仮面ライダー BLACK・RX・マックス
-地球を駆ける黒き勇者-
第8章
RXのところへ急ぐノゾムの前に立ちはだかったジャーク。ジャークはもう1つの姿、ジャークミドラとなって、ノゾムを攻め立てる。
「そこをどけ!アンタの相手をしている暇はないんだ!」
ノゾムがジャークミドラに向かって怒鳴りかかる。
「ここを通りたければ、このオレを見事倒してみせろ!」
ジャークミドラが言い放って、ノゾム目がけて剣を振りかざす。ノゾムがシャークソードで剣を受け止めて、ジャークミドラを押し切ろうとする。
2人は押し切られまいと踏みとどまって、つばぜり合いを演じる。
「オレは倒れるわけにはいかぬ!オレの手に、クライシス帝国の存亡が掛かっているのだ!」
「それで、他のヤツに何かしていいことになるかよ!」
強い意思を示すジャークミドラに、ノゾムが怒りを叫ぶ。
「4大隊長を始めとした我が部下は、我が同士!同士が命を賭けて任務を遂行しようとしているのに、オレが手を汚さずにいるわけにはいかぬ!」
「アンタ、そこまで部下や任務のことを気に掛けているのか・・!?」
ジャークミドラの信念を痛感して、ノゾムが動揺を覚える。その隙を突かれて、彼はジャークミドラが振りかざした剣に押される。
「マックス、貴様もクライシス最高のための、栄えある人柱となるがよい!」
ジャークミドラが目を光らせて、角からビームを放つ。
「うあっ!」
ノゾムがビームを受けて、爆発で吹き飛ばされる。倒れてダメージを感じている彼に、ジャークミドラが歩を進める。
「どうした、マックス!?貴様の力はその程度か!?」
ジャークミドラが言い放って、剣を振り下ろす。ノゾムがシャークソードを掲げて、剣を受け止める。
「アンタ、そこまで自分の国や他のヤツのことを大事に思っているのか・・!」
ノゾムが声と力を振り絞って、ジャークミドラの剣を押し返していく。
「アンタはそこまで身勝手なヤツとは言い切れないな・・他のヤツのことをそこまで気にしてるんだからな・・!」
ノゾムが言い返して、足を突き出してジャークミドラを蹴り飛ばして引き離す。
「もしも昔からアンタがそばにいたら、オレは心を許していただろうな・・だけどもうオレとアンタは敵同士だ!オレたちをムチャクチャにしようとしているアンタをいうことを、オレは聞くつもりはない!」
ジャークミドラの人格に共感するも、自分の意志を貫くことを決めているノゾム。自分の心のよりどころを守ろうと考えて、彼はジャークミドラを倒す決意を固めた。
「ならば地球の人類とともに果てるがよい・・マックス、これで最後だ!」
ジャークミドラが全身に力を込めて、剣を大きく振り上げる。
「オレは倒れない・・やられるわけにはいかないんだよ!」
ノゾムも感情をあらわにして、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“シャークチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムが刀身にエネルギーの集まったシャークソードを振り上げる。彼の一閃で、ジャークミドラが振り下ろした剣がはじき飛ばされた。
続けてノゾムがシャークソードを振り下ろして、ジャークミドラの体を切りつけた。
「ぬおぉ!・・やりおるわ・・だが、まだまだだ!」
ジャークミドラが声を振り絞って、ノゾムの首をつかんだ。首を持ち上げられてノゾムが息苦しさを覚える。
「何度も言わせるな・・オレは、アンタの相手をしている場合じゃないんだよ!」
“ガンガン・シャークガーン!”
ノゾムがシャークソードをガンモードにして発砲する。ジャークミドラが体を射撃されて、ノゾムから引き離される。
「悪いがこれは試合でも決闘でもない!正々堂々の真っ向勝負をやるつもりは、今のオレにはない!」
“シャークチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ビースドライバーの左上のボタンを2回押して、シャークソードを構えるノゾム。シャークソードから放たれた光線が、ジャークミドラの体を貫いた。
「こ・・これが、貴様の強さか、マックス・・・!」
ジャークミドラがふらつきながら、ノゾムの強さを痛感する。同時に彼は自分が致命傷を負ったことを理解していた。
「仮面ライダーマックス、よくぞオレを倒した・・だがいかに貴様でも、他のライダーたちが束になろうと、我らをよみがえらせた力には敵わぬぞ・・・」
ノゾムに言いかけると、ジャークミドラが倒れて爆発を起こした。
「コイツらをよみがえらせた敵!?・・何を言っているんだ・・・!?」
ジャークミドラの断末魔の言葉が気になって、ノゾムが疑問符を浮かべる。
「今は考えている場合じゃない・・RXのところへ急がないと・・!」
彼は疑問を振り切って、タイガーランナーに駆け寄って乗る。
「ノゾムくん!」
そこへBLACKがやってきて、ノゾムに声をかけてきた。永夢と光輝も続いてたどり着いた。
「こっちも片付いたよ!1人逃げられてしまったけど・・!」
「オレもアイツらの仲間に邪魔されていた・・今、ブッ倒したけどな・・」
永夢とノゾムが事情を口にする。
「急ごう、みんな・・悪い予感がするんだ・・!」
BLACKが呼びかけて、ノゾムたちが頷く。彼らはそれぞれバイクを走らせた。
RXとシャドームーンの激闘は続く。予測を超えた動きを見せるRXに、シャドームーンはいら立ちを噛みしめていた。
「RXに決定打を与えられない・・オレの予測を上回る・・!」
モニターしている動きを上回るRXに、シャドームーンが毒づく。
「オレとお前は、紛れもなく改造人間だ。しかし、それでもオレは人間だと思っている・・人間は成長するんだ。オレも、他の人々も!」
RXが言い放って、リボルケインを構える。
「シャドームーン、お前がオレたちの動きを予測するなら、オレたちはそれを超えていく!自由と平和を守るため、オレは貴様を倒す!」
RXが駆け出して、リボルケインを振りかざす。シャドームーンがシャドーセイバーでリボルケインを防いでいく。
「オレは次期創世王だ!RX、いや、ブラックサンを倒して、創世王の座をつかみ取る!」
シャドームーンが野心をむき出しにして、1本のシャドーセイバーでリボルケインを受け止めて、もう1本をRXの体に突き立てた。
「ぐっ!」
RXが突き飛ばされて後ろに下がる。
「シャドーフラッシュ!」
「キングストーンフラッシュ!」
シャドームーンとRXがキングストーンのエネルギーを光にして放出する。2人の光はぶつかり合って、相殺されてはじけ飛ぶ。
シャドームーンとRXが同時に大きくジャンプする。
「シャドーキック!」
「RXキック!」
エネルギーを集めた2人の両足のキックがぶつかり合う。
「ぐっ!」
RXとシャドームーンが地面に落ちる。シャドームーンがすぐに立ち上がり、2本のシャドーセイバーを突き出した。
「ぐあっ!」
体を切りつけられてうめくRX。彼がリボルケインを掲げていたことで、シャドーセイバーは軌道がそれて、彼の両わき腹をかすめただけで、サンライザーに刺さることはなかった。
「この世に光がある限り、このオレは、仮面ライダーは不滅だ!」
RXが言い放って、リボルケインをシャドーチャージャーに突き立てた。シャドームーンが激痛を覚えながらも、シャドーセイバーを振り上げてリボルケインを払った。
それでもシャドームーンは命であり力の源であるキングストーンを突かれて、大きく力を消耗していた。彼は戦うどころか、立っているのもままならなくなっていた。
「ブラックサン・・お前は生まれ変わって、さらに力を付けて、オレを完全に上回ったというのか・・」
シャドームーンが弱々しく声を上げて、顔を上げてRXに目を向ける。
「人々の心には、自由と平和を求める光がある。みんなの希望の光を守るために、オレは負けるわけにはいかないんだ・・」
正義と決意を口にするRX。人々の希望と仲間たちとの友情がある限り、自分もみんなも本当の強さを得られると、彼は確信していた。
そこへ永夢たちから逃げてきたマリバロンがやってきて、RXとシャドームーンを目の当たりにした。
「RX・・シャドームーンまでも倒したというのか・・!?」
マリバロンがRXに対して怒りを感じていく。
「もうやめろ、マリバロン!ゴルゴムもクライシスも、もはやオレたちと戦えるだけの戦力は残っていない!」
「黙れ!この怪魔妖族大隊を指揮する諜報参謀の名に懸けて、お前を許してなるものか!」
呼びかけるRXに、マリバロンがさらに怒りをあらわにする。彼女がRXに攻撃を仕掛けようと構えた。
そのとき、1つの光線が飛び込んできて、マリバロンの体を後ろから貫いた。光線はさらに伸びて、RXに命中した。
「うっ・・!」
マリバロンが貫かれた体を押さえてふらつく。
「わ・・私はお前を許しはしないぞ・・RX・・南、光太郎・・・!」
RXへの憎悪をたぎらせたまま、マリバロンは倒れながら消滅した。
「な、何だ、今のは・・何者だ!?」
RXが光線を放った相手に向かって呼びかける。彼の視線の先の空間が、電撃を帯びながら歪み始めた。
「ついにこの私が自ら赴く時が来たか・・」
不気味な声が発せられると同時に、空間の歪みから1つ目の巨体の怪人が姿を現した。
「お前は、邪眼!?・・バカな!?よみがえったというのか!?」
RXが怪人、邪眼を目の当たりにして、驚きを隠せなくなる。
「お前たちの持つキングストーンを手に入れ、私が真の創世王となる・・そして、全ての世界を我が物とする・・」
邪眼が言いかけて、目を不気味に輝かせる。
「復活したゴルゴムとクライシス帝国・・全てはお前の仕業だったのか!?」
「我が尖兵としてよくやってくれた・・怪人や怪魔戦士の策略と破壊活動は、人間どもの恐怖を駆り立てることとなり、私の復活の糧としてくれた・・」
構えを取るRXに邪眼が言いかける。ジャークたちをよみがえらせて自分自身の復活のための負のエネルギーを人々から引き出そうとしたのは、邪眼だった。
「貴様・・己の復活のために、このオレを利用したのか・・!?」
シャドームーンが邪眼への怒りを覚える。だが彼は思うように動くことができない。
「月の世紀王、お前もよみがえらせることができたのは、私にとってこの上ない好都合・・お前のキングストーンももらい受けるぞ・・」
邪眼が笑みをこぼして、シャドームーンに向かって歩き出す。その前にRXが立ちはだかる。
「お前の思い通りにはさせんぞ!邪悪な野望は、オレたちが阻止する!」
「太陽の世紀王、立ちはだかるならお前のキングストーンからいただく・・」
立ち向かおうとするRXに狙いを変えた邪眼。彼が目から光線を放って、RXの体に命中させた。
「うあっ!」
RXが吹き飛ばされて地面を転がる。
「RX・・!」
うめくシャドームーンの前に、邪眼が立ちふさがった。
「2つのキングストーンは私のものだ・・」
シャドームーンに手を伸ばす邪眼だが、ジャンプしてきたRXのキックを受けて押される。
「邪眼、お前の相手はオレだ!」
「太陽の世紀王、何人たりとも私を止めることはできぬ・・死ぬがいい・・」
言い放つRXをあざ笑う邪眼。RXが立ち向かい攻撃を仕掛けるが、振りかざした左腕を邪眼につかまれて持ち上げられる。
「しまった!」
「これで終わりだ・・滅びよ・・」
もがくRXにとどめを刺そうと、邪眼が左手を振りかぶる。
「このままではやられる・・アクロ・・!」
RXがアクロバッターを呼ぼうとした。
そのとき、一条の光が飛びこんで、邪眼を突き飛ばした。邪眼から解放されたRXの前に、BLACKが乗ったロードセクターが止まった。
「ロードセクター・・BLACK!」
「間に合ってよかった、RX・・邪眼、今度の企みはお前の仕業だったのか!」
RXが声を上げて、ロードセクターから降りたBLACKが邪眼に目を向ける。
「生まれ変わる前に太陽の世紀王・・お前たち2人のキングストーンで事足りるか・・」
邪眼がBLACKも標的に定める。ウルフルスロットルに乗ったソウマも駆けつけて、その後ノゾム、戦兎、永夢、光輝も続いた。
「何だ、あのバケモノは・・!?」
「邪眼・・またよみがえったのか!?」
戦兎が声を上げて、光輝が邪眼に目を向ける。
「知っているんですか、光輝さん!?」
「ヤツの名は邪眼。闇のエネルギーを操り、怪人たちをよみがえらせることもできる邪悪生命体。ゴルゴムの創世王になれなかった5万年前の世紀王だ・・!」
永夢が問いかけて、光輝が邪眼について説明する。邪眼もまた世紀王となった存在だった。
「倒されたはずだが、また復活を果たしたみたいだ・・!」
「そしてゴルゴムとクライシス帝国の戦士たちをよみがえらせて、人々の恐怖をあおって自らも復活した・・!」
光輝に続いてRXも説明する。
「アイツが、今回のおかしなことを起こした張本人か・・!」
「他の仮面ライダーも現れたか・・何人集まろうと、私を止めることはできぬ・・」
鋭い視線を向けるノゾムと、野心を見せる邪眼。
「勝手に決めるな!お前のようなヤツに、オレたちの生き方をねじ曲げられてたまるか!」
「人々の命は必ず守る!医者である僕と、仮面ライダーである僕たちが!」
ノゾムが怒鳴って、永夢が決意を言い放つ。
「お前のようなヤツを野放しにすれば、科学も黒く染まることになる。そんなこと、オレがさせない・・!」
戦兎も言い放って構えを取る。
「お前たちも闇へ葬り去ってくれる・・」
邪眼がノゾムたちを倒そうと、体から電撃を発する。ノゾムたちが左右に動いて、放たれた電撃をかわす。
「そんなんじゃオレの速さには届かないぞ!」
ソウマが先行して、ジャンプして邪眼にキックを当てる。しかし邪眼はビクともしない。
「この程度で私に勝とうとは、愚かな・・」
邪眼が右腕を振りかざして、ソウマを突き飛ばす。
「ソウマ!くそっ!」
ノゾムがいら立ちを見せて、邪眼に飛びかかる。マキシマムフォルムの強さを発揮するノゾムと組み付いて、邪眼が押される。
「なかなかの力・・だがそれでも私を止めることはできぬ・・」
邪眼がノゾムの腕を持ち上げて、振り下ろして地面に叩きつける。
「ぐっ!このっ!」
ノゾムが怒りをふくらませて、逆に邪眼を持ち上げようとする。しかし邪眼の巨体を持ち上げるだけの力は発揮できない。
そこへ光輝が飛びかかって、スピリットカリバーを振りかざした。邪眼が切られて火花を散らして、ノゾムから引き離される。
「1人だけで戦おうとしなくていい!オレたちもいるんだ!」
「関係ない・・オレはアイツが許せないから戦うんだよ・・!」
光輝が呼びかけて、ノゾムがいら立ちを見せながら立ち上がる。
「ここは協力プレーといくか!アイツは一筋縄にはいかないボスキャラだから!」
「そうだな。ここは仮面ライダーの混合のときだな。」
永夢と戦兎が前に出て、互いに手の甲を軽く当てる。
「アイツはパワーがあるが、あの体からスピードはそれほどでもない。フォックス、お前の得意なスピード戦で行くぞ。」
「おだてても何も出ないぞ。ま、最初からそのつもりだけど。」
戦兎が呼びかけて、ソウマが気さくに答える。
「お前たちが束になろうと、闇は払えぬ・・」
邪眼が目から光線を放って、ノゾムたちがジャンプでかわす。ソウマ、RX、BLACK、永夢が邪眼の後ろと横に回り込んで、素早くパンチとキックを繰り出す。
「オレも剣技を見せるとするか・・!」
戦兎が言いかけて、2つのフルボトル「忍者フルボトル」と「コミックフルボトル」を手にした。
“ニンジャ。”
“コミック。”
“Are you ready?”
「ビルドアップ!」
“忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!イエーイ!”
ビルドの装甲が紫と黄色に変わった。速さと忍術を備えた「ニンニンコミック」である。
戦兎が刀「4コマ忍法刀」を手にして、構えを取る。
“チャージ・シャーク!シャーシャーシャーシャー・シャークソード!”
ノゾムもシャークソードを手にして構える。彼が戦兎、光輝とともに邪眼にそれぞれの剣を振りかざす。
邪眼が体を切りつけられるが、ものともせずに腕を振りかざす。ノゾムたちは素早く動いてかわす。
“分身の術!”
戦兎が4コマ忍法刀のトリガーを1回引いて、数人の分身を作り出して、邪眼を取り囲んだ。邪眼が腕を振りかざすが、分身に当たるだけだった。
邪眼が全身から電撃を放出するが、周りにいたのは全て分身だった。
「偽者に気を取られすぎだぞ。」
“火遁の術!火炎斬り!”
邪眼の横に現れた本物の戦兎が、刀身から火炎を発した4コマ忍法刀を振りかざす。切られた邪眼が怯んで後ずさりする。
「お前は必ずブッ倒す・・オレたちの居場所をムチャクチャにされてたまるか!」
ノゾムはビースドライバーにマキシマムカードをセットし直す。
“マキシマムチャージ!アニマルスマーッシュ!”
彼がジャンプして、邪眼に向かって両足のキックを繰り出した。邪眼が体から電撃を放出するが、ノゾムのキックに電撃がはじかれる。
「ぐおっ!」
邪眼が突き飛ばされて大きく横転する。着地したノゾムを、立ち上がった邪眼が目を向ける。
「諦めろ、邪眼!仮面ライダーは常に新しく誕生している!考え方は違っても、それぞれの守るもののために戦う心は同じだ!」
光輝が邪眼に向かって言い放つ。ダメージを負いながらも、邪眼には力が残っていた。
「仮面ライダーの名を持つ者・・侮れぬ強さということか・・だが、いかに粋がろうとも、闇は果てることはない・・何人たりとも、闇を消すことはできぬ・・たとえお前たち、仮面ライダーであろうと・・・」
言いかける邪眼の体が、電撃を帯びながら変化を始める。
「何だ!?・・何が起こっているんだ・・・!?」
「邪眼が変身しているんだ・・自身のエネルギーを凝縮させて・・!」
戦兎が声を上げて、BLACKが答える。
「ということは、パワーアップするだけじゃなく、スピードも格段に上がることに・・・!」
永夢が邪眼に対して危機感を覚える。邪眼がスピード戦で勝てる相手でないと、彼と戦兎は思った。
「お前たちも思い知るがいい・・お前たちが大げさに叫ぶ変身など、我が闇の力の前では、遊びにしかすぎぬと・・」
言いかける邪眼の姿が巨体から人に近い大きさになった。先ほどよりも体は小さくなったが、力は凝縮されたことで強化されていた。
「あれが邪眼ってヤツの真の姿か・・!」
「何をしてこようと関係ない・・オレたちにおかしなマネをしてくるなら、ブッ倒すだけだ!」
ソウマが呟いて、ノゾムがいきり立って邪眼に飛びかかる。しかし繰り出したパンチとキックをかわされて、ノゾムが邪眼の反撃の打撃を体に受ける。
「ぐっ!」
膝蹴りを体に叩き込まれて、ノゾムがうめく。さらに邪眼に蹴られて、ノゾムが突き飛ばされる。
「ノゾム!」
ソウマが声を上げて、RXとBLACKが邪眼に向かっていく。2人が同時に繰り出したパンチを、邪眼はジャンプしてかわす。
さらに邪眼は宙に浮いて、全身からビームを放出した。
「うあっ!」
RXとBLACKがビームを直撃されてうめく。
「BLACK!RX!」
叫ぶ光輝に迫る邪眼。彼が両手を振りかざして、光輝と永夢に衝撃波をぶつけて吹き飛ばす。
「みんな!このままやられるわけにはいかない!」
“隠れ身の術!”
戦兎が4コマ忍法刀を振りかざして、煙幕を放つ。煙幕によって視界をさえぎられた邪眼だが、戦兎たちの居場所を把握していた。
「うっ!」
邪眼の目からのビームを当てられて、戦兎とソウマがうめいて倒れる。
「なんて勘をしているんだ、アイツ・・!」
「パワーもスピードもけた違いに跳ね上がっている・・!」
立ち上がるソウマと戦兎が邪眼に毒づく。
「こうなったら裏技を使うしかないみたいだ・・!」
永夢が意を決して、新たなライダーガシャット「ハイパームテキガシャット」を手にした。
“マキシマムマイティX!マキシマムガシャット!”
彼がマキシマムマイティXガシャットをゲーマドライバーにセットする。
“ハイパームテキ!ドッキーング!”
さらにハイパームテキガシャットをゲーマドライバーの中央上部にセットする。
「ハイパー大変身!」
“バッカーン!ムーテーキー!輝けー・流星のごーとーくー・黄金の最強ゲーマー!ハイパームテキーエグゼーイド!”
永夢がハイパームテキガシャットの上のスイッチを押して、ガシャットを展開する。するとエグゼイドの姿が金色に彩られたものへと変化した。
「おぉ〜!金ぴかじゃないか〜!」
戦兎が永夢の新しい姿を見て、感動の声を上げる。
「そのようなこけおどしは無意味だ。我が闇には通じぬ・・」
「こけおどしかどうか、すぐに分かるぜ!」
言いかける邪眼に永夢が自信を見せる。邪眼が永夢に向かって目から光線を放つ。
光線が顔に当たって、永夢の頭が少し後ろに押された。しかし永夢はダメージを全く受けていない。
「お、おい・・今、間違いなく当たったはずじゃないか・・・!?」
「だけど、当たってなかったみたいにへっちゃらだぞ・・!」
ソウマと戦兎が永夢の様子に驚く。
「あれはムテキゲーマー。名前通り無敵の力を発揮するんだ。今の永夢くんにはどんな攻撃も能力も通用しない。」
光輝が今の永夢について語る。永夢は最強形態「ムテキゲーマー」となっていた。
「ウソだろ!?そんなの無敵を通り越して反則だろうが!」
光輝の話を聞いて、ソウマがさらに驚く。
邪眼が永夢に飛びかかってパンチを繰り出すが、永夢の姿が当たる瞬間だけ消えた。
「高速か瞬間移動か・・いずれにしろそのような小細工など・・」
邪眼が続けてパンチとキックを繰り出すが、永夢には全く当たらない。
「おのれ・・!」
邪眼が全身から電撃を放出して、永夢に確実に当てようとする。電撃は永夢に命中していたが、それも彼にダメージはない。
「バカな!?・・攻撃を受けても何ともないだと・・!?」
完全無欠の強さを見せる永夢に、邪眼が驚きを見せる。
「今のオレは絶対無敵。無敵となったゲームのキャラは、どんな敵もやっつける!」
永夢が言い放つと、邪眼の眼前に一気に詰め寄った。永夢が目にも留まらぬ速さの打撃を、邪眼に叩き込んでいく。
「ぬおっ!」
邪眼が永夢の連続攻撃を受けて突き飛ばされて、地面に叩き落とされた。
「お、おのれ、エグゼイド・・!」
「今こそお前を倒して、ゲームクリアと行こうか!」
うめく邪眼に言い放って、永夢がハイパームテキガシャットのスイッチを2回押す。
“キメワザ!ハイパークリティカルスパーキング!”
永夢がジャンプして、一気に高速化して邪眼にキックを当てた。キックの衝撃を受けたものの、その瞬間、邪眼は平然としていた。
“究極の一発!”
次の瞬間、邪眼の体を強い衝撃が襲った。永夢のキックのダメージが時間差で一気に押し寄せてきた。
「や、やった!」
邪眼が大ダメージを受けて、ソウマが声を上げる。振り返った永夢の前で、膝をついた邪眼が再び起き上がる。
「これがお前の持つ無限の力か・・だが、それで勝ったと思うな・・・」
邪眼が永夢を見て声を振り絞る。
「コイツ、往生際悪く・・!」
「待て・・まだ何かあるぞ・・!」
いら立ちを見せるノゾムに、RXが声をかける。彼とBLACKは邪眼の力の変化に気付いていた。
「闇もまた無限・・決して消えることはない・・そして我が闇の力もまた同じ・・」
邪眼がさらに言いかけたそのとき、ノゾムたちのいる場所に黒い霧が立ち込めてきた。
「何だ、この霧は・・!?」
「これは、闇・・!」
ノゾムが周りを見回して、BLACKが緊張をふくらませる。闇、黒い霧が邪眼の体に吸い込まれていく。
「霧を体に取り込んでいる・・!」
「まさか、ヤツは闇の力をさらに取り込んで、強くなるつもりか!?」
戦兎とRXが闇を取り込む邪眼に声を上げる。邪眼の体が闇のように黒く染まっていく。
「これが真の闇・・無限の闇を力とする私には、お前たちは勝てはしない・・」
漆黒の姿へと変貌を遂げた邪眼。彼は自身の力だけでなく、周囲の闇の力をも凝縮させていた。
「何になっても、今のオレには勝てないよ。今のオレは無敵状態なんだから。」
永夢が邪眼に対して自信を見せる。
「ならばかかってくるがよい。闇を恐れぬのなら・・」
「だったら今度こそゲームクリアだ!」
落ち着きを見せる邪眼に永夢が向かっていく。彼が高速で一気に詰め寄って、邪眼にパンチを繰り出した。
その瞬間、邪眼の姿が永夢の眼前から消えた。今の自分が攻撃を当てられないこの瞬間に、永夢は目を疑った。
「そんな!?オレの攻撃が当たらない!?今のオレは無敵なのに!?」
「無敵?そんなものでも無限の闇に勝つことはできぬぞ。」
驚きを隠せなくなる彼の後ろに、邪眼が現れた。
「そんなことはない!今度こそ!」
永夢が動揺を振り払って、超高速で邪眼にキックを繰り出した。キックは体に命中したが、邪眼は微動だにせずダメージもない。
「そんなバカな!?・・ムテキゲーマーの攻撃が、効かない・・!?」
永夢の動揺が一気に高まった。ムテキゲーマーを相手にしても、漆黒の体となった邪眼は圧倒的な強さを見せていた。