仮面ライダークロス
第34話「ゴースト!燃やせ、命と魂!」
「ルシファーが、市川かなたが自我を取り戻しただと・・!?」
かなたの心が戻ったことに、死神博士は耳を疑っていた。
「ハイパーショッカーの指折りの戦力が失われるとは、何たる事態・・!」
ゾルもこの現状に危機感を感じていた。
「シャドームーンもジャーク将軍も倒され、指揮系統にも弱体化が出ているようだな。」
そこへ1人の男が現れて、ゾルたちに声を掛けてきた。
「貴様は地獄大使!」
「お前もここに来たのか・・!?」
ゾルと死神博士が男、地獄大使を見て声を上げる。
「首領からの指令を受けた。近くにいたので直接伝えに来た。」
地獄大使が投げかけた言葉に、ゾルたちが息をのむ。
「本日ただ今をもって、この基地を破棄。全員本部に帰還せよ・・これが首領からの指令だ。」
地獄大使がゾルたちに指令を伝えた。
「ここを破棄か・・ここもクロスたちに知られているし、ルシファーもヤツらと行動を共にしている・・」
死神博士が納得して、小さく頷いた。
「全員、この基地を出るぞ!ここにある全てのデータを消去!我々につながる証拠を残すな!」
「イー!」
ゾルが指示を出して、戦闘員たちが答えて作業に入った。
「それと、ヨロイ元帥がクロスたちの打倒に向かったぞ。」
「何っ!?ヤツがクロスたちのところへ!?」
地獄大使が告げた言葉に、ゾルが驚きの声を上げる。
「今の向こうはライダーが3人だぞ。先日の戦いでヤツらが体力を消耗しているとはいえ、元帥に勝てるかどうか・・」
死神博士がヨロイ元帥に対して不安を感じていた。
かなたが橘モーターショップに戻ってきた。彼が一緒にいることに、ライもまりも安心していた。
ライがかなたに今までのことを語った。その間に手に入れたライダーソウルを見せながら。
「僕が、ハイパーショッカーに捕まって操られて、ライくんを襲ったなんて・・・」
自分のしてきたことに、かなたが絶望と罪悪感を感じていく。
「かなたは悪くない・・かなたはハイパーショッカーに操られていただけなんだ・・!」
「そうだよ!私もライくんも、かなたくんが帰ってくることを、ずっと信じてたんだから・・!」
ライとまりがかなたに思いを告げる。2人から励まされて、かなたが戸惑いを覚える。
「ゴメン、2人とも・・そして、ありがとう・・・」
かなたが謝意を見せて、ライたちに微笑みかけた。
「それで、彼が滝聖也。クロスと同じタイプの仮面ライダー、クラールに変身するんだ。」
ライが後ろにいる聖也を、かなたに紹介する。
「かつて私は正義と銘打って、君たちを傷付けようとしてしまった・・悪を倒すために他を傷付ける愚かさを思い知った・・すまない・・」
聖也が事情を話して、かなたに頭を下げた。
「頭を上げてください・・僕だって、悪いことをしちゃったんだから・・・」
かなたが言いかけて、聖也に手を差し伸べてきた。
「これからよろしくお願いします、聖也さん・・」
「あぁ・・こちらこそよろしく、かなたくん・・」
和解を果たして笑みをこぼすかなたと聖也。聖也も手を差し伸べて、かなたと握手を交わした。
それからライと聖也はかなたにクロスワイズソウル、カメンソウル、ヴァイスソウル、オールソウルを見せた。
「これが、ライと聖也の強化フォームのためのソウル・・」
かなたがソウルを見て戸惑いをふくらませる。しかし彼はすぐに表情を曇らせた。
「でも僕には、ルシファーとしての僕には、そういうソウルは・・」
「いや、ルシファーの力は、ヴァイスクラールやクロスのカメンフォームを上回るほどになっている。強化のためのライダーソウルを使わなくても、十分な力を発揮できるはずだ。」
自分の無力を感じていくかなたに、聖也が言いかける。
「それに、強化タイプのソウルはリスクが伴う。体へのダメージも生易しくはない・・」
「仮面ライダーのみなさんの力が込められたソウルを使っていけばいいよ・・」
聖也が注意を言って、ライも呼びかける。
「うん・・僕・・僕のできることをやるよ・・・」
かなたが頷いて、苦悩と迷いを和らげた。
(しかし、新しく現れたオールソウル・・ライくんは、使っても今までのソウルのように負担を感じることはないと言っていた。しかし私には、何かあるのではないかと思えてならない・・)
聖也はオールソウルを使うリスクを考えずにはいられず、ライへの心配を抱えていた。
そのとき、ライの耳に騒音が入ってきた。
「何か騒ぎが聞こえてくる・・・!」
「えっ・・?」
ライが口にした言葉に、聖也たちが疑問を覚える。
「みんなが悲鳴を上げているみたいだ・・もしかしたらハイパーショッカーが出たんじゃ・・・!?」
「ライくん・・私には悲鳴らしい声は聞こえてこないけど・・」
耳を澄まして周りを見回すライに、まりが動揺しながら言いかける。
「ライくん、僕もそういう声は聞こえてこないよ・・」
「私もだ。」
「えっ・・・!?」
かなたも聖也も疑問符を浮かべて、ライが動揺を浮かべる。
(もしかして、オレしか聞こえなかった!?・・オレの聞き間違いだったのか・・・!?)
ライが心の中で疑問を感じていた。しかし彼には悲鳴が空耳だったようには思えなかった。
「みんな、大変だ!街に怪人が出たぞ!」
そのとき、ひろしが顔を出して、TVで見たニュースについて口にした。
「何だって!?」
彼の言葉にかなたとまりが驚きの声を上げた。
(やっぱりホントだったのか・・・!)
「オレ、行ってくる!」
ライは動揺を抱えながら、外へ飛び出した。
「ライくん、僕も行く!僕だって戦えるんだ!」
かなたが意気込みを見せて、ライを追いかけていった。
「まりさんとひろしさんはここにいてください。私も2人についていきます。」
聖也はまりたちに言うと、続けて外へ出た。
(ライくんだけが事件のことに気付いていた・・それほどまでに彼の聴覚が鋭くなっていたというのか・・・!?)
聖也は走りながら、ライのことを気に掛けていく。今のライはそれまでと違うと、聖也は思っていた。
デストロンの幹部であるヨロイ元帥。ハイパーショッカーの任務で地獄大使と行動を共にしていたヨロイ元帥だが、地獄大使と別れてクロスたちの打倒のために動き出していた。
クロスたちをおびき出そうと、ヨロイ元帥は戦闘員を引きつれて、周囲の人々を襲っていた。
「クロス、クラール、そしてルシファー、決して逃げ切ることはできんぞ。このヨロイ元帥が、貴様たちに引導を渡してくれる。」
ヨロイ元帥がライたちを捜して街中を歩き回る。その間に、戦闘員たちは怪人や戦士にするために、街の人たちを捕まえていた。
そのヨロイ元帥たちの前にライ、聖也、かなたが駆けつけた。
「出てきたか、クロス、クラール。ルシファーも行動を共にしていたか。」
ヨロイ元帥がライたちを見て笑みをこぼす。
「アイツは、デストロンのヨロイ元帥・・アイツもハイパーショッカーの一員に・・!」
「今度はヤツが私たちを始末しようと出てきたか・・!」
ライと聖也がヨロイ元帥を見て声を上げる。
「ルシファー、我々に従い、クロスとクラールを倒せ。そうすれば先日の敗北の罪は水に流そう。」
ヨロイ元帥がかなたに手を差し伸べて呼びつける。しかしかなたは聞こうとしない。
「僕はもう、ハイパーショッカーの操り人形じゃない・・言いなりにされていた僕を、ライが助けてくれたんだ!」
「かなた・・・!」
自分の意思と感謝を口にするかなたに、ライが戸惑いを覚える。
「おのれ、ルシファー・・この裏切り者が・・!」
ヨロイ元帥がかなたにいら立ちを浮かべる。
「かなた、お前も戦うつもりか・・・?」
「もちろんだよ・・僕だって、ライを守りたい・・!」
ライが問いかけて、かなたが真剣な顔で頷いた。
「ありがとう、かなたくん・・ライくんも行くぞ・・!」
聖也が呼びかけて、クラールドライバーとクラールソウルを取り出した。ライもクロスドライバーとクロスソウルを手にした。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
“クラール!”
“ライダーソウール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
彼の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。
(僕も、ライと聖也さんと一緒に・・・!)
改めて決意を固めたかなたが、ルシファードライバーとルシファーソウルを手にした。
“ルシファードライバー。”
“ルシファー!”
彼がルシファードライバーを装着して、ルシファーソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウル。”
かなたがルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。
「変身。」
彼がルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。
“ダークチェンジ・ルシファー。”
かなたが紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとった。ライ、聖也、かなたがクロス、クラール、ルシファーへの変身を果たした。
「全てを、オレが正す!」
「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」
「この悪魔の力で、みんなを守る!」
ライ、聖也、かなたが言い放つ。3人の仮面ライダーが並び立って、力を合わせてハイパーショッカーに立ち向かおうとしていた。
「よかろう!3人まとめて、このヨロイ元帥が処刑してくれるぞ!」
ヨロイ元帥が言いかけて、左手に鉄球を備えてライたちに向かっていく。
ライと聖也が繰り出すパンチをかわして、ヨロイ元帥が鉄球を振りかざす。クロスとクラールの装甲に鉄球が当たって火花を散らして、ライと聖也がふらつく。
かなたが続けて飛びかかって、キックを連続で繰り出す。ヨロイ元帥がキックを受けてふらつくも、左手の鉄球を突き出す。
体に鉄球をぶつけられるも、かなたはヨロイ元帥のその腕に組みついた。
「ルシファー・・裏切り者は1人たりとも逃しはせんぞ・・!」
「僕はやられない・・もう僕は、お前たちの思い通りにはならないぞ!」
鋭く言いかけるヨロイ元帥に、かなたが言い返す。
「しかし貴様も、悪に手を染めたという事実は変えようがない。貴様もハイパーショッカーのために戦い、人々を苦しめたのだから・・」
ヨロイ元帥が投げかけたこの言葉を聞いて、かなたが心を揺さぶられる。
「そんなことは・・・!」
「現に貴様は、クロスを1度死に至らしめた・・友と思っていた者を、貴様はその手に掛けたのだぞ・・」
動揺をふくらませるかなたに、ヨロイ元帥が笑みを浮かべて言いかける。かなたはライを殺したことを思い出して、絶望と罪悪感に襲われる。
「その貴様が、仲間や正義のために戦うなど、片腹痛いことだ。もはや命の重さすらも感じているとは到底思えんな・・」
自分を責め始めるかなたを、ヨロイ元帥があざ笑う。
「命の重さを分かってないのは、お前たちだろうが!」
ライが飛び込んで、突進でヨロイ元帥を突き飛ばして、かなたから引き離す。
「かなたはオレたちのことを心から気にしてくれてる!そのかなたが、命の大切さが分からないわけがない!」
「ライ・・・!」
言い放つライに、かなたが戸惑いを感じていく。
「でも、僕は知らないうちに、ライのことを・・・」
「かなた・・・!」
さらに自分を責めるかなたに、ライが動揺を覚える。
「フハハハハ!絶望しろ、クロス、クラール!貴様たちはまとめて私が葬る!」
ヨロイ元帥が高らかに笑って、ライたちに向かって鉄球を振りかざした。
「うあっ!」
ライとかなたが鉄球をぶつけられて突き飛ばされる。
「ライくん!聖也くん!」
聖也が叫ぶが、立ちはだかる戦闘員たちに行く手を阻まれる。
ヨロイ元帥が頭の兜から光線を放つ。かなたが光線を受けて突き飛ばされて、そのはずみでルシファードライバーが外れて、ルシファーへの変身が解けた。
「かなた!」
倒れたかなたにライが叫ぶ。迫るヨロイ元帥を前にして、かなたは動揺を隠せなくなる。
「まずは貴様を始末するぞ、ルシファー・・!」
「そうはさせないよ!」
鉄球を構えたヨロイ元帥に向かって声がかかった。彼とライたちが振り向いた先に、1人の青年がいた。
「ここからはオレもやらせてもらうよ!」
「あ、あなたは・・!」
言いかける青年に、ライが戸惑いを覚える。
「天空寺タケル・・仮面ライダーゴースト・・!」
ヨロイ元帥が青年、タケルを見て身構える。
「さぁ、オレも命、燃やすぜ!」
タケルが言い放って、目玉型のアイテム「ゴースト眼魂」を手にして、装着しているベルト「ゴーストドライバー」にセットした。
“アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!・・”
彼が音声を発するゴーストドライバーの右側のレバーを引く。
「変身!」
“カイガン・オレ!レッツゴー!カクゴ!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!”
レバーを押したタケルの体を、パーカーのようなスーツと仮面が包んだ。彼は眼魂を使う仮面ライダー、ゴーストとなった。
「ゴースト・・タケルさんが来た・・・!」
ライがタケルを見て、さらに心を動かされる。一方、かなたは動揺を不安を抑えられないでいた。
「ゴースト、クロスたちとともに葬ってくれる!」
ヨロイ元帥が笑みをこぼして、タケルに向かって兜からの光線を放つ。タケルはジャンプして光線をかわす。
飛び込んだタケルがパンチを連続で繰り出して、ヨロイ元帥を攻め立てる。
「かなた、1度離れるんだ・・!」
ライがかなたに呼びかけて、ルシファードライバーを拾う。
「でもライ、僕は君のことを・・」
「それはハイパーショッカーに操られてたからだ・・かなたがやろうとしてやったことじゃない・・!」
自分を責めるかなたに、ライが必死に呼びかける。
「今、こうしてかなたがここにいる・・心も魂も、ここにいる・・それだけでいいじゃないか・・それだけでオレも嬉しいし、まりちゃんたちも嬉しく思ってる・・!」
「ライ・・僕を、許してくれるの・・・!?」
「もちろんだ!かなたは、オレの友達だ!」
戸惑いを感じていくかなたに、ライが思いを言い放つ。彼の叫びが、かなたの苦悩を一気に和らげた。
そのとき、タケルがヨロイ元帥から鉄球をぶつけられて、ライたちのそばまで突き飛ばされた。
「タケルさん!」
ライが声を上げて、タケルが立ち上がってヨロイ元帥に視線を戻す。
「そうだよ・・ライくんはこうして生きているし、かなたくんも魂を取り戻している・・それだけで、すごくすばらしいことなんだよ・・!」
ライたちの会話を聞いていたタケルが、彼らに呼びかけて笑みをこぼす。
「死んでしまったら、みんなに会うことができない・・話をすることもできない・・だから、生きてるのはいいことなんだ。」
「タケルさん・・・」
タケルに励まされて、ライがかなたとともに勇気づけられる。
「命を燃やして魂を強くして、強く生きるんだ・・オレも君たちも、自分やみんなのために!」
「はいっ!」
タケルの言葉を受けて、ライとかなたが大きく頷いた。
そのとき、ゴーストドライバーにあるゴースト眼魂から光があふれ出した。光はライの手元に来て、ライダーソウル「ゴーストソウル」に変わった。
「これは、ゴーストのライダーソウル!」
ライがゴーストソウルを見てから、タケルに視線を戻す。
さらに聖也とかなたの手元にも光が集まった。光はそれぞれライダーソウル「スペクターソウル」と「ネクロムソウル」になった。
「これは、ネクロムのライダーソウル!?・・聖也さんのところに来たのは、スペクターの・・!」
かなたがネクロムソウルとスペクターソウルを見て、戸惑いをふくらませていく。
「みんなにも使えるはずだよ。オレと2人の力を・・!」
タケルが呼びかけてライ、聖也、かなたが頷いた。
「タケルさん、あなたたちの力、使わせていただきます!」
“ゴースト!”
ライがタケルに言いかけて、ゴーストソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼がクロスドライバーにゴーストソウルをセットして、クロスドライバーの左レバーを上に上げてクロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!ゴースト!”
クロスの装甲がゴーストそっくりになった。ライはゴーストの姿と力を宿した「ゴーストフォーム」となった。
「私も使わせてもらいます・・!」
“スペクター!”
聖也も言いかけて、スペクターソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼がスペクターソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!スペクター!”
クラールの装甲が仮面ライダースペクターそっくりとなった。聖也は「スペクターフォーム」への変身を果たした。
「僕も戦わなくちゃ・・ライや聖也さん、まりちゃんやおやっさん、みんなのために・・!」
かなたが立ち上がって決意を言い放つ。
“ルシファードライバー。”
“ネクロム!”
“ライダーソウル。”
彼がスイッチの入れたネクロムソウルを、装着したルシファードライバーの右のソウルスロットにセットした。
「変身!」
“ダークチェンジ・ネクロム。”
ルシファーハリケーンを中心へ押し込んだかなた。彼は仮面ライダーネクロムの姿と力を宿した「ネクロムフォーム」となった。
「オレたちも命、燃やすぜ!」
「私の生き様、見せてやる!」
「僕たちの、心の叫びを聞け!」
ライ、聖也、かなたがヨロイ元帥に向かって言い放つ。
「おのれ、ライダーどもが・・そろって小賢しいマネを!」
ヨロイ元帥がいら立ちをふくらませて、兜から光線を放つ。ライとかなた、聖也とタケルが左右に動いて光線をかわす。
聖也とタケルが戦闘員たちをパンチで次々に打ち倒していく。ライとかなたがヨロイ元帥に果敢に挑んでいく。
かなたが振りかざした腕を、ヨロイ元帥が手でつかんだ。
「あくまで我らに逆らうというのか?悪の道を歩いていた貴様が・・」
ヨロイ元帥がかなたをあざ笑う。しかしかなたは動じずに、ヨロイ元帥の手を振り払う。
「僕が悪や間違いをしてしまったなら、僕はその償いをする意味でも、お前たちと戦う!僕たちとみんなの、命と心を守るために!」
かなたが右足を突き出して、ヨロイ元帥を蹴り飛ばした。
「ぐっ!」
ヨロイ元帥が押されてうめく。
「今だよ!」
かなたがライに呼びかけて、仮面ライダーチェイサーのライダーソウル「チェイサーソウル」を手にした。
“チェイサー!”
彼がスイッチの入れたチェイサーソウルを、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・ルシファー。”
かなたの足に紫のエネルギーが集まっていく。
ライと聖也もクロスタイフーン、クラールタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加える。
“ライダースマッシュ・ゴースト!”
“ライダースマッシュ・スペクター!”
2人の足にもエネルギーが集まっていく。
“ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!”
タケルもゴーストドライバーのレバーを引いて押して、エネルギーを集中させる。彼らが同時にジャンプして、ヨロイ元帥に向かっていく。
「クロスオメガドライブ!」
「クラールオメガドライブ!」
「ネクロムチェイサーエンド!」
ライ、聖也、かなたがタケルとともにエネルギーを集めたキックを繰り出す。
「ぐおっ!」
鉄球がキックを受けて砕かれて、ヨロイ元帥が突き飛ばされて、地面を激しく転がる。着地したライたちの視線の先で、ヨロイ元帥が力を振り絞って立ち上がる。
「おのれ、仮面ライダーども・・この私をここまで追い詰めるとは・・・!」
ヨロイ元帥が呼吸を乱しながら、ライたちに鋭い視線を向ける。
「こうなれば、私の真の姿を見せねばなるまい・・・!」
ヨロイ元帥が全身に力を込めて、光を発する。すると彼の姿がザリガニの怪人に変わった。
「その姿は・・!」
「このザリガーナが、このオレの真の姿だー!」
声を上げるライに怪人、ザリガーナが高らかに名乗りを上げる。
「お前たち4人とも、オレの泡爆弾で木っ端微塵にしてくれる!」
ザリガーナが言い放つと、口から泡玉を飛ばしてきた。ライたちが左右に動いて、外れた泡玉が爆発を起こす。
ザリガーナが次々に泡玉を連射していく。ライたちは素早く泡玉をかわしていく。
「これじゃ近付けないし、危険が広がるばかりだよ・・!」
ザリガーナの執拗な攻撃に、かなたが焦りを噛みしめる。
「こうなったら、オールソウルで・・!」
思い立ったライが、カメンソウルとオールソウルを取り出した。
「待つんだ、ライくん!早まったら・・!」
“カメン!”
“ライダーソウール!”
聖也が呼び止めるが、ライはカメンソウルをクロスドライバーにセットして、クロスタイフーンを回転させた。
“超変身・カメーン!”
ライの体を赤と緑のラインの入った装甲が包む。彼はカメンフォームへの変身を果たした。
“オール!”
ライは続けてオールソウルのスイッチを入れた。彼がクロスカリバーを引き抜いて、左のスロットにオールソウルをセットした。
“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”
オールソウルが反応して、音声を発した。カメンフォームの緑と赤の横のラインに金のラインが加わり、装甲から神々しい輝きが発せられた。
ライはオールフォームへの変身を果たした。
「新しいクロスか!お前から吹き飛ばしてやるぞー!」
ザリガーナがいきり立って、さらに泡玉を飛ばす。前に向かって歩いていくように見えるライが、泡玉の間を次々にすり抜けていく。
「な、何っ!?」
泡玉もその爆発もライに当たらないことに、ザリガーナが驚きを隠せなくなる。
「ザリガーナ、いや、ヨロイ元帥、オレもかなたも、お前たちの思い通りにはならない・・!」
“V3!”
ライがザリガーナに言い放つと、V3ソウルを手にして、クロスカリバーの右のスロットにセットした。
“V3パワー!”
ライが大きくジャンプして、反転しながらクロスカリバーを振りかざす。
「クロス反転カリバー!」
ライが突き出したクロスカリバーが、ザリガーナの背中の甲羅を切り裂いた。
「ぐおっ!」
ザリガーナがうめいてふらつき、切り裂かれた甲羅がバラバラになって落ちた。
「おのれ・・よくもやってくれたな!」
いら立ちを見せたザリガーナが、落ちた甲羅の欠片をつかんで、ライ目がけて投げつけた。ライがクロスカリバーを振りかざして、甲羅をはじき飛ばす。
ライがゴーストソウルを手にして、クロスカリバーの右のスロットにセットされているV3ソウルと入れ替えた。
“ムゲンゴーストカリバー!”
刀身に黄色の光をまとったクロスカリバーを振りかざすライ。光の刃が放たれて、ザリガーナを切り裂いた。
「ぐあぁっ!」
絶叫を上げたザリガーナが、その場に膝を付く。
「見事だ、クロス・・だがこれで勝ったと思うな・・・オレが倒されても、ハイパーショッカーの侵略は止まらん・・・!」
ザリガーナが声を振り絞って、ライたちをあざ笑う。
「ハイパーショッカーは、裏切り者も反逆者も見逃さん・・どこまでも追われることになる・・わずかの時間の幸福を、せいぜい楽しんでおくのだな・・・」
ザリガーナが忠告を送ると、力尽きて倒れて爆発を起こした。
「ザリガーナを、ヨロイ元帥をやっつけた・・・!」
タケルが言いかけて、ライが振り返って頷いた。
“変身カイジョー。”
“ダークリリース。”
“オヤスミー。”
ライ、聖也、かなた、タケルが変身を解いて、互いに目を向けた。
「たとえ悪い力に振り回されたとしても、間違いをしてしまったとしても、やり直すことができる。君たちもそのことは分かっているはずだよ。」
タケルがかなたに微笑んで励ましの言葉を送る。
「間違っても、やり直せる・・僕も・・・」
かなたが戸惑いを感じて、ライに目を向ける。
「でも、命にやり直しはできない。オレやライくんのように生き返るなんてことを期待したらダメだ・・命は、誰にとっても1つしかないものだから・・」
タケルが真剣な顔で、ライたちに言いかける。ライ、聖也、かなたも真剣な顔で頷いた。
「自分のことを大事にね。命と魂は、その人だけでなく、その人を大事にしている人たちのためにもあるから・・」
「はい・・気を付けます、タケルさん。」
タケルの言葉を聞いて、ライが微笑んで答えた。
「オレは戻るよ。オレもオレの人生を歩いていく。命、燃やしながらね。」
タケルはライたちに挨拶して、1人歩き出した。
(ありがとうございます、タケルさん・・僕もライたちのために、命を大事にしながら燃やしていきます。)
かなたが心の中でタケルへの感謝を告げていた。
(命、魂・・・ライくんに、何もなければいいが・・・)
聖也はライのことを心配していた。オールソウルを使うリスクを、聖也は気にせずにいられなかった。