仮面ライダークロス
第27話「正義の聖剣・ヴァイスクラール」
流星からメテオソウルの他にもう1つ、新しいライダーソウルを託された聖也。それは見たことのない柄の入ったソウル「ヴァイスソウル」だった。
「新しいライダーソウル・・他の仮面ライダーのソウルとは違うみたいですね・・」
ライもヴァイスソウルを見て、考えを巡らせる。
「おそらくクロスワイズやカメンソウル同様、強いパワーと相応の負担がかかるだろう。しかしそのようなリスクは覚悟している。」
聖也がヴァイスソウルを見つめて、決意を固める。
「ライくん、手伝ってくれないか?いきなりぶっつけ本番というわけにはいかないので。」
「はい。オレもカメンフォームを、少ない負担で使えるようにならないといけないんで・・」
聖也が呼びかけて、ライが真剣な顔で頷いた。
「2人とも、ムチャはなしだからな。使いこなすどころかそうしようとしてお陀仏になっちまったら、元も子もないぞ。」
ひろしが注意を告げて、ライと聖也が頷いた。
(ライくん・・聖也さん・・・かなたくん・・・)
ライたちだけでなく、かなたのことも心配して、まりは自分の胸に手を当てていた。
カメンフォームに関するデータを調べていたハイパーショッカー。しかしカメンフォームと戦った回数が少なく、死神博士たちは対策を練ることができないでいた。
「カメンフォームのデータが足りない・・ヤツとの戦闘を重ねるしかないようだ・・!」
死神博士が苦言を呈して、ゾルとジェネラルシャドウに目を向ける。
「もう1度ルシファーを出撃させる。今度こそクロスたちの息の根を止める!」
「しかし今のルシファーでは、カメンフォームを上回る力を持ってはいない。単独で向かわせるのは得策ではない。」
ゾルが指示を出すが、死神博士は不安を口にする。
「私が行こう。そろそろ本気でやらせてもらうとしよう。」
ジェネラルシャドウがかなたとともに出撃することを告げてきた。
「頼むぞ、ジェネラルシャドウ。だが我らハイパーショッカーの世界征服のために、お前たちが欠けるわけにいかないことを、頭に入れておけ。」
「もちろんそのつもりだ。その上で任務を果たす。」
ゾルが忠告をして、ジェネラルシャドウが頷く。彼らの前に、調整を終えたかなたがやってきた。
「ルシファー、出撃するぞ。ついてくるのだ。」
「はい、ジェネラルシャドウ様。」
ジェネラルシャドウが呼びかけて、答えたかなたとともに基地を出た。
荒野に赴いたライと聖也が、それぞれクロスドライバーとクロスソウルクラールドライバーとクラールソウルを手にした。
「行きますよ、聖也さん!」
「行くぞ、ライくん!」
ライが呼びかけて、聖也が答えた。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
“クラール!”
“ライダーソウール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
彼の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。
クロス、クラールに変身したライと聖也が、続けてカメンソウル、ヴァイスソウルを手にした。
「まずは私から使うぞ。君がカメンソウルを使えることは分かっているのだから・・」
“ヴァイス!”
聖也がライに呼びかけて、スイッチを入れたヴァイスソウルをクラールソウルにセットした。しかしクラールドライバーは何の反応もしない。
「どういうことだ!?・・何も起きないはずは・・・!」
驚く聖也がヴァイスソウルをセットし直すが、それでも何の変化も起きない。
「もしかして、何か使えるようになるんじゃ・・・!?」
「その可能性はあるが・・どのような条件で・・・」
ライが疑問を投げかけて、聖也が考えを巡らせる。2人はヴァイスソウルが使える条件を推測する。
「クロスワイズは、許せないことに立ち向かおうとしたら出てきて、カメンソウルはまりちゃんやかなたを助けようと思ったら出てきた・・」
「このヴァイスソウルも、何か強い感情がきっかけになるかもしれない・・しかし、それが何か・・・」
ライがこれまでの戦いを思い返して、聖也がさらに考えを巡らせる。
(今の私に足りないもの・・力への渇望や正義、大切なものを守ろうとする思いや絆・・何がカギとなるのだろうか・・・?)
聖也も今までの戦いを思い返して、その中で自分が得てきたものを確かめる。得たものの中でヴァイスソウルを使うには足りないものがあるのではないかも、彼は推測した。
(それとも、ベルトにセットする以外の使い方なのだろうか・・?)
「聖也さん。」
考え込んでいたところでライに声を掛けられて、聖也が我に返る。
「1度小休止してから考え直しましょう。本格的に訓練するのはそれからで・・」
「あぁ・・そうだな。1回気分を切り替えよう・・」
ライの呼びかけに、聖也が頷いてひと息つく。
“変身カイジョー。”
2人はクロス、クラールへの変身を解除して、小休止に入った
ライたちを倒すため、またカメンフォームのデータを入手するため、かなたとジェネラルシャドウは橘モーターショップの近くに来ていた。
「クロス、もうお前たちには負けはしない。お前たちを倒し、ハイパーショッカーの支配を確実のものとする。」
かなたが自分の目的を口にする。
「ヤツがカメンフォームとなったときは警戒を強めろ。単に強力というだけでなく、他にも何か能力が隠されているかもしれない。」
「はい。警戒は怠りません。」
ジェネラルシャドウが指示を投げかけて、かなたが無表情のまま答える。
「エイキング、お前はルシファーの援護だ。」
「了解、ジェネラルシャドウ様。」
ジェネラルシャドウが呼びかけて怪人、エイキングが答えた。
この日の夕方、突然街が停電に襲われた。異変に気付いたひろしが、まりと一緒にライと聖也のところへ急いだ。
「ライ、聖也くん、大変だ!街でおかしな停電が起こってる!」
「何だって!?」
ひろしが状況を言って、ライが声を上げる。
「街の中心に雷雲も集まってるみたいだ・・!」
「普通の天気の動きじゃない・・ハイパーショッカーの仕業の可能性が高い・・・!」
ひろしが話を続けて、聖也がハイパーショッカーのことを考える。
「まだ、ヴァイスソウルの使い方が分かっていないのに・・・!」
ライが聖也を気に掛けて、動揺を浮かべる。
「私のことは気にしなくていい。私もこのまま戦いに行く。」
「ですが、それでは聖也さんが・・・!」
「戦いの中で、このソウルの使い方が見つかるかもしれない・・ぶっつけ本番は、本当はよくないことだと思うが・・・」
「聖也さん・・・」
決意を告げる聖也に、ライが戸惑いを覚える。
「行くぞ、ライくん!」
「はい、聖也さん!」
聖也が呼びかけて、ライが答える。2人は雷鳴轟く街中へ急いだ。
クロス、クラールに変身したライと聖也が、明かりの消えた街の広場にたどり着いた。そこにはかなたとジェネラルシャドウがいた。
「かなた・・・!」
「現れたか、クロス、クラール。お前たちをこの手で倒す。」
緊張を覚えるライに、かなたが無表情のままで言いかける。
「かなた、やめるんだ!ハイパーショッカーにいつまでも操られていて、お前は平気なのか!?」
「私はルシファー。ハイパーショッカーのために戦うのが、私の使命であり、生きる理由。」
呼びかけるライだが、かなたは考えも口調も変えない。彼はルシファードライバーとルシファーソウルを手にした。
“ルシファー!”
“ライダーソウル。”
かなたがルシファーソウルのスイッチを入れて、右側のソウルスロットに上からセットした。
「変身。」
彼がルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。
“ダークチェンジ・ルシファー。”
かなたが紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとった。彼はルシファーへの変身を果たした。
「ルシファー、貴様はクロスと戦え。クラールとは私が相手をしよう。」
「分かりました、ジェネラルシャドウ様。」
ジェネラルシャドウが命令を出して、答えたかなたがライと対峙する。
「どうしても戦うのか、かなた・・・!」
ライは歯がゆさを感じながらも、構えを取ってかなたを迎え撃つ。
「クラール、お前の力、私が確かめさせてもらうぞ。」
「ジェネラルシャドウ、お前たちハイパーショッカーの企みは、私たちが阻止する・・!」
言いかけるジェネラルシャドウに、聖也が言い放つ。
「お前たちに我々を阻むことはできない。ルシファーも、この私も止められはしない。」
ジェネラルシャドウが告げて、聖也に向かってトランプを投げつけた。聖也は横に動いてかわすが、ジェネラルシャドウが続けて投げたトランプをぶつけられる。
「うっ!」
クラールの装甲から火花が散って、聖也がうめく。
「速い・・・!」
ジェネラルシャドウの攻撃の速さに、聖也が毒づく。
「私の攻撃を回避することはたやすくはない。貴様の命を徐々に削り取る・・」
ジェネラルシャドウが笑みをこぼして、さらにトランプを放つ。トランプが当たって、クラールの装甲から火花が散る。
「マッハではスピードは確実だが、ここはパワーを重視すべきか・・ならば・・!」
聖也は推測を巡らせて、次の手を見出す。彼が手にしたのはイクサソウル。
“イクサ!”
“ライダーソウール!”
聖也がイクサソウルをクラールドライバーにセットして、左レバーを上に上げてクラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!イクサー!”
彼はイクサフォームをなって、ジェネラルシャドウに向かって前進する。
「イクサになったか。だがそれで私の攻撃をかいくぐれると思っているのか?」
ジェネラルシャドウがあざ笑うと、トランプを放つ。トランプがクラールの装甲に当たるが、聖也はものともせずに前進を続ける。
「攻撃は速くても、この威力ならイクサで耐えられる・・!」
「やるな、貴様・・ならば・・!」
ジェネラルシャドウがシャドウ剣を手にして構える。
「ならば・・!」
聖也が言いかけて、ブレイガンソウルを手にした。
“ブレイガン!”
ブレイガンソウルがクラールブレイガンに変わって、聖也の手に握られる。彼とジェネラルシャドウがクラールブレイガンとシャドウ剣を振りかざして、激しくぶつけ合う。
「やはりイクサ・・力のあるライダーの1人ということか・・・!」
聖也の強さを確かめて、ジェネラルシャドウが毒づく。
一方、ライ打倒の意思を強くするかなたが、パンチを繰り出して攻め立てる。ライが押し込まれて、劣勢に追い込まれる。
「お前は私には勝てない。必ずお前の息の根を止める。」
かなたが冷たい口調でライに言いかける。
「オレもお前も倒れない・・オレが目を覚まさせて、お前を連れ戻す・・!」
ライが意思を口にして、カメンソウルを取り出した。
“カメン!”
“ライダーソウール!”
ライはカメンソウルをクロスドライバーにセットした。
「超変身!」
彼がクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“超変身・カメーン!”
ライの体を装甲が包む。彼はカメンフォームへの変身を果たした。
「その姿になったか・・それでも私が負けることはない・・・!」
ルシファーが言いかけて、ライに向かっていく。かなたが繰り出すパンチとキックを、ライが両手で受け止めていく。
「肉弾戦はまだ通じないのか・・・!?」
ライに攻撃が通じないことに、かなたが毒づく。
「ならば与えられたこのライダーソウルを使う。」
かなたが新たなライダーソウル「デスセイバーソウル」を手にした。
“デスセイバー!”
スイッチの入ったデスセイバーソウルが、剣「ルシファーデスセイバー」に変わった。
「武器なら武器か・・オレも!」
ライは腰に装備されていたクロスカリバーを手にして引き抜いた。
ライとかなたがクロスカリバーとルシファーデスセイバーをぶつけ合う。ライの力はかなたを押し込んでいた。
「これでも優位に立てないだと・・・!?」
カメンフォームになっているライの強さに、かなたが危機感を覚える。
「そのベルトを外せば、かなたがこんな戦いをしなくて済む・・・!」
思い立ったライがルシファードライバーを狙って、クロスカリバーを振りかざす。かなたはとっさに後ろに動いて、ライとの距離を取る。
ライがクロスソウルを手にして、クロスカリバーの左のスロットにセットした。
“クロスパワー!”
クロスカリバーの刀身にエネルギーが集まっていく。
「クロスの剣に光が・・・!」
かなたが警戒を強めて、ライダーソウル「ダークキバソウル」を手にした。
“ダークキバ!”
彼がダークキバソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・ダークキバ。”
両足に黒い煙のような光が集めて、かなたが飛び上がる。
「ルシファースバーストエンド。」
彼がライに向かって急降下して、両足のキックを繰り出す。
「クロス・ライドカリバー!」
ライがクロスカリバーを振りかざして、光の刃を放つ。
「ぐっ!」
かなたが吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。
「まだだ・・まだ倒れはしない・・・!」
かなたが立ち上がって、ルシファーデスセイバーの柄にあるくぼみのスロットに、ゴルドドライブソウルをセットした。
“ゴルドドライブ・デスパワー。”
ルシファーデスセイバーの刀身に、金色の光が集まる。
「ゴルドドライブ・デスブレイク。」
かなたがルシファーデスセイバーを振りかざして、金の光の刃を放つ。
「クロスのソウルでも使えるなら、他のソウルでも・・!」
“クウガ!”
ライが言いかけてクウガソウルを手にして、クロスカリバーにセットされているクロスソウルと入れ替える。
“クウガパワー!”
クロスカリバーの刀身に金の稲光が集まっていく。
「クウガ・ライドカリバー!」
ライがクロスカリバーを振りかざして、稲光の刃を放つ。ライの刃がかなたの刃を打ち砕いて、かなたの手からルシファーデスセイバーをはじき飛ばした。
「手にしびれが・・カメンソウル・・ここまでの力とは・・・!」
ライの攻撃の威力で両手に麻痺が起こって、かなたが毒づく。思うように動けなくなっている彼に、ライが近づいていく。
「もうやめるんだ、かなた・・こんな戦い、する必要はないんだ・・・!」
ライが呼びかけて、かなたからルシファードライバーを外そうとした。
そのとき、ライが突然体に痛みを感じて、その場に膝を付いた。
「限界が・・こんなときに来るなんて・・・!」
カメンフォームになっての力の消耗に、ライが焦りを覚える。倒れた彼のクロスへの変身が解けてしまう。
「ライくん!」
聖也がライに振り向いて声を上げる。
「クロスのほうが負担が大きかったか・・しかし、私も戦える状態であるとは言えない・・・!」
自分の手でライを倒せない状態に、かなたが毒づく。
「ルシファー、お前は撤退しろ。クラールとクロスは私がとどめを刺す。」
ジェネラルシャドウがかなたに目を向けて呼びかける。
「分かりました、ジェネラルシャドウ様・・・!」
かなたが答えて、ライたちの前から去っていく。
「待つんだ、かなた・・・!」
ライが呼び止めようとするが、思うように動けなくて、かなたを追うことができなかった。
「ライくんに手出しはさせないぞ、ジェネラルシャドウ!」
聖也が言い放って、クラールブレイガンを構える。
「私が手を出せなくとも、今のヤツならばヤツだけで十分だ。」
ジェネラルシャドウが笑みをこぼすと、ライの周りに稲妻が落ちてきた。
「うあっ!」
稲妻が引き起こした爆発に吹き飛ばされて、ライが押されて地面に叩きつけられる。
「どうだ、クロス!このエイキングの呼ぶ稲妻の威力は!」
エイキングが姿を現して、ライを見下ろしてあざ笑う。
「ルシファーの代わりに、貴様はオレ様が始末してやるぞ!」
エイキングがライに呼びかけて、空の雷雲に意識を傾ける。
「走れ、稲妻!」
雷雲から稲妻が落ちてきて、地面に当たって爆発を巻き起こす。ライは必死に体を動かして、稲妻と爆発を回避していく。
「まだそこまで動けるとは・・だがいつまで持つか・・!」
エイキングが笑みをこぼして、さらに稲妻を落としていく。
「あれではやられるのは時間の問題だ・・・!」
危機感を覚える聖也が、ヴァイスソウルを取り出した。
「使い方はまだ分かっていない・・だがハイパーショッカーを倒し、ライくんたちを守るには、このソウルが必要なのだ・・・!」
彼はヴァイスソウルを見つめて、意思を強める。その意思で、ヴァイスソウルが強く握られていた。
“ヴァイス!”
聖也がヴァイスソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットした。
“ライダーソウール!”
クラールドライバーがヴァイスソウルに反応した。
「このソウルが使える・・!」
打ち震えた聖也がクラールタイフーンを回転させた。
“大革命・ヴァーイス!”
聖也のまとうクラールの装甲とマスクが白くなった。彼は強化フォーム「ヴァイスクラール」に変身した。
「こ、この姿は・・!?」
まばゆい輝きを装甲から放っている聖也に、ジェネラルシャドウが驚く。
「強き正義で、悪に制裁を下す・・!」
聖也が鋭く言って、ジェネラルシャドウに向かっていく。ジェネラルシャドウが聖也に向けてシャドウ剣を突き出す。
次の瞬間、聖也の姿がジェネラルシャドウの視界から消えた。
「何っ!?」
ジェネラルシャドウがさらに驚いて、周りを見回して聖也を捜す。その直後、彼の持っていたシャドウ剣がはじき飛ばされた。
聖也が高速で動いていた。彼がジェネラルシャドウに一気に詰め寄って、足を振り上げてシャドウ剣をはじき飛ばしたのである。
「なんという速さ・・私が、こうも簡単に・・・!?」
聖也の見せたスピードにジェネラルシャドウが驚きを隠せなくなる。聖也が高速でパンチとキックを繰り出して、ジェネラルシャドウを突き飛ばした。
聖也がライを助けようと、エイキングに目を向けた。
「ジェネラルシャドウ様!?・・おのれ、クラール!」
エイキングがいら立ちを浮かべて、聖也に狙いを変える。
「走れ、稲妻!」
エイキングが空から稲妻を落とすが、聖也はスピードを上げて駆け抜けた。
「おわっ!」
一気に詰め寄ってきた聖也が繰り出したパンチを受けて宙に跳ね上げられたエイキングだが、ヒレを翼のようにはばたかせて空を飛んだ。
(アクセルとかのスピードライダーほどじゃないけど、ものすごいスピードだ・・その上パワーもものすごい・・・!)
ヴァイスクラールになっている聖也の強さに、ライも驚くばかりになっていた。
「ここまで戦闘力をアップさせてくるとは・・だがさすがに上空にいるオレ様は攻撃できまい!」
エイキングが飛行を続けながら、聖也を見下ろしてあざ笑う。
「このヴァイスには飛行能力はないが、空を飛ぶ相手を倒すことは不可能ではない・・!」
聖也は言いかけると、腰に装備されていた剣を手にした。両端に刀身が出ているヴァイスクラール専用の武器「ヴァイスブレイカー」である。
“マッハ!”
“アクセル!”
聖也は続けてマッハソウルとアクセルソウルを手にして、スイッチを入れた。
“スピードヴァーイス!”
2つのソウルを両方の柄にあるくぼみのスロットにセットしたヴァイスブレイカーから、青い光があふれ出す。
「スピードブレイカー!」
聖也がエイキングに向かってヴァイスブレイカーを投げつけた。ヴァイスブレイカーは矢のように鋭く高速で飛んでいく。
「ギャアッ!」
エイキングがヴァイスブレイカーに体を切られて、絶叫を上げて地上に落下した。回転しながら戻ってきたヴァイスブレイカーを、聖也が手にした。
「これほどのスピードで、武器を投げてくるとは・・まさにこれは、狙撃・・・!」
聖也の発揮した強さを痛感して、エイキングが力尽きて爆発した。
「くっ・・クロスだけでなく、クラールまでパワーアップを果たすとは・・!」
ジェネラルシャドウが聖也に対して毒づく。
「クラールに関するデータも洗い直さなければならないようだぞ、死神博士・・・!」
ジェネラルシャドウは呟いてから、ライたちの前から姿を消した。
「危ないところだった・・聖也さんとヴァイスのソウルがなかったら、オレたちはやられていた・・・」
ライがひと息ついて、そばの壁にもたれかかった。
“変身カイジョー。”
聖也はクラールへの変身を解除した。彼はヴァイスソウルを使った大きな負担を感じて、顔を歪める。
「聖也さん、大丈夫ですか・・!?」
「私は大丈夫だ・・このヴァイスも、クロスワイズやカメンソウルと同じく、負担が大きいもののようだ・・」
心配の声を掛けるライに答えて、聖也がヴァイスクラールのリスクを痛感する。
「君こそ大丈夫か、ライくん・・?」
「はい・・聖也さんがいたから、助かりました・・」
聖也も心配の声を掛けて、ライが微笑んで答えた。
「私もライくんに負けず劣らずの強さを得ることができた・・これからもともに戦おう、ライくん・・」
「はい、聖也さん!」
聖也が呼びかけて、ライが笑顔で答えた。
(ヴァイスソウルの使えるきっかけは、強い信念と正義、そして守ろうとする思い・・なかったものではなく、足りなかっただけだった・・)
持っていたヴァイスソウルを見つめて、聖也が自分のことを考える。
(磨いて高めていけばよかっただけ・・深く考えすぎていたのかもしれない・・・)
自分のことを改めて見つめ直せたことに、聖也は安心を感じていた。
「戻ろう、ライくん。」
「はい、聖也さん。おやっさんとまりちゃんが待ってますから・・」
聖也が呼びかけて、ライが答える。2人は決意を強くして、橘モーターショップに戻っていった。