仮面ライダークロス

第4話「覚醒・ライダーソウル」

 

 

 突如現れたストロングスマッシュに立ち向かうライ。しかしクロスとなった彼のキックは、ストロングスマッシュに跳ね返されてしまった。

 ストロングスマッシュが両腕を振り上げて、ライに攻撃を仕掛けようとした。

 そこへスクエアスマッシュが飛び込んできて、ストロングスマッシュがぶつかって横に飛ばされる。

「コイツは、ビルドたちが戦っていたスマッシュ・・!」

 ライがスクエアスマッシュを見て声を上げる。戦兎と龍我もスクエアスマッシュを追って駆けつけてきた。

「大丈夫か、ライ!?

「あ、あぁ・・助かったよ・・!」

 龍我が声を掛けて、ライが小さく頷いた。

「まだスマッシュがいたとは・・ならまとめて止めるだけだ・・!」

 戦兎が言いかけて、2人のスマッシュに目を向ける。スクエアスマッシュとストロングスマッシュが立ち上がって、戦兎たちに対して構える。

「アイツらは手ごわい・・だけど、お前たちに任せ切りにして、指をくわえて見てるだけってわけにはいかない・・!」

 ライが気を引き締めて、自分の意思を戦兎たちに向けて告げてきた。

「何のために戦うのか、決まったのか・・・!?

 龍我がライに向けて問いを投げかける。

「何が正しくて、何が正義なのか、オレもハッキリとは言えない・・だけど、間違っていることを正しいことにされるのは我慢ならないし、オレたちの世界をムチャクチャにされるのもイヤだ・・!」

 ライが自分の正直な気持ちを口にしていく。

「見返りを求めるのは正義の味方のすることじゃないって言ったな?・・オレは誰にも認められないとやる気がなくなるし、それが正義の味方じゃないっていうなら、オレはそれで全然構わない・・・!」

「ハァ・・ホントに最悪だ・・神経質な上に、ものすごく強情だ・・」

 自分の意思を貫こうとするライに、戦兎が大きく肩を落とす。

「オレはオレとオレの信じるもののために戦う・・それを踏みにじったりねじ曲げたりしようとするヤツがいたら、誰だろうと許さない・・!」

 自分の揺るぎない意思を口にしたライ。

 そのとき、戦兎の身に着けているビルドドライバーから光があふれ出した。飛び出した光がライの手元に向かう。

「この光は・・・!?

 ライが目の前に来た光をつかんだ。すると光は1つのアイテムに変わった。

「これは、ライダーソウル!?・・しかもこの色と顔は、ビルド・・!?

「何だって!?

 ライがライダーソウル「ビルドソウル」を見て、龍我が驚きを見せる。

「確かにビルドだ・・しかもその形、お前が使っているものと同じだ・・」

 戦兎もビルドソウルを見て言いかける。

「お前のベルトでそれが使える可能性が高い・・!」

 戦兎の言葉を聞いて、ライが頷いた。

“ビルド!”

 ライがビルドソウルのスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼がクロスドライバーの中心にセットされているクロスソウルを、ビルドソウルと入れ替える。

「変身!」

 ライがクロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!ビルドー!”

 クロスのスーツの色と模様に変化が起こった。青と赤の2色に分かれて、マスクの形も変わった。

 その姿と形状はビルドそっくりだった。

「ビルドだ・・コイツ、ビルドに変身したぞ!」

 龍我がライの姿を見て、驚きの声を上げる。

「お前もビルドになったか。オレたちのことを見ていたなら、ビルドの戦い方も分かっているな?」

「もちろんだ・・だけどベルトはクロスのもののままで、ビルドとは違う・・使い方もビルドじゃなく、クロスのときと同じはずだ・・!」

 戦兎が問いを投げかけて、ライが今の自分の力の使い方を推測する。

 ストロングスマッシュがライたちに向かって突っ込んできた。ライ、戦兎、龍我がジャンプして、ストロングスマッシュの突進をかわした。

「ラビットタンクに負けないジャンプ力だが、オレよりは低い・・オリジナルと比べたら能力が低いということかもしれない・・」

 戦兎がライの変身した姿「ビルドフォーム」について分析する。

「他のライダーの能力は適材適所で使い分けられるが、単純な戦い方なら通常のクロスのほうが有効ということか・・」

 ライ、龍我とともに着地した戦兎がさらに呟く。

「よし!勝利の法則は、決まった!」

 戦兎が勝機を見出して、ポーズを決めた。スクエアスマッシュが彼らに飛びかかるが、龍我が迎え撃つ。

「コイツはオレが倒す!お前らはもう1人をやれ!」

 龍我が呼びかけて、スクエアスマッシュをライたちから引き離す。

「一緒にやるよ!それならアイツのパワーを押し返せる!」

「戦兎・・分かった!行くぞ!」

 戦兎が呼びかけて、ライが答える。

Ready go!

 戦兎がビルドドライバーのレバーを回す。ライがクロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転させる。

“ライダースマッシュ・ビルドー!”

“ボルテックフィニッシュ!”

 ライと戦兎の前に、グラフの形をした滑走路が現れる。ジャンプした2人がグラフの上を沿うように飛び込んで、キックを繰り出した。

 ライと戦兎のキックが、ストロングスマッシュの体に命中した。突き飛ばされたストロングスマッシュが、爆発を起こして消滅した。

 一方、龍我はパンチの連続でスクエアスマッシュを攻め立てていた。

「これで終わりだ!」

 龍我が言い放って、スクラッシュドライバーのレンチを押し下げた。

“ドラゴンチャージクラッシュ!”

 龍我がジャンプして、足にエネルギーを集めたキックをスクエアスマッシュに当てた。スクエアスマッシュが空中に跳ね上げられて、爆発を起こした。

「よっしゃ!オレたちの勝ちだ!」

 龍我が勝利を喜んで、ライと戦兎に振り返る。

“変身カイジョー。”

 ライがビルドソウルをクロスドライバーから外して、変身を解除した。戦兎と龍我もビルド、クローズへの変身を解いた。

「クロスだけじゃなく、ビルドにも変身できた・・このライダーソウルは・・」

 ライがクロスソウルとビルドソウルを見つめて、戸惑いを感じていく。

「ライダーソウルか・・仮面ライダーの姿と力が宿っていて、これをお前のベルトで使うことで変身ができる。でもクロス以外のライダーの能力を100%出せるわけじゃない。」

 戦兎がビルドソウルを見て、ライに説明する。

「ビルドとしての能力。オレが100%だとしたら、お前が変身するビルドは100%まで能力を出せない、ということだ。」

「つまり、ビルドの力に頼りすぎるのは危険ということか・・」

 戦兎からの説明を聞いて、ライがライダーソウルの使い方について考える。

「もしかしたら他の仮面ライダーのソウルも出てくるかもしれない。そうなったら他のソウルにも同じことが言える可能性が高い・・」

「分かった・・このことは肝に銘じておく・・」

 戦兎の話を聞き入れて、ライが頷いた。

「オレはこれから正していく・・仮面ライダーの在り方を・・夢や正義をねじ曲げようとする行為を、オレは否定する・・・!」

 ライが自分の意思を告げる。彼はクロスとして戦う決意を改めて固めていた。

「オレたちの話も否定するってか・・」

 戦兎が不満を口にすると、ライも目つきを鋭くした。

「間違っていることを正しいことにするなんてできない・・どんな理由でも、認めてしまったらオレ自身を否定することになる・・」

「ホントに強情だな・・もう手に負えない・・」

 自分の正直な思いを口にするライに、戦兎は肩を落とす。

「オレはみんなを守る。この科学とビルドの力で・・」

「オレも戦う・・ハイパーショッカーから、オレたちの居場所を守るために・・・!」

 戦兎とライが互いに自分の意思を口にする。互いに考えを認めず受け入れていなかったが、強さは認めていた。

「ラーイ!戦兎さーん!万丈さーん!」

 そこへかなたがまりとともにやってきて、ライたちに声を掛けてきた。ライがとっさにクロスドライバーとライダーソウルを隠した。

「戦兎さんたちが、スマッシュをやっつけたんですねー♪ありがとうございまーす♪」

 かなたが戦兎と龍我に深々と頭を下げた。

「コイツは明るく元気なヤツみたいだな・・」

「あぁ。悪いヤツじゃないな。彼もライも・・」

 龍我がかなたたちを見て言いかけて、戦兎が答える。

(アイツは悪いヤツじゃない。純粋に仮面ライダーが好きなんだ。しかしその気持ちが強すぎて、感情的になっているんだ・・)

 ライの性格を理解して、複雑な気分を感じていく戦兎。ライと正しい道へ進ませようと考える戦兎だが、ライの頑なな意思の前では成功しないと痛感していた。

「オレたちはそろそろ行く。もしもまた会うときがあったら、また一緒に戦おう。」

 戦兎がライに言いかけて、左手を差し伸べてきた。

「あぁ。アンタたちの強さは、オレも認めてるからな・・」

 ライが頷いて、左手で戦兎の左手を握って握手をかわした。手を放すと、戦兎は右手を振ってポーズを取った。

 

 戦兎、龍我と別れて、ライ、かなた、まりは橘モーターショップに戻ってきた。

「ライ、かなた、まりちゃん、無事だったか・・!」

 ひろしがライたちを迎えて、安心を浮かべる。

「この近くで怪物が現れたって聞いて、ライたちも巻き込まれたんじゃないかって・・!」

「現れましたよ、その怪物、スマッシュが・・でも、ビルドたちがやっつけてくれました♪」

 ひろしが心配を口にして、かなたが笑顔で事情を話す。

「そうか・・とにかく、みんな無事でよかった・・」

 ひろしが微笑んで頷いて、かなたとまりを店の中に招き入れた。

「ライ、ちょっといいか・・」

「おやっさん・・・」

 ひろしが真剣な顔で呼びかけて、ライが頷いた。

 

 ライとひろしはかなたとまりから離れて、2人だけの話をすることになった。

「本当にビルドっていうヤツと会ったのか・・?」

「はい。ビルド、戦兎も万丈も本物で、スマッシュっていう怪人と戦っていたんです・・」

 ひろしが問いかけて、ライが戦兎たちのことを説明した。

「オレも一緒に戦って・・そしたらこれが出てきたんです・・」

 ライがビルドソウルを取り出して、ひろしに見せた。

「ビルドのライダーソウル。これをクロスのベルトに使うと、ビルドと同じ姿になれるんです。能力も技もビルドの使うヤツと効果は同じみたいです。」

「それじゃライ、お前はクロスだけじゃなく、ビルドにもなれるってことなのか・・!?

「本物のビルドよりは力は低いですけど・・」

 驚きを見せるひろしに、ライが頷いた。

「それでライ、お前はこのまま戦い続けるのか?ハイパーショッカーっていうのと・・」

「向こうがこっちに何か仕掛けてくるなら・・・!」

 ひろしの問いかけに答えて、ライが自分の意思を告げる。

「平和とか正義とか自由とか、よくは分からない・・それでもオレは戦う・・おやっさん、かなたとまりちゃん、オレの視界に入るいい人ぐらいは守れるようにする・・・!」

「ライ・・気持ちは分かるが、ムチャはしすぎないようにな・・たまには誰かに頼るのも大事だぞ・・」

 自分の戦う理由を見出そうとするライに、ひろしが励ましを送る。ライが微笑んで小さく頷いた。

 そのとき、ライが足音を耳にして緊張を覚える。機械的な足音に聞こえた。

「おやっさん、離れていてくれ・・」

「ライ・・・!」

 ライが呼びかけて、ひろしが戸惑いを浮かべて店の奥に入る。

(普通の人間じゃない可能性が高い・・また、怪人が・・!)

 誰かが近づいてきているのを感じて、ライが橘モーターショップから離れる。人気のない通りに来たところで、彼が聞いていた足音が突然消えた。

(足音が消えた!?・・止まったのか・・!?

 ライが違和感を覚えて、感覚を研ぎ澄ませる。次の瞬間、彼は緊張を一気に高めた。

(違う・・上だ!)

 目を見開いたライが空に振り向く。上空では1体の怪人、フライングスマッシュが両腕から生えている翼をはばたかせていた。

「アイツもスマッシュか・・まだいたとは・・!」

 ライが声を上げて、クロスドライバーとビルドソウルを手にした。

“ビルド!”

“ライダーソウール!”

 彼が装着したクロスドライバーの中心にビルドソウルをセットした。

「変身!」

 ライがクロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!ビルドー!”

 ライの体を赤と青の装甲が包み込んだ。彼はクロス・ビルドフォームとなった。

「お前はビルド!?いや、そんなバカな!?

 フライングスマッシュがライを見て驚く。しかし彼はすぐに本物のビルドでないと気付く。

「何にしても仮面ライダーだってことに変わりはない・・ここで仕留めてやる!」

 フライングスマッシュがライに向かって急降下する。ライはジャンプして、フライングスマッシュの突撃をかわす。

「クロスと比べたらジャンプ力はある・・これをうまく使えば・・!」

 ライがビルドフォームの能力を改めて確かめる。

「このジャンプで、アイツを空から叩き落とす・・!」

 着地したライが、再び上昇したフライングスマッシュに目を向けた。フライングスマッシュがライに向かって加速する。

 ライが上にジャンプして、フライングスマッシュの突撃をかわした。彼が直後にクロスタイフーンを回転させた。

“ライダースマッシュ・ビルドー!”

 ライの前にグラフの形の滑走路が現れた。今度は折れ線ではなく斜めの直線のグラフである。

 ライが滑走路を滑るように飛び込んで、フライングスマッシュの左の翼にキックを当てた。

「うおっ!」

 フライングスマッシュがバランスを崩して、地上に落下する。

「これで空を飛びあがるのはままならないはずだ・・!」

 着地したライがフライングスマッシュに振り向いて言い放つ。

“クロス!”

 彼がクロスソウルを取り出してスイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 そしてクロスドライバーにセットされているビルドソウルを、クロスソウルと入れ替える。

「変身!」

 ライがクロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスの装甲が赤と青からメタリックに変わった。ライはビルドフォームからクロスフォームになった。

「世界の全てを、オレが正す!」

 ライが言い放って、フライングスマッシュに向かっていく。ライが繰り出すパンチの連続が、フライングスマッシュの体に次々に命中していく。

「ビルドソウルを使ったときと比べて、クロスは慣れている分、強くて動きやすい・・!」

 クロスフォームとビルドフォームの違いも確かめて、ライは納得する。彼が繰り出したキックが、フライングスマッシュを突き飛ばした。

「逃がしはしない・・ここでお前を倒す!」

 ライが言い放って、クロスタイフーンを回転させる。

“ライダースマッシュ・クロース!”

 ライのまとっているクロスの装甲から光があふれ出す。彼がジャンプして右足を前に出して、足裏にあるX字から光を放つ。

 光を受けたフライングスマッシュが動きを封じられる。ライが急降下して、フライングスマッシュの体に叩き込まれた。

 フライングスマッシュが上空に吹き飛ばされて、空中で爆発した。

「オレとオレの知り合いに、これ以上手出しはさせないぞ・・・!」

 ライが振り絞るように声を発して、決意と感情を噛みしめる。

“変身カイジョー。”

 彼はクロスドライバーを外して、クロスへの変身を解いた。

「ライ、大丈夫か・・!?

 ひろしが戻ってきて、ライに声を掛けてきた。

「おやっさん、オレは大丈夫です。ケガもないです。」

「そうか・・よかった・・」

 ライが答えて、ひろしが安心を浮かべた。

「戻ろうか。かなたたちが待ってるぞ。」

「はい・・」

 ひろしに促されて、ライが頷く。2人はかなたとまりの待つ橘モーターショップに戻った。

 

 現実の世界とそれぞれの仮面ライダーの世界が、次元を超えて1つとなった。

 歴代の仮面ライダーとの出会いを果たすクロスの戦い、ハイパーショッカーに立ち向かうライの戦いは、まだ始まったばかりである。

 

 

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