仮面ライダークロス

第38話「アマゾンとアマゾンズ!?」

 

 

 総司との戦いの最中、突然怪人に、クロスホッパーに変わったライ。なぜこのような変化が起こったのか、彼自身もかなたも分からなかった。

 ライはこのことを聖也だけに伝えた。あまりにとんでもないことであり、詳しいことが分かっていないため、ライはまりとひろしには言わなかった。

「君の体が、怪人に・・!?

「はい・・クロスとは違う姿になっていて・・怪人になってからしばらくは、意識がなくなっていて・・」

 驚きを覚える聖也に、ライが話を続ける。

「力はものすごかったと思うしかないです・・ハイパーフォームとなったカブトのパワーとスピードを超えていた・・」

 かなたも聖也に自分が直感したことを告げる。ライと総司の戦いを認知できなかったかなただが、ライが総司を圧倒していたことは分かっていた。

「カブトをも凌駕する力・・しかし制御できず、私たちにまで危害が及びかねない・・」

 クロスホッパーとなったライのことを考えて、聖也が深刻さを痛感していく。

「私の推測が当たっていれば、ライくんの体が怪人化したのは、オールソウルを使った影響・・」

「えっ・・!?

 聖也の口にした言葉に、ライとかなたが驚く。ライがオールソウルを取り出して、じっと見つめる。

「クロスワイズソウル、カメンソウルを使ったときは、ライくんの体に負担がかかり、ライくん自身が実感していた。オールソウルを使っても何の負担もないとは思っていたが、肉体の変化を及ぼしていたとは・・!」

「そんな・・オールソウルを使ったことで、オレは怪人に・・・!」

 聖也からの話を聞いて、ライが絶望に襲われる。

「これ以上は使わないほうがいい・・どうしても使わないといけないときでも、多用は禁物だ・・」

「はい・・それでこれからの戦いを、乗り越えられたらいいけど・・・」

 聖也からの注意を聞き入れながらも、ライは苦悩と不安を拭えずにいた。

 

 街中のレストランの厨房で、突然壁が破られた。3体の怪人が現れて、厨房にいたコックたちに襲い掛かった。

 秘密結社「ゲドン」のカニ獣人と人工生命体「アマゾン」のカニアマゾン1と2である。

「人間どもはオレたちのエサだ・・遠慮なく食っちまえ・・!」

 カニ獣人が呼びかけて、カニアマゾンたちがコックたちにハサミを振りかざしていく。

「もっと・・もっと食いたい・・・!」

 カニアマゾン1が厨房から客室に出ていく。

「バ、バケモノだ!」

「逃げろー!」

 客たちが悲鳴を上げて、レストランから外へ飛び出す。カニアマゾン1が逃げ遅れた客の1人の男性に狙いを定める。

「お前も食ってしまうぞ・・!」

「た、助けてくれー!」

 笑みをこぼすカニアマゾン1に、男性が悲鳴を上げた。

「キキー!」

 そこへ1人の戦士が飛び込んできて、右手を振りかざしてカニアマゾン1を男性から引き離した。

「あ、あなたは・・・!?

「はやく、にげろ・・!」

 声を上げる男性に戦士が呼びかける。男性は慌てて立ち上がって、レストランから逃げていった。

「お、お前はアマゾン!アマゾンライダーが近くに来ていたのか!」

 カニ獣人が戦士、仮面ライダーアマゾンを見て身構える。

「わるいじゅうじん、たおす・・まちはあらさせないぞ・・!」

 アマゾンが鋭く言って、カニ獣人たちに向かって飛びかかる。カニ獣人と組み付いて、アマゾンがそのまま床に押し付けた。

 カニアマゾンたちがハサミを出して、アマゾンの腕を挟んでカニ獣人から引き離す。アマゾンがカニアマゾンたちに振り回されて翻弄されていく。

「バカめ!オレたち3人を相手が、お前だけに務まると思っていたのか!」

 立ち上がったカニ獣人がアマゾンをあざ笑う。

「コイツ、食べるのか?・・あんまりうまそうじゃない・・」

「だけどやっつけておかないと、後に厄介になりそう・・」

 カニアマゾンたちがアマゾンを見て気まずくなる。2人がアマゾンを倒そうと、ハサミを振り上げた。

「やめろ!」

 そこへ1人の青年が駆けつけて、カニ獣人たちに呼びかけてきた。

「お前は、もしや・・!?

 カニ獣人が青年、水澤(みずさわ)(はるか)を見て警戒する。

「アマゾンさん・・僕の友達はやらせない・・!」

 悠がアマゾンを見てから、カニ獣人たちに視線を移して言い放つ。彼が装着しているベルト「アマゾンズドライバー」の左側にある「アクセラーグリップ」をひねる。

Alpha.

 音声の発するアマゾンズドライバーの起動によって、悠の体の細胞が刺激される。

「うおぉぉぉ・・アマゾン!」

 叫ぶ悠の体が、緑の装甲のような外殻に覆われる。彼は仮面ライダー、アマゾンオメガに変身した。

「はるか、ともだち・・きたのか・・!」

「はい・・助けます、アマゾンさん!」

 アマゾンが笑みをこぼして、悠がカニ獣人たちに向かっていく。カニ獣人が悠の突進を受けて、レストランの外に突き飛ばされた。

 アマゾンもカニアマゾンたち体に手を当てて、外へと引っ張り出した。

「ハイパーショッカーっていうのも、悪いヤツらも、オレたちが許さない!」

 悠が言い放って、カニ獣人たちに向かっていく。カニアマゾン1と2が2人を迎え撃つ。

「フン!アマゾンオメガが来たところで、我々の有利に変わりはない!」

 カニ獣人があざ笑って、アマゾンと悠に向かって口から泡を吐き出す。

「うあっ!」

 悠が左腕に泡がかかって、痛みを感じてうめく。負傷して湯気を発する左腕を押さえて、彼がカニ獣人に視線を移す。

「まずはアマゾンオメガを仕留めろ!アマゾンライダーはオレがその間に相手をしてやるぞ!」

 カニ獣人がカニアマゾンたちに指示を出してから、アマゾンに狙いを定めて、横歩きをしていく。

「はるか、にげろ!はやくにげろ!」

 アマゾンが呼びかけるが、カニアマゾン1、2が悠を挟み撃ちにする。カニアマゾンたちが突き出すハサミに、アマゾンオメガの外殻が切りつけられて火花を散らす。

 悠が必死にハサミをよけようとするが、壁際に追い込まれて、カニアマゾンたちとの距離を縮められていく。

「まずはお前からだ・・・!」

「食べるにはよくなさそうだけど・・」

 カニアマゾン2と1が悠を狙ってハサミを構えた。

「ハイパーショッカー!」

 声がかかって悠たちが振り向く。ライ、聖也、かなたが駆けつけて、彼らを目撃した。

「あれはカニアマゾンと、ゲドンのカニ獣人だよ!」

 かなたがカニ獣人たちを見て声を上げる。

「それに、アマゾンライダーとアマゾンオメガもいる・・!」

「2人に協力して、ハイパーショッカーを倒さなくては・・!」

 かなたに続いて聖也が言いかける。2人がルシファードライバーとルシファーソウル、クラールドライバーとクラールソウルを手にした。

「ライ、どうしたの!?早く変身しないと・・!」

 クロスになろうとしないライに、かなたが声を掛ける。

「オレがクロスになれば、また怪人になって、暴走することに・・・!」

 ライがクロスになることをためらって、かなたが動揺を深める。またクロスホッパーになって自分を見失うことを、ライは恐れていた。

「オールソウルを使わなければ暴走する可能性は高くない。今はそう思うしかなさそうだ・・」

 聖也が檄を飛ばすが、それでもライは迷いを振り切ることができない。

「戦うつもりがないなら下がっているんだ・・私たちだけでやる・・!」

 聖也はライを下がらせて、カニ獣人たちに視線を戻した。

“クラールドライバー!”

 聖也がクラールドライバーを装着して、クラールソウルを手にした。

“クラール!”

 聖也がクラールソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼はクラールソウルをクラールドライバーにセットした。

「変身!」

 聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クラール!”

 聖也の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。彼はクラールへの変身を果たした。

“ルシファードライバー。”

“ルシファー!”

 かなたがルシファードライバーを装着して、ルシファーソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウル。”

 彼がルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。

「変身。」

 かなたがルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。

“ダークチェンジ・ルシファー。”

 紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとって、かなたはルシファーに変身した。

「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」

「この悪魔の力で、みんなを守る!」

 聖也とかなたが言い放って、カニ獣人たちに向かっていく。

 聖也が距離を詰めてキックを繰り出して、カニアマゾン1と2を蹴り飛ばして、悠から引き離す。

「大丈夫ですか!?

「あ、うん・・!」

 聖也が声を掛けて、悠が頷く。2人が構えを取って、カニアマゾンたちに同時に向かっていく。

 カニアマゾンたちがハサミを突き出すが、聖也の手刀と悠の爪と腕の刃にはじき返される。

「コイツだけじゃなく、クラールも強い・・!」

「これじゃ逆にオレたちが食われる・・・!」

 カニアマゾン1と2が聖也たちに追い込まれて、焦りを感じていく。すると聖也がカニアマゾン2の右のハサミをつかんできた。

「お前たちは煮ても焼いても食えないが・・」

 呆れた素振りを見せてから、聖也がハサミを持ち上げてカニアマゾン2を投げつけた。

「おのれ!」

 カニアマゾン1がいら立ちを見せる。悠が刃を振りかざして、カニアマゾン1を攻め立てる。

 一方、かなたがアマゾンと合流して、カニ獣人と対峙する。

「たすかった、ありがとう・・クラールとルシファーのことはきいている・・」

 アマゾンがかなたを見てお礼を言う。

「ここからは僕たちも戦います!一緒にハイパーショッカーを倒しましょう!」

「わかった・・ルシファー、いまはアマゾンたちのともだち・・!」

 かなたが声を掛けて、アマゾンが頷いた。

「裏切り者のルシファーまで来たか・・まとめて始末してくれる!」

 カニ獣人がいら立ちをふくらませて、口から泡を吐き出す。かなたとアマゾンが左右に動いて、泡をかわす。

「カニは前後には歩けない・・後ろに回って動きを止めれば・・!」

 かなたがいい方法を考えて、ジャンプしてカニ獣人の後ろに回り込んだ。

「横に動けないだと?それは考えが甘いぞ!」

 カニ獣人が言い返すと、上に大きくジャンプした。

「何っ!?

 同じようにジャンプで後ろに回ってきたカニ獣人に、かなたが驚く。カニ獣人がかなたに向かって、また泡を吐き出してきた。

 そこへアマゾンが飛び込んできて、かなたを連れて離れる。だがカニ獣人の泡が左腕にかかって、アマゾンが負傷でうめく。

「アマゾン!?

 かなたが声を上げて、アマゾンとともにカニ獣人から離れる。

「大丈夫ですか、アマゾン!?・・僕が獣人を甘く見たせいで・・!」

「きにしなくていい・・ともだち、まもるのはあたりまえ・・!」

 自分を責めるかなたを励まして、アマゾンが自分の考えを正直に言う。

「ルシファーを庇ったか・・ならば先にアマゾンライダーを始末するまで!」

 カニ獣人がアマゾンを狙って、また泡を放つ。アマゾンがかなとともにジャンプして、泡をかわした。

「だいせつだん!」

 アマゾンが右腕を振り下ろして、腕の刃でカニ獣人の左腕を切り落とした。

「ギャアッ!」

 ハサミを1本落とされて、カニ獣人が絶叫を上げる。アマゾンも負傷した左腕を押さえて、その場に膝を付く。

「アマゾン、もうムチャしなくていいです!・・後は僕がやります・・!」

 かなたがアマゾンに代わって、カニ獣人との戦いに臨む。

「だったら、これをつかう・・おまえならつかえるはず・・!」

 アマゾンがあるものを取り出して、かなたに差し出した。

「これは、ライダーソウル・・アマゾン、あなたの・・!」

 アマゾンのライダーソウル「アマゾンソウル」を受け取って、かなたが戸惑いを覚える。

「ありがとうございます、アマゾン・・あなたの力で、戦います・・!」

“アマゾン!”

 かなたが感謝して、アマゾンソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウル。”

 彼はルシファードライバーにあるルシファーソウルを外して、アマゾンソウルをセットして、ルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。

“ダークチェンジ・アマゾン。”

 ルシファーの装甲がアマゾンそっくりに変わった。かなたは「アマゾンフォーム」になって、アマゾンそっくりの構えを取った。

「アマゾンがもう1人だと!?・・だが1人でこのオレに勝てると思わないことだ!たとえハサミを1つ失おうと!」

 カニ獣人が声を荒げて、かなたに向かってジャンプして前に飛び込む。するとかなたが素早く動いて、着地したカニ獣人の後ろに回り込んだ。

 かなたが振り返り様に腕を振りかざして、刃がカニ獣人を切りつける。硬い甲羅と体で大きなダメージにならなかったが、カニ獣人が体勢を崩した。

 その隙を目にして、かなたが足を突き出して、カニ獣人を転ばせた。仰向けに倒れたカニ獣人は、自力で起き上がることができなくなる。

「しまった!立てなくなってしまったー!」

 ジタバタしているカニ獣人を見て、かなたが仮面ライダーカリスのライダーソウル「カリスソウル」を手にした。

“カリス!”

 かなたがカリスソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のスロットにセットした。

“ダークチャージ・カリス。”

 ルシファーの腕の刃が鋭くなる。かなたが両手の爪をとがらせて、カニ獣人に向かっていく。

「アマゾンギルスヘルスタッブ!」

 かなたが両手を突き出して、カニ獣人の体を貫いた。

「ギャアッ!」

 体を貫かれたカニ獣人が、そのまま爆発して消滅した。

「アマゾンのだいせつだんよりもつよい・・!」

 アマゾンがかなたの戦いを見て、自分よりも強力だと実感した。

「カニ獣人がやられた・・!」

「このままではオレたちもやられてしまうぞ・・・!」

 カニアマゾン1と2が動揺を強めていく。2人は聖也たちの前から逃げ出そうと考える。

「逃げることは許さんぞ、貴様ら!」

 そのとき、カニアマゾンたちに向かって声がかかった。聖也たちの周りで爆発が起こった。

「うあっ!」

 聖也と悠が爆発に巻き込まれて、宙に跳ね上げられる。倒れた2人が、ビルの屋上にいる地獄大使と戦闘員たちを目撃した。

「地獄大使!ヤツもここに来たか!」

 聖也が悠とともに立ち上がって、地獄大使を警戒する。地獄大使は戦闘員を指揮して、砲台で砲撃をしてきた。

「怪人たちよ、我々が援護する!ライダーどもを倒せ!」

 地獄大使がカニアマゾンたちに向かって言い放つ。

「何だかよく分かんないけど・・」

「これで少しはこっちがやりやすくなるかな・・・!」

 カニアマゾン2と1が笑みをこぼして、聖也たちに飛びかかる。カニアマゾンたちの振りかざすハサミが、クラールの装甲とアマゾンオメガの外殻を切りつけた。

「このままじゃやられてしまう・・あの大砲を何とかしないと・・!」

 悠が地獄大使たちを見て、焦りをふくらませる。地獄大使たちからの砲撃に翻弄されて、悠たちは追い込まれていた。

「ライ、君も力を貸して!」

 アマゾンフォームから元のルシファーに戻ったかなたが、ライに向かって声を掛ける。

「今、自由に動けるのはライだけだよ!お願い、戦って!」

「でも、もしまた暴走するようなことになったら・・・!」

「そのときは僕がライを止めるよ!ハイパーショッカーに操られていた僕をライが止めてくれたように!」

 自分を見失うことを恐れるライに、かなたが呼びかける。ライはハイパーショッカーに操られていたときのかなたを思い出す。

(かなたはハイパーショッカーのせいで自分を失っていた・・それを、オレが必死に止めて、かなたの心を取り戻した・・・)

 自分がかなたにしたことを思い出して、ライが落ち着きを取り戻していく。

「かなた・・もしものときは、頼む・・・!」

 ライはかなたに告げると、クロスドライバーとクロスソウルを手にした。

“クロスドライバー!”

 ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。

“クロス!”

 音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。

“ライダーソウール!”

 ライは意識を集中して構えを取る。

「変身!」

 彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。

“クロスレイダー!”

 クロスに変身したライが、クロスレイダーソウルを手にしてスイッチを押す。クロスレイダーが駆けつけて、ライが乗って走り出す。

「クロスめ・・撃て!」

 地獄大使が命令して、戦闘員が大砲を発射する。ライの乗るクロスレイダーが、砲撃の爆発をかいくぐっていく。

 クロスレイダーがビルに向かってジャンプして、ライもそこからジャンプして屋上にたどり着いた。

「地獄大使、オレがお前たちの相手だ!」

「おのれ、クロス・・私が貴様を始末してくれる!」

 言い放つライの前に、地獄大使が立ちはだかる。

「くらえ!」

 地獄大使が電撃鞭を手にして、ライ目がけて振りかざす。ライが鞭の動きを捉えて素早くかわして、地獄大使に向かってジャンプした。

 そのとき、戦闘員たちが大砲の向きを変えて発射してきた。

「うあっ!」

 ライが砲撃を当てられて、体勢を崩して屋上に落下した。

「いいぞ、よくやったぞ、お前たち!」

 地獄大使が戦闘員たちを褒めてから、鞭を振りかざしてライの左腕に巻きつけた。

「があぁっ!」

 鞭から電撃が放たれて、ライが激痛に襲われる。鞭を振り払うも、彼のダメージは大きくなっていた。

「このまま貴様の息の根を止めてくれるぞ、クロス!」

 息を乱すライを見て、地獄大使が高らかに笑う。大砲の砲門がライに向けられている。

「オールソウルは使えない・・仮面ライダーのライダーソウルを使わないと・・・!」

 オールソウルの代わりに、ライはV3ソウルを手にした。

V3!”

“ライダーソウール!”

 彼はクロスドライバーにV3ソウルをセットして、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!ブイスリャー!”

 クロスの装甲がV3そっくりとなる。ライはV3フォームとなって、再び地獄大使たちに向かっていく。

 地獄大使が振りかざした鞭をかわして、ライがジャンプした。戦闘員が彼に向かって大砲を発射した。

 ライがクロスドライバーの右レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させる。

“ライダースマッシュ・ブイスリャー!”

 彼が右足にエネルギーを集めて、キックを出して砲撃を打ち破る。

「クロス反転キック!」

 ライは空中反転して、再びキックを繰り出した。

「甘いぞ!」

 地獄大使が鞭を振りかざして、ライの足に巻きつけた。ライが鞭からの電撃を受けながら、屋上に叩きつけられた。

「小細工が何度も通用すると思うな!その程度ではもはや我々を止めることはできぬわ!」

 地獄大使があざ笑って、倒れているライに近付いていく。

「とどめを刺してやるぞ、クロス!」

「このままやられるくらいなら・・このまま、お前たちの思い通りにされるくらいなら・・・!」

 地獄大使に言い返して、立ち上がってカメンソウルを取り出した。

“カメン!”

“ライダーソウール!”

 ライがカメンソウルをクロスドライバーにセットして、クロスタイフーンを回転させた。

“超変身・カメーン!”

 ライの体を赤と緑のラインの入った装甲が包む。彼はカメンフォームへの変身を果たした。

“オール!”

 ライは続けてオールソウルを手にして、スイッチを入れた。彼がクロスカリバーを引き抜いて、左のスロットにオールソウルをセットした。

“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”

 カメンフォームの緑と赤の横のラインに金のラインが加わり、装甲から神々しい輝きが発せられた。ライはオールフォームへの変身を果たした。

「ライくん、ダメだ!オールソウルを使えば・・!」

 聖也がライを見て、たまらず声を上げる。ライがクロスカリバーを構えて、地獄大使たちに向かっていく。

「おのれ・・撃て!撃ちまくれ!」

 地獄大使が命令を出して、戦闘員たちが大砲を発射する。ライはクロスカリバーを振りかざして、砲撃をなぎ払っていく。

「この砲撃を難なく跳ね返してしまうとは・・!」

 地獄大使がライの力を目の当たりにして毒づく。

「うろたえている場合ではない!攻撃の手を緩めなければ、さすがのヤツも体力を消耗させるはずだ!」

「イー!」

 彼が命令を出して、戦闘員が答えて大砲の砲門をライに向ける。

“ドライブ!”

 ライがドライブソウルを手にして、クロスカリバーの右のスロットにセットした。

“トライドロンドライブパワー!”

 クロスカリバーの刀身から赤い光が発せられる。ライの後ろに、「タイプトライドロン」になっているドライブの幻影が現れた。

「ドライブ・オールカリバー!」

 ライがクロスカリバーを振り下ろして、赤い光の刃を放つ。光の刃は砲撃を打ち砕いて、大砲を切り裂いて爆発させた。

「ここまでか・・お前たち、後は任せたぞ!」

 地獄大使がカニアマゾンたちに呼びかけてから、戦闘員たちを連れて逃げ出した。

「ライくん、これ以上は危険だ!早く変身を解除して・・!」

 聖也がライに向けて呼びかけたときだった。ライが突然腕を下げて、持っていたクロスカリバーを落とした。

「ライくん・・!」

「まさか、また暴走が・・・!」

 聖也とかなたが緊張をふくらませる。クロスへの変身が解除した直後、ライの体がクロスホッパーへと変化した。

「いけない!目を覚まして、ライ!」

 かなたが呼びかけるが、ライは聞かずに屋上から地上に飛び降りてきた。彼は聖也と悠、カニアマゾンたちに向かって突っ込んできた。

「オレたちの仲間・・じゃないぞ・・!」

「ヤバそうだ・・さっさと片付けないと・・!」

 カニアマゾン1と2が慌てて声を掛け合って、ライを迎え撃つ。しかしライの高速と力のあるパンチとキックを受けて、カニアマゾンたちが突き飛ばされる。

 ライがカニアマゾン2をつかみ上げて、連続でパンチを叩き込む。

「やめろ!離れろー!」

 カニアマゾン2が悲鳴を上げて、ハサミを突き出す。ライがパンチを繰り出して、ハサミにぶつけて半壊させた。

「ギャアッ!」

 カニアマゾン2が激痛に襲われて絶叫を上げる。ライが右足に力を集中させて、跳び上がりながらキックを繰り出した。

 蹴り飛ばされたカニアマゾン2が倒れて、力尽きて動かなくなった。

「おい!・・よくも・・よくもやってくれたなー!」

 カニイマジンが怒りをあらわにして、ライに向かっていく。ところがライは近くにいた聖也に攻撃を仕掛けてきた。

「やめるんだ、ライくん!私だ、滝聖也だ!」

 ライの打撃に打ちのめされながら、聖也が呼びかける。しかしライには聞こえず、攻撃をやめない。

「やめろ!」

 悠がライに向かっていって、組み合って力比べに持ち込む。2人の様子は荒々しく、互いに手をつかんだまま頭突きをぶつけ合う。

「止めないと、ライを・・・あれだけのパワーなら、多少力ずくでも大丈夫のはず・・・!」

 かなたがライを止めようと考えて、仮面ライダーダークカブトのライダーソウル「ダークカブトソウル」を取り出した。

“ダークカブト!”

“ライダーソウル。”

 彼はダークカブトソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のスロットにセットした。

“ダークチャージ・ダークカブト。”

「アマゾンカブトキック!」

 かなたが一気にスピードを上げて、悠を地面に投げつけたライに向かっていく。気付いたライが、かなたと同時に足を振りかざして、キックをぶつけ合う。

「うぐっ!」

 キックをした足に激痛を覚えて、かなたが倒れ込む。彼は足を手で押さえて転げまわる。

 ライはダメージを負った様子がなく、かなたを見下ろす。

「ライ・・やめてくれ・・このままじゃ、まりちゃんやおやっさんまで悲しむよ・・・!」

 かなたが声を振り絞って、ライを呼び止める。ライがかなたに追撃しようと、右手を握りしめて振り上げる。

「ライ!」

 かなたが叫ぶと同時に、ライが拳を振り下ろす。拳がかなたに当たる直前で止まった。

「かなた・・・オレは・・また・・・!?

「ライ・・元に戻ったんだね・・・!」

 クロスホッパーから人の姿に戻ったライに、かなたが安心の笑みをこぼす。

「ライくん・・・かなたくんと一緒に、アマゾンのところへ・・・!」

 聖也が感情を抑えて、ライに避難するように促す。

「はい・・・かなた、行こう・・・!」

 ライが小さく頷いて、かなたに肩を貸してアマゾンのところへ行く。

「あの怪人は、私たちが倒す・・・!」

 聖也がカニアマゾン1に目を向ける。

「君たちなら、これを使えるかもしれない・・!」

 悠が聖也に手を差し伸べた。その手に握られていたのは、ライダーソウル「アマゾンオメガソウル」だった。

「それは!・・ありがとうございます・・!」

 聖也が悠からアマゾンオメガソウルを受け取った。

“アマゾンオメガ!”

“ライダーソウール!”

 彼がアマゾンオメガソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!アマゾンオメガー!”

 クラールの姿がアマゾンオメガそっくりになった。聖也は「アマゾンオメガフォーム」となって、カニアマゾン1に向かっていった。

 カニアマゾン1が突き出すハサミを、聖也が爪と足で叩き返していく。聖也の爪を当てられて、カニアマゾン1が体から火花を散らす。

「うおっ!」

 聖也の連続の飛び蹴りで、カニイマジン1がしりもちをついた。着地した聖也が、クラールドライバーの右のレバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。

“ライダースマッシュ・アマゾンオメガー!”

 聖也の肘から刃「アームカッター」が伸びる。

「クラールバイオレントパニッシュ!」

 彼がアームカッターを振りかざして、カニアマゾン1の体を切り裂いた。

「そんな・・そんな・・・!」

 体を切られたカニアマゾン1が、絶叫しながら爆発を起こした。

「やった・・何とか終わったって感じだよ・・・」

 かなたが聖也とライ、悠とアマゾンを見てから、安心して吐息をついた。

“変身カイジョー。”

“ダークリリース。”

 聖也とかなた、悠が変身を解除して、アマゾンとともに合流した。

「大丈夫ですか、アマゾン、悠さん・・・?」

「僕たちは大丈夫だよ。それより、君のほうは・・」

 心配するかなたに答えて、悠がライに目を向ける。ライは暴走してしまった自分を責めて、苦悩を深めていた。

「力に溺れたり振り回されたりするのは、誰にでもあることだ。君だけじゃなく、僕たちも・・」

 悠が微笑んで、ライの肩に優しく手を乗せた。

「みんな、ともだち・・はるかも、ライたちも、ともだち・・」

 アマゾンもライたちに言って、独特の手と指の合わせ方をする。

「“友達ポーズ”・・はい。僕たちも友達ですね・・!」

 かなたが笑顔を見せて、アマゾンと同じポーズを見せた。

「みんな、もう1つ、これを・・」

 悠がもう1つ、ライダーソウルを手にした。アマゾンアルファのライダーソウル「アマゾンアルファソウル」である。

「ありがとうございます、悠さん・・大事に使います・・」

 かなたがアマゾンアルファソウルを受け取って、感謝した。

「僕たちも自分の力や衝動をコントロールできるようになるには苦労したよ。それでも君も乗り越えられると、僕も信じてるよ。」

 悠はライたちに励ましを送ると、アマゾンとともに歩き出す。

(オレは、また見境を失くしてしまった・・・)

 悠たちを見送りながら、ライは深く落ち込んでいく。

(ライ・・・)

 かなたもライを心配して、落ち着きを保てなくなっていた。

 

 

第39話へ

 

その他の小説に戻る

 

TOPに戻る

inserted by FC2 system