仮面ライダークロス
第22話「2人で1人の探偵ライダー・W」
ライの動向とかなたの行方。まりの心配は日に日に増すばかりだった。
(ライくんはどうしちゃったの?・・かなたくんはどこに行っちゃったの・・・!?)
気が気でないまりが、インターネットやニュースから手がかりをつかもうとしていた。今の彼女はわらにもすがる思いになっていた。
(こうなったら、誰か探偵でも・・!)
まりがさらに検索の範囲を広げていく。そこで彼女はある情報を目にした。
「風都・・鳴海探偵事務所・・・!」
まりはこの鳴海探偵事務所に、かなたの捜索を依頼することを心に決めていた。
和解を果たすことができたライと聖也。聖也はライとともに橘モーターショップを訪れた。
「やぁ、ライ・・君は、クラールの・・!?」
ライに声を掛けたところで、ひろしが聖也を見て身構える。
「大丈夫ですよ、おやっさん。聖也さんとは仲直りしたんですよ。」
ライが苦笑いを見せながら、ひろしに聖也のことを説明する。
「仮面ライダーに大事なことを教えられて、本当の強さを知ったのです・・」
「そうだったのか・・オレはこのバイク屋の店長の橘ひろしだ。」
事情を話す聖也に、ひろしが自己紹介をする。
「私は滝聖也。かつて所属していた組織で調整を受けて、クラールに変身する能力を得ました。」
聖也も自己紹介をして、ひろしにクラールソウルを見せた。
「組織を滅ぼしたハイパーショッカーを倒すために、私は戦い、力を求めてきました。」
「そうか。それでライの持ってたライダーソウルも狙ったわけか。強くなろうとして・・」
聖也がさらに説明して、ひろしが納得する。
「それでライ、かなたの行方はまだ分からないのか?」
「はい・・今の所、向こうから現れるのを待つしかなくて・・・」
ひろしが問いかけて、ライが深刻な顔を浮かべて答える。
「ハイパーショッカーの基地にいる可能性が高いが・・いずれも手がかりがない・・」
聖也もかなたのこともハイパーショッカーの居場所も分からず、苦悩を深めていた。
「他の仮面ライダーの中で、知っている人がいるかもしれない・・・!」
ライが仮面ライダーのことを考えていく。
「いた・・あの仮面ライダーが・・いや、探偵が・・!」
そのとき、記憶を巡らせた彼がある人物を思い出した。
「誰なんだ、その人は・・!?」
「2人で1人の仮面ライダー、Wです・・!」
ひろしが問いかけて、ライがWのことを口にした。
「世界が1つになっているなら、Wのいる風都にも行けるはずだ・・!」
「早速風都に向かおう。手に入れられる情報は、できるだけ早く入手したほうがいい。」
推測を巡らせるライに、聖也も言いかける。
「おやっさん、オレたち行ってきます!おやっさんは店で待っててください!もしかしたらかなたが戻ってくるかもしれないので!」
「わ、分かった!戻ってきたらすぐに知らせるからな!」
ライが呼びかけて、ひろしが頷いて答えた。ライと聖也が風都に向かって走り出した。
風の流れる都市「風都」。大きな風車の付いた「風都タワー」がシンボルとなっていた。
その風都にまりがたどり着いた。彼女は鳴海探偵事務所を探して、風都の中を歩いていく。
「ここに探偵事務所があるそうだけど・・・」
まりが周りを見回してから、スマートフォンで地図を表示して、事務所の場所を確認する。
「この先に事務所があるんだね・・・!」
まりが再び歩き出して事務所を目指す。彼女はビリヤード場の前にたどり着いた。探偵事務所はその建物の2階にあった。
「ここが、鳴海探偵事務所・・・」
まりが建物を見上げて戸惑いを感じていく。
「以来のお客さんかい?」
そこへ1人の青年がやってきて、まりに声を掛けてきた。
「あなたは?・・この事務所の人ですか?」
「あぁ。オレは左翔太郎。ここの探偵だ。」
まりが問いかけて、青年、翔太郎が自己紹介をする。
「以来なら中で詳しい話を聞かせてくれないか。」
「は、はい・・」
翔太郎が気さくに振る舞って、まりが頷いた。2人は事務所の中に入っていった。
翔太郎に案内されて、鳴海探偵事務所に入ったまり。事務所の中にはもう1人青年がいた。
「おかえり、翔太郎。新しい依頼者かい?」
「そうだ、フィリップ・・えっとまず、あなたの名前は?」
青年、フィリップに答えて、翔太郎がまりから話を聞く。
「私、緑川まりといいます。実は、友達を捜してほしいんです・・!」
まりが自己紹介をして、かなたのことを話す。
「友達の名前は市川かなた。ハイパーショッカーという組織に捕まって、行方が分かんなくなって・・・」
「その人を捜してほしいというわけか。」
「ハイパーショッカーのことは僕たちも聞いているよ。興味があったから丁度いい・・」
語りかけるまりに、翔太郎が言いかけて、フィリップが関心をふくらませて笑みをこぼす。
「市川かなたという人を捜せばいいんだね。ではやってみるよ。」
フィリップが椅子から立ち上がって、事務所の奥に移動した。翔太郎とまりも彼に続いていく。
フィリップたちが来たのは、事務所の奥にあるガレージ。その真ん中に立って、フィリップが意識を集中する。
「あの・・何をしているんですか?」
「君の友達について検索するんだ。」
まりが疑問を投げかけて、翔太郎が答える。
「検索って、ネットの検索みたいに、ですか・・?」
「原理としちゃ似ているな。でもこっちはネットよりも深く調べることができる。」
まりがさらに問いかけて、翔太郎が続けて答えた。
フィリップは精神世界「地球の本棚」に意識を傾けた。地球の本棚には地球の記憶が本の形で収められていた。
「フィリップ、まずは“市川かなた”。」
翔太郎が呼びかけて、フィリップが集中力を高めて検索をしていく。彼の周りにあった本棚と本の数が減って、検索結果の範囲が絞られたことが示された。
「次に“ハイパーショッカー”。」
翔太郎が告げて、フィリップがさらに意識を傾ける。さらに本の数が減るが、それでも1つに絞り切れない。
「まだだ、翔太郎。他にキーワードはないか?」
フィリップが集中を保ったまま、翔太郎に呼びかける。
「他に何か手がかりはないか?何でもいい・・」
「手がかりと言われても、他には・・・」
翔太郎が問いかけるが、まりはこれ以上の手がかりを見出すことができなかった。フィリップが集中を解いて、意識を現実に戻す。
「ここは足で手がかりを見つけないといけないみたいだな。」
翔太郎が気を引き締めなおして、調査のために外に行こうとする。
「私も一緒に行きます!何かできることがあるかもしれません!」
まりが真剣な顔で翔太郎に呼びかける。
「ありがとう、まりちゃん。頼む。」
翔太郎が感謝して、まりとともに事務所から外へ出た。かなたに関する手がかりを追い求めて。
同じく、かなたの行方を追い求めて、ライと聖也も風都を訪れていた。
「ここが風都・・風の吹く街か・・」
聖也が風都の街並みを見回して呟く。
「この先に鳴海探偵事務所があります。行って、かなたのことを聞きましょう・・」
ライが呼びかけて、聖也が頷く。2人は探偵事務所を目指して歩き出した。
2人は隣の通りをまりと翔太郎が歩いていたことに気付かなかった。
かなたの手がかりを求めて、まりと翔太郎は風都タワーを目指して歩いていた。かなたのことを心配して、まりは辛さを感じていた。
「かなたくん、無事であってほしい・・・!」
「ハイパーショッカーか・・そいつらのことはオレたちも知ってる。」
まりが口にした言葉を聞いて、翔太郎が真剣な顔で言いかける。
「この風都にも、ハイパーショッカーの連中が来たことがある・・この街を泣かせるヤツは、誰だろうと許しちゃおかねぇ・・!」
語りかける翔太郎が、感情を込めて自分の考えを口にする。
「もちろん、風都に来てくれた君みたいな人も、泣かせちゃいけないと思ってる・・」
「翔太郎さん・・・」
彼の言葉を受けて、まりが戸惑いを浮かべる。
「ありがとうございます、翔太郎さん・・私とかなたくんのために・・」
「仲間や家族の大切さは、オレも知ってるつもりだ。オレの場合は相棒だけどな。」
お礼を言うまりに、翔太郎が正直な気持ちを告げる。自分を育ててくれた人やフィリップたちのことを、翔太郎は大切に思っていた。
そのとき、スマートフォンが鳴り出して、翔太郎が取り出して連絡に応じた。
「どうした、フィリップ?情報が入ったのか?」
“いや、別のお客が来たよ。それもまりさんと同じ内容だ。”
翔太郎が声を掛けると、連絡の相手のフィリップが答える。
「えっ!?同じ依頼を!?」
翔太郎が驚きの声を上げて、話を聞いていたまりも動揺を感じていた。
鳴海探偵事務所を訪れたライと聖也は、フィリップにかなたの行方を捜してほしいと話を切り出した。
「これは驚いた。さっきも2人と同じ依頼が入ったんだ。」
「えっ!?」
微笑みかけるフィリップに、ライたちが驚く。
「同じ依頼をしてきたって・・・まさか、まりちゃんがかなたのことを・・!?」
まりもかなたを捜していることを知って、ライが不安をふくらませる。まりがかなたを捜し続ければ、ハイパーショッカーの企みに首を突っ込むことになると、ライは危機感を感じていた。
「ちょっと待っててくれ。相棒に連絡するから・・」
フィリップが翔太郎に向かって連絡を取る。フィリップがライたちのことを翔太郎に伝える。
「待ってください・・まりちゃんにオレたちのことは言わないでください・・オレたちのことに、まりちゃんが関わるのは危険です・・」
ライが深刻な顔を見せて、フィリップを呼び止める。
「詳しいことはすぐに話します。だから・・」
「わけありのようだね・・分かったよ。」
ライの言葉を聞いて、フィリップは翔太郎に必要最低限のことだけを話して、連絡を終えた。
「どういうことなのかな?もう向こうには聞こえないよ。」
フィリップがライたちに視線を戻して、質問を投げかける。
「オレたちも仮面ライダーなんです。オレは十時ライ。仮面ライダークロスです。」
「私は滝聖也。クラールとして、ハイパーショッカーと戦っています。」
ライと聖也がフィリップに自己紹介をする。
「仮面ライダー?ということは、2人は僕たちも仮面ライダーだって知っているんだね。」
フィリップからの問いに、ライたちが頷いた。
「あなたたちが探偵で、仮面ライダーWということを知っています。」
ライがさらに話を続けて、自分たちと今の世界の状態について説明した。
「いろんな世界が1つになった・・実に興味深いことだね。」
「感心している場合ではないです。1つになって、世界がこのまま何もなく無事でいるとは限らないんですよ。」
興味津々になるフィリップに、聖也が苦言を呈する。
「その可能性は、僕も考えているよ。同じ仮面ライダーなら、アイツらの企みを止めないとね。」
フィリップが自分の考えをライたちに告げる。
「それはそうですけど・・でも今は、オレの仲間がハイパーショッカーに捕まっているんです・・!」
「それが、市川かなたという人というわけだね。」
ライも事情を話して、フィリップが小さく頷く。
「彼の名とハイパーショッカー、この2つのキーワードで調べてみたけど、1つに答えを絞れなかった。他に手がかりがあれば・・」
「ルシファー・・今、かなたくんはルシファーに調整されて、ハイパーショッカーに操られている・・」
考え込むフィリップに、聖也がかなたのことを話す。
「ルシファー・・・」
その言葉を聞いて、フィリップが再び地球の本棚に意識を傾けた。
(“市川かなた”、“ハイパーショッカー”、そして“ルシファー”。)
改めて検索をしていくフィリップ。3つのキーワードで、ついに答えが1つに絞られた。
本を手にして開くように、フィリップが答えを確かめる。
「見つけたよ。彼は今は地獄谷にいるよ。」
「地獄谷・・そこにかなたが・・・!」
フィリップからかなたの居場所を聞いて、ライが戸惑いを感じていた。
フィリップからライたちのことをまりに言わないようにと言われて、翔太郎は困った顔を浮かべていた。
「何かあったのですか?」
「あ、いや・・別の依頼者が来てな。フィリップはそっちにかかりきりになりそうだ・・」
まりが問いかけて、翔太郎が動揺を抑えて答える。依頼のことは言ったが、翔太郎はライたちのことは黙っていた。
「オレたちはオレたちのやることをやろう。手がかり探しだ。」
「はい。」
翔太郎が呼びかけて、まりが微笑んで頷いた。
(すまない・・手がかりはそろってるんだ。黙ってて悪い・・)
翔太郎は心の中でまりに謝っていた。
「見つけたぞ、探偵・・!」
そこへ1体の怪人が現れて、翔太郎に声を掛けてきた。クモの怪人、スパイダードーパントである。
「ドーパント!また現れたのか!?」
翔太郎がスパイダードーパントを見て身構える。
「この力でじっくりと人間をいたぶることを楽しみにしてきたのに、お前らに暴かれて捕まっちまった!オレはお前らを許しちゃおかねぇぞ!」
「人を襲って犯罪を繰り返してきたのを棚に上げて、オレたちを逆恨みか・・参っちまうな、まったく・・」
不満を口にするスパイダードーパントに、翔太郎が呆れてため息をつく。
「まりちゃん、離れてるんだ。アイツの相手はオレが、いや、オレたちがやる。」
翔太郎が呼びかけて、まりを安全なところへ下がらせる。
「でも、翔太郎さんだけじゃ危ないです!」
「心配するな。オレたちは探偵であり、仮面ライダーでもあるからな。」
声を上げるまりに、翔太郎が笑みを浮かべて答える。彼がベルト「Wドライバー」を手にして装着した。
翔太郎がWドライバーを装着したと同時に、フィリップの腰にもWドライバーが現れた。
「どうやら悪い敵が出てきたみたいだね・・2人も行くなら変身してから言ったほうがいいよ。まりちゃんに正体を知られたくはないんだよね?」
フィリップが呼びかけて、ライと聖也が頷いた。
「僕は先に翔太郎のところに行くから、2人も追いついてきて。風都タワーの前だから。」
フィリップはさらに呼びかけてから、1つのメモリを取り出した。「ガイアメモリ」の1つ「サイクロンメモリ」である。
“Cyclone.”
フィリップがサイクロンメモリをWドライバーの右のスロットにセットした。
「フィリップさん、オレたちも行きます・・!」
ライが言いかけて、聖也とともに事務所から外へ出た。2人がそれぞれクロスドライバーとクロスソウル、クラールドライバーとクラールソウルを手にした。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
“クラール!”
“ライダーソウール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
彼の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。
クロス、クラールに変身したライと聖也が、風都タワーを目指して走り出した。
フィリップがサイクロンメモリをセットしたと同時に、翔太郎のWドライバーの右のスロットにも、サイクロンメモリが現れた。
“Joker!”
翔太郎はWドライバーの左のスロットに、ガイアメモリ「ジョーカーメモリ」をセットした。
「変身!」
“Cyclone,Joker!”
翔太郎がWドライバーの中心部を左右に展開する。すると彼の体を緑と黒のスーツが包み込んだ。
翔太郎はガイアメモリの力を使う仮面ライダー、Wに変身した。
「翔太郎さんも、仮面ライダーだったんですね・・・!」
まりが翔太郎を見て、戸惑いを見せる。
「オレだけじゃない。オレとフィリップは、2人で1人の仮面ライダーだ。」
翔太郎がまりに答えて、スパイダードーパントに目を向ける。
「さぁ、お前の罪を数えろ!」
翔太郎がスパイダードーパントを指さして言い放つ。彼の声とフィリップの声が重なっていた。
翔太郎がWに変身すると、フィリップの意識が体を離れて彼と一体化するのである。
「W・・この恨み、お前たちにぶつけてやるぞ!」
スパイダードーパントが翔太郎に不満をあらわにする。
“やれやれ。自分の罪を棚に上げて逆恨みとは、わけが分からないよ。”
「だったらまた思い知らせてやればいいだけだ。何度でもな。」
フィリップが呆れて、翔太郎が落ち着きを払って言いかける。
「思い知るのはお前のほうだ・・オレの、オレたちの受けた屈辱をな!」
スパイダードーパントが言い放つと、周りの物陰から黒ずくめの男たちが続々と現れた。
「キャッ!」
まりが男の1人に捕まって、銃を突き付けられた。
「まりちゃん!」
「動くな!動けばそこの小娘がどうなるか分かんないぞ!」
声を上げる翔太郎に、スパイダードーパントが脅しを掛ける。
「卑怯だぞ!まりちゃんは関係ない!」
「関係なくても、人質には十分だ・・お前を倒すためなら、手段は選ばないぜ!」
怒りの声を上げる翔太郎を、スパイダードーパントがあざ笑う。
「じっとしてろよ・・あの小娘を助けたかったらな・・!」
スパイダードーパントが言いかけて、翔太郎に向かって糸を放つ。翔太郎が糸で体を縛られて、動きを止められる。
「これで身動きが取れなくなった・・思う存分、いたぶってやるぞ!」
スパイダードーパンドが糸を引っ張る。翔太郎が振り回されて、地面に倒される。
「翔太郎さん!」
痛めつけられる翔太郎に、まりが悲鳴を上げる。
「私のことは気にしないで、戦ってください!」
「そういうわけにいくか・・君を悲しませてまで勝っても意味がない・・・!」
呼びかけるまりだが、翔太郎は彼女を守るために攻撃しないようにしていた。
「素直でいいことだ・・そのままくたばりな!」
スパイダードーパンドが笑みをこぼして、翔太郎を引き寄せる。スパイダードーパンドが振りかざした爪が、Wの装甲を切りつけて火花を散らす。
「どうだ、思い知ったか!オレにした仕打ちの罪、理解しただろう!」
倒れた翔太郎を見下ろして、スパイダードーパンドがあざ笑う。一方的に攻撃される翔太郎が、うめき声を上げる。
「どこまでも責任転嫁・・こういうヤツを、ここで野放しにするわけにはいかない・・・!」
「おっと!妙なマネをするなよ!すれば今度は小娘が痛い目を見ることになるぜ!」
怒りを覚える翔太郎に、スパイダードーパンドがまた脅しを掛ける。
「どこまでも卑怯なヤツだな、お前・・!」
「何とでも言え!お前を倒せるなら、オレは何でもやってやる!」
不満を口にする翔太郎に、スパイダードーパンドが言い放つ。
「あんまり長引かせても邪魔が入りそうだからな・・ここで一気にケリを付けてやる・・!」
スパイダードーパントがとどめを刺そうと、翔太郎に近づいていく。
「お願い、逃げて、翔太郎さん!私に構わずに!」
まりが翔太郎に呼びかけてもがく。しかし男たち、マスカレイドドーパントの腕を振り払うことができない。
「終わりだ、W!」
スパイダードーパントが翔太郎目がけて爪を振りかざした。
そのとき、クロス、クラールになったライと聖也が駆けつけてきた。ライが飛び込んで、スパイダードーパントにキックをぶつけた。
「おわっ!」
スパイダードーパントが突き飛ばされて、翔太郎から引き離される。ライが翔太郎に駆け寄って、糸を引き剥がす。
「大丈夫ですか、翔太郎さん、フィリップさん!?」
「あぁ。危機一髪だったが助かったぜ・・!」
ライが心配の声を掛けて、翔太郎が笑みをこぼす。
「他の仮面ライダーか・・だがこっちには人質が・・!」
体を起こしたスパイダードーパントが、まりに目を向ける。
“ブレイガン!”
“ガンモード!”
その瞬間、聖也がクラールブレイガンを手にして、ガンモードにして発射した。連射されたビームがマスカレイドドーパントたちを撃ち抜いていく。
マスカレイドドーパントが倒れると、まりが慌てて離れていく。
「お前たちが卑怯な方法を取ろうと、私たちには通用しない。」
聖也が言いかけて、立ち上がったスパイダードーパントにクラールブレイガンを向ける。
「おのれ、ライダーども・・お前ら、ヤツらをブッ倒せ!」
スパイダードーパントが呼びかけて、マスカレイドドーパントたちがライたちに向かって飛びかかる。
ライ、聖也、翔太郎がマスカレイドドーパントを迎え撃つ。3人の強さの前に、マスカレイドドーパントたちは返り討ちにあうばかりだった。
「ち、ちくしょうが・・・!」
スパイダードーパントが焦りをふくらませて、慌てて逃げ出す。翔太郎が見逃さず、ジャンプして飛び越えて、スパイダードーパントの前に回り込んだ。
「卑怯なマネの次は、仲間を置き去りにして自分だけ逃げようっていうのか?」
“つくづく情けないことだな。呆れてものも言えない。”
翔太郎がスパイダードーパントに向かって言いかけて、フィリップが呟く。
「あの2人だけじゃない。オレも守ってみせる・・この街を、世界を、そして仲間を!」
ライが翔太郎たちを見て、自身の決意を口にした。
そのとき、翔太郎のまとうWのスーツから光があふれ出した。光がライの前に来て、ライダーソウルに変わった。
「Wのライダーソウル・・・翔太郎さん、フィリップさん、2人の力、使わせていただきます!」
“ダブル!”
ライがライダーソウル「Wソウル」を手にして、スイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼がクロスドライバーにWソウルをセットして、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!ダブルー!”
クロスの姿がWそっくりとなった。ライは新たなる姿「Wフォーム」となった。
「なにーっ!?アイツもWになったー!?」
「さぁ、お前の罪を数えろ!」
驚きの声を上げるスパイダードーパントを指さして、ライが言い放った。
「アイツ、Wになっちまったぞ・・!」
“セリフまでそっくり・・これは興味深い。”
翔太郎も驚いて、フィリップが微笑みかける。
「Wだけではない。私にもライダーソウルが届いたぞ。」
聖也が言いかけて、仮面ライダーアクセルのライダーソウル「アクセルソウル」を見せた。
“アクセル!”
“ライダーソウール!”
彼がアクセルソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!アクセール!”
聖也のまとうクラールの姿が赤い装甲に変わる。彼はアクセルの姿と力を宿した「アクセルフォーム」となった。
「振り切るぜ!」
聖也が言い放って、スパイダードーパントに向かって飛びかかる。
「く、くそーっ!」
スパイダードーパントがいら立ちをふくらませて、糸を放つ。ライと聖也がスピードを上げて糸をかいくぐる。
ライと聖也がスパイダードーパントの後ろに回り込んで、振り向き様に足を振りかざす。
「ぐあっ!」
スパイダードーパントが回し蹴りを受けて突き飛ばされる。
「速い・・オレたちとアクセルの力を使いこなしている・・!」
“しかも2人、息が合っているね。”
ライと聖也の動きを見て、翔太郎とフィリップが呟く。
「オレたちもうかうかしてられないな。」
翔太郎が言いかけて、ライたちに加勢する。
「同時攻撃といくか!」
「はい!」
翔太郎が呼びかけて、ライが答える。翔太郎がジョーカーメモリを1度取り出して、Wドライバーの「マキシマムスロット」にセットする。
“Joker,Maximum drive!”
翔太郎が緑の竜巻に乗って浮遊する。
「オレも!」
ライも思い立って、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加えた。
“ライダースマッシュ・ダブルー!”
ライも同様に、緑の風に乗って浮かび上がった。
「ジョーカーエクストリーム!」
翔太郎とライの体が縦に半分に分けられる。2人がスパイダードーパントに急降下して、キックを連続で当てた。
「ギャアッ!」
スパイダードーパントが蹴り飛ばされて、廃屋の奥になだれ込んで、姿が見えなくなった。
「やるな、お前。」
「翔太郎さんとフィリップさんが、力を貸してくれたからですよ。」
翔太郎が気さくに声を掛けて、ライが微笑んだ。
「よかった・・ありがとうございます、みなさん・・」
まりも助けてくれた3人の仮面ライダーに感謝していた。
(よかった・・まりちゃんが無事で・・・)
ライが心の中で、まりが助かったことを喜んでいた。
そのとき、まりの後ろの壁が破れて、スパイダードーパントが飛び出してきた。
「体勢を低くしろ!」
“ライダースマッシュ・アクセール!”
その直後、聖也がまりに呼びかけて、クラールタイフーンを回転させた。
「クラールグランツァー!」
高熱をまとった聖也が後ろ回し蹴りを繰り出す。
「があっ!」
スパイダードーパントがキックを受けて、炎に包まれて爆発、消滅した。
「アイツ、そこまで卑怯だったとは・・!」
“でも例外なく、卑怯者の末路は辿ったね。”
翔太郎がひと息ついて、フィリップが笑みをこぼす。
「本当にありがとうございました。助かりました・・」
まりが再びライたちにお礼を言った。
“彼女は僕たちに任せてもらうよ。君たちも忙しいそうだからね。”
「はい・・力を貸してくれて、ありがとうございました・・・!」
フィリップが呼びかけて、ライもお礼を言った。気を遣われていると、ライは思っていた。
ライと聖也は頷き合ってから、まりと翔太郎の前から立ち去っていった。
「それじゃオレたちも事務所に戻るとするか。」
翔太郎はまりに呼びかけて、Wへの変身を解いた。
「ドーパントやハイパーショッカーは危険な連中だ。下手に深入りすると、命がいくつあっても足りないぞ。」
「それでも、かなたくんが心配なんです・・・!」
警告を告げる翔太郎だが、まりはかなたのことを思って、目に涙を浮かべる。
「ここからはオレたちに任せてくれ。もしも友達を見つけたら、必ず連れ戻す。他のライダーにもそのことを言っておくから・・」
「翔太郎さん・・・はい・・・」
翔太郎が投げかけた言葉を、まりは渋々聞き入れた。彼女は元気なく、翔太郎の前から去っていった。
(悪く思わないでくれ。君や君の大切な人が悲しまないためなんだ・・)
気に病みながらも、翔太郎はまりを思っての決断を下した。
1人事務所に戻ってきた翔太郎。Wへの変身が解除されたことにより、フィリップの意識は自分の体に戻っていた。
「あの3人、うまく落ち着けばいいけど・・」
フィリップがライたちのことを考えて呟く。
「心配ないさ。どう転がってもうまく落ち着けるさ。かなたくんも含めて・・」
翔太郎がライたちへの信頼を口にして笑みをこぼす。
「翔太郎らしいね。僕もそう思っているんだけどね・・」
「オレたちもオレたちの戦いをしていこう。この風都だけじゃなく、世界の風を守るためにな・・」
微笑みかけるフィリップに、翔太郎が呼びかける。2人も風都や世界の悪に立ち向かう決意を、より強固にしていた。