仮面ライダークロス&マックス
-Final Burning-
第2章
ライ、ノゾムと戦うスコーピオンビースターに、ザンジオーとカミキリキッドが加勢しようとしていた。
「1対2から3対2になった・・これでオレが有利になったぜ・・!」
スコーピオンビースターがライたちをあざ笑う。
「数が増えようと関係ない・・オレが全員ブッ倒す!」
ノゾムがスコーピオンビースターたちに向かって、鋭く言い放つ。
「マックス、貴様の相手は我々だ!」
「オレたちの力で、お前を地獄に叩き落としてやるぞ!」
ザンジオーとカミキリキッドがノゾムに向かっていく。
「お前たち・・そんなに倒されたいのかよ!?」
ノゾムが怒りをあらわにして、ザンジオーたちを迎え撃つ。
「というわけで、オレの獲物はお前ということだな!」
スコーピオンビースターがライに目を向けて、笑い声を上げる。
「オレだけでもやってやる・・お前を倒すのは!」
ライが言い放って、スコーピオンビースターに飛びかかる。2人がパンチと爪を振りかざしてぶつけ合う。
「スピードは互角だが、オレには必殺の毒針があるぜ!」
スコーピオンビースターが笑みをこぼして、ライに向かって尻尾を振りかざす。ライは後ろに下がって、毒針をかわす。
「いつまでかわせるかな、クロス!」
スコーピオンビースターが笑みを強めて、さらに尻尾を振りかざした。
“ソードガン!”
そのとき、ライがライダーソウル「ソードガンソウル」を取り出してスイッチを入れた。武器「クロスソードガン」が具現化されて、彼の手に握られた。
ライが剣型の「ソードモード」になっているクロスソードガンを掲げて、スコーピオンビースターの尻尾を受け止めた。
「コ、コイツ!」
毒針を止められて、スコーピオンビースターが驚く。
「お前が毒を使うなら、こっちも武器を使うからな!」
“ドライブ!”
ライが言い放つと、仮面ライダードライブのライダーソウル「ドライブソウル」を手にした。
“ライダーブレイク・ドラーイブ!”
音声を発するクロスソードガンの刀身に赤い光が宿る。ライがスコーピオンビースターに向かって加速して、滑走するように突っ込む。
「クロスターンスラッシュ!」
すれ違いざまに、ライがクロスソードガンを振りかざして、スコーピオンビースターの尻尾を切り裂いた。
「ぐあぁっ!」
スコーピオンビースターが激痛に襲われて、絶叫を上げる。
「オレの・・オレの自慢の尻尾が・・毒針が・・・こ、このヤロー・・!」
スコーピオンビースターが体を震わせて、ライに鋭い視線を向ける。
「人を苦しめておいて、勝手なことをぬかすな・・!」
“ガンモード!”
ライが怒りを口にして、クロスソードガンを銃型の「ガンモード」にした。彼はクロスソードガンにセットされているドライブソウルを1度外して、すぐにセットし直す。
“ライダーシュート・ドラーイブ!”
ライが構えたクロスソードガンの先に、タイヤ型のエネルギーが現れた。
「タイヤクロスショット!」
ライがエネルギーのタイヤを発射して、スコーピオンビースターに命中させた。
「イヤだぁ・・オレはまだ獲物を狩りたいんだよー!」
絶叫を上げるスコーピオンビースターが、空中に跳ね上げられて爆発した。
「やった・・早くノゾムの援護に・・!」
ライがひと息ついてから、ノゾムに加勢しようとした。
そのとき、ライの周りで爆発が起こって、彼が振り回される。
「今度は何だ・・!?」
ライが周りを見回して、攻撃を仕掛ける相手を捜す。彼が建物の上にいるバッファローの怪人を見つけた。
「いいぞ、いいぞ!この調子でクロスを吹っ飛ばしてやるぞ!」
怪人がライを見下ろして高らかに言い放つ。
「お前もコイツらの仲間か!?」
「そうだ!オレの名はタイホウバッファロー!クロス、オレがお前によって木っ端微塵となるのだ!」
ライが問いかけて怪人、タイホウバッファローが言い放つ。
「食らえ、オレのバズーカ砲!バァ〜フォ〜!」
タイホウバッファローが両肩の大砲を発射する。砲撃によって、ライの周りで次々に爆発が起こる。
「アイツ、ボカボカ撃ってきて・・!」
いら立ちを見せるライだが、砲撃のためにノゾムと合流することができないでいた。
一方、ノゾムはザンジオーとカミキリキッドの2人を相手にして、劣勢を強いられていた。
「コイツら、勝手なマネをしてくるなら、オレがここでブッ倒してやる・・!」
ノゾムが怒りの声を上げて、ザンジオーたちに向かっていく。
「ケケッ!それは不可能だ!」
あざ笑うザンジオーの体が液状になった。ノゾムの繰り出した攻撃が空を切る。
「どこだ!?・・アイツ、どこに行った!?」
「よそ見をしてると感電するぜ!」
周りを見回すノゾムに、カミキリキッドが言い放つ。
「キーリー!」
カミキリキッドが角から稲妻のような光を放った。
「ぐっ!」
ノゾムが電気ショックのような衝撃を受けてうめく。彼は横に動いて、次々に放たれる電光をかいくぐる。
「もっと力を上げるしかないみたいだな・・!」
ノゾムが声を上げて、新たなアニマルカードを取り出した。
“マキシマム!”
彼がアニマルカード「マキシマムカード」をビースドライバーにセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・マキシマーム!マックス・マキシ・マキシマーム!ビース・マキシマムライダー!”
マキシマムカードが起動して、マックスのスーツの模様とマスクの形状がマックスフォルムよりも刺々しいものとなった。ノゾムはマックスの強化形態「マキシマムフォルム」になった。
「パワーアップしてきたか、マックス・・!」
液状になっていたザンジオーが、元の形状に戻って言いかける。
「だが何をしても、オレたち2人に彼はしないぞ!」
カミキリキッドもノゾムをあざ笑って、再び電光を放つ。電光を浴びるノゾムだが、ダメージを受けず平然としている。
「オレの攻撃が効かないだと!?・・なんてヤツだ・・!」
カミキリキッドがノゾムの力を目の当たりにして、驚きをあらわにする。
「ならばオレに任せろ!いくらパワーがあろうとも!」
ザンジオーが呼びかけて、再び体を液状に変えた。彼はノゾムの体に取りついて、動きを封じようとする。
「こうして動きを止めてしまえばどうしようもあるまい!」
ザンジオーが元に戻って、ノゾムに組み付く。
「今だ、カミキリキッド!やれ!」
ザンジオーが呼びかけて、カミキリキッドが角に雷光を集めていく。
「2人で1人を寄ってたかるのはよくないぞ、お前たち。」
そのとき、ノゾムたちのいる場所に声がかかった。次の瞬間、カミキリキッドが背中を蹴られて、体勢を崩して雷光を散らしてしまう。
「せっかくのエネルギーを・・誰だ、邪魔したのは!?」
カミキリキッドが不満の声を上げて振り返る。彼の前に2人の青年が現れた。
「どうやらビースターじゃないみたいだけど、オレたちの敵ってことには変わりはないみたいだな。」
「だったら遠慮はいらないな。」
2人の青年、牛込シゲルと渋谷ソウマが声をかけ合う。ソウマがキツネのアニマルカード「フォックスカード」を、シゲルが牛のアニマルカード「オックスカード」を手にした。
“フォックス!”
ソウマがフォックスカードをビースドライバーにセットした。
「変身!」
彼がビースドライバーの左上のボタンを押した。
“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”
ソウマが黄色と茶色のスーツとキツネの形のマスクを身に着けた。彼はビーストライダー、フォックスに変身した。
“オックス。”
シゲルがオックスカードを腕輪「ビースブレス」にセットした。
「変身!」
シゲルがビースブレスを着けた左腕を、ベルト「リードライバー」の中心部の前にかざした。
“スタートアップ・オックス。”
シゲルの体を茶色のラインの入った黒いスーツと、牛を思わせる模様の黒と銀の仮面が包んだ。
シゲルもビーストライダー、オックスになった。
「オレの強さは疾風迅雷!」
「オレの力は天下無敵!」
ソウマとシゲルがカミキリキッドたちに向かって、高らかに言い放つ。
「他のライダーも出てきたか!」
「早くしろ、カミキリキッド!マックスを始末しないと、オレたちが不利になるぞ!」
カミキリキッドが毒づいて、ザンジオーが呼びかける。
「そんなマネ、オレが見過ごすと思ってるのか?」
ソウマが言いかけて、カミキリキッドに向かっていく。ソウマが繰り出すキックを、カミキリキッドがとっさによける。
「スピード勝負なら、オレに敵うヤツはいないぜ。」
「ちくしょうが・・邪魔はさせないぞ!」
強気を見せるソウマに、カミキリキッドがいら立つ。その近くで、シゲルがライへの砲撃を続けているタイホウバッファローに目を向けた。
「オレはあの騒々しいヤツの相手をさせてもらうぞ。」
シゲルが言いかけて、タイホウバッファローに向かっていく。シゲルがジャンプして両足のキックを繰り出して、タイホウバッファローを蹴り飛ばした。
「邪魔をする気か、お前・・!?」
「お前も牛みたいだな。どっちが上か、白黒決めようか!」
不満の声を上げるタイホウバッファローに、シゲルが言いかける。2人を見てライが戸惑いを覚える。
「いつまでもオレに引っ付くな・・!」
ノゾムがザンジオーの腕をつかんで、振りかざして投げ飛ばす。ザンジオーが地面を転がるも、すぐに立ち上がってノゾムに視線を戻す。
「お前はここでオレがブッ倒す・・お前が何をしてこようとな!」
ノゾムが言い放って、ザンジオーに向かっていく。ノゾムが繰り出すパンチを体に受けて、ザンジオーが押されていく。
「おのれ、マックス・・だが液化したオレを捕まえられるものか!」
ザンジオーが言い放って、体を液状にして、ノゾムの視界から消えた。
「そうやって不意打ちを狙っても、オレはお前を倒す・・!」
ノゾムが言いかけて、意識を集中して感覚を研ぎ澄ませる。ザンジオーが音を立てずに元の体に戻って、彼の後ろから炎を吐き出す。
ノゾムが振り向くことなくジャンプして、ザンジオーを飛び越えて着地した。
「何っ!?」
奇襲をかわされて、ザンジオーが驚く。ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがジャンプして、エネルギーを集めた両足を前に出す。彼のキックがザンジオーに命中した。
「ギャアッ!」
ザンジオーが絶叫を上げて突き飛ばされる。ノゾムが着地する前で、ザンジオーがゆっくりと立ち上がる。
「こんな・・このオレが、手も足も出ないとは・・・!」
ザンジオーが力尽きて、倒れて爆発した。
カミキリキッドが角から電光を放つ。ソウマはスピードを上げて、電光をかわしていく。
「その程度じゃ準備運動にもならないぞ。」
ソウマが笑みをこぼして、カミキリキッドに近づいていく。
「キーリー!」
カミキリキッドが口から炎を吐く。ソウマはジャンプして炎をかわして、カミキリキッドの頭上に来たところで足を振り下ろす。
「ぐおっ!」
左肩を蹴られて、カミキリキッドがふらつく。ソウマが着地して、彼に振り返る。
「お前のようなバケモノの好き勝手には、オレがさせないよ!」
ソウマがカミキリキッドに言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ソウマがスピードに乗せて前にジャンプして、エネルギーを集めたキックを繰り出した。
「がはぁっ!」
カミキリキッドが蹴り飛ばされて、屋根から地上に落下した。
「オレはまだ倒れないぞ・・オレは強いんだから・・・!」
カミキリキッドが断末魔を口にして、倒れて爆発を起こした。
「こっちは片付いたぞ。」
ソウマが笑みをこぼして、周りの戦況を確かめた。
タイホウバッファローがバズーカを発射して、シゲルが爆発に押されて吹き飛ばされる。
「オレの砲撃の前では、お前も手も足も出ないだろう!」
タイホウバッファローがシゲルを見てあざ笑う。
「そうでもないぞ。そろそろ反撃させてもらおうか。」
シゲルが笑みをこぼしてから、タイホウバッファローに向かって走り出す。
「近づけさせるか!」
タイホウバッファローがシゲルに向かってバズーカを発射する。シゲルは左右に動いて砲撃をかわしていく。
「オレの砲撃が当たらないだと・・そんなバカな!?」
「馬鹿力一辺倒じゃオレには勝てないってことだ。」
驚いて後ずさりするタイホウバッファローに、シゲルが自信を見せる。
「今度はオレが攻撃する番だぜ、猛牛の怪人!」
シゲルが言いかけて、リードライバーの中心部を回転させる。
“オックス・ロードスマッシュ。”
リードライバーからエネルギーがあふれて、シゲルの体を伝って右手に集まっていく。
「おのれ!」
タイホウバッファローがまたバズーカを発射する。シゲルが砲撃をジャンプでかわして、タイホウバッファローに向かって右のパンチを繰り出した。
「ごあぁっ!」
パンチを叩き込まれたタイホウバッファローが、地面に強く叩きつけられた。
「ザンジオー、カミキリキッド・・弔いもできず、すまない・・・!」
力尽きたタイホウバッファローの体が熱を帯びて、爆発を起こした。
「ふぅ・・これで3人ともやっつけたか。」
シゲルがひと息ついて、ノゾムたちに目を向けた。
“変身カイジョー。”
“スリービースト。”
“シャットダウン。”
ライ、ノゾム、ソウマ、シゲルが合流して、それぞれ変身を解除した。
「お前、誰だ?ビーストライダーとは違うみたいだな。ちょっと似ているけど・・」
ソウマがライを見て疑問を投げかける。
「オレは十時ライ。オレが変身したのは、クロスっていう仮面ライダーなんだ。」
「仮面ライダー?ビーストライダーとは違うのか?」
ライが説明するが、ソウマはさらに疑問符を浮かべる。
「もしかしたら、仮面ライダーっていうヤツの中のビーストライダーなのかもしれない。そうじゃないか?」
シゲルもライに向けて言葉を投げかける。
「そう思ってもいいんじゃないか・・見た目の特徴が全然違うわけじゃないから・・」
ライが答えて、ソウマとシゲルが納得した。
「2人も今の世界の状態は分かっているのか・・?」
「まぁ、だいたいは・・」
ライが問いかけて、ソウマが小さく頷く。
「その仮面ライダーっていうのだけじゃなく、ビースター以外の怪物連中・・さっきのヤツらみたいなのが出てきているみたいだし。」
「おかしな世の中になってきたな・・そこは参ってしまうな・・」
シゲルが言いかけて、ソウマが今の世界の状況に肩を落とす。
「それでもオレは戦う・・オレの敵と、これからも、どんなことが起ころうと・・・」
ノゾムが自分の揺るぎない意思を口にする。
「ノゾムは相変わらずの頑固者だな。」
「それで悪者とはいえ、人間まで攻撃してくるのは、オレはどうかと思うんだけどな・・」
彼を見て、シゲルが気さくに言いかけて、ソウマが呆れて肩を落とす。
「オレもオレたちの大切な人や場所に手を出そうとするヤツらを許しちゃおけない・・そいつらと、オレは戦う・・・」
ライも自分の考えを口にした。
「この2人・・・」
「似た者同士だな・・・」
ライとノゾムを見て、ソウマとシゲルがあ然となっていた。
ライとノゾムはソウマ、シゲルとともに動物公園に戻ってきた。
「ライ、戻ってきたんだね。」
かなたが微笑んで、ライに声を掛ける。
「ソウマくんとシゲルさんも一緒だったんだね。」
「あぁ。ビースターだけじゃなく、他の怪人も出てきたし・・」
ツバキが言いかけて、ノゾムが先程のことを話す。
「えっ!?・・まさか、ハイパーショッカーがライやノゾムさんたちを狙って・・・!?」
かなたが怪人たちの登場に、動揺を見せる。
「誰が何を企んできても、オレはそいつを見つけて叩きつぶすだけだ・・!」
ノゾムが自分の意思を口にして、タイチが苦笑いを見せた。
「ノゾム、またすぐに行くの・・・?」
ツバキがノゾムを心配して声を掛けてきた。ノゾムが彼女とタイチとワタルに目を向ける。
「今日はもう出ない・・明日になってから出直すことにする・・・」
ノゾムが微笑んで、ワタルの肩に優しく手を乗せた。
「ノゾムお兄ちゃん・・ありがとう!」
ワタルがノゾムに笑顔で答えた。
「それじゃみんなで紅茶タイムといこう。ライくんとかなたくんも一緒にどうぞ。」
「いいんですか♪ありがとうございます♪」
タイチに誘われて、かなたが喜んで感謝する。ライとかなたはタイチの招待を受けて、動物公園のそばにある別荘に向かうことになった。
地下広場にてノゾムたちの動向に関する情報を聞いて、男がいら立ちをふくらませていた。
「おのれ、マックス・・フォックスとオックスも動き出したか・・・!」
「ビースターじゃない怪人も出てきたが、それでもマックスたちには敵わなかったようです。」
ノゾムたちへの敵意を浮かべる男に、青年が報告をする。
「周りのザコが何を仕掛けようと、ザコでは無意味だ・・オレが行く・・!」
「あなた自ら行くのですか?ということは新しい力を、直接マックス相手に試すのですね。」
「試すのではない・・確実にヤツらを倒す!」
「そういうことですね。失礼しました。」
怒りを燃やす男に、青年が微笑んだまま頭を下げた。
「ついてこい、トワ!邪魔者の排除を任せるぞ!」
「分かりました。お任せを、キョウ様。」
男、キョウの呼びかけに青年、トワが答える。2人はノゾムたちを倒すため、行動を開始した。
ノゾムたちとの交流を経て、ライとかなたは帰路についていた。
「みんないい人ばかりだったね。3人の仮面ライダーにも会えたし♪」
「かなたはライダーに会えると、必ず目をキラキラさせるな・・」
笑顔を振りまくかなたに、ライが呆れる。2人は橘モーターショップに戻ってきた。
「ライくん、かなたくん、ニュースの事件に首を突っ込んだんじゃないかって、心配していたんだよ・・」
まりが店から出てきて、ライたちに声を掛けてきた。
「ゴメンゴメン、まりちゃん。新しい友達ができたんだよ。」
「おい、かなた・・ライダーのことがばれてしまうじゃないか・・」
今日のことをまりに話すかなたに、ライが小声で注意を呼びかける。
「大丈夫だよ・・ライのことはばれることはないから・・」
かなたも小声で答えて、ライに笑顔を見せた。
「明日また会いに行くつもりでいるけど、まりちゃんも来る?」
「いいの?それならお言葉に甘えようかな。」
かなたからの呼びかけに、まりも笑顔を見せて答えた。
「やれやれ・・しょうがないヤツだよ、かなたは・・」
ライが呆れ果てて、店の中に入っていった。
「ライ、遅かったけど大丈夫だったのか・・?」
ひろしがライに顔を見せて、心配の声を掛けてきた。
「はい。また新しいライダーに会えましたよ。」
「何っ!?ホントか!?」
ライが答えて、ひろしが驚きの声を上げて、慌てて自分の口を手で押さえた。
「はい・・そのライダーは、自分たちのために他を利用したり苦しめたりして、それを正当化しているヤツを敵と見なして、攻撃を仕掛けているんです・・」
ライがノゾムのことをひろしに話す。
「許せない敵に攻撃する、か・・ライに似てるな、そのライダーの性格。」
「おやっさんにも言われましたよ、それ・・」
ひろしが気さくに言って、ライがため息をついた。
「ビースターって怪人だけじゃなく、他の怪人も出てきました。ハイパーショッカーも関わってるかもしれないですよ・・」
「こりゃ、ただ事じゃ終わりそうにないぞ・・気を付けろよ、ライもかなたも・・」
他の怪人たちのことも告げるライに、ひろしが注意を投げかけた。
(これで終わりという気がしない・・もしかしたら、とんでもないことが動いているかもしれないぞ・・・)
大きな企みが動いていると予感して、ライは深刻さをふくらませていた。
翌日、ライとかなたはまりと一緒に、動物公園に向かった。公園ではノゾムたちが動物の世話をしていた。
「おはようございます、ノゾムさん♪」
「かなたくんたちも来てくれたんだ。また会えて嬉しいよ♪」
かなたが挨拶して、タイチが笑顔で答えた。
「かなたさん、その人は?」
ツバキがまりを見て、かなたに問いかける。
「私、緑川まりっていいます。ライくんとかなたくんの幼馴染みです。」
「はじめまして。私は大塚ツバキ。よろしくね、まりちゃん。」
まりとツバキが自己紹介をして、握手を交わした。
「そうだ。かなたくんたちも動物の世話をやってみる?」
「いいんですか!?ありがとうございます♪」
タイチからの誘いに、かなたが喜んで答える。
「動物はみんなデリケートだからな。こっちの感情が確実に向こうに伝わって、怖がったり興奮したりと反応しやすい・・」
「デリケート・・生き物じゃないけど、バイクも機械も慎重に扱わないとうまくいかないものだ・・」
ノゾムが動物の接し方を告げて、ライがバイクの作業をしているときのことを思い出す。
「ライくんたちはバイクの店で仕事をしているんだね。」
「今度、お兄ちゃんたちのお店に行ってもいい?」
タイチが感心して、ワタルがライに問いかける。
「いいぞ。今度の機会にな。おやっさん・・店主にも言っておくよ。」
ライがワタルに笑みを見せて答えた。
「やったー♪ありがとう、ライお兄ちゃん♪」
ワタルが喜んでタイチ、ツバキと笑顔を見せ合う。
「こっちの仕事をするならついてきてくれ・・」
「はいっ♪」
ノゾムが声を掛けて、かなたが笑顔で答えた。彼がノゾムとタイチについていって、動物の世話を始めた。
「このまま、ノゾムがずっとここにいてくれたらいいと思う・・」
ツバキがノゾムを見て、物悲しい笑みを浮かべた。
「ノゾムは1人戦っている・・自分の戦いを・・自分が許せないと思った敵を倒す戦いを・・・」
「ノゾムさんが、どうしてそんなことを・・・」
ツバキのノゾムについての話を聞いて、まりが動揺を覚える。
「ノゾムは理不尽が許せないの・・自分や誰かを一方的に振り回して、何の罪も感じずに正しいことにしているのが許せない・・今のノゾムは、そういう敵を見つけて倒しているの・・」
「その敵って、普通の人も含まれているのですか?・・それって、犯罪になるんじゃ・・!?」
「悪いのは向こう・・敵に味方することのほうが罪・・ノゾムは、警察が相手でも全然躊躇しない・・」
「そんな、ムチャクチャな・・・」
ノゾムのことを話していくツバキに、まりが不安を隠せなくなる。
「・・・もしもライだったら、同じことをしてたかもしれない・・」
まりがライのことを考えて、納得しようとする。
「ライくんも、自分が許せないものにはとことん許せないから・・もしも力があったら、ノゾムさんみたいにしているのかも・・」
「そうかもね・・私もそんな雰囲気があるかなって思っていた・・」
ライの行動を予測するまりに、ツバキが頷いた。
「オレのことを勝手に話さないでくれよ、オレのそばで・・」
そこへライが声を掛けて、まりとツバキが苦笑いを浮かべた。
「ゴメン、ライくん・・それじゃ、私たちも行きましょうか。」
「そうね、そうね。アハハハ・・」
まりがライに謝って、ツバキとともにノゾムたちのところへ向かおうとした。
そのとき、ライが足音が近づいてくるのを耳にして振り返った。
「どうしたの、ライくん?」
まりがライを気にして足を止めた。
「誰かこっちに来る・・」
ライが答えて、足音のするほうをじっと見つめる。彼らの前に現れたのは、キョウとトワだった。
「あの女は・・マックスの仲間の1人か・・」
キョウがツバキを見て言いかける。
「彼女を捕まえれば、マックスもこちらの誘いに乗ってくるでしょう。」
トワが微笑んでキョウに言いかける。
「よし。トワ、アイツを連れてこい。」
「分かりました。」
キョウが呼びかけて、トワがツバキに向かっていく。
「そこのお嬢さん、すみませんが、私と一緒に来てもらえますか?あの方がお呼びですので。」
トワが呼びかけて、ツバキに手を差し伸べてきた。
「あの、どなたですか、あなたたちは・・?」
「あの方が来てほしいと申しています。どうぞこちらへ。」
疑問を投げかけるツバキに、トワがさらに呼びかける。
「あの、困りますよ、いきなり・・」
「そうですよ。きちんと事情を話してくれないと・・何にも分からないのについてきてって言われても・・」
ツバキに続いてまりもトワに反論してきた。
「困らせないでください・・あなたはただ、私たちについてくればいいのだから・・」
トワがため息をついて、ツバキの腕をつかんで無理やり連れて行こうとした。
「やめろよ、アンタ・・」
ライがトワの腕をつかんで、ツバキたちから引き離す。
「嫌がってるのに無理やり引っ張り出されたら、アンタたちもイヤだと思うだろう・・?」
ライがトワに向けて言いかける。するとトワがライの腕をつかみ返してきた。
「邪魔をしないでください。さもないとケガをすることになりますよ・・」
トワが笑みを消して、ライを投げ飛ばす。
「ぐっ!」
ライが地面に倒されて、トワが彼から離れる。
「ライくん!」
まりがライに向かって叫ぶ。キョウが歩いてきて、トワの隣で足を止めた。
「大塚ツバキ、オレと来てもらう・・マックス、神奈ノゾムを倒すために、お前を利用させてもらう・・」
キョウがツバキに向かって呼びかける。ノゾムを倒すために、キョウはツバキを捕まえて優位に立とうとしていた。