仮面ライダークロス
第16話「逆襲!クロスワイズ」
聖也によってライダーソウルのほとんどを奪われたライ。自分を助けてくれたかなたと、彼は連絡を試みた。
「かなた・・出ない・・早く出てくれ・・・!」
ライが声を振り絞るが、かなたからの応答がない。
「どうしたんだよ・・早く出てくれよ・・・!」
かなたの心配をするライが、動揺をふくらませていく。
「1回、おやっさんのところに戻るか・・・!」
不安を抱えたまま、ライは1度橘モーターショップに戻ることにした。
かなたを捕まえることに成功したドクトルG。かなたは磔にされて、手足を拘束されていた。
「素材はそろった。後はあやつの到着を待つだけだ。」
眠り続けているかなたを見つめて、ドクトルGが笑みをこぼす。
「この調整が行えるのはあやつくらいだろう。だがこれが成功すれば、クロスもクラークも敵いはせんぞ!」
ドクトルGが勝ち誇って、高らかに笑っていた。
「おやっさん、かなたは帰ってない!?」
ライが橘モーターショップに帰ってきて、ひろしに声を掛けてきた。
「ライ、遅かったじゃないか・・かなたと会わなかったのか・・!?」
「えっ!?・・かなた、戻ってないんですか・・!?」
驚きを見せるひろしに、ライが問い返す。
「かなたはオレを助けてくれた・・だけどその後に離れ離れになって、それから連絡がつかないんです・・!」
「かなたが!?・・出てってから、こっちには連絡が入ってきてないぞ・・!」
ライが事情を話して、ひろしが深刻な顔を浮かべて答える。
「かなた・・まさか、聖也に捕まったんじゃ・・!?」
不安を覚えたライが再び外に出ようとする。しかし聖也との戦いで受けたダメージの痛みを感じて、ライが前のめりに倒れる。
「お、おい!ライ、しっかりしろ!」
ひろしが慌ててライを支えて呼びかける。
「大丈夫です、おやっさん・・早く取り戻さないと・・かなたもライダーソウルも・・!」
「何っ!?ライダーソウルを取られてしまったのか!?」
慌てるライの言葉を聞いて、ひろしがさらに驚く。
「だったらなおさら闇雲に突っ込むのは危ない!じっくり準備しないと、お前までやられるだけだ!」
「おやっさん・・・くっ・・・!」
ひろしに呼び止められて、ライが渋々聞き入れた。
ライから多くのライダーソウルを奪い取った聖也。彼はライから残りのライダーソウルも手に入れようとしていた。
(十時ライが暮らしている場所は、この近く。戻っている可能性が高い。)
聖也が思考を巡らせて、ライの行方を追う。
(ライダーソウルを全て手に入れれば、ハイパーショッカーに対抗することは十分可能。十時ライのような一般人では、その力を完全に発揮することはできない。)
ライが仮面ライダーとして戦えないと考える聖也。彼は橘モーターショップの近くまで来た。
(敷地内で私が来ることを警戒しているかもしれない。私も姿を見せないように、彼の位置を特定しよう。)
聖也は真正面から乗り込もうとせずに、店の周りからライがいるかどうかを確かめようとした。
ひろしの言いつけで体を休めていたライ。ところがイヤな予感を感じて、彼は周囲に注意を傾ける。
「どうした、ライ?」
「近くに誰かいます・・オレにとって友好的じゃない人が・・・!」
ひろしが声を掛けて、ライが感じたことを告げる。
「もしも聖也だったら、オレがいるのを確かめてから乗り込んでくるんじゃないかと思います・・・!」
「だったらここでじっとしてたらまずいな・・こっそり抜け出したほうがよさそうだ・・・!」
ライとひろしが小声で状況を確かめていく。
「お前は裏口から出ろ。今はまだ体力が回復してないだろ・・・!」
「それだとおやっさんが・・!」
「お前がやられたら、ライダーソウルも取り戻せないし、かなたを捜しに行けないんだぞ・・!」
ひろしに呼びかけられて、ライが戸惑いを覚える。
「オレのことは気にするな・・お前はここを出て戦いに備えて、かなたを捜すんだ・・!」
「おやっさん・・・気を付けて・・・!」
ひろしの呼びかけに答えて、ライが頷いた。彼は店の裏口から外へ出た。
ライの居場所を突き止めようと、聖也は橘モーターショップの周りを見回っていた。
(近い・・近くにいる・・これは推測ではなく、そう感じると考えるべきか・・・)
ライに近づいていると感じていく聖也。この感覚に彼自身戸惑いを感じていた。
(間違いない・・やはり彼はここに戻っている・・)
聖也がライが橘モーターショップにいることを確信した。
ライが店の裏口から外へ出た。その瞬間、彼と聖也が互いが近くにいることに気付いた。
「見つかった・・・!」
ライが聖也を目撃して、緊張を覚える。
「見つけたぞ、十時ライ。残りのライダーソウルを渡してもらう。」
「そうはいかない・・アンタからライダーソウルを取り返して、かなたを迎えに行くんだ!」
呼びかける聖也にライが言い返す。彼がクロスドライバーとクロスソウルを取り出した。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーに装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
「また力ずくになってしまうか・・」
クロスになったライにがため息をついてから、聖也がクラールドライバーとクラールソウルを取り出した。
“クラール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼はクラールソウルをクラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、中心部「クラールタイフーン」を回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
彼の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。彼はクラールへの変身を果たした。
「全てを、オレが正す!」
「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」
ライと聖也が互いに向けて言い放って、構えを取って対峙する。
「私は多くのライダーソウルを持っているが、君はソウルをわずかしか持っていない。力の差は明らかと言ってもいい。」
「そんなことは関係ない・・ソウルを返せ!」
警告を送る聖也に、ライが飛びかかる。しかしライが繰り出すパンチとキックは、聖也に軽々とかわされる。
「体力が回復していない上に、感情に振り回されている。なおさら回避はたやすい。」
聖也からの指摘を聞いて、ライが動きを鈍らせる。その隙を突かれて、ライが聖也のキックを体に受ける。
「うぐっ!」
ライが地面を転がるも、すぐに立ち上がって身構える。
「これでは他のライダーになる必要もない・・おとなしく他のライダーソウルを渡すんだ。」
聖也が勝利を確信して、ライに迫る。
「絶対にソウルを取り戻す・・そしてかなたを捜すんだ・・・!」
ライは諦めずに言い返して、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加える。
“ライダースマッシュ・クロース!”
ライのまとっているクロスの装甲から光があふれ出す。彼がジャンプして右足を前に出して、足裏にあるX字から光を放つ。
「物分かりの悪いことだ・・・!」
聖也がため息をついて、クラークドライバーの右のレバーを右手で上げて回転を加える。
“ライダースマッシュ・クラール!”
聖也の両足にエネルギーが集まっていく。彼は大きくジャンプして、ライに向かって両足のキックを繰り出した。
ライと聖也のキックがぶつかり合って、激しい衝撃を巻き起こす。
「ぐあっ!」
ライが聖也に押し切られて、地面に叩きつけられる。体中に激痛が走って、彼はうめき声を上げる。
「今度こそ終わりだ。これ以上抵抗するなら、私は君の命を奪いかねない。それは私としても本意ではない・・」
聖也がライに向けて最後の警告をする。ライは大の字で倒れたまま、呼吸を乱している。
「返事ができないほど体力を消耗しているか・・ならばこの手でライダーソウルをつかみ取るだけだ。」
聖也はライダーソウルを手に入れようと、ライに近づいていく。
(オレは諦めるわけにはいかない・・オレには、ライダーの力だけじゃなく、ライダーの意思も受け取っている・・!)
ライが心の中で、これまでの仮面ライダーたちとの出会いを思い返していく。
(オレが間違いをぶつけた相手もいるけど、大切なものを守ろうとする人も多い・・だから簡単にはライダーソウルは渡せない・・こんなところで倒れるわけにはいかないんだ・・!)
自分の意思を強く持って、ライが力を振り絞って立ち上がる。
「アンタみたいに、一方的に考えを押し付けるヤツには、絶対に従わない!」
自分の揺るぎない考えを言い放つライ。
「そこまで抵抗するというなら、言葉はもはや無意味か・・」
聖也はため息をついてから、ライにとどめを刺そうと構えを取った。
そのとき、聖也がライから取ったライダーソウルから光があふれ出した。
「な、何だ!?」
「ライダーソウルが・・!?」
聖也とライがライダーソウルの光に驚く。光はライダーソウルから飛び出して、ライの前に集まっていく。
光は1つに集まって、新たなライダーソウルに変わった。
「ラ、ライダーソウル・・仮面ライダーの仮面みたいな模様は入っていない・・・!?」
ライがそのライダーソウル「クロスワイズソウル」を見つめて、戸惑いをふくらませる。
「そのライダーソウルも、ここでもらい受ける・・!」
聖也がクロスワイズソウルも手に入れようとする。
“クロスワイズ!”
するとライがクロスワイズソウルをつかんで、スイッチを入れた。
「これがオレの、勝利のカギになると信じて・・・!」
“ライダーソウール!”
ライが言いかけて、クロスドライバーにセットされているクロスソウルを、クロスワイズソウルと入れ替える。
「大変身!」
彼がクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“大変身!クロスワーイズ!”
ライのまとうクロスの装甲に赤いラインが入っていく。マスクの形も目元も鋭いものへと変わっていく。
「初めて見る仮面ライダー・・いや、クロスに似ている・・・!」
聖也がライの今の姿を確かめて、推測を巡らせる。
「新しいクロス!?・・どういうのかは分かんないけど、これに賭けるしかない・・!」
ライは戸惑いを感じながら、聖也に向かっていく。
「力を上げたとしても、動きを予測して対応するのは不可能では・・」
聖也がライの動きを見計らって、反撃を狙った。だがライが繰り出したパンチが、聖也の左肩に命中した。
「何っ!?」
攻撃を当てられたことに驚く聖也。
ライがさらにパンチを繰り出してくる。聖也が再び回避しようとするが、ライのパンチが速く、体に当てられて突き飛ばされる。
「ぐっ・・!」
聖也がふらつきながらも踏みとどまる。しかし彼はライの増しているスピードとパワーに、驚きを隠せなくなっていた。
「私が対応できていない・・それだけ強さが上がっているというのか・・!?」
「すごいぞ・・オレが今まで変身したライダーを超えてる・・・!」
聖也もライ自身もクロスワイズの強さに驚くばかりになっていた。
「たとえ私以上の力でも、君に使わせるわけにはいかない・・いや、これほどの力だからこそ、なおさら放置することはできない・・!」
クロスワイズを警戒して、聖也がライに向かっていく。聖也が繰り出すパンチとキックを、ライは回避と防御をしていく。
「くっ・・しかしこちらには、他のライダーソウルがある・・!」
聖也が毒づいてから、ライダーソウル「イクサソウル」を手にした。
“イクサ!”
“ライダーソウール!”
彼はイクサソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットしてクラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!イクサー!”
聖也が新たな仮面ライダー、イクサに変身した。
“ブレイガン!”
彼はクラールブレイガンを手にして、ライに向かって振りかざす。しかしこれもライに軽々とかわされる。
「攻撃のスピードを上げる・・!」
“ガンモード!”
聖也が言いかけて、クラールブレイガンをガンモードにしてから、威吹鬼ソウルを取り出した。
“威吹鬼!”
彼は威吹鬼ソウルを起動して、クラールブレイガンにセットした。
“ライダーシュート・イブキー!”
聖也が構えるクラールブレイガンの先に、青い風が渦巻く。
「音撃射・疾風一閃!」
クラールブレイガンから疾風が放たれる。速さを伴った疾風が、ライに命中した。
「うぐっ!」
疾風に押されたライだが、ほとんどダメージを受けていなかった。
「何だと・・!?」
「すごい・・今のを耐えた・・!?」
聖也が驚きを、ライが戸惑いをふくらませていく。
「オレから取ったライダーソウルを返してくれ・・勝手に持っていっちゃ困るんだよ・・・!」
ライが手を差し伸べて、聖也に呼びかける。
「そうはいかない・・私には力が必要なのだ・・ハイパーショッカーを倒すための力が・・!」
聖也が彼の言葉を拒絶する。
「ハイパーショッカーを許せないのはオレも同じだ・・だからオレも、ライダーソウルを失うわけにはいかないんだ!」
「一般人の君では、ヤツらを倒すには至らない・・!」
自分の意思を告げるライだが、聖也は彼の意思を否定する。
「オレのことを勝手に決めるな・・オレがどうするかは、オレが決める!」
ライが聖也に対して怒りを言い放つ。彼がクロスタイフーン回転させる。
“ライダースマッシュ・クロスワーイズ!”
ライのまとうクロスの装甲から光があふれ出す。彼は前に走り出してジャンプして、聖也に向かって右足を出した。
ライの右足の足裏にあるX字から、光が3つ放たれる。
「ぐっ!」
聖也が光を受けて動きを封じられる。
「か、体が動かない・・・!」
聖也が力を込めるが、光による束縛から抜け出せない。ライが彼に向かって突っ込んで、キックを繰り出した。
「ぐあぁっ!」
聖也がキックを受けて、大きく突き飛ばされる。そのはずみで、ライから奪っていたライダーソウルが彼から離れた。
着地したライが地面に落ちたライダーソウルに目を向けた。彼はそのライダーソウルを拾って取り戻した。
「ラ、ライダーソウルが・・・!」
「オレのソウルは返してもらうぞ・・・!」
聖也が声を振り絞る前で、ライが言いかける。
「待て・・持っていくな・・私にはライダーソウルが・・力が必要なのだ・・・!」
「ソウルが必要なのはオレも同じだ・・アンタの考えをオレに押し付けるな・・・!」
必死に手を伸ばす聖也に、ライが鋭く言いかける。
“変身カイジョー。”
彼はクロスドライバーを外して、クロスへの変身を解除した。
「オレはこれからかなたを捜しに行く・・アンタの相手をしたせいで、間が空いてしまった・・・!」
ライは聖也に告げて、かなたを捜しに歩き出す。次の瞬間、ライが意識を失って前のめりに倒れた。
突然のことに聖也がさらに驚く。彼は体を起こそうとするが、思うように動くことができない。
「ライ!」
そこへ騒ぎを聞きつけたひろしが出てきて、ライに声を掛けてきた。
「ライ、しっかりしろ!ライ!」
ひろしがライを支えて呼びかける。しかしライは目を覚まさない。倒れたままの聖也に、ひろしが目を向ける。
「詳しい話は後で聞くことにする・・今はライを休ませるのが先だ・・!」
ひろしは聖也に告げると、ライを連れて橘モーターショップに戻った。
「バカな・・手に入れた力を、取り戻されるとは・・・!」
ライに対して手も足も出なかったことに、聖也が悔しさを覚える。いら立ちのあまり、彼は握った拳を地面に叩きつけた。
ハイパーショッカーの基地に1人の人物が訪れた。その人物は磔になっているかなたを見て、笑みをこぼした。
「お待ちしていたぞ。これでハイパーショッカーの新たな戦士が生まれるぞ・・」
ドクトルGがその人物を迎えて喜ぶ。かなたがハイパーショッカーの魔の手にかかろうとしていた。