仮面ライダークロス

第43話「夢、切り札、運命 集約される強さ」

 

 

 それぞれ変身を果たしたライ、聖也、かなた、巧、一真、紘汰、始。彼らの前には暗闇大使、アークオルフェノク、デェムシュ、ダークローチが立ちはだかっていた。

「まずはアイツらを倒すのが先のようだ・・・!」

 雅人がため息まじりに呟いて、暗闇大使たちに目を向ける。

「オレはコイツらの味方ではないが、お前たちがオレに牙をむけるなら、容赦はしないぞ・・!」

 戒斗も暗闇大使たちに忠告を送る。

「オレももう後がない・・ヤツらの首を持ち帰り、オレは栄光の座に返り咲く!」

 暗闇大使が野心をむき出しにすると、ダークローチたちがライたちに向かって飛びかかる。

 ライが両手を握りしめて先陣を切る。突進してきたダークローチたちを、彼がパンチで打ちのめしていく。

「私たちも行くぞ、かなたくん!」

「はい!」

 聖也とかなたもライに加勢する。2人もダークローチにパンチとキックを叩き込んでいく。

「しぶといヤツらだ・・だがダークローチはまだまだいるぞ!」

 暗闇大使が笑い声を上げると、新たなダークローチが加勢してきた。

「まだいるのか、アイツら!?

「世界の破滅が起きていないのに、次々に現れるなんて・・何が起こっているんだ・・!?

 紘汰と一真がダークローチたちを見て、驚きの声を上げる。

「ヤツらは別の空間から呼び出されている。そこをつなぐ穴をヤツらが開けて、あの黒い虫を呼び寄せているんだ。」

 戒斗がダークローチたちについて語る。

「その穴が近くにあるということか・・・!」

 巧の呟きを聞いて、紘汰が感覚を研ぎ澄ませる。

「クラックだ!アイツらの後ろに穴が開けられている!」

 紘汰がジッパーが開いたようにできている穴「クラック」の位置を捉えて、暗闇大使たちの後方へ視線を向けた。

「あの穴をふさぐには、この怪人の大群を突破しなければならない・・!」

「これだけの数を全部倒そうとしても、逆に数が増えるばかりですよ・・!」

 聖也が状況の打破の方法を確認して、かなたが動揺する。

「だったらコイツで突破してやる!」

“クロスレイダー!”

 ライが言い放って、クロスレイダーソウルを取り出してスイッチを押した。駆けつけたクロスレイダーに乗って、ライがダークローチに向かっていく。

 クロスレイダーが大きくジャンプするが、ダークローチの大群を飛び越えるには至らない。ダークローチに叩かれて、ライがクロスレイダーから落ちて地面に倒れた。

「ライくん!」

「これじゃ袋叩きにされるぞ!」

 聖也が叫んで、紘汰が危機感を覚える。紘汰がロックシード「カチドキロックシード」を取り出した。

“カチドキ!”

“ロックオン!”

 カチドキロックシードを起動して、紘汰が戦極ドライバーにセットしてカッティングブレードを倒した。

“カチドキアームズ!いざ出陣!エイエイオー!”

 紘汰の体をオレンジの鎧が包み込んだ。彼は鎧武の強化形態「カチドキアームズ」となった。

“火縄大橙DJ銃!

 紘汰が銃「火縄大橙DJ銃」を手にして、DJテーブルをスクラッチする。

「ライくん、伏せろ!」

 紘汰が呼びかけて、ライが体勢を低くした。紘汰が火縄大橙DJ銃を構えて、ビームを連射してダークローチたちに命中させた。

「君は真っ直ぐにクラックに向かえ!オレたちが援護する!」

 紘汰がライに呼びかけて、火縄大橙DJ銃の銃口をダークローチたちに向ける。

「オレもとことん戦ってやるぞ・・!」

「それはオレも同じだ・・!」

 一真がブレイラウザーを構えて走り出して、巧も続く。紘汰が射撃を続ける中、巧たちもダークローチたちを打ち倒していく。

 その間にライがクロスレイダーを起こして、再び走り出す。

「1人で突っ込めば片が付くと思い上がる・・やはり下等なヤツらはその程度の企みしかできんか・・!」

 デェムシュがライを見下ろしてあざ笑う。ダークローチをかき分けてクラックに向かうライを狙って、デェムシュが手を出して赤い光を放つ。

「ぐあっ!」

 ライが光を当てられて、再びクロスレイダーから振り落とされる。

「ライ!」

「私も行かせてもらうぞ!」

 かなたが叫んで、聖也がヴァイスソウルを取り出した。

“ヴァイス!”

 聖也がヴァイスソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼はヴァイスソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。

“大革命・ヴァーイス!”

 クラールの装甲とマスクが白くなった。聖也はヴァイスクラールへ変身した。

「強き正義で、悪に制裁を下す・・!」

 聖也が鋭く言って、かなたとともに走り出す。

「猿どもが無意味な特攻を仕掛けてくるか・・返り討ちにしてくれる!」

 デェムシュがあざ笑って、聖也たちの前に立ちはだかった。

「ならば私はクロスを倒すとしよう。」

 アークオルフェノクが浮遊して、立ち上がったライの前に降り立った。

「アークオルフェノク・・!」

 ライが毒づいて、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転させる。

“ライダースマッシュ・クロース!”

 右足にエネルギーを集めて、ライが大きくジャンプした。

「クロスライダーキック!」

 ライが右足を出してキックを繰り出す。アークオルフェノクが左手を出して、光を放出する。

 ライがキックを押し返されて、地面に叩きつけられる。

「やっぱりオルフェノクの王・・とんでもない力だ・・・!」

 ライが激痛に襲われてうめく。アークオルフェノクが再び光を放って、ライがとっさに横に転がってかわした。

「アークオルフェノクに対抗するには、オールソウルを使うしかない・・しかし、暴走が起きてしまったら、あの穴をふさぐどころじゃなくなる・・!」

 オールフォームになることを躊躇して、ライが焦りをふくらませていく。

「だったらコイツを使え!」

 そのとき、巧がライに向かって1つのアイテムを放った。ライが受け取ったのは、ファイズのライダーソウル「ファイズソウル」だった。

「お前なら、そいつを使えるんだろ?」

「巧さん・・はい!」

 巧に言われて、ライが大きく頷いた。

“ファイズ!”

 ライがファイズソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼がクロスドライバーにファイズソウルをセットして、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!ファーイズ!”

 クロスの装甲がファイズそっくりになった。ライはファイズの姿と力を宿した「ファイズフォーム」になった。

「バカめ!ファイズたちは元々、オルフェノクの王であるアークオルフェノクを守るために存在している!ファイズになったところで、勝ち目がないことに変わりはないぞ!」

 暗闇大使がライを見てあざ笑う。

「だけどファイズだけの、巧さんだけの力じゃない!」

 ライが言い放って、右手を振ってアークオルフェノクに向かっていく。アークオルフェノクが放った光の球を、ライがジャンプしてかわす。

 アークオルフェノクがライを狙って、再び光の球を放つ。ライがパンチを繰り出して、光の球をはじき飛ばした。

 だがアークオルフェノクが続けて右手を出して、ライを突き飛ばす。ライは空中で体勢を整えて着地する。

「時間をかけていられない・・これで決めてやる・・!」

 ライが呟いて、クロスドライバーの右レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“ライダースマッシュ・ファーイズ!”

 ライがジャンプして右足を出して、光の円錐を放ってアークオルフェノクに狙いを定める。

「クロスクリムゾンスマッシュ!」

 ライが光の円錐を通って、アークオルフェノクにキックを叩き込んだ。アークオルフェノクが全身に光を発して、キックに耐えた。

 激突の衝撃でライとアークオルフェノクが押されて、互いに引き離される。

「ライくん!・・私たちもこの男を倒して、加勢に向かいたいが・・・!」

 聖也がデェムシュを見て焦りを感じていく。

「オレを倒す?下等な生物は力も差も分からんとはな!」

 デェムシュがあざ笑って、体を回転して聖也たちに突っ込む。竜巻のようなデェムシュの攻撃に、聖也とかなたが翻弄される。

「この力を押し返すだけの強さがあれば・・・!」

 かなたも焦りをふくらませて、右手を強く握りしめる。

「クラール、これを使うんだ!」

「オレたちの力、お前たちも使ってくれ!」

 そのとき、一真と紘汰が聖也とかなたに呼びかけてきた。一真たちが聖也たちに投げて渡したのは、ライダーソウル「ブレイドソウル」と「鎧武ソウル」である。

「剣崎さん、紘汰さん・・!」

「ありがとうございます!」

 聖也とかなたが一真と紘汰に感謝した。

“ブレイド!”

 聖也がブレイドソウルのスイッチを入れる。

“ライダーソウール!”

 彼がクロスドライバーにブレイドソウルをセットして、クロスドライバーの左レバーを上に上げてクロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!ブレーイド!”

 クラールの装甲がブレイドと同じになった。聖也は「ブレイドフォーム」への変身を果たした。

“鎧武!”

“ライダーソウル。”

 かなたも鎧武ソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーにセットした。

“ダークチェンジ・鎧武。”

 ルシファーの姿が、鎧武・オレンジアームズに変わった。かなたは「鎧武フォーム」に変身した。

「ここからは、オレたちのステージだ!」

 かなたがデェムシュに向かって高らかに言い放つ。

「ヤツらと同じ力を得れば勝てると思わんことだ・・!」

 デェムシュがいら立ちを見せて、聖也とかなたを狙って火の球を連射する。聖也たちが左右に動いて、火の球をかいくぐる。

“ブレイガン!”

“デスセイバー。”

 聖也とかなたがブレイガンソウルとデスセイバーソウルを使って、クラールブレイガンとルシファーデスセイバーを手にした。

「剣のライダーと鎧武者のライダー・・!」

「2人の力とこの剣で、お前たちを倒し、運命も切り開く!」

 聖也とかなたが言い放って、デェムシュに飛びかかる。

「下等な猿どもが、不届き千万!」

 デェムシュが言い放って、再び体を回転させる。

「ぐっ!」

 クラールブレイガン、ルシファーデスセイバーで竜巻を受け止める聖也とかなただが、竜巻の力に押されて突き飛ばされる。

「ブレイドと鎧武の力を借りてもダメなのか・・・!?

「全く通じていないわけではない・・威力を上げれば打ち勝てるはずだ・・!」

 息をのむかなたに、聖也が告げる。

「必殺剣・・必殺技ですね・・・!」

 かなたが笑みをこぼして、聖也と頷き合う。

 そのとき、聖也とかなたの手元から光が発せられた。光はライダーソウル「カイザソウル」と「ギャレンソウル」と「バロンソウル」、「デルタソウル」と「カリスソウル」と「龍玄(りゅうげん)ソウル」に変わった。

「カイザとデルタ、カリスとギャレン、バロンと龍玄・・・!」

「他のライダーも、力を貸してくれるのか・・・!」

 かなたと聖也が始、バロン、雅人に目を向ける。

「オレはお前たちに味方するつもりはない。だがアイツらのいいようにされるのも我慢ならない・・」

 雅人が自分の考えを告げて、暗闇大使たちに目を向ける。

「我慢ならないという気持ちは、私たちも同じですよ・・!」

「まずはハイパーショッカーを倒す・・話はそれからです・・!」

 聖也とかなたが自分たちの意思を口にする。

“ギャレン!”

“ガンモード!”

 聖也がギャレンソウルのスイッチを入れて、ガンモードにしたクラールブレイガンの中心部にセットした。

“ライダーシュート・ギャレーン!”

 彼がジャンプしてクラールブレイガンを構える。クラールブレイガンの銃口に赤い炎のエネルギーが集まる。

「ブレイドバーニングショット!」

 聖也がクラールブレイガンから炎の球を発射した。

「オレに炎で勝てると思うな!」

 デェムシュが聖也をあざ笑って、竜巻の勢いを強める。だが炎の球は竜巻を突き抜けて、デェムシュに命中した。

「何っ!?バカな!?

 射撃を受けたことに、デェムシュが驚きを覚える。

「ライダーの力が合わされば、どんなに強い力でも押し返すことができる・・!」

 聖也が言いかけて、かなたに目を向けた。

「はい・・僕だって、やってやりますよ・・!」

“龍玄!”

 かなたが意気込みを見せて、龍玄ソウルのスイッチを入れてルシファーデスセイバーのスロットにセットした。

“龍玄・デスパワー。”

 紫のエネルギーがルシファーデスセイバーに集まっていく。

「無頼ドラゴンショット!」

 かなたがルシファーデスセイバーを振りかざして、ブドウの粒のようなエネルギー弾を飛ばす。

「ぐっ!ぐおぉっ!」

 デェムシュが体を連射されてうめく。1発1発に重みのある射撃を受けて、彼は大きなダメージを負ってその場に膝を付いた。

「おのれ・・下等生物の分際で!」

 怒りをあらわにしたデェムシュが、全身から炎のようなオーラを発する。

「もっと力を出さないといけないのか・・!」

「ならばヴァイスの力を使う・・!」

 かなたが焦りをふくらませて、聖也がヴァイスソウルを手にした。

“ヴァイス!”

 聖也がヴァイスソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼はヴァイスソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。

“大革命・ヴァーイス!”

 クラールの装甲とマスクが白くなった。聖也はヴァイスクラールへ変身した。

「強き正義で、悪に制裁を下す・・!」

 聖也が腰に提げていたヴァイスブレイカーを手にして、切っ先をデェムシュに向けた。

「猿が正義とは、片腹痛いわ!」

 デェムシュが怒鳴って、体の炎を放出する。聖也がヴァイスブレイカーを振りかざして、炎を切り裂いた。

「貴様のような独りよがりな破壊者では、私たちの強さを壊すことは不可能だ!」

 聖也がデェムシュに言い放って、カイザソウルとバロンソウルを手にした。

“カイザ!”

“バロン!”

 彼がカイザソウルとバロンソウルを、ヴァイスブレイカーのスロットにセットした。

“パワーヴァーイス!”

 ヴァイスブレイカーから赤い光があふれ出して、刀身の1つから巨大な光の刃が伸びた。

「パワーブレイカー!」

 聖也がデェムシュ目がけてヴァイスブレイカーを振り下ろす。デェムシュが炎を放出して、ヴァイスブレイカーを受け止める。

「貴様らごときに敗れるオレではないぞ!」

 デェムシュが言い放って、炎でヴァイスブレイカーを押し返そうとする。

「いや、僕たちはお前を倒す!」

“カリス!”

 かなたが言い返して、カリスソウルを手にした。

“カリス・デスパワー。”

 彼がカリスソウルをセットしたルシファーデスセイバーを構える。

「無頼スピニングウェーブ!」

 かなたが駆け出して、デェムシュに向かってルシファーデスセイバーを振りかざした。

「ぐおぉっ!」

 かなたに体を切りつけられて、デェムシュが激痛に襲われてふらつく。彼から出ていた炎も、かなたの一閃で起きた風でかき消された。

「押し切る!」

 聖也が力を込めて、ヴァイスブレイカーを押し込む。巨大な刃がデェムシュの体を切りつけた。

「がはぁっ!・・このオレが・・このオレが負けるはずがない・・!」

 デェムシュが絶叫を上げて、倒れて爆発を起こした。

「くっ・・デェムシュが倒されたか・・だがダークローチはまだまだ出てくるぞ!」

 暗闇大使が毒づくが、ダークローチの出てくるクラックを見て笑みをこぼす。

「さらに数が増えた・・これじゃ突破するには時間がかかる・・・!」

 聖也がダークローチの大群を見て、焦りを感じていく。

「オレたちも加勢するぞ!」

 一真が聖也たちに声を掛けて巧、紘汰、始とともに前に出る。

「オレたちも全力を出す!」

「この世界を守るために!」

 始と紘汰も聖也たちに向けて言いかける。

Standing by.”

 巧がファイズブラスターに「555」と入力して、ファイズフォンをセットした。

Awakening.”

 彼がブラスターフォームへの変身を果たした。

Absorb queen.Evolution king.”

 一真が左腕に装備しているアイテム「ラウズアブソーバー」にクイーンとキングのラウズカードをリードさせる。スペードのラウズカード13枚の力が宿って、ブレイドの装甲が金色をした神々しいものに変わった。

 一真はブレイドの最強形態「キングフォーム」に変身した。

“フルーツバスケット!”

 紘汰が極ロックシードを戦極ドライバーにセットして、カチドキロックシードと接続する。

“ロックオープン!”

 彼が極ロックシードを回して、カチドキロックシードとともに展開した。

“極アームズ!大・大・大・大・大将軍!”

 カチドキアームズがはじけ飛んで、銀色の装甲が現れた。紘汰は鎧武の最強形態「極アームズ」になった。

Evolution.”

 始がハートのキングのラウズカードをカリスラウザーに通す。カリスの装甲に金色が混じって、彼は最強形態「ワイルドカリス」になった。

「ライくん、君も全力を出すんだ!」

「もしも自分を見失ってしまったら、オレたちが全力で目を覚まさせるよ!」

 一真と紘汰がライに向かって呼びかける。

「オレは人間として今を生きている・・そのために剣崎は人間の体でなくなることを選んだが、アンデッドの運命に耐え、人の心を持ち続けている・・!」

「お前ももう、答えを見つけたんだろう・・!」

 始と巧もライに向けて呼びかける。後ろで見守っているまりを見て、ライは自分の出した答えを確かめた。

「オレはオレだ・・オレ自身がどうなろうと、それは変わらない・・自分でも抑えられない爆弾みたいな力があって、どうしても切り捨てられないというなら・・・!」

 ライが決意を口にして、カメンソウルとオールソウルを取り出した。

「このままオレが抱えていく・・また暴れようとしたら、オレが無理やり抑え込む・・自分の命を絶っても、とも言いたいけど、そうしたら悲しむ人がいるから、それもしない・・!」

“カメン!”

 彼がカメンソウルのスイッチを入れる。

「怪人の力を止めて、その上で生きて、まりちゃんたちのところへ帰るんだ!」

“ライダーソウール!”

 ライが言い放つと、カメンソウルをクロスドライバーにセットしてクロスタイフーンを回転させた。

“超変身・カメーン!”

 ライの体を赤と緑のラインの入った装甲が包む。彼はカメンフォームへの変身を果たした。

“オール!”

 ライは続けてオールソウルを手にして、スイッチを入れた。彼がクロスカリバーを引き抜いて、左のスロットにオールソウルをセットした。

“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”

 カメンフォームの緑と赤の横のラインに金のラインが加わり、装甲から神々しい輝きが発せられた。ライはオールフォームへの変身を果たした。

「全てを1つに、オレがつなげる・・!」

 ライがアークオルフェノクたちに向かって、鋭く告げる。

(ライくん・・暴走してしまうのを覚悟で、オールフォームになった・・・!)

 自分の命や心を賭けて戦おうとするライを見つめて、まりも彼の戦いを見届けることを心に決めた。

「オレたちが援護する!お前は穴をふさげ!」

「はいっ!」

 巧が呼びかけて、ライが答えてクラックに向かって走り出す。だがその前にアークオルフェノクが立ちふさがる。

「貴様は私の手で排除する。」

 アークオルフェノクが手から光線を放つ。ライが光線を受けて押される。

「ぐっ・・・!」

 踏みとどまるライだが、強い痛みに襲われてうめく。アークオルフェノクの攻撃によるダメージだけでなく、クロスホッパーへの暴走の苦痛が彼の体を駆け巡っていた。

「ライ!」

「ライくん、大丈夫か!?

 かなたが叫んで、聖也が呼びかける。

「かなた、聖也さん、オレは大丈夫だ・・このくらいのことで、へこたれてたまるか・・!」

 ライは痛みに耐えて、クロスカリバーを構えた。彼の左右にダークローチが迫ってきた。

「お前たちの相手はオレだぞ!」

 巧が呼びかけて、ファイズブラスターに「103」と入力して、「ENTER」を押した。

Blaster mode.”

 彼がファイズブラスターを変形させて、「フォトンバスターモード」にして構えて、「ENTER」を押す。

Exceed charge.”

 銃口にエネルギーを集めたファイズブラスターを発射する巧。ファイズブラスターからエネルギー弾が放たれて、前方のダークローチたちを奥まで押し込んで吹き飛ばした。

 二手に分かれたダークローチたちを見て、巧と一真たちが頷いた。

Blade mode.”

 巧が「143」と「ENTER」を押して、ファイズブラスターを剣状の「フォトンブレイカーモード」に変形した。

「行くぞ、剣崎!」

「あぁ!」

 始と剣崎が声を掛け合って、武器「ワイルドスラッシャー」と剣「キングラウザー」を手にする。

「オレたちで、アイツらと一緒に活路を切り開く!」

“火縄大橙DJ銃!

 紘汰も言い放って、火縄大橙DJ銃を呼び出して「大剣モード」にした。

Exceed charge.”

Spade ten,jack,queen,king,ace.Royal straight flush.”

Wild.”

“極オーレ!”

 巧、一真、始、紘汰がファイズブラスター、キングラウザー、組み合わせて弓型にしたワイルドスラッシャー、火縄大橙DJ銃を振りかざした。彼らが繰り出した斬撃が、ダークローチの多くを一掃した。

「みなさん・・オレもやってやる・・!」

 ライが頷いて、ファイズソウルを取り出してクロスカリバーの右のスロットにセットした。

“ブラスターファイズパワー!”

 切っ先にエネルギーの集まるクロスカリバーを、ライが前に構える。彼の後ろに、ファイズブラスターを構えるファイズ・ブラスターフォームの幻影が現れる。

「ファイズ・オールカリバー!」

 クロスカリバーからエネルギー弾が放たれる。エネルギー弾が飛んでいったのは、アークオルフェノクではなく、ダークローチが出てくるクラックだった。

 クラックが撃たれて、次元がふさがれてダークローチが出てくることがなくなった。

「しまった!」

「これでダークローチが出てこれなくなった!」

 暗闇大使が驚いて、一真が頷いた。

「後はこの2人を倒すだけだ!」

「ライくん、このソウルは君に託す!」

 かなたと聖也が鎧武ソウルとブレイドソウルを投げて、ライが受け取った。

「ありがとう、かなた、聖也さん・・剣崎さん、紘汰さん!」

 ライが感謝して、アークオルフェノクに視線を戻した。

“ブレイド!”

 彼がブレイドソウルのスイッチを入れて、クロスカリバーにセットされているファイズソウルと入れ替えた。

“キングブレイドパワー!”

 全身から光を発するライがクロスカリバーを構える。彼の前には5枚の光のカードが現れた。

「ブレイド・オールカリバー!」

 後ろのブレイド・キングフォームの幻影とともに、ライが光のカードをくぐってからクロスカリバーを振りかざした。アークオルフェノクがエネルギーを集めた右手を出して、クロスカリバーとぶつけ合う。

「オレは全てを正す・・オレの中にある怪人が間違いを犯すなら、それさえも押さえつけて、その力も罪も全部背負ってやる!」

 ライが決意を告げて、クロスカリバーにさらに力を込める。アークオルフェノクが耐え切れずに彼の一閃を体に受けた。

「オレは怪人になったことを受け入れる・・その上でオレは、人間として生きていく・・人間として、お前たちと戦う!」

 ライが言い放って、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加えた。

“ライダースマッシュ・オール!”

 クロスの装甲からまばゆい光があふれ出して、ジャンプした彼の両足に集まっていく。

「オールクロスキック!」

 ライが繰り出したキックが、体勢の整わないアークオルフェノクの体に命中した。絶叫を上げるアークオルフェノクが、爆発を起こして消滅した。

「バカな!?・・アークオルフェノクまでもが・・・!」

 アークオルフェノクたちがやられて、暗闇大使が危機感をふくらませる。

「だがもはや私に撤退の選択肢はない・・貴様らを始末しない限り!」

 暗闇大使がいきり立って、ライに向かって走り出す。

「これで終わりだ、暗闇大使・・!」

“鎧武!”

 ライが鋭く言って、鎧武ソウルをクロスカリバーにセットした。

“極鎧武カリバー!”

 刀身に光を発するクロスカリバーをライが構えて、背後に現れた鎧武・極アームズの幻影も同様に火縄大橙DJ銃を構える。

「鎧武・オールカリバー!」

 ライがクロスカリバーを振りかざして、光の刃を飛ばした。

「ぐあぁっ!」

 暗闇大使が刃に斬りつけられて、絶叫を上げた。

「うぐっ・・これで勝ったと思うな、仮面ライダーども・・暗闇死すとも、悪は滅びぬ・・貴様らも人間どもも、支配の闇から抜け出ることはできぬぞ・・・!」

 暗闇大使がうめきながら、ライたちに対して笑みを見せた。

「ハ・・ハイパーショッカー・・バンザーイ!」

 歓喜を込めた断末魔を上げて、暗闇大使が倒れて爆発を起こした。

「勝った・・ダークローチもデェムシュも、アークオルフェノクも暗闇大使も倒した・・・!」

「ライくんも、今回は暴走を抑えていた・・このまま暴走することがなくなる可能性も大きくなった・・」

 かなたと聖也が勝利とライが自ら暴走を止めたことに、戸惑いを感じていく。

「ようやく見つけたようだな。お前だけの力を・・」

 バロンがライに向けて声を掛けてきた。

「お前たちは自分だけの強さを求めればいい・・オレとそいつは、長くこの世に留まることはできないがな・・」

「戒斗・・・」

 背を向ける戒斗に、紘汰が深刻さを覚える。

「この命を終えた後も、見届けさせてもらうぞ、葛葉紘汰、十時ライ。お前たちの戦いと、世界の行く末を・・」

 紘汰とライに告げてから、戒斗は去っていった。

「オレは死にはしない・・たとえ作り物の命だとしても、オレは生き延びてみせる・・・」

 雅人が自分の意思をライたちに告げる。彼もライたちの前から1人去っていった。

「草加・・お前は何が起こっても、お前のままなんだな・・・」

 雅人の揺るがない意思に、巧は皮肉を感じていた。

「オレたちは、戦う運命を乗り越えているみたいだな・・」

「いや、オレたち自身で衝動を抑えているだけだ。オレたちが戦いを望めば、その衝動は再び強くなる。」

 アンデッドの運命に打ち勝ったと考える一真に、始が言い返す。

「人間もそうじゃないヤツも関係ない。力にのまれるかどうかは、そいつの強さや心次第ってことか・・」

「オレたちだけじゃない。生きる者全てに言えることなんだ・・」

 巧が呟いて、紘汰が人の強さについて告げる。

「私たちの強さや心・・・」

「僕たちも、ライや巧さんたちみたいな戦いをしているんだね・・・」

 聖也とかなたも自分の戦いについて考えさせられる。

「今回ならなかったからといって、この先自分を見失わない保証はない。その中でオレは戦い続けていくんだ・・自分との戦いを・・」

 ライも言いかけて、聖也たちに振り返った。

“変身カイジョー。”

“ダークリリース。”

Spirit.”

 ライたちが変身を解いて、始も人の姿になった。

「始、オレはこのまま戦い続ける。人間を守るために、優しい心を持つ人を守るために。」

「オレもこれからも戦いをしていくつもりだ。アンデッドやジョーカーとしてではなく、人間として・・」

 一真と始がこれからの決意を口にして、手を取り合った。2人のアンデッドとしての対立は和らいでいた。

「オレも戦っていくさ・・人間もそうじゃないヤツも、いいヤツみんなが幸せでいられるように・・」

「オレも地球とヘルヘイム、2つの世界のためにこの運命を選んだ。それに悔いはない・・」

 巧と紘汰も自分たちの考えを口にした。

「お前たちはお前たちの生き方をしていけばいい。誰かのための選択と行動なら、オレたちはとがめるつもりはない。」

「オレたちの力を君も使っているが、その使い方は君次第だ。もちろん、君自身の力も・・」

 始と一真がライに激励を送る。彼らの言葉を聞いて、ライが今の自分の考えを確かめる。

「オレはこれからも戦い続ける・・オレやオレの大切な人、その居場所を守るために・・それを壊そうとするヤツらを倒す・・・!」

 自分の戦う意思を告げたライ。彼の戦う理由に大きな変化はないが、その強さと覚悟が大きくなっていた。

「お前なら負けはしないと思うぞ・・悪い連中にも、自分自身にも・・」

「巧さん、みなさん・・・はい。」

 巧の投げかけた言葉に、ライが真剣な顔で答えた。ライは落ち着きを保ったまま、まりに近づいた。

「まりちゃん・・・」

「ライくん・・・」

 互いを見つめ合って、ライとまりが戸惑いを感じていく。

「おかえり、ライくん・・・」

「ただいま・・まりちゃん・・・」

 微笑んで挨拶したまりに、ライも笑みを見せて答えた。普段の自分を取り戻せたライが、まりのところへ帰ることができた。

 

 

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