仮面ライダークロス

-Endless Rider’s history-

第1章

 

 

仮面ライダー。

世界や人々を脅かす怪人に、素顔を隠して戦い続ける戦士。

 

長い歴史の中、様々な世界で、数多くの仮面ライダーが登場した。

世界や地球、自由や命を守るため。大切なものを守るため。

 

この歴史の中で、まだ知られていない仮面ライダーも存在している。

 

 

 正義と平和のために戦いを続けている仮面ライダー。その最初のライダー、1号が2号とともに襲撃を受けていた。

 ダブルライダーの前に立ちはだかったのは、黒い体に赤いラインが施されている仮面ライダーだった。

「何だ、このライダーは・・!?

「今まで会った中で強く邪悪なライダーだ・・!」

 2号と1号が眼前のライダーに対して、危機感をふくらませていく。

「私は仮面ライダーラスト。最後にして最大の仮面ライダー。」

 仮面ライダー、ラストが1号たちに向けて告げる。

「最初の仮面ライダーである1号ライダー、そして1号と同等の能力を持つ2号ライダー、お前たちの時代が終わった。」

「お前が何をしようと、正義も平和も、仮面ライダーの歴史も終わらせることはできないぞ!」

 ラストに対して2号が言い返す。

「たとえオレたちが敗れることになろうと、仮面ライダーの魂は滅びることはない!」

 1号も言い放って、2号とともに構えを取る。

「私が私以外の仮面ライダーを滅ぼし、その歴史に終止符を打つ。」

 ラストが口調を変えずに、ベルト「ラストドライバー」の右のレバーを上に上げて、中心にある「ラストタイフーン」を回転させた。

“ライダースマッシュ・ラスト。”

 ラストの両足からまばゆい光が発する。彼が上空に浮遊して、1号たちに向かって急降下する。

「ラストライダーキック。」

 ラストが繰り出した両足のキックで、1号たちのいる場所が爆発に包まれた。

「おわあっ!」

 絶叫が響く中、1号と2号の姿が爆発の中に消えた。

「これで1号と2号の存在は消えた。だが次元が1つになっているこの世界では、2人が消えたところで他の仮面ライダーには何の影響もない。」

 着地したラストが上がっていく炎を見つめて呟きかける。

「1人ずつ倒していくしかない。新しく現れたライダーも・・」

 他の仮面ライダーも倒すことを考えて、ラストは歩き出した。

 

 バイク店「(たちばな)モーターショップ」。橘ひろしが店長を務めるこの店には、2人の青年が居候して手伝いをしていた。

 十時(ととき)ライと市川(いちかわ)かなた。ひろしに保護された彼らは、店の仕事をしてバイクの整備や機械の調整の技術を身に付けていった。

「ライとかなたがオレのところに来てから、ずいぶん経つか・・」

 バイク整備をしているライたちを見て、ひろしが記憶を巡らせる。

「オレを助けてここまで育ててくれたおやっさんには、ホントに感謝しているよ・・」

「おかげで細かい作業に慣れたからね♪」

 ライが微笑んでひろしに感謝して、かなたが笑顔を見せる。

「調子に乗りすぎて大雑把になることがあるからな、かなたの場合は。」

「ち、ちょっと、おやっさん!ひどいよ、その言い方は〜!」

 ひろしが投げかけたこの言葉に、かなたが悲鳴を上げる。それを見てライがさらに笑みをこぼす。

「おやっさんには感謝してる。バイクの修理で苦労することはあるけど、やりがいを感じてるよ。」

 ライがひろしに思いを口にして、そばにあるバイクに優しく手を乗せた。

「お前らが少しでも充実な人生を送ってくれるなら、オレは嬉しいよ。」

 彼の言葉が嬉しくて、ひろしが照れ笑いを見せた。

「みんな、こんにちは。」

 そこへ1人の少女が橘モーターショップを訪れて、ライたちに挨拶してきた。

「まりちゃん、こんにちは♪今日もがんばってるよー♪」

 かなたが少女、緑川(みどりかわ)まりに笑顔で挨拶する。

「ひろしさん、商店街に新しくできたパン屋で買ってきたんです。ひろしさんたちもどうぞ。」

 まりがパン屋で買ってきたあんぱんを見せた。

「よかった〜♪ちょっと小腹がすいてたとこだったんだよ〜♪」

 かなたが喜んで、あんぱんの1つを受け取って口に運んだ。

「おいしい♪こりゃ人気が出るよ〜♪」

 かなたがあんぱんの味に喜んで、笑顔を振りまく。

「うん。開店して1週間近くだけど、本当に繁盛しているよ。今日は私は早めに来て買ったけど、お昼や夕方は行列ができるくらいなんだから。」

「そんなにすごい店なのかぁ。こりゃ直接行って買うのはしばらく先になりそうだな・・」

 まりの話を聞いて、ひろしが苦笑いを見せた。

“速報が入りました。3人の男女が破壊活動を開始。街中で暴れています。”

 そのとき、TVのニュースから速報が流れて、ライたちがTVに目を向ける。

「この場所、このパンを売っていたパン屋のあるところだよ!」

「何だって!?

 まりが声を上げて、かなたとひろしが驚く。

「もしかして、“ハイパーショッカー”が動き出したのか!?・・オレ、行ってくる!」

「ライ、僕も行くよ!」

 ライが外へ飛び出して、かなたも続いた。

「ライくん・・かなたくん・・・」

 ライたちを見送って、まりは2人が無事に戻ってくることを信じた。

 

 街では店や建物の窓ガラスが割られ、段ボールや品物が散乱していた。その中心に3人の男女が立っていた。

「ここは人間が集まっている。」

「人間は破壊する。1人たりとも逃しはしない。」

 男女が無表情で呟いて、逃げ惑う人々を追って歩いていく。その街中にライとかなたが駆けつけてきた。

「やめろ!人間に化けた怪人なんじゃないのか!?

 かなたが呼び止めると、男女がゆっくりと彼らに振り向いてきた。

「お前たちも人間。人間は我々が排除する。」

 男の1人がライたちに迫る。その動きは、一般人に思える容姿からは想像できないものだった。

「ちょっと!は、速いって!」

 男の繰り出すパンチと飛び蹴りを、かなたが慌ててかわす。

「人の姿を持つ怪人・・“オルフェノク”、上級の“アンデッド”、“ワーム”、“ファンガイア”、“ロイミュード”・・たくさんいて、どれなのか・・!」

 怪人の種類を思い返すライだが、特定することができない。

「このままじゃやられちゃうよ!変身しよう!」

「あ、あぁ・・!」

 かなたが呼びかけて、ライが頷いた。ライとかなたがベルト「クロスドライバー」と「ルシファードライバー」、アイテム「ライダーソウル」を取り出した。

“クロスドライバー!”

 ライがクロスドライバーを装着して、ライダーソウル「クロスソウル」のスイッチを入れた。

“クロス!”

 音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。

“ライダーソウール!”

 ライは意識を集中して構えを取る。

「変身!」

 彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、中心にある「クロスタイフーン」を回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。

“ルシファードライバー。”

“ルシファー!”

 かなたがルシファードライバーを装着して、ライダーソウル「ルシファーソウル」のスイッチを入れた。

“ライダーソウル。”

 彼がルシファーソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右側のソウルスロットに上からセットした。

「変身。」

 かなたがルシファードライバーの中心部「ルシファーハリケーン」を中心へ押し込んだ。

“ダークチェンジ・ルシファー。”

 紫のラインの入った黒く鋭い装甲とマスクを身にまとったかなた。彼とライはライダーソウルを使って戦う仮面ライダー「ルシファー」と「クロス」に変身した。

「全てを、オレが正す!」

「この悪魔の力で、みんなを守る!」

 ライとかなたが言い放って、男女と対峙する。

「お前たちは誰だ!?ハイパーショッカーか!?

「我々は“ヒューマノイズ”。この世界から人間を滅ぼす。」

 ライが問い詰めると、男女がヒューマノイズだと名乗る。

「全ては機械と、我々ヒューマノイズが支配する。」

「そんなことさせない!世界も人間も、僕たちが守ってみせる!」

 男の1人が告げて、かなたが言い返す。

 男女がスピードを上げて、ライとかなたに詰め寄ってきた。男女が繰り出すパンチはクロス、ルシファーに変身しているライとかなたの体を突き飛ばしていた。

「あの3人、とんでもない力だ・・!」

「まさに怪人・・いや、機械人間だよ・・!」

 ライとかなたがヒューマノイズの力を痛感して、焦りを噛みしめる。

「だったらこっちもパワーとスピードで対抗するしかないな・・!」

 ライが言いかけて、別のライダーソウルを取り出した。仮面ライダー響鬼(ひびき)のライダーソウル「響鬼ソウル」である。

「分かったよ、ライ!それじゃ僕はこれだ!」

 かなたが頷いて、ライダーソウルを取り出した。仮面ライダーダークカブトのライダーソウル「ダークカブトソウル」である。

“ヒビキ!”

“ライダーソウール!”

 ライが響鬼ソウルを起動して、クロスドライバーにセットされているクロスソウルと入れ替えた。

「変身!」

 ライがクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!ヒビキー!”

 ライの体を紫の炎が包んだ。その中から現れた彼は、響鬼そっくりの姿になっていた。

“ダークカブト!”

“ライダーソウル。”

 かなたがダークカブトソウルのスイッチを入れて、ルシファードライバーの右のソウルスロットにセットした。

“ダークチェンジ・ダークカブト。”

 ルシファーの装甲がダークカブトそっくりとなった。

 ライは響鬼の姿と力を宿した「響鬼フォーム」に、かなたは「ダークカブトフォーム」に変身した。2人はライダーソウルを使うことで、そのライダーの力を使うことができる。

 男女がライたちに向かって走り出す。男2人が繰り出したパンチを、ライが両手でそれぞれ受け止めた。

「響鬼さんは鍛え続けている鬼だ。力負けはしない!」

 ライが男たちの手を押し返して、両手を握りしめてパンチを繰り出す。力強い打撃を受けて突き飛ばされる男たちだが、無表情のまま平然としていた。

「クロックアップ!」

 かなたが女に向かっていって、一気にスピードを上げた。彼は超高速移動「クロックアップ」を使って、女に連続でキックを当てていく。

 反応できずに攻撃を受けて倒れる女だが、すぐに立ち上がった。

「痛みも違和感も感じていないのか・・・!?

「機械だから痛みを感じてないってことなのか・・・!」

 ヒューマノイズの性能を目の当たりにして、ライとかなたが息をのんだ。

「だったら必殺技で一気に倒してやれば・・!」

 かなたが言いかけて、ライが頷く。ライがクロスタイフーンの右のレバーを上げて、回転を加えた。

“ライダースマッシュ・ヒビキー!”

 彼の手元に紫の炎の棒が現れた。

「火炎連打の型!」

 向かってきた男の1人に対して、ライが手にした炎の棒を振りかざす。体を叩かれた男が動きを止めた。

「はっ!」

 ライが炎の棒で連続で叩いて、男に清めの音を送っていく。最後の力強い一打が当たったことで、男が爆発を起こした。

「あの仮面ライダー、我々にとって脅威となる。」

「最優先で排除する必要がある。」

 男女がライを警戒して構えを取る。

「この勢いで他のヤツも倒していくしかないか・・!」

「今度は僕に任せて!」

 毒づくライにかなたが呼びかける。彼がルシファードライバーを手にして、ルシファードライバーの左のスロットにセットした。

“ダークチャージ・ルシファー。”

 向かってくる男女を迎え撃つかなたが、右足に黒い光を集めていく。

「ダークライダーキック!」

 かなたが右足を男女に向かって振りかざした。

 そのとき、かなたから突然ルシファーへの変身が解かれた。

「えっ!?・・おわっ!」

 驚くかなたが勢いを止められず、前のめりに転ぶ。

「かなた!?

 元に戻ったかなたを見て、ライも動揺を感じていた。

「ど、どうしたんだ!?・・いきなり、変身が解けた!?

 立ち上がったかなたが自分の姿を確かめて慌てる。彼はルシファードライバーからルシファーソウルとダークカブトソウルを外した。

「こ、これは・・!?

 かなたがライダーソウルを見てさらに驚いた。ダークカブトソウルに描かれていたダークカブトのマスクのデザインが消えていた。

「どうしたんだ、かなた!?

「ダークカブトのライダーソウルの絵柄が消えている・・!」

 ライが問いかけて、かなたがダークカブトソウルを見せる。かなたがダークカブトソウルのスイッチを入れても音声が出ず、ルシファードライバーにセットしてもダークカブトフォームになれない。

「そんな!?・・全然使えない・・!?

 ダークカブトソウルが使えないことに、かなたは驚きを隠せなくなる。

「どういうことなんだ!?・・・お前たち、何をしたんだ!?

 ヒューマノイズの仕業だと考えたライが、声を張り上げて問い詰めてきた。

「状況は我々に有利になろうとしている。」

「破壊するならば今だ。」

 男女がライたちの様子を見てから、戦闘を再開する。

(変身しないとやられる・・頼む!これは使えるままになっていて!)

 かなたはルシファーソウルを信じて、スイッチを入れた。

“ルシファー!”

 ルシファーソウルからは音声が出た。

「やった!よーし!」

 かなたが喜んで、ルシファーソウルをルシファードライバーにセットした。

“ダークチェンジ・ルシファー。”

 彼は再びルシファーになって、男女に目を向けた。

「仕切り直して、お前たちをおとなしくさせて、話を聞かせてもらうぞ!」

 ライが言い放って、男女に向かって走り出した。

 そのとき、ライのクロスへの変身も突然解除された。

「なっ・・!?

 ライもこの事態に目を見開いた。体勢を崩した彼に、男女が打撃を加えようとした。

「ライ!」

 かなたがたまらず叫ぶが、ライは回避が間に合わない。

 そこへ1人の青年が飛び込んできて、男を横に蹴り飛ばした。青年に気付いた女が、ライへ攻撃をせずに後ろに下がった。

「ここにもいたか、ヒューマノイズ。だがお前たちの破壊行為はここまでだ。」

 青年が男女に向かって言いかける。彼が2つのアイテム「スクリューダー」と「スパナーダー」を手にして、ベルト「キカイドライバー」にセットした。

「変身!」

“デカイ・ハカイ・ゴーカイ!仮面ライダー・キカイ!”

 青年の体を機械的な装甲と仮面が包み込んだ。

「き、君ももしかして・・!?

「鋼のボディに熱いハート!仮面ライダーキカイ!」

 驚きを覚えるライの前で、青年が変身した戦士が名乗りを上げる。真紀那(まきな)レント、仮面ライダーキカイである。

「キカイ・・僕の知らない仮面ライダーだ・・・!」

 かなたがレントを見て、戸惑いを覚える。レントはかなたの知らない仮面ライダーだった。

「キカイ・・人間の味方をする反逆者。」

「排除する。キカイも、この2人のライダーも。」

 男女がレントも敵視して、彼に対して攻撃を仕掛ける。2人が繰り出すパンチを、レントが両手で受け止める。

 レントが反撃に転じて、男女の体にパンチを叩き込んだ。男女が強く突き飛ばされて、壁に叩きつけられ、地面を激しく転がる。

「ヒューマノイズ、お前たちが人間を襲うなら、オレがお前たちを倒す・・!」

 レントが男女に向かって鋭く言いかける。

「人間を破壊するのが、我々の目的。」

「その目的のため、我々はいかなる脅迫や恫喝は通じない。」

 男女は退くことなく、レントに向かっていく。

「仕方がない・・」

 レントが呟いてから、キカイドライバーの左右のユニットに手をかざす。

“キカイデハカイダー!”

 キカイドライバーが反応して、レントの足にエネルギーが集まる。彼が繰り出したキックが、男女に直撃して破壊した。

「やった・・あの人間に化けた怪人をやっつけた・・!」

 レントの戦いを見たライが、戸惑いを浮かべた。レントはキカイへの変身を解いて、ライに歩み寄った。

“ダークリリース。”

 かなたもルシファーへの変身を解いて、ライたちに合流した。

「ありがとう、助けてくれて・・こっちも大変なことになって、危ないところだった・・」

 ライがレントにお礼を言って微笑んだ。

「ヒューマノイズは人間を滅ぼそうとしている機械生命体だ。ヤツらからみんなを守ってくれて、オレも感謝している。」

「ヒューマノイズ?・・聞いたことがない名前だけど、今の人間に化けていた怪人のことか・・・?」

 同じく礼を言うレントに、ライが疑問を覚える。

「ヒューマノイズは人間とそっくりな姿だが、それが仮の姿というわけではない。普通のやり方では見分けはつかないだろう。」

「それじゃ、ヒューマノイズは見た目は人間そのままだっていうの!?

 レントの話を聞いて、かなたが驚きの声を上げる。

「ヒューマノイズのことは何となく分かったけど・・問題は・・・」

 ライが納得して、かなたがダークカブトソウルを手にして見つめた。

「ダークカブトのライダーソウルが使えなくなった・・どうして、こんなことになったのか・・・」

 ライダーソウルが使えない理由について考えるかなた。ライも響鬼ソウルを手にして、さらに驚きを覚える。

 響鬼ソウルも響鬼の顔のデザインが消えていた。

「響鬼さんのソウルも・・スイッチを押しても起動しない・・・」

 スイッチを入れてもクロスドライバーにセットしても響鬼ソウルが反応せず、ライが疑問をふくらませていく。

「君はもしかして、クロスか?」

「はい。十時ライです。」

 レントが問いかけて、ライが自己紹介をする。

「オレは真紀那レント。仮面ライダーキカイだ。」

 レントも名乗って手を差し伸べた。ライも微笑んで、彼の手を握って握手をした。

「君は・・!」

 その瞬間、ライはレントに対して違和感を覚えた。キカイに変身していない状態でもレントの握力が常人を超えていると、ライは直感した。

「分かったか。オレもヒューマノイズだ。だがオレには心がある。ヒューマノイズは、人間を守ろうとするオレも破壊の対象にしている。」

 レントがライたちの自分の正体を打ち明けた。

「人間を守りたいという考えが、オレの中で生じた。その考えが大事だと思えるようになって、それを実行するようになった・・」

「人間じゃないのに、人間を守ろうとする・・まさしく仮面ライダーだね。」

 レントの話を聞いて、かなたが笑みをこぼした。

「仮面ライダー・・オレや君たち、ジオウたち以外にもまだいるようだな。」

「うん。悪の組織“ショッカー”に体を改造されて、脳改造をされる前に脱出して、人類と平和を守るための戦いを始めた。それが1号ライダー、最初の仮面ライダーだよ。」

 仮面ライダーのことを考えるレントに、かなたが語りかける。

「それからいろんな場所で仮面ライダーが誕生して、悪の怪人と戦い続けてきた。」

「オレもハイパーショッカーに捕まって、クロスに変身するように調整された・・」

 かなたに続いて、ライが自分のことを語っていく。

「オレたちは仮面ライダーの力を宿したライダーソウルを使って戦っている。他の仮面ライダーのソウルもあるけど・・」

 ライはライダーソウルの話もするが、使えなくなったライダーソウルが出たことを気にする。

「ライダーソウルは、その仮面ライダーとつながっている・・もしかしたら、ライダーたちに何かあったんじゃ・・!?

 新たな不安を感じて、ライがライダーたちのことを心配する。

「1度戻って状況を確認しよう。連絡を取ったほうもいいし・・」

 ライが呼びかけて、かなたが頷いた。レントも2人についていって、橘モーターショップに向かった。

 

 戻ったライたちは、持っているライダーソウルを確認した。そのソウルのほとんどが絵柄が消えていて、使うことができなくなっていた。

「他のソウルも、こんなことになっているなんて・・・!」

 ライダーソウルに怒った異変に、ライもかなたも苦悩を感じていた。

「まだ使えそうなソウルが残っているけど・・この問題に、このソウルだけで立ち向かわなくちゃならないってことだよね・・」

「あぁ・・他のライダーにも会ったほうがよさそうだ・・」

 かなたが深刻さをふくらませて、ライが頷いた。

「すまない。この事態に関する情報を、オレは持っていない・・」

 レントがライたちを支えられていないと思って謝る。

「気にすることはないよ。レントとは今日初めて会ったんだから・・」

 ライが苦笑いを見せて、レントを気遣う。

「ライくん、かなたくん、とんでもないことになっているようだ・・」

 1人の青年がライたちの前にやってきた。(たき)聖也(せいや)。ハイパーショッカー打倒を目的とする組織に所属していた青年である。

「君たちが話してくれたこと、私のほうでも起こっていた・・」

 聖也は深刻な顔で言うと、持っていたライダーソウルをライたちに見せた。そのソウルも絵柄が失われていた。

「聖也さんの持っているソウルも、同じことになっていたなんて・・・!」

「このソウルも使えなくなっていた・・その仮面ライダーに何かあったと、私も考えている・・」

 かなたが動揺して、聖也がライダーたちのことを考える。

「君が真紀那レント。仮面ライダーキカイだね。私は滝聖也。仮面ライダークラールだ。」

「よろしく、聖也。」

 聖也が自己紹介をして、レントと握手を交わした。その瞬間、聖也はレントが人間でないことを実感した。

(話の通り、彼はヒューマノイズ。変身前の身体能力も、普通の人間以上・・)

 レントの握力から、彼がヒューマノイズであることを理解した。

「敵の能力や勢力はまだ分かっていない。バラバラに行動するのは逆に危険になる・・手間がかかることになるが、全員まとまっていたほうがよさそうだ。」

 聖也がこれからのことを告げて、ライとかなたが頷いた。

「オレも仮面ライダーの知り合いがいる。君たちが会っている可能性もあるが・・」

 レントがライたちに他の仮面ライダーのことを話した。

「よし。そのライダーに会いに行こう。」

 聖也が声を掛けて、ライたちとともにライダー捜しに出かけた。

 

 正義と平和を守るために戦う仮面ライダー。その1人である吉川(よしかわ)光輝(こうき)は、仮面ライダーオメガに変身して人々を守っていた。

 その光輝の前に、仮面ライダーラストが現れた。

「お前なのか・・仮面ライダーを襲っているのは・・!?

「私は仮面ライダーラスト。オメガ、たとえお前が精神力を強さにしても、私から逃れることはできない。」

 問いかける光輝に、ラストが言いかける。

「これまでの仮面ライダーの歴史は終わる。この私が最後になる。」

「そうはさせない・・お前を止めて、仮面ライダーのみなさんを救い出す!」

 仮面ライダー打倒を目的とするラストに言い返して、光輝が構えを取る。

「私を倒すこともライダーを救うことも不可能であることを、お前も思い知ることだ。」

 ラストが光輝に向かってゆっくりと歩を進める。光輝が迎え撃つが、ラストの繰り出すパンチを受けて怯む。

「強い・・体が、思うように動かせない・・・!」

 光輝が体に激痛を覚えてうめく。体の自由が利かなくなって、彼がその場に膝を付く。

「これがお前と私の力の差だ。埋めようのない決定的な差だ。」

 ラストが近づいてきて、光輝を見下ろす。

「諦めろ。お前たちにあるのは、破滅の結末だ。」

「諦めない・・オレは負けるわけにはいかない・・・!」

 忠告するラストに対して、光輝が声を振り絞る。

「徹底的に倒されなければ理解できないようだ。悪と戦続けてきた仮面ライダーというものは・・」

 ラストはため息をつくと、ラストドライバーの右のレバーを上に上げて、ラストタイフーンを回転させた。

“ライダースマッシュ・ラスト。”

 彼がエネルギーを両足に集めて、大きくジャンプする。光輝がベルト「オメガドライバー」から水晶「オメガクリスタル」を外して、右足の脚部にセットして跳んだ。

「ライダーキック!」

「ラストライダーキック。」

 光輝とラストが同時にキックを繰り出して、激しくぶつかり合う。爆発のような炎が巻き起こり、中から出てきたのはラストだけだった。

「これでオメガも葬った。しかし仮面ライダーはまだまだいる。」

 光輝を倒したことを実感するラストだが、他のライダーのことも考えて、楽観しないようにしていた。

「それにまだ、クロスを倒してはいない・・あの連中は、他のライダーの力を使うことも可能だ。」

 ラストがライたちのことを考えて、警戒心を抱く。

「ライダーたちを倒していることで、クロスに何が起こっているかは把握していない。いずれにしろ、ヤツらも私の前に必ず現れる。」

 ライたちとの戦いも予感して、ラストは次のライダーとの戦いへ向かった。

 

 

 

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