仮面ライダー BLACK・RX・マックス
-地球を駆ける黒き勇者-
第2章
虫のような形状をした鋼鉄の飛行体。クライシス帝国の戦線基地「クライス要塞」である。
その艦内にある指令室に数人の人物がいた。
「またしても我らの邪魔をするか。仮面ライダーBLACK RX。」
クライシス帝国の最高司令官、ジャーク将軍がモニターを見て呟く。
「やはりライダーどもの全滅こそが、地球攻略達成と同義と見るべきでしょう。」
1人の男、怪魔獣人大隊・海兵隊長ボスガンがジャークに声をかける。
「しかも新たなライダー、マックスも現れ、南光太郎と接触を果たしたわ。」
そこへ女性、怪魔妖族大隊・諜報参謀マリバロンがボスガンに助言する。
「日本だけでなく、世界各地に仮面ライダーが散らばっていたとは〜・・!」
男、怪魔異星獣大隊・牙隊長ゲドリアンが頭を抱える素振りを見せる。
「このままヤツらを野放しにすれば、オレたちの作戦に支障をきたすぜ。」
男、怪魔ロボット大隊・機甲隊長ガテゾーンも口を挟む。
「RXのみならず、他の仮面ライダーも早急に葬らねばならん。ヤツらは地球における最大の障害だ。」
ジャークが言いかけて、ボスガンたちが頷く。
「そのために、あの組織とも同盟を結んだのですね。我らと同じく、仮面ライダーを障害としている者たちと。」
「その通りだ・・今、こちらに出向いてきたようだ。」
マリバロンが投げかけた言葉に頷いて、ジャークが視線を移す。彼らの前に白いローブとフードを身に着けた3人の男女が現れた。
ゴルゴムの3人の大神官ダロム、バラオム、ビシュム。光太郎に改造手術を施した張本人である。
「2人の仮面ライダーが接触したことを、我々も耳にした。ヤツらの存在は我々にとっても邪魔になる。」
「そもそも、仮面ライダーBLACKの誕生は我らの失態が招いたこと。自分で蒔いた種は自分で始末をつける。」
ダロムとバラオムがライダー打倒の意思を示す。
「待て。BLACKは今やRXへと進化を果たし、さらにロボライダー、バイオライダーへと変身を重ねている。お前たちと戦っていた頃のヤツとは格が違う。」
ジャークがダロムたちに苦言を呈する。
「私たちも南光太郎のウィークポイントを狙って、そこを攻めた。しかしヤツは私たちの作戦をことごとく乗り越え、さらに仲間を増やして精神的にも強くなってしまった。」
「これが仮面ライダーとしての力なのか、それとも別の要因なのかは分かりませんが・・」
マリバロンとビシュムが光太郎に対するこれまでの策略を思い返していく。
ゴルゴムもクライシス帝国もBLACKやRXを倒すため、光太郎の心のよりどころを利用したこともあった。精神的に追い詰められた彼だが、策略をことごとくはねのけてきた。
「その上、マックスという仮面ライダーと手を組まれたら、さらに厄介なことになる。」
バラオムがノゾム、マックスのことを提言する。
「だがそのマックスとかいう仮面ライダー、まだライダーになり始めて日が浅いとも聞いている。」
「そやつの隙を突く手段ならばいくらでもあるということ。」
ボスガンとダロムが言葉を交わして、微笑んで頷く。
「将軍、すぐに私の情報網でヤツとその周辺を調査します。」
マリバロンがジャークにノゾムたちの調査を行うことを告げる。
「うむ。マックス、神奈ノゾムに関する情報、細大漏らさず集めるのだ。」
「ははっ!」
ジャークが命令を下して、マリバロンが答える。
「我らゴルゴムもマックスに関する情報を集め、ヤツらを葬る作戦を遂行する。」
ダロムも自分たちの考えを告げて、ジャークが頷く。
「今存在する人間どもの抹殺。この共通の目的から、我らクライシスとそなたらゴルゴムは手を結んだ。」
「我らの力を結集し、最大の障害である仮面ライダーどもを葬り去る。」
地球攻略と仮面ライダー打倒を誓い、策略を本格化させるジャークたちとダロムたち。
ともに南光太郎と戦ったゴルゴムとクライシス帝国。仮面ライダーという共通の敵を倒すため、両者は結託したのである。
ノゾムとツバキの他にゴロウの世話を受けている人はいる。
大崎ワタル。両親をビースターに殺されて、飼い犬のワオンとともにゴロウに引き取られた。
「あ、ノゾムお兄ちゃん♪」
ワタルがノゾムが1人歩いているのを見つけて、ワオンと一緒に駆けつける。
「ワタル、ワオン、お前らもこっちに来てたのか・・」
ノゾムが足を止めて、ワタルたちに振り向いた。
「タイチお兄ちゃんたちは一緒じゃないんだ・・1人でいるのはよくあることだよね、ノゾムお兄ちゃんだったら。」
「オレをひとりぼっちみたいに言うなよ・・」
笑みを浮かべるワタルに、ノゾムが不満げな態度を見せる。
「ノゾムくん。」
そこへ光太郎がやってきて、ノゾムに声をかけてきた。
「アンタ・・」
ノゾムが真剣な顔を浮かべて、光太郎に目を向ける。
「えっと・・ノゾムお兄ちゃん、この人は・・?」
ワタルが光太郎を見て、ノゾムに疑問を投げかける。
「オレは南光太郎。さっき、ノゾムくんたちと知り合ったんだ。」
光太郎がワタルにも自己紹介をして、ワオンの頭を優しく撫でる。
「ワオンが懐いてる・・とても優しい人なんですね、光太郎さん。」
喜んでいるワオンを見て、ワタルが光太郎に笑顔を見せる。
「人だけでなく、動物にも心がある。自由や安らぎを感じながら、精一杯生きている。」
地球上で生きとし生ける者のすばらしさを告げる光太郎。
「君のことも聞いたよ。君も辛い経験をしていたんだね・・」
ノゾムに目を向けて話しかける光太郎。しかしノゾムは表情を曇らせる。
「本当の気持ちっていうのは、本人にしか完璧には理解できない・・」
「ノゾムくん・・」
「アンタが大変なことをしてきたのは、オレも分かる・・けど、それがどれほどのものなのか、アンタにしか分かんない・・オレの気持ちを100%分かるのは、オレだけだ・・・」
気持ちを分かち合おうとしないノゾムに、光太郎もワタルも深刻さを覚える。ノゾムの疑心暗鬼は浅くはない。
「確かに他人である以上、全てを理解することはできないかもしれない。それでも喜びや悲しみを分かち合ったり、互いに助け合ったりすることはできるはずだ。」
「逆に相手や他人のことを理解しようとしない、自分を押し付けて苦しめて平然としているヤツもいるんだ・・そんなヤツらと手を組むなんて、オレは死んでもゴメンだ・・」
光太郎が励ましの言葉を送るが、ノゾムは頑なに自分の考えを貫こうとする。
「オレは地球の平和と人間の自由のために戦い続ける。たとえ認められなくても、オレ自身報われないことになっても・・」
光太郎が自分の決意を口にする。
「君には君の人生がある。オレのように世界のため、平和のために全てを賭ける必要はない。自分の大切なもののために戦うならば・・」
「オレの大切なもののために戦う・・・」
光太郎のこの言葉に、ノゾムが戸惑いを覚える。
「オレはオレの思うようにやる・・今までもこれからも、それは変わらない・・・」
「ノゾムお兄ちゃん・・・」
声を振り絞るノゾムに、ワタルは戸惑いをふくらませていた。
そのとき、光太郎が視線を移して、周りを警戒する。
「光太郎さん?・・どうしたんですか・・・?」
彼の様子を気にして、ワタルが声をかける。
光太郎は改造人間。普通の人間よりも身体能力や感覚が高まっている。その彼の感覚が、周囲に蠢く不穏な動きを捉えたのである。
(まさか、クライシスがまた・・・!?)
光太郎はまたクライシス帝国が暗躍したのを直感した。再び自分たちが狙われていることも。
他にもゴロウの世話になっている人たちがいた。
霧生ユウキと金子セイラ。かつての身近な人に裏切られた2人は、放浪していくうちに出会った。
2人で行動を初めて、ユウキたちはゴロウたちに保護されて、彼の別荘の1つに住まわせてもらっている。
「最近、不思議な噂や事件を耳にするね・・」
「オレも聞いたことがあるよ。もしかしてビースターの仕業じゃ・・?」
セイラとユウキが噂について話をしていく。
ユウキたちはビースターである。ビースターとなった彼らは、理不尽な日常から抜け出して今に至っている。
「オレたちが倒すべき敵でなければ、関わる必要はないよ・・」
「うん・・私たちが倒さないといけないのは、その犯人じゃなくて、身勝手な考えの持ち主・・・」
決心を確かめ合って頷き合うユウキとセイラ。
人間もビースターも関係ない。身勝手な考えの持ち主ならば必ず倒す。ユウキもセイラもそう考えていた。
「でも、ゴロウさんには本当に感謝しているわ。私たちに新しい住まいを用意してくれたんだから・・」
セイラがゴロウのことを考えて微笑みかける。
「あのような人がもっとたくさんいてくれたら、オレたちはずっと普通でいられたのかな・・・」
ユウキもゴロウへの感謝を感じて、彼のような人が増えていってほしいという願いを胸に秘めた。
「オレたちがビースターだと、普通の人間じゃないって知ったら、今まで通り優しくしてくれるのかな・・・?」
「分からない・・この関係が変わらないままでいてほしいと思っている・・・」
自分たちがビースターだということを知られる不安と、そのときに拒絶しないでほしいという願いを、ユウキとセイラは感じていた。
そのとき、ユウキが周りに何かいるような気がして、視線を移した。
「何か近くにいる・・普通の人や動物じゃない・・」
「ビースター?・・とは少し違うみたい・・・」
ユウキとセイラが暗躍する者の存在に気付いた。しかしその正体までは分からなかった。
ユウキとセイラの近くの空を、コウモリの怪人が飛んでいた。
ゴルゴムのコウモリ怪人。偵察や尾行を主な任務としており、脳波を発してレーダーのように目標を捉える能力を持つ。
コウモリ怪人は光太郎だけでなく、マックスであるノゾムやその周りの人物について調べていた。
そのときに怪人から出ていた脳波を、ユウキとセイラはかすかだが感じ取ったのである。
クライシス帝国やゴルゴムの企みを阻止するため、光太郎はその行方や手がかりを求めて行動を起こした。そんな彼とノゾムは行動をともにしていた。
「どうして僕と一緒に?これは本来オレがやるべきこと。同じライダーとはいえ、君が関わる必要は・・」
「さっきのサルやロボットみたいなのがオレの周りをウロウロされると落ち着かないからな。オレたちに近づくと後悔することになるのを、思い知らせておかないと・・」
気遣う光太郎に、ノゾムが自分の考えを口にする。
「ノゾムくん、君には大切な人はいるか?家族じゃなくても、友達でも・・」
光太郎が問いかけるが、ノゾムは目をそらして答えない。ノゾムは自分が大切だと思っている人がいるのか、分からなかった。
「オレには親友がいた。兄弟同然に育った親友が。だが彼もオレとともに、改造手術をされた・・」
光太郎が自分の過去をノゾムに語り始めた。
秋月信彦。光太郎のかつての親友。両親を失った光太郎が秋月家に引き取られてから、彼の兄弟同然の親友となった。
しかし同じ日食の日に生まれた光太郎と信彦はゴルゴムによって拉致され、ともに世紀王として改造された。脳改造をされる前にゴルゴムから脱出した光太郎と違い、信彦は逃げることができずに脳改造を施されることになった。
ゴルゴムによって仕組まれた宿命の中、光太郎は親友との戦いを繰り広げることになった。それは光太郎にとって拭い去れない辛い過去となっている。
「これから先、大切な人が見つかったら、絶対に守り抜いてほしい。たとえ戦うことになっても・・オレのように、友を失ってほしくはない・・」
「そんなこと・・わざわざ言われるまでもないことだ・・・」
光太郎が送る願いに対して、ノゾムは突っ張った素振りを見せた。
ノゾムと光太郎のことを考えて、ツバキは深刻さを浮かべていた。うつむいている彼女に、タイチが歩み寄る。
「あんまり思いつめるのもよくないよ、ツバキちゃん。光太郎さんには光太郎さんの、僕たちには僕たちの抱えている辛さがあるんだから・・」
タイチが励ましの言葉を送るが、ツバキの表情は曇ったままである。
「でも、私たちが経験してきたことなんて、光太郎さんに比べたら全然・・」
「こういうことで比べるのはよくないよ。みんなが同じ体験をするわけじゃないし、同じ辛さをみんなが受けたら悲しいだけだって・・」
「それでも、光太郎さんの話を聞いたら、とても背を向けることは・・・」
「ツバキちゃん・・・」
深刻さをふくらませるツバキに、タイチも不安を感じていく。
(家族を失っただけじゃなく、自分の体も普通の人間から変えられてしまった・・光太郎さんと比べたら、自分の悲しみは重くないって、ツバキちゃんは思っているんだ・・)
ツバキの心境を察して、タイチは動揺をふくらませていた。
そのとき、タイチが近くで茂みの音がしたのを耳にした。
「何だろう?・・何か動物が紛れ込んだのかな・・?」
タイチが音のしたほうを気にしてじっと見つめる。すると再び茂みの音がした。
「そこに何かいるの・・?」
ツバキも音に気付いて声を上げる。2人は警戒しながらゆっくりと歩を進める。
そのとき、1本の糸が飛び出してきて、ツバキの腕に巻きついた。
「えっ!?」
「ツバキちゃん!」
驚くツバキと叫ぶタイチ。ツバキが糸によって、茂みのほうに引っ張られていく。
「ツバキちゃん!」
タイチが慌ててツバキをつかまえて、彼女を助けようとする。糸の先の茂みから、クモの姿をした怪人が現れた。
「クモの怪物!?」
タイチがクモの怪人を見て驚く。さらに他の茂みや木陰から別のクモの怪人たちが出てきた。
「この怪物たちもビースターとは違う・・もしかして、この前のサルやロボットの仲間・・!?」
タイチがガイナニンポーたちのことを思い出す。ゴルゴムのクモ怪人たちがタイチとツバキを狙ってきた。
光太郎と行動をともにしていたノゾム。彼の持つスマートフォンに連絡が入った。
「タイチ?・・どうした、タイチ?」
“ノゾム、大変だ!また怪物が現れて、ツバキちゃんがさらわれた!”
電話に出たノゾムに、タイチが必死に呼びかける。
「ツバキが!?」
ノゾムが緊迫を覚えて声を上げる。彼の話を聞いていた光太郎も、真剣な顔を浮かべる。
「すぐに行く!ツバキを見失うなよ!」
ノゾムはタイチに呼びかけて、スマートフォンをしまった。
「急がないと・・トラのバイクが一気にヤツらのところに・・!」
ノゾムがタイガーランナーを呼び出して、タイチたちのところに駆けつけようとした。
「いや、ここはオレに任せてくれ!」
すると光太郎がノゾムを呼び止めてきた。
「ライドロン!」
光太郎が振り向いて叫ぶ。すると1台の赤い車が彼らの前に駆けつけてきた。
「この車は・・!?」
「光の車“ライドロン”。オレの同志、オレの友達だ。」
ノゾムが聞いてきて、光太郎がライドロンを紹介する。
「詳しい話は後だ。先にタイチくんたちのところへ行く。」
光太郎はノゾムに告げると、1人ライドロンに乗って先に走り出した。
「お、おいっ!・・今はオレも急がないと・・!」
声を上げるノゾムが、ビースドライバーにタイガーカードをセットした。
“タイガー!”
彼はビースドライバーの左上のボタンを押した。
“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”
ノゾムに呼ばれてタイガーランナーが駆けつけた。彼はタイガーランナーに乗って、タイチたちのところへ急いだ。
光の車、ライドロン。
RXの仲間であるライドロンは、最高時速1500km。地上だけでなく水中、地中も突き進み、次元を超えることも可能としている。
光太郎はライドロンに乗って、ツバキとタイチを助けに急いだ。
「変身!」
ライドロンの車内で、光太郎がRXに変身した。彼がクモ怪人にさらわれるツバキを目撃した。
「あれはゴルゴムの怪人!ヤツらも動き出したか!」
RXがツバキを助けようとして、ライドロンが高速でクモ怪人たちを突き飛ばす。怪人の糸に体を縛られていたツバキは、ライドロンから飛び出したRXが受け止めた。
「ツバキちゃん、大丈夫か!?」
「・・光太郎さん・・!」
RXが呼びかけて、落ち着きを取り戻したツバキが答える。
「ツバキちゃん!」
走り込んできたタイチのそばに、RXが駆け寄ってツバキを下ろした。
「ここはオレに任せてくれ。2人は早く逃げるんだ。」
「RX・・!」
呼びかけるRXにタイチが動揺を見せる。
「ノゾムくんもこっちに向かっている。彼と合流するんだ。」
「分かりました!・・タイチくん、行こう!」
RXに答えて、ツバキがタイチと一緒にこの場を離れた。
「ゴルゴムの仕業でもあったか・・お前たち、何を企んでいる!?」
RXがクモ怪人たちに問い詰めて、構えを取る。クモ怪人たちが彼を取り囲んで、不気味な笑みを浮かべる。
クモ怪人たちのうちの2人が同時に飛びかかるが、RXはパンチを繰り出して突き飛ばす。
その隙を狙って、他のクモ怪人たちが口から糸を吐いて、RXの腕に巻きつけた。クモ怪人たちはそこからRXを振り回して、動きを封じようとする。
しかしBLACKを上回る強さのRXに、糸を引っ張られて逆にクモ怪人たちが振り回される。
「ゴルゴム、お前たちとクライシスの野望は、このRXが粉砕するぞ!」
クモ怪人たちに向かって言い放つRX。
「リボルケイン!」
彼はベルト「サンライザー」から剣状スティック「リボルケイン」を引き抜いた。
RXがリボルケインを振りかざして、クモ怪人たちを切りつける。そして1体の体をリボルケインで貫いた。
リボルケインに貫かれたクモ怪人の体から火花が散る。RXがリボルケインを引き抜くと、クモ怪人たちが倒れて爆発を起こした。
「ゴルゴム、クライシス・・ノゾムくんたちも狙ってきたのか・・・!」
ノゾムたちにも魔の手が伸びてきたことに、RXは不安を覚えた。
RXに助けられたツバキとタイチは、ノゾムと合流しようと足を速めていた。
「ノゾムもこっちに来ているって・・もうそろそろかな・・・!?」
タイチが声を上げて、ノゾムの姿を見つけようと周りを見回す。
「我々から逃げ切れると思っているのか?」
そのとき、ツバキとタイチに向かって声がかかった。突然、2人の前に空中を浮遊する3つの影が現れた。
「こ、今度は何だ!?」
「あなたたちは誰!?さっきのクモの怪物の仲間!?」
タイチが驚きの声を上げて、ツバキが問いかける。彼らの前にダロムたち三神官が現れた。
「ライダーたちを葬るため、お前たちには人柱になってもらうぞ。」
バラオムが言いかけて、右手からビームを放つ。ビームは縄のようにツバキとタイチを縛って捕まえた。
「これで仮面ライダーたちを倒すための切り札を手にしましたわ。」
ビシュムがツバキたちを見つめて微笑む。
「ライダーたちを葬り去った後、お前たちは怪人として改造してやろう。」
ダロムも笑みを浮かべて、ツバキたちを引き寄せようとした。
「ツバキ!タイチ!」
そこへタイガーランナーに乗ったノゾムが駆けつけてきた。彼が着けているビースドライバーには、既にマックスカードがセットされていた。
「ノゾム!」
ツバキとタイチがノゾムを見て声を上げる。ノゾムがダロムたちの姿を目撃して、目つきを鋭くする。
「変身!」
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ビースドライバーの左上のボタンを押して、ノゾムがマックスに変身した。彼はタイガーランナーを加速させて突撃して、バラオムのビームを吹き飛ばしてツバキたちを助けた。
「ノゾム・・助かったよ・・!」
タイチがツバキを支えて、ノゾムに目を向けて微笑む。
「クモの怪人が襲ってきたんじゃなかったのかよ・・!?」
「クモの怪人は光太郎さんと戦っているよ・・僕たちは逃げてきたけど、あの人たちが僕たちを・・!」
声をかけるノゾムに、タイチが事情を話してダロムたちに目を向ける。
「現れたか。お前がマックスか。」
ダロムがノゾムを見て笑みをこぼす。
「他のライダーたちと徒党を組まれると厄介。お前を始末すれば、他のライダーたちの士気を下げることもできよう。」
ダロムが降下してノゾムの前に降り立つ。
「ふざけたことぬかしやがって・・そんなこと言われて、おとなしくやられるヤツなんていない!」
「ならば楽には死ねん。地獄の苦しみを味わうことになるぞ。」
怒鳴りかかるノゾムに対して、ダロムが顔から笑みを消す。ノゾムがタイガーランナーを走らせて、ダロムたちに突撃する。
ビシュムが目から火の球を放って、ノゾムに命中させた。
「くっ!」
ノゾムが衝撃を受けて、タイガーランナーから落ちる。
「コイツら・・やってくれる・・!」
ノゾムが愚痴をこぼして、立ち上がって構えを取る。
ダロムがノゾムに向けて手を伸ばす。手から放たれた念力がノゾムを捕まえて持ち上げる。
「ぐっ!・・体が、動かない!?・・念力ってヤツか・・!?」
うめくノゾムがもがくが、ダロムの念力から抜け出すことができない。
「マックス、まずはお前から息の根を止めてくれる・・!」
ダロムが手を動かして、宙に持ち上げているノゾムを振り回す。ノゾムは抵抗もできずに地面に叩きつけられる。
「ノゾム!」
一方的にやられているノゾムに、ツバキが叫ぶ。しかし彼女とタイチをバラオムとビシュムが挟み撃ちにする。
「お前たちも我々とともに来るのです。仮面ライダーに対する人質としても有効ですわ。」
ビシュムが微笑んで、バラオムが再びビームでツバキたちを捕らえようとした。そこへタイガーランナーが走り込んで、バラオムたちをツバキたちから引き離す。
「さっさと逃げろ!コイツらはオレがブッ倒す!」
ツバキたちに呼びかけて、ノゾムがビースドライバーのカードホルダーに手を伸ばす。そこから彼はゾウのアニマルカードを取り出した。
“エレファント!”
ノゾムがエレファントカードをビースドライバーにセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・エレファーント!ハイフット・ハイレッグ・ハイハイエレファーント!”
するとノゾムのまとうマックスのスーツのメインカラーが灰色となり、マスクもゾウを思わせるものとなった。
「エレファントフォルム」。ゾウのパワーを宿したマックスの姿である。
ノゾムが体に力を入れて、ダロムの念力から力ずくで抜け出した。
「何!?」
驚くダロムに、着地したノゾムが目を向ける。
「もうお前らに捕まりはしないぞ・・オレもそこの2人も・・!」
ノゾムが鋭く言ってから、カードホルダーから新たにタカのアニマルカードを取り出した。
“ホーク!”
彼はビースドライバーにホークカードをセットして、左上のボタンを押した。
“チャージ・ホーク!ソウルショック・ソウルハート・スカイハイホーク!”
マックスのスーツのメインカラーが黄色となって、マスクもタカを思わせる形に変わった。さらに腕から翼が生えていた。マックスの別形態「ホークフォルム」である。
「姿を変えようと貴様に勝ち目はない・・!」
ダロムがノゾムを狙って再び念力を放つ。ノゾムが翼を広げて飛び上がると、一気にスピードを上げた。
「速い!」
ノゾムのスピードにバラオムが声を上げる。ビシュムが目から火の球を放つが、ノゾムに軽々とかわされる。
「今のうちだよ・・早く逃げよう・・!」
「う、うん・・!」
タイチが声をかけて、ツバキが頷く。ダロムたちがノゾムに注意を向けている間に、2人はこの場を離れた。
「このまま一気にお前らをブッ倒す!」
ノゾムが空中を旋回して、ダロムたちに向かっていく。
そのとき、一条のビームが飛んできて、ノゾムに直撃した。
「ぐっ!」
ノゾムが地上に落とされてうめく。ダロムたちが光が飛んできたほうに振り返る。
「な、何だ、今のは・・・!?」
起き上がったノゾムがうめいたときだった。彼らのいるこの場に、重みのある音が響いてきた。
音のする方をじっと見つめるノゾム。彼の前に現れたのは、銀色の鎧のような体をした男。重みのある音は、彼の足音だった。
「今度は何だ・・コイツらの仲間か・・!?」
ノゾムが男に向かって声をかける。ダロムたちが男に対して頭を下げる。
「我が名はシャドームーン。仮面ライダーブラック、ブラックサンを始めとした全ての仮面ライダーを葬り去る。」
男、シャドームーンが言いかけて、ノゾムに向けて右手を伸ばす。その手から放たれたビームが、ノゾムに直撃してマックスの装甲から火花を散らせた。
「ぐっ!・・コイツ、すごいパワーを持ってるみたいだ・・!」
シャドームーンの力を痛感して、ノゾムがうめく。
「ビーストライダー・マックス、まずは貴様から始末してくれる。」
シャドームーンが告げて、ノゾムに迫ろうとしていた。