仮面ライダークロス
第23話「届かない思い、癒えない心」
ライたちによって、ドクトルGは倒された。それを受けて、死神博士の元へ2人の男が向かった。
「お前たちもここへ来たか。ゾル大佐、ジェネラルシャドウ。」
死神博士が2人の男、ゾルとジェネラルシャドウに声を掛けた。
「クロスとクラールに手こずるとは、情けないことだぞ。」
「言うな、ゾル大佐。クロスたちの力が、我々の想像以上だったというだけだ。」
ゾルが注意を口にして、ジェネラルシャドウが口を挟む。
「クロスもクラールも、他の仮面ライダーの力を使うこともできる。力が強いだけでなく、臨機応変の対応にも長けている。」
死神博士がライたちについて語りかける。
「ならば我々もそれ以上の力と策略で、クロスたちを打ち負かせばいいだけのことだ。」
ゾルが自信を込めて言いかける。
「そのためのルシファーだ。先ほど再調整が終了したところだ。」
死神博士が言いかけると、かなたが彼らの前に現れた。
「この者がルシファーか。この見た目からは想像できない潜在能力を備えているというのだな。」
ジェネラルシャドウがかなたを見て、冷静に言いかける。
「さらなる強化を果たしたルシファーが、クロスたちに負けることは2度とない。たとえヤツがあのクロスワイズになろうとも。」
死神博士がかなたを見て笑みをこぼす。
「面白い。死神博士、この者の腕、近くで拝見してもいいかな?」
「それは構わんよ。ならば次の作戦の指揮を任せてもよいか?」
ジェネラルシャドウが言いかけて、死神博士が答える。
「分かった。ルシファーを指揮し、クロスとクラールの抹殺を遂行する。」
ジェネラルシャドウが指揮を引き受けて、かなたと戦闘員数人を引きつれて外へ出た。
「私はここから、ルシファーのお手並みを拝見させてもらうぞ。」
ゾルがかなたへの信頼を寄せて、死神博士とともに笑みを浮かべた。
Wとアクセルのライダーソウルを手にして、ライと聖也は戸惑いを感じていた。
「翔太郎さんたちも、力を貸してくれた・・・仮面ライダーの力が、集まっていく・・・!」
「それをうまく使いこなしていくのが、本当の強さということか・・・」
ライと聖也が翔太郎とフィリップ、これまで出会った仮面ライダーのことを思い返す。
「かなたを助け出して、ハイパーショッカーを倒す・・それが今のオレの戦いだ・・・!」
「私の目的はハイパーショッカーの壊滅。ただしライくんの友人の救出に対しての協力は、私もするつもりだ。」
ライと聖也が自分の意思を口にする。
「“力”よりも“強さ”のほうがより強い。それを痛感させられた気がする・・」
「力とか強さとか、どういうものなのかは、オレもよく分かっちゃいないんですけどね・・」
自分にとっての本当の大切なことを実感する聖也に、ライが苦笑いを見せる。
「問題なのは、まりちゃんもかなたを捜し出そうとしていることです・・まりちゃんは、かなたがハイパーショッカーに操られていることまでは分かってない・・」
「ハイパーショッカーに深入りすると、危険が増すことになる。思いとどまるよう呼びかける必要があるが・・」
ライと聖也がまりのことを心配する。
「そのためにはちゃんと説明しなくちゃいけない・・でもそうなると、今のかなたやオレたちのことを話さなくちゃいけなくなる・・それこそ深入りになってしまう・・・!」
まりには詳しく話をすることができない。どうすることが最善手なのかが分からなくて、ライは悩むばかりになっていた。
不安と苦悩を抱えたまま、ライは聖也とともに橘モーターショップに向かった。
「おやっさん、ただいま・・・」
挨拶しようとしたライが、ひろしにまりが詰め寄ってきていたのを目の当たりにした。
「ひろしさん、かなたくんのことで何か知らないですか・・?」
「いやぁ、ずっと捜してるんだけど、見つからなくて・・・」
まりが心配の表情で問いかけて、ひろしが気まずそうに答える。
「かなたくんがずっといなくて・・私、どうしたら・・・!」
かなたのことを気にせずにいられなくて、まりが落ち込む。
(翔太郎さんから関わらないほうがいいと言われたけど・・)
翔太郎とフィリップのことを思い出しながらも、まりはかなたへの心配を拭えなかった。
(やっぱり言えない・・言えば、まりちゃんが危険に飛び込むことになる・・・!)
ライもまりのことを気に掛けて、本当のことを話せなくなっていた。
かなたはジェネラルシャドウ、戦闘員たちとともに街に足を踏み入れた。彼らはビルの1つの屋上から、街の様子を見下ろしていた。
「ルシファー、お前の力、確かめさせてもらうぞ。」
「はい、ジェネラルシャドウ様。」
ジェネラルシャドウが呼びかけて、かなたが答える。
「ドクターケイト、お前たちが先行して、クロスたちをおびき出せ。」
ジェネラルシャドウがさらに呼びかけると、マンドレイクの怪人、ドクターケイトが現れた。
「かしこまりました、ジェネラルシャドウ様。ヒッヒッヒッヒ・・」
ドクターケイトが答えてから、不気味な笑い声を上げながら姿を消した。
ドクターケイトと戦闘員たちが街で暴れ出した。その騒ぎはすぐにニュースとして知れ渡った。
「怪人たちが現れた・・街で暴れている・・・!」
「もしかしたら、そこに・・・急がなくちゃ・・!」
聖也が言いかけて、ライがかなたのことを考えて緊張を覚える。2人は街に向かって走り出した。
「ライくん・・・!」
ライたちを見たまりが動揺を覚える。
(やっぱりずっとじっとしているわけにいかない・・ライくん、かなたくん・・・!)
不安を抑えられなくなったまりは、ライたちを追いかけていった。
ドクターケイトたちに襲われて、街の人々が慌てて逃げ出していく。
「ヒッヒッヒッヒ・・あたしからは逃げられやしないよ・・」
ドクターケイトが笑い声を上げて、口から赤いガスを吐き出す。ガスを浴びた人々がせき込んでふらつく。
「本当は強力なのがいいけど、戦闘員たちまで巻き添えになってしまうからね・・」
ドクターケイトが周りを見回して微笑む。彼女は様々な毒素を調整して、毒を作り出すことができるのである。
街にまかれる毒ガスで、人々が苦しんで倒れていった。
街に向かっているライと聖也。街からあふれている毒気に気付いて、聖也が足を止めた。
「下手に先に進むな!毒ガスがあふれている!」
「なっ!?」
聖也に呼び止められて、ライが慌てて立ち止まる。2人の見ている先にも、赤い毒ガスが流れてきていた。
「ここからは変身してから行ったほうがいい。ライダーのスーツなら多少の毒気は耐えられる・・」
「はい。分かりました・・!」
聖也の呼びかけに答えて、ライがクロスドライバーとクロスソウルを手にした。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
聖也も頷いてから、クラールドライバーとクラールソウルを取り出した。
“クラールドライバー!”
“クラール!”
“ライダーソウール!”
聖也が装着したクラールドライバーに、クラールソウルをセットした。
「変身!」
“変身・ライダー!クラール!”
彼がクラールタイフーンを回転させて、クラールに変身した。
ライと聖也が改めて前進した。クロス、クラールになっている2人は、立ち込めている毒ガスの中でも平気でいた。
ライたちは感覚を研ぎ澄まして、ドクターケイトたちの前に駆けつけた。
「ハイパーショッカー、お前たちの仕業か!?」
「ヒッヒッヒ・・現れたか、クロスクラール・・!」
ライが問いかけて、ドクターケイトが不気味な笑みを浮かべる。
「思った通り出てきたわね・・お前たちはクロスの相手をしなさい・・!」
「イー!」
ドクターケイトが呼びかけて、戦闘員たちが答える。戦闘員たちがライを取り囲む。
「ヤツら、私たちを分断させるつもりか!」
聖也がライと合流しようとするが、ドクターケイトに行く手を阻まれる。
「あなたの相手は私よ。他の人よりも自分の心配をすることね・・」
ドクターケイトが微笑んで、聖也に向かって毒ガスを放つ。聖也が大きくジャンプして、毒ガスをかわす。
ドクターケイトがさらに毒ガスを放つ。聖也が回避するが、ライから遠ざけられていく。
「聖也さん!」
ライが声を上げて、立ちはだかる戦闘員たちを攻撃して、撃退していく。しかしその間に彼は聖也たちを見失ってしまった。
「しまった・・早く合流しないと、聖也さんが・・・!」
ライが焦りを噛みしめて、聖也を追いかけようとした。
「待て、クロス。」
そこへ声がかかって、ライが緊張を覚えて足を止めた。彼が振り返った先に、かなたがいた。
「かなた・・・!」
「今日こそはお前を倒す。私の任務を果たす。」
声を振り絞るライに、かなたが冷たい口調で告げる。
「かなた・・オレだ!ライだ!おやっさんもまりちゃんも、お前のことを心配している!」
「私はルシファー。ハイパーショッカーのため、お前たちを倒す。」
呼びかけるライだが、かなたは表情を変えない。かなたがルシファードライバーとルシファーソウルを取り出した。
“ルシファー!”
“ライダーソウル。”
かなたがルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。
「変身。」
彼がルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。
“ダークチェンジ・ルシファー。”
かなたが紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとった。彼はルシファーへと変身を果たした。
「クロス、今の私にはお前の攻撃は通用しない。」
かなたはそう告げると、ライに向かって近づいていく。
「戦うしかないのか、かなた・・・!?」
ライは歯がゆさを感じながら、かなたを迎え撃つ。2人がパンチをぶつけ合って、激しい攻防を繰り広げる。
しかしだんだんとライがかなたに対して劣勢を強いられていく。かなたと戦うことへのためらいと、再調整されたことで高まったかなたの力によって、ライは追い詰められていった。
(迷うな・・迷えばやられる・・オレがやられたら、誰がかなたを助けるんだよ・・・!)
ライが自分に言い聞かせて、迷いを振り切ろうとする。繰り出されたパンチを身をかがめてかわして、ライがかなたにパンチを叩き込んだ。
「言ったはずだ。今の私に、お前の攻撃は通用しないと。」
かなたは平然とした様子で告げると、ライの腕をつかんで持ち上げる。
「うあっ!」
かなたに投げ飛ばされて、ライが地面に叩きつけられる。ライはすぐに立ち上がって、かなたと向かい合う。
「お前たちは私に倒される以外の道はない。あるとすれば、我々に従い、ハイパーショッカーのために戦うことだけだ。」
「違う!オレたちもお前も生きて一緒に帰る!そしてハイパーショッカーを倒す!それ以外の選択は選ばない!」
冷たく告げるかなたに、ライが感情を込めて言い返す。
「仮面ライダーのみなさん、かなたを助けたいんだ・・力を貸してくれ・・!」
ライが言いかけて、ライダーソウルを取り出した。仮面ライダーマックスのライダーソウル「マックスソウル」である。
“マックス!”
“ライダーソウール!”
彼はスイッチを入れたマックスソウルをクロスドライバーにセットして、左レバーを上げてクロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!マックース!”
クロスの姿がマックスとそっくりになった。ライはマックスの姿と力を宿した「マックスフォーム」となった。
「データにないライダーソウルか。しかし慌てるほどのことではない。」
かなたは冷静さを崩すことなく、ライを迎え撃つ。
ライが両手を強く握りしめて、かなたにパンチを繰り出す。しかしかなたに軽々とかわされる。
「力はあるが直線的な動き。やはり問題ではない。」
かなたがライの戦い方を分析して呟く。さらにパンチを繰り出したライの体に、かなたがパンチを叩き込んだ。
「ぐっ!」
「結果、隙も大きい。迎撃もたやすい。」
うめくライにかなたが言いかける。かなたが膝蹴りを繰り出して、ライを突き飛ばす。
「くっ・・あの力を止めて、かなたの目を覚まさせる!」
ライが言い放って、クロスドライバーの右のレバーを右手で上げて回転を加える。
“ライダースマッシュ・マックース!”
ライの右足にエネルギーが集まっていく。
「クロススマッシュ!」
彼が大きくジャンプして、かなたに向かってキックを繰り出した。
“リュウガ!”
かなたが仮面ライダーリュウガのライダーソウル「リュウガソウル」を取り出して、スイッチを入れた。彼はリュウガソウルをルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・リュウガ。”
かなたの足に黒い炎が灯る。彼がジャンプして、ライに向かってキックを繰り出した。
ライとかなたがキックをぶつけ合って、激しい衝撃を巻き起こす。
「ぐあっ!」
ライがかなたに競り負けて、突き飛ばされてビルの壁に叩きつけられた。
「ムダだ。何をしようとお前に勝ち目はない。」
ふらつくライにかなたが告げる。ライが痛みに耐えながら、かなたに鋭い視線を向ける。
「勝つんじゃない・・助けるんだ・・かなたを・・・!」
ライが声を振り絞って、思いをふくらませていく。
「これで、一気に決める!」
ライが感情をあらわにして、クロスワイズソウルを取り出した。
“クロスワイズ!”
ライがクロスワイズソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼がクロスワイズソウルをクロスドライバーにセットした。
「大変身!」
ライがクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“大変身!クロスワーイズ!”
クロスの装甲に赤いラインが入って、マスクの形と目元も鋭くなった。ライはクロスワイズへと変身した。
「クロスワイズになっても、今の私に勝つことはできない。」
かなたが言いかけて、ライにに向かって歩を進める。ライが迎え撃ってかなたにパンチを繰り出す。
かなたが手を掲げて、ライのパンチを受け止めた。
「何っ!?」
パンチを止められたことにライが驚く。彼がさらに攻撃を仕掛けるが、かなたは難なく回避と防御をしていく。
「クロスワイズの力が通じないなんて・・!?」
驚きを覚えるライに向かって、かなたが足を突き出す。
「ぐっ!」
ライが蹴り飛ばされて地面を転がる。
「再調整によって、私の力は格段に上がっている。クロスワイズさえも超えるほどだ。」
倒れているライを見下ろして、かなたが言いかける。
「諦めろ。お前にもはや勝機はない。」
「諦めない!オレはお前を助けて、ハイパーショッカーを倒す!そうしなければ、オレの心は絶対に晴れない!」
忠告を口にするかなただが、ライは諦めずに言い放つ。
「だから、お前が何度諦めろと言ってきても、オレは絶対に諦めない!」
揺るぎない決意を口にして、ライがクロスタイフーン回転させる。
“ライダースマッシュ・クロスワーイズ!”
ライのまとうクロスの装甲から光があふれ出す。彼は前に走り出してジャンプして、かなたに向かってキックを繰り出す。
“歌舞鬼。”
かなたが歌舞鬼ソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・歌舞鬼。”
彼の右手に緑の光が集まっていく。
「ルシファー業火絢爛。」
かなたが右手を振りかざして、太鼓のようなエネルギーを放つ。ライのキックとかなたのエネルギーがぶつかり合う。
「ク、クロスワイズのキックが、押されていく・・!」
驚きをふくらませるライが、かなたのエネルギーに吹き飛ばされた。
「があっ!」
ライが倒れて激痛に襲われてうめく。かなたが彼に向かってゆっくりと近づいていく。
「クロスワイズを私が超えたことが、これで証明された。そしてお前の命もこれで終わる。」
「やめろ、かなた・・お前はおやっさんやまりちゃんが悲しんでもいいのか・・・!?」
言いかけるかなたに、ライが声を振り絞って問いかける。
「私はルシファー。ハイパーショッカーの戦士だ。」
かなたは口調を変えずに、ライに迫る。
「お願いだ、かなた・・人間の心を取り戻してくれ・・・!」
ライがかなたへの思いを、必死に呼びかけていた。
ドクターケイトの策略によって、聖也はライから遠ざけられていた。
「私たちを分断して、1人ずつ倒そうという魂胆だろうが、甘く見られたものだな・・」
「ヒッヒッヒ・・そうでもないよ・・クラール、お前の息の根はこの私が止めてやるよ・・・」
状況と敵の企みを分析する聖也に、ドクターケイトが不気味な笑みを浮かべる。
「私の毒から、お前は逃げることはできない・・・!」
「ならばスピードで毒をかわし、お前を倒すだけのこと。」
「ヒッヒッヒ・・残念だけど、他のライダーソウルのことは研究済みよ。スピードならマッハや威吹鬼、ナイトとかね・・」
「いや、まだ使っていないライダーソウルは私にはある・・」
勝ち誇るドクターケイトに言い返して、聖也がライダーソウルを取り出した。それはフォックスのライダーソウル「フォックスソウル」である。
「ま、まだ知らないライダーソウルを持っていたとは・・!?」
ドクターケイトがフォックスソウルを見て、驚きを見せる。
“フォックス!”
“ライダーソウール!”
聖也がフォックスソウルをクラールドライバーにセットして、左レバーを上に上げてクラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!フォックース!”
聖也が黄色と茶色のスーツとキツネを思わせる形のマスクを身に着けた。ビーストライダー、フォックスの姿と力を宿した「フォックスフォーム」である。
「私の強さは疾風迅雷!」
聖也が言い放って、ドクターケイトに向かっていく。
「私の毒を食らえ!」
ドクターケイトが口から毒ガスを放つ。その瞬間、彼女の視界から聖也の姿が消えた。
「ど、どこに・・!?」
ドクターケイトが周りを見回して、聖也を捜す。
「近くにいるのは分かっている・・この辺り一帯に毒を広げれば・・・!」
ドクターケイトが大きく空気を吸い込んで、一気に毒を吐き出そうとする。
「そんなマネはさせん。」
次の瞬間、ドクターケイトの後ろに聖也が回り込んだ。彼は今まで以上のスピードを発揮していた。
「これ以上毒をまき散らす前に、お前を倒す・・!」
聖也が言いかけて、クラールドライバーの右レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させる。
“ライダースマッシュ・フォックース!”
「クラールフォックススマッシュ・・!」
ドクターケイトが振り返ると同時に、聖也がジャンプする。彼がエネルギーを集めたキックを、ドクターケイトに叩き込んだ。
「ギャアッ!」
遠くの上空まで一気に蹴り飛ばされたドクターケイト。彼女は高い空で毒ガスを吐き出した後に、爆発して毒とともに消滅した。
「これで街から毒が消えたか・・・!」
聖也が周りを見回して、ドクターケイトのまき散らした毒が消えたことを確かめた。
「ライくんのところにも、ハイパーショッカーの戦士が送り込まれているはずだ・・おそらくルシファー・・かなたくんが・・・!」
ライのピンチを直感した聖也が、ライダーソウル「クラールジェットソウル」を取り出した。
“クラールジェット!”
クラールジェットソウルのスイッチを押す聖也。すると1台のバイクが駆けつけて、彼のそばで止まった。
「クラールジェット」。クラール専用のバイクである。
聖也はクラールジェットに乗って走り出す。クラールジェットはライが変身しているクロスの反応を捉えて、加速していった。
ライを追いかけて街中に駆けつけたまり。彼女はかなたと戦っているライを目撃した。
「あれは、クロス!・・もう1人のライダー・・・!」
2人の仮面ライダーを見て、まりが緊張を覚える。彼女の見ている先で、倒れていたライが力を振り絞って立ち上がる。
次の瞬間、かなたがパンチを繰り出して、ライの体に叩き込んだ。
「がはっ!」
ライが突き飛ばされて再び倒れる。そのはずみでクロスドライバーが外れて、彼のクロスへの変身が解けた。
「えっ!?・・ライ・・くん・・・!?」
クロスがライだったのを目の当たりにして、まりが驚きを隠せなくなる。
「これで終わりだ。クロス、お前の命、ここで奪い取る。」
かなたが倒れているライに向かって近づいてくる。
「やめて!」
そこへまりが飛び出してきて。ライを守ろうとする。
「えっ!?・・まりちゃん・・・!?」
まりが出てきたことに、ライが驚きを覚える。
「そこをどけ。私はクロスにとどめを刺す。」
「どかない・・ライくんに手を出さないで!」
言いかけるかなただが、まりはライから離れようとしない。
「私の任務の邪魔をする者も、私にとっての排除対象となる。死にたくなければすぐにそこを離れろ。」
「イヤ!絶対にどかない!あなたこそもう手を出さないで!」
忠告するかなただが、それでもまりはどかない。
「ダメだ・・まりちゃん・・逃げるんだ・・・!」
ライが声を振り絞って、まりに呼びかける。ライとまりは絶体絶命のピンチを迎えていた。