仮面ライダークロス
第15話「奪われたソウルと砕かれた心」
ライがオーズソウルを手に入れた頃、聖也は仮面ライダーバースのライダーソウル「バースソウル」を手にしていた。
「またライダーと接触したか・・そのソウル全てを手に入れて、私は強くなる・・ハイパーショッカーを倒すために・・・!」
自分の強さを高めるため、聖也はライを狙って動き出した。
橘モーターショップにて、ひろしの手伝いをしていたライとかなた。ひろしと協力して、ライはバイクの調整をしていた。
「こっちのほうも手馴れてきたみたいだな、ライ。」
「おやっさんが丁寧に教えてくれたからですよ。」
気さくに言いかけるひろしに、ライが笑みをこぼす。
「バイクを扱う腕もライダーも日に日にうまくなってる。ライがすごくなると、オレも鼻高々になっちゃうよ。」
「おやっさん、調子に乗ってるよ・・」
にやけるひろしに、ライが苦笑いを見せた。
(ライは技術のほうもうまくなってる・・僕なんか・・・)
かなたがライを見て、自分を無力だと考えて思いつめていく。
「かなた、どうした?元気ないみたいだけど・・」
ひろしがかなたの様子を気にして声を掛けてきた。
「えっ?いや、何でもないです、何でも・・」
かなたが我に返って、苦笑いを見せて答えた。
(かなた・・・)
かなたが思いつめていることに気付いていたライが、深刻さをふくらませていた。
全ての世界の制圧を目論むハイパーショッカー。その大きな障害となっているライ、聖也の打倒のため、ドクトルGは作戦を練ろうとしていた。
「クロス・・単身でも高い戦闘能力を備えている。しかも他の仮面ライダーに変身することも可能・・」
ドクトルGがライと聖也の戦闘の映像を見て、情報を整理する。
「これほどの力に対抗するには、ヤツらと同じ能力を備えた戦士が必要になる・・同じ過程の調整で、より強力な戦士を仕立てあげる・・」
ライたちへの対抗手段を見出して、ドクトルGが笑みをこぼした。
「その新しい戦士にふさわしい人間は・・・」
彼がデータを照合して、新しい戦士にふさわしい人物を特定する。
「こやつか。それならさらに都合よく作戦を遂行できるというものだ・・」
その人物を見て、ドクトルGが笑みを強める。
「よし。この作戦をあの者に伝えよ。必ずよい助言をしてくれるだろう。」
「イー!」
ドクトルGが指示を出して、戦闘員が答えて連絡に向かった。
「戦士の歓迎はこの私自ら行おう。アポロガイスト、邪魔をするなよ。」
ドクトルGが作戦遂行に赴く意思を告げて、アポロガイストに目を向けた。
「それは私のセリフだ。私の目的はクロスを葬ることだ。」
アポロガイストが表情を変えずに、ドクトルGに言い返す。
「ならばその相手をしてもらいたい。クロス、そしてクラールの相手を・・」
「いいだろう。だが私を利用しようなどと考えないことだ。」
ドクトルGからの頼みを聞き入れるも、アポロガイストが警告を送る。彼は先にドクトルGの前から去っていく。
(いい気になれるのも今のうちだぞ、アポロガイスト・・貴様も首を洗っておくことだな・・!)
ドクトルGが心の中でアポロガイストをあざ笑う。彼も作戦のために行動を開始した。
ひろしの仕事の手伝いを続けていくライ。ひろしから言われた部品を届け先に届けて、彼は戻ろうとしていた。
その帰り道の途中、ライの前に聖也が現れた。
「アンタは・・!」
「十時ライ、君の持っているライダーソウルを、私に渡してくれないか?」
身構えるライに、聖也が手招きをして要求を投げかけてきた。
「前にも言ったはずだ・・アンタにライダーソウルは渡せない・・!」
「そうか・・言葉だけで済めばよかったが、実力行使しかないようだ・・・!」
ライが要求を拒否すると、聖也がため息をつく。彼はクラークドライバーとクラールソウルを手にした。
“クラール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼はクラールソウルをクラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、中心部「クラールタイフーン」を回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
彼の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。
「戦うしかないっていうのか・・・!」
ライはいら立ちを感じて、クロスドライバーとクロスソウルを手にした。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーに装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
「全てを、オレが正す!」
「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」
ライと聖也が互いに向けて言い放つ。2人が構えを取って、互いの出方をうかがう。
「君が強くなっていると同時に、私にも力が与えられている。そのことは君も分かっているはずだ。」
「それでも力が足りないっていうのか・・・!?」
「そうだ。ハイパーショッカーを壊滅させるには、今の私の持つ力だけでは足りないのだ。」
「それで、分かりましたって素直に渡すわけがないだろうが!」
言いかける聖也だが、ライは拒絶を続ける。
「ライダーソウルはただの力じゃない!仮面ライダーの強さと魂が込められているんだ!それを簡単に渡せるわけがない!」
「それで諦める私でもないぞ。」
ライダーソウルについて言い放つライだが、聖也は考えを変えない。
「無理やり自分の思い通りにしようとするやり方を、オレは認めはしないぞ!」
「認めてもらう必要はない。ライダーソウルが手に入ればそれでいい。」
怒りを覚えるライと、冷静さを崩さない聖也。
聖也が先に飛び出して、ライにパンチを繰り出す。ライは身軽に動いて、聖也のパンチをかわしていく。
「以前よりも動きにキレが出てきたか・・だが、それでも私には及ばない・・」
聖也はライの動きを見定めて、追撃を仕掛けた。
「ぐっ!」
聖也のパンチを体に受けて、ライがうめいて怯む。
「うあっ!」
さらに聖也にキックを浴びせられて、ライが突き飛ばされて転がる。
「十時ライ、君のライダーソウルをもらう。」
聖也が言いかけて、倒れているライに近づいていく。
「何度も言わせるな・・アンタに渡さないって・・!」
ライがいきり立って、ドライブソウルを取り出した。
“ドラーイブ!”
“ライダーソウール!”
彼はスイッチを入れたドライブソウルをクロスドライバーにセットして、左レバーを上げてクロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!ドラーイブ!”
クロスの姿が変化して、ライはドライブフォームとなった。
「さぁ、ひとっ走り付き合えよ!」
ライが言い放って、聖也に向かっていく。スピードを上げた彼が、聖也に攻撃を仕掛けた。
しかしライのパンチとキックは、聖也に正確に回避と防御をされていた。
「そんな!?ドライブのスピードが見極められている!?」
攻撃が通じないことに、ライが驚きの声を上げる。
「軌道がわずかでも捉えられれば、対処は可能だ。君のように単調な攻撃ならばなおさら簡単だ。」
聖也は呟いて、ライが繰り出したパンチをかわして、その右腕をつかんだ。
「こうしてつかんでしまえば、スピードも無意味になる。」
聖也が振りかざして、ライを投げ飛ばす。
「くっ!」
ライが強く地面を踏みつけて、倒れそうになるのをこらえる。
「それに、スピードを上げられるのは君だけではない。」
聖也はそう言って、マッハのライダーソウル「マッハソウル」を手にした。
「あれは、剛さんの・・!」
ライがマッハソウルを目にして驚く。
“マッハー!”
“ライダーソウール!”
聖也がマッハソウルをクラールドライバーにセットして、左レバーを上に上げてクラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!マッハー!”
聖也の変身しているクラールの姿に変化が起こる。その姿はマッハそっくりだった。
「私もスピードライダーであるマッハになれる。」
「マッハフォーム」となった聖也が、ライに向かって言いかける。
聖也が一気にスピードを上げて、ライに詰め寄った。ライもスピードを上げて、パンチとキックを高速で次々にぶつけ合う。
だが聖也の攻撃のほうが正確にライの命中していた。
「うっ!」
聖也に蹴り飛ばされて、ライが大きく転がる。
「スピードを上げると、君はまだその力を使いこなせていないようだ。」
倒れているライを見下ろして、聖也が言いかける。
「それでもこの前よりは強くなっているんだ・・アンタ相手でもやられない・・!」
ライが立ち上がって、強気に言い放つ。
「それが過信であることを、身を持って知ることだ。」
聖也が言いかけて、ライに向かって歩を進めた。
「ライのヤツ、遅いなぁ・・」
ライがなかなか帰ってこないことに、ひろしが心配してきた。
(もしかしてライ、怪人に襲われたんじゃ・・!?)
かなたもライのことを気にして、不安をふくらませていく。
「おやっさん、僕、出かけてきます!」
「かなた!」
飛び出したかなたに、ひろしが声を上げる。彼の呼び止めを聞かずに、かなたはライを捜しに向かった。
聖也に対して劣勢を強いられるライ。
“ヒビキー!”
ライが響鬼ソウルを手にしてスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼が響鬼ソウルをクロスドライバーにセットして、左レバーを上げてクロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!ヒビキー!”
ライが響鬼フォームになって、聖也を迎え撃つ。
「今度はパワーで勝負か。それでもムダだ。」
聖也が言いかけて、前進してくるライを迎え撃つ。ライが力のあるパンチを繰り出すが、聖也は軽々とかわしていく。
「うっ!」
聖也が繰り出したキックを受けて、ライが突き飛ばされる。
「当たらない・・さすがマッハのスピード・・!」
「どんな強い力でも、当たらなければ意味はない。」
毒づくライに、聖也が冷静さを崩さずに言いかける。
「あまり戦いを長引かせるつもりはない。そろそろ目的を果たさせてもらう。」
聖也が言いかけて、ブレイガンソウルを取り出した。
“ブレイガン!”
スイッチの入ったブレイガンソウルが、クラールブレイガンに変わった。
“ナイト!”
聖也は続いてナイトソウルを手にして、クラールブレイガンの中心部にセットした。
“ライダーブレイク・ナイトー!”
彼が構えたクラールブレイガンの刀身を取り巻くように渦の刃が現れて、槍のようになった。
「これは君でもかわせない。」
聖也がライに向かって突っ込んで、クラールブレイガンを前に突き出す。
「ぐあっ!」
回転する刃に切りつけられて、クロスの装甲から火花が散って、ライがうめく。聖也の攻撃の衝撃で、ライからエグゼイドソウル、キバソウル、ドライブソウルが地面に落ちる。
大きなダメージを受けてふらつくライ。その間に聖也が3つのライダーソウルを拾った。
「ライダーソウルが・・・返せ!」
ライがいら立ちを見せて、聖也に飛びかかる。聖也が拾ったライダーソウルをしまって、ライ目がけてクラールブレイガンを振りかざす。
「ぐっ!」
「自分の感情に振り回されて、攻撃がより単調になっているぞ。」
切りつけられて押し返されるライに、聖也が言いかける。彼がさらにクラールブレイガンを振りかざす。
「がはっ!」
さらに切られて突き飛ばされたライ。そのはずみでクロスドライバーにセットされていた響鬼ソウルが外れて、彼はクロスへの変身が解除された。
「これで残りは4つか・・」
落ちた響鬼ソウルを拾って、聖也が言いかける。
「残りもおとなしく渡せ。そうすればこれ以上傷つくことはない。」
「そう言われて、言いなりになると思っているのか!?」
警告する聖也に言い返して、ライがビルドソウルを取り出した。
“ビルド!”
ライがビルドソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼がクロスドライバーの中心部に、ビルドソウルをセットした
「変身!」
ライがクロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!ビルドー!”
彼がクロス・ビルドフォームに変身した。
「何をしてもムダだ。力を完全に使いこなせていない君では、私には敵わない。」
「やってみなくちゃ分かんない・・いや、分かっててもライダーソウルを取り返さなくちゃならないんだ!」
言いかける聖也に言い返して、ライが飛びかかる。
“ソードガン!”
彼がソードガンソウルを起動して、クロスソードガンを手にして振りかざす。聖也は素早く動いて、クロスソードガンをかわす。
「まだ往生際悪く攻めてくるか・・」
聖也はため息をついてから、クローズソウルを取り出した。
“クローズ!”
“ライダーソウール!”
彼はクローズソウルをクラールドライバーにセットして、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クローズー!”
聖也の変身するクラークの姿が、クローズとなった。彼は「クローズフォーム」への変身を果たした。
「クローズになった・・!」
ライが聖也に対して警戒を強める。
“ガンモード!”
聖也がクラークブレイガンをガンモードにして、ライを狙って発砲する。ライは横に転がって、聖也の射撃をかわす。
“バース!”
聖也がバースソウルを手にして、クラークブレイガンの中心部にセットした。
“ライダーシュート・オーズー!”
聖也が構えたクラールブレイガンの先に、エネルギーが集まる。
「クラールセルバースト!」
聖也がライに向かってエネルギーの球を発射する。ライがジャンプしてかわそうとするが、当たった地面の爆発に押されて、体勢を崩す。
聖也がその隙を見逃さずに、クラークブレイガンを連射する。
「うあっ!」
クロスの装甲が射撃されて、ライがうめく。彼は倒れないように、空中で体勢を整えてうまく着地する。
「絶対にライダーソウルは渡さない・・こんな一方的なのを、オレは認めない!」
ライが力を振り絞って、クロスタイフーンを回転させた。
“ライダースマッシュ・ビルドー!”
ライの前にグラフの形の滑走路が現れた。彼はジャンプして滑走路を滑るようにキックを繰り出した。
「本当に往生際が悪い・・・」
聖也がため息をついて、クラールタイフーンを回転させる。
“ライダースマッシュ・クローズー!”
聖也が足に炎をまとって、ライを迎え撃つ。聖也はライのキックをかわして、彼の体に炎のボレーキックを叩き込んだ。
「がはっ!」
ライが突き飛ばされて、地面に叩きつけられた。そのはずみでクロスソウル、ビルドソウル、龍騎ソウル、オーズソウルが地面に落ちて、彼の変身が解けた。
「これでライダーソウルは全てか。全て私がもらい受ける。」
聖也が言いかけてビルドソウル、龍騎ソウル、オーズソウルを拾い上げた。彼は最後にクロスソウルを拾おうとするが、ライが力を振り絞って手を伸ばして、クロスソウルをつかむ。
「コイツだけだ・・死んでも渡さない・・・!」
「どこまでも強情を張るとは・・・」
クロスソウルを離すまいとするライに、聖也がいら立ちを覚える。
「最後まで力ずくになってしまったが・・仕方がない・・・!」
“ブレイドモード!”
聖也が肩を落としてから、ブレイドモードに戻したクラールブレイガンを構えた。彼はクロスソウルをつかんでいるライの手を切ろうとした。
「やめろー!」
そこへかなたが駆けつけてきて、聖也に横から飛びついた。
「かなた・・!?」
突然現れたかなたに、ライが驚きを覚える。聖也も不意を突かれたが、踏みとどまって倒れないようにした。
「ライ、逃げて!僕が食い止めてる間に!」
「かなた、よせ・・それだとお前が・・!」
呼びかけるかなたに、ライが言い返す。
「ライがやられたら大変なことになっちゃうよ!僕に構わずに早く逃げて!」
「かなた・・お前・・・!」
かなたがさらに呼びかけて、ライが戸惑いをふくらませていく。
「君も邪魔をするなら容赦をしないぞ・・・!」
聖也が鋭く言って、かなたを退けた。
「かなた!」
“クロスレイダー!”
声を上げるライが、クロスレイダーソウルのスイッチを入れて、クロスレイダーを呼び出した。彼がクロスレイダーに乗って、かなたを助けようとする。
「かなた、つかまれ!」
「ライ、僕に構わずに先に行って!」
手を伸ばすライだが、かなたは聖也の足にしがみついて食い止めようとする。
「君も往生際悪く・・!」
聖也がいら立ちをふくらませて、足を振りかざしてかなたを払いのけた。だがそのときにはライの姿はなかった。
「クロスのソウルは取り損なったか・・しかしこれだけ手に入れれば、十分戦略を立てられる・・」
聖也がライから奪い取ったライダーソウルを見て笑みをこぼす。大きな力を手に入れて、彼は自信を実感していた。
聖也に突き飛ばされたかなたは、ライを捜して人気のない道を歩いていた。
「早くライと連絡取り合って、合流しなくちゃ・・!」
思い立ったかなたが、連絡のためにスマートフォンを取り出した。
「ここにいたか、市川かなた。」
そこへ声がかかって、かなたが驚いて振り返る。彼の前に現れたのは、ドクトルGだった。
「お前は・・!?」
目を見開いたかなたが、ドクトルGに打撃を食らわされて、気絶して倒れた。
「捕獲に成功したぞ。まさかクロスとクラールがうまく同士討ちをして、こやつもうまく来てくれたぞ。」
ドクトルGがかなたを見下ろして勝ち誇る。遅れて戦闘員数人が、2人の前に駆けつけた。
「こやつを連れていけ。すぐに調整を行うぞ。」
「イー!」
ドクトルGの指示に答えて、戦闘員たちがかなたを連れ出した。
「これでハイパーショッカーの、新たな戦士を誕生させることができる・・」
ドクトルGが期待をふくらませて、笑い声を上げる。
「今のうちに首を洗っておくことだ、クロス、クラール・・我らが、最強の戦士を誕生させるのだ・・!」
勝ち誇ったドクトルGが戦闘員たちとともに引き上げていく。かなたがハイパーショッカーの手に落ちてしまった。