仮面ライダークロス
-Endless Rider’s history-
第6章
元の世界に戻ったライたちは、一真たちがシュウの襲撃を受けたことに気付いた。ライたちは蓮太郎たちを追って、街へ続く道を進んでいた。
「ライ、まりちゃんたちはどこに・・・!?」
かなたが声を掛けて、ライが集中力を高める。
「動いている・・ここから近いけど、足音が5人しかない・・・!」
「何っ!?まさか、誰かやられたのか・・!?」
ライの口にした言葉を聞いて、聖也が緊張をふくらませた。
そのとき、ライたちの前にダークローチの大群が姿を現した。
「ダークローチ!?」
「それじゃ、剣崎さんがラストにやられたんじゃ・・!?」
ライとかなたがダークローチたちを見て驚きをあらわにする。
「剣崎さんがいなくなって、世界の破滅・・ダークローチの大量発生が起こったんだ・・!」
「ラスト、こうなることも分からずに、剣崎さんまで・・・絶対に許せない・・!」
かなたが動揺を浮かべて、ライがシュウに対する怒りをたぎらせる。
「ダークローチの相手をしていても、私たちが不利になるのは確実だ!出し惜しみせずに強行突破する!」
“マッハ!”
聖也が呼びかけて、仮面ライダーマッハのライダーソウル「マッハソウル」を取り出した。
「ドライブのソウルはまだ使えたんだ・・!」
ライが言いかけて、かなたと頷き合う。
“ドライブ!”
“チェイサー!”
2人もライダーソウル「ドライブソウル」と「チェイサーソウル」を取り出した。
“ライダーソウール!”
“ライダーソウル。”
ライたちがそれぞれのライダーソウルを、クロスドライバー、クラールドライバー、ルシファードライバーにセットした。
「変身!」
“変身・ライダー!ドラーイブ!”
“変身・ライダー!マッハー!”
“ダークチェンジ・チェイサー。”
彼らがドライブ、マッハ、チェイサーの姿と力を宿した「ドライブフォーム」、「マッハフォーム」、「チェイサーフォーム」に変身した。
「一気にヤツらを振り切るぞ!」
「はい!」
聖也の呼び声にライとかなたが答える。3人は一気にスピードを上げて、大きくジャンプしてダークローチの大群を飛び越えた。
ライたちはスピードを緩めることなく走り続けて、追ってくるダークローチたちを振り切っていく。しかし新たに現れた別のダークローチたちに、すぐに行く手を阻まれた。
「足を止めるな!スピードを落とせばすぐに捕まる!」
聖也が叫んで、ライたちとともにさらに駆け抜けていく。次々にダークローチたちを振り切って、彼らは蓮太郎たちの姿を目撃した。
「見つけた!5人がいたよ!」
かなたが指さして叫ぶと、蓮太郎たちが彼の声を聴いて振り向いた。
「ライ、聖也、かなた!」
「3人とも戻ってきた!」
蓮太郎と主水がライたちを見て声を上げる。まりもライたちの無事を確かめて微笑んだ。
「お、おい、何だ、あのゴキブリの大群は!?」
ひろしがダークローチたちを見て驚く。
「みんな、今はここから離れて、どこかに隠れるんだ!」
ライが呼びかけて、蓮太郎たちと合流した。ライはまりを、かなたはひろしを抱えて聖也、蓮太郎たちとともに再び走り出した。
「ライくん、剣崎さんが1人でラストを止めに・・!」
「分かっている・・しかもラストに倒されて・・そのために、止められていた世界の破滅が再び起こった・・!」
まりが一真のことを話して、ライが悔しさを感じながら答える。
「そんな事態になっているということは、ラストもあの怪人たちに襲われていることになる・・」
レントが推測を巡らせて、ライが頷く。
「これでラストが倒れれば、仮面ライダーの全滅の危機は去る・・しかし・・・!」
「そのために他のみんなが犠牲になっていいことにならないよね・・!」
シュウを倒すことよりも世界を守らなければならないと、聖也もかなたも思っていた。
「どっちにしても、オレはラストのところに行く・・・!」
シュウに会いに行くことを決めていたライが、まりに目を向けた。
「危険な場所へ連れていくことになってしまう・・離れ離れになっていても、あの怪人たちに襲われることになる・・・!」
ライがまりに向かって注意を投げかける。
「分かっている・・・ゴメン・・ライくんたちに負担をかけてしまって・・・」
「この戦いにまりちゃんとおやっさんまで巻き込んでしまったのはオレだ・・謝らなくちゃならないのは、オレのほうだ・・・!」
互いに謝って、気持ちを伝え合うまりとライ。
「オレたちが活路を開く!ライ、かなた、聖也さん、3人はオレたちに構わずに行け!」
「お前たちのやるべきことは、ラストを倒すことと、まりさんとひろしさん、そしてこの世界を守ることだ。」
主水とレントがライたちに檄を飛ばした。
「ありがとう、レント、蓮太郎、主水・・この戦い、すぐに決着を付ける・・!」
ライがレントたちに感謝して、シュウを捜して感覚を研ぎ澄ませた。彼の耳に戦闘の音が入ってくる。
「いた!・・ラストもダークローチと戦っている・・!」
ライがシュウの位置を捉えて、その方向に振り向いた。
「まりちゃん、スピードを上げるから、しっかりつかまっていて・・・!」
「うん・・・!」
ライに呼びかけられて、まりが彼にしがみついた。
「変身!」
“誰じゃ・俺じゃ・忍者!シノービ・見参!”
“ファッション・パッション・クエスチョン!クイズ!”
“デカイ・ハカイ・ゴーカイ!仮面ライダー・キカイ!”
蓮太郎、主水、レントもシノビ、クイズ、キカイに変身した。
「よーし!ひとっ走りするぞー!」
かなたが掛け声を上げて、ひろしを抱えてライたちとともに走り出した。
ダークローチの大群は、シュウにも襲い掛かっていた。シュウはラストのリミッターのレベルを2にして、ダークローチたちと戦っていた。
「ブレイドを倒したことで、この事態が起こっているのか。ならばその根源を断つまで。」
シュウは平静を保って、ラストセイバーをセットしたラストシューターを構えて、閃光を放った。彼の眼前にいたダークローチたちが一掃される。
「怪人にもライダーにも、私の邪魔をすることはできない。」
シュウは呟いて、追ってきたダークローチたちを迎撃しながら前進する。彼が次の標的にしていたのは、世界の破滅の根源となっている始だった。
「アンデッド最後の勝利者であろうと、仮面ライダーであることに変わりはない。ヤツを消せば、世界の破滅も止まることになる。」
仮面ライダー打倒の意思に突き動かされて、シュウは歩き続ける。さらにダークローチたちが押し寄せてくるが、シュウの使うラストセイバー、ラストシューターで倒されていく。
「お前たちも全て排除する。お前たちも、この世界を脅かす存在なのだから。」
倒しても数を増やしていくダークローチに対して、シュウは全く動じていなかった。
ダークローチたちに追われながら走り続けて、ライたちはシュウを発見した。
「いた!ラストがダークローチと戦ってる!」
かなたが声を上げて、ライたちとともに足を止めた。
「ラスト・・オレはお前を許さない・・いくら犠牲者だと言っても、仮面ライダーや関係ない人たちを消そうとするなんて・・・!」
ライがまりを下ろして、シュウに向かって怒りを口にする。
「クロス、お前たちも戻ってきたようだな。お前たちは特に排除する必要がある。」
シュウがライたちに目を向けて、ダークローチたちを攻撃しながら言いかける。
「様々な世界の仮面ライダーを束ねたクロスの力・・仮面ライダーたちが終結したことで、私の世界は消滅した。」
「それは違う!ラスト、お前の世界を消したのは、仮面ライダーたちじゃない!ライダーへの怒りを力に変えたお前自身だ!」
敵意を向けるシュウに、ライが彼の世界で知った真実を告げた。
「お前はラストの力を手にして、仮面ライダーへの憎しみを増して、その力を暴走させた・・その力が空間を歪ませて、世界の破滅を引き起こしたんだ・・・!」
「世迷言を口にするか。自らの過ちを棚に上げて、私に世界の破壊の罪の濡れ衣を着せようとするとは・・」
説明をするライだが、シュウは聞き入れようとしない。
「私のいた世界は、お前たち仮面ライダーの力の集中によって滅びた。同じ悲劇を、他の世界で起こさせるわけにはいかない。」
「とぼけるな!お前、自分が自分の世界で何をしたのか、知らないとは言わせないぞ!」
「知らないととぼけているのはお前たちだ。お前たちが世界を滅ぼしたことは、紛れもない事実。」
「お前・・自分の間違いを認めないのか!?事実を勝手に変えるな!」
世界を滅ぼしたのが自分ではなく他の仮面ライダーであると言うシュウに、ライが怒りをふくらませていく。
「まさか、世界を滅ぼしたときの記憶を失っているというのか・・!?」
聖也がシュウのことを考えて息をのむ。
「自分が世界を滅ぼしたことを全然覚えてなくて、しかも仮面ライダーの仕業だって思い込んでいるっていうんですか・・・!?」
「そのようだ・・これでは自分の過ちを悔いることもできない・・・!」
かなたが驚きの声を上げて、聖也が深刻さをふくらませていく。
「だったら思い出させるしかない・・自分がとんでもないマネをしたことを・・・!」
“カメン!”
ライが怒りをふくらませて、カメンソウルを取り出した。
“ライダーソウール!”
彼がカメンソウルをクロスドライバーにセットして、クロスタイフーンを回転させた。
“超変身・カメーン!”
ライがカメンフォームに変身して、続けてオールソウルを取り出した。
“オール!”
彼がクロスカリバーを引き抜いて、スイッチを入れたオールソウルを左のスロットにセットした。
“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”
ライがオールフォームとなって、シュウに向かって歩き出す。迫ってくるダークローチを、ライはクロスカリバーで切りつけていく。
「自分は悪くない・・悪いのは仮面ライダー・・そう言い張るなら、オレはもう、説得しようとは思わない・・・!」
ライがシュウの眼前まで来て、鋭く言いかける。
「オレがお前を倒す・・もうそれだけだ・・!」
ライがシュウ目がけてクロスカリバーを振りかざす。シュウがジャンプしてクロスカリバーをかわして、ライを飛び越えた。
「仮面ライダーを倒すことが、私の唯一の目的だ。」
シュウが呟いて、ラストセイバーを構えてライに近づく。
ライとシュウが振りかざすクロスカリバーとラストセイバーが、激しくぶつかり合う。その衝撃の1つ1つで、そばにいたダークローチが吹き飛ばされていく。
「ものすごい力・・ライくんの怒りの力だ・・・!」
シュウと戦うライの姿を見て、聖也が息をのむ。
「なぜラストになったのか、どんな経緯で仮面ライダーを倒そうとしているのか・・ラストのことを理解した上で、ライくんは怒りを燃やしているんだ・・仮面ライダーの魂と、世界に生きるみんなの思いを踏みにじるラストが許せなくて・・・!」
「心から許せないものに対して、徹底的に逆らう・・それがライなんだ・・たとえ仮面ライダーにならなかったとしても、その気持ちは変わらない・・・!」
聖也とかなたがライの心境を察する。
「そしてそういうものから大切な人、その人のいる場所を守るために、今は戦っている・・!」
「大切な人・・・」
「大切な場所・・・」
かなたが続けて言った言葉に、蓮太郎と主水が戸惑いを覚える。
「オレにも・・ヒューマノイズであるオレにも、大切なものがある・・それを守ることができる・・・」
レントも自分の体と思いを確かめる。
「オレたちも戦うぞ・・自分自身、そしてオレたちの大切なもののために!」
蓮太郎が言い放って、刀を手にしてダークローチたちに立ち向かう。
「ひろしさん、まりさん、オレたちから離れないでください!」
「僕たちが2人を守るよ!手出しはさせない!」
主水とかなたがまりたちに言って、2人を守ろうとする。
「オールフォームはライくんに負担を掛ける!援護しなければ!」
「オレも行く・・主水たちはここにいてくれ・・!」
聖也とレントがライに加勢しに向かう。
“ヴァイス!”
聖也がヴァイスソウルを取り出して、クラールドライバーにセットした。
“大革命・ヴァーイス!”
ヴァイスクラールに変身して、ヴァイスブレイカーを手にする聖也。激しい攻防を繰り広げるライとシュウの前に、彼とレントが足を止めた。
「使えるソウルは限られている・・その中で戦うしかない・・・!」
ライがライダーソウルを使おうと考える。彼が取り出したのは電王ソウルだった。
「この世界の電王はまだいるからなのか・・・!」
“電王!”
自分のいる世界の電王が無事だと確信して、ライが電王ソウルをクロスカリバーの右のスロットにセットした。
“クライマックス電王パワー!”
クロスカリバーの刀身に虹色の光が宿る。
“ラストフィニッシュ。”
シュウもラストシューターにラストセイバーをセットして、エネルギーを集める。
「電王・オールカリバー!」
ライが振りかざしたクロスカリバーから放たれた光の刃が、ラストシューターから放たれた光とぶつかり合う。
「私の力が押されている!?・・クロスの本当の力が、ここまでだとは・・・!」
ライのパワーに脅威を覚えるシュウ。
「リミッターを解除し、ラストの力を解放する・・・!」
彼がラストドライバーのリミッターのスイッチを切り替えた。
“ラストパワー・3。”
ラストの力がさらに1段階増して、ラストシューターからのビームの威力が増す。押されていたビームが、ライの光の刃を押し返していく。
「ラストのパワーが増した!・・押し切られてたまるか・・!」
ライが力を振り絞って、ラストの力を押し込もうとする。
「オールソウルのパワーを解放し続ければ、ライくんに負担がのしかかるぞ!」
聖也が危機感を覚えて、ライダーソウルを使おうとする。
「ダメだ・・使えるソウルの中で、パワー系のライダーのソウルがない・・!」
必要とするライダーソウルが使えなくて、聖也が苦悩する。
ヴァイスブレイカーは両端の刃と柄の間に、1つずつライダーソウルをセットするスロットがある。そこにライダーソウルをセットすることで、ヴァイスブレイカーはそのソウルの力を備えることができる。その効果はソウルによってパワー、スピード、テクニックに分かれる。
しかしヴァイスブレイカーのパワーを上げるライダーソウルを、聖也は今使うことができなかった。
「聖也さん、このライダーはパワータイプだよ!」
かなたが1つのライダーソウルを取り出して、聖也に呼びかけた。仮面ライダーオックスのライダーソウル「オックスソウル」である。
“オックス!”
かなたはスイッチを入れたオックスソウルを投げて、聖也が受け取った。
「しかし、1つだけでは・・!」
ライダーソウルを2つ使うことでヴァイスブレイカーの本領が発揮される。ソウルが1つ足らず、聖也が焦りをふくらませる。
そのとき、ライの持っていたライダーソウルの1つが、彼から離れて聖也の手元に来た。仮面ライダーBLACKのライダーソウル「ブラックソウル」である。
「仮面ライダー・・私たちに力を貸してくれている・・・!」
聖也が戸惑いを感じて、希望を見出した。
“ブラック!”
彼がブラックソウルのスイッチを入れて、オックスソウルとともにヴァイスブレイカーにセットした。
“パワーヴァーイス!”
ヴァイスブレイカーから赤い光があふれ出して、刀身の1つから巨大な光の刃が伸びた。
「パワーブレイカー!」
聖也がシュウ目がけてヴァイスブレイカーを振り下ろす。2つの刃をぶつけられて、シュウのビームがはじき飛ばされた。
「やった!ライと聖也さんのパワーが押し切った!」
蓮太郎がライと聖也のパワーに喜びの声を上げる。
「お前がたとえどれだけパワーを上げても、仮面ライダーのために、オレたちは負けるわけにいかないんだ!」
ライが思いを込めて、シュウに言い放つ。
「私は・・お前たち仮面ライダーを倒す・・・!」
シュウが声と力を振り絞って、敵意をむき出しにする。
「お前を倒して、お前が消した仮面ライダーのみんなを救い出す!」
ライが言い放って、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転を加えた。
“ライダースマッシュ・オール!”
全身から光を発した彼が大きくジャンプする。
「オールクロスキック!」
ライがシュウに向かってキックを繰り出す。
“ライダースマッシュ・ラスト。”
シュウも右手にエネルギーを集めて、パンチを繰り出す。2人の打撃がぶつかり合って、再び周囲がきらめいた。
「私は救う・・仮面ライダーを倒して、全ての世界を救うのだ・・・!」
ライダーへの憎悪をたぎらせるシュウ。彼の憎悪に呼応するように、最大レベルとなっていたはずのラストのパワーを、限界を超えて増大させていた。
「ラストの力が、ライの力をも上回ろうとしている・・!」
レントがシュウの力を察知して、危機感を覚える。
「もう1度ライくんに加勢して・・!」
聖也がライを援護しようとして、クラールドライバーの右のレバーを右手で上げて回転させた。
“ライダースマッシュ・ヴァーイス!”
聖也の両足にエネルギーが集まっていく。
「クラールヴァイスキック!」
聖也がジャンプして、シュウ目がけてキックを繰り出した。
「ライダー・・・仮面ライダー!」
怒りの叫びを上げたシュウが、左手のパンチも出して、ライと聖也のキックにぶつけた。シュウが強引に2人を押し込んでいく。
「おわっ!」
ライと聖也が突き飛ばされて、地面を転がる。
「これは・・・!?」
主水がシュウを見て脅威を覚える。
シュウのまとうラストの装甲と仮面が黒く染まり、複眼も濃い赤となっていた。彼の体から黒いオーラが霧のようにあふれ出している。
「ラストが、漆黒になった・・・!?」
「まがまがしいだけじゃない・・パワーも上がっているって、見かけだけでも分かるって感じだ・・・!」
ひろしと蓮太郎がシュウを見て息をのむ。
「私は仮面ライダーを滅ぼす・・世界を脅かす脅威は、全て私が排除する・・・!」
シュウが鋭く言って、握りしめた両手にオーラを集中させる。
「アイツ、ベルトとかを使わなくてもラストの力を自在に使えるっていうのか・・!?」
かなたが緊張をふくらませる中、シュウが左手を振りかぶった。パンチを出すようにして、彼の左手から黒い光の球が放たれた。
「うあっ!」
ライが光の球を受けて、大きく吹き飛ばされた。光の球の爆発で地面に叩きつけられた彼から、クロスへの変身が解かれた。
「ライくん!」
大きなダメージを負ったライに、聖也が叫ぶ。
「かなたくん、まりさんとひろしさんを守って!」
蓮太郎がかなたに呼びかけて、主水、レントとともにシュウに向かっていく。
「みんな!」
かなたが叫ぶ先で、蓮太郎が分身を伴ってシュウを取り囲む。3人の蓮太郎が同時に刀を振りかざすが、シュウに当たる前に刀が止められる。
「いけない!まとめて倒しに来るぞ!」
聖也がとっさに蓮太郎を呼び戻そうとする。シュウが黒い光を集めた右手を、地面に叩きつけた。
「うわっ!」
黒い光が一気に広がって、蓮太郎が分身たちとともに光の中に消えた。
「蓮太郎!」
シュウに消滅させられた蓮太郎に、主水が叫ぶ。シュウが主水に視線を移して、全身から黒いオーラをあふれさせる。
「オレのキックを、お前は受けることになる・・マルかバツか!?」
主水がシュウに対してクイズを出す。シュウが黒いオーラを両足に集めていく。
「答えは、マルだ!」
主水が答えを言って、大きくジャンプをしてキックを繰り出した。シュウも右足を振り上げて、主水のキックとぶつけ合った。
キックを押し込もうとする主水だが、シュウの力にだんだんと押し込まれていく。
「主水、お前1人では確実にやられる・・!」
レントが主水を援護しようと、キカイドライバーに両手をかざして、エネルギーを集める。彼がジャンプすると同時に、集めたエネルギーを足に移して氷のような形にする。
「フルメタル・ジ・エンド!」
レントもシュウ目がけてキックを繰り出して、主水に加勢する。しかしそれでも、シュウのキックを押し返すことができない。
「お前たちもこの世界から消えることになる・・・」
シュウが呟いて、キックを出している足に黒いオーラをさらに注ぎ込んでいく。
「主水くん、レントくん、すぐに離れろ!」
聖也が呼びかけて、主水たちをシュウから引き離そうとした。ところがシュウのキックの威力が、光となって主水とレントをのみ込んだ。
「主水くんたちまで・・・!?」
主水とレントも消されて、まりが目を疑う。聖也もシュウのキックの余波でダメージを負って、クラールへの変身が解けてしまった。
「まずい!これでは聖也くんもライも・・!」
「おやっさん、1度ここを離れます!」
ひろしの叫びを聞いて、かなたがチェイサーソウルを手にした。
“チェイサー!”
“ライダーソウル。”
彼は走り出して、チェイサーソウルをルシファードライバーにセットした。
“ダークチェンジ・チェイサー。”
かなたはチェイサーフォームになって、一気にスピードを上げた。彼はライと聖也のそばに来て支える。
「みんなと一緒にここから離れなくちゃ・・!」
かなたがライたちを連れて、シュウから離れようとした。
「逃がしはしない・・・」
シュウがかなたたちを追って動き出す。その動きは彼らのスピードを大きく上回っていた。
「何っ!?」
シュウにすぐに前に回り込まれて、かなたが驚く。
「カブトたちのクロックアップレベルだ・・!」
「カブトやガタックのライダーソウルを、私たちは使うことができない・・!」
かなたと聖也が今のシュウの戦闘能力の脅威を痛感する。
「お前たちも消える運命にある。私から逃れることはできない。」
シュウがライたちも倒そうと、両手に黒いオーラを集中させる。かなたが反撃しようとするが、技が間に合わない。
そのとき、ライの姿が仮面ライダーとは違う怪人へと変わった。彼は一気にスピードを上げて、シュウを突き飛ばして引き離した。
「ライ!」
怪人、クロスホッパーになったライを見て、聖也もかなたも、まりもひろしも緊張を感じていた。
「クロス・・そのような姿にもなれるのか・・!?」
シュウがライを見て声を荒げる。ライが全身に力を込めて、両手を強く握りしめる。
「お前だけは許さない・・確実に、オレが倒す・・!」
ライが鋭く言って、シュウに向かって飛びかかる。ライが繰り出したパンチを、シュウはオーラをまとった手で受け止める。
「先ほどのクロスに勝るとも劣らない・・だが、私がこの戦いに敗北することはない・・・!」
シュウが窮地を痛感しながらも、自分の意思を曲げない。ライが繰り出すパンチを、シュウは素早くかわす。
「あのラストを追い込んでいるなんて・・!」
「しかしあの姿は、オールフォーム以上の危険が伴う・・今は自分を見失わないでいるが、暴走しないという確証があるわけでもない・・!」
かなたが驚きをふくらませているが、聖也はライの心身を心配していく。攻撃を続けるライが、段々と呼吸を乱していく。
「ライ、みんなを避難させるから、ライもすぐに逃げるんだ・・!」
かなたがライに呼びかけて、聖也を連れてまりたちのところへ戻る。
「ライくん、もういい!戻らなければ、君までやられてしまう・・!」
「戻ってきて・・私たちのところへ戻ってきて、ライくん!」
聖也とまりがライを呼び止める。しかしライは戦いをやめない。
「オレが逃げようとすれば、かなたたちもラストに狙われる!今、コイツを食い止められるのは、もうオレしかいない!」
ライが感情をあらわにして、かなたたちに言い返す。
「だからって、そのためにライくんがいなくなったら・・・!」
まりが不安を消せずに、ライを思って涙を浮かべる。
「オレは消えない・・オレがいなくなったら、まりちゃんやみんなが悲しむのは、痛いほど分かるから・・・!」
ライが生き延びることも強く誓う。すると彼の姿がクロスホッパーから人へと戻る。
「オレは生きる・・オレは戦う・・・人間として・・仮面ライダーとして!」
“超変身・カメーン!”
“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”
ライは決意を言い放って、クロスのカメンフォームを経て、オールフォームへと変身していった。
「ライくん・・最後まで徹底的に戦うつもりなのね・・・」
ライの固い意思を痛感して、まりが戸惑いをふくらませていく。
(こんなときに、私は何もできない・・私も戦うことができたら・・・)
自分の無力を痛感して、まりは目から涙をこぼしていた。