仮面ライダークロス

第33話「2人の魂、悪夢の決着」

 

 

 ハイパーショッカーの基地に戻って、体力の回復を行っていたかなた。死神博士は彼に対して、不安を感じていた。

「まさかクロスがさらに強くなり、今のルシファーさえも超えるほどの力を得たとは・・・!」

「シャドームーンまで倒してしまうとは・・!」

 ゾルとジャークがオールフォームとなったライへの警戒を強めていく。

「これ以上調整しようとしても、ルシファー自身の強化につながらん。そればかりか、ヤツの体を崩壊させることになりかねん・・」

 死神博士がかなたについて苦言を呈してきた。

「現時点でルシファーのための新たな武器はない・・今の戦闘力で、クロスと戦わなければならんということだ・・・!」

「ならば余が援護しよう。死神博士、新しいクロスのデータは集めておるか?」

 言いかける死神博士に、ジャークが問いかける。

「あれだけではあのクロスの能力は計り知れぬ。分かっているのは強大な戦闘力と、ライダーソウルの能力を最大限に引き出せることぐらいだ・・」

「そうか・・注意を厳重にする必要があるか・・」

 深刻な顔を見せる死神博士の答えを聞いて、ジャークは頷いた。

「ルシファーが回復次第、クロスたちを倒しに向かう。」

 ジャークは告げて、ゾルたちの前から立ち去った。

(次で決着がつくか・・ルシファーの、クロスとの戦いの・・・)

 死神博士がかなたの真価が問われる時を予感して、深刻さをふくらませていた。

 

 ライと聖也が無事に戻ってきた。そのことにまりとひろしは安らぎを感じていた。

「ライくん・・・よかった・・ホントによかった・・・」

 まりがライに寄り添って、彼の無事を確かめる。

「でも、かなたを連れ戻すことはできなかった・・・今度こそ・・今度こそ・・・!」

 ライがまりに謝って、かなたへの思いを口にする。

「しかしムチャは禁物だ。いくらかなたくんを助けるためでも、君が犠牲になってはいけない。」

 聖也がライに向けて警告を投げかける。

「それにこのオールソウル、まだまだ効果が未知数だ・・」

「はい・・分かっています・・でもまず使うときは、かなたを止めるとき・・・」

 聖也に答えて、ライがオールソウルを手にして見つめる。

(かなた、オレがお前を止めて、一緒にここに帰るからな・・これ以上、まりちゃんとおやっさんを悲しませない・・・!)

 心の中で呟いて、ライは改めてハイパーショッカーの本部へ向かうときを待った。

 

 体力の回復を終えて、かなたはゾルたちの前に立った。

「申し訳ありませんでした。クロスを倒す命令、果たせませんでした・・」

「また想定外のことが起こっただけのこと。ただクロス打倒のための新たな情報は少ない。」

 頭を下げるかなたに、死神博士が言葉を返す。

「構いません。これ以上パワーを増す前に、私がクロスを倒してみせます。」

「よし。ルシファー、クロスを倒せ!お前の援護はジャーク将軍が行う!」

 進言するかなたに、ゾルが命令を出した。かなたはまた一礼してから、本部から出た。

(頼むぞ、ルシファー。お前こそが、わしの切り札だ・・・!)

 死神博士が心の中で、かなたへの信頼を告げていた。

 

 改めてハイパーショッカーの本部を目指すライと聖也。クロスレイダー、クラールジェットに乗って、本部へ急いだ。

(ハイパーショッカーが必ず迎撃に出ているはずだ・・それがかなただったら、必ず・・・!)

 かなたが出てくる可能性も考えて、ライは決戦を予感していた。

 そのとき、ライは自分たちとは別のエンジン音が響いてきたのを耳にした。

「聖也さん!」

 ライが呼びかけて、クロスレイダーを止めた。聖也もとっさにクラールジェットを止めた。

「どうしたんだ、聖也くん・・!?

「何かが近づいてきています・・・バイクの音・・・!?

 聖也が問いかけて、ライが答えて耳を澄ます。

「確かに聞こえる・・一般人であってほしいが・・・」

 聖也もエンジン音を耳にした。その音は2人にだんだんと近づいてくる。

 やがて1台のバイクがライたちの前に現れた。そのバイクに乗っていたのは、かなただった。

「かなた・・・!」

 メットを外したかなたを見て、ライが緊張を覚える。

「クロス、今日こそ決着を付ける。私の持てる力の全てを使って、お前を倒す。」

 かなたが言いかけて、バイク「ルシファーズバイパー」から降りる。

「聖也さん、かなたとはオレだけで戦わせてください・・今日こそ、かなたの目を覚まさせる・・・!」

 ライが真剣な顔を浮かべて、聖也に言いかける。

 そこへジャークが戦闘員、チャップたちを連れて現れた。

「ルシファーとクロスの戦いの邪魔はさせんぞ。クラール、お前の相手は余が務める。」

 ジャークが聖也に目を向けて言いかける。彼が手にしたのは杖ではなく剣である。

「ライくん、君の言う通りにするしかないようだ・・」

「すみません、聖也さん・・」

 聖也が言いかけて、ライが小さく頷いた。

「かなた、行くぞ・・!」

 ライがかなたに向けて呼びかける。ライと聖也がそれぞれクロスドライバーとクロスソウル、クラールドライバーとクラールソウルを手にした。

“クロスドライバー!”

 ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。

“クロス!”

 音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。

“ライダーソウール!”

 ライは意識を集中して構えを取る。

「変身!」

 彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。

“クラール!”

“ライダーソウール!”

 聖也がクラールソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットした。

「変身!」

 聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クラール!”

 彼の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。

「クロス、お前は私が倒す。クラールはジャーク将軍が葬ってくださる。」

 かなたがライに告げて、ルシファードライバーとルシファーソウルを手にした。

“ルシファードライバー。”

“ルシファー!”

 彼がルシファードライバーを装着して、ルシファーソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウル。”

 かなたがルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。

「変身。」

 彼がルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。

“ダークチェンジ・ルシファー。”

 かなたが紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとった。ライ、聖也、かなたがクロス、クラール、ルシファーへの変身を果たした。

「覚悟しろ、クロス。お前たちを倒すことが、私の使命。私の存在理由。」

「そうじゃないことを教えてやる・・言葉ではなく強さで・・!」

 口調を変えずに言いかけるかなたに、ライが思いを口にして飛びかかる。ライが繰り出すパンチとキックを、かなたは正確に回避と防御をしていく。

「それでは私に勝てないことは、お前も分かっているはずだ。」

 かなたが言いかけて、足を突き出してライの体にキックを当てた。蹴り飛ばされたライが地面を転がるも、すぐに立ち上がる。

「この前の新たな姿になって見せろ。」

 かなたがライにオールフォームになるように呼びかける。

「今のお前を止めるには、新しいライダーソウルを使うしかない・・分かっていたことだ・・・!」

 ライは自分に言い聞かせるように呟いて、オールソウルを取り出した。

「かなたを助けるには、この力が必要なんだ・・・オレに、力を貸してくれ・・・!」

 ライはオールソウルに呼びかけてから、カメンソウルも手にした。

“カメン!”

“ライダーソウール!”

 ライはクロスドライバーにセットされているクロスソウルを、カメンソウルと入れ替えた。

「超変身!」

 彼がクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“超変身・カメーン!”

 ライの体を赤と緑のラインの入った装甲が包む。彼はカメンフォームへの変身を果たした。

“オール!”

 ライはオールソウルのスイッチを入れた。彼がクロスカリバーを引き抜いて、左のスロットにオールソウルをセットした。

“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”

 オールソウルが反応して、音声を発した。カメンフォームの緑と赤の横のラインに金のラインが加わり、装甲から神々しい輝きが発せられた。

 ライはオールフォームへの変身を果たした。

「全てを1つに、オレがつなげる・・!」

 ライがかなたに向かって鋭く言う。ライがゆっくりとかなたに向かって歩を進める。

(あのクロスのスピードは私をも超える。パワーも・・攻撃を受け止めて捕らえればスピードは止められるが、あのパワーに耐えられるという保証はない・・)

 かなたがライ打倒の対策を考えていく。

(だが、そのパワーに耐える方法はある。)

 かなたが1つの方法を見出すと、ライを迎え撃って足を振りかざす。その瞬間、かなたの目の前からライの姿が消えた。

 それを確かめたかなたが、1つのライダーソウルを手にした。

“ゲンム!”

 かなたがライダーソウル「ゲンムソウル」のスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。

“ダークチャージ・ゲンム。”

 彼は右足にエネルギーを集めて、構えを取った。ライが高速で詰め寄って、パンチを繰り出して命中させた。

「ぐっ・・!」

 ライのパンチの重みに押されて、かなたがうめく。しかし彼はライの腕を受け止めていた。

「ゲンムの“ゾンビゲーマー”は、ダメージが大きくなってもすぐによみがえる。ゾンビのように・・」

 かなたが言いかけて、ライに向かって右足を振りかざす。彼の渾身のキックが、ライの体に命中した。

「これならば決定打を受けることにならない・・この一撃が、お前への決定打になった・・」

 ライを倒したと確信して、かなたが言いかける。

「オレは倒れない・・かなた、お前を元に戻すまでは・・・!」

 ライが声を発して、かなたが驚きを覚える。彼のキックを受けても、ライはほとんどダメージを受けていない。

「直撃を受けたはず!?・・効いていないはずは・・・!?

 オールフォームとなっているライの力に、かなたは冷静さを崩していた。

 ライがルシファードライバーを外そうと手を伸ばす。かなたがたまらずライから離れる。

「なんということだ・・パワーアップを続けているルシファーの能力を、確実に上回っている・・・!」

 ジャークもライの強さについて驚く。

「ベルトを奪われたら、何もかも終わる・・そうはさせない・・・!」

 かなたが毒づいて、ライ打倒の秘策を模索する。

「かくなる上は最後の手段・・これを使えば確実にクロスを倒せるが、負担が格段に大きく、短時間しか使えない・・・!」

 呟く彼が新たなライダーソウルを取り出した。仮面ライダークロノスの力を宿した「クロノスソウル」である。

「しかしやる以外にない・・そうしなければ、クロスに確実にやられる・・!」

“クロノス!”

 思い立ったかなたがクロノスソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。

“ダークチャージ・クロノス。”

 かなたの右足にエネルギーが集まった。その瞬間、彼の周囲の動きが全て止まった。

 クロノスソウルを使用しているかなたは、クロノスの能力である時間停止「ポーズ」を発動することができる。クロノスソウルの使用に大きな負担がかかるのは、時間に干渉するこの能力の影響による。

「これでさすがのクロスも動けない・・しかし長くは持たない・・この一撃で終わらせる・・・!」

 かなたが呟いて、ライに近づいていく。ライは全くの無防備で耐えることもできないと、かなたは確信していた。

 かなたがライに向かって右足を振りかざして、キックを繰り出した。

 次の瞬間、止まっていたはずのライが動き出して、かなたのキックをかわした。

「なっ・・!?

 ライが動いたことに、かなたは驚きを隠せなくなる。時間が止まっている中で、ライはその影響を受けることなく行動していた。

 体力を一気に消耗したかなたが、ルシファードライバーからクロノスソウルを外した。ポーズの効果が消えて、止まっていた時間が動き出した。

「な、何が起こった・・!?

「ルシファー、クロノスの力を使ったのか・・!」

 聖也が今起こったことを確かめて、ジャークが息をのむ。

「どういうことだ!?・・この時間停止に対抗できるのは、ムテキゲーマーとなったエグゼイドか、人間と肉体構造が違う改造人間の仮面ライダーだけのはず・・!?

 ライが動けたことにかなたが疑問を感じていく。

「オレには分かる・・このオールソウルは、仮面ライダーの力を1つに束ねるものになっている・・その力は、次元さえも超えると・・・!」

 ライが語りかけて、1度腰に提げていたクロスカリバーを引き抜いて、セットされているオールソウルを見つめる。

 あらゆる次元を超える力を備えたオールフォーム。その効果は時間や空間にも囚われない程になっている。

「だから、止まった時間の中でも動けたというのか・・・!?

 かなたが勝機を見失って、絶望を覚える。

「だが、これだけ常軌を逸した能力を発揮して、何のリスクもないはずがない・・・!」

 オールフォームになってもライに必ず弱点はあると、ジャークは思った。

「かなた・・オレが、お前をおやっさんとまりちゃんのところへ連れ帰る・・・!」

「私はルシファー・・お前たちを倒すために存在する・・・!」

 言いかけるライに、かなたが言い返す。あらわにしていなかった彼の感情が、完全にあらわになっていた。

「たとえベルトを奪い取ったとしても、それは変わらない・・すぐに新たなベルトを手にして、何度でもお前を倒しに行く・・・!」

「ベルトを外すだけじゃダメなのか・・・だったら・・・!」

 野心を見せつけるかなたに対して辛さを感じながら、ライがオメガソウルを手にした。

「かなたを連れ帰るには、かなたの心を取り戻さなくちゃならない・・そのためには、あなたの力が必要なんだ・・・!」

“オメガ!”

 ライが思いを込めて、オメガソウルのスイッチを入れて、クロスカリバーの右のスロットにセットした。

“スピリットオメガパワー!”

 クロスカリバーから光があふれ出して、ライにも伝わっていく。彼の後ろにスピリットフォームのオメガの幻影が現れる。

(この力、かなたを倒すためじゃなくて、かなたの心を取り戻すために・・・!)

 ライがクロスカリバーにかなたへの思いを込める。

「オメガ・オールカリバー!」

 ライが振り下ろしたクロスカリバーが、かなたに振り下ろされた。クロスカリバーの光の刃は、かなたの体を傷付けることなく、彼の体を貫いていた。

 クロスカリバーの光を通じて、ライはかなたの心の奥底を見ていた。かなたの意識は彼の心の奥に封じ込められていた。

 

 ハイパーショッカーによる洗脳によって、かなたの心は封じられた。彼自身は何も聞こえず、誰かに何かを伝えることもできなかった。

 光が差さない心の奥底で、かなたは塞ぎ込むしかなかった。

「かなた・・・かなた!」

 そこへ声が聞こえて、かなたが顔を上げた。彼に向かって光が差し込んできた。

「その声・・・ライ・・・」

 かなたが体を動かして、光のほうへ手を伸ばす。

「ライ・・ライなんだよね・・・?」

「かなた!目を覚ましてくれ、かなた!」

 声を発するかなたに、ライがさらに呼びかける。かなたの前にライの姿が現れた。

「かなた、戻ってこい!おやっさんもまりちゃんも、お前が帰ってくるのを待っているんだ!」

「おやっさん・・まりちゃん・・・みんな・・・」

 呼びかけてくるライに、かなたが手を伸ばす。必死に伸ばす2人の手が、互いの手を握り合った。

「かなた!」

 ライが力を込めて、かなたを引っ張った。ライはかなたを絶対に放すまいとした。

 

 かなたを貫いていた光の刃が引き抜かれた。ルシファーへの変身が解けて、かなたが倒れた。

「かなた!」

 ライがクロスカリバーを手放して、かなたに駆け寄った。

「かなた、しっかりして!大丈夫か!?

 ライが呼びかけると、かなたがゆっくりと目を開いた。

「ラ・・ライ・・・僕・・・」

「かなた・・かなたなんだな・・・!?

 声を発するかなたに、ライが笑みをこぼす。

「ルシファーの洗脳が解けただと・・・!?

 ジャークがかなたを見て、驚きを隠せなくなる。

「どうやら、かなたくんの心を取り戻せたようだ・・・」

 聖也がライとかなたを見て安心を感じていた。

「こうなれば、余がお前たちを一掃するしかない!」

 ジャークが言い放って、マントを外した。彼の姿が機械的な怪人へと変わった。

「その姿は・・!」

 ライがジャークを見て声を上げる。

「ジャーク将軍が改造された姿・・最強怪人、ジャークミドラ・・!」

「いかにも。今のオレの名はジャークミドラ。クロス、クラール、お前たちはこのオレが始末してやるぞ・・!」

 ジャークが変身した最強怪人、ジャークミドラが言いかける。

「ジャーク将軍、いや、ジャークミドラ、お前の相手は私だぞ!」

 ジャークミドラに言い放つ聖也が、ヴァイスソウルを手にした。

“ヴァイス!”

 聖也がヴァイスソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼はヴァイスソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。

“大革命・ヴァーイス!”

 クラールの装甲とマスクが白くなった。聖也はヴァイスクラールへ変身した。

「強き正義で、悪に制裁を下す・・!」

 聖也が腰に提げていたヴァイスブレイカーを手にして、ジャークミドラに言い放つ。

「聖也さん、オレも戦います・・!」

 ライがかなたを横にしてから、聖也に加勢しようとする。

「いや、ここは私だけで戦う・・ライくんはオールソウルを使って、力を消耗しているはずだから・・・!」

 聖也はライを呼び止めて、ジャークミドラと対峙する。

「よかろう・・クラール、まずはお前の首をいただくぞ・・!」

 ジャークミドラが言いかけて、剣を手にして構えた。

「そうはいかない・・かなたくんはやっと帰ってきた・・3人一緒に戻るのだ・・!」

 聖也が思いを口にして、ジャークミドラに向かっていく。2人がヴァイスブレイカーと剣を振りかざしてぶつけ合う。

「ぐっ!」

 ジャークミドラに剣で押し込まれて、聖也がうめく。ジャークミドラの剣に切られて、クラールの装甲から火花が散る。

「力が足りないか・・ならば・・!」

 思い立った聖也が、2号ソウルとイクサソウルを取り出した。

“2号!”

“イクサ!”

 彼は2号ソウルとイクサソウルをヴァイスブレイカーの柄のスロットにセットした。

“パワーヴァーイス!”

 ヴァイスブレイカーから赤い光があふれ出して、刀身の1つから巨大な光の刃が伸びた。

「パワーブレイカー!」

 聖也がヴァイスブレイカーを振り下ろして、ジャークミドラを切りつけた。後ずさりするジャークミドラが、角から電撃を放った。

 聖也が電撃に持ち上げられて、宙から地面に落とされる。

「聖也さん!」

 ライが叫ぶ先で、聖也が力を振り絞って立ち上がる。

「私は大丈夫だ・・たださすがは将軍というだけの強さはある・・・!」

 聖也が答えて、ジャークミドラに視線を戻す。

「私にあるのは、力だけではない・・!」

“ナイト!”

“フォックス!”

 聖也が言いかけて、ナイトソウルとフォックスソウルを手にして、ヴァイスブレイカーにセットした。

“スピードヴァーイス!”

 ヴァイスブレイカーから青い光があふれ出す。

「スピードブレイカー!」

 聖也がジャークミドラに向かっていって、ヴァイスブレイカーを振りかざす。高速で繰り出される斬撃の連続が、ジャークミドラを切りつけていく。

「1発の威力は弱いが、何発も当てて蓄積させれば、大きな威力となる・・!」

 聖也が言いかけて、さらにヴァイスブレイカーを振りかざす。

「ぐおっ!」

 ジャークミドラがダメージを大きくして、ふらついてひざまずく。

「このオレが、最強怪人となっているオレが、これほどのダメージを・・・!」

 痛みを感じながらも、ジャークミドラが立ち上がる。

「ジャークミドラ・・いや、ジャーク将軍、お前は潔い男だ・・」

 聖也がジャークミドラに向けて称賛を送る。

「体力を消耗したライくんを倒しに行けたはず・・仲間や部下をけしかけることもできた・・しかしお前は、私との1対1の勝負に臨んだ・・卑怯者ではない、正々堂々としている・・」

「聖也さん・・・」

 ジャークミドラに向けて語りかける聖也に、ライが戸惑いを感じていく。

「お前が悪でなければよかったとさえ思う・・しかし正義のため、私はお前を倒す・・!」

 聖也はヴァイスブレイカーを腰に提げてから、クラールドライバーの右のレバーを右手で上げて回転させた。

“ライダースマッシュ・ヴァーイス!”

 聖也の両足にエネルギーが集まっていく。剣を構えるジャークミドラを狙って、聖也がジャンプしてキックを繰り出した。

 ジャークミドラがキックを受けて、大きく突き飛ばされた。着地した聖也の前で、ジャークミドラがジャーク将軍の姿に戻った。

「クラール、よくぞ余を倒した・・だが余もまた、ハイパーショッカーの1戦士にすぎぬ・・ルシファーも同じこと・・・」

 ジャークが聖也に言いかけて、ライとかなたに目を向ける。

「お前たちの本当の戦いは、ここからだ・・覚悟しておけ、クラール、クロス、そしてルシファー・・・」

 ジャークがライたちに忠告を送ると、力尽きて倒れた。彼が爆発を起こして、ライたちが身構えた。

「ジャーク将軍の最期・・そして、かなたの無事帰還だ・・・」

 ライが言いかけて、かなたに目を向けた。

「ライ・・・」

 かなたがライを見て、戸惑いを感じていく。

“変身カイジョー。”

 ライと聖也がクロスドライバー、クラールドライバーを外して、変身を解いた。

「帰るぞ、かなた・・オレたちの家に・・・」

「ライ・・・うん・・・」

 ライが呼びかけて、かなたが笑みを浮かべて頷いた。ライがかなたに肩を貸して、一緒に立ち上がる。

「詳しい話は、橘さんたちのところへ戻ってからだ・・」

 聖也が言いかけて、ライが小さく頷いた。ゆっくりと歩いていく中、ライはかなたを救えたことを喜んでいた。

 

 かなたは帰ってきた。ライと聖也に連れられて、かなたは橘モーターショップに帰ってきた。

「かなた・・くん・・・!」

 まりがかなたを見て、戸惑いを覚える。

「まりちゃん・・・おやっさん・・・」

 かなたもまりとひろしを見て、戸惑いをふくらませていく。

「ホントのかなたなんだな!?・・もう、大丈夫なんだな・・!?

 ひろしも声を掛けて、かなたに近づいた。ひろしがかなたを抱き寄せて、帰還と再会を喜ぶ。

「おやっさん・・まりちゃん・・・心配かけてゴメン・・・!」

「いいんだよ、いいんだよ・・かなたが無事に戻ってきたんだから・・・!」

 謝るかなたを、ひろしがあたたかく迎える。まりもかなたが帰ってきたことを、心から喜んでいた。

(よかった・・・かなたが戻ってきた・・かなたの心を、取り戻すことができた・・・!)

 ライがかなたのことを思って、感情をふくらませていく。ライは泣きそうになるのをこらえていた。

(オレは助けることができた・・こうして、みんないる・・おやっさんもまりちゃんも、かなたも・・・!)

 大切なものを取り戻すことができたことを、ライは心から喜んでいた。

(もう失いたくない・・あんな離れ離れにはなりたくない・・そうならないために、みんなを守り続ける・・ハイパーショッカーを倒す・・・!)

 ハイパーショッカーと戦う決意を、ライは改めて誓っていた。

 

 

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