仮面ライダー BLACKRX・マックス

-地球を駆ける黒き勇者-

第6章

 

 

「バトルホッパー!」

 BLACKがバッタを思わせる姿をしたバイク「バトルホッパー」を呼び寄せた。彼はバトルホッパーに乗って、ツバキたちを守るためにダロムたちを追走する。

 バトルホッパーは世紀王のために用意されたバイクで、自己再生能力も備えた生体メカである。

「ゴルゴム、お前たちのために、どれだけの人たちが悲しみを味わってきたか・・絶対に許さん!」

 ゴルゴムやクライシスへの怒りを噛みしめて、BLACKはバトルホッパーを加速させた。

 

 ツバキたちとクジラ怪人を、ダロムたちが追っていく。3大怪人と2体の怪人にツバキたちが囲まれた。

「お前たちは私たちからは逃げられませんわ。」

「おとなしく我らに従えば楽になれるものを・・ムダな抵抗はやめるのだな。」

 ビシュムとバラオムがツバキたちを見てあざ笑う。

「クジラ怪人、あくまで我らを逆らおうというのか。この裏切り者め!」

 ダロムがクジラ怪人に言い放つと、右手を伸ばして念力を放つ。クジラ怪人が突き飛ばされてしりもちをつく。

「貴様も仮面ライダーとともに地獄に落ちるがいい!」

 ダロムが言い放って、再び念力を放つ。クジラ怪人が念力で体を持ち上げられる。

「クジラ怪人!」

 追い詰められるクジラ怪人に、タイチが叫ぶ。

「クジラ怪人を放せ!」

 ワタルがダロムに向かって飛びかかるが、ビシュムに捕まってしまう。

「ワタルくん!」

「何をしてもあなたたちが活路を見出すことはない。諦めるのね。」

 タイチが叫んで、ビシュムが微笑みかける。ゴルゴムに取り囲まれて、ツバキたちが窮地に追い込まれた。

 そこへBLACKとバトルホッパーが駆けつけてダロム、バラオムを蹴散らした。

「仮面ライダーBLACK!」

 ビシュムがBLACKを見て驚きの声を上げる。彼女はワタルを抱えたまま空を飛ぶ。

 バトルホッパーが加速してジャンプして、BLACKがさらにジャンプする。彼が飛び込んで、ビシュムからワタルを奪い返した。

「ワタルくん!」

 ツバキとタイチが声を上げて、着地したBLACKとワタルに駆け寄る。

「ワタルくん、大丈夫!?

「う、うん・・ありがとう、仮面ライダー!」

 BLACKが声をかけて、ワタルが頷いて感謝した。

「ありがとう、クジラ怪人・・みんなを守ってくれて・・・!」

「ライダー・・ライダーがいなかったら、オレ・・・」

 感謝するBLACKに心を打たれて、クジラ怪人が涙を流す。

「ツバキちゃんたちを守ってくれ、クジラ怪人。オレがダロムたちを倒す。」

「ライダー・・分かった・・・!」

 BLACKが声をかけて、クジラ怪人が頷いた。

「みんなも早く逃げるんだ!」

「はいっ!」

 BLACKがさらに呼びかけて、ツバキが答える。ツバキ、タイチ、ワタル、ワオンがクジラ怪人とともにこの場を離れた。

「逃がしはせんぞ!」

 バラオムがツバキたちを狙って、両手から光線を放とうとした。そこへBLACKが飛び込んでパンチを繰り出して、バラオムに当てて光線の発射を阻止した。

「ゴルゴム、オレはお前たちを倒し、この地球を守ってみせる!」

 BLACKが怒りの声を上げて、ダロムたちに向かって飛びかかる。

「ならばお前から葬り去る、仮面ライダー!」

 ビシュムが飛び上がって、翼をはばたかせて突風を巻き起こす。BLACKが体に力を入れて突風に耐える。

「トゲウオ怪人!」

 バラオムが呼びかけて、トゲウオ怪人がトゲを放つ。BLACKがトゲを受けて、ビシュムの突風に耐えきれなくなって吹き飛ばされる。

「私がクジラ怪人を追う!ここは任せたぞ!」

 バラオムがダロムたちに言ってから、ツバキたちを追いかけて駆け出した。

「待て、バラオム!」

 BLACKが立ち上がってバラオムを追いかけようとする。だがダロムが右手を伸ばして、念力でBLACKの動きを止めた。

「仮面ライダー、おや、ブラックサン、今度こそ貴様の最期だ!」

 ダロムが言い放って、念力を強めてBLACKの体を持ち上げる。ビシュムが目から火の球を、トゲウオ怪人がトゲを放つ。

“チャージ・ウルーフ!ウルフル・ウルフル・ウルフルスロットール!”

 そのとき、強い疾風が駆け抜けて、火の球とトゲがはじき飛ばされた。疾風はさらにダロムを突き飛ばした。

 ダロムの念力から解放されて、BLACKが地上に落ちた。一気に大きなダメージを負ったため、彼の変身が解けた。

「何者です!?

 ビシュムが振り返って、トゲウオ怪人とともに身構える。2人と光太郎が目にしたのは、オオカミの頭部をしたバイクだった。

「よく分かんないけど、大変なことになっているみたいだね・・」

 さらに1人の青年がやってきて、状況を見て呟く。

「ビースターじゃないみたいだけど、ビースターみたいに悪さを企んでそうだ・・」

 青年がダロムたちを見て笑みを浮かべて、光太郎に近づく。

「ビーストライダーじゃないみたいだけど、アイツらやビースターとは違う。ヤツらと戦って、みんなを守ってるって感じだ。」

「その姿・・ビーストライダー“フォックス”だな。」

 互いに声をかけ合う青年と光太郎。

「オレも有名人になってきているみたいだな。オレは渋谷(しぶや)ソウマ。ビースターを倒す者さ。」

 青年、ソウマが光太郎に自己紹介をする。

「ここはオレに任せてくれ。君はツバキちゃんたちのところへ行ってくれ。」

「ツバキちゃんたちのところへ?・・まさか、アイツらの仲間がみんなのところに・・!?

 呼びかける光太郎に、ソウマが緊張を覚える。

「そうはいかんぞ、ライダーども!2人ともここで地獄に送ってやる!」

 ダロムが言い放って、両手を前に出して念力を放とうとした。だがオオカミのバイク「ウルフルスロットル」が駆けつけて、ダロムの行く手を阻んだ。

「ここはあなたよりも、オレが相手をしたほうがいいみたいだ。」

 ソウマが声をかけて、光太郎が戸惑いを見せる。

「ありがとう、ソウマくん・・気を付けるんだぞ・・!」

 光太郎が呼びかけて、ソウマが笑みを見せて頷いた。

「さぁ、さっさと始めようか。よそ見をしているとあっという間にあの世行きだぜ!」

“フォックス!”

 ソウマが言いかけて、キツネのアニマルカード「フォックスカード」を手にしてビースドライバーにセットした。

「変身!」

“チャージ・フォーックス!ソニックフォックス!ソリッドフォックス!ビース・ハイスピード!”

 ビースドライバーの左上のボタンを押したソウマ。彼は黄色と茶色のスーツとキツネを思わせる形のマスクを身にまとった。

「オレの強さは疾風迅雷!お前たちでもオレは止められないぞ!」

 ソウマが言い放って走り出す。翼をはばたかせて飛び上がるビシュムに向かって、ソウマがジャンプする。

 ソウマが振りかざしたチョップを腕に受けて、ビシュムがバランスを崩す。彼女は落下しそうになったところで体勢を整えて、ソウマに向かって翼をはばたかせる。

「くっ!・・すごい風を起こしてくるか・・だけど!」

 体を回転させるビシュムに、ソウマがスピードを上げて向かっていく。

「オレのスピードの前じゃそよ風と同じだ!」

 ソウマがジャンプして足を振りかざして、ビシュムの羽に叩き込んだ。

「うっ!」

 バランスを崩して地上に落下するビシュム。

「ビシュム!」

「ビシュム様!」

 ダロムが叫んで、トゲウオ怪人がソウマに向かってトゲを飛ばす。だがソウマの素早い動きでトゲをかわされる。

「お前もビースターと同じように倒したほうがよさそうだな!」

 ソウマが足を速めて詰め寄って、トゲウオ怪人に連続でパンチとキックを叩き込んだ。

「ぐおっ!」

 トゲウオ怪人が突き飛ばされて、地面を大きく転がる。

「まずはお前から仕留めてやる!」

 ソウマがビースドライバーの左上のボタンを2回押す。

“フォックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 スピードを上げてトゲウオ怪人に向かってジャンプするソウマ。彼が繰り出したキックが、トゲウオ怪人に命中した。

「ウギャアッ!」

 トゲウオ怪人が蹴り飛ばされて、壁に叩きつけられた。

「だ・・大怪人様・・大怪人さまー!」

 致命傷を負ったトゲウオ怪人が、断末魔の叫びを上げて倒れて爆発を起こした。

「まずはザコを片付けた。次はお前たちだ!」

「トゲウオ怪人・・・おのれ、私たちの愛しい怪人を!」

 言い放つソウマにビシュムが怒りをあらわにする。彼女が再び体を回転して、突風を巻き起こす。

「だからそんなんでオレは捕まえられないって!」

 ソウマは突風をかいくぐって、ウルフルスロットルに乗って走り出す。彼はビースドライバーのフォックスカードとウルフカードを入れ替えて、左上のボタンを2回押す。

“ウルフチャージ!アニマルスマーッシュ!”

 ウルフルスロットルから光があふれ出す。ウルフルスロットルが一気にスピードを上げて、発揮されるエネルギーで浮遊してビシュムに突っ込んだ。

「うっ!」

 体を貫くような衝撃に襲われて、ビシュムが大きく突き飛ばされた。

「ビシュム!」

 ダロムが叫ぶ中、ビシュムが致命傷を負って地面に膝をつく。

「私が倒れても、ゴルゴムの支配は続く・・世界は、シャドームーン様のもの・・シャドームーンさまー!」

 絶叫を上げるビシュムが倒れて爆発を起こした。

「ビシュムが、死んだ!?・・バカな・・・!」

 ビシュムの死を目の当たりにして、ダロムが絶望を覚える。怒りを覚えた彼がソウマに振り返る。

「おのれ、ライダー!ビシュムの仇、必ず取ってやるぞ!」

 ダロムがソウマに向けて手を伸ばす。放たれた念力を、ソウマがウルフルスロットルからジャンプしてかわす。

「早く行け!オレの代わりにツバキたちを守ってやってくれ!」

「ソウマくん・・すまない!」

 着地したソウマが呼びかけて、光太郎が頷いて立ち上がる。

「ロードセクター!」

 光太郎が叫ぶと、バトルホッパーとは違う1台のバイクが駆けつけてきた。白のボディと赤いラインが特徴のバイクである。

「急げ、ロードセクター!バラオムを追うんだ!」

 光太郎がバイク「ロードセクター」に乗って走り出す。彼はツバキたちを守るため、バラオムを追った。

「これでお前と存分に・・」

 ソウマがダロムに視線を戻したときだった。ダロムの触角が伸びて、縄となってソウマの体を縛った。

「しまった!」

「ハッハッハッハ!さすがの素早いお前でも、油断していればよけられないか!」

 驚くソウマをダロムがあざ笑う。縄はダロムの思念波を受けて、ソウマの体を締め付けていく。

 さらにダロムは伸ばして両手から念力を放って、ソウマの力を押さえつける。

「くっ!・・力が入らない・・ウルフル・・!」

「させんぞ!」

 ウルフルスロットルに呼びかけようとしたソウマだが、ダロムの念力に持ち上げられて振り回される。

「フォックス、まずは貴様の息の根を止めて、それから仮面ライダーブラックの持つキングストーンを奪いに行くぞ!」

 ダロムがあざ笑って、ソウマを地面に叩き落とした。

「くっ・・コイツを早く引きちぎらないと・・!」

 ソウマが縄から抜け出そうと、体に力を入れる。立ち上がれないでいる彼に、ダロムが迫る。

「フォックス、今度こそ貴様の最期だ!」

 ダロムがとどめの光線を放とうと、両手にエネルギーを集めた。ソウマはまだ縄から抜け出せない。

 そのとき、1台のバイクが走り込んできて、ダロムを横から突き飛ばした。ダロムは宙で体勢を整えて着地する。

「こりゃまたおかしなことになってるみたいだな。」

 ソウマの近くで停車したバイクに乗っていた1人の青年が、ダロムを見て呟く。

「オレの知っている仮面ライダーとも、スマッシュとも違う・・ま、どっちが正義でどっちが悪かはハッキリしていそうだけどね。」

 ソウマとダロムに目を向けてから、青年はダロムを敵だと認識した。

「何者だ、貴様!?

 ダロムが青年に向かって問い詰める。

「オレの名は桐生(きりゅう)戦兎(せんと)。さぁ、実験を始めようか。」

 青年、戦兎が自己紹介をして、ボトル「フルボトル」を2本取り出して上下に振る。彼は振ったフルボトル、ウサギの赤い「ラビットフルボトル」と戦車の青い「タンクフルボトル」のキャップを回して、ベルト「ビルドドライバー」にセットした。

“ラビット。”

“タンク。”

“ベストマッチ!”

 戦兎がビルドドライバーの右側にあるレバーを回して、フルボトルの成分を混ぜていく。

Are you ready?

 彼の前後にプラモデルのランナーのような枠が現れた。

「変身!」

 構えを取った戦兎を、枠内の装甲が合わさるように包み込んだ。

“鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!”

 半分が青、半分が赤の装甲をした戦士へと変身した戦兎。

「お前たちには、仮面ライダービルドと言ったほうが分かりやすいか。」

「ビルド!?・・新しく仮面ライダーが出てきたというのか!?

 改めて名乗る戦兎に、ダロムが驚く。戦兎はフルボトルの力をかけ合わせて戦う仮面ライダー、ビルドに変身した。

 

 BLACKに助けられたツバキたちは、工場地帯に逃げ込んだ。彼女たちはその中の倉庫の1つに入って隠れた。

 クジラ怪人はツバキたちを守ろうとして、体力を消耗していた。

「大丈夫、クジラ怪人!?・・僕たちを守るために・・・!」

 ワタルがクジラ怪人を心配して、動揺を見せる。

「ありがとう、みんな・・オレを心配してくれて・・・」

 クジラ怪人がワタルたちの気遣いに感謝する。

「ここならそう簡単には見つからないはずだよ・・何とか、ゴルゴムやクライシスをやり過ごせれば・・・!」

 タイチが周りを見回して、追跡者に見つからないことを祈る。

「大丈夫だよ・・ノゾムお兄ちゃんと光太郎さんが何とかしてくれるよ・・・!」

 ワタルがノゾムたちへの信頼を感じていく。ツバキもノゾムたちを信じて頷いた。

 そのとき、ツバキたちにまばゆい光が差し込んできた。

「何、この光・・・?」

「太陽?・・でも急に差し込んでくるなんて・・・」

 ワタルとツバキが光に疑問を覚える。

「違うよ!これは日の光じゃない!」

 タイチが緊張を覚えて声を上げる。次の瞬間、彼らのいる倉庫の天井が破れて、バラオムが飛び降りてきた。

「我らから逃げられると思うな!ここで全員始末してくれる!」

 バラオムが言いかけて、構えた手の爪をきらめかせる。彼は目からの光で倉庫の中を見て、ツバキたちを見つけたのである。

「みんな、逃げるんだ!」

 タイチが呼びかけて、ツバキたちと一緒に逃げ出す。タイチがとっさに投げ飛ばす段ボールを、バラオムは手を振りかざしてはねのける。

「みんな、早く逃げて・・!

「クジラ怪人!」

 バラオムに立ち向かうクジラ怪人に、ワタルが叫ぶ。クジラ怪人はワタルたちを逃がそうと、自分が体を張ろうとしていた。

「おのれ、クジラ怪人!まずは死にぞこないの裏切り者からだ!」

 バラオムが爪を振りかざして、クジラ怪人を切りつけて突き飛ばす。すぐに立ち上がったクジラ怪人が頭から粘液を放つが、バラオムに素早くかわされる。

「その能力も先刻承知だ!お前程度ではオレを止めることはできんぞ!」

 バラオムがクジラ怪人をあざ笑う。バラオムはスピードを上げて、クジラ怪人を切りつけて攻め立てる。

「クジラ怪人!」

「来ないで!みんなは逃げて!」

 叫ぶツバキをクジラ怪人が呼び止める。

「オレがみんなを守る・・みんなはその間に逃げて!」

「クジラ怪人・・・!」

 呼びかけるクジラ怪人にツバキが戸惑いをふくらませる。彼女は涙を押し殺して、タイチたちとともに倉庫から出た。

 ツバキたちを狙うバラオムにクジラ怪人がつかみかかる。しかしクジラ怪人はバラオムに逆につかまれて、2人は壁を破って外へ飛び出した。

 バラオムが爪を振りかざして、クジラ怪人を立て続けに切りつけていく。

「クジラ怪人!」

 倒れたクジラ怪人を目撃して、ワタルが叫んで飛び出す。

「ワタルくん、ダメだ!戻ってくるんだ!」

 タイチが呼び止めるが、ワタルとワオンがクジラ怪人を助けに向かう。バラオムがクジラ怪人を横に突き飛ばして、ワタルたちの前に立ちはだかった。

「小僧、まずはお前からだ。ライダーたちへの見せしめとしてくれる!」

 バラオムが笑みをこぼすと、顎から生えている牙をコピーして、2本のサーベルを手にした。

「ワタルくん、ワオン、早く逃げて!」

 ツバキが叫ぶが、ワタルはしりもちをついてしまい、ワオンもバラオムに向かって吠えて逃げようとしない。バラオムがワタルたちに向かってサーベルを振り下ろした。

 その刃は、ワタルたちを庇ったクジラ怪人の背中に突き刺さった。

「クジラ怪人!?

 守ってくれたクジラ怪人に、ワタルが目を見開く。

「おのれ、クジラ怪人・・どこまでもオレの邪魔を!」

 いら立つバラオムがさらに爪を突き出す。彼の爪がクジラ怪人の体に突き立てられた。

 負傷したクジラ怪人がゆっくりと倒れる。ワタルがワオンとともに駆け寄って、クジラ怪人を支える。

「しっかりして、クジラ怪人!クジラ怪人!」

 ワタルが悲痛の叫びを上げると、クジラ怪人が微笑みかける。彼らの前に、バラオムが低いうなり声を上げて立ちはだかった。

 

 ロードセクターに乗って、バトルホッパーとともにバラオムを追って駆け抜ける光太郎。バトルホッパー以上のスピードを出すロードセクターが、光太郎とともに先行する。

 ロードセクターは前方部にある「光電子レーダーライト」と、後方上部にある「オプティカルアイ」によって、周囲や進路の状況を正確にキャッチして、「ヘッドアップディスプレイ」に画像表示される。ロードセクターは、進行方向にいるツバキたちやバラオムを捉えていた。

「いた!急がなければ!」

 光太郎が意識を集中して、ロードセクターに乗ったまま両手を握りしめる。

「変・・身!」

 変身ポーズを取った光太郎がBLACKへ変身する。彼はロードセクターのアクセルをかけて、さらに加速する。

「アタックシールド!」

 BLACKが身をかがめると、ロードセクターの上部を「アタックシールド」が展開して覆う。ロードセクターがさらに加速して、工場地帯に入った。

「スパークリングアタック!」

 ロードセクターがスピードを緩めることなく、コンテナやコンクリートの壁をたやすく打ち破っていく。そしてツバキたちやバラオムの前に飛び出した。

 ロードセクターはバラオムをはじき飛ばして、同時にワタル、ワオン、クジラ怪人を拾って、ツバキたちのそばでスピードを落として止まった。

「仮面ライダーBLACK!」

「みんな、早く逃げるんだ!」

 ツバキが声を上げて、BLACKが呼びかける。ツバキたちがクジラ怪人を連れて、この場を離れる。

「逃がさんぞ!」

 バラオムがツバキたちを追いかけようとするが、駆けつけたバトルホッパーに突撃を当てられて行く手を阻まれる。

 バトルホッパーを退けようと、バラオムが右手を振り上げて爪で切り詰めようとする。そこへロードセクターが走り込んで、バラオムを突き飛ばした。2大マシンによるマシンスクランブルを受けたバラオムの前に、BLACKが駆けつけた。

「仮面ライダー、BLACK!」

 BLACKが名乗りを上げてポーズを決めた。彼とバラオムが同時に飛び出して、パンチと爪を互いの体に叩き込む。

 同時に着地した後も、BLACKとバラオムが激しい攻防を繰り広げる。スピードを上げて爪を振りかざすバラオムだが、BLACKは防御と回避をしてかいくぐる。

 力と怒りを込めたBLACKのパンチを体に叩き込まれて、バラオムが突き飛ばされる。

「おのれ、仮面ライダー!」

 バラオムがいら立ちの声を上げて、2本のサーベルを手にして、BLACKに飛びかかって振り下ろす。BLACKはジャンプして、バラオムのサーベルをかわす。

「ライダーチョップ!」

 BLACKが降下しながら、エネルギーを集めたチョップを振り下ろして、バラオムのサーベル2本を叩き折った。続けてBLACKがチョップを繰り出して、バラオムの爪とぶつかり合う。

「ぬおっ!」

 バラオムが突き飛ばされて地面を転がる。彼は爪に痛みを感じて、ダメージが大きくなっていた。

 BLACKはエネルギーを一点集中させる「バイタルチャージ」を行い、バラオムに向かってジャンプする。

「ライダーパンチ!」

 BLACKの繰り出したパンチを体に叩き込まれて、バラオムが突き飛ばされる。

「まだだ・・まだ倒れんぞ、仮面ライダー!」

 バラオムが立ち上がって、両手に力を込める。

「ライダーキック!」

 BLACKが続けてキックを繰り出す。バラオムが渾身の力を込めて、両手からビームを放つ。

 BLACKのキックはビームをはじき飛ばして、バラオムの体に直撃した。

「ぐおあぁっ!」

 バラオムが突き飛ばされて、コンテナの壁に叩きつけられた。

「シャ・・シャドームーン様・・シャドームーンさまー!」

 絶叫を上げるバラオムが倒れて爆発を起こした。彼を倒したBLACKがツバキたちに駆け寄る。

「仮面ライダー・・!」

「クジラ怪人が・・・!」

 ツバキとワタルが声をかけて、BLACKがクジラ怪人に目を向ける。

「クジラ怪人、しっかりするんだ!クジラ怪人!」

 BLACKが呼びかけて、クジラ怪人が閉ざしていた目をゆっくりと開く。

「ラ・・ライダー・・オレ・・みんなを守れた・・・」

「あぁ!君のおかげだ!ありがとう、クジラ怪人!」

 声を振り絞るクジラ怪人に、BLACKが感謝を告げる。

「クジラ怪人・・僕とワオンを助けてくれて、ありがとう・・!」

 ワタルがクジラ怪人に感謝して、2人が手を握り合う。

「ワタル、みんな・・オレの故郷である海を、みんなも守ってほしい・・・」

「クジラ怪人・・もちろんだよ!人間も動物も、自然も海も守る!守れるように強くなるよ!」

 願いを託すクジラ怪人に、ワタルが涙ながらに決心を口にする。ツバキとタイチもクジラ怪人に頷いていた。

「ありがとう、タクミ・・・ありがとう・・みんな・・・」

 笑みをこぼして感謝するクジラ怪人。力尽きた彼が目を閉じて動かなくなった。

「クジラ怪人・・クジラ怪人!」

「クジラ怪人!」

 ワタルとBLACKが命を落としたクジラ怪人に叫ぶ。彼のツバキたちを守ろうとした意思を心に秘めて、BLACKが立ち上がる。

「みんな、クジラ怪人を頼む・・オレはノゾムくんたちのところへ戻る・・・!」

BLACK・・はい・・・」

 BLACKの呼びかけにツバキが頷く。BLACKはロードセクターに乗って、バトルホッパーとともに走り出した。

 

 ダロムとコウモリ怪人の前に現れた戦兎。新たなるライダーの登場にダロムたちがいきり立つ。

「気を付けろ!その白いヤツは念力を使ってくるぞ!」

 ソウマが注意を呼びかけて、戦兎が頷く。

 ダロムが戦兎へ迫り、右手を振りかざす。戦兎はジャンプして、ダロムの背中にキックを当てる。

 ダロムが触角を伸ばすが、戦兎は機敏に動いて触角をかわす。

「おのれ、すばしっこく逃げ回りおって!コウモリ怪人、お前も行け!」

 ダロムが呼びかけて、コウモリ怪人が戦兎に飛びかかる。

「コウモリ男・・イヤな気分にさせるなぁ・・!」

 戦兎は愚痴をこぼしてから、パンチを振り上げてコウモリ怪人を突き上げた。コウモリ怪人はバランスを崩すが、すぐに体勢を整える。

 そのとき、コウモリ怪人に気を取られていた戦兎に、ダロムが両手を前に出して念力を放つ。

「うぐっ!」

 戦兎が念力に振り回されて、地面に引き倒される。コウモリ怪人が飛び込んで、戦兎が立ち上がったところでビルドの装甲を爪で切りつけた。

「このままじゃやられるな・・だったら・・!」

 戦兎が新たに2つのフルボトル「ゴリラフルボトル」と「ダイヤモンドフルボトル」を取り出した。

“ゴリラ。”

“ダイヤモンド。”

“ベストマッチ!”

 彼はビルドドライバーにセットされていたフルボトルを入れ替えた。

Are you ready?

「ビルドアップ!」

“輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イエーイ!”

 戦兎がビルドドライバーのレバーを回すと、ビルドの装甲がこげ茶色と水色に変わった。彼はビルドの別フォーム「ゴリラモンド」となった。

「姿を変えたところで、貴様は地獄へ落ちるのだ!」

 ダロムが戦兎に向かって念力をかける。念力に拘束された戦兎だが、振られずに踏みとどまっている。

「何っ!?

 戦兎に力負けしていることに驚くダロム。彼は触覚からビームを放とうとした。

 戦兎が右手を地面に叩きつけて、衝撃を巻き起こしてダロムを怯ませる。

「勝利の法則は決まった・・!」

 戦兎が言いかけると、再びビルドドライバーのレバーを回転する。

Ready go!ボルテックフィニッシュ!”

 彼が左手で持った地面の破片をダイヤモンドに変えて、右手のパンチで殴り飛ばす。粉砕されたダイヤモンドがダロムに命中する。

 ダロムが突き飛ばされて、壁を破って奥に投げ出された。戦兎は迫ってきたコウモリ怪人に振り返る。

「次はお前だ、コウモリ男!」

 戦兎が言い放って、2つのフルボトル「タカフルボトル」と「ガトリングボトル」を取り出して、ビルドドライバーにセットした。

“タカ。”

“ガトリング。”

“ベストマッチ!Are you ready?

「ビルドアップ!」

“天空の暴れん坊!ホークガトリング!イエーイ!”

 ビルドの装甲がオレンジと灰色に変わる。戦兎は新たな姿「ホークガトリング」となった。

 戦兎が飛び上がって、空中でコウモリ怪人を迎撃した。彼の繰り出したパンチを体に受けて、コウモリ怪人が地上に落下しかかる。

 上昇してきたコウモリ怪人に対して、戦兎は手にしたガトリングガン「ホークガトリンガー」を連射する。コウモリ怪人が射撃されて、立ち上がったダロムも射撃が地面に当たった破裂と煙に視界をさえぎられる。

「このまま一気に仕留めてやる!何か悪だくみをされる前にな!」

 戦兎がホークガトリンガーのリボルバーを回転させる。

“10、20、30・・・”

 リボルバーを回転させるごとに、10発ずつ弾丸が装填される。コウモリ怪人が戦兎目がけて突っ込んでいく。

“100!Ready go!

 全部で100発弾丸が装填されたホークガトリングの銃口にエネルギーが集まる。

“ボルテックブレイク!”

 コウモリ怪人が特殊フィールドに包まれて、動きを封じられる。戦兎がホークガトリンガーをコウモリ怪人に向かって連射した。

 コウモリ怪人が撃たれて、落下しながら爆発を起こした。

「コウモリ怪人!・・おのれ、ビルド!」

 立ち上がったダロムが戦兎に怒りを見せる。着地した戦兎がラビットタンクに戻る。

「さて・・これでフィニッシュと行くか!」

 戦兎がビルドドライバーのレバーを回す。

Ready go!ボルテックフィニッシュ!”

 戦兎とダロムの間にグラフの形をした滑走路が現れた。戦兎はジャンプして、滑走路を滑るように右足のキックを繰り出した。

 ダロムが両手から念力を放って迎え撃つ。しかし戦兎のキックを押し返すことができず、キックを体に受けて突き飛ばされる。

 倒れたダロムが1度立ち上がるが、決定打を体に受けたことでふらついていた。

「私が倒れても、ゴルゴムは・・シャドームーン様は不滅だ・・世界は、ゴルゴムのものだ・・・!」

 断末魔の言葉を口にして、ダロムが倒れて爆発を起こした。

「すごい・・2人のバケモノをやっつけたぞ・・・!」

 戦兎の戦いを見て、ソウマが戸惑いを感じていた。戦兎が振り返ってソウマに歩み寄る。

「ヤツらも相当な怪物だったけど、うまく戦えば倒せないことはない。オレは天才物理学者だからな。それを見つけるのはわけないさ。」

「言ってくれるな・・とにかくありがとう。助かったよ・・」

 強気な態度を見せる戦兎に、ソウマが感謝する。

「頭の回転はお前が速くても、体のほうはオレが速いぜ。」

「言ってくれるな。その速さ、きちんと見せてもらおうかな。」

 互いに強気な態度を見せ合って、ソウマと戦兎が握手を交わした。

「ビルドチェンジ!」

 戦兎がスマートフォン「ビルドフォン」に「ライオンフルボトル」をセットする。ビルドフォンが巨大化、変形してバイク「マシンビルダー」となった。

「状況はだいたい分かってる。みんなのところへ急ぐぞ。」

「分かってるって。」

 戦兎の呼びかけにソウマが言い返す。戦兎がマシンビルダーに、ソウマがウルフルスロットルに乗って、ノゾムたちのところへ向かった。

 

 

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