仮面ライダークロス

第45話「ディケイド!世界と夢の破壊者」

 

 

 暗闇大使がライたちに倒されたことに、ゾルたちは危機感をふくらませていた。

「このままではハイパーショッカーの存続にも関わるぞ・・!」

「我々も自ら手を下さねばならんようだ・・」

 ゾルと死神博士が焦りを噛みしめる。

「暗闇博士がやられて、悔しがっていないか、地獄大使?」

「悔しがる?ヤツは失敗続きの愚か者だ。オレはヤツとは違うぞ。」

 ブラック将軍が挑発すると、地獄大使があざ笑ってきた。

「我々も悠長にしている場合ではないぞ。近いうちに首領がこちらに来るとの知らせがあった。」

「何っ!?首領が!?・・それはますますまずいことに・・・!」

 ブラック将軍が告げた言葉に、ゾルが驚きをあらわにする。

「これは醜い手柄の取り合いをしている場合ではなさそうだ・・次の強化怪人を使うぞ・・・!」

 死神博士が次の戦いに使う怪人について告げる。

「サソリトカゲス・・敗れはしたが、強化改造による大幅なパワーアップは成功している。同様の施しがされた怪人も、まだ他にいる。」

「ブラック将軍が持ってきた改造データがあればこそだ。」

 言いかけるブラック将軍に、死神博士が感謝した。

「イソギンジャガー!」

 ゾルの呼び出しを受けて怪人、イソギンジャガーが現れた。

「ついてこい、イソギンジャガー!ともにクロスたちを仕留めるぞ!」

「ははっ!」

 ゾルが命令を出して、イソギンジャガーが答えて彼に続いた。

「我々も行くぞ。総攻撃でクロスたちと仮面ライダーたちを一掃してくれる!」

 ブラック将軍が声を掛けて死神博士、地獄大使とともに出撃していった。

 

 ライダーソウルをそろえたと思っていたライたち。ライは自分が持っているライダーソウルを、机の上に並べた。

「ライダーソウル・・その1つ1つに、仮面ライダーの力が宿っている・・使えばそのライダーの姿になることができるし、技も能力も使えるようになる・・」

 ライダーソウルについて考えて、ライはこれまでの戦いと仮面ライダーとの出会いを思い出していく。

「クロスソードガン、そしてカメンフォームとオールフォームで使えるクロスカリバーに使うこともできる・・」

 彼はカメンソウルとオールソウルにも目を向ける。

「仮面ライダーの力を1つに集めたとき、どうなるか・・」

「あれ?ライダーソウル、まだ全部そろってないよ・・!」

 考え込んでいるライに向かって、かなたが声を掛けてきた。

「えっ?まだ他にライダーがいるのか?」

「うん。キバとWの間に出てきたライダー。仮面ライダーディケイドだよ・・」

 ライが疑問を投げかけて、かなたがディケイドのことを話す。

「ディケイド・・だと・・・!?

 するとライが顔をこわばらせて、感情を隠せなくなる。

「あっ・・ディケイドもライの嫌いなタイプのライダーだったね・・・」

「そうだ・・アイツは、自分が正しい、自分が1番だと思い上がっている1人だ・・それだけじゃない・・アイツはオレたちみたいに他の仮面ライダーの力を使うけど、そのことでのライダーへの感謝を感じていない・・ライダーを武器に変えるなんてマネまでして・・・!」

 かなたが気まずくなって、ライがディケイドへの怒りを感じていく。

「でもディケイドはオメガに倒されたはず・・・」

 かなたがディケイドのことを思い出して、ライも記憶を巡らせる。

 ディケイドは仮面ライダーオメガ、吉川(よしかわ)光輝(こうき)によって倒された。光輝自身がライたちにも告げていた。

“いろんな世界が1つになったことで、ディケイドのいる世界も合わさってしまったんだ・・・!”

“今回の世界の融合で、その均衡が崩れてしまったのか・・・!”

 ライたちは光輝の言葉をさらに思い出していた。

「光輝さんがディケイドを倒したのも事実だ。でも次元が歪んで世界が1つにあって、ディケイドのいる世界も合わさったとしたら・・」

「この世界のどこかに、ディケイドがいるかもしれない・・・」

 別世界のディケイドの存在を、ライもかなたも予感していた。

「ディケイドがいてもいなくても、ディケイドのライダーソウルも手に入れないといけないのは確実だね・・」

「ディケイドのライダーソウルか・・・」

 かなたの言葉を聞いて、ライが小さく頷いた。ディケイドとの出会いと対立を予感して、ライは激情を抱えていた。

 

 ライダーソウルのことを考えながら、聖也はハイパーショッカーの行方を追っていた。

(暗闇大使も倒れて、ハイパーショッカーの幹部たちがおとなしくしているはずがない。何かしらの動きをするはずだ・・ヤツらが作戦を実行する前に、アジトを暴いて叩く・・)

 ハイパーショッカー打倒を心に誓う聖也。しかしその怒りに囚われることなく、彼は冷静さを保っていた。

「クラール、滝聖也だったか。」

 そこへ声がかかって、聖也が振り返る。目の前にゾルたち幹部4人が現れて、聖也が目を見開く。

「ハイパーショッカーの幹部たち・・そろって外に出てくるとは・・!」

 聖也がゾルたちに警戒を向けて、構えを取る。

「もはや我々に猶予はない・・全身全霊を賭けて、お前たちを葬り去る!」

「まずは貴様だ!地獄に叩き落としてくれる!」

 死神博士と地獄大使が憎悪を込めて言い放つ。

「イソギンジャガー、やれ!」

 ブラック将軍が指示を出して、イソギンジャガーが飛び出してきた。

 イソギンジャガーが口から毒水を吐き出してきた。聖也が横に動いて、毒水が触れた地面から破裂が起こった。

 イソギンジャガーが続けて毒水を放つ。毒水をよけていく聖也だが、その先の倉庫に飛び込んでしまう。

「逃がすな、追え!」

 地獄大使が呼びかけて、イソギンジャガーが聖也を追って走り出した。

 

 イソギンジャガーとゾルたちの出現を、ライが感知した。

「出てきた・・怪人が暴れているみたいだ・・・!」

「また、怪人が・・!?

 ライの言葉を聞いて、かなたも緊張を覚える。

「近くにいるのは・・聖也さんだ・・!」

「何だって!?

 ライが聖也のことを口にして、かなたが驚きの声を上げる。

「とにかく行くぞ!聖也さん1人で相手できる戦力じゃない・・!」

 ライが聖也のところへ向かい、かなたも続いて外に飛び出した。

 

 倉庫の中に身をひそめた聖也。倉庫に入ってきたゾルたちに対して、聖也は反撃のチャンスを待っていた。

(まずは怪人を叩く。戦力は削いだ方が効率がよくなる・・)

 イソギンジャガーに狙いを絞った聖也。彼はクラークドライバーとクラールソウルを手にして、すぐにクラールになれるようにした。

「クロスとルシファーがこちらへ来ます!」

 そのとき、ゾルたちの前に戦闘員が駆けつけて報告をしてきた。

「ヤツらも来たか・・私が相手をしてやるぞ!」

「私も行くぞ、ブラック将軍!」

 ブラック将軍とゾルがライたちを迎え撃とうと、死神博士たちから離れる。

「ハイパーショッカー!」

 ライがかなたとともに来て、ゾルたちの姿を目撃した。

「ゾル大佐に死神博士、地獄大使、それにブラック将軍・・!」

「ショッカーとゲルショッカーの幹部4人がそろい踏みか・・!」

 かなたとライがゾルたちを見て、警戒を強める。

「オレがまず先陣を切る!かなたは聖也さんと合流してくれ!」

 ライがかなたに呼びかけて、クロスドライバーとクロスソウルを取り出した。

「ライ・・すぐに聖也さんと一緒に、ここに戻ってくるからね!」

 かなたがライを信じて、聖也を捜しに走り出す。ライがかなたを見届けてから、ゾルたちに視線を戻した。

“クロスドライバー!”

 ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。

“クロス!”

 音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。

“ライダーソウール!”

 ライは意識を集中して構えを取る。

「変身!」

 彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。

「全てを、オレが正す!」

 ライが言い放つと、ゾルたちに向かって走り出す。

「クロス、まずは貴様から始末してやるぞ!」

 イソギンジャガーがライを狙って毒水を吐く。ライはジャンプして毒水を飛び越えて、背後に回って打撃を繰り出す。

 ライのパンチとキックを受けて、イソギンジャガーが突き飛ばされて、その先のダンボールの山に突っ込んだ。

「おのれ、クロス・・こうなれば私が!」

 ゾルがいら立って、鞭を手にしてライ目がけて振りかざす。ライは素早く動いて鞭をかわして、ゾルにパンチを浴びせた。

「ぐっ!」

 ゾルが手を痛めて、持っていた鞭を落とす。

「ゾル!」

「クロス、これ以上好きにさせるか!」

 死神博士が声を上げて、地獄大使が怒鳴る。

「待て!」

 ゾルが死神博士たちを呼び止めて、ライを鋭くにらみつける。

「私をここまで追い込むとは・・ならば私も真の姿を見せねばならんな・・!」

 ゾルが笑みを浮かべて、被っていた帽子を外した。すると彼の姿が変わって、狼のような怪人になった。

「狼男・・ゾル大佐の正体・・・!」

 ゾルが変身した狼男を見て、ライが緊張をふくらませる。

「クロス、このオレとイソギンジャガーが貴様を始末してくれる!」

 狼男が言い放って、イソギンジャガーもライの前に出てきた。

「ライ!」

 かなたと聖也が合流して、ライのところへ戻ってきた。

「聖也さん!かなた!」

 ライが聖也たちを見て声を上げる。

「クラールとルシファーは、我々が倒す!」

「貴様がクロスを倒すというなら、見事倒してみせろ!」

 地獄大使とブラック将軍がゾルに向けて言い放つ。

「かなたくん、私たちも行くぞ!」

「はい、聖也さん!」

 かなたが聖也と声を掛け合って、ルシファードライバーとルシファーソウルを手にした。

“クラールドライバー!”

 聖也がクラールドライバーを装着して、クラールソウルを手にした。

“クラール!”

 聖也がクラールソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼はクラールソウルをクラールドライバーにセットした。

「変身!」

 聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クラール!”

 聖也の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。彼はクラールへの変身を果たした。

“ルシファードライバー。”

“ルシファー!”

 かなたがルシファードライバーを装着して、ルシファーソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウル。”

 彼がルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。

「変身。」

 かなたがルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。

“ダークチェンジ・ルシファー。”

 紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとって、かなたはルシファーに変身した。

「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」

「この悪魔の力で、みんなを守る!」

 聖也とかなたが言い放って、死神博士たちに向かっていく。

「クロス、貴様はオレによって倒されるのだ!」

 狼男が言い放って、イソギンジャガーとともにライに向かっていく。

「ぐっ!」

 2人につかまれて押し込まれて、ライが倉庫の外に投げ出された。

「ライくん!」

「貴様たちの相手は我々じゃぞ・・!」

 叫ぶ聖也に向かって、死神博士が言いかける。

「覚悟しろ、クラール、ルシファー!」

 地獄大使が鞭を振りかざして、聖也とかなたが回避する。

「お前たちを倒すのに時間を掛けるつもりはない・・すぐに終わらせる・・・!」

 聖也が鋭く言って、ヴァイスソウルを取り出した。

“ヴァイス!”

 彼がヴァイスソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 聖也がヴァイスソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。

“大革命・ヴァーイス!”

 クラールの装甲とマスクが白くなった。聖也はヴァイスクラールへ変身した。

「強き正義で、悪に制裁を下す・・!」

 聖也が腰に提げていたヴァイスブレイカーを手にして、死神博士たちに言い放つ。

「ヴァイスソウルを使ったか・・・!」

「エネルギーを消耗させて、形勢逆転する!」

 死神博士が警戒して、ブラック将軍が鞭から光線を放つ。聖也がヴァイスブレイカーを振りかざして、ビームをはじき飛ばした。

「くっ!・・私の力が及ばないだと・・!?

 ブラック将軍が攻撃を破られたことに驚く。

“バロン!”

“バース!”

 聖也がバロンソウル、バースソウルを手にしてスイッチを入れて、ヴァイスブレイカーのスロットにセットした。

“パワーヴァーイス!”

 ヴァイスブレイカーから赤い光があふれ出して、刀身の1つから巨大な光の刃が伸びた。

「パワーブレイカー!」

 聖也がヴァイスブレイカーを振り下ろして、光の刃を地面に叩きつけた。

「おわっ!」

 ブラック将軍たちが光の刃の衝突の衝撃に押されてうめく。

「諦めろ、ハイパーショッカー・・お前たち全員、私が倒す・・!」

 聖也がヴァイスブレイカーの切っ先を、死神大使たちに向けた。聖也の強さに脅威を感じて、死神博士たちは焦りをふくらませていた。

 

 狼男とイソギンジャガーの突撃で外に出されたライ。彼らは人や車がいなくなった通りの真ん中で、戦いを再開した。

「覚悟しろ、クロス!ここがお前の墓場だ!」

 イソギンジャガーが言い放って、ライ目がけて爪を振りかざす。

「うあっ!」

 クロスの装甲を切りつけられて、ライがうめく。イソギンジャガーが追撃を仕掛けるが、ライが出したキックを体に受けて押し返される。

 狼男がスピードを上げて、爪でライを攻撃していく。

「速い・・オレの知っている狼男の速さを大きく超えている・・!」

 ライが狼男の攻撃に毒づく。

「スピードにはスピード・・自己中心的なヤツが使っていても、力は使い方次第で正しく使える・・・!」

 彼がカブトソウルを取り出して、自分に言い聞かせるように呟く。

“カブト!”

 ライがカブトソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼がクロスドライバーにカブトソウルをセットして、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!カブトー!”

 クロスの装甲がカブト・ライダーフォームとそっくりになった。ライはカブトフォームへの変身を果たした。

「クロックアップ!」

 ライが一気にスピードを上げて、狼男と高速の攻防を繰り広げる。スピードはライのほうが上回っていた。

「ぐふっ!」

 ライの打撃を受けて、狼男が地面に叩きつけられた。

「お、おのれ・・!」

 立ち上がる狼男がいら立って、両手を前に出してロケット弾を発射する。しかしライの高速にかわされて、繰り出したキックに蹴り飛ばされる。

「大佐!・・クロス、よくも・・!」

 イソギンジャガーがいら立ちをふくらませて飛びかかる。ライが振り向いて、イソギンジャガーを迎え撃つ。

 そのとき、ライは空間の歪みを感じて、緊張を覚える。彼とイソギンジャガーの間に、オーロラのような次元のトンネルが現れた。

 そのトンネルから1人の男が現れた。

「お、お前は・・!?

 ライが男を見て驚きを覚える。イソギンジャガーも男を見て、警戒を強める。

「オレは門矢(かどや)(つかさ)。通りすがりの仮面ライダーだ・・覚えておけ・・!」

 男、司が言いかけて、1枚のカードを手にして掲げる。

「変身。」

 彼が装着しているベルト「ディケイドライバー」にセットした。

Kamen ride,Decade.”

 司の体をマゼンダのスーツと仮面が包み込んだ。彼は仮面ライダー、ディケイドに変身した。

「ディケイド!?ヤツまで出てくるとは!」

 イソギンジャガーが司を警戒して後ずさりする。

「カブトになってるくせに、何のんびりやってるんだ?」

「ディケイド・・お前・・・!」

 強気に振る舞う司に、ライが怒りを覚える。

「状況は大体分かっている。まずはアイツを倒す。」

 司がイソギンジャガーに向かって、ゆっくりと歩いていく。

「1人で相手するだと!?いい気になるなよ!」

 イソギンジャガーが不満を口にして、毒水を吐き出す。司は素早くかわして、イソギンジャガーにパンチとキックを連続で叩き込む。

 追い込まれるイソギンジャガーがふらつく。司がカード「ライダーカード」の1枚をディケイドライバーにセットした。

Final attack ride,decade.”

 ジャンプした司の前に、光んかーどが現れる。彼が光のカードを通って、イソギンジャガーをキックで蹴り飛ばした。

 イソギンジャガーもライたちの前から姿が見えなくなってしまった。

「これで邪魔がいなくなったか・・・」

 司が呟いてからライに振り返った。

「いろんな世界が次元の歪みで1つになっている。ディケイドが倒された世界だけじゃなく、ディケイドがまだ存在する世界も・・・!」

 1つの懸念を感じて、ライが両手を強く握りしめる。

「そういうことだ・・オメガに倒された世界も存在しているようだが、生憎だったな・・」

 司が光輝のことを思い出して言いかける。

「オレはお前にとっても気に入らないタイプのようだが、どうする?お前もオレを倒しに来るか?」

「倒す・・お前は世界の破壊者・・そして、夢の破壊者だ!」

 挑発する司に、ライが怒鳴る。彼が高速で動いて司を突き飛ばす。

「なるほど。伊達にライダーの力をここまで集めてはいないということか・・」

 踏みとどまった司がライダーカードを取り出した。

「だが、オレのほうがその力をうまく使える。」

Kamen ride,Kabuto.”

 司がカブトのライダーカードをディケイドライバーにセットした。ディケイドの姿がカブトそっくりに変わった。

 司もディケイドだけでなく、他の仮面ライダーに変身することができる。

「思い知るんだな。上には上があることを。」

 彼がもう1枚のライダーカードを、ディケイドライバーにセットした。

Attack ride,Clock up.”

 司も一気にスピードを上げて、ライと高速の攻防を繰り広げる。だがライの攻撃はかわされ、司に攻撃を当てられていく。

「うあっ!」

 ライが蹴り飛ばされて、壁に強く叩きつけられる。そのはずみで彼のクロスへの変身が解けた。

「これが証拠だ。お前よりもオレのほうが扱い慣れている。もっとも、本物のカブトのほうが慣れてはいるが・・」

 司がディケイドに戻って、ライに言いかける。

「お前に、仮面ライダーの全ての力を束ねることはできない。オレからディケイドの力を手に入れることもな。」

「オレはお前を許しはしない・・自分が正しいと思い上がるだけじゃなく、仮面ライダーを道具にするマネまでする・・・!」

 話を続ける司を、ライが鋭く睨みつける。

「光輝さんの言った通りだった・・お前は世界の破壊者・・そして、夢の破壊者だ!」

「破壊者・・確かにその通りだ。オレは何もかもぶち壊す。正義の味方を気取りつもりもない。むしろ悪人でも別に構わん。」

 怒りをぶつけるライに、司が自分への皮肉を口にする。

「どういうつもりだ!?・・何か企んでいるのか・・・!?

「そうだな・・わざわざ出てきたんだから、教えてもいいか・・・」

 問い詰めるライに、司がため息まじりに答えた。そのとき、ライに突き飛ばされた狼男が、2人の前に戻ってきた。

「あ、あなたは!?・・ここに来ていたとは・・・!」

 狼男が司を見て、驚きをあらわにする。狼男が司に頭を下げているのを見て、ライが目を疑う。

「何で、ハイパーショッカーの幹部がディケイドに!?・・・ま、まさか・・!?

「感付いた通りだ。ハイパーショッカーの頂点に立つ首領は、このオレだ。」

 驚きを隠せなくなるライに、司が自分の素性を告げた。司はハイパーショッカーの首領の座に身を置いていた。

「ただでさえ許せないヤツなのに、全ての世界を支配しようとしているハイパーショッカーを動かしているだと・・!?

「そうだ。オレがこの1つになっている世界をまとめ上げて、従わせる。そうすれば全て丸く収まる。」

 さらに問い詰めるライに、司が落ち着きを払って言いかける。彼の言葉を聞いて、ライが一気に怒りをふくらませた。

「どこまでふざければ気が済むんだ、お前は!?どれだけみんなの夢を壊せば・・!」

「そんなことを気にするのも面倒になった。オレは破壊者だからな。」

「ディケイド!」

 司の言動に、ライの怒りが頂点に達した。変身しないまま突っ込んできた彼を、司がジャンプで飛び越えた。

「お前のその怒り、次に会ったときに返り討ちにしてやる。」

 司がライに向かって告げると、現れたオーロラの中に狼男とともに消えた。

「逃げるな!」

 ライが司を追いかけるが、オーロラも消えていった。

「ディケイド・・・また、仮面ライダーを信じるみんなの夢を踏みにじるつもりなのか・・・!?

 司への怒りを噛みしめて、ライが体を震わせた。彼の姿が一瞬、クロスホッパーに変化していた。

 

 ヴァイスクラールとなった聖也に、死神博士たちは追い込まれていた。

「観念して倒されることだ。お前たちに勝機はない・・!」

 聖也が死神博士たちに向けて忠告を送る。

「こうなれば、我々もゾル大佐のように、変身して本領発揮するしかなさそうだぞ・・!」

 死神博士が打開の手を打とうとして、地獄大使とブラック将軍が頷いた。

「それは次の機会にしておけ。」

 そこへ声がかかって、死神博士たちの後ろにオーロラが現れた。

「その声は!?・・首領がこちらに来ていたのか!?

「撤退だ!ここは出直すぞ!」

 地獄大使が驚きをあらわにして、ブラック将軍が呼びかける。

「クラール、ルシファー、次に会うときがお前たちの最期だと思え・・!」

 死神博士が聖也たちに告げると、ブラック将軍たちとともにオーロラの中に消えていった。

「逃げられた・・でもあのオーロラみたいな空間、見た覚えが・・・!」

 かなたがオーロラを見て、記憶を巡らせる。そこへライがゆっくりと歩いて、彼らのところに戻ってきた。

「ライくん!」

“変身カイジョー。”

“ダークリリース。”

 聖也が声を上げて、かなたとともに変身を解いてからライと合流した。

「イソギンジャガーとゾル大佐は?・・そっちも逃げられたのか・・?」

 聖也が問いかけると、ライが怒りを思い返して再び体を震わせた。

「アイツが・・ディケイドが現れた・・・!」

「ディケイド!・・あのオーロラは、司さんが世界を渡るときのものだ・・・!」

 ライの言葉を聞いて、かなたが思い出す。

「だけど、何で死神博士たちまでアレを使って・・・!?

「アイツは・・ハイパーショッカーの首領になっていた・・・!」

 疑問を覚えるかなたに、ライが司のことを話した。

「なっ!?

 この言葉に聖也とかなたが驚きを隠せなくなる。

「本当なのか!?・・そのディケイドというライダーが、ハイパーショッカーの首領というのは・・」

「はい・・ヤツ自身がそう言っていたし、ゾル大佐の変身した狼男が、アイツに従っていた・・・!」

 問い詰める聖也に、ライが説明をしていく。

「そんな!?ディケイドだって仮面ライダーの1人なのに・・!」

「だがアイツは破壊者だ・・しかもアイツは、ハイパーショッカーを従えて、支配という形の破壊を行おうとしている・・!」

 動揺をふくらませるかなたに、ライが司への怒りを口にする。

「どちらにしろ、とんでもない敵が立ちはだかったということだな・・・」

「はい・・それも、オレたちが絶対に倒さなければならない敵が・・・!」

 聖也とライが言いかけて、かなたも息をのんだ。司がハイパーショッカーの首領として、ライたちの前に立ちはだかった。

 

 

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