仮面ライダークロス

第24話「逆転!カメンソウル」

 

 

 クロスワイズでも敵わなかったライと、彼の正体を知ったまり。2人はかなたを前にして、絶体絶命のピンチを迎えていた。

「やめろ・・まりちゃんに手を出すな・・・!」

 ライが力を振り絞って立ち上がる。

「まだ立ち上がれるか・・しかしそれでも私からは逃げられない。」

 かなたは態度を変えずに言いかけて、ライを狙う。かなたは立ちはだかるまりにも、敵意を向けていた。

「まりちゃんを傷付けても、お前は平気だっていうのか、かなた!?

「えっ!?・・かなたくん・・!?

 かなたに呼びかけるライの声を聞いて、まりが驚きを隠せなくなる。

「ウソ!?・・かなたくんのわけがない・・・!」

 目の前にいるルシファーがかなたであることが信じられず、まりが体を震わせる。

「かなたくんが、ライくんを傷付けるわけがない!」

「オレも今でも信じたくはない・・だけど、ホントのことなんだ・・・!」

 首を横に振るまりに、ライが声を振り絞って言いかける。

「かなたはハイパーショッカーによって、ルシファーに調整されてしまった・・しかもヤツらに洗脳されている・・・!」

 ライは感情を抑えながら、かなたのことを話す。彼の話を受け入れられず、まりは絶望するばかりだった。

「洗脳などされてはいない。私はルシファー。ハイパーショッカーの戦士の1人だ。」

「違う!かなた、お前はハイパーショッカーに操られているんだ!まりちゃんのためにも、目を覚ますんだ・・!」

 口調を変えずに言いかけるかなたに、ライが叫ぶ。

「私の目的は、クロスとクラールの打倒。それ以外のものは私にはない。」

「かなたくん、やめて!私はまり!緑川まりだよ!」

 冷たく告げるあなたに、まりが呼びかける。

「そこをどかないならば、クロスとともに地獄に落ちろ。」

 かなたは態度を変えることなく、かなたに握った右手を繰り出そうとした。

「そこまでだ!」

 そこへクラールジェットに乗った聖也が駆けつけてきた。不意を突かれたかなたが、クラールジェットに突き飛ばされた。

「かなたくん!?

 地面を転がるかなたに、まりが叫ぶ。

「2人とも乗るんだ!1度引き上げる!」

 聖也が呼びかけて、ライとまりにクラールジェットに乗るように促す。

「でも、かなたくんが!」

「彼のことを知ったのか・・・説得は次の機会にするんだ!このままでは本当にやられる!」

 かなたを心配するまりに、聖也がさらに呼びかける。

「かなたくん・・・ライくん・・・!」

 まりはかなたのことを気に掛けながら、ライを連れてクラールジェットに乗った。聖也がクラールジェットを走らせて、かなたから離れた。

「クラール・・ドクターケイトは足止めに失敗したようだ・・」

 立ち上がったかなたは、ライたちを追うことができなかった。

“ダークリリース。”

 彼はルシファードライバーを外して、ルシファーへの変身を解除した。

「惜しいところで取り逃がしたな、ルシファー。」

 ジェネラルシャドウが降り立って、かなたに声を掛けてきた。

「しかしお前の力、私は認めるぞ。クロスとクラールを超えるものだと確認した。」

「ありがとうございます、ジェネラルシャドウ様。」

 称賛を送るジェネラルシャドウに、かなたが感謝する。

「引き上げるぞ。体勢を整える。」

「了解。」

 ジェネラルシャドウが呼びかけて、かなたが答える。2人は歩き出してこの場を後にした。

 

 聖也に助けられたライとまり。彼らは橘モーターショップの近くで止まった。

「2人とも大丈夫か?ひとまず安全だ・・」

 聖也が問いかけて、ライとまりがクラールジェットから降りる。その直後、ライがふらついて倒れそうになる。

「ライくん!」

 まりがライを支えて呼びかける。

「オレは大丈夫だ・・だけど、まりちゃん・・・!」

 踏みとどまったライが、まりの心境を察する。

「ライくんがクロス・・かなたくんがあのライダーになっていたなんて・・・!」

「知ったのか、そのことを・・・!?

 まりが口にした言葉に、聖也も驚かされる。

「オレとかなたが戦っているのを、まりちゃんも見てたんです・・」

「私、どうしてもライくんとかなたくんが心配で・・」

 ライが不安を浮かべて事情を話して、まりが申し訳ない気持ちを示す。

「そうか・・こういう秘密は、いつまでも隠し通せるものではないということか・・」

“変身カイジョー。”

 クラールへの変身を解除して、聖也もまりに正体を明かした。

「あなたが、もう1人の仮面ライダー・・・」

「仮面ライダークラール。滝聖也です。」

 戸惑いを見せるまりに、聖也が自己紹介をする。

「緑川まりさん。ライくん、かなたくんの幼馴染みだそうですね。」

「は、はい・・でも私のことまで・・」

「かつて身を置いていた組織の情報収集能力を持っていますのでね。」

 さらに動揺するまりに、聖也が語りかける。

「詳しい話はおやっさんのとこで・・おやっさんも、オレたちのことを知ってるから・・」

「ひろしさん・・やっぱりライくんたちのことを知っていたんだね・・・」

 ライが呼びかけると、まりがひろしのことを考えて肩を落とす。彼らは橘モーターショップへと移動した。

「おかえり、みんな・・まりちゃんも一緒か。」

 挨拶したひろしがまりを見て戸惑いを覚える。

「おやっさん・・まりちゃんにも、オレたちのこと・・・」

「・・・そうか・・まりちゃんも知ってしまったか・・・」

 ライが打ち明けた話を聞いて、ひろしがひと息を付く。

「ライくん、詳しく聞かせて・・ライくんたちやかなたくんに何が起こってるのか・・」

 まりが真剣な顔でライに言いかけてきた。

「オレはハイパーショッカーに捕まって、クロスに調整された。洗脳される前に脱出することはできたけど・・」

 ライが語りかけて、クロスドライバーとクロスソウルを出して、まりに見せた。

「変身する前は普通の人間だけど、これで変身すると、仮面ライダーとしての強さが使えるようになるんだ・・」

「それでライくんは、仮面ライダーに・・」

 ライの話を聞いて、まりが動揺を隠せなくなる。

「オレをクロスにして、全ての世界を1つにして支配しようとしているのが、ハイパーショッカー。仮面ライダーたちが戦ってきた敵が集まった連中だ・・」

「そして私たちは、仮面ライダーのみなさんと会って、彼らの力をライダーソウルとして受け取ってきたのです。」

 ライに続いて聖也も説明して、持っているライダーソウルをまりに見せた。

「それで、いろんな姿になったりしているんですね・・」

 まりがライダーソウルを見て、頷いていく。

「だけど、かなたはハイパーショッカーに捕まって、ルシファーに調整されて洗脳されて・・・」

 ライがかなたのことを話して、歯がゆさを浮かべる。

「しかもかなたは強くなっていて、クロスワイズでも敵わなかった・・・!」

「何だって!?

 ライが口にした言葉にひろしが驚く。

「今のままじゃかなたを止めることもできない・・何か対策を立てないと・・・!」

 かなたを助けるための方法を求めて、ライが考えを巡らせる。

「他のライダーソウルを駆使しようとしても、ルシファーもライダーソウルを使い分けることができる・・作戦でかなたくんを助け出すのは難しいだろう・・」

 聖也も作戦を考えるが、いい方法を見つけることができない。

「強くならないと、かなたを助けられない・・ここを守ることだって・・・!」

「ライくん、もうムチャしないで・・いくらかなたくんのためでも・・!」

 強さを求めるライに、かなたが呼びかけてきた。

「かなたくんがあんなことになって、ライくんまでいなくなったら、私・・・!」

「まりちゃん・・・」

 悲しみと不安を込めてライに向けて言いかけるまりに、ひろしが戸惑いを感じていく。

「まりちゃん、オレはいなくならない・・ハイパーショッカーが何をしてきても、オレは必ずここに戻ってくる・・絶対に・・!」

「ライくん・・それじゃ・・・」

「でもオレは行く・・かなたを助けたいと思っているから・・」

「でもライくん・・・!」

 自分の意思を告げるライを、まりが心配する。

「オレも生きて、かなたを助けて一緒にここに戻る・・そうしないと、オレが安心できない・・・!」

 自分の本音を口にするライに、まりが戸惑いをふくらませていく。

(ライくんは元々こういう性格だった・・自分が許せないことには反発するし、自分が安心することを優先する・・・仮面ライダーになっても、それは変わっていない・・・)

 ライの心はそれまでと何も変わっていないと分かって、まりは安心と同時に複雑な気持ちを感じていた。

「だったら、絶対に帰ってきて・・・死なないで・・いなくならないで・・・!」

 まりが真剣な顔で、ライに言いかけてきた。

「まりちゃん・・・」

 真っ直ぐに心配してくれているまりに、ライも戸惑いを感じていた。

「もちろんだ・・オレは必ず帰る・・かなたも一緒だ・・・!」

 ライの揺るぎない決意を聞いて、まりは微笑んだ。

「もしもまたかなたやハイパーショッカーが出てきたら、すぐにでもオレは行く・・どうしても、かなたをほっとけない・・・!」

 ライが正直な考えをまりたちに伝えた。

「そこまで言うなら止めはしないが、どうしても危ないと思ったら、他のことは考えないですぐに逃げるんだぞ。まりちゃんがここまで心配してること、忘れるんじゃないぞ・・!」

 ひろしも真剣な顔で、ライに檄を飛ばす。

「はい、おやっさん!」

 ライが答えて笑みを見せた。彼の信念を知って、聖也も頷いた。

 

 ジェネラルシャドウとともに1度撤退したかなた。彼は調整されることで、体力を回復させていた。

「なかなかだったぞ、ルシファー。取り逃がしたのは残念だが、クロスを追い詰めることはできた。」

 ゾルがかなたの戦いに感心する。

「しかしヤツらはこれで何か手を打ってこないとも限らん。すぐにヤツらの居所を突き止めて排除したほうがよさそうだ。」

 死神博士がライたちを警戒して提言する。

「ルシファー、お前ならヤツらの居所を知っているはずだ。出撃し、ヤツらを倒すのだ。」

「了解、死神博士。」

 死神博士の命令に答えて、かなたは行動を開始した。

「ルシファーはかつてはクロスの仲間だった。ヤツらの居所も分かっているはずだ。」

「だが、ルシファーには洗脳も施してあり、市川かなたとしての意識はない。記憶を頼りにヤツらを追い詰めるのは難しいのでは?」

「記憶は完全に消すことは不可能だ。命か頭脳を消す以外にな。思い出せないのは忘れているだけだ。」

「ならば思い出して、以前の自分を思い出す可能性もなくはないのでは?」

 死神博士の説明を聞いて、ジェネラルシャドウが疑問を投げかける。

「もしも異変が起きれば、すぐに撤退させ収拾する。記憶を取り戻そうとしても、すぐに人間に戻るということにはならん。」

「ならば監視を徹底しておかなければな。収拾できなければ危険だからな。」

 笑みを浮かべる死神博士に、ゾルが注意を呼びかける。

「この警戒の意味でも、早くクロスを始末したほうがよさそうだ。」

 ジェネラルシャドウが告げた言葉に、死神博士が頷いた。戦闘員たちによるかなたへの監視が、強まることになった。

 

 頭の中の奥底にある情報、記憶を頼りにして、かなたはライを捜索する。

「分かる・・初めて来た場所なのに、ヤツらの居所が・・」

 かなたが思考を巡らせて前進していく。彼は橘モーターショップへと近づきつつあった。

「この辺りだ。この辺りにクロスたちがいるはずだ。」

 かなたが言いかけて、戦闘員たちが散開して監視していく。その監視の対象に、かなたも含まれていた。

 

「かなた・・・!?

 近くにかなたがいるような予感がして、ライが外のほうへ振り返る。

「ライくん・・かなたくんが、近くにいるの・・・!?

 まりが問いかけて、ライが小さく頷く。

「まりちゃんとおやっさんはここにいて・・もしもかなたが来ているなら、オレが目を覚まして連れて帰る・・・!」

 ライがまりとひろしに目を向けて、真剣な顔で呼びかける。

「分かった。だけどムチャは絶対にするなよ・・!」

 ひろしも呼びかけて、ライと聖也が小さく頷いた。2人がともに外へ飛び出した。

「ライくん・・かなたくん・・・やっぱり、私も・・!」

 まりもたまらず、ライたちを追いかけて駆け出した。

「あっ!まりちゃん!行っちゃダメだ!」

 ひろしが呼び止めるが、まりは聞かずに出ていってしまった。

 

 ライの行方を追うかなた。彼の前にライと聖也が駆けつけた。

「かなた・・・!」

「出てきたか、クロス、クラール。この前は逃がしたが、次はそうはいかない。確実にこの手で倒す。」

 緊張を浮かべるライに、かなたが無表情で告げる。

「かなた、目を覚ますんだ!オレだけじゃなく、まりちゃんもおやっさんもお前の帰りを待ってるんだぞ!」

「私はルシファー。ハイパーショッカーのため、お前たちを倒すことが目的。それ以外は何もない。」

 ライが呼びかけるが、かなたは冷たく言うだけだった。

「力ずくで止めるしかないのか・・・!」

 聖也が毒づいて、ライも戦う覚悟を決める。2人がクラールドライバーとクラールソウル、クロスドライバーとクロスソウルを手にした。

“クロスドライバー!”

 ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。

“クロス!”

 音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。

“ライダーソウール!”

 ライは意識を集中して構えを取る。

「変身!」

 彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。

“クラールドライバー!”

“クラール!”

 聖也がクラールドライバーを装着して、クラールソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼がクラールドライバーにクラールソウルをセットした。

「変身!」

“変身・ライダー!クラール!”

 聖也がクラールタイフーンを回転させて、クラールに変身した。

「全てを、オレが正す!」

「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」

 ライと聖也がかなたたちに向かって言い放つ。

「お前たちはここで終わりだ。覚悟してもらう。」

 かなたが言いかけて、ライたちに向かって前進する。

 ライと聖也が同時に攻撃を仕掛けるが、かなたは正確に回避と防御をしていく。

「2人がかりでも私に勝つことはできない。私の力はそれだけ高まっている。」

 かなたが告げて、パンチとキックを当てて、ライと聖也を突き飛ばす。

「ぐっ!」

 倒れるライたちが痛みを感じてうめく。立ち上がる2人が、かなたに視線を戻して身構える。

「おとなしく我々に従え。そうすれば命を失うことはない。」

 かなたがライたちに向けて忠告を送る。

「ふざけるな!私たちはお前たちには屈しない!お前たちに従うことは、死ぬよりも私たちの存在意義を失うことになる!」

 彼の言葉を拒絶して、聖也が言い放つ。ライも従おうとしない。

「ならばお前たちは死ぬしかない。」

 かなたが告げて、新たなライダーソウルを手にした。仮面ライダーエターナルのライダーソウル「エターナルソウル」である。

“エターナル!”

 かなたがエターナルソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。

“ダークチャージ・エターナル。”

 浮遊するかなたの体から、まばゆい光があふれ出した。

「ルシファーエターナルブレイク。」

 彼が足に光を集めて、急降下してキックを繰り出した。

「おわっ!」

 キックと光の爆発に押されて、ライと聖也が再び倒される。

「ライダーソウルの使い方もうまい・・さらに手ごわいぞ、彼は・・!」

 聖也がかなたの力を痛感して、焦りを噛みしめる。

「だったら、クロスワイズを使うしかない・・!」

 ライが思い立って、クロスワイズソウルを手にした。

「ダメだ、ライくん!今のかなたくんはクロスワイズも超える!体力を消耗するだけだ!」

「こうしなければかなたを救い出せない!オレが力を振り絞らなくちゃ!」

 聖也が呼び止めるが、ライは決意を貫こうとする。

「焦るな、ライくん!私たちの持っているライダーソウルはまだまだある!」

 聖也が投げかけた言葉を聞いて、ライが思いとどまった。

「そう行くなら、このソウルを使う・・!」

 ライが仮面ライダーオメガのライダーソウル「オメガソウル」を取り出した。

“オメガ!”

“ライダーソウール!”

 彼はスイッチを入れたオメガソウルをクロスドライバーにセットして、左レバーを上げてクロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!オメガー!”

 クロスの姿がオメガそっくりとなった。ライはオメガの力を備えた「オメガフォーム」となった。

「オメガでいくか。ならば私は・・!」

 聖也も新たなライダーソウルを取り出した。オメガとともに戦った仮面ライダー、ギガスのライダーソウル「ギガスソウル」である。

“ギガス!”

“ライダーソウール!”

 聖也がギガスソウルをクラールドライバーにセットして、左レバーを上に上げてクラールタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!ギガース!”

 クラールの姿がオメガに似た仮面ライダーの姿になった。聖也は「ギガスフォーム」へと変身した。

「オメガとギガスになったか。ならば私は・・」

 かなたもライダーソウルを手にした。それはオメガの仲間の仮面ライダー、クリスのソウル「クリスソウル」である。

“クリス!”

“ライダーソウル。”

 彼がクリスソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右のスロットにセットして、ルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。

“ダークチェンジ・クリス。”

 ルシファーの姿がオメガ、ギガスに似た緑色の仮面ライダーに変わった。かなたは「クリスフォーム」への変身を果たした。

「クリスになっただと・・!?

「オメガに出てきたライダー3人がそろったという形なのか・・・!」

 聖也が驚いて、ライが毒づく。向かってくるかなたを、2人が迎え撃つ。

 ライと聖也がかなたを取り押さえようと手を伸ばす。しかしかなたに素早くかわされる。

「言ったはずだ。2人がかりでも私には勝てないと。」

 かなたは告げると、回し蹴りを繰り出して聖也を蹴り飛ばす。直後にライがパンチを繰り出すが、かなたにその腕をつかまれる。

「それにお前は、通常よりも戦闘力が衰えている。私と戦うときは、他の者と戦うときよりも・・」

 かなたが口にした言葉を聞いて、ライが心を揺さぶられる。ライの中に、かなたと戦うことへのためらいがあった。

 動きを止めたライが、かなたに投げ飛ばされる。ライは体勢を整えられず、地面に倒される。

「ライくん!」

 聖也がライに声を上げて、クラールドライバーの右レバーを上に上げてクラールタイフーンを回転させる。

“ライダースマッシュ・ギガース!”

 聖也がジャンプして、両足のキックを繰り出した。

“歌舞鬼!”

 かなたが歌舞鬼ソウルを手にしてスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。

“ダークチャージ・歌舞鬼。”

「ルシファー業火絢爛。」

 かなたが右手を振りかざして、太鼓のようなエネルギーを放つ。聖也がキックをエネルギーにぶつける。

「この技も、以前よりも威力が増している・・!」

 聖也がエネルギーに押されて、その爆発に巻き込まれて地面に叩きつけられた。

「聖也さん!」

 ライが声を上げて、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加えた。

“ライダースマッシュ・オメガー!”

 右足に精神エネルギーを集めて、ライがジャンプする。

“ゴルドドライブ!”

 かなたが手にしたゴルドドライブソウルを、歌舞鬼ソウルと入れ替える。

“ダークチャージ・ゴルドドライブ。”

 かなたもジャンプして、エネルギーを集めたキックを繰り出して、ライのキックとぶつけ合った。

「うぐっ!」

 ライがかなたに押し負けて、地面に叩きつけられる。

「ライ!」

 そこへまりが駆けつけて、倒れたライに叫ぶ。

「まりちゃん・・!?

 ライが驚きながら立ち上がって、着地したかなたに視線を戻す。

「かなたくん・・・もうやめて!ライくんとあなたは、親友同士じゃない!」

 まりがかなたに向かって言い放つ。

「私はルシファー。クロスとクラールを倒すのが、私の目的。」

 かなたがまりに言い返して、ライに向かって歩を進める。

「違う!あなたは市川かなたくん!ルシファーなんかじゃないよ!」

「私の邪魔をするな。さもなければ、お前も排除することになる。」

 必死に呼びかけるまりだが、かなたは聞こうとしない。

「かなた・・まりちゃんに、手を出すな!」

 ライが立ち上がって、クロスワイズソウルを手にした。

“クロスワイズ!”

 ライがクロスワイズソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼がクロスワイズソウルをクロスドライバーにセットした。

「大変身!」

 ライがクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“大変身!クロスワーイズ!”

 クロスの装甲に赤いラインが入って、マスクの形と目元も鋭くなった。ライはクロスワイズへと変身した。

「クロスワイズになっても、私には勝てない。」

「勝つんじゃない!オレはお前を取り戻すんだ!」

 口調を変えずに告げるかなたに、ライが言い返す。

「クロスワイズの力全部を叩き込むしかない・・!」

 ライが覚悟を決めて、クロスタイフーンを回転させる。

“ライダースマッシュ・クロスワーイズ!”

 ライのまとうクロスの装甲から光があふれ出す。彼は前に走り出してジャンプして、かなたに向かってキックを繰り出す。

「今度こそ地獄に落ちろ、クロス。」

 かなたがライに言って、ルシファーソウルを手にした。

“ダークチャージ・ルシファー。”

 ルシファードライバーの左のスロットにルシファーソウルをセットして、かなたが右足に黒い光を集めていく。

「ルシファーストライク。」

 ライのキックに向かって、かなたが回転を加えて右足を振りかざす。2人のキックがぶつかり合って、閃光と衝撃が巻き起こった。

「がはっ!」

 ライが突き飛ばされて、クロスへの変身が解けた。

「ライくん!」

 倒れたライにまりが駆け寄る。着地したかなたが2人に目を向ける。

「また生き延びていたか。しかし次でとどめとする。」

 かなたが呟いて、ライたちに近づいていく。

「ダメ!かなたくん!」

 まりがかなたの前に出て、ライを守ろうとする。

「あくまで邪魔をするのか。ならばお前も始末する。」

「目を覚まして、かなたくん!ライくんを傷付けて、あなたが平気なわけがない!」

 敵意を向けるかなたに、まりが思いを叫ぶ。

「私はルシファー。ハイパーショッカーの戦士。それ以外の何者でもない。」

「違う!あなたはかなたくんだよ!」

 考えを変えないかなたと、ひたすら呼びかけるまり。

「お前も闇に葬ってくれる。」

 かなたが右手を握りしめて、まりに攻撃を仕掛けようとする。

「やめろ、かなた・・!」

 そのとき、ライが力を振り絞って立ち上がり、かなたに呼びかけてきた。

「ライくん・・!」

「お前はまりちゃんをここまで悲しませてもいいと思っているのか!?・・自分の目的のためなら、まりちゃんやおやっさんの気持ちを踏みにじってもいいと思ってるのか!?

 動揺を見せるまりの前で、ライがかなたに呼びかける。

「他の者のことは知らない。私は私の目的を果たすだけだ。」

「そこまで言い張る気なのか・・だったらオレがまりちゃんを守る!たとえお前を倒してでも!」

 考えと口調を変えないかなたに、ライが怒りの声を上げた。

「ダメ、ライくん!かなたくんを傷付けないで!」

 まりが悲しみをふくらませて、ライに抱き着いて止めに入った。

「オレも、かなたを傷付けたくはない・・でもオレがかなたを力ずくでも止めなかったら、まりちゃんやおやっさんが・・・!」

「ライくん・・・!」

「そうなるくらいなら・・オレはかなたと戦う・・・!」

 今の自分の怒りを貫こうとするライに、まりが心を揺さぶられていく。どんなに止めてもライが制止を振り切ってかなたと戦おうとすると、彼女は思い知らされた。

 そのとき、ライの左手の中に光が現れた。

「な、何だ!?

 光を見てライがまりとともに驚く。光は形作られて、1つのライダーソウルになった。

「ライダーソウル・・他の仮面ライダーのソウルじゃない・・!」

 ライがそのライダーソウルを見つめて、戸惑いを感じていく。

「よくは分からないが、コイツに賭けるしかないみたいだ・・!」

“カメン!”

 ライが思い立って、ライダーソウル「カメンソウル」のスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼はカメンソウルをクロスドライバーにセットした。

「超変身!」

 ライがクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“超変身・カメーン!”

 クロスの装甲とマスクが、緑と赤の横のラインの入ったものになった。クロスの新たな姿「カメンフォーム」である。

「新しいクロス・・・!」

「カメンソウル・・・!」

 まりと聖也もライの姿を見て、戸惑いを感じていく。

「クロスが新しい姿になった?・・データにないが、今の私に対処できないことはない。」

 かなたは口調を変えることなく、ライに向かってパンチを繰り出した。ライが片手でかなたのパンチを受け止めた。

 攻撃を止められたことに、かなたが一瞬驚きを覚える。

「すごい・・クロスワイズ以上の力だ・・・!」

 ライ自身もカメンフォームの力を実感して、戸惑いをふくらませていく。

 ライがかなたのパンチを振り払って、反撃を仕掛ける。

「ぐっ!」

 ライのパンチを体に受けて、かなたがうめく。重みのあるパンチの衝撃に、彼は思わずふらついて後ずさりする。

 ライは続けてパンチを当てていって、かなたを攻め立てる。

「戦闘能力が格段に上がっている・・しかし、私に敗北は許されない。」

 かなたは引かずにライを迎え撃つ。ライがパンチとキックを繰り出して、かなたに命中させていく。

「想像以上の力・・このまま戦ってもやられるだけだ・・・!」

 危機感を覚えたかなたが、ルシファードライバーの左スロットにあったルシファーソウルを、1度出してセットし直す。

“ダークチャージ・ルシファー。”

 かなたが右足に黒い光を集めて、ライに向かっていく。ライがクロスタイフーンを回転させる。

“ライダースマッシュ・カメーン!”

 全身からまばゆい光を発するライ。彼はその光を右足に集めていく。

 ライとかなたが同時にジャンプして、光のキックを繰り出してぶつけ合う。このキックの衝突の後、ライは続けてキックを繰り出した。

 かなたがライのキックに押し負けて、その先の壁に強く叩きつけられた。大きなダメージを受けて、かなたが倒れてルシファーへの変身が解けた。

 戦闘員たちが慌ててかなたに駆け寄って支える。思うように動けなくなったかなたが、戦闘員たちに連れられて、ライたちの前から離れていく。

「かなた!」

 ライがかなたを取り戻そうと考える。

「ぐっ!」

 その瞬間、ライが突然体を動かせなくなって、前のめりに倒れた。

「ライくん!」

 まりが声を上げて、ライを支える。聖也がかなたたちを追おうとするが、思うように動けず、彼らはいなくなってしまった。

「ライくん、大丈夫!?どうしたの!?

「体力を消耗しすぎたみたいだ・・このカメンソウルも、負担が大きいみたいだ・・!」

 まりが呼びかけて、ライが声を振り絞る。

“変身カイジョー。”

 彼はクロスドライバーを外して、クロスへの変身を解除した。

(かなたを止められたけど、助けることができなかった・・かなたの心も、呼び戻せてない・・・!)

 かなたを助けられなかったことを悔やんで、ライが両手を握りしめる。

「ライくん・・かなたくん・・・」

 まりがライとかなたを心配して、動揺をふくらませていく。

 カメンフォームという新しい姿になって強くなったライだが、それでもかなたを連れ戻すことはできなかった。

 

 

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