仮面ライダークロス
第41話「555、ブレイド、鎧武 人ならざる者たち」
聖也と侑斗に返り討ちにされて、暗闇大使は傷つきながらもハイパーショッカーの本部に戻ってきた。
「おのれ、ライダーども・・次こそは・・次こそは必ずや・・・!」
「いつまでも醜態をさらせると思わんことだな。」
仮面ライダーたちへの憎悪をふくらませていた暗闇大使が声を掛けられた。彼の前に現れたのは、軍服と兜を身に着けた男である。
「ブ、ブラック将軍!?貴様もここに来ていたのか!?」
暗闇大使が男、ブラック将軍の登場に驚きを見せる。
「首領の命令で、私もここへ赴いた。暗闇大使、次に出撃するならば、もう失敗は許されんぞ。」
「まさか、首領は私を見限るということなのか・・!?」
ブラック将軍からの通告に、暗闇大使が絶望を覚える。
「生き延びたければ成果を挙げる以外にない。我ら幹部とて例外ではない。」
「分かっている!・・それが、ハイパーショッカーの掟・・・!」
ブラック将軍に言い返して、暗闇大使はまたライたちを倒すために動き出した。
「失敗や敗北を繰り返す者に、ハイパーショッカーの居場所はない。暗闇大使の活躍次第で、私も首領のご命令通り、前線に出ることになる。」
ブラック将軍も気を引き締めなおして、ゾルたちのところへ向かった。
今まで通りにライと会話をしたり過ごしたりしようとするまり。しかしライがクロスホッパーになる瞬間が頭の中でよみがえってきて、まりはライと一緒にいることに恐怖を感じていた。
まりがライに声を掛けようとして、言葉を詰まらせることが度々あった。
「う〜・・これじゃ見ちゃいらんないよ〜・・」
「しかしどう言えばいいのか分かんないのは、オレたちも同じだからなぁ・・」
かなたが頭を抱えて、ひろしが肩を落とす。
「仮面ライダーのみなさんも言っていたが、これはライくん自身が乗り越えなければならないことだ。」
聖也もライとまりの様子を見て言いかける。
「最悪の場合、オレたちはライくんを倒さなければならない・・ライくんも心の中で、倒されることを覚悟しているはずだ・・」
「でも、僕にはできそうにないですよ・・いくら僕たちやまりちゃんが危険になるっていっても・・・!」
辛さを噛みしめる聖也に、かなたが感情を込めて反発する。
「私も正直したくはない・・しかしまりさんや他のみんなが傷ついてしまうよりは・・・!」
迷いを抱えながらも、その時が来たらそれを振り払わなければならない。聖也の苦悩を察して、かなたはこれ以上反論できなかった。
「2人とも、今は様子見というところだな。ライとまりちゃんのこと、支えてやってくれ。オレもやれることはしていくから・・」
ひろしが真剣な顔で言って、聖也とかなたが小さく頷いた。
「おやっさん、ちょっと気分転換に散歩してきます・・」
ライはひろしに言うと、1人で外へ出かけていった。
「ラ、ライ・・!」
かなたが慌てて追いかけようとしたが、先にまりが外へ飛び出した。
街の近くに来たところで、ライはまりが付いてきていることに気付いて、足を止めて振り向いた。
「オレに近づくと、いつ危険になるか分かんないんだぞ・・」
「でも、辛そうにしているライくんを放っておけないよ・・・!」
忠告するライをまりが心配する。ライの暴走への恐怖を拭えず、まりは震えていた。
「まりちゃんのほうが、辛そうに見えるよ・・・」
逆にライから心配されて、まりが動揺をふくらませる。
「オレだってこのまま、自分の力に押しつぶされるつもりはない・・徹底的に逆らって、押し込んでやるさ・・!」
「ライくん・・・」
自分の決意を口にするライに、まりが戸惑いを浮かべる。
(大変なときなのに何とかしようとしている・・ライくんは強くなった・・それでも止められない力って・・・)
ライのことを気に掛けながらも、まりは辛さをふくらませていた。
「お前がクロス。他の仮面ライダーの力を使うヤツか。」
ライとまりの前に1人の男が現れた。
「あなたは、誰ですか?・・私たちに何か・・?」
「草加雅人さん・・仮面ライダーカイザ・・・!」
まりが男、雅人に問いかけたとき、ライが彼を警戒する。
「へぇ。オレのことを知っているのか・・なら話は早いな。」
雅人が笑みをこぼして、ライを見つめる。
「お前も人間じゃなくなったんだったな・・これで躊躇する理由がない・・」
雅人が呟くと、携帯電話「カイザフォン」を手にして「913」と入力して「ENTER」を押した。
“Standing by.”
カイザフォンから音声が発する。ベルト「カイザドライバー」を装着している雅人が、カイザフォンのふたを閉じて構える。
「変身!」
彼がカイザフォンをカイザドライバーにセットした。
“Complete.”
カイザドライバーから黄色の光が伸びて、雅人を包み込んだ。彼は黄色と灰色の装甲と仮面を身に着けた。
雅人は仮面ライダー、カイザへの変身を果たした。
「待ってください!オレはあなたと戦うつもりは・・!」
ライが慌てて呼び止めるが、雅人が彼らに向かって歩き出す。
「戦うしかないのか・・・まりちゃん、離れていて!」
「ライくん・・!」
焦りを噛みしめるライに呼びかけられて、まりが動揺しながら後ろに下がる。
「“まり”・・・!?」
まりの名を聞いて、雅人が足を止めた。自分の知る人物とは別人と理解しながらも、彼は動揺を感じていた。
「オレが狙いだっていうなら、相手をしてやりますよ・・!」
ライが雅人に鋭く言ってから、クロスドライバーとクロスソウルを手にした
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着して、クロスソウルのスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
「オレと戦おうとするのか・・見境のなくしたバケモノになっているくせして・・」
雅人が口にした言葉を聞いて、ライが自身への恐怖を覚える。彼はクロスホッパーになったときの自分をまた気にしていた。
「どうした?オレと戦うんじゃなかったのか・・?」
雅人があざ笑うと、ライに向かって攻撃を仕掛けてきた。動揺を深めているライが、雅人のパンチとキックを受け続ける。
「ライくん!・・かなたくんと聖也さんに知らせないと・・!」
まりが慌ててスマートフォンを取り出して、かなたたちに連絡を取った。
ライが反撃もままならなくなり、雅人に一方的に叩きのめられていく。
「クロスじゃなくてバケモノになったらどうだ?そうすれば少しはマシな戦いになるだろうし、オレももっと躊躇を消せるというものだ・・」
雅人が笑みを浮かべて、ライを挑発する。
「オレは・・オレは人間だ・・あんな怪物にはなりたくはない!」
ライが感情をあらわにして、ついに反撃に踏み切った。彼が力任せに拳を振りかぶるが、雅人に軽々とかわされる。
「やれやれ・・お前はどうやってもオレに敵わない。そういうことでいいのかな?」
雅人がため息をついて、ライが繰り出した右のパンチを左手で受け止めた。雅人がライの右腕を引き寄せて、彼の体に膝蹴りを叩き込む。
「うぐっ!」
うめくライが雅人が出したパンチを受けて、地面を転がる。
「ライくん!・・やめて!ライくんにひどいことしないで!」
まりが叫んで、雅人を呼び止める。
「まりちゃん・・来たら危ない・・・!」
ライが声を振り絞って、まりに呼びかける。
「やはり同じ名前・・その名前を、オレの前で軽々しく口にするな・・!」
雅人がまりをみて一瞬動揺して、ライに視線を戻して語気を強める。
「このままだと、オレもまりちゃんもやられてしまう・・こうなったら・・・!」
絶体絶命の状況を打破しようと、ライがカメンソウルとオールソウルを取り出した。
「だけど、オールソウルを使うことで、怪人になって暴走してしまったら・・・!」
ところが暴走する自分を恐れて、ライはオールフォームになることをためらう。
「自分の力も恐れる・・敵としても実に情けない・・」
雅人はため息をつくと、カイザドライバーから「ミッションメモリー」を取り出して、続けて双眼鏡「カイザポインター」を手にした。
“Ready.”
ミッションメモリーをセットしたカイザポインターを右足にセットして、雅人がカイザフォンの「ENTER」を押した。
“Exceed charge.”
雅人が右足を突き出して、ライにキックを当てる。カイザポインターから光が放たれて、円錐の形になってライの動きを封じる。
「やられて・・やられてたまるか!」
ライが力を振り絞って、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加える。
“ライダースマッシュ・クロース!”
クロスの装甲から出た光が、カイザの光による束縛を押しのけようとする。雅人がジャンプして、円錐を通るように両足のキックを繰り出した。
ライが振り上げたキックと、雅人のキックがぶつかり合った。
「ぐあぁっ!」
キックがぶつかり合って、ライが雅人とともに押される。立ち上がる2人が、互いに鋭い視線を向ける。
「往生際の悪い・・だがお前は逃げられないぞ・・オレからも、醜いお前からも・・」
雅人がライにとどめを刺そうと、腰に提げていた武器「カイザブレイガン」を手にした。
「よせ、草加・・!」
そこへ声がかかって雅人、ライ、まりが振り向いた。3人の前にまた1人男が現れた。
「あなたはファイズ・・乾巧さん・・!」
ライが男、巧を見て戸惑いを覚える。
「そいつはハイパーショッカーと戦っている。オレたちにとっても仲間だ。」
「仲間?・・そういえば仲間だな。“お前にとって”は・・類は友を呼ぶとはよく言ったものだな・・」
巧がライのことを言うが、雅人は巧に対してもあざ笑う。
「オレはお前も許してはおかない・・なぜお前がのうのうと生きていて、オレが死ななければならない・・・!?」
雅人が憎しみをあらわにして、カイザブレイガンの切っ先を巧に向ける。
「そうか・・草加さんは・・・」
ライが雅人の素性を思い出したときだった。
「ぐっ・・!」
ライが体に激痛を覚えてふらつく。クロスドライバーが外れてクロスへの変身が解けた彼が、クロスホッパーに変化した。
「ライくん!」
まりがライに向かって叫ぶ。ライが雅人に視線を向けて、高速で動き出した。
「うぐっ!」
目にも留まらぬ速さのライの握った右手が、雅人の体に叩き込まれた。ライが続けて足を振りかざして、連続でキックを当てていく。
「とんでもないスピードだ・・このままだと草加がやられる・・・!」
ライの戦いを目の当たりにして、巧が危機感を覚える。ベルト「ファイズドライバー」を装着している彼が、携帯電話「ファイズフォン」を手にして「555」と「ENTER」を押した。
“Standing by.”
巧がファイズフォンを閉じて、上に高らかに上げた。
「変身!」
“Complete.”
巧がファイズフォンをセットしたファイズドライバーから、赤い光の線が伸びた。光は黒、赤、灰色の装甲と仮面になって、彼を包み込んだ。
巧は仮面ライダー、ファイズへの変身を果たした。彼は右の手首を軽く振ってから、ライに向かっていく。
「お前も大事なもののために戦ってるなら、そんな力に振り回されてる場合じゃないだろ・・・!」
呼びかける巧に、ライがうめき声を上げて飛びかかる。彼のパンチが命中して、ファイズの装甲から火花が散る。
「なんてスピードだ・・だったら・・・!」
毒づく巧が左腕に装着しているリストウォッチ「ファイズアクセル」から「アクセルメモリー」を取り出して、ファイズフォンにセットした。
“Complete.”
ファイズの装甲の胸部が展開された。巧はファイズの高速形態「アクセルフォーム」となった。
“Start up.”
巧がファイズアクセルのスイッチを押して、高速状態である「アクセルモード」を起動した。これにより通常の1000倍のスピードを発揮できるが、押し寄せる負担からこの状態を10秒以上維持できない。
ライと巧が高速でぶつかり合い、連続でパンチとキックを当てていく。
「ぐっ!」
ライの打撃が命中して、巧がうめく。ライのスピードはアクセルフォームさえも超えていた。
ライの頭上にジャンプした巧が、右足を突き出して赤い光の円錐を放つ。同時に彼の分身が現れて、ライを取り囲む。
ライが巧を迎え撃って、高速で足を振りかざす。巧と分身たちのキックを、ライの回し蹴りがなぎ払った。
巧が強く地面に叩きつけられて、1度跳ね上げられてから倒れた。
“3,2,1...Time out.Reformation.”
ファイズアクセルがカウントダウンをして、ファイズの装甲がアクセルフォームから元に戻った。
「ファイズでも止められないだと・・・!?」
雅人がライの戦いを見て、驚きを隠せなくなる。ライが倒れている巧に振り向いて、全身に力を入れて震わせていた。
まりから連絡を受けた聖也とかなたは、彼女たちのところへ急いでいた。だが2人の前に1人の男が行く手を阻んできた。
「何者だ、君は!?私たちは急いでいるんだ!」
聖也が男に向かって呼びかける。
「あなたは駆紋戒斗さん・・“アーマードライダー”のバロンだ!」
かなたが男、戒斗を見て声を上げる。
「やはりオレたちのことを知っていたか。だがお前たちに止められるだけの力があるのか?」
「止める・・ライくんを襲っているヤツのことか?それとも、ライくん自身のことか・・!?」
問い詰める戒斗に、聖也が聞き返す。
「今のお前たちにヤツを止めることはできない。そもそも、自分の力すらコントロールできないヤツなど、助ける価値もない。」
「思っていた通り、いい性格じゃないってことなのか・・・!」
ライをあざける戒斗に、かなたが不満を覚える。
「今は話している時間も惜しい・・道を開けるつもりがないなら、力ずくで突破させてもらうぞ・・!」
聖也が鋭く言って、クラールドライバーとクラールソウルを取り出した。かなたもルシファードライバーとルシファーソウルを手にした。
“クラールドライバー!”
聖也がクラールドライバーを装着して、クラールソウルを手にした。
“クラール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼はクラールソウルをクラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
聖也の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。彼はクラールへの変身を果たした。
“ルシファードライバー。”
“ルシファー!”
かなたがルシファードライバーを装着して、ルシファーソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウル。”
彼がルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。
「変身。」
かなたがルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。
“ダークチェンジ・ルシファー。”
紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとって、かなたはルシファーに変身した。
「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」
「この悪魔の力で、みんなを守る!」
聖也とかなたが言い放って、戒斗に向かっていく。戒斗は2人の間をすり抜けて、ゆっくりと振り向いた。
「お前たちがオレに勝つことも不可能だ・・」
戒斗は聖也たちに警告すると、アイテム「ロックシード」を取り出した。
“バナナ!”
“ロックオン!”
彼がバナナのロックシード「バナナロックシード」を起動して、装着しているベルト「戦極ドライバー」にセットした。
「変身!」
戒斗が戦極ドライバーにある「カッティングブレード」を倒して、バナナロックシードを展開した。
“バナナアームズ!ナイトオブスピアー!”
頭上から巨大なバナナが現れて、戒斗の頭にはまる。するとバナナが展開されて、西洋の騎士の甲冑のような装甲になった。
「バロンの、“バナナアームズ”・・!」
かなたが戒斗を見て緊張をふくらませる。戒斗が槍「バナスピアー」を構えて、かなたたちに向かっていく。
回避して反撃を狙う聖也とかなただが、戒斗が振りかざすバナスピアーをかわせずに装甲を切りつけられる。
「速い攻撃だ・・しかし、ここで足止めをされるわけにはいかない・・!」
“ブレイガン!”
聖也が危機感をふくらませて、ブレイガンソウルを起動してクラールブレイガンを手にした。
“デスセイバー!”
かなたがルシファーデスセイバーを手にして、聖也とともに戒斗に向かっていく。
聖也とかなたが振りかざすクラールブレイガンとルシファーデスセイバーを、戒斗はバナスピアーで軽々とあしらっていく。
「ぐっ!」
バナスピアーに装甲を突かれて、聖也とかなたが地面に倒される。戒斗に攻撃が通じず、2人は焦りを覚える。
「オレに勝てないヤツが、今のクロスを止められるわけがない。力に振り回される弱いヤツを救うには、強くならないといけない。」
戒斗が聖也たちを見下ろして、低い声で言いかける。
「己の弱さを理解して諦めろ。それが嫌なら今以上に強くなるか。その2つしかない。」
「2つか・・私たちの取る選択肢は1つだ・・!」
戒斗の警告に言い返して、ヴァイスソウルを取り出した。
“ヴァイス!”
聖也がヴァイスソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼はヴァイスソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。
“大革命・ヴァーイス!”
クラールの装甲とマスクが白くなった。聖也はヴァイスクラールへ変身した。
「強き正義で、悪に制裁を下す・・!」
聖也が腰に提げていたヴァイスブレイカーを手にして、戒斗に向かって言い放つ。
「ヴァイスクラールか・・その力、試させてもらうぞ。」
戒斗が聖也に告げると、カッティングブレードを2回倒す。
“バナナオーレ!”
バナナの形をしたエネルギーをまとったバナスピアーを、戒斗が聖也目がけて振り下ろす。
“ガタック!”
“アマゾンオメガ!”
“スピードヴァーイス!”
聖也がガタックソウル、アマゾンオメガソウルをヴァイスブレイカーにセットした。
「スピードブレイカー!」
青い光を宿したヴァイスブレイカーを聖也が振りかざして、戒斗のバナスピアーを迎え撃つ。バナスピアーがヴァイスブレイカーにはじかれて、戒斗が押し返された。
戒斗が地面に倒れると、戦極ドライバーからバナナロックシードが外れて、バロンへの変身が解けた。
「力を上げてきたか・・だがこれで終わりではないぞ・・!」
戒斗が落ちたバナナロックシードを拾うと、全身に力を込めた。彼の姿が赤い体の怪人に変わった。
「き、君は・・!?」
変貌した戒斗に、聖也が驚く。
「“ロードバロン”・・戒斗さんが“インベス”になった姿・・!」
かなたが戒斗を見て声を上げる。
異世界「ヘルヘイムの森」に住む怪人、インベス。森の植物の実を食べた人類もインベスと化してしまう。
戒斗も自らヘルヘイムの実を口にしてインベスとなったが、インベスとなる耐性と暴走されない強い精神力を備えた彼は、自分を見失うことはなかった。
さらに戒斗はインベス上位の種族「オーバーロードインベス」にまで一気に進化していた。
「バケモノとなりその巨大な力を持ったとしても、それを己で制御してこそ本物の強者だ。自分を見失うようでは誰かを、自分さえも守れない。」
戒斗が低い声で告げると、聖也に向かって歩を進める。
「今まで以上に力があり厄介な相手になったということか、あなたは・・!?」
聖也が警戒心を強めて、戒斗を迎撃してヴァイスブレイカーを振りかざす。戒斗は体を気体に変えて、聖也の攻撃をかわした。
「そのような能力もあるか・・先読みも必要になってくる・・・!」
戒斗の能力を分析して、聖也は後ろに現れた彼に振り返る。
「次はこのような手は使わない。真正面から、力の差を思い知らせる。」
戒斗が聖也に告げて、剣を手にして構える。
“イクサ!”
“バース!”
聖也がイクサソウルとバースソウルを手にして、ヴァイスブレイカーにセットした。
“パワーヴァーイス!”
ヴァイスブレイカーから赤い光があふれ出して、刀身の1つから巨大な光の刃が伸びた。
「パワーブレイカー!」
聖也がヴァイスブレイカーを振り下ろす。戒斗も剣の刀身に赤い光を宿して振りかざす。
2人の刃の衝突は爆発のような衝撃を巻き起こす。
「うっ!」
かなたが衝撃に押されてふらつく。戒斗も激突で押されて、聖也は吹き飛ばされてその先の壁に叩きつけられた。
「聖也さん!」
倒れた聖也に向かってかなたが叫ぶ。力を振り絞って起き上がろうとする聖也を、戒斗が見下ろす。
「今のオレに勝てなければ、暴走するクロスは止められない。力がなければ何も守れない。己さえもな。」
戒斗が強さについて語って、聖也からかなたに視線を移す。
「お前はそいつ以上の力を持っているのか?」
戒斗に問い詰められて、かなたは答えることができない。
「そこまでだ、駆紋戒斗!」
そこへ声がかかって、かなたたちが振り向いた。彼らの前にもう1人、男が姿を現した。
「あなたは、相川始さん・・仮面ライダーカリス・・!」
かなたが男、始を見て声を上げる。
「お前か・・いくらお前でも邪魔はさせないぞ・・」
戒斗が始に対して鋭い視線を向ける。
「それはオレのセリフだ・・クロスを思う2人には、クロスのところへ行かせるべきだ・・・!」
始が戒斗に向かって言い放つ。
「そうはさせない、と言ったどうする?」
「お前と戦うことになる・・・!」
戒斗の問いかけに答えて、始が1枚のカードを取り出した。「ラウズカード」の1枚、ハート1のカードである。
「変身・・!」
始がベルト「カリスラウザー」のバックル部分にラウズカードを通してリードした。
“Change.”
始の姿が黒い体の戦士に変わった。彼は仮面ライダー、カリスに変身した。
「お前たちはクロスのところへ行け!オレの仲間もそこへ向かっている!」
始が呼びかけて、立ち上がった聖也にかなたが駆け寄った。戒斗が2人を追うが、始が行く手を阻んだ。
「お前の相手はオレだ!」
始が戒斗に言い放って、弓「カリスアロー」を手にして構えた。
クロスホッパーと化して暴走するライに対して、アクセルフォームになっても止められず、巧は苦戦を強いられていた。
(スピードを上げても止められないのか・・だったらアレを使うしかないな・・・!)
思い立った巧が、近くに置いていたケースに目を向けた。ライが巧に向かってゆっくりと歩いていく。
「やめて、ライくん!」
そのとき、まりがライの前に出て立ちはだかった。
「おい、何やってんだよ!?・・離れてないと危ないぞ!」
「お願い、ライくん・・自分を取り戻して・・私たちのこと、思い出して・・・!」
巧が呼びかけるが、まりはライの前から逃げない。ライがまりを狙って、右手を振り上げた。
(取りに行っていたら間に合わない・・!)
危機感をふくらませた巧が感覚を研ぎ澄ませた。彼の体に異様な文様が浮かび上がる。
次の瞬間、巧の体が狼を思わせる姿の怪人に変わった。彼はスピードを上げてライにつかみかかり、まりから引き離した。
「あ、あなた・・その姿・・・!?」
まりが巧を見て動揺を隠せなくなる。
人間の進化とされている怪人「オルフェノク」。巧はその1人、ウルフオルフェノクである。
「そこにあるケースを持ってきて、オレに渡してくれ・・コイツは、オレが止めてやる・・・!」
巧が声を掛けるが、まりは動揺していて反応できない。
「早くしろ!」
「は、はいっ!」
巧が怒鳴って、まりが慌てて走り出す。彼女はケースの所へたどり着いたときだった。
ライが高速で突っ込んで、巧の体を蹴り飛ばす。
「乾・・クロスも・・・!」
雅人が巧とライに対するいら立ちを抱えて、力を振り絞って立ち上がる。彼がカイザブレイガンを構えて、ライを倒そうとする。
「やめろ、みんな!」
そのとき、ライたちに向かって声がかかった。2人の男が新たに駆けつけた。
「くっ・・アンタたちは・・・!」
うめきながら立ち上がる巧が、男たちに目を向けた。
「何とか間に合ってよかった・・・!」
「オレたちがいれば、ライくんを止めることができるかもしれない・・!」
2人の男が安心を浮かべると、ライに目を向けた。
「ライくん、君も大きな運命とぶつかっているようだな・・・!」
男の1人がライに言うと、ベルト「ブレイバックル」を装着して構えを取った。
「変身!」
男がブレイバックルの右のハンドルを引いて、中央部を反転させる。
“Turn up.”
ブレイバックルから光の壁「オリハルコンエレメント」が現れる。男はオリハルコンエレメントを通過すると、スペードのマークの入った装甲と仮面を身に着けた。
“オレンジ!”
もう1人の男が「オレンジロックシード」を手にした。
“ロックオン!”
彼がオレンジロックシードを、装着していた戦極ドライバーにセットした。
「変身!」
男が戦極ドライバーのカッティングブレードを下ろして、オレンジロックシードを開いた。
“オレンジアームズ!花道・オンステージ!”
男の頭に巨大なオレンジが落ちてきた。オレンジは展開すると、鎧武者のような装甲と仮面を身に着けた。
2人の名は剣崎一真と葛葉紘汰。仮面ライダーブレイドとアーマードライダー・鎧武である。
「ここからはオレの、オレたちのステージだ!」
紘汰が高らかに言い放って、一真とともにライに向かっていく。ファイズ、ブレイド、鎧武がライの前に集まった。