイソギンジャガーの動きを封じた。
ライが繰り出した右足のキックが、イソギンジャガーに命中した。
「ギャアッ!」
イソギンジャガーが蹴り飛ばされて、大きなダメージを負った。倒れた彼が力を振り絞って立ち上がる。
「この程度でやられるオレではないぞ・・強化改造を施されたオレでは・・・!」
言いかけるイソギンジャガーの体に変化が起こる。より大きな体格になり、右手の爪も長く鋭くなっていた。
「イソギンジャガーも、サソリトカゲスのように進化した・・!?」
同じように変身したサソリトカゲスを思い出して、ライがイソギンジャガーを警戒する。
イソギンジャガーがうなり声を上げて、ライに近づいてくる。パワーアップを果たした彼だが、理性を失っていた。
イソギンジャガーが振りかざす爪をかわして、ライがパンチを繰り出した。体にパンチを当てられるも、イソギンジャガーはものともしていない。
「がはっ!」
クロスの装甲に爪が突き立てられて、ライがうめく。彼が突き飛ばされて、地面を大きく転がる。
「クロスワイズ以上のパワー・・もっと力を上げるしかない・・!」
イソギンジャガーのパワーを痛感するライ。立ち上がった彼が、カメンソウルを取り出した。
“カメン!”
“ライダーソウール!”
ライがカメンソウルをクロスドライバーにセットして、クロスタイフーンを回転させた。
“超変身・カメーン!”
ライの体を赤と緑のラインの入った装甲が包む。彼はカメンフォームへの変身を果たした。
イソギンジャガーがライに向かって爪を突き出す。ライはジャンプして爪をかわして、イソギンジャガーの後ろに回り込んだ。
ライが足を振りかざして、イソギンジャガーを蹴り飛ばす。ふらついた彼に対して、ライは続けてパンチとキックを叩き込んでいく。
ザンジオーがライを狙って、口から火炎を放つ。ライが腰に提げていたクロスカリバーを手にして、振りかざして火炎を切り裂いた。
「な、何っ!?」
火炎を破られたことに、ザンジオーが驚く。ライがクロスカリバーの左のスロットに、クロスソウルをセットした。
“クロスパワー!”
クロスカリバーの刀身にエネルギーが集まっていく。
「クロス・ライドカリバー!」
ライがクロスカリバーを振りかざして、光の刃を放つ。
「ぐあぁっ!」
光の刃に切られて、ザンジオーが絶叫を上げて倒れる。ライがイソギンジャガーに振り向いて、クロスタイフーンを回転させる。
“ライダースマッシュ・カメーン!”
全身からまばゆい光を発するライ。ライがジャンプして、右足のキックを繰り出す。
「カメンクロスキック!」
ライのキックがイソギンジャガーに命中した。押されたイソギンジャガーが踏みとどまるも、力尽きて前のめりに倒れて、爆発を起こした。
「クロス・・強化怪人でも通用しないだと・・!?」
狼男がライの強さを痛感して、緊張をふくらませていく。
「大勢の仮面ライダーの力を集めて、ヤツ自身の強さも上がっているからな。」
彼の背後から司が現れて声を掛けてきた。
「しゅ、首領!?・・まだ、オレはこれからだ!負けてはいない!」
「分かってる。ただの見物だ。オレのことは気にせず戦え。」
動揺をあらわにする狼男に、司が落ち着いた態度で呼びかける。
「ディケイド・・・!」
ライが司に鋭い視線を向ける。
「オレの相手がしたかったら、まずはこの2人を倒すことだな。」
司が挑発的な態度でライに告げる。怒りをふくらませるライの前に、狼男とザンジオーが立ちはだかった。
聖也とかなたの前にイカデビルたちが立ちはだかる。
「オレの誘導する隕石を食らうがいい!」
イカデビルが言い放って、意識を集中する。聖也たちに向かって、空から火の玉が落下してきた。
聖也とかなたが動いて、火の玉と爆発をかわしていく。火の玉の落下を阻止しようと、かなたがイカデビルに飛びかかる。
「させるか!」
ガラガランダが右手の鞭を振りかざして、かなたの首に巻きつけた。
「うぐっ!」
かなたが首を絞められてうめいて、ガラガランダに引っ張られていく。
「かなたくん!」
聖也がかなたに叫んで、イカデビルに向かっていく。イカデビルも触手を伸ばして、聖也の左腕に巻きつけた。
「まずは貴様から木っ端微塵に吹き飛ばしてくれる!」
「そうはいかない・・倒されるのはお前たちのほうだ!」
互いに言い放つイカデビルと聖也。
「ブレイガン!」
聖也がブレイガンソウルを使って、クラールブレイガンを手にして、イカデビルの触手を切り裂いた。
「おのれ!」
イカデビルが再び火の玉を誘導して落下させる。聖也は火の玉による爆発をかわしながら、ヴァイスソウルを取り出した。
“ヴァイス!”
聖也がヴァイスソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼はヴァイスソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。
“大革命・ヴァーイス!”
クラールの装甲とマスクが白くなった。聖也はヴァイスクラールへ変身した。
「強き正義で、悪に制裁を下す・・!」
聖也が腰に提げていたヴァイスブレイカーを手にして、イカデビルたちに言い放つ。
「我らは退くことは許されない・・お前たちの首をいただくまでは・・!」
「ならばそれは叶わないし、その必要もない・・オレたちがお前たちを滅ぼすからだ・・!」
野心をむき出しにするイカデビルに、聖也が落ち着いた態度で言い返す。
「くらえ、クラール!」
イカデビルが聖也に向けて、火の玉を落下させていく。
“マッハ!”
“アクセル!”
聖也がマッハソウルとアクセルソウルのスイッチを入れて、ヴァイスブレイカーにセットした。
“スピードヴァーイス!”
ヴァイスブレイカーから青い光があふれ出す。
「スピードブレイカー!」
聖也がヴァイスブレイカーを振りかざして、落下してきた火の玉を上空で爆発させた。
「お、おのれ!」
イカデビルがいら立ちを見せて、触手を伸ばした。しかし聖也の振りかざしたヴァイスブレイカーに、触手が切り裂かれた。
「強い・・速い・・・だが、力は私のほうが上だ!」
イカデビルがいきり立って、聖也に向かって飛びかかる。
「聖也さん、頭だ!イカデビルの頭に、隕石の誘導装置があるんだ!」
かなたがイカデビルの弱点を聖也に伝えた。
「分かった、かなたくん!」
“2号!”
“ギガス!”
聖也が答えて、2号ソウルとギガスソウルを取り出して、ヴァイスブレイカーにセットした。
“パワーヴァーイス!”
ヴァイスブレイカーから赤い光があふれ出して、刀身の1つから巨大な光の刃が伸びた。
「パワーブレイカー!」
聖也がヴァイスブレイカーを振り下ろす。巨大な光の刃が、イカデビルの頭部に直撃した。
「オレの頭が・・オレの誘導装置が・・!」
傷ついた頭を抱えて悲鳴を上げるイカデビル。誘導装置が制御できなくなった彼に向かって、火の玉が落下してきた。
「うぎゃあっ!」
イカデビルが爆発に巻き込まれて、絶叫を上げながら倒れた。
「イカデビル・・死神博士・・・!」
イカデビル、死神博士の最期を目の当たりにして、ガラガランダが怒りを噛みしめる。
「残るはお前たちだけだ。観念しないなら容赦なくお前たちを・・」
聖也がガラガランダに振り向いて忠告する。だが聖也はそこで、ヒルカメレオンの姿がないことに気付いた。
「いない!?もう1人はどこに行った・・!?」
聖也がヒルカメレオンの行方を追って、かなたとともに周りに視線を移していく。しかし2人ともヒルカメレオンを見つけることができない。
「うっ!」
そのとき、聖也が首を絞めつけられる感覚に襲われた。
「後ろにいる・・ヤツは姿を消せるのか・・・!」
うめく聖也の後ろに、ヒルカメレオンが現れた。ヒルカメレオンは周りの色に同化して姿を消すことができるのである。
「クラール、死神博士の仇、とらせてもらうぞ!」
「ブラック将軍、お前たちの悪だくみも今日限りだ・・!」
言い放つヒルカメレオンに、聖也が言い返す。彼がひじ打ちを当てて、ヒルカメレオンを怯ませる。
「おのれ、クラール・・・!」
ヒルカメレオンも聖也たちに対していら立ちをふくらませていた。
イソギンジャガーを倒したライに、狼男とザンジオーが立ちはだかる。
「ザンジオー、お前もパワーアップしろ!お前も全てを賭けて、クロスと戦うのだ!」
「お任せを!」
狼男の命令に答えて、ザンジオーが全身に力を込める。彼の姿がとげとげしいものへと変わっていく。
「ザンジオーもパワーアップした・・!?」
ライがザンジオーを見て警戒を強める。ザンジオーが唸り声を上げて、ライに向かっていく。
「お前たちが全力で襲い掛かってくるなら、オレも全力でお前たちを倒す・・!」
ライが鋭く言うと、オールソウルを取り出した。
“オール!”
彼はオールソウルのスイッチを入れて、クロスカリバーの左のスロットにセットした。
“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”
カメンフォームの緑と赤の横のラインに金のラインが加わり、装甲から神々しい輝きが発せられた。ライはオールフォームへの変身を果たした。
「オールフォームになっても、オレたちは負けはせん・・負けるわけにはいかんぞ!」
狼男が言い放って、ザンジオーとともにライに飛びかかる。ライが両手を握りしめて、同時にパンチを繰り出す。
「ぐふっ!」
狼男とザンジオーがパンチを受けて押し返される。
「それでもオレは、お前たちに負けるつもりはない・・・!」
“1号!”
ライが狼男たちに言うと、1号ソウルを取り出して、クロスカリバーの右のスロットにセットした。
“1号ライダーパワー!”
彼が構えたクロスカリバーの刀身に、エネルギーが集まっていく。
「1号・オールカリバー!」
ライが振りかざしたクロスカリバーが、狼男を切り裂いた。
「がはぁっ!・・まだだ・・まだ、オレは・・・!」
決定打を受けながらも、狼男はライを倒そうと歩を進める。
「ゾル大佐!」
ザンジオーが体内で生成したマグマを弾丸にして発射する。ライはジャンプして弾丸をかわして、爆発を背にして着地する。
ライがクロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加えた。
“ライダースマッシュ・オール!”
クロスの装甲からまばゆい光があふれ出して、ジャンプした彼の両足に集まっていく。
「オールクロスキック!」
ライが繰り出した両足のキックが、ザンジオーに命中した。その瞬間にザンジオーが爆発して吹き飛んだ。
「ザ、ザンジオーまでやられるとは・・・!」
狼男がライに脅威を感じて後ずさりする。
「たとえオレたちを倒しても、首領には勝てない・・首領は、全ての世界を束ねるお方なのだから・・・」
ライに忠告を言って、狼男が力尽きた。倒れた彼が大爆発を起こして消滅した。
「ゾルでもアイツの相手にならなかったな。」
司がため息まじりに呟いて、ライの前に出てきた。
「さっき言った通り、今度はオレが相手をしてやる。」
司がライに挑戦して、ライダーカードを手にした。
「変身。」
“Kamen ride,Decade.”
ライダーカードをディケイドライバーにセットして、司はディケイドに変身した。
「ディケイド・・・破壊者であり、ハイパーショッカーの首領であるお前は、オレが倒す!」
「オレは倒されはしない。オレがお前を倒す。他のライダーたちもな。」
ライが怒りを込めて、司が冷静に言いかける。オールフォームとなっているライが、司と戦おうとしていた。