仮面ライダークロス
第6話「百発百中!クロスソードガン」
ビルドに続いてエグゼイドのライダーソウルも手にしたライ。なぜ他の仮面ライダーの力が自分に分け与えられたのか、彼は考えていた。
(ライダーソウルがまた増えた・・もしかして、ライダーソウルは仮面ライダーの人数分あるのか・・?)
ライダーソウルとは何か、ライダーソウルを集めると何が起こるのか。謎が謎を呼ぶことになって、ライは苦悩を深めていた。
(考えて答えが出てこないことを考えてもしょうがない・・そのうち答えが出てくるだろう・・)
深く考えるのをやめて、ライはライダーソウルをしまって部屋を出た。
かなたの部屋に目を向けたライ。部屋ではかなたがパソコンで検索していた。
「何やってるんだ、かなた?・・といっても、仮面ライダーについてだろうけど・・」
ライがかなたに声を掛けて、小さくため息をつく。
「今は怪人について調べてるんだよ。仮面ライダーが今までたくさん出てきてるってことは、怪人もたっくさん出てきたってわけだから。」
かなたがパソコンの画面に目を向けたまま、ライに答える。彼は今、これまで仮面ライダーと戦ってきた怪人たちのことを調べていた。
「ホントにいろんな怪人が出てきたな。それをまとめてる組織も・・」
ライが呟きかけて、表情を曇らせる。彼がハイパーショッカーのことを考える。
(ハイパーショッカーは、これまで仮面ライダーのみんなが戦ってきた怪人たちの集まり・・かなたはオレ以上に、仮面ライダーや怪人とかの知識が豊富だ・・)
ライは考えを巡らせながら、かなたに視線を戻す。
(あんまり巻き込めないけど、かなたを頼りにしないといけなくなるかも・・TVの中だけのはずの仮面ライダーや怪人が現実に出てきていることは、かなたも分かってるはずだし・・)
かなたに対して迷いを感じていくライ。どうするのが正しいことなのか、彼はハッキリできないでいた。
「あっ!ライ、大変だよ!また怪人が出た!」
そのとき、かなたがネットのニュースで怪人が現れた速報を知って声を上げた。
(またハイパーショッカーの怪人が出てきたのか・・!)
緊張を覚えるライが部屋を飛び出した。
「ライ!?」
外へ出ていったライに、かなたが動揺を見せた。
街中では爆発が起こっていた。街にいた人々が爆発から逃げ出していく。
炎が舞い上がる街の中心に、1体の怪人がいた。カメの姿の怪人で、甲羅からバズーカが出ていた。
「吹っ飛ぶズーカ、燃えるズーカ!このカメバズーカが地獄に送ってやるズーカ!」
怪人、カメバズーカが言い放って、甲羅のバズーカを発射していく。街中で爆発と炎が広がっていく。
その街の通りを駆け抜けて、ライがカメバズーカの前に現れた。
「十時ライ、わざわざ出てくるとは好都合ズーカ!」
カメバズーカがライを見て笑みをこぼす。
「オレの近くで暴れ放題に・・腹が立ってくるぜ!」
ライが不満を口にして、クロスドライバーとクロスソウルを手にした。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーに装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
「全ては、オレが正す!」
ライが言い放って、カメバズーカに向かっていく。
「クロス、お前も吹っ飛ばしてやるズーカ!」
カメバズーカがライに向かって、甲羅のバズーカを発射してきた。ライは横に飛んで、砲撃をかわした。
「そんな大きな攻撃をしてくるなら、スピードで勝負すれば・・!」
ライが思い立って、カメバズーカとの距離を詰めようとする。
「甘いズーカ!」
カメバズーカが甲羅のバズーカを再び発射した。
「うあっ!」
ライが砲撃を受けて、クロスの装甲から火花が散った。倒れた彼がカメバズーカに視線を戻す。
カメバズーカがバズーカを連射してくる。ライがとっさに動くが、かわし切れずに砲撃を当てられた。
「は、速い・・なぜあんなに速く撃てるんだ・・・!?」
カメバズーカの連射にライは驚きを隠せなくなる。
「オレは速く撃てるように訓練したズーカ!大振りだと見くびったお前の負けだ、クロス!」
カメバズーカが笑みをこぼして、ライにバズーカの銃口を向ける。
「スピードが足りないなら、上げるしかない!」
ライが言い放って、クロスレイダーソウルを手にした。
“クロスレイダー!”
ライの隣に光のトンネルが現れて、クロスレイダーが出てきた。ライがクロスレイダーに乗って、カメバズーカに向かって走り出す。
カメバズーカがバズーカを発射して、ライとクロスレイダーが砲撃と爆発をかわしていく。クロスレイダーがカメバズーカに近づいたところで、前輪を上げてジャンプした。
「ズーカ!」
カメバズーカがバズーカを撃って、ライに命中させた。
「うわっ!」
ライがクロスレイダーから引き離されて、カメバズーカから遠ざけられる。
「くっ・・これでもダメなのか・・・!?」
「ハッハッハッハ!これで終わりズーカ!命が惜しかったらハイパーショッカーに従うズーカ!」
うめくライをカメバズーカがあざ笑う。
そのとき、ライとカメバズーカの間で爆発が起こった。カメバズーカが砲撃をしたのではない。
さらにもう1体、カメの姿をした怪人、ゴ・ガメゴ・レが現れた。
「また怪人が出てきたのか・・しかも今度はグロンギか・・!」
「グロンギ族」の怪人、ガメゴを見てライが毒づく。ガメゴが鎖鉄球を手にして、ライに向かって投げつける。
ライがとっさに動いて鉄球をかわす。
「スピードはないが、当たったら致命傷になる・・!」
ライがガメゴを警戒して身構える。
「どっちにしても、あのバズーカじゃ近づけないし、あの鉄球相手じゃ近づいたら危ない・・!」
カメバズーカとガメゴの武器に対抗する方法が見つからず、ライが焦りをふくらませていく。
「せめて遠くから攻撃できるものがあれば・・ビームとか銃とか・・・!」
打開の糸口を必死に探るライ。その彼のそばにクロスレイダーが近寄ってきた。
「クロスレイダー・・!」
ライが振り向く、クロスレイダーから1つのアイテムが出てきた。
「あれは、ライダーソウル!」
ライがそのソウル「ソードガンソウル」を手にして、戸惑いを覚える。
「コイツを使うしかない・・オレの力になってくれ・・・!」
“ソードガン!”
ライは思いを込めて、ソードガンソウルのスイッチを入れた。ソードガンソウルが形を変えて、別のアイテムに変わった。
「これは、剣!?・・ここの部分、ソウルを入れられそうだけど・・・!」
ライがそのアイテム「クロスソードガン」を見て呟く。その最中、彼が見回すクロスソードガンの刀身が左に傾いた。
“ガンモード!”
「えっ!?」
音声を発したクロスソードガンに、ライが驚きの声を上げる。
「コイツは剣だったけど、銃にもなる・・これとライダーソウルをうまく使えば、アイツらを倒せるかもしれない・・!」
ライがクロスソードガンを見つめて、勝機を見出した。
クロスソードガンは最初は剣型の「ソードモード」だが、銃型の「ガンモード」に変えることができる。
「これで遠くからでも攻撃ができる!」
「フン!そんなもので、このカメバズーカのバズーカに勝てると思ったら大間違いズーカ!」
言い放つライをカメバズーカがあざ笑う。
「今度こそこのバズーカで木端微塵にしてくれるズーカ!」
カメバズーカがライを狙ってバズーカを構える。その瞬間、ライがクロスソードガンの引き金を引いて、ビームを発射する。
「ぐおっ!」
カメバズーカがバズーカを射撃されて、怯んでうめく。
「速い・・アイツのバズーカ攻撃より速く攻撃できる・・!」
ライが勝機を見出して、再びクロスソードガンを構える。
「そ、そんな攻撃、お前ごとバズーカで吹っ飛ばしてやるズーカ!」
カメバズーカが動揺しながら、バズーカを発射してきた。ライが横に動いて砲撃をかわして、クロスソードガンを撃とうとするが、引き金を引いたままのクロスソードガンから、ビームが放たれない。
ライが引き金を戻した瞬間、クロスソードガンから通常よりも強力なビームが放たれた。
「ぐおっ!」
ビームがバズーカの砲門に命中して、カメバズーカがダメージを負ってしりもちをついた。
「これ、長押しすると溜め撃ちができるのか・・!」
ライがクロスソードガンを見つめて、戸惑いをふくらませていく。
「今度はライダーソウルを入れてみよう・・!」
ライはクロスドライバーにセットされているクロスソウルを外して、クロスソードガンの中心部に移した。
“ライダーシュート・クロース!”
クロスソードガンから音声が出て、先端にエネルギーが集まっていく。ライがクロスソードガンを構えたとき、その光が「X」の形になる。
「クロスライダーシュート!」
ライがクロスソードガンの引き金を引いた。クロスソードガンからX字の光が矢のように放たれて、カメバズーカの体を貫いた。
「ギャー!ズーカー!」
カメバズーカが絶叫を上げて、倒れて爆発した。
「よし!アイツを倒したぞ!残るは・・!」
ライが頷いて、ガメゴに視線を移す。ライがクロスソウルをクロスドライバーに戻してから、クロスソードガンを発射する。
しかしビームを体に受けても、ガメゴはビクともしない。
「効かない!?なんて硬い体だ・・!」
ガメゴの耐久力の高さに、ライが驚きを覚える。ガメゴが彼に向かって鉄球を投げつけてきた。
「うわっ!」
ライが鉄球をよけようとして、バランスを崩して倒れそうになる。
“ソードモード!”
そのはずみで、ライはクロスソードガンの形を元に戻して、ソードモードにした。その直後にクロスソードガンの刀身に、鉄球が当たった。
クロスソードガンは傷つくことなく、鉄球が跳ね返されてガメゴ自身に命中した。ガメゴは一瞬ふらつくが、すぐに踏みとどまる。
「こ、この武器・・剣にしたときはすごく頑丈だ・・!」
ライがソードモードのクロスソードガンを見て、戸惑いをふくらませていく。
「これならアイツにダメージを与えられる・・!」
自信を覚えるライが、ガメゴに向かっていってクロスソードガンを振りかざす。ガメゴが体を切りつけられて、ダメージを負ってふらつく。
ガメゴが反撃に出て、ライに向けて鉄球を投げつける。ライがクロスソードガンを振りかざして、鉄球をはじき返した。
「これであの鉄球には負けなくなったけど、もっと力が出せたら・・・よし!」
思考を巡らせて思い立ったライが、再びクロスソードガンにクロスソウルをセットした。
“ライダーブレイク・クロース!”
クロスソードガンの刀身にエネルギーが集まっていく。ガメゴがライに向かってまた鉄球を投げつける。
「クロスライダーブレイカー!」
ライがクロスソードガンを振り下ろす。彼の一閃が、鉄球を真っ二つに切り裂いて粉砕した。
鉄球を破壊されて、ガメゴが動揺して後ずさりする。
「このまま一気に決めてやる・・クロスでもいけるなら、他のライダーソウルでも・・!」
畳み掛けようとするライが、今度はビルドソウルをクロスソードガンにセットした。
“ライダーブレイク・ビルドー!”
クロスソードガンの刀身から、ドリルの形の光の刃が現れた。刃が回転するクロスソードガンを構えて、ライがガメゴに向かっていく。
「クロスボルテックブレイク!」
ライが振りかざしたクロスソードガンが、ガメゴの硬い体を切り裂いた。ガメゴが絶叫を上げて、倒れて爆発を起こした。
「やった・・この怪人たちを倒したぞ・・・!」
カメバズーカとガメゴを倒して、ライが安心の吐息をつく。
“変身カイジョー。”
ライがクロスドライバーを外して、クロスへの変身を解除した。
「それにしてもすごい武器だ・・ライダーソウルと組み合わせて、さらに強力になった・・・!」
ライがクロスソードガンを見つめて、戸惑いをふくらませていく。クロスソードガンがなければ勝てなかったと、ライは確信していた。
(オレは戦う・・仮面ライダーの力を、正しく使ってみせる・・そして、オレたちをムチャクチャにしようとするハイパーショッカーを追い払ってみせる・・・!)
改めて戦いの決意を固めたライ。自分たちの安息のため、仮面ライダーの正しい姿のため、ライは戦いに赴くことを心に決めていた。
橘モーターショップに戻ってきたライ。彼はひろしとかなたの無事を見て、安心を覚える。
「ライ、戻ってきたんだね!・・怪人を見に行って、巻き込まれたんじゃないかって・・・!」
「あぁ・・何とか無事に戻ってこれた・・」
かなたが心配して近寄ってきて、ライが微笑んで答えた。
「かなた、オレよりお前のほうがライダーや怪人の知識が豊富だ。そこは頼りにしていいか・・?」
「ライ・・うんっ♪僕、バッチリ教えちゃうよ♪」
ライが言った頼みに、あなたが目を輝かせて大きく頷いた。
(2人とも、もっと仲良しになったみたいだ。もっとも、ライがクロスだってことは、かなたはまだ知らないみたいだけど・・)
ライとかなたの様子を見て、ひろしは安らぎを感じていた。
ライの変身するクロスへの警戒と対策を、ハイパーショッカーは強めていた。他の仮面ライダーの力も使えることも、ハイパーショッカーはつかんでいた。
「クロスか。我々はまたも、自分たちの新たな戦力に離反される失態を犯すことになろうとは・・」
ハイパーショッカーの作戦室の1つに、1人の男が訪れた。
「ア、アポロガイスト様!」
戦闘員と研究員たちが男、アポロガイストに敬礼する。彼らはアポロガイストを前にして、緊張を隠せなくなっていた。
「だが私がいる限り、そのような失敗は2度と起こさせん。起こす者は私が処刑する。」
アポロガイストが呼びかけて、戦闘員たちが敬礼する。
「十時ライ、クロスのデータを洗い直せ。そのデータを確かめて、私がヤツに鉄槌を下す。」
「了解しました!直ちにデータを整理します!」
アポロガイストの言葉を受けて、研究員たちが作業を始める。彼らはコンピューターを操作して、クロスの戦闘データを分析していく。
「十時ライの動向を探れ。もちろん他のライダーの動きにも目を離すな。」
「はっ!」
アポロガイストがさらに指示を出して、戦闘員たちが答えて動き出した。
「クロスはこの私、アポロガイストが引導を渡してやるぞ。」
クロス打倒のため、アポロガイストが戦線に赴こうとしていた。