仮面ライダークロス

第19話「力と技・始まりの仮面ライダー」

 

 

「何っ!?かなたがハイパーショッカーに!?

 ライからかなたのことを聞いて、ひろしが驚きの声を上げる。

「かなたはヤツらに捕まって、操られている・・ヤツらからアイツを助けて、連れ戻さないと・・!」

 ライがかなたのことを思って、両手を握りしめる。

「しかし、かなたが変身してるライダーは強いんだろ?」

「はい・・かなたを止めるにはまず、かなたよりも強くなる必要がある・・そうしないと助けるどころか、こっちがやられてしまう・・!」

 ひろしからかなたの変身するルシファーについて聞かれて、ライが新たな決意を口にする。

「このクロスワイズを長い時間使えるように、また鍛え直さないといけないみたいだ・・」

 ライがクロスワイズソウルを手にして見つめて、体力の大きな消耗という弱点を克服しようと考えていた。

「分かった。オレも協力させてもらうぞ。」

「ありがとう、おやっさん。」

 ひろしが励ましを送って、ライが感謝した。

「まりちゃんには、詳しい話はしないようにしましょう・・まりちゃんまで、本格的に巻き込むようなことは・・・」

「そうだな・・そこはオレも気を付けるが、ライ、お前もな・・」

 まりのことを気に掛けるライとひろし。まりを戦いに巻き込まないように、2人は肝に銘じた。

 

 人のいない荒野に来たライとひろし。クロスワイズに耐えられるだけの力を得ようと、ライは体を動かした。

「走り込むのが体力づくりの基本だが、ただ走ればいいというものでもない。適度なリズムと感覚で走るのが大事。ムリをし過ぎずに時に体を休めるのも大事だ。」

 走り続けるライに、ひろしが呼びかける。

「はい・・でもちょっとぐらいムチャしないと、とても強くはなれないですから・・!」

 ライは答えて、さらに走り続ける。

(ライ・・ホントにムチャをするなよ・・ハイパーショッカーと戦う前からボロボロになっていたら、元も子もないからな・・)

 ひろしが心の中でライを心配する。

 ライは走り込みを済ますと、腕と足を振りかざしてパンチとキックの素振りをする。

「かなたを助けるための力を・・クロスワイズを使いこなすための力をつかまないと・・!」

 力を求めてひたすら特訓を繰り返すライ。彼は荒野の坂を上って、振り返って下を見る。

「仮面ライダーといったらライダーキック・・キックも強くしないと・・・!」

 ライダーキックの訓練を試みるライ。彼はクロスドライバーの操作を行わずに、ジャンプしてキックを繰り出した。

「うわっ!」

 ライが着地の瞬間に体勢を崩して倒れた。

「ライ!」

 ひろしが慌ててライに駆け寄る。

「大丈夫か、ライ!?

「はい・・すみません、おやっさん・・まだやれます・・!」

 ひろしからの心配の声に答えて、ライが立ち上がる。ライは再びジャンプからのキックを試みる。

「やらなくちゃ・・やって、強くならなくちゃならないんだ・・・!」

 ライは自分に言い聞かせて、訓練を続けようとする。彼は感情を高ぶらせたまま、ジャンプしてキックを繰り出した。

「危ない!」

 またライが空中で体勢を崩したところで、声がかかった。2人の人物が飛び込んで、彼を受け止めた。

「大丈夫か!?しっかりしろ!」

 ライが呼びかけられて、失いかけていた意識を取り戻す。彼の前にいたのは、2人の仮面ライダー。

「あ、あなたたちは・・・!?

 ライがライダーたちを目の当たりにして、動揺を覚える。現れたのは最初の仮面ライダーの2人、1号と2号だった。

「仮面ライダー・・1号と2号・・本郷(ほんごう)(たけし)さんと一文字(いちもんじ)隼人(はやと)さん・・!」

 ライは1号たちの登場に、驚きを隠せなくなる。

「ライ、大丈夫か!?

 ひろしがライに駆け寄ってきて、1号たちを見て戸惑いを見せる。

「助けてくれてありがとうございます。今、強くなるための訓練をしていたんですよ。」

 ひろしが1号たちにお礼を言って、事情を話した。

「それで、ライダーキックの練習をしていたのか・・」

「というよりも、強くなりたいんです・・強くならないと、友達を助けることができない・・・!」

 2号が言いかけて、ライが話を付け加える。かなたを助けたい、そのために強くならないといけないという思いを感じて、ライは体を震わせていた。

「君の放つライダーキックには、仮面ライダーとしての自覚と覚悟が込められているのか?」

 1号がライに向かって問いを投げかけてきた。

「仮面ライダーとしての、自覚と覚悟・・・!」

「仮面ライダーのライダーキックは、仮面ライダーだからできるものだ。憧れや好奇心だけで出そうとすれば、自分が傷つくことになる。」

 戸惑いを浮かべるライに、1号が注意を投げかける。

「今の君は強くなることばかり考えて気が焦り、仮面ライダーとしてあるべき姿を見失っている。それでは強くなるどころか、戦いに赴く前に倒れることになる。」

「ですが、強くならないと、オレは友達を助けられない・・何も守れない・・・!」

 2号からも言われるが、ライは悔しさをあらわにして、地面に拳を叩きつけた。

「ならばオレたちを相手に特訓をしてみるか?」

「えっ!?オレが、2人と!?

 2号が投げかけた言葉に、ライが戸惑いをふくらませる。

「だが、今のお前の心構えじゃ、オレたち2人を相手にどこまで持つか、目に見えているな。」

 2号がライに対して笑みをこぼして挑発する。

「やれます!やってやりますよ!」

 ライが感情をあらわにして、2号に言い返す。

「ならば見事、オレたちに勝利してみせるか。」

 1号が言いかけて、2号とともに構えを取った。

「ライ、焦りは禁物だ!勝負するにしても、1回落ち着いてから・・!」

 ひろしが呼び止めるが、ライは勝負を止めようとしない。

「その鼻っ柱をへし折ってやるぞ、ルーキー。」

 2号が強気に振る舞うと、ライに向かって右のパンチを繰り出した。

「うあっ!」

 ライが強い力のパンチを受けて、大きく突き飛ばされた。

「ライ!」

 ひろしがライに向かってたまらず叫ぶ。

「ここはオレたちに任せてください。クロスが、ライくんが本当の強さを思い出せれば、オレたちを超える強さを持てるでしょう。」

 1号がひろしに言いかけてから、2号とともにライを追いかけていった。

「あの2人に任せて大丈夫だろうか・・・ライ・・・」

 ひろしはライを心配して、深刻さを感じていた。

 

 2号のパンチに押されたライが、立ち上がって身構える。彼に1号と2号が追いついた。

「十時ライくん、君の強さをオレたちに見せてくれ!」

 1号がライに向けて激励を送る。

「やります・・やってやる・・!」

 ライが意気込みを見せて、1号たちに向かっていく。

 ライが腕を振りかぶって、パンチを繰り出す。しかし1号たちに軽々とかわされる。

「オレの攻撃を簡単に・・これが1号ライダーと2号ライダー・・・!」

 1号たちの強さに驚くばかりのライ。そのために動きを鈍らせた彼の腕をつかんで、1号が投げ飛ばす。

「おわっ!」

 ライが倒されて地面を転がる。すぐに立ち上がるが、彼は動揺を隠せなくなっていた。

「どうした?気を抜けば瞬く間に攻撃されるぞ!」

 1号が呼びかけて、ライに向かって手を振りかざす。ライが腕で攻撃を防ぐが、攻撃に重みがあってダメージが蓄積されていく。

 2号もライに向けて連続でパンチを繰り出す。2号の力のあるパンチを受けて、ライが押されてふらつく。

「君の力はこの程度なのか?それではハイパーショッカーからみんなを守れはしないぞ!」

 2号が言いかけて、ライがいら立ちをふくらませる。

「こうなったら・・コイツで!」

“ソードガン!”

 ライがソードガンソウルを取り出して、クロスソードガンを呼び出した。

“ガンモード!”

 ライがクロスソードガンをガンモードにして構えた。彼の射撃を、1号と2号は素早くかいくぐる。

「そのような力の使い方に頼るな!」

 1号が言い放って、2号がライに向かってスライディングキックを繰り出してきた。ライがとっさにジャンプして、キックをかわした。

「ライダーニーブロック!」

 1号もジャンプして、ライの体に膝蹴りを叩き込んだ。

「ぐっ!」

 ライが激痛を覚えて、空中で体勢を崩す。1号が着地する目の前で、ライが倒れて立ち上がれなくなる。

「武器を使って戦うことも時に必要だ。だが武器に頼れば隙を作ることになる。」

 1号がライに近づいて告げる。

「その力はまだクロスの力でしかない。まだ自分の力として使いこなせてはいない。」

 1号がライに向けて助言を送る。

「クロスの力が、オレの力として使えていない・・!?

 ライが自分自身に意識を向けて、動揺を浮かべる。

「最後に大事になってくるのは、自分自身の強さと知恵だ。クロスの力に頼ってばかりでは、窮地に立たされた時に乗り越えることはできない。」

 2号も続けてライに檄を飛ばす。

「見せてみろ、十時ライくん!君自身の強さを!」

 1号がライに向かって呼びかける。彼の言葉に鼓舞されて、ライが気を引き締めなおす。

「オレ自身の強さ・・クロスの力だけに頼らずに・・・!」

 ライが自分に言い聞かせて、構えを取って集中力を高める。彼はクロスドライバーを操作せずに、自分の力を中心に立ち向かおうとしていた。

「覚悟を決めろ!オレの力、受けてみろ!」

 2号が言い放って、ライに向かって大きくジャンプする。ライも彼に続いてジャンプする。

「ライダーキック!」

 2号の繰り出したライダーキックに、ライもキックを繰り出した。

「ぐあっ!」

 2人のキックがぶつかり合った瞬間、ライがキックした足に激痛を覚えた。彼がバランスを崩して地面に落ちて、2号がそのそばに着地した。

 痛みを訴える足を押さえるライに、1号と2号が近寄った。

「これでも、オレは2人のライダーには敵わないのか・・・!」

 足の痛みよりも悔しさを感じて、ライが打ちひしがれる。

「いや、君の強さ、オレの足にしっかりと伝わったぞ・・!」

 2号がライの強さを感じ取って笑みをこぼした。その言葉にライが戸惑いを覚える。

「君自身の魂が、オレの足に、オレの体に響いた。家族や友を守りたいと思う君の決意が、オレにも伝わった・・」

 1号もライの強さに共感を感じていた。

「君ならハイパーショッカーに立ち向かえる。君自身の強さを高めることができる。」

「オレ・・これからもやれますでしょうか?・・オレは別に、正義とか世界とか平和とか、そこまで大それた考えで戦っているわけじゃ・・・」

 励ましを送る1号に対して、ライが戸惑いをふくらませる。

「それでもいい。オレたちも最初はそうだった。しかし世界征服を企むショッカーや他の悪の組織から、世界や地球を守るように、正義感が強まっていった。」

「君たちが正義のヒーローと呼んでいる仮面ライダーの全員が、本当の正義のヒーローというわけではない。正義の形や守ろうとする大切なものはそれぞれだ。」

 2号と1号がライに思いを伝える。

「それぞれ・・・そうだ・・みんな、守るものや考え方は違った・・オレ自身も、あの聖也という人も・・・」

 これまでの戦いや仮面ライダーたちとの出会いを思い返して、ライが自分の気持ちを確かめていく。

「みんなそれぞれ違う・・それでもオレは、どう考えても間違っていることが、正しいこととは認められない・・・!」

「それが君の戦う理由だ。君が君の大切なものを心から守ろうとするなら、オレたちも君の力になろう。」

 自分の意思を告げるライに、1号が頷いた。

 そのとき、1号と2号の体から光があふれた。2つの光はライの手元に来て、それぞれライダーソウルに変わった。

「これは、2人のライダーソウル!?

 ライが2つのライダーソウル「1号ソウル」、「2号ソウル」を見て、驚きを見せる。

「これがオレたちが君を認めた証だ。必ず君の力になるだろう。」

「君なら、この力をうまく使いこなしてくれるはずだ。君のこと、信じているぞ、ライくん・・いや、クロス。」

 2号と1号に励まされて、ライは頷いた。

「ありがとうございます、本郷さん、一文字さん・・あなたたちの力、使わせていただきます・・!」

 ライが1号たちに決意と感謝を告げて、2つのライダーソウルを握った。

「ではオレたちは行くぞ。オレたちの戦いは、まだ続いているからな。」

「オレたちは世界と地球、人々の平和を守るために戦い続ける。」

 1号と2号が自分たちの決意を口にして、ライの前から歩き出す。

「オレも戦います・・かなたを助けるために・・おやっさんとまりちゃんを守るために・・・」

 ライが決意を口にして、1号たちを見送った。ここでひろしが彼に追いついた。

「何だよ・・2人とも行ってしまったのか・・!?

 ひろしが1号たちが去ってしまったことに、大きく肩を落とす。

「いつかまた会えますよ。オレが、オレたちが希望を失わない限り・・」

「そ、そうか・・そうだといいなぁ〜・・」

 ライが言いかけて、ひろしがその言葉にすがる素振りを見せる。

「さて、オレもまだまだ未熟なところがある・・改めて鍛え直さなくちゃ・・・!」

“変身カイジョー。”

 ライは気を引き締めなおすと、クロスドライバーを外して変身を解除した。

「まずはオレ自身が強くなることを優先させなくちゃ・・!」

「おい、ムチャするなよ、ライ・・!」

 訓練を再開するライに、ひろしが注意する。ライの後ろ姿を見送って、ひろしが笑みを浮かべた。

 

 ハイパーショッカー打倒のために力を欲する聖也。しかしライからライダーソウルを奪うことができず、聖也は悔しさをふくらませていた。

(このままでは済まさないぞ・・力を得るためなら、どのような手に訴えても・・・!)

 さらに力への渇望をふくらませていく聖也。

「君も力を欲しているようだな。」

 そこへ声がかかって、聖也が振り返る。彼の前に1号と2号が現れた。

「しかしライダーソウルを奪い取るだけでは、本当の意味で強くなることはできない。」

 2号も聖也に向けて助言を送る。

「いきなり出てきて私にそのようなことを言って・・そんなことで迷う私ではない。」

 聖也は2人の言葉を聞かずに、自分の意思を貫こうとする。

「目的のために手段を選ばないようでは、君は君の目的を果たせず、強くもなれない。」

「あなたたちに私たちの苦しみと悲しみは分かりはしない・・ヤツらを倒す以外に、それを消すことはできない・・・!」

 1号の言葉を聞かずに、聖也が彼らに鋭い視線を向ける。

「ハッキリ言おう。復讐心で戦い続けたところで、その悲しみと苦しみは決して消えはしない。」

「敵を倒すという目的のために罪のない人々を傷付けた自分を、強く責めることになる。」

 2号と1号が聖也に向けて忠告を送る。

「分かったようなことを言わないでもらいたい・・そんなことには、私は決してならない!」

 聖也が不満をあらわにして、クラールドライバーとクラールソウルを取り出した。

“クラールドライバー!”

 聖也がクラールドライバーを装着して、クラールソウルを手にした。

“クラール!”

 聖也がクラールソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼はクラールソウルをクラールドライバーにセットした。

「変身!」

 聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クラール!”

 聖也の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。彼はクラールへの変身を果たした。

「あなたたちはライダーソウルを持っていないようだが、私の戦いを阻むならば容赦はしませんよ・・・!」

 聖也が言い放つと、1号たちに向かって足を振りかざす。1号と2号は腕を掲げて、キックを防いだ。

「この程度ではオレたちに勝つこともできはしないぞ・・あのクロスにもな・・!」

 2号が言いかけて聖也を押し返す。

「私は負けはしない・・十時ライにも、ハイパーショッカーにも!」

 聖也が怒りの声を上げて、クラールドライバーの右のレバーを右手で上げて、クラールタイフーンを回転させた。

“ライダースマッシュ・クラール!”

 聖也の両足にエネルギーが集まっていく。

「そのような意思の力では、オレたちの正義を挫くことはできん!」

 1号が言い放って、聖也と同時にジャンプする。

「ライダーキック!」

 1号が繰り出したライダーキックと、聖也の両足のキックがぶつかった。

「ぐっ!」

 力負けして突き飛ばされたのは聖也だった。彼が地上に叩き落とされて、1号が着地する。

「君には本当の正義の強さが感じられない。復讐よりも、何かを守るために戦うことが、本当の強さだ。」

 1号が聖也を見下ろして言いかける。

「力がなければ、守ることもできない・・やはり、力を手に入れなければ・・・!」

 それでも聖也は力を求め続けて、起き上がろうとする。

「クロスは自分の心、自分の友や家族、大切な人を守るために戦っている。今の君にも、守りたいと思っているものがあるはずだ。」

「そんなものはもうない・・無力だったばかりに、私は全てを失った・・・!」

 2号も呼びかけると、聖也が昔の苦痛の記憶を思い返して、体を震わせた。

「君も深い悲しみを抱えているようだな・・だがその悲しみに囚われてばかりだと、君は超えることができない。」

「ハイパーショッカーをか?・・それとも十時ライをか・・!?

「君自身だ。復讐に囚われている自分をだ。」

 2号の投げかける言葉に、聖也が心を揺さぶられていく。

「他のライダーにも会うことになるだろう。そこで自分を見つめ直すのもいい・・」

 1号が聖也に告げると、2号とともに歩き出した。

「私はこの道しかない・・ハイパーショッカーを倒す・・そのために力を手に入れると・・・!」

 1号たちからの警告をはねつけて、聖也は自分の考えを貫く。

“変身カイジョー。”

 彼はクラールへの変身を解いて、1人歩き出した。

 

 ハイパーショッカーの基地にてデータの分析が行われる中、かなたは休息を取っていた。死神博士によってコントロールされていた彼は、ライの打倒だけを考えていた。

「ルシファー、調子はどうだ?万全か?」

「はい。いつでも出撃できます。」

 ドクトルGが声を掛けて、かなたが無表情で答える。

「よし。では早速出撃だ。クロスとクラールを倒せ。この作戦の邪魔をする者も含めてな!」

「了解。」

 ドクトルGが命令を下して、かなたが答えて動き出す。ライと聖也を倒すため、かなたはルシファーとしての戦いに向かった。

 

 

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