仮面ライダークロス
-Endless Rider’s history-
第2章
他の仮面ライダーに会いに行くため、ライ、聖也、かなた、レントは街中の大学の近くへ来ていた。
「この近くに仮面ライダーがいる。この日は来ているはずだ。」
「ここはオレたちは初めて来るところだ・・」
レントが声を掛けて、ライが周りを見回す。
「もしかしたら、僕たちの知らないライダーなんじゃ・・」
かなたがその仮面ライダーについて推測した。
「レントくん、その仮面ライダーについて詳しく聞きたいのだが・・」
聖也がレントに疑問を投げかけてきた。
「堂安主水、仮面ライダークイズ。2040年の未来からやってきたライダーだ。」
「未来の仮面ライダー・・!?」
レントの話を聞いて、かなたが驚きを見せる。
「電王のイマジンも、ジオウと行動をともにしているゲイツとウォズも、未来から来たんだった・・」
「ジオウ・・常盤ソウゴに会ったことがあるのか・・?」
かなたが記憶を巡らせて、レントがソウゴたちのことを聞く。
「あぁ。ちょっとだけ会ったことがある。オレたちと違う形で、仮面ライダーの力を使っている・・」
ライがソウゴのことを思い出して答える。
「レントのように、ソウゴたちが会っていてオレたちが初めて会うことになるライダーが、まだまだいるってことか・・」
自分たちの知らない仮面ライダーの存在に、ライは期待と戸惑いを感じていた。
そのとき、レントが近づいてくる足音を耳にして、警戒を覚える。
「この近くにも、ヒューマノイズがいる。真っ直ぐにオレたちを目指している・・!」
「えっ!?分かるのか、レント・・!?」
ヒューマノイズの接近に気付いたレントに、ライが驚きを覚える。
「ここで戦えば、ここにいる人たちを巻き込むことになる。主水には悪いが、人のいないところへ移動するしかない。」
レントが判断を下して、ライたちが頷いた。彼らは大学から離れて、人気のない広場に移動した。
「ここなら人への被害を抑えることができる・・・!」
聖也が言いかけてライ、かなた、レントとともにいつでも変身できるようにした。
「人間に味方する仮面ライダー。」
「全員、我々がここで排除する。」
「1人たりとも逃がしはしない。」
建物や物陰から人々が現れて、ライたちを取り囲んだ。その全員がヒューマノイズである。
「周りを巻き込まないようにすると判断したのだろうが・・」
「それは我々も予測している。その上で包囲網を敷かせてもらった。」
ヒューマノイズたちが自分たちの目論みを告げて、ライたちが緊張を覚える。
「私たちの行動をここまで読んで、包囲したというのか・・・!?」
「これじゃ逆に追い込まれちゃってるよ〜・・!」
聖也が焦りを噛みしめて、かなたが動揺を浮かべる。
「こうなったら戦うしかない・・4人で切り抜けて、もう1人のライダーに会いに行く・・!」
ライが言いかけて、レントたちが頷いた。ライ、聖也、かなたがそれぞれのベルトとライダーソウルを手にした。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。
“クロス!”
音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。
“ライダーソウール!”
ライは意識を集中して構えを取る。
「変身!」
彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。
“クラール!”
“ライダーソウール!”
聖也がクラールソウルのスイッチを入れて、クラールドライバーにセットした。
「変身!」
聖也は左手を斜め右上に振り上げて、クラールドライバーの左レバーを上に上げて、クラールタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クラール!”
彼の体をオレンジ、黒、銀に彩られた装甲とマスクが包んだ。
“ルシファードライバー。”
“ルシファー!”
かなたがルシファードライバーを装着して、ルシファーソウルのスイッチを入れた。
“ライダーソウル。”
彼がルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。
「変身。」
かなたがルシファーハリケーンを中心へ押し込んだ。
“ダークチェンジ・ルシファー。”
紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとったかなた。ライ、聖也、かなたがクロス、クラール、ルシファーへの変身を果たした。
「変身!」
レントもスクリューダーとスパナーダーを手にして、キカイドライバーにセットした。
“デカイ・ハカイ・ゴーカイ!仮面ライダー・キカイ!”
彼は機械的な装甲を身にまとって、キカイに変身した。
「全てを、オレが正す!」
「仮面ライダーと正義の力、お前も受けてみろ・・!」
「この悪魔の力で、みんなを守る!」
「鋼のボディに熱いハート!仮面ライダーキカイ!」
ライ、聖也、かなた、レントが言い放って、ヒューマノイズを迎え撃つ。
ライとかなたが同時にパンチを繰り出すが、ヒューマノイドはジャンプしてかわした。
「ホントに速くて正確だよ、このヒューマノイズっていうの・・!」
「遠慮やためらいをすれば逆にやられることになるぞ・・!」
ヒューマノイズの力を痛感して焦るかなたに、聖也が注意する。
「だけど、人の姿でいられると・・・!」
かなたがためらいを感じて、反撃がままならなくなる。その彼の体に、ヒューマノイズたちが力を込めた打撃を叩き込んだ。
「うあっ!」
かなたが大きく突き飛ばされて、激しく地面を転がる。
「かなた!」
ライが叫んで、迫ってきたヒューマノイズに足を出して蹴り飛ばした。
「やるしかないということか・・!」
ライが新たにライダーソウル「クロスワイズソウル」を取り出した。
“クロスワイズ!”
ライがクロスワイズソウルを手にして、スイッチを入れた。
“ライダーソウール!”
彼がクロスドライバーにセットされているクロスソウルを、クロスワイズソウルと入れ替える。
「大変身!」
ライがクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“大変身!クロスワーイズ!”
クロスの装甲に赤いラインが入って、マスクの形と目元も鋭くなった。クロスの強化形態「クロスワイズ」である。
迫ってきたヒューマノイズ2人に、ライがひじ打ちとパンチを当てた。ヒューマノイズたちが突き飛ばされて、建物の壁に叩きつけられる。
「ライの戦闘力が増した。パワーアップを果たしたということか・・!」
レントがライの力を見て呟く。
「だけどヒューマノイズ、数が増えてない!?もしかして、みんなこっちに集まってきてるってこと!?」
「我々を一掃するために、ヒューマノイズが企てたというのか・・!」
数で制圧しようとするヒューマノイズに、かなたと聖也が次第に追い詰められていく。
「聖也さん!かなた!」
ライが2人を援護しようとして、クロスタイフーンの右のレバーを右手で上げて回転させた。
“ライダースマッシュ・クロスワーイズ!”
ライのまとうクロスの装甲から光があふれ出す。彼は前に走り出してジャンプして、ヒューマノイズたちに向かって右足を出した。
「クロスワイズキック!」
ライの繰り出したキックが、ヒューマノイズ数人を撃破した。しかし他のヒューマノイズたちが、聖也たちに迫っていた。
「これでは合流できない・・!」
ライも聖也たちも絶体絶命を痛感する。聖也とかなたに追撃を与えようとした次の瞬間、ヒューマノイズたちが突然攻撃の手を止めた。
ライたちの前に2人の青年が現れた。ヒューマノイズたちは彼らを警戒していた。
「ヒューマノイズが、仮面ライダーたちを集中攻撃しているみたいだな・・」
「なら、オレたちも加勢するのが正解だな。」
2人の青年がライたちを見て声を掛け合う。
「主水!・・蓮太郎も一緒だったか・・!」
レントが2人の青年、主水と神蔵蓮太郎を見て声を上げる。
「仮面ライダーに異変が起きていることは、オレも気付いていた。うまく主水と合流できてよかった・・」
「そして無事にお前たちのところに着けた・・オレたちも戦うぞ・・!」
蓮太郎が笑みをこぼして、主水とともにヒューマノイズに向かっていく。
蓮太郎がひょうたん「シノビヒョウタン」を取り出して、中の液体を垂らす。液体が変化して、ベルト「シノビドライバー」とプレート「メンキョカイデンプレート」になった。
「変身!」
彼がシノビドライバーの中央部に、メンキョカイデンプレートをセットする。
“誰じゃ・俺じゃ・忍者!シノービ・見参!”
背後に現れたガマガエル型ロボット「クロガネオオガマ」と一体となって、紫の装束と銀の仮面を身にまとった蓮太郎。
「忍と書いて刃の心!仮面ライダーシノビ!」
蓮太郎が名乗りを上げてポーズを決めた。彼は仮面ライダー、シノビに変身した。
主水も首に下げている「クエスチョンペンダント」に触れて、ベルト「クイズドライバー」を装着した。
「変身!」
彼がクイズドライバーに「?」マークの形をした「クイズトッパー」をセットした。
“ファッション・パッション・クエスチョン!クイズ!”
主水の体を赤と青の装甲、金と銀の仮面が包み込んだ。胸部には赤いマルと青いバツのマークが入っていた。
「救えよ世界!答えよ正解!仮面ライダークイズ!」
仮面ライダークイズに変身した主水が、名乗りを上げた。
「シノビとクイズ・・私たちが初めて会う仮面ライダーだ・・!」
聖也が蓮太郎たちを見て、戸惑いを覚える。
「仮面ライダーが2人加わったか。」
「数でライダーたちを圧倒できるか。」
ヒューマノイズたちが蓮太郎たちの加勢を計算して、全滅させる算段を導いていく。
「計算だけで、オレたちに勝つことはできないぞ!」
「力と知識をうまく使いこなすことが大切な。仲間がそばにいるなら、チームワークもだ。」
蓮太郎と主水が言い放って、ヒューマノイズたちに攻撃を仕掛けた。
蓮太郎が忍者刀を手にして、ヒューマノイズの胴体を的確に切りつけていく。
「ヒューマノイズはオレに攻撃を当てられる。マルがバツか?」
迫り来るヒューマノイズたちに向けて、主水が問題を出した。次の瞬間、そのヒューマノイズたちが電撃に襲われた。
「答えは、バツだ。」
倒れたヒューマノイズたちに、主水が静かに告げた。
“ビクトリー忍術!”
光を刀身に集めた刀を振りかざす蓮太郎。斬りつけられたヒューマノイズたちが爆発を起こした。
主水がクイズトッパーを1度取り出して、「!」マークのシンボリックモードにしてセットし直した。
「ヒューマノイズはオレの攻撃からは逃げられない。マルかバツか?」
彼が問題を出して、ジャンプをして右足を出した。
「答えは、マルだ・・!」
マルが描かれたエネルギーを通って、主水がキックを繰り出してヒューマノイズたちを吹き飛ばした。
「すごい・・シノビとクイズの強さと能力・・・!」
かなたが蓮太郎たちの強さに驚く。蓮太郎たちの活躍で、包囲網を敷いてきたヒューマノイズたちは全滅した。
「蓮太郎、主水、2人とも来てくれたか・・」
レントが蓮太郎たちと合流して声を掛けた。3人がそれぞれ変身を解いた。
「お前たちがクロス、クラール、ルシファーだな。噂は耳にしているよ。」
主水がライたちに向かって声を掛けてきた。
“変身カイジョー。”
“ダークリリース。”
ライたちも変身を解いて、自分たちの正体を蓮太郎と主水に明かした。
「オレは十時ライ。この2人は滝聖也さんと市川かなた。」
ライが蓮太郎たちに自己紹介をして、聖也たちも紹介した。
「2人とも、はじめましてになるね。よろしく、シノビ、クイズ。」
「神蔵蓮太郎だ。」
「堂安主水だ。よろしくな、かなた。」
蓮太郎と主水も自己紹介をしてかなた、ライと握手を交わした。
「ライ、仮面ライダーの中で異変が起こっている。何者かにライダーが襲撃されている・・」
「えっ!?仮面ライダーが!?」
主水が切り出した話に、かなたが驚きをあらわにする。
「オレたちも自分たち以外にも仮面ライダーが存在していることを知っている。会ったことのあるライダーも何人かいる。そのライダーの多くも、襲撃されて行方が分からなくなっているんだ・・」
「・・・行方だけじゃなく、存在も分からなくなっているかもしれない・・・」
蓮太郎が話を続けて、ライが深刻さを覚える。
「存在が分からないって・・どういうことだ・・!?」
主水が疑問を投げかけると、ライがライダーソウルの1つを取り出した。仮面ライダーゼクロスの力が宿っている「ゼクロスソウル」だが、色と模様が既に失われていた。
「これはゼクロスの!?・・ゼクロスとも連絡が取れてないが・・・!」
蓮太郎がゼクロスソウルを見て、驚きの声を上げる。
「ライダーソウル。仮面ライダーの力を宿したソウルで、私たちはソウルを使うことができる。そのライダーの姿になることも、その力や技を使うことも。」
聖也がライダーソウルについて説明していく。
「だけど今は、使えなくなったソウルが出てきている・・ゼクロスのソウルも・・」
「ゼクロスや他のライダーの身に何かが起こったと見て間違いなさそうだ・・ライダーソウルは、そのライダーとのつながりの証でもあるから・・」
ライと聖也が深刻な顔を浮かべて、話を続けた。
「敵の正体を見つけて事件を解決しないと、仮面ライダーは助けられない・・・!」
かなたがやるべきことを確認して、ライたちも頷いた。
「でも、どうやってその敵を見つければいいんだ・・・!?」
「ライダーを狙っているから、向こうからやってくる可能性は高いけど、それまで待っているわけにもいかない・・・!」
ライとかなたがライダーへの襲撃者を見つける方法を考えて悩む。
「別れて捜すのが効果的と言いたいが、戦力が分断して1人ずつ叩かれる危険が高くなる。それは避けたいところだ・・」
「時間はかかるが、離れずにまとまって行動したほうがいい。そして残っているライダーを見つけて、合流していく・・」
レントと主水が最善の方法を告げる。
「まずは残っているライダーソウルを頼りにして、他の仮面ライダーと連絡を取ってみるよ。それでうまく合流できれば・・」
ライが提案を口にして、他のライダーソウルを手にした。仮面ライダービルドの力を宿した「ビルドソウル」である。
「無事なのが分かっているライダーから、片っ端から・・」
ライはライダーソウルの無事を頼りにして、ライダーたちへの連絡を試みた。
そのとき、ビルドソウルから色とビルドの仮面の絵柄が消えた。
「なっ!?」
「ビルドのソウルが!?・・まさかビルドも!?」
ライとかなたがビルドソウルを見て驚く。
「ライくん、残りのソウルを確認するんだ!」
聖也が呼びかけてライ、かなたとともに他のライダーソウルを確かめた。色と力を失っていないライダーソウルは、残りわずかとなっていた。
「1人ずつ片っ端から連絡を取るしかない・・そのライダーが無事かどうかは、ライダーソウルを見れば分かる・・!」
「まずはゴースト・・天空寺タケルさんに・・・!」
聖也が呼びかけて、ライがスマートフォンを取り出して連絡を試みた。しかしタケルにつながらない。
「まさか、もう襲撃されているんじゃ・・・!?」
「普通に連絡が取れないってだけならいいけど・・・」
ライとかなたが不安を噛みしめて、仮面ライダーゴーストのライダーソウル「ゴーストソウル」に意識を傾けた。
そのとき、ライの脳裏にタケルの姿が浮かび上がった。
「タケルさん!?・・これは・・!?」
ライがタケルに対して驚きを覚える。
「ライ、どうしたの・・!?」
かなたがライの異変に声を上げる。かなたの頭の中には、タケルの姿が浮かんでいなかった。
「オレだけに見えているのか・・タケルさんの姿が見えた・・誰かと戦っている・・・!」
「えっ!?」
ライが説明をして、かなたと聖也、蓮太郎と主水が驚く。
「戦っているって、誰と・・!?」
「分からない・・姿から見て、仮面ライダーだけど、初めて見る姿だ・・・!」
かなたの問いに、ライがビジョンを確かめて答える。タケルは謎の仮面ライダーと戦っていた。
「まさかあれが、ライダーを襲っている敵!?・・急いでタケルさんのところへ行かなくちゃ・・!」
危機感を覚えたライが、ライダーソウル「クロスレイダーソウル」を手にした。
“クロスレイダー!”
ライがクロスレイダーソウルのスイッチを入れると、1台のバイクが姿を現した。クロス専用バイク「クロスレイダー」である。
「オレは先に行く!タケルさんを助けに行く!」
「待て、ライくん!1人で行くのは危険だ!」
走り出したライを、聖也が呼び止める。しかしライは止まることなく、クロスレイダーのスピードを上げた。
「オレが追いかける!ライにムチャはさせない!」
蓮太郎が聖也たちに言って、シノビに変身してライを追いかけた。
「私たちも急ごう・・!」
聖也がかなたたちとともに、ライたちを追っていった。
ライの見たビジョンの通り、タケルはゴーストに変身して戦っていた。その相手はラストだった。
「仮面ライダーゴースト、お前もここまでだ。」
「もしかして、仮面ライダーを襲っていたのは、お前なのか・・!?」
迫るラストにタケルが問いかける。
「仮面ライダーの歴史は終わる。仮面ライダーは、私1人存在すればいい。」
「そんな勝手なこと、認めるわけにはいかない・・ライダーの命を、弄ばせるわけにいかない!」
ラストの口にする言葉に、タケルが反発する。
「仮面ライダーは常軌を逸した力を備えている。その常人離れした者が多数存在することは、世界の混乱を招くこととなる。」
「世界の混乱!?・・どういうことだ・・!?」
「お前たちが消滅すれば、世界は安定する。仮面ライダーは、私1人いればいい。」
「他のライダーを消して世界を安定させる・・誰かを犠牲にして平和を作ろうとしても、絶対に平和にはならない!」
自分の目的を語るラストに、タケルが反発する。
「それ以外に術はない。お前もこの宿命を受け入れるか、全ての世界とともに崩壊を果たすか。いずれにしろ、お前たちが辿るのは滅びの末路だけだ。」
「そんなことはない!オレの魂もライダーも、滅びることはない!」
警告するラストに言い返して、タケルがベルト「ゴーストドライバー」のレバーを引いて押した。
“ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!”
足にエネルギーを集めたタケルが、大きくジャンプをしてキックを繰り出した。
「感情や精神論で片付くほど、世界の破滅の回避は簡単ではない。」
ラストがため息をついてから、ラストドライバーの右のレバーを上に上げて、ラストタイフーンを回転させた。
“ライダースマッシュ・ラスト。”
ラストもジャンプをして、タケルとキックをぶつけ合った。キックの衝突が閃光になって広がった。
「アレは!?」
クロスレイダーに乗って駆けつけたライが、その光を目の当たりにした。
「タケルさん!」
ライがクロスレイダーを走らせて、タケルたちに向かっていく。光の中から現れたのは、ラストだけだった。
「お前は、タケルさんと戦っていた・・・タケルさんはどうした!?」
クロスレイダーから降りたライが、ラストに問い詰める。
「ゴーストも消滅を果たした。存在そのものが消えたから、死んで魂だけになることもできない。」
ラストがライに目を向けて、静かに答える。
「お前のほうが来てくれるとはな、クロス。仮面ライダーの力を束ねるライダーの1人。」
「お前は誰だ・・タケルさんを、どうしたんだ!?」
笑みをこぼすラストに、ライが怒りを込めて問い詰める。
「私はラスト。最後にして最大の仮面ライダー。私以外の全ての仮面ライダーの存在を消す。」
「ライダーを消す!?・・大切なものを守ろうとする優しい心を持っているなら、ライダーは存在を消されていいわけがない!」
自己紹介をするラストに対して怒りをふくらませて、ライがクロスドライバーとクロスソウルを手にした。
“クロスドライバー!”
ライがクロスドライバーを装着した。
“クロス!”
“ライダーソウール!”
彼がクロスソウルをクロスドライバーにセットした。
「変身!」
ライが左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!クロース!”
クロスドライバーからあふれた光を浴びて、ライはクロスに変身した。
「ライダーのみんなを元に戻せ・・でなければ徹底的に叩き潰す!」
「お前も消えることになる。お前も世界の人柱となれ。」
鋭く言い放つライだが、ラストは彼も倒そうと近づいてくる。
ライがラストを狙って打撃を繰り出す。しかしライのパンチもキックも、ラストに軽々とかわされる。
「速い・・こんな簡単によけるなんて・・!」
「この程度の攻撃では、私を倒すことなど不可能だ。」
脅威を覚えるライに、ラストが冷静に告げる。ラストが一気にスピードを上げて、ライの懐に飛び込んだ。
「うっ!」
ラストの繰り出したパンチを体に叩き込まれて、ライがふらつく。重みのある一撃に、彼は体勢を整えられなくなっていた。
「クロスになっているのに、ここまでのダメージが・・・!」
ライが痛みに耐えながら、ラストの力に毒づく。
「これがお前と私の決定的な差だ。たとえお前でも埋めようがない。」
「まだだ・・これで諦めると思うな!」
忠告をするラストに言い返して、ライがライダーソウルを取り出した。仮面ライダーファイズの「ファイズソウル」である。
“ファイズ!”
“ライダーソウール!”
彼がクロスドライバーにファイズソウルをセットして、クロスタイフーンを回転させた。
“変身・ライダー!ファーイズ!”
クロスの装甲がファイズそっくりになった。ライはファイズの姿と力を宿した「ファイズフォーム」になった。
「パワーとスピードを上げて、お前を倒す!」
ライが言い放って、再びラストに立ち向かう。パワーとスピードが上がったライだが、ラストは今の彼の攻撃もかわしていく。
「お前を倒した後は、ファイズを狙うことになりそうだ。」
「そんなことはさせない!これ以上ライダーを消させはしない!」
ラストの呟きが、ライの感情を逆撫でする。彼がクロスドライバーの右レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。
“ライダースマッシュ・ファーイズ!”
ライがジャンプして右足を出して、光の円錐を放ってラストに狙いを定める。
「クロスクリムゾンスマッシュ!」
ライが光の円錐を通って、ラスト目がけてキックを繰り出した。その瞬間、ラストが左手をかざして光の渦を出して、円錐とキックを防いだ。
「同じ軌道の力を働かせれば、防御は完全だ。」
ラストは冷静に告げてから、右手を握りしめてパンチを繰り出した。
「ぐあっ!」
パンチを受けたライが突き飛ばされて、地面に叩きつけられる。
「ライ!」
そこへ蓮太郎が駆けつけて、ライに向かって叫ぶ。
「もう1人、仮面ライダーが来たか。クロスを倒した後、お前も葬る。」
ラストが蓮太郎に告げてから、ライに視線を戻す。彼がラストドライバーの右のレバーを上に上げて、ラストタイフーンを回転させた。
“ライダースマッシュ・ラスト。”
飛び上がったラストがライに向かって、両足のキックを繰り出した。立ち上がるライだが、回避が間に合わない。
次の瞬間、蓮太郎が高速で飛び出して、ライを連れてラストから遠ざかった。キックを外したラストが、ライたちに振り向く。
「高速でクロスを助けたか。しかしわずかに生き延びられるだけだ。」
去っていくライと蓮太郎を追うことなく、ラストはゆっくりと歩き出してこの場を後にした。
蓮太郎に助けられて、ライは聖也たちのところへ戻ってきた。しかしタケルを助けられなかったことに、ライは悔しさを感じていた。
「タケルさんがピンチだって気付けたのに・・間に合わなかった・・・!」
ライが自分への怒りをふくらませて、握った手を壁に叩きつけた。
「自分を責めるな、ライくん。私たちでも間に合わなかったのだから・・」
聖也が励ますが、ライは自分を許せないままだった。
「それにしても、あの仮面ライダーは何者なんだ・・!?」
蓮太郎がラストについて考える。
「ラスト・・そのライダーが他のライダーを倒して回っているというのか・・!?」
「ヤツを野放しにすれば、ヤツ以外の全てのライダーが世界から消えることになる。そうなれば世界が混沌となり、怪人や脅威が現れたときの対処も絶望的となるぞ・・」
主水とレントもラストに対して警戒を強める。
「ライ、やっぱりバラバラに行動しないで、まとまって動いて、他のライダーと合流していこう・・!」
かなたが気持ちを切り替えようとしながら、ライに呼びかける。
「あぁ・・オレ、やってやる・・アイツを倒して、みんなを助け出す・・!」
頷いたライが、ラストへの憎悪をたぎらせていく。
「ライくん・・・」
ライの様子を気にして、聖也は深刻さを感じていた。