仮面ライダークロス
第42話「力の運命・否定するか?受け入れるか?」
またも暴走してしまったライの前に、一真も紘汰も駆けつけた。2人はブレイド、鎧武に変身して、ライを止めるために立ち向かった。
一真と紘汰が剣「ブレイラウザー」と「無双セイバー」、「大橙丸」を手にして、ライ目がけて振りかざす。ライが彼らの剣を体に当てられるも、力任せにはねのけてパンチを繰り出した。
「ぐっ!」
「うおっ!」
一真と紘汰が強く突き飛ばされて、地面を転がる。
「お前たち・・・!」
巧が痛みに耐えて立ち上がる。まりがケースを持って、彼に近づいた。
「ありがとうな・・もうこれで対抗するしかない・・・!」
巧がまりに礼を言うと、ウルフオルフェノクから人の姿に戻ってからケースを受け取った。彼はケースを開いて、アイテム「ファイズブラスター」を取り出して、コンソールボードに「555」と入力する。
「変身!」
巧がファイズフォンをファイズブラスターにセットした。
“Awakening.”
彼が再びファイズに変身した。しかし通常のファイズと比べて赤色が増していた。
ファイズの最強形態「ブラスターフォーム」である。
「下がってろ・・オレがアイツの目を覚まさせる・・死なせるつもりはない・・」
巧の呼びかけを聞いて、まりが戸惑いを覚える。巧は命を奪わずにライを止めようと考えていた。
その間も、一真と紘汰はライを止めようと奮闘していたが、ライのパワーとスピードに苦戦を強いられていた。
「荒っぽくなるが、彼の自我を取り戻させるには・・!」
毒づく一真が新たにラウズカードを3枚取り出した。
“Kick,thunder,mach.Lightning sonic.”
右足に電撃を集めて、一真が構える。
「オレも行くぜ!」
紘汰が戦極ドライバーのカッティングブレードを1回倒した。
“オレンジスカッシュ!”
オレンジ色のエネルギーを足に集めた紘汰が、一真とともにジャンプしてキックを繰り出す。ライが右足を振り上げて、2人のキックを押し返した。
「があっ!」
一真と紘汰が吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。大きなダメージを負った2人の間を通って、巧がライに向かって歩いていく。
「い、乾さん・・!」
紘汰が顔を上げて、巧に声を掛ける。
「そいつはオレが止める・・アイツも、オレたちと同じだ・・・!」
自分がライを止めようとする巧。彼のこの言葉を聞いて、一真と紘汰が戸惑いを覚える。
ライが巧を狙って飛びかかる。ライが振り下ろした右手の爪がファイズの装甲に当たるが、巧はほとんどダメージを感じていない。
ライがスピードを上げたまま連続でパンチとキックを繰り出す。巧は打撃を防御と回避でかいくぐって、反撃に出る。
巧のパンチが体に命中して、ライが怯んだ。
「いい加減にしろよ・・お前のことを信じてるヤツがいるんだろ・・!?」
巧がライに向かって鋭く言い放つ。ライがうなり声を上げて、巧に近づいていく。
「ライくん、やめて!自分を取り戻して!」
まりがライに向かって声を張り上げた。彼女は目から涙をあふれさせていた。
次の瞬間、ライが攻撃を止めて苦痛を訴えてきた。彼がふらついて左右に動いていく。
「まり・・まりちゃん・・・!」
ライが声を振り絞って、まりに目を向ける。
「ライくん!気が付いたんだね!」
自分を取り戻した彼に、まりが喜びを見せる。
「まさか・・オレ、また・・・!?」
暴走してまりを悲しませたことに、ライが絶望を感じていく。
「やめろ・・やめろ、オレ・・オレを、これ以上殺人気にするな!」
ライが叫んで、自分の体に拳を叩きつけた。殴られた彼自身の体から、血があふれ出した。
「ライくん・・!?」
自分を傷付けたライに、まりが驚きをふくらませる。痛みを感じて地面に膝を付いたライが、人の姿に戻った。
自分が殴った部分を手で押さえて、呼吸を乱すライ。巧がファイズへの変身を解いて、彼を見下ろす。
「どうやら、元に戻ったようだな・・」
「あなたは、乾巧さん・・剣崎一真さん、葛葉紘汰さんも・・・!」
巧が言いかけて、ライが彼と一真、紘汰に目を向ける。ライも3人の仮面ライダーと対面を果たしていた。
聖也とかなたを行かせるため、始は戒斗の足止めをしていた。
「この感覚は・・・剣崎も近くに来ているのか・・!」
始は一真が来たことに気付いて、その方向に振り返る。
「どうした?まだ戦いは終わっていないぞ。」
戒斗が始に向かって声を掛けて、剣の切っ先を向ける。
「剣崎が来ている。葛葉紘汰もな。」
「何っ!?葛葉が!?」
始の口にした言葉に、戒斗が驚きを見せる。
“Spirit.”
始がラウズカードをカリスラウザーにリードして、人の姿になった。戒斗もオーバーバロンから人の姿に戻った。
「お前も人間じゃなかったな。正確には、オレたちみたいに元人間というわけじゃなく、最初から怪人だった・・」
戒斗が始のことを口にする。
戒斗はヘルヘイムの森の植物の実を口にしたことで、インベスへと変化した。ヘルヘイムの実の強い浸食をはねのけて自我を保ち、戒斗はその力を物にしていた。
始はアンデッドの1人。アンデッドからも警戒されていたジョーカーアンデッドである。
始はラウズカードを使うことで、そのアンデッドの力を使える。「相川始」の姿も元々はヒューマンアンデッドの姿である。
「そんなオレが人間として生きていけるように、アイツは・・・」
始が言いかけて、ライたちのいるほうをじっと見つめていた。
「今は剣崎たちの所へ行く。オレとの勝負をしたいなら、オレについてこい・・!」
始は戒斗に告げてから、聖也たちを追うように走り出した。
「お前とこれ以上戦っても意味はなさそうだ。オレがお前とともに行くのは、葛葉とクロスを見届けるためだ。」
戒斗が自分の意思を口にして、始に続いていった。
自我を取り戻したものの、またも暴走してしまったことに、ライは苦悩を深めていた。
「オレはもう戦うべきじゃない・・オレが戦えば、また暴走して、今度こそ取り返しのつかないことになってしまう・・・!」
戦うことに恐怖を感じて、ライが震える。
「ライくん・・もう戦わなくていいよ・・そこまで辛い思いをしてまで戦うくらいなら・・・!」
まりもライの暴走と苦悩を辛く思っていた。
「戦いたくないならそれでもいい。けどどっちにしても、暴走する自分を乗り越えるか、受け入れるかを決めなくちゃならない。」
巧が真剣な顔で、ライに向かって言いかけてきた。
「あなたもさっき、怪人の姿に・・・!?」
まりが巧を見て動揺を見せる。しかし彼女は巧に対して恐怖は感じていなかった。
「巧さんもオルフェノクっていう怪人だった・・それでも人の心を失わず、人間として生きている・・」
ライが巧のことを思い出していく。ライは一真と紘汰にも目を向ける。
「剣崎さんも紘汰さんも人間じゃない・・自らの意思で、人間じゃない体になることを選んだ・・・」
ライが一真たちのことも口にする。
アンデッドが最後の1人になるまで戦うバトルファイト。勝ち残ったアンデッドの望みが叶えられる戦いである。だがジョーカーが生き残れば、その意思に関係なく世界の破滅が起こる。
ジョーカーである始を封印することなく、世界も守る方法を取った一真。それはブレイドの力を酷使することで自らのアンデッド化を進めて、ジョーカーになることだった。
アンデッドが2人になったことでバトルファイトが再開され、世界の破滅が止まった。始に人間として生きてほしいと願った一真は、彼から離れて孤独の戦いを続けて、アンデッドとしての戦う衝動を抑えられるようになった。
紘汰もロックシード「極ロックシード」を使ったことで、肉体がインベスへと変化していった。それでも世界と大切な人を守るため、紘汰は戦いを続け、ヘルヘイムの「黄金の果実」を口にして、「始まりの男」として覚醒。ヘルヘイムの森とともに新天地へ旅立った。
次元の融合とハイパーショッカーの侵略で、紘汰は再び地球に戻ってきていた。
「戻ってきたときにクロス、君のことを聞いた。今、君が暴走する力に振り回されていることも。」
「オレのことも知っていたんですね・・こんなことになって面目ありません・・・」
紘汰が事情を話して、ライが頭を下げる。
「これはオレたちだけじゃない。誰もが経験することだ。自分との戦いは・・」
一真が紘汰とともにライに歩み寄る。
「オレたちみたいに普通の人間と違う存在になるだけじゃない。自分が手に入れた力、自分から生まれた力をどうコントロールしていくか、どう向き合っていくかが大事なことだ。」
「クロスになった時点で、その力に対して悩んだり考えたりしたはずだ。」
紘汰と一真がライに激励を送る。ライがクロスドライバーに目を向けて、クロスになってからの戦いを思い返していく。
「オレはクロスとしてずっと戦ってきた・・体に負担がかかる危険や、かなた操られて戦うことになった辛さもあったけど、戦いをやめようとは思わなかった・・・」
自分が戦う道を選び続けてきたことを確認するライ。戦うことを恐れるようになったのは、クロスホッパーとなって自分を見失うようになってからである。
「これまではずっと、オレの意識も意思もあった・・だけど今は・・・!」
クロスホッパーになっている間は意識が失われている。どうすれば自分の暴走を止められるのかが分からなくて、ライは絶望に打ちひしがれていた。
「見境のないヤツは、結局はバケモノも同然だ。早く始末したほうがいい・・」
雅人が目つきを鋭くして、ライに敵意を向ける。
「よせ、草加・・そいつはオレたちの敵じゃない・・・!」
「フン。類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。醜いバケモノになったヤツらばかり、ここに集まっている・・」
巧が不満を言うが、雅人は彼もライも一真たちもあざ笑う。
「お前たちがまとめて消えれば、世の中のためになるというものだ・・」
「そういうお前のほうだ。死んでいるのはな。」
雅人に向かって声を掛けたのは戒斗だった。既に聖也とかなたがまりと合流していて、戒斗も始とともに到着していた。
「戒斗!」
「始!」
紘汰と一真が戒斗と始を見て声を上げる。
「どういうことだ?・・オレが死んでいるだと・・!?」
雅人が語気を強めて、戒斗に疑問を投げかける。
「ハイパーショッカーは儀式によって怪人復活を図ったことがある。企み通り、十数体の怪人が復活したが、お前とオレのように、怪人と戦っていたヤツらまで生き返った。ハイパーショッカーにとってイレギュラーな結果だ。」
「バカな・・オレが、死んでいるだと・・!?」
戒斗の話をして、雅人が驚きを隠せなくなる。
「オレもお前も戦いの中で死んだ。今は普通に活動しているが、近いうちに力尽きるだろう・・」
「戒斗・・・」
自分たちに待ち受ける運命を痛感する戒斗に、紘汰が辛さを覚える。
「ならばなおさらここで、お前たちを倒さなければならないな・・・!」
雅人が憎悪をむき出しにして、カイザフォンを手にした。
「ライくんもみなさんも悪くないです!」
まりが雅人に向かって不満を言い放った。
「たとえ体が人間じゃなくても、ライくんたちには心があります・・あなたとは真逆です・・体は人間でも、心は優しい人間とは程遠い・・!」
「黙れ・・・お前に何が分かる・・オレのこの怒りは、誰にも分かりはしない・・・!」
ライたちを思うまりにも、雅人が憎悪を向ける。
「分かりたくもない・・自分だけで勝手に決めて、自分だけが正しいみたいな態度を取るのは・・・!」
雅人に反発してきたのはライだった。
「仮面ライダーの中には、改造人間だったり人間じゃなかったりする・・アンタみたいな純粋な人間が珍しいくらいにな・・・!」
「ライくん・・・」
自分の考えを口にするライに、まりが戸惑いを覚える。
「オレももう人間じゃなくなっているみたいだ・・それでも、オレはオレだ・・・!」
「バケモノになった自分がいいとでも言うつもりか?・・やはりバケモノはバケモノだ・・・!」
自分の意思を告げるライだが、雅人の彼らを敵視する態度は変わらない。
「少なくともお前は確実にバケモノだ・・周りのものを見境なく襲い掛かっているのだからな・・・!」
雅人が投げかけた言葉に、ライが暴走する自分を思い出してしまう。
「何をしようとまともに戦うことはできない。おとなしくしているか、死ぬかのどちらかしかない。」
「ライくんはそんな弱い男ではない。君個人の判断で全てを決定すべきではないぞ。」
あざ笑う雅人に言い返してきたのは、聖也だった。
「“オレの何が分かる!?”っていうなら、ライのことをよく知りもしないのに勝手なことを言わないでよ!」
かなたも雅人に向かって不満を言い放つ。
「オレが止めなくちゃならないんだ・・暴走するオレ自身を・・たとえオレ自身をバラバラにしてでも・・・!」
ライが鋭く言って、自分の体に握った拳を叩きつける。彼は暴走する自分を力ずくで押さえ込もうとした。
「ライ・・そんなことしたら、暴走を止められても、ホントにライの体が・・!」
かなたが心配してライに近づく。
「来るな・・また、オレの中であの力が暴れようとしてる・・・!」
ライが声を振り絞って、かなたを呼び止める。ライの体が人のクロスホッパーの間で変化を繰り返す。
「ライくん!」
「戦っている・・暴走する自分と・・・!」
まりが叫んで、始がライの様子を見て呟く。
「どこまでも見苦しいマネを・・・!」
雅人がいら立ちをふくらませて、カイザフォンを操作する。
“Standing by.”
「変身!」
彼がカイザフォンとカイザドライバーにセットした。
“Complete.”
雅人がカイザに変身して、カイザブレイガンを手にする。
「草加・・お前はどこまでいってもお前なのか・・・!」
巧が雅人の言動に歯がゆさを覚える。彼は一真、紘汰と目を合わせて頷いた。
“Standing by.”
タクミがファイズフォンを手にして操作する。一真もブレイバックルを装着する。
“オレンジ!”
“ロックオン!”
紘汰がオレンジロックシードを戦極ドライバーにセットした。
「変身!」
“Complete.”
“Turn up.”
“オレンジアームズ!花道・オンステージ!”
巧、一真、紘汰がファイズ、ブレイド、鎧武に変身した。
「どいつもこいつも・・・!」
雅人が憎悪をふくらませて、ライを狙って飛びかかる。しかし振り下ろされたカイザブレイガンが、紘汰が出した無双セイバーに止められた。
「そんなにライくんやオレたちが気に入らないっていうのか!?・・どうしてもそんな考えを押し付けるなら・・もう絶対に許さないぞ!」
紘汰が雅人に鋭く言って、大橙丸も振りかざしてカイザブレイガンをはじき返した。
「草加、どうしても戦おうとするなら、オレが相手をしてやる・・!」
「そしてライくんがまた暴走することになったら、オレも止めてやる・・!」
巧と一真が雅人に向けて言い放つ。彼らは対すべき相手を見出していた。
「オレは、戦う・・戦って・・生きる・・・!」
雅人が自分の意思を呟いて、カイザブレイガンにミッションメモリーをセットした。
“Ready.”
彼が続けてカイザフォンの「ENTER」を押す。
“Exceed charge.”
カイザフォンから雅人の腕を通じて、カイザブレイガンにエネルギーが送られる。雅人がライ目がけて、カイザブレイガンを振りかざす。
一真と紘汰がブレイラウザー、無双セイバーと大橙丸を振りかざして、カイザブレイガンとぶつけ合う。巧が力を込めてパンチを繰り出して、雅人を突き飛ばした。
「たとえあなたが正しいとしても、1対6で勝ち目がないことは、十分理解できるはずですよ・・!」
聖也が雅人に向けて警告する。
「オレがいることを忘れるな。オレもお前たちの側につかせてもらう。」
始も前に出て、一真たちと並び立つ。
「変身。」
“Change.”
始がカリスラウザーにラウズカードを通して、カリスに変身した。
「ライ、まりちゃんと一緒に逃げて。僕たちも草加さんを止めるから・・!」
かなたがライとまりを守ろうとする。
「ありがとう、かなた・・だけど、オレも戦う・・・!」
ライが感謝して、クロスソウルを手にする。
「オレのわがままになってしまうけど、もしまた自分を見失うことがあったら、オレを止めてくれ・・最悪、息の根を止めてもいい・・・!」
「ライ・・・!」
呼びかけるライにかなたが戸惑いを覚える。
「息の根を止めるつもりはない。たとえ何があっても・・しかし、何度でも君の暴走を止めるつもりでいる。」
聖也も自分の考えをライに伝える。
「それに、ライのわがままなところは今に始まったことじゃないしね。」
「ただ、そのわがままも、理不尽への反発によるものだから、確実に間違っているとはいえない。」
かなたと聖也がライを見て笑みをこぼす。
「かなた、聖也さん・・・!」
ライが励まされて、戸惑いをふくらませていく。
「これだけのライダーがそろって、しかも体力を消耗しているとはな!」
そこへ声がかかって、ライたちが振り返った。彼らの前に暗闇大使が現れた。
「暗闇大使!」
「性懲りなくまた出てきたのか!」
ライとかなたが暗闇大使に向かって声を上げる。
「お前もこれだけの人数を同時に相手できると思っているのか?」
聖也が暗闇大使に忠告を送る。体力を消耗していても、ライたちが力を合わせれば、暗闇大使1人に負けることはないと確信していた。
「ライダーがこれだけいるところへ、単独で来る愚か者ではないぞ、私は・・!」
暗闇大使が笑い声を上げると、彼の隣に2人の怪人が現れた。
「お前たちは・・アークオルフェノクとデェムシュ!」
かなたが怪人たちを見て緊張を覚える。オルフェノクの王、アークオルフェノクとオーバーロードインベスの1人、デェムシュである。
「愚かな猿どもがゴロゴロしているな。まとめてここで一掃してくれるぞ。」
「我が同胞に属しながら、我らの意志や己の本能に逆らう反逆者たちを、私は認めはしない。」
デェムシュがライたちを見て笑みをこぼして、アークオルフェノクが彼らに敵意を向ける。
「それぞれの目的を持ちながら、2人も我々に同行してくれた。さらに・・」
暗闇大使が言いかけると、物陰から黒い怪人が続々と現れた。
「あれはダークローチ!世界の破滅は止まっているはずなのに・・!」
「次元の融合によって、ヤツらもこの世界に紛れ込んできたのか・・!」
一真と始が黒い怪人、ダークローチを見て毒づく。
「これだけいれば、お前たちをまとめて葬り去るのは造作もないぞ!」
暗闇大使が勝利を確信して、高らかに笑う。
「それがどうした?・・お前たちが勝手なマネをしてくるなら、オレはお前たちを倒すだけだ。」
「たとえどんな状況でも、オレ自身がどんなことになっていても、オレは戦う・・運命とも、人々を悲しませるお前たちのようなヤツらと・・!」
「お前たちに、オレたちの仲間に手出しはさせない・・みんなのいるこの世界もな!」
巧、一真、紘汰がそれぞれの考えを言い放つ。
「バカめ!人間でないお前たちが人間どもを守ったところで、お前たちが報われることなどない!」
「オレたちはオレたちの意思で、この運命を受け入れ戦ってきた・・お前たちに、オレたちやみんなの決意の重さは計れない!」
あざ笑う暗闇大使に一真が言い返す。彼の言葉を聞いて、ライが戸惑いを覚える。
(剣崎さんも紘汰さんも、自ら人でなくなることを選んだ・・・オレが・・オレが選ぶのは・・・)
クロスホッパーとなってしまった今の自分が取るべき道を見出そうとする。
「オレも戦う・・オレには、仲間や大切な人がいるから・・・!」
「ライ・・僕たちのことを信じて・・・」
決意を口にしたライに、かなたが笑みをこぼす。
「みんながオレのことを信じてくれたから、オレも心を決めることができたんだ。」
ライがみんなからの信頼を実感して、後ろにいるまりに目を向けた。
「まりちゃん、君もオレを助けようと、一所懸命になっていた・・・」
「ライくん・・・」
ライに感謝されて、まりが微笑んで頷いた。
「愚かな行動しかとれない下等生物が・・貴様らもオレに首を取られたいか!?」
デェムシュがライたちの決意をあざ笑う。
「我々はお前たちには決して屈しはしない!」
「僕たちの大切なものを壊そうとするなら、僕たちはお前たちを倒す!」
「オレは戦う・・お前たちとも、見境を失くすオレの力とも・・・!」
聖也、かなた、ライがデェムシュたちに言い放つ。彼らは揺るぎない決意と、悪しき怪人たちやハイパーショッカーに対する怒りを胸に宿していた。
“クロスドライバー!”
ライがクロスソウルのスイッチを入れる。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
“クラール!”
“ライダーソウール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
彼の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。
“ルシファードライバー。”
“ルシファー!”
かならもルシファーソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウル。”
彼がルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。
「変身!」
かなたがルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。
“ダークチェンジ・ルシファー。”
紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとったかなた。ライ、聖也、かなたがクロス、クラール、ルシファーへの変身を果たした。
「全てを、オレが正す!」
「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」
「この悪魔の力で、みんなを守る!」
ライ、聖也、かなたが再び言い放つ。
「オレは怪人となったオレを受け入れる・・そしてその力にも、必ず勝ってみせる!」
ライが前に出して右手を強く握りしめる。彼は人間でなくなったことを認めながら、それでも人間として生きて戦っていくことを、心に決めていた。