仮面ライダー BLACK・RX・マックス
-地球を駆ける黒き勇者-
第3章
周辺で不穏が動きが起きていると感じて、ユウキとセイラは様子を見に外へ出ていた。
「この辺りで何が起こっているんだろう・・・?」
「爆発するような音も聞こえたし・・」
ユウキとセイラが不安を感じて、いても立ってもいられない気分を抑えるので精一杯になっていた。
「ノゾムくんたちが巻き込まれていなければいいんだけど・・」
ノゾムたちのことを気にして、セイラも不安をふくらませていた。
そのとき、ユウキたちはクモ怪人たちを倒したRXを目撃した。
「あれは・・・!?」
セイラがRXを見て緊張を覚える。
「もしかして、あのマックスの仲間・・・!?」
RXをマックスの仲間だと思って、ユウキが怒りを覚える。
「アイツも倒さなくてはならない敵・・野放しにはできない・・・!」
飛び出すユウキの姿が変化する。彼は龍の姿をしたドラゴンビースターに変身した。
ユウキの接近に気付いて、RXが身構える。彼が組み付いたユウキをその勢いで投げ飛ばす。
「何者だ!?ゴルゴムの怪人でも、クライシスの怪魔戦士でもない・・!」
RXがユウキを見て警戒を抱く。
「オレたちはお前たちに倒されはしない・・」
ユウキがRXへの怒りをあらわにしていく。
「もしやビースターなのか・・!?」
目の前にいるのがビースターであることに気付くRX。
ユウキが飛びかかって、握った手をRX目がけて振りかざす。RXは冷静にかわして、パンチを受け止めて再び投げ飛ばす。
「やめるんだ!今はお前と戦っている場合ではない!」
「ビーストライダーはオレたちの敵!お前もオレが倒さなければならないんだ!」
呼びかけるRXだが、ユウキは攻撃をやめない。
「戦わなければならないのか・・・!?」
ユウキとの戦いに深刻さを感じて、RXはやむなく応戦する。
ユウキが力強くRXを攻め立てる。しかしRXの強さは彼を上回っていた。
「ユウキさん!・・このままじゃユウキさんが!」
ユウキの危機を感じて、セイラもネコの姿をしたキャットビースターになって飛び出した。セイラがRXに爪を振りかざして、彼をユウキから遠ざける。
「大丈夫!?私も戦うわ!」
「ありがとう・・でもコイツ、すごく強い・・!」
呼びかけるセイラに感謝するユウキが、RXに視線を戻して焦りを口にする。
「今は2人の相手をしている時間はない!早くみんなに追いつかなければ!」
ノゾムたちと合流することを考えるRX。
「長引いたらオレたちは不利になる・・早く終わらせないと・・!」
ユウキが右手に力を込めて、光を宿していく。彼がRXに向かって拳を振りかざす。
RXがジャンプして、ユウキのパンチをかわす。ユウキは即座に振り返って、空中のRXへパンチを繰り出した。
「ぐっ!」
重みのある一撃を体に受けて、RXが怯む。倒れた彼だがすぐに立ち上がり、ユウキたちに視線を戻す。
「ライドロン!」
RXが呼びかけて、ライドロンが走り込む。
「逃げる気か!」
ユウキが声を上げて、セイラとともにRXへの追撃を狙う。しかし速く駆けつけたライドロンがRXを乗せて、ユウキたちを振り切った。
「速い・・あんな速い車を味方にしているなんて・・・!」
ライドロンの姿が見えなくなって、ユウキが歯がゆさを覚える。
「あの速さじゃ私たちじゃ追いつけないよ・・またどこかで見つけるしかないみたい・・」
やむなく諦めるセイラに、ユウキも渋々聞き入れる。2人はあえてRXを追おうとしなかった。
ノゾムの前に現れたシャドームーン。その驚異的な強さの前にノゾムは追い詰められていた。
「ちくしょう・・こんなところで倒れてたまるか・・・!」
ノゾムが声を振り絞って、シャドームーンを鋭く睨みつけて構えを取る。
「ムダな抵抗はやめろ。お前の命は既に我が手中にある。」
「オレのことを勝手に決めるな・・誰もオレを思い通りにすることはできない!」
シャドームーンが投げかけた言葉に、ノゾムが反発する。ノゾムは飛び上がってシャドームーンを見下ろす。
「コイツでお前のその硬そうな体を打ち砕いてやる!」
“ホークチャージ!アニマルスマーッシュ!”
言い放つノゾムが、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。彼が両手に光を宿して、シャドームーンに向かって急降下する。
「シャドーパンチ!」
シャドームーンが力を込めたパンチを繰り出して、ノゾムの両手のパンチとぶつけ合う。
「ぐっ!」
ノゾムが突き飛ばされて、地面を激しく転がる。
「タカの力が通じないだと!?・・だったら、ここは原点に戻って・・!」
ノゾムが立ち上がって、マックスカードをビースドライバーにセットして、マックスフォルムに戻る。
“マックスチャージ!アニマルスマーッシュ!”
続けてビースドライバーの左上のボタンを2回押して、ノゾムが右足にエネルギーを集める。彼とシャドームーンが同時にジャンプする。
「シャドーキック!」
シャドームーンも両足にエネルギーを集めたキックを繰り出す。2人のキックがぶつかり合い、さらに強い衝撃を巻き起こす。
「がはっ!」
ノゾムが突き飛ばされて、地面に強く叩きつけられた。
“スリービースト。”
そのはずみでビースドライバーが外れて、ノゾムはマックスへの変身が解けた。
「これで終わりだ。お前を葬り、次にブラックサンをこの手で倒す。」
シャドームーンが呟いて、ノゾムに近づいていく。
「お前の仲間であるあの2人も、我らの生贄としてくれる。時期に我が手中に落ちるだろう。」
「タイチとツバキ・・お前ら、アイツらに何をした!?」
シャドームーンが口にした言葉に、ノゾムが声を荒げる。
「既に我が尖兵が、ヤツらを包囲していることだろう。」
ダロムが続けて言いかけて笑みをこぼす。バラオムもビシュムもノゾムに向かって笑い声を上げる。
「やばいぞ・・早く追いかけないと・・!」
ノゾムがツバキたちのところへ行こうとするが、体に痛みが走って思うように動けない。
「お前には力が残されてはいない。オレに逆らうことも、我々から逃げることもできない。」
シャドームーンが告げて、ノゾムに近寄る。タイガーランナーがノゾムに駆け寄ろうとするが、ダロムとバラオムに行く手を阻まれて、さらに2人とビシュムに挟まれる。
そのとき、RXの乗るライドロンが駆けつけて、ダロムたちをタイガーランナーから遠ざけた。そしてライドロンはビースドライバーをつかんだノゾムを乗せた。
「シャドームーン・・信彦・・・!」
その瞬間、RXはシャドームーンの姿を視認した。RXはシャドームーンと対峙せず、ノゾムを連れてこの場を後にして、タイガーランナーもライドロンに続いた。
「仮面ライダーブラック・・いや、RX・・!」
ダロムがRXの登場と救援にいら立ちを覚える。
「今は捨て置け。ヤツの仲間への手は打ってある。このことはクライシスに伝えておけ。」
シャドームーンはダロムたちに告げて姿を消した。
「我々は怪人たちの元へ行こう。もちろんクライシスに知らせておく。」
ダロムの言葉にバラオムとビシュムが頷く。彼らもこの場から姿を消した。
ノゾムに助けられて、ダロムたちに助けられたツバキとタイチ。2人は大通りの中にある喫茶店に飛び込んだ。
「いらっしゃいませ。どうされました、2人とも?」
喫茶店のマスターがツバキたちに声をかけてきた。
「い、いえ・・大丈夫です・・ちょっと走ってきただけですから・・・」
タイチが苦笑いを見せてごまかそうとする。
「おやおや、ずいぶんと慌ててきたみたいですね。もしかして誰かに追いかけられているとか?」
「追いかけられているって、そんな物騒な・・」
マスターが投げかけてきた言葉に、タイチがさらに苦笑をこぼす。
「たとえば、こんな姿の怪人とか・・」
そのとき、マスターの姿が変わって、トゲウオの怪人へと変わった。
「えっ!?ビースター!?・・ううん、さっきのクモの怪物の仲間・・!?」
ツバキがトゲウオ怪人を目の当たりにして、タイチとともに緊迫を覚える。
「貴様らは逃げることはできんぞ!オレたちゴルゴムからはな!」
トゲウオ怪人がツバキたちに言い放ってあざ笑う。ツバキは動揺しながら、喫茶店の中にいる客に目を向けた。
「みなさん、危ないです!早く逃げてください!」
ツバキがとっさに客に向かって呼びかける。しかし客たちはゆっくりと立ち上がる。
「逃げることはできないし、逃げる必要はないわよ。」
「君たちも我々の仲間となるのだからな。」
客の女性と男性がツバキたちに笑みを見せる。2人の姿がそれぞれアネモネ、シーラカンスの怪人に変わった。
「ななっ!?お客も怪人だったのか!?」
喫茶店に潜んでいた怪人たちに、タイチが驚きを隠せなくなる。
「おとなしく付いてくるなら苦しむことはないぞ?」
トゲウオ怪人が言いかけて、アネモネ怪人、シーラカンス怪人とともにツバキとタイチに迫る。
「ツバキちゃん、出るんだ!」
タイチがツバキの腕をつかんで、喫茶店から外に飛び出した。だが外の通りにはサイの怪人が待ち構えていた。
サイ怪人がツバキたちに向かって突進を仕掛けてきた。ツバキとタイチが慌てて横に跳んで、サイ怪人の突進をよける。
「イタタタ・・大丈夫、ツバキちゃん!?」
「う、うん・・!」
痛がるタイチが声をかけて、ツバキが頷く。サイ怪人が2人に振り返り、喫茶店からトゲウオ怪人たちが出てきた。
「諦めることね。でないと苦しみを味わうことになるわ。」
アネモネ怪人が微笑んで、体から花粉を放つ。ツバキとタイチが逃げようとするが、花粉を浴びて意識を揺さぶられる。
「ダメだ・・コレを吸っては・・・!」
タイチが口を手で押さえて、ツバキに呼びかける。しかしツバキは意識を保てなくなって倒れる。
「ツバキ・・ちゃ・・ん・・・」
タイチも意識を失ってこの場に倒れて動かなくなった。
「いいぞ。このままこの2人を連れていくぞ。」
トゲウオ怪人がツバキたちに近づいていく。アネモネ怪人もツバキたちを見て微笑む。
そのとき、白いガスがトゲウオ怪人に向けて吹き付けてきた。
「何っ!?ぐおっ!」
ガスを浴びたトゲウオ怪人が、体に粘液が絡み付いて動きを封じられる。
「これは!?」
シーラカンス怪人が驚きの声を上げて、サイ怪人とともに身構える。次の瞬間、1人の怪人が倒れているツバキとタイチを抱えて、この場を離れた。
「あれは、クジラ怪人!?」
アネモネ怪人が、ツバキたちを助けたクジラ怪人を見て声を上げる。
「またしてもゴルゴムを裏切るのか!?」
シーラカンス怪人がクジラ怪人に怒鳴る。
「ゴルゴムが世界を支配したら、海もけがされる!お前たちだって海に住めなくなる!だからオレはライダーに味方する!」
クジラ怪人がツバキとタイチを守ろうとして、トゲウオ怪人たちに敵対する。クジラ怪人は自分や海に住む怪人の身を案じて、ゴルゴムを裏切ったのである。
「急ごう・・ライダーが待ってる・・・!」
クジラ怪人がツバキたちを連れて歩き出す。
「おのれ、裏切り者が・・このまま逃がすものか!」
トゲウオ怪人が怒りの声を上げて、サイ怪人とシーラカンス怪人がクジラ怪人を追う。ツバキとタイチを抱えているクジラ怪人は、サイ怪人たちを振り切れない。
そのとき、ライドロンが駆けつけて、サイ怪人たちを横から突き飛ばした。
「あれは!」
アネモネ怪人がライドロンを見て声を上げる。ライドロンからマックスになったノゾムとRXが飛び出して、クジラ怪人たちと合流した。
「クジラ怪人、お前もよみがえっていたのか!」
RXがクジラ怪人を見て驚きの声を上げる。
「ライダー・・ライダーのことはオレも聞いていた・・海を守ってくれてありがとう・・・!」
クジラ怪人がRXに感謝する。クジラ怪人はBLACKに海の平和を託して命を落としていた。
「2人を助けてくれてありがとう、クジラ怪人。君がいなかったら、最悪の事態になっていただろう・・」
RXがクジラ怪人に感謝して頷いた。
「お前ら・・ツバキとタイチに手を出しやがって・・・ただじゃおかないぞ!」
ノゾムがトゲウオ怪人たちに怒りをあらわにする。
「RXとマックスが来たか・・このまま目的を果たせぬまま終われるか!」
シーラカンス怪人が声を張り上げて、サイ怪人とともにノゾムたちに向かっていく。サイ怪人の角がノゾムのまとうマックスのスーツに当たって火花を散らす。
「ぐっ!」
サイ怪人の突進を受けて、ノゾムが大きく突き飛ばされる。
「ノゾムくん!」
彼の向かって叫ぶRXの前に、シーラカンス怪人とアネモネ怪人が立ちはだかる。
「仮面ライダーBLACK、いえ、RX・・!」
「お前に倒された恨み、今ここで晴らさせてもらうぞ!」
アネモネ怪人とシーラカンス怪人がRXに飛びかかる。RXがパンチを繰り出して、2人の怪人たちを突き飛ばす。
「お前たちのために、これ以上悲しみを増やしてたまるか!」
RXが言い放って、アネモネ怪人たちに向かっていく。
「おのれ!」
アネモネ怪人が葉っぱの形の手裏剣を投げつけるが、RXに叩き落とされる。シーラカンス怪人も電撃を放つが、RXはジャンプでかわす。
「RXキック!」
RXが両足にエネルギーを集めてキックを繰り出す。シーラカンス怪人がキックを受けて大きく突き飛ばされる。
「おのれ、ライダー・・この恨み、決して忘れんぞ!」
シーラカンス怪人が絶叫を上げて、電撃の光を放出しながら倒れて爆発を起こした。
一方、突き飛ばされたノゾムが立ち上がって、サイ怪人に目を向ける。
「サイのバケモノというだけあってパワーがあるな・・だったら!」
“エレファント!”
ノゾムがいきり立って、ビースドライバーにゾウのアニマルカードをセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・エレファーント!ハイフット・ハイレッグ・ハイハイエレファーント!”
彼がエレファントフォルムになって、サイ怪人を迎え撃つ。
サイ怪人がノゾムに向かって再び突っ込む。ノゾムがサイ怪人の突進を受け止めて踏みとどまって、彼の頭をつかんだ。
ノゾムはそのままサイ怪人を持ち上げて、放り投げて地面に叩きつけた。
「もうお前にオレは突き飛ばされないぞ!」
ノゾムが言い放って、ビースドライバーの左上のボタンを2回押す。
“エレファントチャージ!アニマルスマーッシュ!”
ノゾムがジャンプして、エネルギーを集めた両足のキックを繰り出した。キックを頭に受けて、サイ怪人が突き飛ばされた。
サイ怪人が絶叫を上げて、倒れて爆発を起こした。
「ノゾムくん、ツバキさんたちを連れて離れるぞ!」
RXがツバキたちに駆け寄って、ノゾムに呼びかける。
「けどこのままコイツらをほっとけるか!」
「今はみんなを助け出すのが先だ!急ぐんだ、ノゾムくん!」
怪人たちへの怒りを噛みしめるノゾムを、RXが呼び止める。ノゾムはやむなく聞き入れて、RX、ツバキたちと合流した。
「おのれ!このまま逃がすものか!」
トゲウオ怪人が怒りの声を上げて、ノゾムたちを追う。彼はクジラ怪人の粘液を振り払って、自由になっていた。
ノゾムが力を込めた右足で地面を強く踏みつける。その衝撃で地面が揺れて、トゲウオ怪人たちが体勢を崩した。
「今のうちだ!」
ノゾムが呼びかけて、RXたちとともにこの場を離れた。
「おのれ、ライダーども!このまま逃がすものか!」
「待て。」
トゲウオ怪人が追いかけようとするが、かけられた声に呼び止められる。彼らの前にダロムたちが姿を現した。
「マックスのもう1つの身近な存在は、クライシスが捕らえた。」
「マックスは必ず我々の前に現れる。そのときこそ、マックスの最期となる。」
ダロムとバラオムがトゲウオ怪人とアネモネ怪人に告げて、笑みをこぼす。
「そうなればRXにも隙が生まれますわ。」
ビシュムもRX打倒も叶うと思って微笑む。
「RXは私の手で葬り、キングストーンをもらい受ける。」
シャドームーンも現れて、自身の野心を口にする。彼は同じ世紀王であるRXとの決着を望んでいた。
ノゾムたちがツバキたちを救出していたとき、ワタルはワオンと一緒に散歩していた。その途中、ワタルは爆音を耳にして足を止めた。
「爆発!?・・何かあったのかな・・・!?」
爆音を気にしたワタル。ワオンも爆発のしたほうに向かって吠えていた。
「気になる・・ちょっと様子を見て、ノゾムお兄ちゃんに知らせるかな・・」
ワタルが爆音のしたほうを目指して、ワオンと一緒に歩き出す。
そのとき、ワタルが突然ビームの鞭に体を縛られて持ち上げられた。
「な、何だ!?うわあっ!」
悲鳴を上げてもがくワタル。ワオンは彼を見上げて、ひたすら吠え続ける。
「ホホホホホ。ヤツらがゴルゴムに注意を向けていたから、簡単に事が運んだわ。」
ワタルたちの前に現れたのはマリバロン。彼女はビームの鞭を伸ばして、ワタルを捕まえたのである。
「誰なんだ!?放して!放してってば!」
「大人しくすることね。抵抗することは命を落とすものと思え。」
叫ぶワタルにマリバロンが忠告する。ワタルが怖さを覚えて押し黙る。
「お前はライダーたちを葬るための、栄えある人柱となるのよ。アハハハハ!」
高らかに笑い声を上げて、マリバロンがワタルを連れ去った。取り残されたワオンがひたすら吠え続けていた。
ツバキとタイチを救出して、返信を解いたノゾムと光太郎は1度戦線を離脱した。クジラ怪人も彼らと行動を共にしていた。
「大丈夫か、クジラ怪人!?」
「ライダー・・オレは大丈夫・・この2人を守れてよかった・・・」
光太郎の呼びかけに、クジラ怪人が微笑んで答える。
「ありがとう、クジラ怪人。君のおかげで2人を助けることができた。」
「オレ、またライダーと会えてうれしい・・ライダーがRXになったことも聞いた・・」
感謝する光太郎にクジラ怪人が喜びを見せる。
「クジラの怪人か・・お前がいてくれたから、ツバキとタイチを助けることができた・・助かった・・」
ノゾムもクジラ怪人に目を向けて、お礼を口にする。そのとき、ツバキとタイチが意識を取り戻して、ゆっくりと体を起こした。
「わ・・私たち・・・」
「お前ら・・気が付いたのか・・・!」
声をもらすツバキに、ノゾムが感情をあらわにする。
「僕たち、怪物たちに襲われて・・気絶したみたいだけど、助かったの・・・?」
「危ないとこだったけど、間に合ってよかったぞ・・・」
周りを見回すタイチに、ノゾムが安心の吐息をつく。
「これ以上アイツらのいい気になんてさせるかよ・・あんなのにいつまでもうろつかれたら、安心して過ごせない・・・」
ノゾムがゴルゴムやクライシス帝国への怒りをふくらませて、手を強く握りしめる。彼はツバキたちを狙ってくる両者が許せないでいた。
そのとき、ノゾムたちの耳に笑い声が入ってきた。
「この声は・・!?」
「何だ!?誰だ、笑ってるのは!?」
光太郎が緊張を覚えて、ノゾムが怒鳴りかかる。
「マリバロン・・テレパシーで呼びかけているのか・・!?」
光太郎がマリバロンに呼びかけて構える。彼らの前にマリバロンの幻影が現れる。
「神奈ノゾム、大崎ワタルは我々が預かっている。返してほしくばおとなしく我々の前に来ることね。」
「ふざけるな!お前らからオレのところへ来い!オレがまとめてブッ倒してやる!」
微笑みかけるマリバロンにノゾムが怒鳴り声を上げる。
「お前が来なければ小僧の命はないと思え。オホホホホ・・」
マリバロンが笑い声を上げて、彼女の幻影がノゾムたちの前から消えた。
「そんな・・ワタルくんが、悪者に捕まった・・!?」
ワタルがさらわれたことに、タイチが動揺を隠せなくなる。
「そこまで言い張るなら行ってやる・・そしてオレにこんなマネをしたことを後悔させてやる・・・!」
怒りに体を震わせるノゾムが、ワタルを助けようとして歩き出す。
「待つんだ、ノゾムくん!」
その彼を光太郎が追いかけて呼び止める。
「1人で行ってもやられるだけだ!そうなっては助けるべきワタルくんも助けられなくなるぞ!」
「そんなことにはならない!なってたまるか!オレは一方的に誰かの思い通りにはならない!」
光太郎に止められるが、ノゾムはワタルを助けようと足を止めない。
「悪を憎む心は大切だ!しかしそれで自分や周りが見えなくなってはいけない!」
光太郎のこの言葉を聞いて、ノゾムが足を止めた。彼が振り向いて、ツバキとタイチに目を向ける。
「ノゾム、私たちがいることを忘れないで・・・!」
「僕に力はないけど、全然サポートができないわけじゃない・・できることだったら僕、何でもするから・・・!」
ツバキとタイチがノゾムに決心を口にする。
「君は1人で戦っているんじゃない。それを忘れないでくれ・・」
「みんな・・・」
光太郎も呼びかけて、ノゾムが彼らの思いを受け止めて戸惑いを覚える。ここにいる誰もがワタルを助けたいという思いを胸に秘めていた。
「どれだけ呼びかけても願っても、助けたかった友を救えないこともある・・君たちに、オレと同じ悲しみを受けてほしくない・・」
「それってもしかして・・さっきオレが戦ったあの銀の鎧みたいなヤツ・・・!?」
苦悩を見せる光太郎と、記憶を巡らせるノゾム。シャドームーンは信彦が改造された姿だった。
「オレは地球を守るために、シャドームーンと戦った。それでも、心のどこかで信彦を助けたいと思い続けていた・・」
「光太郎さん・・・」
自分が体感した悲劇を語る光太郎に、ツバキが戸惑いを感じていく。彼女は光太郎の抱える悲しみをさらに感じ取った気がしていた。
「ノゾムくん、君たちには、邪悪な意思によって友や家族を失う悲しみを味わってほしくはない。」
自分の悲しみと願いを伝える光太郎。ノゾムが彼の背を向けて、両手を握りしめる。
「オレは別に平和のためとか、正義のためとかで戦ってるんじゃない・・オレの許せないヤツをブッ倒すために戦っている・・それも独りよがりじゃなく、オレだけじゃなくオレが大事に思ってるヤツらのためにも・・」
自分の考えを貫こうとするノゾム。彼は他人を心から信じることができず、自分と自分の身近な人を守ろうとする意思しか湧かなかった。
「だからもし考えがまるっきり違うようなことになったら、オレとアンタは戦う事になってもおかしくない・・・」
「それでもいい・・大切な人を守ろうとするなら、君は君の戦いを続けてもいい・・」
ノゾムの信念を聞いて、光太郎は頷いて認めていた。
「オレと君以外にも仮面ライダーは存在する。姿や技だけでなく、考え方もそれぞれ違う。それでもそれぞれ、大切なもののために戦っていることは共通している。」
光太郎が他の仮面ライダーについて語り出す。
「自分の守りたいもののために戦い続ける。それが仮面ライダーだ。」
「仮面ライダー・・オレの変身しているマックスも・・・」
光太郎の話を聞いて、ノゾムがビースドライバーに目を向ける。
「大切なものを守るために戦うっていうなら、オレもその仮面ライダーってヤツなのか・・・」
ライダーとして戦うことの意味を感じたノゾム。彼が光太郎と目を合わせて頷き合う。
「オレもワタルくんを助けるために戦う。力を合わせて、ゴルゴムとクライシスを撃退するぞ、ノゾムくん。」
「あぁ・・分かった・・ありがとうな・・!」
激励を送る光太郎に、ノゾムが笑みを見せる。ツバキとタイチが微笑んで頷き合った。
「それじゃ改めて、ワタルを助けに行くとするか・・・!」
ノゾムが気を引き締めて落ち着きを見せて、改めて歩き出す。
「クジラ怪人はツバキちゃんたちを守ってくれ。オレたちがいなくなったのを狙って、ゴルゴムやクライシスが現れないとも限らない。」
「分かった・・」
光太郎が呼びかけて、クジラ怪人が頷く。
「ノゾム・・ノゾムの信じるものを、私も信じるよ・・・!」
「僕も・・ノゾムがワタルくんを助けてくれるって・・・!」
ツバキとタイチがノゾムに信頼を寄せる。
「わざわざ言われなくたって、ワタルはオレが連れ戻す・・・」
ノゾムは突っ張った素振りを見せて、ワタルを連れ戻しに向かった。光太郎も彼に続いて歩き出した。
ワタルをさらったことをマリバロンからの報告で聞いたジャークたち。彼らはシャドームーンたちにもそのことを知らせた。
「RXもやってくるだろう。そなたらがヤツを迎え撃つには絶好の機会であろう。」
“RXの首はこの私がもらい受ける。もう1人のライダー、マックスなど私にとってはどうでもいいことだ。”
言いかけるジャークにシャドームーンが自分の意思を告げる。
「マックスの始末は我々が遂行しよう。RXの打倒、そちに任せよう。」
“私とRXの一騎打ち、邪魔が入らないことを願っている。”
ジャークとの会話を終えて、シャドームーンが姿を消す。
「シャドームーンがRX打倒に固執するなら、我々はそれを利用するまでのこと。」
「マックスの始末は我らとゴルゴム三神官で果たします。」
振り向くジャークにボスガンが頭を下げる。
「お前たちはマリバロンと合流し、マックスを倒すのだ。」
「ははっ!」
「アイアイサ!」
ジャークの命令を受けてボスガンとゲドリアン、ガテゾーンが答える。クライシス帝国もノゾムたちへの攻撃を本格化させようとしていた。