仮面ライダークロス
第13話「龍騎!ライダーサバイバル」
聖也、クラールの登場に、ライとかなたは戸惑いと不安を感じていた。2人は聖也が乗り込んでこないかという心配もしていた。
「クラール、すごかったね・・仮面ライダーに変身したライにもビックリだったけど・・」
かなたが驚きの言葉を口にして、ライに目を向ける。
「悪かった、かなた・・お前やおやっさんたちを巻き込みたくなかったから・・」
ライが謝って、自分の考えを告げる。
「ううん、それはいいよ・・むしろ感激を感じてるよ〜♪僕の友達がライダーだなんて、感動を抑えられないよ〜♪」
かなたがライに対して目を輝かせていく。
「かなた、そういうことを騒いで言わないでよ・・このことを知ってるのは、他はおやっさんだけなんだから・・」
「おやっさんも知ってたの!?」
ライが不満を口にすると、かなたがまた驚く。
「クロスになってすぐに気付かれて・・それで事情を話したんだ・・」
「そういうことだったのか・・こりゃ、おやっさんにも言っておいたほうがいいかも〜・・」
ライが話を続けて、かなたが肩を落とした。
「オレがどうかしたか、2人とも?」
そこへひろしがやってきて、ライたちに声を掛けてきた。
「おやっさん、丁度よかった・・実は・・」
ライがひと息ついてから、ひろしに今の事情を話した。
「そっか・・かなたもライのことを知ったか。」
「ビックリしちゃいましたよ、ホント・・でも、僕もこれからは、僕にできることをしたいです。」
ひろしが頷いて、かなたが決意を口にする。
「できることなら、あんまり深入りしてほしくはない・・深入りすると、ハイパーショッカーに狙われる危険が高くなるから・・」
「それは分かってる!それでもライだけに任せ切りになんてできないよ!」
ライが不安を口にするが、かなたの決意は変わらない。
「危なくなったらすぐに逃げるんだぞ・・アジトとかを見つけても、1人で乗り込むとかはなしだ・・」
「分かっているよ、ライ。エヘヘ・・」
ライからの注意を聞いて、かなたが頷いて照れ笑いを見せた。
「心強い味方が1人増えたか。いや、友情が深まったって言ったほうが正しいな。」
ひろしが2人の友情を目の当たりにして、気さくな笑みを見せた。
「問題はハイパーショッカーと、クラール、滝聖也だな・・」
ライが聖也のことを考えて、深刻な顔を浮かべる。
「ハイパーショッカーと戦っているライダーなのに、どうしてライの持ってるライダーソウルを狙ってくるんだろう・・!?」
「ライダーソウルはライダーの力が込められているものだ・・ソウルを手に入れれば、それだけ力が上がることになる・・」
かなたが疑問を投げかけて、ライが語りかける。
「だけど渡さない・・どんな理由でも、強引に何かをしてくるなら、オレは許しちゃおかない・・!」
自分の考えを口にして、感情を込めるライ。彼は聖也と対立することも意識していた。
そのとき、ライは耳鳴りのような音を聞いて、周りを見回す。
「ラ、ライ・・!?」
「どうしたんだ、ライ・・!?」
かなたとひろしがライの突然の行動に、疑問を覚える。
「何か音がしたんだ・・しかもこの音、聞いたことがある・・・!」
ライが耳を澄まして音が出ている場所を探る。歩き出す彼に疑問符を浮かべたまま、かなたとひろしはついていった。
その頃、まりは友達との買い物を終えて、家に帰ろうとしていた。その途中の家電ショップにあるTVから流れているニュースに、彼女は足を止めて目を向けた。
ニュースの内容は、仮面ライダーと怪人に関するものだった。
「仮面ライダーが実際に現れるなんて・・あり得ないよ、こんなこと・・・」
今の現実が信じられなくて、まりが気まずくなってため息をつく。
「何かに巻き込まれる前に、早く帰ったほうがいいかも・・」
不安を案じた彼女が、慌てて走り出した。
そのとき、まりが耳鳴りのような音を聞いて、また足を止めた。
「何、この音・・・?」
まりが音のことを気にして周りを見回す。彼女はそばのビルに寄っていた。
その直後、まりのそばのガラスが突然歪み出した。
「えっ!?・・何っ・・!?」
この現象にまりが動揺を浮かべる。次の瞬間、水が揺れるようにガラスから異形の手が出てきた。
「キャッ!」
まりがその手につかまれて、ガラスの中に引きずり込まれてしまった。その瞬間に、周りの人たちは見ていなくて気付いていなかった。
それから数分後に、ライがそのビルの前に来た。彼は周りを見回して異変を探る。
(この辺りだ・・何かあったはずなんだけど・・・!)
ライが警戒を強めて、さらに周りを見回す。
そのとき、ライは再び耳鳴りのような音を聞いた。
(やっぱりこの近くだ・・でも、どこだ・・!?)
ライがさらに周りを警戒する。彼がビルのガラスに触れた。
するとそのガラスが水面が揺れるように歪み出した。
「これは・・!?」
歪みの起きたガラスを、ライがじっと見つめる。その先に見えた景色に、彼は目を疑った。
ガラスの中に映ったのは、まりの姿だった。
「まり!?」
ライが声を上げて、後ろに振り返る。ガラスにまりの姿があるのに、ガラスの前に彼女の姿がない。
(もしかしてガラスの・・鏡の中に!?・・まさかこれは、“ミラーワールド”!?)
ライは驚きを感じながら、記憶を巡らせる。まりは今、鏡の中の世界、ミラーワールドにいた。
(早く助けないと・・でも、どうやってミラーワールドに行ったら・・・!?)
ライがまりを心配して、動揺を深める。彼はミラーワールドへ行く方法を持っていない。
(何とかしないと・・仮面ライダーじゃないまりがミラーワールドにいつまでもいたら・・!)
深刻さをふくらませていくライ。彼はミラーワールドに長時間いることの危険も知っていた。
ガラスの中に引きずり込まれたまり。外の世界のあらゆるものが反転しているミラーワールドを、彼女はさまよっていた。
「何がどうなってるの!?・・誰もいないなんて・・!?」
まりが周りを見回して、誰かいないか探る。
「あのー!誰かいませんかー!?」
まりが叫ぶが、誰からの返事がない。彼女がさらに街の中を探索していく。
そのとき、まりの前に青い体の怪人、レイドラグーンが現れた。
「か、怪物!?」
まりが恐怖を覚えて、レイドラグーンから逃げ出す。だがその先に他のレイドラグーン数人が降り立った。
まりが恐怖をふくらませて、声が出なくなってしまう。レイドラグーンの1人が、彼女に襲い掛かる。
そこへ赤と銀の装甲と仮面を身にまとった戦士が、レイドラグーンを蹴り飛ばしてまりを助けた。
「大丈夫、君!?ケガはない!?」
「は・・はい・・・!」
戦士が声を掛けてきて、まりが小さく頷いた。他のレイドラグーンたちも2人に飛びかかってきた。
そこへ青と銀の装甲と仮面の戦士が駆けつけて、抜刀した剣でレイドラグーンを切りつけた。
「ボーっとしていると、ヤツらの格好の餌食だぞ、真司。」
「蓮!」
2人の戦士、秋山蓮と城戸真司が声をかけ合う。2人は今、仮面ライダー、ナイトと龍騎に変身していた。
「真司、お前はその人を連れて外へ出ろ。コイツらはオレが片づける。」
「蓮、いくらなんでもお前だけじゃ・・!」
呼びかける蓮に真司が心配の声を上げる。
「お前とは戦ってきた時間が違う。こんなヤツらにやられるほど弱くはない。」
「蓮・・分かった・・!」
蓮が強気に言って、真司が頷いた。
「それじゃ行くよ・・!」
「は、はい!」
真司の呼び声にまりが頷く。2人はこの場から走り出して、ガラスを通ってミラーワールドから脱出した。
レイドラグーンたちが羽をはばたかせて飛び上がって、蓮に向かって急降下する。蓮がカード「アドベントカード」を取り出して、剣「ダークバイザー」にセットした。
“Advent.”
空からコウモリ、ダークウィングが飛んできて、レイドラグーンたちを突撃した。蓮は続けてアドベントカード「ファイナルベントカード」を取り出して、ダークバイザーにセットした。
“Final vent.”
蓮が大きくジャンプして、マントに身を包んでレイドラグーンたちに突っ込む。彼の突撃を受けて、レイドラグーンたちが一掃された。
「片付いたか。オレも外へ出るか。」
着地した蓮はひと息ついてから、ミラーワールドを後にした。
真司と蓮のこと、2人がまりを助けてくれたことを、ライは知っていた。彼の前にあるガラスから、真司とまりが出てきた。
「まりちゃん!」
ライが声を上げて、まりに駆け寄った。
「ライくん!・・あなたもここに来てたんだね・・!」
まりがライに微笑むと、真司が龍騎への変身を解いた。
「城戸真司さん、仮面ライダー龍騎ですね・・!」
「君、オレのことを知ってるのか・・!?」
ライが声を掛けて、真司が驚きを見せる。
「他のみんなも、オレのことを知っていた・・オレが仮面ライダーだってことも・・・!」
真司が記憶を巡らせて、動揺を浮かべる。
「オレたち仮面ライダーが、TVの中の登場人物になっているなんて、今でも信じられないよ・・」
「オレもビックリしてますよ。多分、今の世界のみんなも・・」
今の現状に驚く真司に、ライも言いかける。
「ライ!」
そこへかなたがやってきて、ライに声を掛けてきた。
「えっ!?まりちゃんも一緒!?・・って、城戸真司さん、龍騎じゃないですかー♪」
かなたが真司を見て目を輝かせる。
「かなた、落ち着けって・・」
ライが注意を投げかけて、かなたが照れ笑いを見せた。
「まりちゃんは帰ったほうがいい・・あんなところに引きずり込まれて、怖い思いをしてないはずがない・・」
ライがまりを心配して呼びかける。
「でも、ライくんとかなたくんが・・・!」
「今みたいな怪物がまだこの辺りにいるかもしれない・・だからまりちゃんはおやっさんのところにでも・・」
心配するまりに、ライが不安を噛みしめて呼びかける。
「分かったよ、ライくん・・先にひろしさんのところに行ってるね・・」
まりは聞き入れて、ライたちの前から1人で去っていった。
「これで詳しい話ができるね・・まりちゃんまで巻き込めないから・・」
かなたが言いかけて、ライが真剣な顔を浮かべた。
「オレも仮面ライダーなんです。あなたたちとは違うタイプのライダーですけど・・」
ライは真司に自分のことを打ち明けて、クロスドライバーとクロスソウルを見せた。
「ミラーモンスターだけじゃなく、他の怪物たちが動き出しているのは、オレも気になってはいる。何か、とんでもないことが起こってるような・・」
「その怪人たちが集まったのがハイパーショッカーです。何を企んでいるのか、ハッキリとまでは分からないですが、ヤツらの思い通りになったらロクなことにならない・・」
真司が疑問を投げかけて、ライが語りかける。
「そんなことになっていたのか・・もっと気を引き締めなくちゃ・・!」
真司が息をのんで、改めて覚悟を決めた。
「でも、オレには鏡の中に、ミラーワールドに行く能力を持っていないです・・もしもミラーモンスターが出てきたら、オレはどうすることも・・」
ミラーワールドで戦えない自分を、ライが責める。すると真司が彼に笑みを見せてきた。
「やる気と諦めない気持ちがあれば、できないってことはない。誰かを守るのも、戦いを止めるのも・・」
「真司さん・・・」
真司に励まされて、ライが戸惑いを浮かべる。
「だが願いを叶えようとするヤツを止めるには、そいつ以上の力と覚悟が必要になる。」
そこへミラーワールドから戻ってきた蓮が現れた。
「蓮・・秋山蓮さん・・仮面ライダーナイトだよ〜♪」
かなたが蓮も見て、また目を輝かせる。
「かなた、いい加減落ち着けって・・」
「ア、アハハハ・・」
ライが呆れて、かなたが苦笑いを浮かべた。
「オレたちの世界の仮面ライダーは、願いを叶えるために戦っている。ま、単純に戦いがしたいというヤツも、コイツみたいに戦いを止めたいなんて甘いことを考えてるヤツもいるがな。」
蓮が語りかけて、真司に目を向けて呆れる。
「それでもオレは止めたいんだ、こんな戦い!その願いのために人の命を奪うなんて・・!」
「ライダーバトルに参加しているヤツは、どんなことをしてでも願いを叶えようとしている。叶えなければ何も残らないほどに。やめろと言われて戦いを止めるわけにはいかない。」
自分の意思を告げる真司に、蓮が現実を突きつける。
「そういうのを、オレは仮面ライダーとは認めない・・!」
するとライが蓮に対して不満を口にしてきた。
「仮面ライダーは正義と命、自由と平和を守るためのヒーローだ・・自分の目的のために手段を選ばず、誰かを傷付けて平気でいるようなヤツを、オレはライダーとは認めない!たとえ願いがどんなのすばらしくてもだ!」
「ライ・・!」
自分の考えを口にするライに、真司が戸惑いを覚える。
「お前や他のヤツに許してもらおうとは、わずかも思ってはいない。オレはオレの戦いをするだけだ。」
「だったら力ずくでも止める・・こんな度が過ぎた間違いは、正さないといけない・・!」
考えを変えない蓮に、ライが怒りを浮かべる。彼がクロスドライバーとクロスソウルを手にした。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーに装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
蓮がカードケース「ベントホルダー」をそばのガラスにかざす。すると彼の腰にベルト「Vバックル」が装着された。
「変身!」
蓮がベントホルダーをVバックルにセットした。彼はナイトへと変身した。
「全てを、オレが正す!」
ライが鋭く言って構えを取る。蓮もダークバイザーを手にする。
「ライ、蓮さん、落ち着いてって・・!」
かなたが呼び止めるが、ライも蓮も戦いをやめようとしない。
「やめろ、2人とも!オレたちが戦ったってしょうがないじゃないか!」
真司がライたちの間に割って入って、止めようとする。
「どいてください、真司さん・・こんな戦いを止めるための戦いを、オレはするんです・・!」
「だからって、お前と蓮が戦う必要はない!今のこの世界で、オレたちが戦わなくちゃいけない相手は、別にいるんじゃないのか!?」
言いかけるライに、真司が呼びかける。彼の言葉を聞いて、ライが戸惑いを覚える。
「オレが戦うのは、オレやかなたたちを襲おうとしているヤツら・・そして・・!」
ライが言いかけて、改めて構える。
「仮面ライダーが間違った方向に持っていかせようとするヤツらだ!」
「そんなくだらないことで倒されるわけにはいかないな・・」
言い放つライに呆れて、蓮が言い返す。
「だからやめろって、2人とも!」
「どけ!」
真司が呼び止めるが、飛び出した蓮に横に突き飛ばされる。蓮が振りかざすダークバイザーを、ライは素早くかわしていく。
ライがダークバイザーを手で受け止めて、蓮と組み合いを演じる。
「やめてよ・・こんな争い、間違ってるよ!」
かなたが感情をあらわにして、ライと蓮に向かっていく。
「危ない!突っ込んだらダメだ!」
真司が呼び止めようとするが、かなたはライと蓮に突っ込んだ。
「かなた!?」
「ぐっ!」
驚くライとうめく蓮。かなたに押された2人が、互いへの攻撃の手を止めた。
「邪魔をするのか、お前!?」
「2人ともいいライダーじゃないか!その2人が争う必要がどこにあるんだよ!?」
鋭く言いかける蓮に、かなたが不満を叫ぶ。
「かなた・・・」
かなたの感情を目の当たりにして、ライが戸惑いを感じていく。
「争う必要はある。オレの願いを叶える邪魔をコイツがした・・」
それでも蓮はライとの戦いを続けようとする。
「蓮・・今は戦いをやめろ・・今のこの戦いに意味はない・・お前にとってもだ・・!」
真司も蓮に戦いをやめるように呼びかける。不満を感じていた蓮だが、ダークバイザーを下げた。
「こんなことで戦いが止まることはない。お前たち、このことを自覚することだな・・」
蓮がライたちに不満を告げて、彼らに背を向けた。
そのとき、蓮に向かって数本の刃が飛んできた。蓮はダークバイザーを振りかざして、刃をはじき飛ばした。
「な、何だ!?」
突然のことにライが声を上げる。彼らのそばにあるガラスから、鎧に身を包んだ男が現れた。
「その姿・・お前は!?」
ライが男の姿を見て驚く。彼もかなたも男に見覚えがあった。
「我は怪魔妖族、武陣!命令により、貴様らを地獄に送ってくれる!」
男、武陣が名乗って、短剣を手にしてライたちを狙う。
「ミラーモンスターではないが、鏡を行き来できるようだな・・!」
蓮が武陣を見て言いかける。武陣の後方にレイドラグーンたちが姿を現した。
「アイツらと手を組んだの!?」
「これはやっぱり、ハイパーショッカーの仕業なのか・・!?」
かなたが動揺を見せて、ライが毒づく。
「みんなには手は出させないぞ!オレも行くぞ!」
真司が言い放って、ベントホルダーを手にしてガラスに向ける。彼の腰にVバックルが装着された。
「変身!」
Vバックルにベントホルダーをセットした真司。彼が龍騎へと変身を果たした。
「かなたは離れていてくれ!」
「う、うん・・!」
ライが呼びかけて、かなたが頷いて後ろに下がった。真司と蓮がレイドラグーンに、ライが武陣に向かっていく。
真司と蓮がガントレット「ドラグバイザー」とダークバイザーにアドベントカードをセットする。
“Sword vent.”
2人が剣「ドラグセイバー」と槍「ウィングランサー」を手にして、レイドラグーンたちを切りつけていく。
ライが武陣に向かって果敢に攻め立てる。回避を続ける武陣だが、ライのパンチを受けて突き飛ばされる。
すると武陣がそばにあったガラスの中に飛び込んだ。ライが武陣を見失って、彼の入ったガラスを見つめる。
次の瞬間、別のガラスから武陣が飛び出してきた。振り返ったライだが、武陣の振りかざした短剣がクロスの装甲を切りつけた。
「ぐっ!」
装甲から火花が散って、ライがうめく。彼は武陣が振りかざす短剣をかわす。
ライがとっさにソードガンソウルを手にして、スイッチを入れた。
“ソードガン!”
クロスソードガンが現れて、ライが手にする。武陣が振りかざす短剣と、ライがクロスソードガンをぶつけ合う。
ライと武陣の力は互角で、つばぜり合いを演じていく。
「この程度ではオレの力と“鏡渡りの術”に打ち勝つことはできぬぞ!」
武陣が言い放って、短剣を振りかざしてライを引き離す。彼は即座に別のガラスの中に飛び込んで、姿を消した。
「また鏡渡りの術か・・ここはスピードを上げるしか・・!」
ライが打開の糸口を探って、ドライブソウルを取り出した。
“ドラーイブ!”
彼はドライブソウルのスイッチを押して起動する。
“ライダーソウール!”
ライはクロスドライバーにドライブソウルをセットして、クロスドライバーの左レバーを上げてクロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!ドラーイブ!”
クロスの装甲が変化して、さらに1つのタイヤが斜めに装着された。彼はドライブフォームへと変身した。
ライは一気にスピードを上げて、武陣を素早く迎え撃つことを考えた。周りを警戒するライの後ろのガラスから、武陣が出てきた。
ライが振り向き様にクロスソードガンを振りかざす。が、クロスソードガンは武陣の短剣とぶつかり合って押される。
「これでも反撃が遅い・・やっぱり鏡を行き来できるようにならないと・・!」
ライが劣勢に立たされて、危機感をふくらませていく。
「そろそろとどめを刺してやるぞ、クロス!」
武陣が勝ち誇って、持っていた短剣をライ目がけて投げつけた。そこへレイドラグーンたちを倒した真司と蓮が駆けつけて、ドラグセイバー、ウィングランサーで短剣をはじいた。
「しっかりしろ。その程度で戦いには生き残れないぞ・・」
蓮が武陣に目を向けたまま、ライに言いかける。
「オレもお前も、みんなを守るために戦っている!それならお前が戦うのを、オレは止めはしない!」
「真司さん・・・!」
真司も振り向かずに言いかけて、ライが戸惑いを感じていく。
「何のために戦うのかを、見失わないようにな・・!」
「真司さん・・・はい!」
真司に励まされて、ライが気を引き締めて頷いた。
そのとき、真司のまとう龍騎のスーツから光があふれ出した。光はライの手元に来て、新たなライダーソウルに変わった。
「ライダーソウル・・龍騎のソウルだ!」
ライがライダーソウル「龍騎ソウル」を見て、驚きの声を上げる。彼が目を向けると、真司が頷いた。
「真司さん、龍騎の力、使わせてもらいます!」
“龍騎!”
ライが真司に言いかけて、龍騎ソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼はクロスドライバーにセットされているドライブソウルを龍騎ソウルと入れ替えて、左レバーを上げてクロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!リューキー!”
ライのまとうクロスの姿が、龍騎そっくりとなった。彼は龍騎の姿と能力を得た。
「えーっ!?オレになったー!?」
真司がライの姿を見て、驚きの声を上げた。
「また姿を変えたか・・だがそれでオレに敵うと思ったら大間違いだぞ!」
武陣が言い放って、短剣を投げつける。ライはクロスソードガンで短剣をはじく。
その隙に武陣が真司たちから離れて、ガラスの中に飛び込んだ。
「今なら、オレも鏡の中に入れるはず・・・!」
ライが呟いて、真司と頷き合う。2人と蓮は武陣を追って、ガラスの中に飛び込んだ。
「ライ・・みんな・・・!」
かなたがライたちを見送って、心を揺さぶられていく。
(僕も、ライみたいに力があったら・・・!)
自分の無力さを痛感して、かなたは悔しさを噛みしめていた。
ミラーワールドに入ったライたちは、武陣に追いついた。
「まさかクロスまで鏡の中に入ってくるとは・・!」
「これで鏡渡りの術も、オレには通じないぞ!」
毒づく武陣にライが言い放つ。
「おのれ、ライダーども・・!」
武陣がいら立ちを見せて、マントを外してライたちに飛びかかる。
「行くぞ!」
「はい!」
真司が呼びかけて、ライが答える。2人が同時にドラグセイバーとクロスソードガンを突き出す。
「ぐっ!」
武陣が2人の剣に突かれて押し返される。
「一気に決める!」
ライが言い放って、クロスタイフーンの右のレバーを上げて回転を加えた。
“ライダースマッシュ・リューキー!”
ライの体から赤いエネルギーが発せられる。真司もドラグバイザーにアドベントカードをセットした。
“Final vent.”
真司の周りを赤い龍「ドラグレッダー」が取り巻く。彼とライが同時に高くジャンプして、武陣に向かって急降下する。
ライと真司のキックを受けて、武陣が大きく吹き飛ばされた。
「おのれ、ライダーどもー!」
武陣が断末魔を上げて、空中で爆発して消滅した。
「やった!ミラーワールドの中で、武陣を倒した!」
ライが勝利を実感して、真司と頷き合った。
「真司の力を使ったが、ヤツは少しはマシになったようだな・・」
蓮がライの強さを確かめて、称賛を呟いた。
「お前たち、早く外へ戻るぞ。」
蓮が呼びかけてライ、真司とともにミラーワールドから出た。
「ライ!真司さん!蓮さん!」
ガラスから出てきたライたちに、かなたが声を上げた。
「かなた・・真司さんが、力を貸してくれた・・・」
ライが笑みを浮かべて、龍騎ソウルをかなたに見せた。
「ライ・・また強くなったんだね・・」
ライへの喜びを口にするかなただが、表情は曇っていた。
「真司さん、蓮さん、ありがとうございました、協力してくれて・・」
ライが真司たちに感謝して頭を下げた。
「オレは何もしていない。オレの戦いをしていただけだ。」
蓮は言葉を返して、1人歩き出した。
「蓮のヤツは相変わらずなんだから・・・それじゃ、オレも行くぞ。」
真司は蓮に呆れてから、ライとかなたに挨拶をした。
「はい。真司さん、ありがとうございました。オレ、これからも戦います。オレの大事な人を守るための戦いを・・」
ライは微笑んで、真司に頷いた。彼は決意を新たにして、気を引き締めなおした。
(僕も、ライや他のライダーみたいな力があったら・・・)
ライとともに真司たちを見送るかなたが、自分の無力を感じて悲しい顔を浮かべていた。