仮面ライダークロス
-Endless Rider’s history-
第4章
歴代の仮面ライダーと数多くの種族の怪人たちの全面対決。世界と人々を守ろうとするために戦うライダーたちだが、日に日に激化する戦いは、空間をも歪ませるエネルギーをもたらした。
そして大きくなった空間の歪みは、ライダーも怪人も含めて、世界を押しつぶして消滅した。世界の消滅によって、その世界に住む者も全滅したかに思われた。
しかし空間の歪みで別の世界に飛ばされた者がいた。ラストは自分の世界から、ライたちのいる世界に飛ばされたのである。
自分のいた世界が消えたことを思い返していたラスト。彼は世界の消滅は、自分以外の仮面ライダーの力が高まったことによるものと考えていた。
「仮面ライダーを一掃しなければ、他の世界も消えることになる・・世界を救うためなら、ライダー殺し、同族殺しの罪も汚名も甘んじて受ける。」
他の世界を自分の世界と同じ破滅を受けてはならないと、ラストは考える。体力が回復したのを見計らって、彼はライたちのところへ向かう。
「クロスの住んでいる場所は把握している。気配を消しているなら、そこを押さえればいいだけのこと。」
ラストは既に橘モーターショップのことを頭に入れていた。彼はライダー打倒のために、どんな手段も使おうとしていた。
ライたちは一真とともに橘モーターショップに戻ってきた。
「ライ、みんな・・・」
「剣崎さん・・・!」
ひろしとまりがライたちを見て動揺を浮かべる。ひろしたちは事前に、ライたちから連絡を受けていた。
「ライくん、あんまり思いつめないで・・大変なときこそ平常心で・・・」
「平常心になれるような状態じゃない・・少し、休ませてほしい・・・」
まりが元気付けようとするが、ライは気分が晴れずに奥の部屋に行った。
「今はそっとしておいたほうがいいよ、まりちゃん・・」
「ライくんのことだ。少し体と心を休めれば、落ち着きを取り戻せるはずだ。」
かなたと聖也がライのことを思って、まりに言いかける。
「体勢を整えたら、すぐにまた移動したほうがいい。もしもラストがオレたちに気付いて駆けつけたら、ここが危険になる。」
一真がひろしたちを気遣い、聖也たちに呼びかける。
「ちょっとちょっと、オレだってやられたり守られてばっかってわけじゃない。ちょっとは頼りにしてほしいよ。」
するとひろしが不満げに言い返してきた。自信を見せる彼に、かなたが苦笑いを浮かべた。
「敵は仮面ライダーをつぎつぎに倒していく戦士です。オレたちでもここを守り切れる保証はないですよ。」
「そんなことは、ライたちがライダーとして戦いを始めたときから、覚悟してることさ。」
警告する一真だが、ひろしは考えを変えない。
「これはお言葉に甘えるしかないみたいですね・・」
蓮太郎が言いかけて、主水が小さく頷いた。
「ラストは、世界の破滅を仮面ライダーがもたらすと思っている。ラストの世界がそれで消滅したのなら、その原因を詳しく知る必要がある。」
一真がこれからのことを聖也たちに話す。
「世界の消滅を引き起こす原因・・私たち仮面ライダーの力の何に影響して・・・」
「でも、仮面ライダーが集まって巨大な敵と戦ったことは何度もありましたよ。ライダーの力が集まって崩壊が起こるなら、その時点で起こっているはずですよ・・」
聖也が口にした推測に、かなたが疑問を投げかける。
「もしかしたら、それでも崩壊を起こすまでには力が足りてなかったってことじゃ・・」
「ライダーが集合をしても、世界の崩壊にはまだ至らない・・・」
蓮太郎も主水も推測を巡らせていく。
「ラストのいた世界について調べることができたら・・」
「次元に干渉できる能力を持った人物なら・・・」
一真と聖也も打開の糸口を探っていく。
「僕たちなら、ライダーソウルを持っている僕たちなら・・!」
思い立ったかなたがライダーソウルを取り出す。仮面ライダーNEW電王のライダーソウル「NEW電王ソウル」である。
「NEW電王の・・そうか!お前たちも他の仮面ライダーの力が使えたんだったな・・!」
一真がNEW電王ソウルを見て笑みをこぼす。
「電王は時間の行き来を行える仮面ライダー。電王たちが無事なら、私たちもその力を使うことはできるが・・」
「電王が超えるのは時間・・別の世界へ空間を越えて移動する能力じゃない・・・」
聖也が電王のことを語って、かなたが悩む。
「次元を超えるライダー・・鎧武、ディケイド・・・」
「いや、お前たちも仮面ライダーの力を束ねている。鎧武たちの力だけじゃなく、お前たち自身の力も・・」
呟くかなたに、一真が1つの推測を口にした。
「僕たちの力にも・・!?」
「仮面ライダーの力をつなぐ力。違う世界のライダーの力を引き付ける能力は、確実に次元を超える能力だ。」
戸惑いを浮かべるかなたに、一真が語りかけていく。
「聖也、かなた、そしてライの力を合わせれば、次元を超えて別の世界をのぞくことができるかもしれない。消滅している世界だから、足を踏み入れることはできないが・・」
「それじゃ仮に次元を超えられても、意味ないじゃないですか・・」
一真の話を聞いて、蓮太郎が落ち込んだ。
「いや、次元を超える力だけではなく、電王のような時間を超える力も使えば・・」
聖也は仮面ライダーゼロノスのライダーソウル「ゼロノスソウル」を手にして、提案を口にした。
「ラストの世界が消滅する前まで過去をさかのぼり、そこから次元を超えるということか。」
「あぁ。それならラストのいた世界に行くことができる。」
レントが口にした言葉に、聖也が頷く。ラストの世界の過去に行くことで、消滅した経緯と原因を知ることができる。
「ライくんが回復してから実行しよう、かなたくん。」
「はい。」
聖也の言葉に、かなたが真剣な顔で頷いた。
「その間に、ラストがここに来ないことを願うしかない・・」
「聖也、かなた、お前たちとライが今回の戦いのカギになりそうだ。」
レントが呟いて、主水が聖也たちに信頼を送った。
橘モーターショップの奥の部屋で、ライは1人休んでいた。心身ともに追い詰められていた彼は、部屋の隅でふさぎ込んでいた。
その部屋にまりもやってきて、ライを見て深刻さをふくらませた。
「ライくん・・あなたはあなたなりに戦っている・・クロスとして、ライくん自身として・・」
「だけど、オレの力が弱いせいで、巧さんが・・他のライダーのみんなが・・・」
呼びかけるまりだが、ライは立ち直ることができない。
「だったらライダーを助けるとか、敵討ちをするとか・・ライくんだったら、何か行動を起こしているはずだよ・・」
「その行動が、巧さんがいなくなる原因になってしまったんだ・・・」
まりが微笑んで言いかけても、ライは自分を責め続ける。
「それでも、いつものライくんだったら動き出しているはずだよ・・!」
まりが声を振り絞っても、ライはふさぎ込んだままである。
「ライくんは、何のために生きているの・・?」
まりがまたライに疑問を投げかけた。この問いが意味深に思えて、ライが動揺を浮かべる。
「ライくんは両親を亡くして、そこでひろしさんに引き取られたんだったね・・でもひろしさんのところに来たばかりのライくんは、何もかもが信じられなくなって許せなくなったって・・・」
「あぁ・・事故で2人は死んで・・でも事故を起こしたヤツは、軽い罪でそんなに経たないで出所できる形で済んだ・・そのときのオレは、何が正義で何が悪か分からなくなって、みんなを守るはずの警察さえも信じられなくなっていた・・」
まりが話を切り出して、ライが自分の過去を語り出す。
「そんなオレを支えてたのが、仮面ライダーだった・・厳しい戦いや悩みを経験しながら強くなるライダーに、オレは勇気づけられていた・・」
仮面ライダーをTVで見ていたときのことも思い出していくライ。
「おやっさんのお世話になってがんばるようになって、今はここで仕事をするようになった・・いろんなことを知っていろんな感じ方を持つようになったけど、それで仮面ライダーに対しても見方や感じ方が変わったのかもしれない・・」
「たとえ仮面ライダーでもヒーローでも、間違いを正しいことにする考えは許せない・・ライくんはするようになった・・・」
「また何を信じたらいいのか分からなくなった・・どれだけ願っても、どれだけ頼んでも、あまりにも報われなさすぎた・・だからオレはこう考えるようになったのかも・・・」
「“全てを、オレが正す”と・・」
自分のことを話していくライの気持ちを、まりが察していく。
「だからエグゼイドにもビルドにも拒絶反応を示した・・たとえ周りからそれが間違っていると言われても、その批判にも反発する・・」
「あぁ・・理屈で納得できるなら、ここまで徹底的に腹を立てることはない・・」
まりが話を続けて、ライが頷いた。
「ライくんは強いと思う・・我慢ができるほうが強いと言われているけど、許せないことにイヤだと言えることのほうが強いこともある・・」
「まりちゃん・・・」
まりに言われて、ライが戸惑いを感じていく。
「ライダーのみんなを助けられなかった自分が許せない・・ライくんは、今の自分がイヤだと思っている・・・」
まりがさらに言って、ライが自分の気持ちを確かめていく。
「今の自分に納得できていないなら、納得できるようにするために、何か行動を起こす・・それがライくんだと思うんだけど・・」
「そうだった・・イヤなものを受け入れたままだなんて、オレが納得できないはずだったのに・・・」
「私、ライくんにそうしろとかそれをやりなさいとかは言えない。そう一方的に言われると反発することが、分かっているから・・・」
「オレはそこまでわがままじゃない・・納得できることならちゃんと聞くって・・」
まりの投げかける言葉に、ライが呆れて肩を落とす。
「ありがとう、まりちゃん・・オレ、ラストを倒して、ライダーのみんなを救ってみせる・・・!」
ライが迷いを振り切って、決意を口にした。
「やる気になったみたいだね、ライ。」
そこへかなたがやってきて、気さくな笑みを見せてきた。
「ラストのことを知るには、僕たちの力が必要になってくるよ。」
「オレたちが・・!?」
話を切り出したかなたに、ライが動揺を浮かべる。
「次元を超える力は、鎧武やディケイドだけじゃない。僕たち自身の力にもあったんだよ。」
「クロスも、仮面ライダーの力をまとめている・・それが次元に関わることにもなっている・・・」
かなたの話に納得して、ライがクロスソウルを取り出した。
「オレとかなた、聖也さんが力を合わせて、ラストのいた世界へ行く・・・!」
「それだけじゃなく、過去に行ってから向こうの世界へ行く。ラストの世界で何があったのかを知れば、ラストの目的や正体も分かるかもしれない。」
ライがやるべきことを確かめて、かなたが付け加えた。
「でもその間、剣崎さんやレントたちだけでラストの相手をしないといけなくなるってことなのか・・!?」
ライがレントたちを心配して、外に目を向ける。
「オレたちの力を甘く見ないでほしいな。」
主水も顔を出して、ライにため息まじりに言う。
「たとえ倒せなくても、お前たちが向こうへ行って戻ってくるまでの時間を稼ぐことはできる。」
「そうだ。心配してくれるのは嬉しいけど、少しはオレたちの力を信じてくれなくちゃ。」
主水に続いて蓮太郎もライに言いかける。
「みんな・・・オレが悪かった・・・」
ライが謝って、部屋から出てひろしと一真たちに目を向けた。
「少しの間、この世界と、まりちゃんとおやっさんを頼みます・・・」
ライが頼んで、一真たちが頷いた。
「お前たちにこの世界の、いや、全部の世界の希望を託すぞ。」
「はい。」
一真からの信頼の言葉にライが答えて、かなたが頷いた。
(ライくん・・よかった・・・)
ライが元気を取り戻したと思って、まりは安らぎを感じていた。
ラストに気付かれやすくなることを想定して、ライたちはモーターショップから離れた場所で、ライダーソウルを使うことにした。
“クロス!”
“クラール!”
“ルシファー!”
ライ、聖也、かなたがクロスソウル、クラールソウル、ルシファーソウルを取り出した。
“ライダーソウール!”
“ライダーソウル。”
彼らはそれぞれのドライバーにライダーソウルをセットした。
「変身!」
“変身・ライダー!クロース!”
“変身・ライダー!クラール!”
“ダークチェンジ・ルシファー。”
ライ、聖也、かなたがクロス、クラール、ルシファーに変身した。
“電王!”
“ゼロノス!”
“NEW電王!”
ライたちは続けて電王、ゼロノス、NEW電王のライダーソウル「電王ソウル」、「ゼロノスソウル」、NEW電王ソウルを手にして、意識を集中した。すると3つのソウルから光が発した。
「オレたちを過去へ連れて行ってくれ・・・!」
時間を超えるイメージを念じていくライ。すると彼らの持つ3つのソウルの光が飛び出して、1つになって空間にトンネルを作った。
「つながった!時空の穴だよ!」
かなたが穴を指さして叫んだ。ライが聖也と頷いて、一真たちに振り向いた。
「剣崎さん、みんな、行ってきます・・・!」
「他のみんなとも連絡が取れたら、ここに来るように言っておく。みんなもラストのことは気付いているはずだから。」
挨拶するライに、一真が告げる。
「ライくん、かなたくん、聖也さん、無事に帰ってきて・・・」
「もちろんだ・・死んだり消えたりなんて、オレもゴメンだ・・・!」
想いを伝えるまりに、ライが自分の意思を込めて答えた。彼は聖也、かなたとともに時空の穴に飛び込んだ。
(3人とも、オレもみんなも信じてるからな・・・!)
ライたちを見送って、ひろしが心の中で呟いた。
時空のトンネルを真っ直ぐに進んでいくライたち。トンネルの周りは歪んだ空間の壁が続いていた。
「この道の途中にも、いろんな時間が・・・!」
「下手に道を外れてはいけない・・別の時間に飛び出して戻れなくなるか、時空をさまようことになる・・!」
周りを見回すかなたを、聖也が注意する。かなたは足を踏み外さないようにして、真っ直ぐ前進していく。
薄暗い時空のトンネルの先にある光を、ライたちが目撃した。
「あれだ!あそこが出口だよ!」
「この先の時間でさらに空間を飛び越えて、ラストのいた世界に行く・・!」
かなたが光を指さして、ライがやるべきことを確かめる。彼らは光に飛び込んで、過去にたどり着いた。
「ここが、昔の僕たちの世界・・・」
「ニュースの内容から10年前のようだ。月日はほとんど同じ・・」
かなたが周りを見回して、聖也がそばにあるTVに映っているニュースを見て、年月を確かめる。
「この時間には、ラストの世界はまだ存在している・・その世界に、今から乗り込む・・」
聖也が呼びかけて、ライとかなたが頷く。彼らは再び電王ソウル、ゼロノスソウル、NEW電王を取り出した。
「電王のライダーに変身して、今度は時空のトンネルを開ける・・!」
ライが言いかけて聖也、かなたとともにそれぞれのドライバーにセットされているライダーソウルを入れ替えた。
“変身・ライダー!デンオー!”
“変身・ライダー!ゼロノース!”
“ダークチェンジ・NEW電王。”
ライ、聖也、かなたは「電王フォーム」、「ゼロノスフォーム」、「NEW電王フォーム」に変身した。
「時間に関わるもう1組のライダー、ジオウ・・その仲間、ウォズ・・!」
かなたが仮面ライダーウォズのライダーソウル「ウォズソウル」を取り出した。
“ウォズ!”
かなたがウォズソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの左のソウルスロットにセットした。
“ダークチャージ・ウォズ。”
彼の周りで「キック」の文字が回っていく。
“ライダースマッシュ・デンオー!”
“ライダースマッシュ・ゼロノース!”
ライと聖也がクロスタイフーン、クラールタイフーンを回転させて、足にそれぞれ赤と緑の光を宿した。
「同時にキックを出して、空間の一点にその威力を集中させる。電王たちの力で時空のトンネルができたように、次元の壁に穴を開けられるはずだ。」
「はいっ!」
聖也の指示にライとかなたが答える。
「クロスデンライダーキック!」
「ゼロノスクラールキック!」
「ストライクエクスプロージョン!」
ライ、聖也、かなたが同時にジャンプして、宙の1点にキックを繰り出した。キックを受けた空間が歪んで、別の世界へ通じる穴が開いた。
「やった!次元のトンネルだ!」
「ラストの世界へ通じていることを信じるしかない・・!」
かなたが喜んで、聖也が言い聞かせる。彼らはそのまま次元のトンネルへと飛び込んで、先を急ぐ。
だがその途中、次元のトンネルの中で空間の歪みが起こって、ライたちが揺さぶられた。
「何だ、これは!?・・空間の歪み・・!?」
「普通の空間の歪みとは違う・・もしかして、ラストの世界が消滅を起こしているのか・・!?」
かなたが驚いて、ライが空間の異変について言い掛ける。
「まさか、世界の消滅が、既にこの時間で起こっているというのか・・・!?」
「急がないと間に合わなくなる・・・!」
聖也とライがかなたとともに緊張をふくらませていく。彼らは足を速めて、次元のトンネルの出口へ急ぐ。
そしてライたちはトンネルの先の光を見つけた。
「あそこだ!出口があった!」
「気を付けろ!向こうで何が起こっているか分からないぞ!」
かなたが喜ぶが、聖也は警戒を強めていた。ライたちは慎重に出口を目指していく。
そして次元のトンネルを抜けて、ライたちはその先の世界へたどり着いた。
ライたちが足を踏み入れたのは、人通りのある街の中心だった。
「あれ、電王たちじゃないか!」
「ゼロノスもNEW電王も・・でも、ベルトがちょっと違う・・!?」
周りにいた人たちがライたちを見て動揺を見せる。
「みんなのこの反応・・ここも、仮面ライダーがTVで放送されている世界なのか・・・?」
「そうとは限らない。仮面ライダーが現れて、みんなに知られている世界かもしれない・・」
かなたが周りを見回して動揺して、聖也が推測する。
「1回ここから離れよう・・それからラストを捜すぞ・・・!」
ライが言って、聖也たちとともにこの場を離れた。
“変身カイジョー。”
“ダークリリース。”
彼らは人目の付かないところで変身を解いた。
「この世界にいるライダーの誰かを捜そう。事情を話して、世界の破滅を起こさせないようにしないと・・」
聖也がこれからのことをライとかなたに告げる。
「電王のことをみんな知ってるってことは、オレたちの世界にいたライダーが、この世界にもいるということだ。」
「ライダーを見つけて事情を話す。そうすればここのライダーたちは、戦い方を考慮するはずだ。」
ライと聖也が言って、仮面ライダーたちの行方を追う。ライが電王ソウルを手にして念じて、電王の行方を探る。
「感じる・・この近くにいる・・・!?」
ライが気配を感じて、その方向に振り向いた。
「えっ!?この近くに!?」
「あぁ・・しかもこっちに近づいてきてる・・・!」
驚きを見せるかなたに答えて、ライが息をのんだ。次の瞬間、彼らの前に現れたのは、赤い鬼のような怪人だった。
「き、君は!」
「き、君はってか!?オレ、参上!」
かなたが指さすと、怪人が驚きを見せてから、高らかにポーズを決めた。
「モモタロス!この世界のモモタロスだよ!」
かなたが怪人、モモタロスの登場を喜ぶ。
「何っ!?何でオレのこと知ってんだ!?おめぇら、何もんだ!?」
「話すと長くなりそうだけど、今は緊急事態なんだ!他の仮面ライダーがどこにいるか、教えてほしいだけど・・!」
動揺しながら問いかけるモモタロスに、かなたが慌てて頼む。
「オレたちは別の世界から来たんだ。この世界が消滅しようとしているから、それを止めようとしている・・」
「この世界が消滅する!?おいおい、寝言は寝て言えってんだ!」
ライが語りかけるが、モモタロスは信じようとせずバカにしてくる。
「ホントだ・・オレたちはオレたちの世界で、仮面ライダーの力を使えるようになったんだ。その証拠が・・」
ライが話を続けて、電王ソウルをモモタロスに見せた。
「こりゃ、電王じゃねぇか!何なんだよ、こりゃ!?」
モモタロスが電王ソウルを見て、さらに驚きを見せた。
そのとき、大通りのほうから爆音が響いてきて、ライたちが振り返った。街中に怪人たちが現れて、人々を襲っていた。
「チッ!またハイパーショッカーが出やがったか!・・話は後だ!ヤツらを片付けるのが先だ!いくぜ、いくぜ、いくぜー!」
モモタロスが怪人たちを追って飛び出していった。
「待って、モモタロス!」
かなたが呼び止めるが、モモタロスは大通りに行ってしまった。
「私たちも行くぞ。この先にライダーのみんながいる可能性が高い・・!」
聖也がライ、かなたと一緒にモモタロスを追いかける。大通りでは怪人、ジャガーマン、ガライ、モールイマジンがいて、さらにレイドラグーンとダークローチの大群が蠢いていた。
「怪人たちが暴れている・・ライダーのみんなも集まってきている・・!」
「みんなに真実を話して、うまく力をコントロールしてもらわないと・・!」
かなたとライが不安を感じて、ライダーたちの戦いに割り込むことを決めた。
“クロス!”
“クラール!”
“ルシファー!”
ライたちがクロスソウル、クラールソウル、ルシファーソウルを手にしてクロスドライバー、クラールドライバー、ルシファードライバーにセットした。
「変身!」
“変身・ライダー!クロース!”
“変身・ライダー!クラール!”
“ダークチェンジ・ルシファー。”
ライ、聖也、かなたがクロス、クラール、ルシファーに変身して、モモタロスたちの戦いに飛び込んだ。
「戦う前に話を聞いてくれ!仮面ライダーの力を集中させすぎると、次元に大きな歪みが起こる!その歪みに押しつぶされて、この世界が消滅してしまうんだ!」
ライがモモタロスや仮面ライダーたちに事情を話す。
「それは本当か、君!?」
「我々の力が合わせることで、世界が破滅するというのか!?」
怪人たちと戦っていた1号と2号が驚きの声を上げる。
「はい!ライダー全員がエネルギーを集中させていけば、空間が歪む!うまく力をコントロールしながら戦えば・・!」
ライが答えてから、向かってきたレイドラグーンとダークローチを迎撃する。
「みんな、我々の力が集中しないよう、別れて戦うぞ!」
「敵も分散させれば、力の集まりを止めることにつながる!」
1号と2号がモモタロスたちに呼びかける。
「乗ってやるぜ、それ!邪魔されずに戦いやすくなるからな!」
モモタロスが笑みをこぼして、「デンオウベルト」を装着した。
「変身!」
“Sword form.”
パスカード「ライダーパス」をデンオウベルトにかざして、モモタロスは電王・ソードフォームに変身した。
「オレ、参上!」
モモタロスがポーズを決めて、モールイマジンたちを引きつれて離れていく。他の仮面ライダーたちも怪人たちを引きつけて散開していく。
「オレたちもライダーたちに加勢しよう。みんなが離れていれば、オレたちが協力することも問題にならなくなるはず・・!」
「でも、どっちへ行ったらいいのか・・・!?」
ライが言いかけて、かなたが周りを見まして疑問を投げかける。
「モモタロスのところへ行こう!彼のことだから、手加減をしそうにない・・!」
「ラストの動きと正体にも注意して行動しよう・・オレたちのホントの目的はそれだから・・!」
聖也が判断して、ライが続けて呼びかける。3人は続けてモモタロスを追う形で移動した。
ラストが元いた世界では、ライたちのいる世界のように、それぞれの仮面ライダーの世界が1つに合わさっていた。そして仮面ライダーと怪人の戦いが激しくなっていた。
この戦いによって被害を受けた人も多くなっていた。
(何で!?・・何でこんなことになっているんだ・・・!?)
1人の男、尾張シュウが道の隅で体を震わせていた。彼は家族も親友も、仮面ライダーと怪人の戦いに巻き込まれて、命を落としていた。
(オレたちは何も悪いことをしていない・・悪いのはバケモノたちと、みんなを守れていない仮面ライダーたち・・・!)
シュウは怪人だけでなく、仮面ライダーにも憎悪を向けていた。
(許せない・・・どいつもこいつも、許せるものか・・・!)
怒りを爆発させて、心の中で叫ぶシュウ。
そのとき、ベルト、ラストドライバーが現れてシュウの腰に装着された。
「このベルトは・・・!?」
シュウがラストドライバーを見て驚く。彼の手のひらに、さらにラストソウルが現れた。
「もしかしてこれは、仮面ライダーの・・・!?」
シュウがラストソウルを見つめて、戸惑いを感じていく。
“ラスト。”
彼はラストソウルのスイッチを押して、ラストドライバーにセットして、左のレバーを上に上げてラストタイフーンを回転させた。
“ライダーチェンジ・ラスト。”
シュウの体を黒い装甲が包み込んだ。彼はラストへの変身を果たした。
「オレが、仮面ライダーに・・これなら、この戦いを止めることができる・・・!」
仮面ライダーの戦いは自分が終わらせる。シュウは決意を固めて、自分の体からあふれる力を発揮した。