仮面ライダークロス&マックス

-Final Burning-

第1章

 

 

仮面ライダー。

世界や人々を脅かす怪人と、素顔を隠して戦い続ける戦士。

 

仮面ライダーと世界を正そうとする新たなる仮面ライダー。

世の中の不条理との戦いを続けている1人の戦士。

 

2人の戦士が出会いを果たし、新たなつながりが生まれる。

 

 

 「(たちばな)モーターショップ」。橘ひろしが経営するこの店では、2人の青年が手伝いをしていた。

 十時(ととき)ライと市川(いちかわ)かなた。ひろしが保護者となって、2人は居候していた。

「ライ、このバイクの手入れ、終わったよ。」

「あぁ。オレもこっちの掃除が終わる・・」

 かなたが声を掛けて、ライが答える。2人が掃除と手入れを終えて、ひろしのところへ行った。

「おやっさん、こっちは終わったよ。」

「そうか。2人ともちょっと休んでてくれ。」

 ライが声を掛けて、ひろしが気さくに答える。ライとかなたがそばにあった椅子に腰を下ろした。

「それにしても、仮面ライダーが実際に現れるなんてねぇ〜・・」

 かなたが今の世の中の状態について考えて、苦笑いを浮かべる。

 現在、次元の歪みの発生で、様々な世界が1つになってしまっている。TVの中の話だったはずの仮面ライダーが、実際に現れては怪人たちと戦っていた。

「いやぁ、仮面ライダーが実際にいたなんて、ホントにビックリだよ〜♪人を襲う怪人まで現れたのもビックリだけど〜・・」

「そのおかげで世の中はおかしなことになってしまっているけど・・」

 かなたが語りかけて、ライがため息まじりに言いかける。

(仮面ライダーも怪人も、今の世界にはまだまだたくさんいる・・そのうちオレはそいつらに会うことになるだろう・・)

 ライが心の中で、仮面ライダーと会うことを予感していた。

「ライくん、かなたくん、おやっさん、大変だよ!ニュース見て!」

 そこへ1人の少女、緑川(みどりかわ)まりがやってきて、ライたちに声を掛けてきた。

「どうしたの、まりちゃん?また仮面ライダーか怪人が出たの!?

 かなたが動揺を見せて、まりに問いかける。かなたはライとともに、まりに続いて部屋に入った。

「大企業のビルが攻撃されてるの!その犯人が、怪物でも人間でもなくて、仮面ライダーなの・・!」

「えっ・・ええーっ!?仮面ライダーがー!?

 まりの説明を聞いて、かなたが驚きの声を上げる。

「どどどど、どの仮面ライダーだった!?色とか形とか・・!」

 かなたが慌てながら、まりに問いかける。

「そ、そんなこと言われても、姿がちゃんと映ってなかったし・・!」

 するとまりが慌てて困ってしまう。

「仮面ライダーが犯人・・可能性はゼロじゃないよ・・!」

 かなたが記憶を巡らせて、ライたちに語りかける。

「仮面ライダーは正義と平和、大切なものを守るために戦うヒーロー。でも全員がそうというわけじゃない。仮面ライダーの偽者や、悪い仮面ライダーも登場してるんだ・・」

 かなたが仮面ライダーについて語りかける。仮面ライダーの中には支配や破壊、悪を行う者も登場していた。

「その悪い仮面ライダーの仕業かもしれないってわけか・・」

 ライが悪の仮面ライダーと対面することを予感していた。

「オレ、ちょっと行ってくる・・!」

「あっ!僕も行くよ、ライ!」

 ライが外へ飛び出して、かなたも彼を追いかけた。

「ライくん!かなたくん!・・もう・・」

 まりが2人の行動に対してふくれっ面を浮かべた。

 

 騒動の起きているビルの近くに来たライとかなた。ビルの周りは警察がバリケードを張って、出入りを制限していた。

「あちゃ〜・・これじゃ中に入れないよ〜・・」

 バリケードと野次馬に阻まれて、かなたが困ってしまう。

「別のところに回ってみるか、かなた・・」

「そうだね、ライ・・」

 ライの呼びかけにかなたが答える。2人はビルの裏側へと回ることにした。

 しかし別の出入り口の近くも、バリケードと野次馬で行き来ができない状態になっていた。

「これじゃどこへ行ってもよく見えないよ〜・・」

「仕方がない・・何か動きがあるまで、ここで様子を見るか・・」

 落ち込むかなたに、ライがため息まじりに呼びかける。2人は少し離れたところで、ビルの様子をうかがうことにした。

 そのとき、ビルの上の階の窓が突然割れた。その窓から1人の人影が飛び出した。

「だ、誰か出てきたぞ・・!」

「あれは!?

 ライとかなたがその人影を見て驚く。その人影の姿は仮面ライダーだった。

「あれはマックス!仮面ライダーマックスだよ!」

「何っ!?

 かなたが上げた声に、ライも驚く。飛び出した仮面ライダー、マックスが地上に着地した。

「アイツだ!アイツが襲撃してきた犯人だ!」

 刑事の1人がマックスを指さして叫ぶ。

「捕まえろ!逃走を許すな!」

 警部が指示を出して、刑事たちと警官たちがマックスに向かって飛びかかる。マックスは逃げることなく、刑事たちに攻撃を加えて返り討ちにする。

「やむを得ない・・これ以上抵抗するなら発砲も許可する!」

 警部が呼びかけて、刑事たちが銃を取り出して構えた。それでもマックスは反撃をやめない。

「撃て!」

 刑事たちがマックスに向かって発砲する。スーツに弾丸が当たって火花が散って少し押されるが、マックスはほとんどダメージを受けていない。

「な、なんてヤツだ・・!」

 警部がマックスの耐久力に息をのむ。

「悪いのはコイツらなんだぞ・・自分たちの目的のために、他のいい人を平気で傷つけ切り捨てた・・そんな連中を守って、それでも警察か!?

 マックスが怒号を放って、警部たちに飛びかかる。

「ぐふっ!」

「うあっ!」

 マックスに殴り飛ばされて、警官たちがうめく。彼らは激痛のあまりに、倒れたまま立ち上がれなくなる。

「あわわわ・・とんでもないことになっちゃってるよ〜!」

 かなたがマックスと警察の争いに慌てる。

「こんなの、いい気がしない・・かなたは下がっていろ・・!」

 ライが呼びかけて、かなたが頷いて後ずさりする。ライが2つのアイテム「クロスドライバー」と「クロスソウル」を取り出した。

“クロスドライバー!”

 ライがクロスドライバーに装着して、さらにクロスソウルを構えてスイッチを入れた。

“クロス!”

 音声の発したクロスソウルを、彼はクロスドライバーの中心にセットした。

“ライダーソウール!”

 ライは意識を集中して構えを取る。

「変身!」

 彼が左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからさらなる光があふれ出す。光を浴びたライが、メタリックカラーの装甲とマスクを身にまとった。

 ライは仮面ライダー、クロスへ変身をしたのである。

「おい、やめろ、お前!」

 ライが飛び出して、マックスに向かって飛びかかる。気付いたマックスがとっさに動いて、ライが繰り出したパンチをかわす。

「何だ、お前は!?邪魔をするのか!?

「この人は悪い人じゃない!その人たちに襲い掛かるなんて!」

 怒鳴りかかるマックスに、ライが言い返す。

「ここにいたのは、自分たちが正しいと思い上がって、他のヤツらを傷付けて平気な顔をしている連中だ・・それを守ろうとするヤツらも、倒すべき敵だ・・!」

「まさか、そこに悪いヤツがいたのか!?・・でも、警察はその悪さを自覚してないだろう!」

 マックスが口にした考えに心を動かされるも、ライは感情を込めて言い放つ。

「自覚していないから悪さが許されるというわけじゃない・・何が正しくて何が間違っているのか、しっかり自覚すべきだ!」

「そういう強引なのもよくないと思うぞ・・!」

 怒りを言い放つマックスに、ライが不満を見せる。

「そうしなければ変わらない状況もある・・繰り返される間違いもある・・・!」

「それで無関係な人まで巻き込んだら、その敵と同じになってしまう!」

「オレとアイツらを一緒にするな!」

 ライの反論にマックスがさらに怒りをふくらませていく。

「そうやって一方的に考えを押し付ける・・そういうやり方をオレは許さない!」

 ライも怒りをふくらませて、両手を強く握りしめる。

「お前も、理不尽を許せないのか・・・!」

 彼の言葉と意思に、マックスが心を動かされた。

「オレがここで、アンタを止める!」

 ライがマックスに向かって飛びかかって、力を込めた右のパンチを繰り出す。マックスが左手でライのパンチを受け止めた。

 ライがパンチを押し込もうとするが、マックスが左手でつかんだ状態から、彼の右手を振り払う。

 マックスはライとの距離を取ってから、ベルト「ビースドライバー」からカード「アニマルカード」の1枚「マックスカード」を抜いた。

“スリービースト。”

 マックスが変身を解いて、青年の正体を明かした。

「アンタ・・・!」

 青年の行動に驚くライ。

“変身カイジョー。”

 彼もクロスドライバーを外して、クロスへの変身を解除した。

「お前もオレと同じ考えなのか・・身勝手や理不尽が許せなくて・・・」

「えっ!?・・オレとアンタが、同じ考え・・・!?

 青年が口にした言葉を聞いて、ライが動揺を見せる。

「ライー!」

 かなたが走ってきて、ライに声を掛けてきた。

「えっ?えっ!?・・な、何がどうなってるの・・!?

 かなたがライと青年を見て、状況が分からなくて動揺を見せる。

「オレにも説明してくれ・・アンタが何をしてたのか・・・!?

 ライが落ち着きを取り戻して、青年に疑問を投げかける。

「オレは神奈(かんな)ノゾムだ。お前たちは?」

「オレはライ。十時ライだ。」

「僕は市川かなたです・・」

 青年、ノゾムがライ、かなたとともに自己紹介をした。彼らは話をすることを決めて、この場を離れた。

 

 薄明かりだけが照らしている地下広場。その中心に1人の男が現れた。

「マックス、相変わらず派手に暴れているようだな・・」

 男がマックス、ノゾムのことを呟く。彼に対して男は敵意を抱いていた。

「ヤツによってオレたちの人生は狂わされた・・決して許しはしない・・マックスを・・・!」

 男が怒りを感じて体を震わせる。

「焦りは禁物です。」

 そこへ1人の青年がやってきて、男に声を掛けてきた。

「今のあなたには力がある。マックスに対抗するだけの力が。」

「分かっている・・オレがマックスを倒し、オレが新しくこの国を動かすのだ・・・!」

 言いかける青年に答えて、男が笑みを浮かべた。

 

 場所を変えてから、ノゾムはライとかなたに自分のことを話した。自分がマックスに変身していること、その力で身勝手な敵に攻撃を仕掛けていることを。

「それでいろんなところで、戦いを仕掛けていたってことなのか・・・」

「戦いを仕掛けたのはオレじゃなく、思い上がっている敵のほうだが・・」

 話を聞いて納得するライと、敵への怒りを噛みしめるノゾム。

「それじゃ、ノゾムさんは人間を相手に戦ってるってことですか・・・!?

 かなたが動揺しながら、ノゾムに問いかける。

「それだけじゃない。“ビースター”っていうヤツらとも戦っている・・そいつらのほうが好き勝手やっている数が多いからな・・」

 ノゾムがビースターについても告げる。

「ビースター・・それも怪人ってことですね・・」

「ビースターは人間が変化した怪物だ。だけど人間もビースターも関係ない。優しい心を持ったビースターもいれば、身勝手な人間もいるからな・・」

 かなたが納得を見せて、ノゾムがさらに語りかける。

「人間の変化って、まるで“オルフェノク”みたいですね・・」

「オルフェノク?」

 かなたが口にした言葉に、ノゾムが疑問符を浮かべる。

「オルフェノクも人間の進化です。人間が死を迎えたときになる場合もありますが、オルフェノクに襲われたのをきっかけにしてなる場合が多いんです・・」

 かなたがオルフェノクについて説明をする。

「ビースターみたいなのが他にもいたのか・・そういえば最近、世界がおかしなことになっているみたいだが・・」

 ノゾムが言いかけて、今の世界の状況について考える。

「今はいろんな世界が混ざって、1つになっているんだ・・いろんな仮面ライダーもこの世界に現れて、いろんな怪人たちも集まって、“ハイパーショッカー”という組織を結成したんだ・・」

 ライが今の世界やハイパーショッカーについて話す。

「ハイパーショッカーは世界支配を企んでいる・・そのために、新しい戦士を生み出したり、邪魔者である仮面ライダーを倒そうとしたりしている・・」

「そんなヤツらが・・そいつらもきっと、オレにとっても敵ということだな・・・!」

 ライの話を聞いて、ノゾムがハイパーショッカーに対して怒りを覚える。

「オレはハイパーショッカーと戦ってるんだ・・オレやオレの大事な人の居場所を壊そうとするヤツらが許せなくて・・・!」

「そうだったのか・・2人もオレと同じ考えみたいだな・・・」

 ハイパーショッカーへの怒りを見せるライに、ノゾムが笑みを見せる。

「オレとお前、何だか息が合いそうだな・・よろしくな、ライ・・」

「あぁ、ノゾム・・」

 ノゾムとライが互いに笑みを見せて、手を差し伸べて握手を交わした。

「2人とも、ホントに似た者同士かもしれないね。」

 かなたが2人を見て喜びを感じていた。

「そろそろ動物公園に戻らないと・・みんなを心配させるのも、いい気がしないからな・・」

 ノゾムが言いかけて振り向く。

「ノゾムにも仲間がいるんだな。」

「僕たちはバイクショップで働いて、そこの店主のお世話になっているんです。」

 ライが言いかけて、かなたが自分たちのことを語る。

「そうか・・後でそっちに行っていいか・・?」

「もちろんです♪おやっさんたちを紹介しますよー♪」

 ノゾムが聞いていて、かなたが笑顔で答えた。

「それで、オレたちもその動物公園に行ってもいいか・・?」

「構わないけど、動物と接するときはこっちの言う通りにしてくれよ。動物はみんなデリケートだから・・」

 ライが頼んで、ノゾムが彼に目を向けて答えた。

「ありがとうございます、ノゾムさん♪」

 かなたが喜んで感謝して、ライとともにノゾムについていくことにした。

 

 街の近くにある動物公園。ノゾムはそこを生活と仕事の場としていた。

「うわぁ・・動物がいっぱいいるよ〜♪」

 かなたが動物たちを見て感動を覚える。

「あっ!ノゾム、戻ってきたんだね♪」

 そこへ1人の青年が現れて、ノゾムに声を掛けてきた。

「あれ?ノゾム、この2人は?」

 青年がライとかなたを見て疑問符を浮かべる。

「僕はかなた♪市川かなたです♪」

「十時ライだ。」

 かなたが明るく、ライがぶっきらぼうとした素振りで答える。

「僕は代々木(よよぎ)タイチ。今のこの動物公園を管理しているんだ。」

 青年、タイチもライたちに自己紹介をする。

「ノゾム!」

「ノゾムお兄ちゃん!」

 そこへ少女と少年が1匹の犬と一緒にやってきた。

「ツバキちゃん、ワタルくん、ワオン、丁度よかった。ノゾムが帰ってきたところだよ。」

 タイチが少女、大塚(おおつか)ツバキと少年、大崎(おおさき)ワタルと犬、ワオンに笑顔を見せた。

「ノゾム、無事に帰ってきたんだね・・ここのところ、おかしなことばかり起こっているから、心配になっていたんだよ・・」

 ツバキがノゾムのことを気に掛ける。彼女もタイチたちも今の世界の状況について耳にしていた。

「みんな、そのことなんだけど、この2人が大きく関わっているみたいなんだ・・」

 ノゾムがライたちのことをタイチたちに話す。

「ノゾム、みんなはノゾムのことを・・」

「あぁ。そもそもこのベルトやカードは、ツバキが持ってきたものなんだから・・」

 ライが投げかけた言葉に答えて、ノゾムがビースドライバーとアニマルカードのことを話す。ツバキたちもノゾムがマックスであることを知っていた。

「オレも仮面ライダーなんだ・・ノゾムとは違うタイプだけど・・」

 ライが自分のことを打ち明けて、クロスドライバーとクロスソウルをタイチたちに見せた。

「これが、君の変身アイテム?マックスとかとは違うみたい・・」

「そのベルトもそのアイテムも私、見たことないし・・」

 タイチとツバキがクロスドライバーとクロスソウルを見て、戸惑いを浮かべる。

「オレはこれを使って、仮面ライダー、クロスになることができるんだ・・」

「すごい・・ノゾムお兄ちゃんたち、マックスとか以外にもライダーがいるなんて・・!」

 ライが言いかけて、ワタルが感動を見せる。

「ライ、どうせだから変身した姿も見せたらいいんじゃないかな♪」

「仮面ライダーは別に見せ物ってわけじゃないんだけど・・」

 かなたが頼んで、ライが肩を落とした。彼は渋々、クロスへの変身をすることにした。

「変身!」

“変身・ライダー!クロース!”

 ライがクロスに変身して、その姿をタイチたちに披露した。

「おぉ♪これがクロスかぁ〜♪」

「マックスとはちょっと違うけど、こっちもかっこいいよ♪」

 タイチとワタルがクロスの姿を見て、目を輝かせる。

「クロスは他の仮面ライダーにも変身することができるんだよ♪」

「あのな、かなた・・調子に乗るなって・・・」

 かなたがさらに笑顔で語って、ライが呆れ果てる。

“ビルド!”

 ライが仮面ライダービルドの力が込められたライダーソウル「ビルドソウル」を取り出して、スイッチを入れた。

“ライダーソウール!”

 彼はクロスドライバーにセットされているクロスソウルを、ビルドソウルと入れ替える。

“変身・ライダー!ビルドー!”

 ライの変身している装甲に変化が起こった。その姿はビルドそのものだった。

「すごい♪ホントにビルドそっくりだよ〜♪」

 タイチがさらに感動して、震えが止まらなくなっていた。

「えっ!?ノゾムさんたちの世界でも、ビルドのことが知られていたんですか!?

 その言葉を聞いて、かなたが驚く。

「いや、ビルドや他の仮面ライダーと会ったことがあるんだ。」

 ノゾムがビルドたちと会ったことを、ライたちに告げる。

“変身カイジョー。”

 ライはクロスドライバーからビルドソウルを外して、変身を解除した。

「そうだったのか・・まだまだ仮面ライダーについて、知らないことがたくさんあったんだな・・」

「僕もずっと仮面ライダーを見てきたのに〜・・」

 ライが呟きかけて、かなたが肩を落とす。

「見てきたって、どういうことなの・・・?」

 タイチが2人に対して疑問を投げかける。

「僕たちの世界は元々、仮面ライダーがTVで放送されている世界なんだ・・」

「えっ?・・ええーっ!?

 かなたが口にした答えに、タイチとワタルが驚きの声を上げた。

「それじゃ、私たちがあなたたちの世界では、架空の人物ってことになっているわけ・・!?

 ツバキも動揺を隠せなくなってそわそわする。

「だけど現実にこうしてオレたちは会ったんだから、架空とか空想とかはないんじゃないのか?」

「そうだな・・オレたちは、作り話の登場人物じゃない・・」

 ライが言いかけて、ノゾムが頷く。自分たちが出会ったのは本物であると2人は考えて、かなたもタイチたちも納得する。

「オレたちが経験したことも、絶対に偽物なんかじゃない・・・!」

 ノゾムが記憶を呼び起こして、辛さを噛みしめる。

 ノゾムのマックスとしての戦いは、楽観的なものでは決してなかった。心身ともに辛いことや、大切な人を失ったこともあった。

 それらの経験が、それまで抱えていたノゾムの感情をより強固なものにしたのである。

「オレは戦い続ける・・他の人にイヤな思いをさせて、それを正しいことにする敵と・・・」

「そういう敵は、オレにとっても敵だ・・たとえ相手が怪人だろうと人間だろうと、そいつには絶対に屈しない・・・!」

 ノゾムが口にした意思を聞いて、ライも頷いた。

「この2人、ホントに似た者同士だよ・・」

「僕もそう思うよ。許せないものはホントに許せないってところが・・」

 かなたが改めて言いかけて、タイチが納得する。

「人間もそうでないのも関係ない・・敵と戦う・・オレもその気持ちを持っていた・・・」

 ライがクロスになってからの戦いを思い返す。

 仮面ライダーに対しても、不満があったらためらいなくぶつける。ライはそうしてきた。クロスになる前から。

「もしもそのハイパーショッカーっていうのがオレたちも狙ってくるなら、オレもヤツらをブッ倒すことになるな・・」

 自分の考えを口にしたノゾムに、ライが笑みを見せる。2人が握った手を軽く当てて、意思を分かち合った。

 そのとき、近くで騒ぎが起こっているのを耳にして、ライたちが振り向いた。

「何かあったのかな・・・!?

 ワタルが騒ぎのする方をじっと見て声を上げる。

「オレが見てくる・・タイチたちはここで待ってろ・・!」

「ノゾム・・!」

 ノゾムが走り出して、タイチが声を上げる。

「オレも行ってくる!かなたもここにいてくれ!」

「ライ!」

 ライも飛び出して、かなたも声を上げる。かなたとタイチたちも動物公園で待つことにした。

 

 動物公園の近くにある大通りでは、人々が慌てて逃げ出していく。大通りではビースターの1人、サソリの姿をしたスコーピオンビースターがいた。

「ここのところの世界がどうかなってるらしいが、オレとしちゃ獲物が増えてくれるのはありがたいぜ!」

 スコーピオンビースターが笑みをこぼして、人々を襲っていた。

「うあぁっ!」

 スコーピオンビースターが伸ばした尻尾の針に刺されて、男の人が倒れた。

「さぁ、これからが狩りの本番だ・・見つけて1人ずつ仕留めてやるぜ!」

 スコーピオンビースターが人々を追って移動しようとした。そこへライとノゾムがやってきて、スコーピオンビースターを見て目つきを鋭くする。

「ビースター・・ふざけたマネをするヤツがまた出たか・・!」

 ノゾムがスコーピオンビースターに向けて怒りの声を上げる。

「人間がわざわざ出てくるとはな・・オレは嬉しいぜ!」

 スコーピオンビースターがライたちを見てあざ笑う。

「自分のために、お前は・・許しちゃおけない・・!」

 ライも怒りを見せて、クロスドライバーとクロスソウルを取り出した。

“クロスドライバー!”

 ライがクロスドライバーを装着した。

“クロス!”

“ライダーソウール!”

 彼がクロスソウルをクロスドライバーにセットした。

「変身!」

 ライが左手を斜め右上に振り上げて、クロスドライバーの左レバーを上に上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!クロース!”

 クロスドライバーからあふれた光を浴びて、ライはクロスに変身した。

「オレもやらせてもらうぞ・・!」

 ノゾムも戦意を見せて、マックスカードを手にした。

“マックス!”

 ノゾムがビースドライバーのバックル部分に、マックスカードをセットした。

「変身!」

 彼はビースドライバーの左上のボタンを押した。

“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”

 ノゾムの体を赤いスーツとマスクが包んだ。彼はマックスに変身して、ライと並び立った。

「全てを、オレが正す!」

「オレの怒りは限界突破!」

 ライとノゾムがスコーピオンビースターに向けて言い放つ。

「ふざけたことをぬかして・・2人ともオレの針の餌食だ!」

 スコーピオンビースターが言い返して、尻尾を振りかざす。ライとノゾムが左右に動いて、尻尾をかわす。

「おのれ!」

 スコーピオンビースターが狙いをライに定めて飛びかかる。ライが回避行動をとるが、スコーピオンビースターの速い攻撃に押されていく。

「ぐっ!」

 スコーピオンビースターが振りかざした爪がクロスの装甲を切りつけて火花が散って、ライがうめく。

「アイツ、好き勝手なことを・・!」

 ノゾムがいら立ちを覚えて、スコーピオンビースターに向かっていく。彼がパンチを繰り出して、スコーピオンビースターを突き飛ばす。

「速いヤツだ・・こうなったら・・!」

 ライが言いかけてから、新しいライダーソウル「キバソウル」を取り出した。

“キバ!”

“ライダーソウール!”

 彼はキバソウルのスイッチを入れて、クロスドライバーにあるクロスソウルと入れ替えた。

「変身!」

 ライがクロスドライバーの左レバーを上げて、クロスタイフーンを回転させた。

“変身・ライダー!キバー!”

 ライの変身しているクロスの姿が変化した。その姿は仮面ライダーキバそのものだった。

「さぁ、キバっていくぜ!」

 ライが言い放って、再びスコーピオンビースターに向かっていく。ノゾムの攻撃から離れようとするスコーピオンビースターに対して、ライはスピードを上げて飛びかかる。

 ライの速いパンチの連続に、スコーピオンビースターが追い込まれていく。

「こしゃくな・・オレの毒針で仕留めてやるぞ!」

 いら立つスコーピオンビースターが、尻尾を振りかざす。ライは後ろに下がって、尻尾の針をかわす。

「オレもスピードを上げるか・・!」

 ノゾムが思い立って、新たなアニマルカードを取り出した。

“ホーク!”

 ノゾムがタカのアニマルカード「ホークカード」をビースドライバーにセットする。

“チャージ・ホーク!ソウルショック・ソウルハート・スカイハイホーク!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押した彼が、さらなる変身を遂げる。マックスのスーツのメインカラーが黄色となって、マスクもタカを思わせる形に変わった。さらに腕から翼が生えていた。

 ノゾムはスピードに長けた姿「ホークフォルム」となった。

「お前の相手はオレだ!」

 ノゾムが言い放って、スコーピオンビースターに向かっていく。ノゾムとライに攻められて、スコーピオンビースターがさらに追い込まれていく。

「くっ!・・1対2じゃ不利だぜ・・!」

 スコーピオンビースターが焦りを感じて、ライたちから離れていく。

「逃げるな!」

 ノゾムが怒鳴って、ライとともにスコーピオンビースターを追いかけようとした。

 そのとき、ライたちの前を数発の破裂が起こった。行く手を阻まれた2人が左右に視線を移す。

 ライたちのいる近くの建物の屋根の上に、2体の怪人がいた。

「あれは、ショッカーのザンジオーとカミキリキッド!」

「何っ!?ショッカー!?

 ライが怪人たち、ザンジオーとカミキリキッドを見て、ノゾムとともに声を上げる。

「何だ、あのバケモノどもは!?・・って、オレも今はバケモノの姿か・・!」

 スコーピオンビースターがザンジオーたちを見て言いかける。

「貴様、我々も加勢させてもらうぞ!」

「その2人のライダー、マックスとクロスを始末してやるぜ!」

 ザンジオーとカミキリキッドがスコーピオンビースターに呼びかける。

「へへっ!助かったぜ!」

 スコーピオンビースターが喜びを見せる。3体の怪人たちと、ライとノゾムは戦うことになった。

 

 

 

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