仮面ライダークロス

第8話「アポロガイスト、強襲!」

 

 

 クロスの力と能力をうまく使えるようになろうと、ライはクロスとなって力を確かめていた。

(ライのヤツ、落ち着いてクロスの力を使えるようになってるな。力に溺れたり振り回されたりしてないし。)

 ひろしがライの様子を見て、安心して頷いていた。

“変身カイジョー。”

 ライがクロスへの変身を解除して、小休止に入った。

「大分慣れてきたかな。もうちょっと速く動けるようになれればいいかな・・」

 ライが今の自分の状態を確かめて、笑みをこぼす。

「がんばってるな、ライ。慢心することもなくなったし。」

「そのことはもう思い出させないでくれって・・」

 ひろしが声を掛けて、ライが苦笑いを見せる。

「ところで、ハイパーショッカーの動きはどうなってるんだ?」

「いや、オレも分からないです・・アジトもどこにあるのかも・・」

 ひろしが投げかけた問いかけに、ライが思いつめた顔を浮かべて答えた。

「でも必ず、ヤツらのアジトを突き止めて、暴挙を止める・・」

 ライが決意を新たにして、手を握りしめる。

「ライ、ムチャはするなよ。危なくなったら戦いをやめて、オレやかなたたちのとこへ戻ってこい。」

「おやっさん・・もちろんですよ。ここが、オレの帰る場所だから・・」

 ひろしからの呼びかけに、ライが真剣な顔で頷いた。

「幼い頃に親を亡くして、オレもかなたも孤児院で暮らしてきた。15になったオレたちを、おやっさんが引き取ってくれた・・オレたちを育ててくれたおやっさんには、すごく感謝してる・・」

「ライ・・・」

「だから、オレは必ずここに帰ってくる・・どんなことがあっても、絶対に・・・!」

 感謝と決意を口にするライに、ひろしが戸惑いを感じていく。

「ライ・・約束だからな、そのこと・・・!」

「はい・・!」

 ひろしと約束を交わして、ライが握った手を合わせた。

 そのとき、ライのスマートフォンが鳴り出した。電話を掛けてきたのはまりだった。

「もしもし?どうしたんだ、まり?」

“ライくん、大変なの!・・ショッピングモールに怪物が・・!”

 電話に出たライの耳に、まりの慌ただしい声が飛び込んできた。

(怪物!?・・ハイパーショッカーの怪人か・・!?

「ショッピングモールだな!?すぐそっちに行く!」

 ハイパーショッカーの出現を予感したライが、まりに呼びかけた。

「おやっさん、オレ、行ってくるよ!」

「ライ、気を付けろよ!」

 ライが声を掛けて、ひろしが呼びかける。ライは頷いてから走り出して、クロスレイダーソウルを呼び出した。

“クロスレイダー!”

 ライがクロスレイダーソウルのスイッチを入れると、クロスレイダーが駆けつけた。ライはクロスレイダーに乗って、一気に加速した。

 

 まりが買い物に訪れたショッピングモールに怪人、サソリ男が現れた。人々に襲いかかるサソリ男から、人々が慌てて逃げ出していく。

「この世界は我々のものとなる!人間どもは我々に従えば、命は助けてやるぞ!」

 サソリ男が人々に向かって呼びかける。

「人間どもを捕まえろ!新たな怪人に仕立てるためのな!」

「イー!」

 サソリ男が呼びかけて、戦闘員たちが掛け声を上げて、人々を追いかけた。

「は、放して!助けてくれ!」

 逃げていく人々が、戦闘員に捕まって悲鳴を上げる。

「我々の目の届くうちは、逃げられるなどと思わないことだな!」

 サソリ男が人々を見てあざ笑った。

 そこへライの乗ったクロスレイダーが走ってきて、戦闘員たちを蹴散らした。

「お、お前は!?

 サソリ男がライを見て、驚きを見せる。

「ショッカーの怪人か・・オレたちの近くで好き勝手にやってんじゃないぞ・・!」

 止まったクロスレイダーから降りたライが、サソリ男たちに向かって言いかける。彼がクロスドライバーとクロスソウルを取り出した。

“クロスドライバー!”

 ライがクロスドライバーに装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。

“クロス!”

 音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。

“ライダーソウール!”

 ライは意識を集中して構えを取る。

「変身!」

 彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。

「おのれ・・クロスは我々が始末してくれる!」

 サソリ男が言い放って、戦闘員たちが飛びかかる。ライがパンチとキックを繰り出して、戦闘員たちを撃退していく。

「おのれ、クロス!」

 サソリ男が毒づいて、ライを迎え撃って左手のハサミを振りかざす。ライは素早く動いてハサミをかわす。

「すばしっこいヤツめ・・ならばこれならどうだ!」

 サソリ男がハサミから電気を放出した。

「ぐあっ!」

 電気ショックが命中したことでクロスの装甲から火花が散って、ライがうめく。さらに放たれる電気を、ライはかわし切れずに当てられる。

「もう逃げ切れんぞ!ムダな抵抗はやめて、おとなしく我々に従うのだ!」

 サソリ男が言い放ってライをあざ笑う。

「お前たちの言いなりにはならないし、お前たちに倒されるつもりもない・・オレがお前を倒すんだ!」

 ライが言い放って、キバソウルを取り出した。

“キバ!”

“ライダーソウール!”

 彼はキバソウルのスイッチを入れて、クロスドライバーにあるクロスソウルと入れ替えた。

「変身!」

 ライがクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!キバー!”

 ライがキバフォームへ変身して、サソリ男に向かっていく。

「クロスがキバになっただと!?小賢しいマネをしたところで!」

 サソリ男があざ笑って、ハサミから電撃を放つ。ライは軽やかな動きで電撃をかわしていく。

 接近してきたライに向かって、サソリ男がハサミを振りかざしてきた。ライはジャンプをしてハサミをかわながら、ソードガンソウルを手にした。

“ソードガン!”

 ソードガンソウルがクロスソードガンに変わって、ライの手に握られた。

 ライがクロスソードガンを振りかざして、サソリ男のハサミとぶつけ合う。

「ぐっ!」

 ライの速い剣さばきに、サソリ男が追い込まれてうめく。

「このサソリ男のハサミが競り負けるなど・・!」

 劣勢に追い込まれていることに、サソリ男がうめく。ライがクロスドライバーにセットされているキバソウルを、クロスソードガンに移した。

“ライダーブレイク・キバー!”

 クロスソードガンの刀身に狼のような青い光が宿る。サソリ男が振りかざした爪を、ライが振りかざしたクロスソードガンが切り裂いた。

「ぐあぁっ!私の、私のハサミがー!」

 ハサミを切り落とされて、サソリ男が絶叫を上げる。

「さっさと引き上げろ!さもないととどめを刺すぞ!」

 ライが呼びかけて、クロスソードガンを構える。

「がはっ!」

 そのとき、サソリ男が突然後ろから撃たれた。

「な、何だ!?

 ライも思わぬ事態に驚きを隠せなくなる。

「お前の役目は終わりだ。おとなしく眠れ。」

 サソリ男の後ろに現れたのは、銃「アポロショット」を構えたアポロガイストだった。

「ア・・アポロガイスト様!?・・私は、まだ・・・!」

 サソリ男が驚きを感じながら、前のめりに倒れて爆発した。

「お前は・・“GOD(ゴッド)”のアポロガイスト・・!?

 ライがアポロガイストを目の当たりにして驚きをあらわにする。

「ほう?私のことを知っているとは・・ならば話は早い。私と同行し、ハイパーショッカーに従うのだ。」

 アポロガイストがライに呼びかけて、アポロショットの銃口を向ける。

「冗談じゃない・・お前たちの言いなりにはならないぞ!」

 ライが言い返して、クロスソードガンを構える。

「抵抗するなら、このアポロガイストが葬り去ってくれる。」

 アポロガイストが低い声で言いかけて、アポロショットを発射した。ライはクロスソードガンの刀身で、アポロショットの射撃をはじいた。

 アポロガイストが続けてアポロショットを連射する。ライは横に動いて、射撃をかわしていく。

「調査前より素早いようだ。ならば・・!」

 アポロガイストはライに向かって走り出して、再度アポロショットを撃った。距離が縮まって、ライは射撃を受けて回避しきれなくなる。

「ぐっ!」

 ライがダメージを負ってうめいて倒れる。

「お前程度ならば、修正すれば何の問題もない。お前を始末することもな。」

 アポロガイストがライを見下ろして言いかける。

「諦めて私に従え。でなければ特別に無罪放免とするぞ。」

「お前たちには従わない・・お前たちを倒して、オレは生きて帰る・・!」

 警告するアポロガイストに言い返して、ライが立ち上がる。

“変身・ライダー!クロース!”

 ライはクロスドライバーに再びクロスソウルを戻して、クロスに再変身した。

「私に対して抵抗は無意味だ。逆らおうとしても苦痛が増すだけだぞ。」

 アポロガイストが言いかけて、アポロショットを発射する。ライは射撃を受けながらも、耐えて前進してきた。

 ライがクロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加える。

“ライダースマッシュ・クロース!”

 ライのまとっているクロスの装甲から光があふれ出す。

「クロスライダーキック!」

 彼がジャンプして右足を前に出して、足裏にあるX字から光を放つ。

「ライダーキックか・・それで倒れるアポロガイストではない!」

 アポロガイストが言い放って、日輪の形をした盾「ガイストカッター」を手にした。

「ぐっ!」

 キックをガイストカッターで防がれて、ライが押し返される。怯んだ彼に、アポロガイストがガイストカッターを投げつける。

「ぐあっ!」

 回転の加わったガイストカッターに切られて、ライが突き飛ばされる。

「あぐっ!がはぁ・・!」

 ライが激痛に襲われて、思うように立てなくなる。

「ムダな抵抗をしたばかりに、お前は余計な苦しみを背負うことになったのだ・・」

 アポロガイストが言いかけて、アポロショットを発射した。立ち上がろうとしていたライが撃たれて突き飛ばされた。

 そのはずみでクロスドライバーが外れて、ライはクロスへの変身が解けた。

「くっ・・クロスの力が、全く通用しないなんて・・・!」

 絶体絶命に追い詰められて、ライが危機感をふくらませる。

「これで理解したはずだ。私とお前の力の差を・・」

 アポロガイストがライを見下ろして、彼にアポロショットの銃口を向けてきた。やられると思って、ライが息をのむ。

「これでお前を連行したり抹殺したりすることは可能だが、こんなものでは達成感がない・・」

 ところがアポロガイストはとどめを刺すことなく、ライからアポロショットを離した。

「今回だけは見逃してやる。それまでに、この力の差をわずかでも埋めてくることだ・・」

 アポロガイストはそう告げると、ライの前から立ち去っていった。

「助かった・・・いや、見逃されたというべきか・・・!」

 とどめを刺されずに済んだライは、安心を感じるよりも悔しさをふくらませていた。アポロガイストに敵わなかったばかりか、彼に情けを掛けられたことが、ライは腹立たしくなっていた。

「生き地獄を味わわされる・・死ぬことよりも辛いことだな・・・!」

 立ち上がったライが、いら立ちで体を震わせる。彼が落ちていたクロスドライバーを拾う。

「まだ足りないってことなのか・・クロスの力は・・アイツに勝てるぐらいまで、強くなることができるだろうか・・・!?

 力への渇望に対する疑問を感じていくライ。

「ライダーソウル・・他の仮面ライダーに会えば、強くなる方法が分かるかもしれない・・・!」

 他の仮面ライダーとの出会いが、クロスの力を高めることになるのではないかと、ライは思い立った。

「また、かなたに助けられることになりそうだ・・・」

 かなたのことを考えて、ライが思わず笑みをこぼしていた。彼は元気なく帰っていった。

 

 ライにとどめを刺すことなく、ハイパーショッカーの基地に戻ってきたアポロガイスト。彼の今回の行動に、戦闘員たちが戸惑いを感じていた。

「よろしかったのですか、アポロガイスト様?・・クロスも仮面ライダーの一員。しかも他のライダーの力も使えるのです・・」

「このまま野放しにすれば、我々の脅威になることは・・!」

 戦闘員たちが苦言を呈するが、アポロガイストは考えを変えない。

「これでは手応えがまるでない。もう少し強くならなければ意味がないのだ。」

「それでは、クロスに対してどのような対応を・・・!?

「別名あるまで監視を続けろ。ヤツが邪魔をしてきたときだけ迎撃態勢を取れ。」

 動揺の広がる戦闘員たちに、アポロガイストが指示を出す。彼はそのまま戦闘員たちの前方立ち去っていった。

「アポロガイスト様の悪い癖がまた・・」

「張り合いのない敵だと、わざと見逃して張り合いの出るようにする・・あの方らしいといえばそれまでだが・・」

 戦闘員たちがアポロガイストのやり方に悩まされる。

「仕方がない。我らは我らの使命を果たすまで。アポロガイスト様のご命令に従うのみだ。」

 戦闘員たちはアポロガイストの命令に従い、暗躍を続けながらライの監視を続けた。

 

 アポロガイストに敗北しながらも、橘モーターショップに戻ってきたライ。疲れを浮かべていた彼に、ひろしが近づいてきた。

「ライ、大丈夫か!?・・何があったんだ・・!?

「おやっさん・・はい・・強い敵が出てきて、クロスの力が通じなくて・・・!」

 ひろしの心配の声に、ライが今回のことを話した。

「そんな手ごわいヤツが出てきたのか・・・!?

「はい・・だからオレ、もっと強くならないと・・アイツがまた出てきたら、今度はやられてしまうかもしれない・・・!」

 驚きの声を上げるひろしと話して、ライがアポロガイストのことを思い出していら立ちを噛みしめる。

「だからオレ、他の仮面ライダーを捜してみることにします。そうすれば、強くなることができるかもしれないので・・」

 ライが自分の考えをひろしに伝える。

「そのライダーのことを、かなたに聞こうと思って・・」

 ライはそう言うと、かなたのところへ向かった。

「ライ・・前にも言ったけど、ムチャはするなよ・・・」

 ひろしはライを見送りながら、心配を口にしていた。

 

 かなたに仮面ライダーのことを詳しく聞こうとしたライ。ライから聞かれて、かなたは仮面ライダーのことを検索してみた。

「今のところは仮面ライダーに関するニュースは、クロスっていうライダーだけだね・・」

「そうか・・すまない、かなた・・」

 かなたからの報告を聞いて、ライが謝意を示した。

「気にしなくていいって。今は仮面ライダーたちと気軽に会えるようになったけど、そううまくいかないっていうのが現実だからね。以前だったら会える可能性が全然少なかったんだから。」

「あぁ・・そうだな・・」

 苦笑いを見せて励ますかなたに、ライも微笑んで答えた。

(オレがクロスに、仮面ライダーになることもなかった・・それを喜ぶべきか、イヤだと思うべきか・・・)

 クロスになったことに対して複雑な気持ちになっていたライ。そんな中で強くなろうと、彼は気を落ち着けようとしていた。

 

 

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