仮面ライダークロス

第44話「ウィザード!希望をつかむ魔法」

 

 

 クロスホッパーへの変化と暴走を自力で押さえることが可能になったライ。落ち着きを取り戻した彼に、聖也たちは安らぎを感じていた。

「ライもみんなも無事に事が済んで、よかったよかった・・」

 ひろしがライたちを見て、安心を込めた笑みをこぼした。

「でも暴走しないかは、オレ次第です。オレが望んでしまったら、また暴走する可能性はあります。」

 ライが真剣な顔を浮かべて答える。また自分を見失う可能性があると、彼自身は考えていた。

「暴走というよりは、力に溺れるという感じになるでしょうが・・」

「ハァ・・まだ安心はできないってことか・・・」

 聖也も話を続けて、ひろしが肩を落とす。

「でもこれで、こっちの負担をあまり気にしないで、ハイパーショッカーとの戦いに臨めるんじゃないかな。」

「うん・・仮面ライダーのみなさんだけじゃない。オレたちだって、誰かのために戦えるんだ・・・!」

 かなたが言いかけて、ライが頷いた。彼らと聖也がクロスソウルとルシファーソウル、クラールソウルを手にして見つめて、決意を確かめた。

「みんな、戦うことも大事だと思うけど、無事でいることも考えて・・」

 まりが悲しい顔を浮かべて、ライたちを心配する。

「もちろんだ、まりちゃん。何があっても生きて帰ると、オレたちも思ってる・・」

 ライが決意を告げて、まりが微笑んだ。

「それにしても、ライダーソウルもずいぶん集まったね。」

 かなたがライダーソウルのことを思い出す。これまで多くの仮面ライダーと出会って、ライたちが託されたライダーソウルの数も多くなっていた。

「ライダーソウルを全て集めたら、何か起こるのだろうか?・・オレや世界に、何か大きなことが起こるんじゃ・・・」

「1人1人が強いライダーの力が1つにまとまるんだ。何も起こらないという可能性は低いだろう。その何かが些細なことなのか、私たちの手に負えないほどのことなのか・・」

 ライダーソウルを集めた先に対して、疑問と不安を感じていくライと聖也。

「このままソウルを集めちゃってもいいのかな・・?」

 かなたもライダーソウルのことを気にして、不安を浮かべていた。

「ここまで集めちゃったら、最後まで集めちゃってもいいんじゃないか?どうなるかも気になってきちゃうし・・」

 ひろしが気さくな態度で答えてきた。

「おやっさん、軽く言ってくれますね・・」

「ちょっとお気楽すぎたか・・けど全然よく分かんないことで無理やり答え出そうとしてもしても、難しいってもんだぞ・・」

 かなたが呆れるが、ひろしがさらに気さくに言う。

「それはそうですけど・・・いい結果になればいいけど・・・」

 ひろしの言動が楽観的に思えて、かなたが肩を落とした。

「オレはこのままライダーソウルを集めるつもりだ。それが、オレにソウルを託してくれたライダーのみんなの思いでもあると、オレは思う・・」

 ライが自分の考えを口にして、クロスソウルに目を向ける。

「乗りかかった船というヤツだ。私も最後まで付き合おう。」

「ハイパーショッカーとの決着もつけないといけないしね。」

 聖也とかなたがライの意思に共感する。

 そのとき、ライは遠くにいる人々の悲鳴を耳にした。

「聞こえる・・また何か起こっている・・・!」

「ライ・・・!」

 ライの呟きを聞いて、かなたが緊張を覚える。

(ライくんの体はやはり人間ではない。感覚は常人離れしたままだ。)

 聖也がライの状態を確かめて、深刻さを感じていた。

「オレ、行ってきます・・ライダーかハイパーショッカーが、そこにいるかもしれない・・・!」

 ライがひろしに言って、外へ飛び出した。

「ライ、待ってー!置いてかないでー!」

「私たちも行きます・・!」

 かなたと聖也もライを追って走り出した。

「ライくん・・・」

 ライたちのことを心配して、まりは自分の胸に手を当てていた。

 

 クロスレイダーに乗って、ライは先に街中に駆けつけた。人々が慌てて逃げ惑い、その奥には1体の怪人がいた。

「お前は“ファントム”のガーゴイル・・・!」

 ライが怪人、ガーゴイルを見て声を上げる。彼がクロスドライバーとクロスソウルを手にした。

“クロスドライバー!”

 ライがクロスドライバーを装着して、クロスソウルのスイッチを入れた。

“クロス!”

 音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。

“ライダーソウール!”

 そしてライはガーゴイルに向かって、クロスレイダーを走らせた。

「変身!」

 彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。

 クロスに変身したライが、クロスレイダーでガーゴイル目がけて突っ込んだ。ところがガーゴイルはライの頭上を飛び越えて、突撃をかわした。

 展開したライが、着地したガーゴイルに視線を向ける。

「クロスが出てきたッスね。どれだけ強くなったか知らないけど、地獄を見るのはお前のほうッス・・」

 ガーゴイルがライを見てあざ笑う。

「誰彼かまわずに人を襲って、それを喜んでいるのか・・そういうヤツを、オレは許しはしないぞ・・!」

 怒りを覚えたライが、再びクロスレイダーを走らせる。ガーゴイルが飛び上がって、彼を迎え撃つ。

 次の瞬間、ガーゴイルの体が石に変わって、クロスレイダーの前輪とぶつかり合った。

「おわっ!」

 ライがクロスレイダーから振り落とされて、地面に倒れる。石から元に戻ったガーゴイルが、彼を見下ろして笑みをこぼす。

「コイツは自分の体を石にして、頑丈になって攻撃を跳ね返すヤツだった・・!」

 立ち上がるライが、ガーゴイルの能力について呟く。

「いくらクロスでも、オレは倒せないッスよ・・へへへへ・・」

 ガーゴイルがあざ笑って、ライに近づいてくる。ライが攻撃を仕掛けるが、再び石になったガーゴイルにパンチもキックを跳ね返されてしまう。

「ホントに硬い体だ・・これはどうだ・・!」

 ライが焦りを噛みしめて、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加える。

“ライダースマッシュ・クロース!”

 ライのまとっているクロスの装甲から光があふれ出す。

「クロスライダーキック!」

 彼がジャンプして右足を前に出して、キックを繰り出した。

「うあっ!」

 しかしガーゴイルの体にキックも跳ね返されて、ライが突き飛ばされた。

「くっ・・キックもダメなのか・・・!」

「これでおしまいッスか?だったらさっさとやられてしまうッス・・・!」

 毒づくライに、ガーゴイルがさらにあざ笑う。彼は両手を動かして、ライを爪で切り裂こうとした。

「ちょーっと待ったー!」

 そこへ声がかかって、ライとガーゴイルが振り向いた。彼らの前に1人の男が現れた。

「ファントムも動いてると聞いてたからな。こっちに来てたか。」

 男がガーゴイルを見て呟く。

「あ、あなたは・・・!」

 ライが彼を見て、驚きを覚える。

「オレの名は仁藤(にとう)攻介(こうすけ)。またの名を、仮面ライダービーストだ。」

 男、攻介が名乗って、指輪「ビーストウィザードリング」を指にはめた。

「変・・身!」

“セット!オープン!”

 攻介がベルと「ビーストドライバー」にビーストウィザードリングをセットして回して、バックルを展開した。そこから彼の前に魔法陣が現れた。

“L・I・O・N、ライオン!”

 魔法陣をくぐった攻介が、金の装甲と仮面を身にまとった。彼は仮面ライダービーストに変身した。

「さぁ、ランチタイムだ!」

 攻介が高らかに言いかけて、ガーゴイルに向かっていく。

「気を付けてください、仁藤さん!このファントムは・・!」

「あぁ、みなまで言うな。そのくらい分かってるって。」

 注意をしようとしたライをなだめて、指輪「バッファウィザードリング」をはめた。

“バ・バ!バババ・バッファ!”

 彼が赤茶色のマント「バッファマント」を身にまとう。

「ビースト相手でもオレは負けないッスよ・・」

「そいつはどうかな・・!」

 あざ笑って石になるガーゴイルに、攻介が強気に言い返す。攻介が繰り出したパンチが、ガーゴイルの硬い体を押し込んだ。

「何っ!?

 元の体に戻ったガーゴイルが、驚きながら着地した。

「オレを押し込むパワーがあるだと・・・!?

「オレとバッファのパワーを甘く見るなっての。」

 声を荒げるガーゴイルに、攻介が言い返す。

「バッファマントを身に付けて、仁藤さんはパワーを上げたんだ・・ガーゴイルの頑丈な体を押し込めるほどに・・!」

 ライが攻介の戦いを見て呟く。攻介は指輪を使って召喚したマントで、様々な能力を発揮することができる。

「料理を前にして食べずにいると、イライラが増えちまう。いただかせてもらうぞ。」

 攻介がガーゴイルに言って、ビーストウィザードリングをビーストドライバーにセットした。

“キックストライク!”

 攻介が走り出して、ガーゴイルを蹴り上げる。彼は大きくジャンプして、足に魔力を込めたキックを繰り出した。

 体を石にするガーゴイルだが、攻介のキックで体をバラバラにされた。体から出た魔力の塊が、着地した攻介のビーストドライバーに入った。

「ごっつあん!」

 攻介が両手を合わせて一礼した。

「ビースト・・仁藤さん・・・あなたとここで会えるとは・・・」

 ライが声を掛けて、攻介に近づいていく。

“変身カイジョー。”

 ライが攻介とともに変身を解除した。

「ライくん!」

 ここで聖也がかなたとともに駆けつけて、ライと合流した。

「あ、あなたは、仁藤さん!仮面ライダービーストですー♪」

 かなたが攻介を見て目を輝かせる。

「あー、分かった分かった。みなまで言うな・・」

 攻介が呆れた素振りで、かなたをなだめる。彼は落ち着きを取り戻してから、ライに視線を戻す。

「お前がクロスだな。話は聞いてるぞ。」

 攻介がライに気さくに声を掛けてきた。

「ウィザードも他のとこでハイパーショッカーの企みを食い止めてる。他のライダーたちのように、みんなを守ってる。」

操真(そうま)晴人(はると)さんもですか!」

 攻介から晴人、仮面ライダーウィザードのことを聞いて、ライが笑みをこぼす。

「それで晴人からコイツを渡してくれって頼まれたものがあるんだ。」

 攻介がライにアイテムを差し出した。

「ライダーソウル・・ウィザードの・・・!」

 ウィザードのライダーソウル「ウィザードソウル」を手にして、ライが戸惑いを覚える。

「コイツと一緒に、晴人から伝言を預かってる。」

「晴人さんから?」

 攻介が続けて言って、かなたが声を上げる。

「お前らもみんなの希望、だってさ。アイツが誰かの希望になろうとしたように、オレもお前らも誰かの希望になれるってことだ。」

「オレたちも、みんなの希望・・・」

「絶望から人を救い、希望を与える。それが魔法使いだと、晴人は言ってたな・・」

「ですね・・でもその救世主は魔法使いだけじゃなく、仮面ライダーそのものも言えるんじゃないかと、オレは思います・・」

 攻介の言葉を受けて、ライが自分の考えを告げる。大切なものを守る仮面ライダーも、みんなの希望となっていると、彼は思っていた。

「みんながみんなに希望を与えられる、か・・悪くないな、そういうの。」

 攻介が笑みをこぼして、ライたちが頷いた。

「僕たちも、誰かの希望に・・・!」

「それは確かだと言える。少なくとも、私たちもライくんを支えてきた。もしそうでなかったら、ライくんは自分を取り戻せなかったかもしれない・・」

 戸惑いを感じるかなたと、希望を確信する聖也。

「オレたちだって、みんなの希望になれるんだ・・・!」

 ライが自信を持って、右手を強く握りしめた。

 そのとき、ライは近づいてくる足音を耳にして、緊張を覚える。

「どうしたんだ、ライくん?」

「近づいてくるヤツがいる・・それも、人間じゃない・・・!」

 聖也が声を掛けて、ライが警戒を強めて答える。

「またファントムかな・・それとも、ハイパーショッカー・・・!?

 かなたも緊張を覚えて、周りを見回す。彼らの前に1体の怪人が現れた。

「お前は、ショッカーのサソリトカゲス!」

 かなたが声を上げて、ライたちとともに構えを取る。

「ソーリー!クロス、貴様の息の根、このオレが止めてくれるぞ!他のライダーたちと一緒にな!」

 サソリトカゲスがライたちに向かって、高らかに言い放つ。

「オレをその他大勢扱いとは、いい度胸じゃないか。」

 攻介が笑みをこぼして前に出て、ビーストウィザードリングをビーストドライバーにセットした。

「変・・身!」

“L・I・O・N、ライオン!”

 攻介がビーストに変身して、サソリトカゲスを迎え撃つ。

「オレたちも行こう!」

 ライが呼びかけて、聖也とかなたが頷く。聖也たちがそれぞれクラールドライバーとクラールソウル、ルシファードライバーとルシファーソウルを取り出した。

“クロス!”

“ライダーソウール!”

 ライがクロスソウルをクロスドライバーにセットした。

「変身!」

 彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからあふれた光を浴びて、ライはクロスに変身した。

“クラールドライバー!”

 聖也がクラールドライバーを装着して、クラールソウルを手にした。

“クラール!”

 聖也がクラールソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼はクラールソウルをクラールドライバーにセットした。

「変身!」

 聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クラール!”

 聖也の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。彼はクラールへの変身を果たした。

“ルシファードライバー。”

“ルシファー!”

 かなたがルシファードライバーを装着して、ルシファーソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウル。”

 彼がルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。

「変身。」

 かなたがルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。

“ダークチェンジ・ルシファー。”

 紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとって、かなたはルシファーに変身した。

「全てを、オレが正す!」

「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」

「この悪魔の力で、みんなを守る!」

 ライ、聖也、かなたがサソリトカゲスに向かって言い放つ。

「バカめ・・貴様らの命はここで終わりだ!」

 サソリトカゲスが笑い声を上げてから、口から毒ガスを吐き出してきた。

「別れてアイツを挟み撃ちにするぞ!」

 攻介が呼びかけて、ライとともに左側からサソリトカゲスに向かっていく。聖也とかなたも右側から回っていく。

 サソリトカゲスがさらに毒ガスを吐き続ける。毒ガスが広がって、視界がさえぎられる。

「これじゃ前が見えない・・!」

「仮面とスーツで毒はさえぎれるが、周りは見えないぞ・・!」

 かなたと聖也が毒ガスで見えなくなることに毒づく。

「風で毒ガスを吹き飛ばすしかない・・そのためには・・・!」

 思い立ったライが、ウィザードソウルを手にした。

「晴人さん・・あなたの魔法、使わせていただきます・・!」

“ウィザード!”

“ライダーソウール!”

 彼がクロスドライバーにセットされているクロスソウルを、ウィザードソウルと入れ替えた。

「オレも、みんなの希望だ!」

 ライが言い放って、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!ウィザード!”

 彼はウィザードの姿と力を宿した「ウィザードフォーム」に変身した。

“ソードガン!”

 ライは続けてソードガンソウルを使って、クロスソードガンを呼び出した。彼の手にしたクロスソードガンの刀身に、緑色の風が取り巻く。

 「ウィザード・フレイムスタイル」とそっくりの姿のウィザードフォーム。基本的にはフレイムスタイルの能力を発揮するが、「ウォータースタイル」、「ハリケーンスタイル」、「ランドスタイル」の魔法を使うことも不可能ではない。

 ライはクロスソードガンを振りかざして、緑の風を放つ。風が毒ガスを吹き飛ばして、中からサソリトカゲスの姿が現れた。

「おのれ・・毒ガスの目くらましが・・!」

 毒ガスが破られたことに、サソリトカゲスがいら立つ。

「こうなれば真正面から仕留めてやるぞ!ソーリー!」

 サソリトカゲスがいきり立って、ライに飛びかかる。ライがクロスソ−ドガンで、サソリトカゲスの繰り出すハサミを受け止めていく。

「おのれ、クロスめ・・いつまでも逃げ回れると思うな!」

 サソリトカゲスがいら立ちをふくらませて、ハサミを突き出した。

「ぐっ!」

 ライがサソリトカゲスのハサミに首をつかまれて、息苦しさを覚える。

「ライ!」

「かなた、オレは大丈夫だ・・!」

 声を上げるかなたに言い返して、ライが地面を強く踏んだ。彼の足元の地面が盛り上がって、サソリトカゲスが体勢を崩した。

「おわっ!」

 サソリトカゲスがライからハサミを離して遠ざけられる。

「オレはお前たちのような敵を倒し、大切なものを守る!」

 言い放つライがクロスドライバーの右レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させる。

“ライダースマッシュ・ウィザード!”

 大きくジャンプしたライの前に、赤い光の魔法陣が現れる。彼はその魔法陣をくぐって、炎の魔力を宿したキックをサソリトカゲスに命中させた。

「ぐあぁっ!」

 サソリトカゲスが蹴り飛ばされて、大きなダメージを負った。

「おのれ、クロス・・だがこれで勝ったと思うな・・!」

 サソリトカゲスがうめきながら、全身に力を入れた。すると彼の体がうごめいて、変化が起こった。

「な、何だ!?何が起こっているんだ!?

 聖也も驚きと警戒をふくらませていく。サソリトカゲスはより鋭さのある姿になった。

「サソリトカゲスが、パワーアップした・・!?

 かなたもサソリトカゲスを見て、緊張を覚える。

「ソーリー!」

 サソリトカゲスがライたちに向かって毒ガスを放ってきた。

「同じ手は通じないぞ!また風で吹き飛ばす!」

 ライが再びクロスソードガンを手にして、緑の風で毒ガスを吹き飛ばした。次の瞬間、サソリトカゲスがハサミを掲げて、電撃を放ってきた。

「何っ!?

 驚くライが電撃を受けて、クロスの装甲から火花が散る。電撃が広がって、聖也たちにも直撃した。

「で、電気攻撃!?サソリトカゲス、あんな武器も持ってたなんて・・!?

「どういうことかは分かんないが、パワーアップして使えるようになったのか・・!?

 かなたが動揺を見せて、攻介も声を荒げる。

 サソリトカゲスがライ迫って、ハサミを振りかざす。回避しようとするライだが、クロスの装甲が切られて火花が散って、さらにクロスソードガンが彼の手からはじき飛ばされた。

「パワーもスピードも上がっている・・こうなったら・・!」

 サソリトカゲスの力を痛感して、ライがカメンソウルとオールソウルを取り出した。

“カメン!”

“ライダーソウール!”

 ライがカメンソウルをクロスドライバーにセットして、クロスタイフーンを回転させた。

“超変身・カメーン!”

 ライの体を赤と緑のラインの入った装甲が包む。彼はカメンフォームへの変身を果たした。

“オール!”

 ライは続けてオールソウルを手にして、スイッチを入れた。彼がクロスカリバーを引き抜いて、左のスロットにオールソウルをセットした。

“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”

 カメンフォームの緑と赤の横のラインに金のラインが加わり、装甲から神々しい輝きが発せられた。ライはオールフォームへの変身を果たした。

「全てを1つに、オレがつなげる・・!」

 ライが鋭く言って、クロスカリバーを構えてサソリトカゲスに向かっていく。

「ソーリー!」

 サソリトカゲスがハサミから電撃を放つが、ライはものともせずに前進を続ける。

 ライがクロスカリバーをサソリトカゲス目がけて振りかざす。サソリトカゲスがハサミを突き出すが、クロスカリバーにハサミを切りつけられる。

 サソリトカゲスが毒ガスを吐いて、ライから離れようとする。ライはクロスカリバーを振り下ろして、毒ガスを切るように吹き飛ばして、サソリトカゲスの体も切りつけた。

「ウィザードの魔法を、最大限まで引き出す・・!」

 ライがウィザードソウルを手にして、クロスカリバーの右のスロットにセットした。

「インフィニティーウィザードパワー!」

 彼がクロスカリバーを振り上げると、巨大な光の斧が現れた。

「ウィザード・オールカリバー!」

 ライがクロスカリバーを振りかざすと、光の斧が振り下ろされてサソリトカゲスを切り裂いた。

「ソーリー!」

 サソリトカゲスが絶叫を上げて、倒れて爆発した。

「やるな、アイツ。ウィザードの魔法をここまで使いこなすとはな・・」

 攻介がライの戦いを見て、感心をしていた。

「体に異変は感じない・・もう暴走することはなくなったんだろうか・・・」

 暴走しなかったことを実感して、ライが聖也たちのところへ歩いていく。

“変身カイジョー”

“ダークリリース。”

 彼らが変身を解いて、安心を感じていた。

「これで、ライダーソウルが全部そろったということだろうか・・?」

「今のところ、何も変化はないです・・後で何かあるのかもしれないですが・・・」

 聖也が疑問を投げかけて、ライがウィザードソウルを見つめて答える。

「何はともあれ、オレと晴人の力がお前らの力になったみたいだな。」

 攻介がライたちに気さくに言いかける。

「これでオレの言うことは特にないな。お前らのこと、信じてるからな。オレも晴人も。」

「はい。ありがとうございました、仁藤さん。晴人さんにもよろしく。」

 挨拶する攻介にライが感謝した。

「さて、戻る途中でどっかでメシにすっか・・」

 攻介は独り言を言いながら、ライたちの前から去っていった。

(ライダーソウルをそろえることが、希望になるのか、そうじゃないのか・・)

 攻介との交流と共闘も束の間、ライは再び緊張を感じていた。

(遅かれ早かれ、その答えが出るはずだ・・それでもオレは、みんなを守れるオレでいられるだろうか・・・)

 ライは心の中で、決意と不安を強く感じていた。彼のクロスとしての戦いは、また大きな変動が起ころうとしていた。

 

 

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