仮面ライダークロス
第32話「全てをひとつに!オールソウル」
気分を落ち着かせようと、1度外に出て深呼吸をしていたまり。そこへひろしがやってきて、まりが振り返る。
「辛いのはオレも同じだ・・ライがあんなことになって、いても立ってもいられない気分に襲われる・・だけどこういうときこそ落ち着かないとって考えるようにしている・・」
「ひろしさん・・・」
ひろしに励まされて、まりが戸惑いを浮かべる。
「信じて待とう。聖也くんを、そしてかなたくんを・・」
「はい・・」
ひろしの言葉を受けて、まりは小さく頷いた。
そのとき、店の中から光があふれたことに、まりとひろしが気付いた。
「何だ、どうしたんだ・・!?」
ひろしが慌てて店の中に飛び込んで、まりも続く。2人は部屋の中で光に包まれているライを目の当たりにした。
「ラ、ライくん!?」
まりがライの姿を見て驚く。
「ライくん!」
まりがたまらずライを抱きしめた。彼女は光がライに何か悪いことをしようとしているのではないかと思った。
「危ない、まりちゃん!何が起こってるか分かんないんだぞ!」
「だからってライくんを放っておけない!もうこれ以上、ライくんがひどい思いをしてほしくないんです!」
ひろしが呼び止めるが、まりはライから離れようとしない。光がライから伝わって、まりは痛みを感じて顔を歪める。
「放さない・・ライくんはかなたくんや私たちのために戦ってきた・・それなのに死んで、さらにひどいことになるなんて、私は認めたくない・・!」
まりは痛みに耐えて、ライを守ろうとする。ライダーソウルからライに注がれる光が、だんだんと強く濃くなっていく。
そのとき、まりは心臓の音を耳にした。彼女は確かめようとして、ライの胸に耳を当てて澄ました。
心臓の音が聞こえてきた。まりの耳に、ライから。
「ライくん・・・ライくんが生きてます!」
「何っ!?」
まりが上げた声に、ひろしも驚く。
「ど、どいてくれ!」
今度はひろしがライの胸に耳を当てる。ひろしもライからの心臓の音を耳にした。
「ホントだ・・ライは、死んでいなかった・・・!」
ひろしが喜びを感じて、体を上げてライを見下ろす。
「しかし、前は確かに心臓の音がしてなかった・・何があってまた・・!?」
ひろしがライがよみがえった理由を考える。彼は光がライダーソウルから注がれているものだということに気付く。
「ライダーソウルが、ライに力を送っているのか!?・・ソウルの力の持ち主である仮面ライダーのみんなが、ライに力を与えているということなのか・・・!?」
ひろしがライを見つめながら、戸惑いを感じていく。仮面ライダーの力と意思が、ライに命を吹き込んでいた。
そして動かなくなっていたライの手が、かすかに動いた。
「動いた・・間違いない・・ライくんは生きている・・・!」
まりが戸惑いをふくらませて、ライの手を握る。
(お願い、ライくん・・帰ってきて・・・!)
まりがライへの思いを込めて、心の中で呼びかける。
(ライくんはすごく真っ直ぐですごく純粋で、納得できないことにはとことん逆らっていく・・でもそれは、私たちやみんなのことを大事に思ってのこと・・)
ライの心境や思いを察して、まりが心を動かされていく。
(そのライくんが、死んでいいなんてことはない・・・お願い、ライくん・・戻ってきて・・・!)
まりがさらに思いを込めて、強く握りしめた。ライダーソウルからの光も、さらに強くなっていく。
やがて光が完全にライの体の吸い込まれた。
「ライ・・・!」
まりがライを見つめて、戸惑いを浮かべる。
「ま、まりちゃん・・あれ・・!」
「えっ・・?」
ひろしが声を上げて、まりが顔を上げる。ライダーソウルからあふれた光の中に、宙に残っていたものがあった。
その光は形を変えて、新たなライダーソウルに変わった。
「これは・・!」
ひろしが声を上げて、まりが手を伸ばしてそのライダーソウルをつかんだ。
「新しい、ライダーソウル・・・」
まりがライダーソウルを見つめて、戸惑いをふくらませていく。
そのとき、ライダーソウルを持つまりの手を、別の手が握った。彼女が振り向くと、ライが閉ざしていた目を開けていた。
「ライくん・・!」
「ライ・・!」
まりとひろしがさらに戸惑いを感じた。ライが意識を取り戻して、ゆっくりと体を起こした。
「まりちゃん・・・おやっさん・・・」
「ライ・・ホントにライなんだな・・・!?」
声を上げるライに、ひろしが問いかける。
「おやっさん・・はい・・・オレ、かなたとシャドームーンにやられて・・気を失っていたのか・・・?」
ライが頭に手を当てて、記憶を巡らせる。
「気を失っていたなんてもんじゃないよ・・ライくん、あなた、心臓が止まっていたんだから・・・!」
「心臓が止まってたって・・オレ、死んでいたのか・・!?」
まりが口にした言葉に、ライが耳を疑う。
「確かに心臓が止まってた・・だけど、お前の持ってたライダーソウルから光が流れ込んできて・・そしたらお前は生き返ったんだ・・・」
ひろしも続けてライに説明をする。
「ライダーソウルが、仮面ライダーのみなさんが、オレに力を与えてくれたってことなのか・・・!?」
ライが周りにあるライダーソウルを見回して、戸惑いを感じていく。
「このライダーソウル・・初めて見る・・どの仮面ライダーのソウルとも違う・・」
ライがまりとともに持っていたライダーソウルを見て、戸惑いを感じていく。彼が今まで見たことのないライダーソウルで、どの仮面ライダーのソウルにも見えない。
「どういう効果があるのか分からない・・でも、今はこれに賭けるしかない・・・!」
思い立ったライと、彼にライダーソウルを託すまり。
今までの戦い方やライダーソウルではかなたに敵わないし、シャドームーンに対しても動きを予測されてしまう。この状況を打破するには、この新しいライダーソウルを使う以外にない。
「聖也さんと光太郎さんたちは・・?」
「あぁ・・戦いに行っている・・ハイパーショッカーと・・」
ライが問いかけて、ひろしが深刻な顔を浮かべて答える。
「まさか、かなたたちと戦って・・・!?」
不安を覚えたライが、ベッドから飛び起きる。
「ダメだよ、ライくん!ずっと眠りっぱなしで・・いくら生き返ったからって、体が回復したとは・・!」
まりが慌ててライを呼び止める。
「このままじゃ聖也さんたちが危ない・・オレが行かないと・・!」
ライが立ち上がって、ライダーソウルを持って部屋から外へ出た。
“クロスレイダー!”
ライがクロスレイダーソウルのスイッチを入れて、クロスレイダーを呼び出した。彼はクロスレイダーに乗って、聖也たちのところへ走り出した。
「ライくん・・・絶対に・・絶対に戻ってきて・・・!」
ライが無事に帰ってきてくれることを、まりは心から願う。
(ライ、もうまりちゃんを泣かせるようなことをするんじゃないぞ・・・!)
ひろしが心の中でライに呼びかけていた。
かなたとシャドームーンの攻撃に聖也、BLACK、RXは苦戦を強いられていた。
「動きを予測されては、さしものRXにも勝ち目はないか。」
ジャークもシュバリアンを引きつれて姿を現して、聖也たちを見下ろす。
「邪魔をしないでもらおう、ジャーク将軍。RXたちはオレの獲物だ。」
シャドームーンがジャークに向けて呼びかける。
「いくらあなたでも、ジャーク将軍にそのような口を・・!」
「構わん。シャドームーン、ルシファー、好きにするがいい。」
抗議の声を上げるシュバリアンをなだめて、ジャークがシャドームーンたちに返事をした。
「ジャーク将軍をお待たせするわけにはいかない。ここでとどめとさせてもらう。」
あなたが聖也に向けて言いかけて構えを取る。
「このまま・・ここで倒れるわけにはいかない・・!」
聖也が声を振り絞って、ヴァイスブレイカーを手にした。
“威吹鬼!”
“ライダーマン!”
彼は威吹鬼ソウルとライダーマンソウルを手にして、ヴァイスブレイカーの柄のくぼみにセットする。
“テクニックヴァーイス!”
ヴァイスブレイカーの刀身から黄色の光があふれ出した。
「テクニックブレイカー!」
聖也が振りかざしたヴァイスブレイカーの刀身から、光の刃が伸びた。鞭のようにしなる光の刃に叩かれて、かなたが突き飛ばされる。
「そのような攻撃も残していたか。しかし私を倒すまでにはいかなかったな。」
かなたが体勢を整えて、聖也に視線を戻す。
「これでもかなたくんを止めることもできないのか・・・!?」
絶望を痛感して、聖也が地面に膝を付ける。
「聖也くん、危ない!」
RXが聖也に向かって叫んで、BLACKとともに助けに向かおうとした。
「甘いぞ、ライダーたち!」
シャドームーンがシャドービームを放って、RXたちに命中させた。
「ぐあっ!」
RXとBLACKが背中にビームを受けて突き飛ばされて、地面に落ちる。シャドームーンはさらにビームを放って、爆発を引き起こした。
RXたちは吹き飛ばされて、ダメージが大きくなって変身が解けた。
「お前たちを倒して、他の仮面ライダーも倒す。それでハイパーショッカーの世界支配が決定的となる。」
かなたが聖也に言いかけて、シャドームーンソウルを使ってとどめを刺そうとした。絶体絶命を痛感して、聖也がうつむいた。
そのとき、聖也たちの耳にエンジン音が入ってきた。
「誰だ、ここに来る身の程知らずは・・?」
シュバリアンがあざ笑って、エンジン音のする方へ歩を進める。
次の瞬間、ライの乗ったクロスレイダーが、聖也たちの前に駆け込んできた。
「な、何っ!?」
ライの登場にジャークが驚きを見せる。
「あれは、ライくん!」
「生きていたのか・・!」
2人の光太郎もライを目撃して、驚きを感じていた。聖也のそばでクロスレイダーを止めて、ライが降りた。
「バカな!?・・クロスは確かに死んだはず・・!?」
かなたもライが生きていたことに驚きを隠せなくなる。
「ライくん・・・本当にライくんなのか・・・!?」
聖也がライを見上げて戸惑いをふくらませていく。
「はい・・仮面ライダーのみなさんが力を貸してくれたから、オレは生き返ることができたんです・・」
ライが聖也に目を向けて、自分に起きたことを話した。
「まさか復活を果たすとは・・しかし以前よりも強くなっていなければ、ルシファーに勝つことはできない。」
シャドームーンがライに向けて忠告を送る。ライがかなたに振り向いて、真剣な顔を見せる。
「オレは賭ける・・このライダーソウルに・・・!」
ライは言いかけて、クロスドライバーと、新たに現れたライダーソウル「オールソウル」を手にした。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着する。
“オール!”
彼がオールソウルのスイッチを入れて、クロスドライバーにセットした。
「ぐあっ!」
そのとき、クロスドライバーから電気ショックが放たれて、ライがうめく。オールソウルがクロスドライバーからはじかれるように飛び出した。
「そ、そんな!?使えないなんて!?」
ライがオールソウルを使えないことに、聖也が驚く。電気ショックの痛みを感じながらも、ライはすぐに立ち上がってオールソウルを拾う。
(今、コレのホントの使い方が分かったかもしれない・・・)
ライがオールソウルを見つめて、戸惑いを覚える。彼は今のショックの瞬間、オールソウルの使い方が分かったような気がした。
ライはさらにクロスソウルを取り出した。
“クロス!”
スイッチを入れたクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
クロスに変身したライは、続けてカメンソウルを手にした。
“カメン!”
“ライダーソウール!”
ライはクロスドライバーにセットされているクロスソウルを、カメンソウルと入れ替えた。
「超変身!」
彼がクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“超変身・カメーン!”
ライの体を赤と緑のラインの入った装甲が包む。彼はカメンフォームへの変身を果たした。
「このソウルを使うのは、コイツに・・!」
彼がクロスカリバーを引き抜いて、左のスロットにオールソウルをセットした。
“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”
オールソウルが反応して、音声を発した。カメンフォームの緑と赤の横のラインに金のラインが加わり、装甲から神々しい輝きが発せられる。
「全てを1つに、オレがつなげる・・!」
ライが静かに、体を落ち着かせる。彼は「オールフォーム」への変身を果たした。
「ライくん・・・!」
「蘇っただけじゃなく、新たな力を手に入れたのか・・!」
ライの姿を見て、聖也が動揺を浮かべて、光太郎が戸惑いを覚える。
「我らが初めて見るクロスだ・・どのような能力を秘めているのか・・・!」
ジャークがライに対して警戒を強める。
「たとえ何になろうと、私がお前に負けることはない。今度こそお前たちを葬る。」
かなたが冷静さを取り戻して、ライに近づいていく。かなたがライに向かってパンチを繰り出す。
ライが右手をかざして、かなたのパンチを受け止めた。
「何っ・・!?」
攻撃を止められたことに、かなたが驚きを覚える。
「うおっ!」
かなたはそのままライに投げ飛ばされる。彼は体勢を整え切れずに、地面を転がる。
「カメンフォームやヴァイスクラールにも勝るルシファーを、今のクロスは超えるというのか・・!?」
シャドームーンがライの強さを目の当たりにして、驚きを隠せなくなる。
「すごい力・・今まで感じたことのない力・・・」
ライがオールフォームの力を実感して、戸惑いを感じていく。
「これだけで私に勝ったと思わないことだ・・」
立ち上がったかなたがライに飛びかかる。かなたが繰り出すパンチとキックを、ライは正確に回避と防御をしていく。
ライが反撃を仕掛けて、かなたに連続で打撃を当てていく。
「あぐっ・・!」
かなたが大きなダメージを負って、後ずさりして地面に膝を付く。
「そんな!?・・今の私が、これほどのダメージを・・!?」
ライに追い詰められて、かなたが動揺を浮かべる。
「しかし、これほどの力を得た私に、これ以上の敗北は許されない・・私は、必ずお前たちを倒す・・!」
かなたが使命感を感じて、シャドームーンソウルを手にした。
“シャドームーン!”
彼がシャドームーンソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・シャドームーン。”
ルシファードライバーから緑の光があふれ出して、かなたの両足に集まっていく。
「かなた、オレはお前を止めてみせる・・悪者でいるのを望むお前じゃないはずだ・・・!
ライが言いかけて、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加えた。
“ライダースマッシュ・オール!”
クロスの装甲からまばゆい光があふれ出して、彼の両足に集まっていく。彼とかなたが同時にジャンプする。
「ルシファーシャドーキック。」
「オールクロスキック!」
両足を突き出すかなたと、右足を繰り出すライ。2人のキックが激突して、爆発のような衝撃を巻き起こした。
かなたが突き飛ばされて、地面に強く叩きつけられた
“ダークリリース。”
ルシファードライバーが外れて、かなたは変身が解けた。
「ルシファーが・・これ以上やらせはせん・・!」
シャドームーンがかなたを逃がそうと、自らライに挑んでいく。
「シャドームーン、ここは加勢させてもらうぞ・・!」
ジャークも続いてライへの攻撃に踏み切ろうとした。
「そうはさせないぞ!」
そのとき、光太郎たちが出てきて、ジャークの行く手を阻んだ。
「ジャーク将軍、お前の相手はオレたちだ!」
「ジャーク将軍、南光太郎の相手はこのオレが!」
言い放つ光太郎に、シュバリアンが立ちはだかる。
「貴様の相手は私がする!」
聖也が出てきて、シュバリアンに向かってきた。
「おのれ、クラール・・!」
シュバリアンがいら立って、聖也に攻撃を仕掛ける。2人の光太郎が互いに目を向けて頷き合った。
「変・・身!」
光太郎がポーズを取って、BLACKへ変身した。
「変身!」
もう1人の光太郎もポーズを取る。BLACKとは違うポーズである。
光太郎の腰から現れたベルトも形状が違う。ベルト「サンライザー」から光があふれ出して、彼はRXへ変身した。
「仮面ライダー、BLACK!」
「オレは太陽の子!仮面ライダー、BLACK!RX!」
BLACKとRXが名乗りを上げてポーズを決めた。
「行くぞ、ジャーク将軍!」
「この地球はオレたちが守る!」
BLACKとRXが言い放って、ジャークに立ち向かう。ジャークが杖を振りかざして、光線を放つ。
BLACKとRXがジャンプしてかわして、ジャークに攻撃を仕掛ける。ジャークが杖を振りかざしてBLACKを突き飛ばして、RXが杖を受け止める。
ジャークが杖から光線を放って、RXを縛って持ち上げる。
「RX!」
立ち上がったBLACKがRXに向かって叫ぶ。
「まずは貴様からだ、RX!」
ジャークがRXを倒そうと、光線に力を込める。RXが痛みに耐えながら、集中力を高める。
次の瞬間、RXの体に変化が起こった。彼は青と銀の体へと変化した。そして彼の体が青い水になって、ジャークの光線から抜け出した。
水はジャークを取り巻いて、突き飛ばされて倒れる。水から元の体に戻った仮面ライダーが構えを取る。
「貴様は・・!」
「オレは怒りの王子!RX!バイオ、ライダー!」
声を上げるジャークに対して、青のライダー、バイオライダーが名乗りを上げる。
RXは2段変身として他のライダーに変身する能力も備えている。その1つのであるバイオライダーは、体を液体に変えることができるのである。
「バイオブレード!」
バイオライダーが剣「バイオブレード」を手にして振りかざして、ジャークの杖とぶつけ合う。
「ぐおっ!」
ジャークがバイオブレードで腕を切りつけられてうめく。
「ジャーク将軍!」
聖也と戦っていたシュバリアンが、ジャークに向かって声を上げる。
「ぬおっ!」
聖也が振りかざしたヴァイスブレイカーに切られて、シュバリアンがふらつく。
「貴様の相手は私だと言ったはずだ!」
聖也が言い放って、シュバリアンにとどめを刺そうとした。
「うぐっ!」
そのとき、聖也が体に痛みを感じてふらついた。
「こんなときに、ヴァイスクラールの限界が・・・!」
思うように動くことができずに、聖也がうめく。
「運が向いてきたようだな・・とどめを刺されるのはクラール、貴様だ!」
体勢を整えたシュバリアンが、聖也に向かって爪を振りかざす。
「聖也くん!」
BLACKが飛びかかって、パンチを繰り出してシュバリアンを突き飛ばした。
「大丈夫か、聖也くん!?」
「は、はい・・!」
BLACKが呼びかけて聖也が答える。
「おのれ、仮面ライダーBLACK・・!」
シュバリアンがいら立ちをふくらませて、聖也たちに攻撃しようとした。
「そうはさせないぞ!」
バイオライダーが飛び込んで、シュバリアンの前に回り込んだ。シュバリアンが振り下ろした爪を、バイオライダーがエネルギーを集めたバイオブレードを振り上げてはじいた。
「ぐおっ!・・おのれ、ライダー!」
シュバリアンが再び右手を振りかざした。次の瞬間、バイオライダーが黒と金のライダーへと変わって、シュバリアンの右手を受け止めた。
「がはっ!」
ライダーが繰り出したパンチが、シュバリアンを強く突き飛ばした。横転する彼がライダーに対して驚きを覚える。
「オレは炎の王子!RX!ロボライダー!」
バイオライダーから変身したライダー、ロボライダーが名乗りを上げる。
スピードと特殊能力に長けているバイオライダーと対照的に、ロボライダーはパワーと防御力が強いライダーである。
「ボルティックシューター!」
ロボライダーが銃「ボルティックシューター」を手にして、シュバリアンに向けてビームを放つ。シュバリアンも体からビームを放つが、ボルティックシューターの射撃に競り負けて当てられる。
大きなダメージを負ってふらつくシュバリアン。ロボライダーがRXへと戻る。
「リボルケイン!」
RXがサンライザーから剣状の武器「リボルケイン」を呼び出して引き抜いた。刀身からはまばゆい光が発せられていた。
シュバリアンがとっさにビームを放つ。RXがジャンプしてビームと爆発をかわして、飛び込んでリボルケインを突き出した。
「がはぁっ!」
シュバリアンがリボルケインに体を貫かれた。リボルケインのエネルギーが注がれて、シュバリアンの体から火花が散る。
RXがリボルケインを引き抜いてポーズを決める。シュバリアンが力尽きて、倒れて爆発した。
「シュバリアン!・・おのれ、RX!」
ジャークがいら立ちを浮かべて、杖を構える。
「RX!」
「BLACK!」
BLACKとRXが声をかけ合って、同時にジャンプする。
「ライダーキック!」
「RXキック!」
2人が繰り出したキックが、杖を構えたジャークに命中した。
「くっ・・これでは、シャドームーンの援護に向かえん・・・!」
後ずさりするジャークが危機感をふくらませていく。
ライに攻撃を仕掛けるシャドームーン。しかしスピードを上げたライを追うことができない。
「この私が追いつけない・・高速の仮面ライダーにも対応できるはずなのに・・・!」
シャドームーンがライの動きに驚きを隠せなくなる。マイティアイを駆使して位置や動きを捉えてはいるが、彼はライに追いつくことができない。
「分かっていても、対応できなきゃ同じだ・・!」
シャドームーンの後ろに回り込んで、ライが言いかける。
「ぐおっ!」
ライに高速のパンチを連続で叩き込まれて、シャドームーンがうめく。
「おのれ、クロス・・・シャドーセイバー!」
シャドームーンがシャドーセイバーを手にして、ライに飛びかかる。ライも腰に戻していたクロスカリバーを手にする。
シャドームーンが振りかざすシャドーセイバーを、ライはクロスカリバーで軽々と受け止めていく。
「ぐっ!」
ライが振りかざしたクロスカリバーが、シャドームーンの体を切りつけていく。
「クロスカリバーの威力も上がっている・・!」
シャドームーンが身構えて、ライの強さを痛感していく。ライがマックスソウルを手にして、クロスカリバーの右のスロットにセットした。
“エクシードマックスパワー!”
クロスカリバーからあふれた光が、ライの体に流れ込んでいく。
「これは・・!」
「マックス・・“エクシードフォルム”のマックスの姿が見える・・・!」
聖也とRXが声を上げる。ライの背後に、最強形態のエクシードフォルムになっているマックスの幻影が浮かび上がっていた。
「たとえ強くても、マックスの力を使うならば、対応は可能だ。」
シャドームーンが冷静に告げて、ライ目がけてシャドーセイバーを振りかざす。次の瞬間、ライが左手のパンチを繰り出して、シャドームーンの左手のシャドーセイバーをはじき飛ばした。
「何だとっ!?」
正確に攻撃を狙ったはずが反撃されたことに、シャドームーンが驚く。
「マックス・オールカリバー!」
ライが直後にクロスカリバーを振りかざす。この一閃がシャドームーンの体に命中した。
その瞬間、マックスの幻影がキックを繰り出して、シャドームーンの体に当てていた。決定打を受けたシャドームーンが力を失って、腕をだらりと下げた。
「シャドームーン!」
「ジャーク将軍・・ルシファーを連れて下がれ・・・!」
声を上げるジャークに、シャドームーンが声を振り絞る。
「オレはもう持たん・・だが、ルシファーを失うわけには・・・!」
「シャドームーン・・すまん・・・!」
シャドームーンに謝罪して、ジャークがかなたに駆け寄る。
「待て!かなたを放せ!」
ライがかなたを助けようとするが、シャドームーンが行く手を阻んだ。その間にジャークはかなたを連れて姿を消した。
「クロス、RX・・これで勝ったと思うな・・・お前たちがどれだけ強くなろうと、ハイパーショッカーは全ての世界を支配する・・・」
シャドームーンがライたちに向けて言いかける。
「お前たちに安らぎが戻ることはない・・絶望に襲われるのみ・・・」
「信彦・・・!」
声を振り絞るシャドームーンに、RXが声を上げる。
「オレはシャドームーン・・仮面ライダー、いずれまたよみがえり、必ずお前たちを倒す・・覚悟しておくのだな・・・」
RXたちに言い返して、シャドームーンが倒れた。力尽きた彼を見て、BLACKとRXが動揺を感じていく。
「信彦・・・」
RXがゆっくりと近づいて、シャドームーンを抱える。命を閉ざした彼を見て、RXもBLACKも悲しみを覚える。
「光太郎さん・・・」
ライがRXたちを見て戸惑いを感じていく。
「ライくん、本当に大丈夫なのか!?・・君は死んだはずだが、今こうして生きている・・・!」
聖也がライに声を掛けて、動揺を浮かべる。
「オレは生き返ったみたいだ・・仮面ライダーのみなさんが力を貸してくれたから・・・」
ライは答えて、クロスカリバーにセットされているオールソウルに目を向けた。
「このライダーソウルが、オレに生きる力を与えてくれた・・・」
「それでライくん、体は何ともないのか?・・クロスワイズもカメンフォームも、使ったら大きな負担を感じていた・・」
言いかけるライを、聖也が心配する。
「はい。今回は、何とも・・」
“変身カイジョー。
ライが答えて、クロスドライバーを外してクロスへの変身を解除した。
“変身カイジョー。
聖也もクラールへの変身を解いて、ひと息つく。BLACKとRXも変身を解除して、2人に歩み寄った。
「ライくん・・無事に目が覚めてよかった・・」
「光太郎さん・・聖也さん・・心配かけてすみませんでした・・」
安心の笑みをこぼす光太郎に、ライが頭を下げる。ライはオールソウルを手にして見つめる。
「このソウル、まだ謎の部分が多い。負担を今感じないからといって、無闇に使わないほうがいい。」
「はい・・体の痛み以外のリスクが、あるかもしれないですからね・・・」
光太郎からの注意にライが頷いた。
「でも、これを使わないと、かなたを連れ戻すことはできそうにない・・これは、そのための切り札・・・!」
ライはかなたのことを考えて、深刻な顔を浮かべた。
「ライくん、聖也くん、オレたちも君たちもひとりぼっちではない。孤独に苦しむことがあっても、支えてくれる仲間や家族がいる。」
「たとえ離れ離れになっていても、その絆は途切れることはない。それを忘れないように。」
光太郎たちがライと聖也に激励を送る。
「はい。忘れません。このことも、あなた方のことも・・」
「たくさんのこと、ありがとうございました。」
聖也とライが答えて、光太郎たちに感謝した。光太郎たちが笑みを見せた。
「みんな、元気でな・・」
「君たちの強い心、オレたちも信じているよ・・」
ライたちに信頼を告げて、光太郎たちはシャドームーンを抱えて歩き出した。
(光太郎さんは、親友との時間を取り戻すことはできなかった・・でもオレは必ず、かなたを助け出してみせます・・・!)
光太郎たちを見送るライが、心の中で改めて決意をしていた。