仮面ライダー BLACK・RX・マックス
-地球を駆ける黒き勇者-
第4章
人気のない廃工場にて、ワタルは縛られて吊るされていた。
「作戦のことは聞いているわ。南光太郎はシャドームーンに任せるわ。」
マリバロンが微笑んで、姿を現したボスガンたちに振り返る。
「もうすぐマックスがこっちに来る。ヤツを仕留めるのはオレだ。」
ガテゾーンが笑みをこぼして、自分が愛用しているバイク「ストームダガー」に目を向ける。
「それには及ばないわ。既に我が手の者が迎撃に出ているわ。」
マリバロンが微笑んで、自分の部下を配置させたことを告げる。
「マリバロンだけずるいぞ!オレも送り込ませてもらうぞ!」
ゲドリアンが笑みを浮かべて、マリバロンに口を挟む。
「奇襲を仕掛けることを忘れないでおくことね。」
ゲドリアンに言葉を返して、外に目を向けるマリバロン。彼女もボスガンたちも、ノゾムと光太郎が来るのを待ち望んでいた。
廃工場近くにシャドームーンたちはいた。シャドームーンは光太郎が来るのを待っていた。
「仮面ライダーBLACK RX、ブラックサン、今度こそお前との決着を着けるぞ。」
光太郎との戦いを心待ちにするシャドームーン。彼は新たなる創世王になろうとする世紀王の宿命に駆られていた。
「今度こそ新たなる創世王が誕生する。そして世界はゴルゴムが支配することになる。」
ダロムがシャドームーンの勝利とゴルゴムの世界制圧を信じて、笑みを浮かべる。
「我らはマックスをRXから引き離し、倒す。」
「あなたたちも配置に付きなさい。もう失敗は許されないわよ。」
バラオムが作戦を口にして、ビシュムがトゲウオ怪人とアネモネ怪人に呼びかける。
「仮面ライダーも、世界から2人消えることとなる。我らの支配の足がかりとしてくれる。」
この戦いの勝利の後のことも考えて、シャドームーンは野心をふくらませていた。
ワタルを助けにノゾムと光太郎は歩く。2人はワタル救出の決意とそれぞれの意思を固めていた。
「光太郎さん、アンタはあの鎧ヤローと戦って、何か気にかかるんじゃないのか?・・やっぱ、オレがアイツと・・」
「いや、シャドームーンとはオレが戦う。これはオレたちの宿命であり、オレが乗り越えなければならない戦いなんだ。」
ノゾムが声をかけるが、光太郎はシャドームーンと戦う決意を変えない。
「オレが信彦と戦うことに迷ったばかりに、オレはシャドームーンに敗れ、世界の人々が絶望と悲しみを背負うことになってしまった・・」
「だからもう戦うことに迷わないと・・友達の命を奪うことになっても・・・」
「君たちにオレと同じ悲しみを背負ってほしくないが、そうならないとは絶対に言えない。万が一にも友と戦うことになったら、何が大切なのかをよく考えてくれ・・」
「何が大切なのか、か・・オレの大切なものは・・・」
光太郎の言葉を受けて、ノゾムが自分の思いを確かめる。
「オレはオレの心のために戦う・・オレを思い通りにしようとするヤツは、オレは容赦なくブッ倒す・・相手が誰だろうとな・・・!」
ノゾムはあくまで自分を貫こうとする。
「オレを倒すために、ツバキたちを人質にしたりするヤツらを、オレは許しはしない・・!」
「オレも、ゴルゴムやクライシスのような邪悪な者を許しはしない。悪から地球や人々を守るために、オレは戦い続ける・・!」
ノゾムに続いて、光太郎も決意を口にする。
「ワタルを助けて、邪魔するヤツは倒す・・!」
「オレと君の戦う理由は共通している・・!」
2人が頷き合って、廃工場の近くまで進んだ。そこで光太郎は近くで物音を聞いて足を止めた。
「どうしたんだ?・・何かいるのか・・!?」
ノゾムが光太郎に聞いて、周囲への警戒を覚える。光太郎はするどい聴覚で、物陰に潜む者の動きに気付いていた。
「オレたちが来ると分かっていて、待ち伏せしていたようだ・・!」
光太郎が言いかけて、廃屋の出入り口に目を向けた。その廃屋からドクロの顔をした怪人が飛び出してきた。
「クライシスの怪魔妖族!」
光太郎が握った右手を出して、ドクロの怪人、怪魔妖族スカル魔を押し返した。
「手荒いお出迎えをしてきたってわけか!」
ノゾムが声を上げて、スカル魔が振りかざす鎌をよける。
“マックス!”
彼がマックスカードをビースドライバーにセットした。光太郎もスカル魔との距離を取って構える。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを押して、マックスに変身した。光太郎もRXへ変身した。
「ワタルはどこだ!?ワタルを返せ!」
ノゾムがスカル魔に向かって言い放つ。そこへ1体の怪物が廃屋の屋根から飛び降りてきた。
ノゾムが怪物、怪魔異星獣キュルキュルテンの突撃を受け止めて、そのまま投げ飛ばした。
「いいぜ・・まとめてここでブッ倒してやる・・!」
ノゾムがいきり立ってキュルキュルテンに立ち向かう。スカル魔がノゾムを狙って飛びかかる。
「待て!」
RXがスカル魔を追いかける。だが彼の前にコウモリ怪人、トゲウオ怪人、アネモネ怪人が現れた。
「そこをどけ、ゴルゴム!」
RXが迫るコウモリ怪人たちを打撃でなぎ払っていく。
そのとき、RXが重圧のある足音を耳にして足を止めた。彼の前にシャドームーンが現れた。
「シャドームーン・・!」
RXが振り返って、シャドームーンに目を向ける。信彦との友情を胸に秘めながらも、RXは彼と戦うことへの迷いを振り切っていた。
「RX、たとえ姿が変わろうとも、お前がブラックサン、私と戦う宿命を背負った世紀王であることに変わりはない。」
「たとえお前が信彦であろうと、お前が世界を支配しようとするならば、オレは戦う・・!」
戦うことを求めるシャドームーンに、RXが決意を口にする。
「この地球と人々を守るため、シャドームーン、オレは貴様を倒す!」
RXが言い放って構えを取る。
「行くぞ、RX!」
シャドームーンも構えて、RXとともに駆け出す。2人がパンチをぶつけ合い、さらに手を振りかざして攻防を繰り広げる。
(ワタルくんなら大丈夫だ。ノゾムくんが必ず助け出す。)
RXはノゾムを信じて、シャドームーンとの戦いに集中した。
廃屋の中に飛び込んだノゾム、スカル魔、キュルキュルテン。2人の刺客を相手に、ノゾムは苦戦を強いられていた。
「くそっ!こんなヤツらに手こずってるわけにはいかないんだよ・・!」
ノゾムがいら立ちを見せながら、スカル魔たちに向かっていく。だが彼はキュルキュルテンの突進を受けてふらついて、スカル魔が振りかざした鎌でマックスのスーツが切られて火花を散らす。
ノゾムが床に倒れて、その先の階段を転がって地下に落ちた。スカル魔とキュルキュルテンが彼を追いかける。
立ち上がったノゾムが反撃に出るが、スカル魔とキュルキュルテンの猛攻にだんだんと追い込まれていく。
「オレは・・こんなところでグズグズしてる暇はないんだよ!」
感情を爆発させるノゾムだが、キュルキュルテンに飛びかかられて壁に押し付けられる。キュルキュルテンが振りかざした爪が、ノゾムの後ろの壁を切り裂いた。
その切れ目から白いガスが噴き出してきた。冷凍倉庫として使われていた場所の冷凍ガスが、中からもれ出した。
「つめたーい!冷たい、冷たい、つめたーい!」
冷凍ガスを浴びたキュルキュルテンが絶叫を上げて苦しみ出した。彼は寒さに弱かった。
「コイツ、寒さに弱いのか・・今がチャンスだ!」
ノゾムが集中力を高めて、ビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがジャンプして、エネルギーを集めたキックを繰り出した。キックを体に受けて、キュルキュルテンが突き飛ばされた。
キュルキュルテンが絶叫と上げて、倒れて爆発を起こした。
「ワタルを返せ・・さもないと、お前もこのバケモノみたいになるぞ!」
ノゾムが言い放って、スカル魔が鎌を構える。そのとき、2人の間に爆発が起こって攻撃を阻んだ。
「よくもキュルキュルテンをやってくれたな!今度はオレが相手だ!」
ゲドリアンが姿を現して、ノゾムに言い放つ。
「オレはワタルを連れ戻すんだよ!邪魔するなら誰だろうと容赦しないぞ!」
“シャーク!”
ノゾムは言い放って、サメのアニマルカード「シャークカード」をビースドライバーにセットした。
“チャージ・シャーク!シャーシャーシャーシャー・シャークソード!”
ノゾムの手にサメの角のような形の刀身をした剣「シャークソード」が握られた。
飛びかかってきたゲドリアンに、ノゾムがシャークソードを振りかざす。ゲドリアンは身軽で素早い動きで、シャークソードをかわす。
スカル魔もノゾムを狙って鎌を振りかざす。ノゾムがシャークソードを掲げて、鎌を受け止める。
「グズグズしてられないんだよ・・!」
ノゾムが力を振り絞って、スカル魔の鎌を押し返す。彼はその勢いに乗るように走り出して、地上への階段を駆け上がる。
「逃がすものか!」
ゲドリアンがノゾムを追いかけて、スカル魔も続く。ノゾムは廃屋から外に出て、ワタルの行方を探る。
そこへストームダガーを乗るガテゾーンが駆けつけてきた。
「今度はオレの相手をしてもらうぜ!」
ガテゾーンが強気に言ってきて、ストームダガーが射撃を仕掛ける。ノゾムがとっさに横に動いて、地面から爆発が起こる。
「バイクで攻撃かよ・・だったら!」
“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”
ノゾムがタイガーカードをビースドライバーにセットして、タイガーランナーを呼び出した。彼はタイガーランナーに乗って、ガテゾーンとストームダガーに向かっていく。
タイガーランナーとストームダガーが交錯して火花を散らす。タイガーランナーは怯まずに転回して、ストームダガーに向かっていく。
(オレはオレの納得するようにする・・オレが納得できるのは、ツバキやタイチ、ワタルたちがいなくちゃならないんだよ・・!)
心の中で自分の考えを強めて、ノゾムがタイガーランナーを加速させる。ストームダガーからの射撃による爆発を、タイガーランナーがジャンプしてかいくぐる。
タイガーランナーが着地したところで、ノゾムがビースドライバーの左上のボタンを2回押した。
“タイガーチャージ!アニマルスマーッシュ!”
タイガーランナーから光があふれ出す。加速するタイガーランナーがストームダガーとぶつかり合った。
「ぐおっ!」
ストームダガーが爆発して、ガテゾーンが跳ね上げられる。倒れた彼の前にタイガーランナーが止まって、ノゾムが降り立つ。
「これ以上邪魔をするなら、ここでマジでブッ倒すぞ・・!」
「黙れ!」
怒鳴りかかるノゾムに、ガテゾーンが銃を手にして発砲する。ノゾムがとっさにビームをかわして、シャークソードを構える。
“ガンガン・シャークガーン!”
ノゾムがシャークソードの柄にあるスイッチを切り替えて「ガンモード」にした。シャークソードは剣でありながら、銃としても使うことができるのである。
ノゾムとガテゾーンが銃撃戦を繰り広げる。外れた射撃が周囲に当たって火花を散らす。
そこへゲドリアンが飛びかかって、ノゾムに組み付いてきた。
「コイツ!」
ノゾムが足を振り上げて、ゲドリアンを引き離す。そこへガテゾーンが射撃を仕掛けて、ノゾムに命中させた。
「うっ!」
突き飛ばされるノゾムだが、その瞬間にシャークソードを発砲した。彼の射撃がガテゾーンの手から銃をはじき飛ばした。
「人の忠告を聞かなかったんだ・・覚悟してもらうぞ!」
“シャークチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがシャークソードを構えて、先端にエネルギーを集める。彼はシャークソードの柄にある引き金を引いて、ビームを発射する。
ガテゾーンの前にスカル魔が飛び出してきた。ガテゾーンをかばってビームを受けて、スカル魔が爆発を起こした。
「出しゃばってくれて・・ま、おかげで助かったがな・・!」
ガテゾーンが皮肉を口にして、銃を拾って体勢を整える。ノゾムもタイガーランナーに乗って、ワタルを捜して走り出した。
「ガテゾーン、早く追いかけるぞ!」
「マックス、ストームダガーの仇、討ってやるぞ・・!」
ゲドリアンが呼びかけて、ガテゾーンがノゾム打倒に燃える。2人がノゾムを追って駆け出した。
タイガーランナーを走らせて、ノゾムはワタルが捕まっている廃屋に駆けつけた。
「ワタル!」
ノゾムがワタルを見つけて声を上げる。
「あっ!ノゾムお兄ちゃん、悪い人が隠れて狙ってるよ!」
ワタルが呼びかけて、ノゾムが周囲を警戒して耳を澄ませる。次の瞬間、ビームの鞭が飛んできて、ノゾムの腕に巻きついた。
「ぐっ!」
ノゾムが引っ張られて、タイガーランナーから引き離されて床に落とされる。彼の前にマリバロンが姿を現した。
「待っていたわよ、マックス。ここがお前の墓場になるのよ。」
マリバロンがノゾムを見つめて、妖しく微笑む。
「お前も勝手にオレのことを決めるな・・オレがどうするかは、オレが決めるんだ!」
「黙れ!」
声を振り絞って立ち上がるノゾムに怒鳴って、マリバロンがビームの鞭を通して電気ショックを与える。
「ぐっ!」
ノゾムが苦痛を覚えてうめく。マリバロンがビームの鞭を解いて、ノゾムが再び床に倒れる。
「お前は苦しみをよしとしないのだったな。ならば私がその苦しみを取り除いてやろう。」
ボスガンも現れて、持っていた剣を鞘から抜いた。
「私あわれみ深い性格だからな。ありがたく思うのだな。」
「誰が!」
微笑んでくるボスガンに言い返して、ノゾムが立ち上がって飛びかかる。
“チャージ・シャーク!シャーシャーシャーシャー・シャークソード!”
ノゾムがシャークソードを振りかざすが、ボスガンの掲げた剣に防がれる。
「私はクライシス帝国の「騎士」の称号を持つ貴族。貴様などにやられるほど弱くはないぞ。」
ボスガンが言いかけて、剣を振りかざしてマックスのスーツを切りつけた。突き飛ばされながらも、ノゾムはすぐに追撃を仕掛ける。
「動くな、マックス!動けばこの子供の命はないぞ!」
そのとき、マリバロンがワタルを人質にして、ノゾムに脅しをかける。
「お前ら、汚いマネしやがって・・!」
「ライダーどもから受けた数々の恨み、晴らさずにおくものか・・まずは、マックス、お前から血祭りに上げてやる!」
怒りを見せるノゾムにマリバロンが憎悪の眼差しを送る。彼女が口から炎を吐いて、ノゾムを吹き飛ばす。
「ぐっ!」
「兄ちゃん!」
倒れて転がるノゾムに、ワタルが叫ぶ。マリバロンとボスガンがノゾムを見下ろして笑い声を上げる。
「マックスのとどめは私がもらうぞ、マリバロン。」
ボスガンがマリバロンに告げて、ノゾムを狙って剣を構える。
「妙な動きをすれば、小僧の命はないわよ。」
マリバロンがワタルに狙いを定めて、いつでも妖術を放てるようにする。
「そんなことしてみろ・・オレは絶対にお前らを許さないぞ・・・!」
ノゾムが声と力を振り絞って、ボスガンたちに怒りを向ける。
「フン。お前たちに絶望を与えられるならそれもよい。」
ボスガンは鼻で笑って、ノゾム目がけて剣を振り下ろした。ノゾムがとっさにシャークソードに手を伸ばして、引き金を指で押してビームの刃を放った。
ボスガンがとっさに刃をかわした。外れた刃は廃屋の鉄柱に当たって跳ね返って、ワタルを吊るしていたロープを切った。
「うわっ!」
「何っ!?」
悲鳴を上げるワタルと、不意を突かれたマリバロン。落下するワタルを、走り込んだタイガーランナーが受け止めた。
「ワタルを乗せてツバキたちのところへ行け!」
ノゾムが呼びかけて、タイガーランナーがワタルを乗せて走り出した。
「逃がさんぞ!」
「お前らの相手はオレだ!」
追いかけようとするボスガンに、ノゾムが飛びかかる。2人がシャークソードと剣を振りかざしてぶつけ合う。
ノゾムが足を突き出して、ボスガンを蹴り飛ばす。ボスガンはマリバロンと合流して、ノゾムを迎え撃つ。
そのとき、ガテゾーンとゲドリアンが追いついて、ノゾムの後ろに回り込んだ。
「これでお前も終わりだな、マックス!」
「私たち4大隊長を1人で相手をして、万に1つの勝ち目もないわ。」
ゲドリアンがあざ笑って、マリバロンが勝利を確信する。
「どんなヤツだろうと何人だろうと、オレたちにおかしなマネをしてくるヤツは、必ずブッ倒す!」
ノゾムが怒りをふくらませて構えを取る。
「お前はここで終わりだ。地獄へ落ちるんだな。」
ガテゾーンが言いかけて銃を構える。クライシス帝国の4大隊長を相手に、ノゾムは逃げずに立ち向かおうとしていた。
工場地帯から離れた荒野で、RXとシャドームーンの激闘は繰り広げられていた。
能力面では、BLACKから進化したRXのほうが明らかに上だったが、シャドームーンは互角の戦いを繰り広げていた。それは彼の緑の目「マイティアイ」によるモニターで、RXの動きが予測されていたからだった。
(下手にロボライダー、バイオライダーになれば逆にやられてしまう!先読みされても通すことのできる攻撃をしなければ!)
シャドームーンに決定打を与えるチャンスを見計らうRX。
シャドームーンがかざした右手から、緑色のビームを放つ。RXがビームに捕まって、持ち上げられて振り回される。
「RX、お前の中にあるキングストーンをもらうぞ!」
シャドームーンが言い放って、赤い刀身の剣を手にした。
「サタンサーベル!」
RXが剣「サタンサーベル」を見て声を上げる。サタンサーベルは創世王のための魔剣で、シャドームーンが主に使いこなしていた。
「リボルケイン!」
RXがリボルケインを手にして、サタンサーベルとぶつけ合った。その反動を利用して、RXがシャドームーンとの距離を取る。
「お前の命も既に我が手中にある。創世王となるのはこの私だ。」
「オレはお前やゴルゴムの宿命に従うつもりはない!地球と人々を守るために戦う!それがこのオレ、仮面ライダーBLACK RXだ!」
自分の勝利を確信しているシャドームーンに、RXが決意と正義を言い放つ。
RXがシャドームーンに向かって飛び込んで、サタンサーベルをはじいてリボルケインを突き出す。しかしシャドームーンは体を捉える寸前に、リボルケインをサタンサーベルで受け止めていた。
「リボルケインを受け止めた・・これも読んでいるのか・・!?」
「RX、お前は私を倒す術は何1つない・・!」
声を上げるRXにシャドームーンが強気に告げる。彼が振りかざしたサタンサーベルが、RXの体を切りつけた。
「ぐっ!」
ダメージを受けてうめくRX。シャドームーンがさらにサタンサーベルを振りかざして、RXを切りつけていく。
「ぐあっ!」
RXが突き飛ばされて仰向けに倒れた。ダメージが増した彼をシャドームーンが見下ろす。
「RX、いや、ブラックサン、いよいよ最期のときが来たようだな。お前の体を切り裂き、キングストーンを取り出してくれる。」
シャドームーンがRXを狙ってサタンサーベルを構える。彼は創世王になれると勝利を確信した。
そのとき、空にある太陽の光がきらめいた。光がRXに注がれて、爆発のような衝撃を巻き起こした。
「何っ!?」
衝撃と閃光でとっさに後ろに下がるシャドームーン。太陽の光を浴びて体から輝きを放つRXが立ち上がった。
太陽光とキングストーンのエネルギーで、RXは瀕死から回復して傷も治った。
「何ということだ・・BLACKのとき以上の回復力だ・・!」
シャドームーンがRXの生命力と回復力に驚く。
「オレは太陽の子・・世界に悪がいる限り、オレはいつでもよみがえる・・この世に光がある限り、オレは何度でもよみがえる!」
RXが声を振り絞って言い放つ。彼の中には高い戦闘能力だけでなく、どのような状況下でも諦めない不屈の闘志が宿っていた。
「ならばその力、私の力で封じ込める・・!」
シャドームーンが言い放って、自身のベルト「シャドーチャージャー」に意識を集中する。
「シャドーフラッシュ!」
彼がシャドーチャージャーからキングストーンのエネルギーを放出した。
「そうはいかない!キングストーンフラッシュ!」
RXもキングストーンのエネルギーを光として放出する。2人のエネルギーがぶつかり合って、周囲に激しい衝撃を巻き起こす。
そしてRXとシャドームーンのいる荒野の空間にもゆがみが生じた。
「これは・・!」
RXがゆがみを目にして警戒を強める。彼はゆがみを別の次元とつながっているトンネルと思った。
オーロラを思わせるゆがみからRXとシャドームーンの前に現れたのは、光太郎だった。
「お前は、オレ・・!?」
もう1人の自分が現れたことに、RXが驚きを覚える。光太郎がRXを見て頷いて、シャドームーンに視線を移して目つきを鋭くする。
「どういうことだ・・南光太郎がもう1人・・!?」
シャドームーンが光太郎を見て疑問を感じていく。
「お前は何者だ?・・お前も南光太郎なのか・・!?」
「そうだよ、信彦・・僕は南光太郎。そして・・」
シャドームーンの問いかけに答えて、光太郎が構えを取り拳を握りしめる。
「変・・身!」
腕を振りかざしてポーズを取る光太郎。彼の腰に現れたのは、RXのサンライザーとは違う形のベルト。
光太郎の姿に変化が起こった。彼はRXとは違う姿の、黒いボディと赤い目の戦士に変わった。
「仮面ライダー、BLACK!」
もう1人の光太郎の変身した仮面ライダーBLACKが高らかに名乗りを上げた。彼はRXになる前の光太郎だった。
「お前もオレ・・過去のオレなのか・・!」
「あぁ。君とシャドームーンの放ったエネルギーが、オレを引き寄せる形になった。」
声をかけるRXにBLACKが頷く。
RXとシャドームーンのキングストーンの光の衝突が、周辺の空間を歪ませて、別の次元へ通じるトンネルを生み出した。その力と変化を感じ取ったBLACKがトンネルを通って、彼らの前に駆けつけたのである。
「別次元の2人のブラックサンが、私の前に現れるとは・・」
シャドームーンがBLACKとRXを見て身構える。
「キングストーンは1つ奪えば十分だが、2人ともこのオレが葬ってくれる!」
シャドームーンが言い放つと、BLACKとRXに向かっていく。
「たとえオレたちの戦い方を全て見切っているとしても、オレたちが力を合わせれば、不可能なことは何もない!」
「シャドームーン、オレはお前を倒し、ゴルゴムとクライシスの野望を阻止してみせる!」
BLACKとRXが言い放って、シャドームーンを迎え撃つ。
サタンサーベルを振りかざしながら、シャドームーンはRXたちの動きを見計らう。しかし2対1の戦況のため、シャドームーンの対応に若干の遅れが出ていた。
「動きを読むことができても、体も完全についてこれるとは言えないようだな!」
RXが言い放って、BLACKと同時にパンチを繰り出す。シャドームーンが体にパンチを受けて突き飛ばされる。
「オレたちは決して諦めない!この世に光がある限り、オレたちは戦い続ける!」
「おのれ、ライダー・・おのれ、ブラックサン・・!」
決意を強めるRXにシャドームーンがいら立ちを見せる。
「信彦、ゴルゴムやクライシスのために戦う必要はない!人間の心を取り戻すんだ!」
BLACKがシャドームーンに向かって呼びかける。彼は信彦の心は失われていないと信じていた。
「我が名はシャドームーン。新たな創世王となり、世界を支配する者だ!」
シャドームーンは彼の言葉をはねのけて、サタンサーベルからビームを放つ。
「うっ!」
RXがビームに絡め取られて盛り上げられる。
「RX!」
BLACKが声を上げて、シャドームーンに飛びかかる。
「ライダーチョップ!」
エネルギーを集めた右手から繰り出されたBLACKのチョップが、シャドームーンの持つサタンサーベルをはじき飛ばした。RXがビームから解放されて着地する。
「大丈夫か、RX!?」
「あぁ!ありがとう、BLACK!」
心配の声をかけるBLACKに、RXが頷いて感謝する。
「2人力を合わせると、ここまで厄介になるというのか・・!?」
シャドームーンがRXたちの強さに対して、警戒を強める。
「オレたちの力を合わせるぞ、BLACK!」
「オレたちでシャドームーンを止めるぞ、RX!」
RXとBLACKが頷き合って、シャドームーンに目を向けて構えた。
「私は負けるつもりはない。ブラックサンを倒し、次期創世王の座についてみせる!」
自分の野心を口にして、シャドームーンがRXたちを迎え撃った。
異次元世界に広がる暗黒。その中心に邪悪なエネルギーが集まっていた。
「太陽と月・・2つのキングストーンが1つの場所に集まったか・・・」
異次元の中に不気味な声が響き渡る。
「次元を超えて、別のキングストーンが紛れてきたか・・ならばキングストーンを全て手に入れるまで・・・」
声はさらに異次元の中を響いていく。
「我の復活は近い・・そのときこそ、全ての世界を我が手に・・・」
声の主が野心をむき出しにして、自身の復活のときを待っていた。