仮面ライダークロス
-Endless Rider’s history-
第5章
世界の破滅を回避する意味でも、仮面ライダーに加勢する。ライ、聖也、かなたは決意を秘めて、モモタロスたちに加勢した。
「オレたちも協力するぞ!」
「ヘッ!オレの邪魔にならないようにな!」
呼びかけるライに、モモタロスが笑みをこぼして言い返す。
“Sword mode.”
モモタロスは武器「デンガッシャー」を剣型の「ソードモード」にして構える。
「オレに前振りはねぇ!最初から最後までクライマックスだぜ!」
彼が高らかに言って、モールイマジンたちに向かってデンガッシャーを振りかざす。
「オレたちもやるぞ!」
“ソードガン!”
ライが声を掛けて、ソードガンソウルを取り出してスイッチを入れた。彼はクロスソードガンを手にして、ダークローチに向かっていって振りかざす。
“ブレイガン!”
“デスセイバー!”
聖也、かなたもクラールブレイガン、ルシファーデスセイバーを手にして、レイドラグーンが飛び回る空に目を向ける。
“ガンモード!”
聖也はクラールブレイガンをガンモードにして、レイドラグーンを狙ってビームを放つ。レイドラグーンのうちの数人がビームに撃たれて、地上に落下する。
そこへかなたが向かっていって、レイドラグーンをルシファーデスセイバーで切りつけていく。
「ここまで数が多いなんて・・何が起こっているんだ、この世界で!?」
「怪人どもが次々に出てきて、人間どもを襲ってんだよ!そりゃ見境ねぇってくらいにな!」
問いかけるライに、モモタロスが答える。
「日に日に戦いが激しくなってる!オレにとっちゃ、派手に暴れられて嬉しいことだけどよ!」
「怪人たちが、この世界にどんどん出てきているってことなのか・・!?」
モモタロスの話を聞いて、ライがこの世界の状況を把握する。
「敵の勢力が集まれば、ライダーもそれだけ力を合わせることになる・・」
「その結果、空間が歪むほどに力が高まって、世界の破滅につながって・・」
聖也とかなたが推測を巡らせて、世界の破滅の原因をつかんだと判断する。
「こうしてみんなを散開させたのは、正解だったようだ・・」
「このまま怪人軍団を倒せば、みんなも守れるし世界も守れる!」
聖也が安心を覚えて、かなたが希望を感じていく。2人はレイドラグーン、ダークローチたちへの攻撃を再開する。
「他のみんなにも、うまく連絡を取ってこのことを伝えないと・・!」
ライはダークローチと戦いながら、他の仮面ライダーたちに世界の破滅について伝えようと考える。
そのとき、ライは強い力の気配を感じ取って、思わず足を止めた。
「んっ!?おい、どうしたんだ、おめぇ!?」
「この感じ・・まさか、もうこの世界に出てきていたのか・・!?」
モモタロスが声を掛けて、ライが振り返る。その先にいたのは、ラストに変身したシュウだった。
「ラスト!?こっちにまで追いかけてきたのか!?」
かなたがシュウを見て緊張をふくらませる。
「仮面ライダー・・お前たちが戦いを続けるから、世界は・・!」
シュウがライたち仮面ライダーを見て、鋭く言いかける。
「いや、違う・・あれはもしかして、この時代のラストなのでは・・!?」
「えっ・・!?」
聖也がシュウについて推測して、かなたがさらに驚く。
「それじゃ、ラストも世界の破滅に加担してしまったってこと・・!?」
「分からない・・何にしても、アイツがオレたちやみんなに攻撃してくるとしたら、対処しないといけない・・!」
かなたが動揺をふくらませて、ライがシュウを警戒する。
「仮面ライダー、怪人たち、今すぐ戦いをやめろ!お前たちのせいで、どれだけの人が苦しんでいると思っているんだ!?」
シュウが怒鳴り声を上げて、ライたちに飛びかかってきた。シュウが伸ばした右手を、ライが両手で受け止めた。
「落ち着け!怪人たちをおとなしくさせれば、仮面ライダーが過剰に力を使う必要もない!」
「この戦いが終わるのはいつだ!?いつになれば、オレたちの苦しみが終わるんだ!?」
呼びかけるライに、シュウが怒りをぶつける。
「オレが終わらせる・・この戦いを、確実に!」
シュウが言い放って、ライを突き飛ばした。彼はラストドライバーの上部にあるリミッターのスイッチを切り替えた。
“ラストパワー・2。”
ラストのパワーを上げて、シュウがライを攻め立てる。ライがとっさにジャンプで飛び越えて、シュウの攻撃をかいくぐる。
「アイツもパワーを上げてきた・・だったら・・!」
「無闇に力を高めてはいけない!」
自分もパワーアップしようとしたライを、聖也が呼び止めた。
「私たちがパワーを上げて、空間の歪みを誘発させては元も子もなくなる!」
「だけど、このままの状態で戦ってもやられるだけだ・・!」
聖也が注意をするが、ライは焦りをふくらませるばかりになっていた。
「どういうことだか分かんねぇが、オレたちに戦いをしてくるなら、相手してやらなくちゃな!」
モモタロスがシュウに振り向いて、デンガッシャーを構える。
「ダメだ、モモタロス!あのラストというライダーは強いし、ライダーを消す能力を持っている!1人で相手をするのは危険だ!」
かなたが叫んで、モモタロスを呼び止める。
「生憎だが、オレはじっとしてるのが性に合わねぇんだよ!」
モモタロスが言い返して、デンガッシャーを振りかざす。しかしシュウに左腕で受け止められた。
「何っ!?」
デンガッシャーを受け止められて、モモタロスが驚く。
「オレはお前たちが許せない・・だからもう、オレはお前たちに屈するわけにはいかない!」
シュウがデンガッシャーをはねのけて、モモタロスにパンチを叩き込んでいく。
「ぐっ!ぐあっ!」
モモタロスが回避が間に合わず、シュウのパンチを連続で受けて突き飛ばされた。
「モモタロス!」
「ここはライダーのみんなを遠ざけて、ラストと怪人たちを戦わせるしかない・・!」
ライが叫んで、聖也が苦肉の策を告げた。
「最悪の事態は、私たちがラストと戦って、空間の歪みを誘発させることだ・・卑怯なようだが、これが最善の方法だ・・!」
「この世界の仮面ライダーのみんなが、ラストに倒されてしまうのもよくないし・・!」
聖也に続いてかなたも呼びかける。ライは歯がゆさを感じながらも、聖也の提案を聞き入れることにした。
「モモタロス、みんな、1度この場を離れてほしい!」
「おいおい、尻尾巻いて逃げろっていうのかよ!?」
聖也が呼びかけるが、モモタロスは聞こうとしない。
「この世界を滅ぼすことになってもいいのか!?」
聖也のこの言葉で、モモタロスが思いとどまった。
「世界が壊れちまったら、さすがにまずいよな・・・!」
モモタロスが不満げに呟きながら、ラストから離れていく。
「待て!逃がさないぞ!」
シュウが怒鳴って、ライたちを追いかけようとした。しかしモールイマジンたちに行く手を阻まれた。
「邪魔をするな!」
シュウが力任せに攻撃して、モールイマジンたちを突き飛ばしていく。
「これで同士討ちをさせる・・気にくわないが、ラストに仮面ライダーが倒されるくらいなら・・・!」
ラストと怪人たちを戦わせる作戦を、ライは渋々受け入れた。
「新しい仮面ライダーか・・!」
「貴様も始末してやるぜ!」
モールイマジンたちがラストを見てあざ笑う。
「卑怯でもあるのか、仮面ライダーは!?・・自分たちさえ無事なら、他のみんながどうなっても構わないというのか!?」
怒りを爆発させたシュウが、ライたちに向かって走り出す。だがダークローチたちに飛びつかれて、シュウが動きを止められる。
「邪魔だ!」
シュウが両手を強く握りしめて、ダークローチたちをパンチで引き離していく。
「他の仮面ライダーはいてはならない・・怪人たちは、オレが倒す!」
シュウが言い放つと、両手にエネルギーを集めていく。光が灯った手のパンチを、彼はダークローチとレイドラグーンに叩き込んでいく。
攻撃されたダークローチとレイドラグーンが、直後に爆発して消滅した。
「とんでもねぇパワーを持ってるな、アイツ・・!」
「あれが正義や守るためという理由で戦っていたなら・・」
モモタロスがシュウに感心して、聖也が彼の力を惜しむ。
「仮面ライダーが戦いを長引かせなければ、オレたちが苦しむこともなかった・・オレは、お前たちと同じ轍は踏まない!」
シュウが怒りをふくらませて、ラストドライバーのリミッターのスイッチに手を掛けた。
「もう長引かせない!オレがこの戦いを終わらせる!」
“ラストパワー・3。”
彼がスイッチを切り替えて、ラストのパワーをさらに1段階上げた。ラストの装甲から黒い光があふれ出してくる。
「な、何だ!?どうしたんだ!?」
シュウの異変にかなたが驚きの声を上げる。
「ラストのレベルがもう1つ上がったのか!・・しかし、これは・・!?」
聖也が言いかけて、周囲にも異変が起こっていることに気付く。周囲の空間が歪み始めて、揺らぎ出していた。
「まさか、世界の破滅が起こったのは、仮面ライダーの戦いが激しくなったからじゃなく、アイツの暴走が原因だったのか・・!?」
ライが真実を知って、緊張を隠せなくなる。
「オレたちがやるべきだったのは、ライダーたちを分散させることじゃなく、ラスト事態を止めることだったんだ・・・!」
“カメン!”
ライが後悔して、カメンソウルを取り出した。
“ライダーソウール!”
彼はカメンソウルをクロスドライバーにセットした。
「超変身!」
ライがクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“超変身・カメーン!”
彼がカメンフォームになって、クロスカリバーを手にした。
“オール!”
ライはオールソウルのスイッチを入れて、クロスカリバーの左のスロットにセットした。
“オールパワー!オールクロス!オールライダー!”
オールソウルが反応して、音声を発した。カメンフォームの緑と赤の横のラインに金のラインが加わり、装甲から神々しい輝きが発せられた。
ライはクロスの最強形態「オールフォーム」となった。
「待つんだ、ライくん!今、飛び込んでは危険だ!」
「このまま野放しにしたら、この世界が消えてしまいます!」
呼び止める聖也にライが言い返す。エネルギーを放出するシュウに、ライがクロスカリバーを構えて向かっていく。
「仮面ライダー・・戻ってきたか・・・!」
シュウがライに気付いて振り返る。
「やめろ、ラスト!これ以上力を出したら、空間が歪んで世界そのものが消滅してしまう!」
「何を言い出すかと思えば・・そんなことを言って油断させようとしても、思い通りにはならないぞ!」
ライが思いとどまらせようとするが、シュウは聞き入れずに力の矛先を彼に向けてきた。ライがクロスカリバーを振り下ろして、シュウが放った黒い光にぶつけた。
「ぐっ・・ぐぅぅ・・!」
力を振り絞ってクロスカリバーに込めるライ。クロスカリバーがシュウの黒い光を切り裂いた。
「空間を歪める力なら、力を集めるクロスの力を!」
“クロス!”
思い立ったライがクロスソウルを取り出して、クロスカリバーの右のスロットにセットした。
“オールクロスパワー!”
クロスカリバーの刀身にエネルギーが集まる。
「クロス・オールカリバー!」
ライがクロスカリバーを再び振り下ろして、シュウに向かって光の刃を放った。シュウがラストドライバーの右のレバーを上に上げて、ラストタイフーンを回転させた。
“ライダースマッシュ・ラスト。”
「ラストライダーキック!」
シュウがジャンプして、光の刃に両足のキックをぶつけた。彼とライの力は互角で、爆発して威力が相殺された。
「クロスの力が打ち消されるなんて・・!」
高まっているシュウの力に、かなたは驚くばかりである。
「オレだけの力で通じないなら、他のライダーの力も・・!」
ライが思い立って、クロスカリバーからクロスソウルを外した。
“オメガ!”
彼がオメガのライダーソウル「オメガソウル」を取り出して、クロスカリバーの右のスロットにセットした。
“スピリットオメガパワー!”
ライが構えたクロスカリバーから光があふれ出す。彼の後ろにスピリットフォームのオメガの幻影が現れる。
「オメガ・クロスカリバー!」
ライがクロスカリバーを振りかざして、前と違う色の光の刃を放つ。
「オレは・・ライダーたちには負けはしない!」
シュウが怒りをふくらませて、さらに力を放出した。ライの放った光の刃が、シュウの力で生じた空間の歪みにかき消された。
「何っ!?」
ライが驚いて身構える。シュウの周りの空間がさらに揺らいでいく。
「あれだけの空間エネルギーを押さえるには、仮面ライダーの力を結集させるしかない・・!」
「でも、世界の破滅を避けるためにと思って、ライダーたちを別れさせたのに・・!」
聖也が最善手を探って、かなたが動揺する。
「それでも可能の限り呼ぶしかない・・そうしなければ、この世界が消えることになる・・!」
聖也が口にした忠告に、かなたが息をのんだ。
「みんなー!またこっちに集まってくれー!」
モモタロスがたまらず叫んで、ライダーたちを呼び込もうとした。
「完全に消し去ってやる・・怪人もライダーも!」
シュウが自分のエネルギーを解放して、空間を揺さぶっていく。
「分からないのか!?お前自身の力が、世界を押しつぶそうとしてることが!」
「お前たちがのさばっているままでいるくらいなら・・!」
声を張り上げて呼び止めるライだが、シュウは力の解放を続ける。今のシュウはライダーへの怒りに囚われていた。
「ちっくしょうが!こうなったらオレがやる!」
モモタロスがいきり立って、携帯電話「ケータロス」を取り出した。
“Momo,Ura,Kin,Ryu,Climax form.”
ケータロスのボタンを押してベルトにセットするモモタロス。すると電王の別形態である「ロッドフォーム」、「アックスフォーム」の仮面が両腕に、「ガンフォーム」の仮面が胴体に装着され、仮面も開くように新しくなった。
電王の強化形態「クライマックスフォーム」である。
「オレたちでアイツを止める!おめぇらは引っ込んでろ!」
「待て!モモタロスたちがラストにやられてしまう!せめてオレたちと・・!」
シュウの前に出るモモタロスを、ライが呼び止める。
「おめぇらには、帰る世界と時間があるんだろ?だったらそこを守らなくちゃな!」
「・・・分かっていたのか、オレたちのこと・・・!?」
モモタロスが投げかけた言葉に、ライが戸惑いを覚える。
「これでもいろんな時間や世界を渡ってきてるからな。違う世界や時間のヤツは、すぐに分かるようになっちまった・・」
モモタロスが語りかけて、ライに対して笑みをこぼす。
「この時代で起こってることは、この時代にいるオレたちがけりを付ける!おめぇらはおめぇらの世界に戻れ!」
モモタロスは言うと、左手でライの右腕をつかんで、聖也たちのいるほうへ投げ飛ばした。
「おわっ!」
聖也とかなたが慌ててライを受け止めて、押されてしりもちをついた。
「おい!いきなり投げ飛ばしてきたら、危ないだろうが!」
起き上がったライが、モモタロスに向かって怒鳴る。
「こうでもしねぇとずっと居座りそうだからよ・・さっさと行け!元の世界にな!」
そんな彼に言い返して、モモタロスが足にエネルギーを集める。
「オレたちもおめぇらも、いつでもどこでもとことんクライマックスだぜ!」
モモタロスが笑みをこぼして、シュウを狙って大きくジャンプした。
「いくぜ、いくぜ、いくぜー!」
エネルギーを発するシュウに向かって、モモタロスがキックを繰り出した。
「モモタロス・・電王!」
ライがモモタロスに向かって叫ぶ。モモタロスのキックがシュウのエネルギーとぶつかって、閃光が一気に広がった。
「うわあっ!」
ライたちが光に押されてモモタロスたちから遠ざかっていく。そのとき、ライの持つ電王ソウルとクロスソウルから、光があふれ出した。
「クロスと電王のソウルが!?・・ゼロノスのソウルも・・!」
聖也もクラールソウル、ゼロノスソウルを見て驚く。ルシファーソウル、NEW電王ソウルからも光が出ていた。
「もしかして、僕たちに戻れっていうのか・・!?」
「モモタロスや他のライダーを置き去りにするなんて・・・!?」
かなたとライがモモタロスのところに戻ろうとした。だがライダーソウルから発せられた光に彼らが包まれて、光とともに姿を消した。
ライダーソウルの力によってライ、聖也、かなたは元の時間、元の世界に戻ってきた。ラスト、シュウのいた世界が消えた理由が分かったライたちだが、破滅を止めることはできなかった。
「向こうの世界を救うことができなかった・・・オレたちは、何もできなかった・・・!」
ライが悔しさをあらわにして、地面に拳を叩きつける。
「世界の消滅は、仮面ライダーたちの力が集まって起きたからではなかった・・力を暴走させたラスト自身が起こしたんだ・・自分でも気付かないうちに・・・!」
「仮面ライダーは何も悪くなかった・・悪かったのは、僕たちの判断だった・・・!」
聖也もかなたも責任を感じて、苦悩を深めていく。
「あの出来事が過去で、変えられない事実だとしても、後味が悪いのは確かだ・・・!」
「・・・この世界に来ているラストは、オレの手で倒す・・仮面ライダーのせいでアイツが苦しい思いをしたとしても、これ以上、ライダーのみんなに手は出させない・・・!」
聖也がさらに言いかけて、ライがシュウへの怒りを噛みしめる。
「1度おやっさんのところに戻ろう・・剣崎さんたちと合流して、今のことを話さなくちゃ・・!」
かなたが呼びかけて、ライと聖也が頷いた。3人が橘モーターショップに向かって、ライがひろしに連絡しようとスマートフォンを取り出した。
しかし電話をかけても、ひろしの電話につながらない。
「おやっさんとつながらない・・・!」
ライが声を荒げて、かなたも自分のスマートフォンでまりとの連絡を試みる。しかしまりとも連絡が取れない。
「まさか、ひろしさんたちに何かあったのでは・・・!?」
聖也が不安を覚えて、ライが橘モーターショップへ急ぐ。
「あっ!ライ!」
かなたが慌てて走り出して、聖也とともにライを追う。3人は橘モーターショップの前にたどり着いた。
「おやっさん、いるか!?まりちゃん!」
「剣崎さん、レント、どこにいるんだー!?」
ライとかなたが叫ぶが、ひろしたちからの返事がない。
「まさか、ラストに見つかって・・・!?」
かなたが不安をふくらませて、周りをみまわす。
「そのまさかのようだ・・・!」
店の前にいた聖也が言いかけて、ライたちが外に出る。聖也の見ている地面に傷跡があった。
「ここで戦いがあったってことなのか・・・!?」
ライが感情をふくらませて体を震わせる。
「私たちが過去に飛んでからそんなに時間は経っていない。うまく逃げていれば、まだ近くにいるはずだ・・!」
「追いかけないと・・ラストを、今度こそ止める・・・!」
聖也がまりたちの無事を信じて、ライが目を閉じて感覚を研ぎ澄ませる。ライはかすかに流れてくる音とにおいを捉えた。
「ホントに近くにいるかもしれない・・そっちへ行くぞ!」
ライがその場所に向かって走り出す。聖也とかなたも頷き合ってから、ライに続いた。
ライたちがシュウのいた世界に向かって程なくして、ラストが橘モーターショップの前に現れた。
「やっぱり気付かれてしまったか・・・!」
一真が緊張を感じて、ひろしとまりが息をのむ。
「蓮太郎たちはひろしさんたちを連れてここから離れてくれ。オレがラストを食い止める・・・!」
一真が蓮太郎たちに呼びかけて、単身ラストと戦おうとする。
「しかし、それではあなたが・・!」
「この戦いの勝利への切り札はライくんたちだ。彼らが戻ってくるまで、オレたちが1人でも生き残って、可能な限り力を合わせないと・・」
蓮太郎が心配すると、一真が最善手を告げた。
「それにオレは簡単にはやられないし、やられるつもりもない。必ずお前たちやライくんたちのところに戻ってくる。」
「剣崎さん・・・分かりました。オレたちはここを離れます・・!」
笑みを見せる一真のいうことを聞いて、主水が頷いた。
「おい、主水・・!」
「私も同じ考えだ。可能な限り戦力を減らさないようにした方がいい。オレたちの中で力が高いのは剣崎さんだ。」
蓮太郎が反論しようとすると、レントも一真の意見に賛同してきた。
「ライくんたちは必ず戻る。そのときにラストを・・」
一真が蓮太郎たちに告げると、1人で外に飛び出した。
「剣崎さん!」
まりが叫ぶが、一真は立ち止まることはなかった。
「剣崎さんの言う通りにしよう。剣崎さんのためを思えばこそ・・・」
主水に言われて、まりが小さく頷いた。蓮太郎たちは裸口から外に出て、橘モーターショップから離れた。
一真は橘モーターショップの正面の出入り口から外に出た。その直後、彼の前にラストに変身したシュウが現れた。
「他のライダーたちを逃がして、自分が盾になるか。ムダなあがきだと言っておく。」
「確かに足止めだが、オレも生き残る・・それが、世界も大事なものも守ることにつながるんだ・・!」
低い声で告げるラストに言い返して、一真がベルト「ブレイバックル」を装着して、構えを取った。
「変身!」
彼がブレイバックルの右のハンドルを引いて、中央部を反転させる。
“Turn up.”
ブレイバックルから光の壁「オリハルコンエレメント」が現れる。一真がオリハルコンエレメントを通過して、ブレイドに変身した。
一真がブレイラウザーを手にして、シュウ目がけて振りかざす。
“ラストセイバー。”
シュウがラストブレスの画面の剣のアイコンにタッチして、ラストセイバーを呼び出してブレイラウザーを受け止めた。
「お前たちでは守ることはできない。この世界を。」
シュウが言いかけて、ラストセイバーを振り上げて、ブレイラウザーをはねのけながらブレイドの装甲を切りつけた。
「ぐっ!」
装甲から火花が散って、一真が突き飛ばされてうめく。立ち上がった彼が、シュウの底力を痛感していく。
「守る・・オレはそのために、これからも戦い続ける・・世界も、仲間も・・!」
一真が意志を貫いて、左腕に装着しているアイテム「ラウズアブソーバー」に、アンデッドを封印したカード「ラウズカード」をセットした。
“Absorb queen.”
スペードのクイーンのラウズカードをセットした彼は、続けてスペードのキングのラウズカードをラウズアブソーバーにリードさせた。
“Evolution king.”
一真の持っているラウズカードの力が、ブレイドの装甲に宿る。装甲が金色に染まって、剣「キングラウザー」が現れた。
一真はブレイドの最強形態「キングフォーム」となった。
「私以外に世界は守れない。私以外のライダーは消えなければならない。」
シュウが呟いて、一真に迫ってラストセイバーを振りかざす。一真はキングラウザーでラストセイバーをはじき返して、ラストの装甲を切りつける。
押されたシュウがラストドライバーのリミッターのスイッチを切り替えた。
“ラストパワー・2。”
ラストのパワーを引き上げて、シュウが飛びかかってラストセイバーを振りかざす。キングラウザーを構える一真だが、ぶつけられたラストセイバーに押される。
「やはりパワーが格段に上がっている・・長引けば不利になる・・!」
一真が状況を判断して、10からエースまでのスペードのラウズカードをキングラウザーにセットした。
“Spede ten,jack,queen,king,ace.Loyal straight
flash.”
5枚のラウズカードの力を宿して、キングラウザーの刀身が光り輝く。一真の前にエネルギーのカードが5枚現れた。
「どのような力でも、私を止めることはできない。」
“ライダースマッシュ・ラスト。”
シュウがラストタイフーンを回転させて、ラストセイバーにエネルギーを集める。エネルギーのカードを通った一真が振りかざしたキングラウザーに、シュウもラストセイバーをぶつけた。
「ぐあっ!」
一真とシュウが激突の反動で突き飛ばされる。シュウは踏みとどまったが、一真は地面を激しく転がった。
「さすがキングというだけはあるか。だがたとえ王でも神でも、私を止めることはできない。」
シュウが呟いて、ラストブレスを操作する。
“ラストシューター。”
彼はラストシューターを手にして、一真に連射を浴びせる。
「うぐっ!」
撃たれてダメージを増した一真が、その場に膝を付く。
「これでお前も終わりだ、ブレイド。お前も消えなければならない。」
シュウが一真に言ってから、ラストシューターの上にラストセイバーをセットした。
“ラストフィニッシュ。”
ラストセイバーの切っ先にエネルギーが集まっていく。
「オレは倒れるわけにいかない・・オレが倒れれば、世界の破滅が起こる・・・!」
一真が自分が倒れることを危惧する。
一真と始、2人のアンデッドが封印されずに生き残っていることで、バトルファイトの継続が保たれて、世界の破滅が阻止されている。しかし2人のうちのどちらかが倒れれば、ジョーカーが生き残っての世界の破滅が起こることになる。
「たとえ他の敵が世界を滅ぼそうとしても、私が阻止する。敵を全滅させ、その根源も消滅させる。」
シュウはためらうことなく、ラストシューターの引き金を引いて光線を放った。
「うあぁっ!」
一真が光線にのみ込まれて、光とともに消えた。
「これでブレイドも消えた。行動を共にしていたシノビ、クイズ、キカイも倒す。」
シュウは蓮太郎たちを追って、休みなく歩き出す。ライたちが戻る前に、一真もシュウの手にかかった。
一真がいなくなって、バトルファイトの決着が成立した。阻止されていた世界の破滅が再び起こり、ダークローチが続々と出現していた。