仮面ライダー BLACK・RX・マックス
-地球を駆ける黒き勇者-
第1章
仮面ライダー。
素顔を隠し、人々を守るために人知れず悪と戦う戦士。
その中の1人。黒いボディの仮面ライダー。
改造人間の苦悩と、親友との戦いの宿命に胸を締め付けられながらも、自由と平和を守るために戦い続けた。
その名は自由の戦士、仮面ライダーBLACK。
そして太陽の子、仮面ライダーBLACK RX。
都内にある動物公園。そこで動物たちの世話をしている1人の青年がいた。
神奈ノゾム。動物公園の会長をしている代々木ゴロウに引き取られて、動物の世話をしながら生活をしている。
ノゾムは両親からの厳しさや周囲への不信感から、荒んだ性格になっていた。ゴロウからの世話と動物とのふれあいで、彼の性格は少し和らいでいた。
「今日も動物たちと一緒なんだね、ノゾム。」
そこへ1人の少女がやってきて、ノゾムに声をかけてきた。同じくゴロウの世話になっている大塚ツバキである。
「動物は純粋だ。自分が生きるとか家族を守るとか、そのぐらいしか他のヤツを傷付けることはしない。自分の欲望で他のヤツを利用したり苦しめたりすることもないからな・・」
「人間は・・心のある生き物は、いいこともイヤなことも考えることができるからね・・」
動物への信頼と人間への疑心暗鬼を口にするノゾムに、ツバキが小さく頷く。
「だからオレは、心から信じられるもの、信じたいと思うものしか信じられない・・何でもかんでも信じても、裏切られたり利用されたりするのはオチだからな・・」
「人間全員がそういうわけじゃない。信じ合える人はたくさんいる・・といっても、ノゾムはそう簡単には信じられないんだったね・・」
自分の抱く疑念を変えようとしないノゾムに、ツバキが悲しい顔を浮かべた。彼女が分かり合えると思っていても、ノゾムは信じることができないでいた。
「今日もがんばってるね、ノゾム。僕も手伝うよ。」
そこへ1人の青年がやってきて、ノゾムに声をかけてきた。ゴロウの息子、タイチである。
「いや、掃除とエサやりはここで完了だ。オレも引き上げる・・」
「そうか。ゴメンね、任せ切りみたいになっちゃって・・」
言いかけるノゾムにタイチが謝る。
「気にすんな・・オレがそうしてるだけなんだから・・」
ノゾムが言いかけて、作業を終えて檻の外に出た。
「そういえば、近くである噂話を耳にしたんだ。それがちょっと気になることで・・」
「気になること?」
タイチが切り出した話に、ツバキが疑問符を浮かべる。
「密かに悪者と戦っている仮面の戦士のことだよ。全身が黒くて目が赤くて、バッタみたいなバイクに乗っているって・・」
「バッタのバイク?・・ビーストライダー・・とは違うよね?・・ビーストライダーとアニマルカードは動物の力を持っているけど、虫は含まれていなかったはず・・」
タイチの話を聞いて、ツバキが考えを巡らせる。
動物の力を宿した「アニマルカード」を使って様々な能力を発揮する戦士「ビーストライダー」。ノゾムはベルト「ビースドライバー」を使ってビーストライダーの1人「マックス」になっている。
「あくまで噂だろ?・・もしもマックスと同じビーストライダーなら、そのうちこっちに顔を出してくるだろう・・」
ノゾムは深く考えようとせず、マイペースに過ごそうとする。
「ノゾム・・あんまり自分から首を突っ込もうとはしないんだね・・」
「それがノゾムだからね。面倒なことには自分からは関わろうとはしないよ。」
肩を落とすツバキに、タイチが気さくに言いかける。
「自分の信じられるものだけを受け入れ続ける。それがノゾムの生き方だ・・」
「何の悩みも不満もなく、信じて受け入れることができたらいいのに・・・」
ノゾムの意思を悟るタイチと、深刻さを感じていくツバキ。ノゾムが余計な負担を掛けずに歩けたらと、2人は思っていた。
「うわあっ!」
そのとき、ノゾムたちが近くから悲鳴が上がったのを耳にして振り返った。
「何だ!?何があったんだ!?」
タイチが声を上げて、悲鳴のしたほうに向かって走り出す。
「タイチくん!」
ツバキも慌ててタイチを追いかける。ノゾムは2人に続かず、その場にとどまっていた。
動物公園の近くでは、人々が逃げ惑っていた。その人混みをかき分けて、ツバキとタイチが駆けつけた。
そこにいたのはサルの姿をした怪人が数人。人々を襲って拉致していた。
「ねぇ、あそこにいるの・・!」
タイチが怪人たちを指さして叫ぶ。
「サルのビースター!?・・でも、どこか違う・・・!?」
ツバキが怪人たちを見て疑問を感じていく。
動物の能力を備えた怪人「ビースター」。普段は人の姿になっているが、暗躍になるとその力を発揮する。
ところがツバキは目の前にいる怪人たちがビースターとは違うと思った。
「わざわざ逃げずにやってきた人間がいたとはな!」
サルの怪人の1人が前に出て、ツバキとタイチを見て笑みを浮かべてきた。
「あなたたちは誰!?何をしているの!?」
ツバキが思い切って怪人たちを問い詰める。
「我ら怪魔獣人忍者隊!オレはその統領!怪魔獣人ガイナニンポー!」
怪人の1人、ガイナニンポーが高らかに名乗りを上げる。
「怪魔獣人忍者隊!?」
ツバキとタイチが聞いたことのない言葉に疑問符を浮かべる。
「何が何だか分かんないけど、人にひどいことするなんて・・!」
「みんなをすぐに放すんだ!お前たちがやっているのは悪いことだ!」
ツバキが怒りを覚えて、タイチが指さして呼びかける。
「お前たち人間どもは、我らの世界のための生贄としてくれる!大人しく従えば楽になれるぞ!」
「冗談じゃない!あなたたちみたいなのの言いなりになんてならないよ!」
ガイナニンポーが口にする言葉に、ツバキが反発する。
「我らの力、思い知らせなければならんか・・行け、忍者隊よ!」
ガイナニンポーが命令を下して、部下の忍者怪人たちが駆け出した。
「や、やばい!逃げよう!」
タイチがツバキと一緒に慌てて逃げ出す。忍者怪人たちが2人を追いかけていく。
「逃げられはせんぞ、人間ども!貴様らも我らの人柱となるがいい!」
ガイナニンポーも笑い声を上げて、ツバキたちを追いかけた。
「ノゾム、大変だ!ノゾムー!」
タイチがツバキと一緒に、ノゾムのところに駆け込んできた。
「何だよ、お前ら?・・騒々しいじゃないか・・」
ノゾムが不満げな態度を見せて、タイチたちに目を向ける。
「怪人が、怪人が来る!ビースターとは違う怪人が!」
「ビースターと違う?どういうことだよ?」
タイチの話を聞いて、ノゾムが疑問を覚える。彼らの前にガイナニンポーたちが追いついてきた。
「コイツらか。ビースターとは違うっていうのは・・」
ノゾムがガイナニンポーたちを見て言いかける。
「他にも人間がいたか!ならば貴様も連れていくことにしよう!」
「ふざけんな・・お前らのそんな勝手に付き合うわけないだろうが・・!」
笑みをこぼすガイナニンポーに、ノゾムが不満を口にする。
「貴様らの考えなどどうでもいい!我らに従わなければ死ぬだけだぞ!」
「そうやって言いなりにしようとしても、オレはそうはいかないぞ・・!」
言い放つガイナニンポーに、ノゾムが怒りをふくらませる。彼が1枚のカード「マックスカード」を手にした。
“マックス!”
ノゾムがマックスカードをビースドライバーにセットした。
「変身!」
彼がビースドライバーの左上のボタンを押した。
“チャージ・マーックス!マックスパワー!マックスハート!ビース・マックスライダー!”
ノゾムが赤いスーツとマスクを身にまとう。彼は仮面の戦士「マックス」への変身を果たした。
「オレの怒りは限界突破だ!」
ノゾムがガイナニンポーたちに向かって言い放つ。
「ぬっ!?その姿・・貴様も仮面ライダーか!?」
ガイナニンポーがノゾムの姿を見て驚きの声を上げる。
「仮面ライダー?ビーストライダーだろ?」
彼の言葉にノゾムが疑問を投げかける。
「よく分かんないが、オレにふざけたことを押し付けるなら、ブッ倒すしかないみたいだな・・!」
「何者かは知らぬが、邪魔立てするなら始末するまで!」
鋭く言いかけるノゾムを、ガイナニンポーがあざ笑う。
ノゾムがガイナニンポーに飛びかかってパンチを繰り出す。ガイナニンポーは身軽な動きでパンチをかわしていく。
「やっぱりサルだけにすばしっこい・・!」
タイチがガイナニンポーの動きを見て焦りを覚える。
「気を付けて、ノゾム!他の怪人も狙っているよ!」
ツバキが呼びかけて、ノゾムが身構える。獣人忍者隊の忍者たちが一斉にノゾムに飛びかかってきた。
ノゾムが素早く動いて、忍者たちの奇襲をかわす。
「くらえ!」
ガイナニンポーが手にした棒が伸びて、ノゾムに命中した。彼のまとうマックスの装甲から火花が散る。
「如意棒!?まるで孫悟空じゃないか!」
タイチがガイナニンポーの戦い方を見て声を上げる。
「ちっ・・しつこいヤツらだ・・だったら・・!」
ノゾムがいきり立って、ビースドライバーの腰にあるカードホルダーに手を伸ばした。ホルダーにあるアニマルカードから1枚取り出した。
ノゾムはビースドライバーからマックスカードを取り出して、代わりにトラのカードをセットした。
“タイガー!”
彼はビースドライバーの左上のボタンを押した。
“チャージ・タイガー!タイガーマッハ!タイガーパワー!タイガータイガーランナー!”
ビースドライバーから音声が流れる。そしてノゾムたちのいるところに、1台のバイクが走り込んできた。前方がトラの頭の形をしたバイクである。
「タイガーランナー」。ビーストライダーのためのバイクだが、トラの本能と自らの意思も持っている。
そばで止まったタイガーランナーにノゾムが乗る。彼がタイガーランナーとともに突っ込んで、迎え撃つ忍者たちを蹴散らす。
ガイナニンポーがノゾムを狙って棒を伸ばす。タイガーランナーが跳んで棒をかわして、ガイナニンポーに突撃を当てた。
「よし!形勢逆転だよ!」
タイチが喜びを浮かべて頷く。ツバキも真剣な顔で、ノゾムの戦いを見守る。
「おのれ!このままやられてなるものか!」
ガイナニンポーがいら立ちと焦りをふくらませて身構える。
「このまま一気に叩きつぶす・・2度とオレにふざけたマネをしないようにな・・!」
ノゾムがガイナニンポーにとどめを刺そうと、タイガーランナーにアクセルをかけた。
そのとき、ノゾムとタイガーランナーの前で爆発が起こった。
「くっ・・何だ・・!?」
ノゾムがうめきながら視線を移す。彼の前に1体のロボットが現れた。
「えっ!?ロボット!?」
タイチが驚きの声を上げて、ツバキが緊張をふくらませる。
「今度は何だ!?」
「オレは怪魔ロボット大隊最強の戦士、シュバリアン!」
声を上げるノゾムにロボット、シュバリアンが名乗りを上げる。
「最強の戦士・・ずいぶん、大きく出たな・・!」
タイチがシュバリアンの発言に一瞬あ然となる。
「最強の戦士か・・だったらお前より上のロボットはいないってことになるな・・」
ノゾムが口にした言葉に、シュバリアンだけでなくガイナニンポーも感情を逆撫でされる。
「おのれ、ライダー・・ふざけおって!」
ガイナニンポーがいら立ちを浮かべて、棒を構える。
「作戦進行が進まないので様子を見に来たら、ヤツとは違う仮面ライダーと戦っていたとは・・」
シュバリアンが言いかけて、ノゾムに向けを向ける。
「だがオレと協力すれば勝てない相手ではなくなるだろう。」
「仕方がないが、今はヤツを倒して任務を果たすのが先か!」
笑みをこぼすシュバリアンに、ガイナニンポーが渋々納得する。2人からの挟み撃ちにあって、ノゾムが身構える。
「オレたちに何かしようっていうなら、誰だろうとブッ倒すだけだ!」
ノゾムがタイガーランナーを走らせて、シュバリアンに向かっていく。
「バカめ!真正面からオレに向かってくるとは!」
シュバリアンがあざ笑って、鎌の形の右手から光線を放つ。
「うあっ!」
地面の爆発に押されて、ノゾムがタイガーランナーから振り落とされる。
「ノゾム!」
地面に倒れたノゾムにツバキとタイチが叫ぶ。
「くっ・・ドンパチやってくれて・・・!」
ノゾムがうめき声を上げて立ち上がる。ガイナニンポーとシュバリアンが彼に迫る。
「仮面ライダーならば、我々の任務の邪魔になる敵。今のうちに処罰してくれる!」
シュバリアンが言い放って、右手を構えてエネルギーを集める。ノゾムは焦ることなく構えを取る。
そのとき、シュバリアンが突然横に突き飛ばされた。
「何っ!?」
ガイナニンポーが驚きの声を上げて、ノゾムたちも動揺を覚える。彼らの前に1人の男が現れた。
「クライシス、ここで何を企んでいる!?」
男がガイナニンポーたちに向かって言い放つ。
「何だ、あの人は!?・・こんなところに飛び込んできたら危ないよ・・!」
「危ないです!早く逃げてください!」
タイチが動揺して、ツバキが男に呼びかける。
「お前たちの野望は、必ず止めてみせる!」
男は退かずに言い放って構えを取る。
「変身!」
独特のポーズを取る男。すると彼の腰にベルトが現れて光り輝く。
「えっ!?」
この閃光にタイチが驚く。光の中から現れた男の姿が変わった。黒い体と赤い目の仮面をした姿に。
「ビ、ビーストライダー!?・・じゃない・・!?」
ツバキが男の変身した黒い戦士を見て声を上げる。
「あの姿、もしかして噂の仮面の戦士!?」
タイチが戦士を指さして声を上げた。
「オレは太陽の子!仮面ライダー、BLACK!RX!」
黒い戦士が高らかに名乗りを上げてポーズを決めた。
南光太郎=仮面ライダーBLACK RX。体内にある太陽の石「キングストーン」を力の源とする黒き戦士である。
「RXも現れたか!ならば仮面ライダーを2人まとめて始末してくれる!」
ガイナニンポーが声を張り上げて、RXに飛びかかる。ガイナニンポーが振りかざす棒を、RXは素早くかわしていく。
シュバリアンがそこへビームを発射する。
「うっ!」
RXがビームを受けて、体から火花を散らして押される。
「くそっ!」
ノゾムが飛び出して、シュバリアンに跳び蹴りを繰り出す。体にキックを受けたシュバリアンだが、平然としていた。
「その程度の力、痛くもかゆくもないわ!」
シュバリアンが体に力を入れて、ノゾムを押し返す。
「ノゾム!」
倒れた彼にツバキとタイチが叫ぶ。
RXがシュバリアンに組み付いて、ノゾムから引き離す。だが彼がシュバリアンに首をつかまれる。
「まずは貴様の息の根を止めてやるぞ、RX!」
シュバリアンが笑い声を上げて、RXを攻め立てる。RXが力が及ばず、シュバリアンの手を振り払うことができない。
そのとき、RXの姿が変化を起こした。彼は黒と黄色の機械的な戦士の姿となった。
「ぬおっ!」
シュバリアンが両腕をはねのけられて押された。
「あのライダーも姿が変わるのか!?」
タイチもRXの変化を見て驚く。
「オレは悲しみの王子!RX!ロボライダー!」
RXが変身したロボライダーが名乗りを上げた。
RXは他のライダーに変身する能力を備えている。ロボライダーはRX以上のパワーを発揮して、炎のエネルギーも自らのパワーとすることも可能である。
「この地球はオレが守る!」
ロボライダーが言い放って、シュバリオンに向かって前進する。
「くらえ!」
シュバリアンがロボライダーに向けてビームを発射する。しかしロボライダーは地面からの爆発をものともせずに、前進を続ける。
シュバリアンが右手の鎌を振りかざすが、ロボライダーに軽々と受け止められる。
「お前たちの野望は、オレが打ち砕く!」
ロボライダーがシュバリアンの右手を左手で押さえたまま、右手のパンチを繰り出した。
「ぐおっ!」
重みのある打撃を受けて、シュバリアンが大きく突き飛ばされた。
「ボルティックシューター!」
ロボライダーが光線銃「ボルティックシューター」を手にして、シュバリアンを狙って引き金を引いた。一条の光線がシュバリアンの装甲を貫いた。
「おのれ・・またしても、お前に敗れるのか・・・!」
うめき声を上げるシュバリアンが倒れて爆発を起こした。
「やった!ロボットをやっつけた!」
「後はあのサルの怪人だけ!」
タイチとツバキが喜びの声を上げる。だがノゾムはガイナニンポーの棒術に攻められて、悪戦苦闘に陥っていた。
ロボライダーが振り向いて、ガイナニンポーに向かっていく。
「パワーはすさまじいが、その動きではオレ様には追いつけんぞ!」
ガイナニンポーがあざ笑って、ロボライダーを狙って棒を伸ばした。
棒が体に当たる瞬間、ロボライダーの体に変化が起こった。突然水晶のような輝きを宿した水となって、棒による突きをかわした。
「何っ!?」
この瞬間にタイチが驚く。水は空中を浮遊してガイナニンポーにまとわりついて揺さぶる。
「おわっ!」
ガイナニンポーが突き飛ばされて、水がRX、ロボライダーとは違う姿のライダーに変わった。
「ま、また変わった!?」
タイチだけでなく、ツバキも驚きの声を上げる。今のライダーの姿は青と銀、身軽さが特徴である。
「オレは怒りの王子!RX!バイオ、ライダー!」
ロボライダーから変化したバイオライダーが名乗りを上げる。
RXのもう1つの2段変身、バイオライダー。最大の特徴は体を液体化できることで、あらゆる侵入や脱出を可能とする。
「人間を苦しめる野望は、このオレが許さん!」
バイオライダーが言い放って、ガイナニンポーに立ち向かう。ガイナニンポーが棒を振りかざすが、バイオライダーは素早くかわしてキックを当てていく。
「バイオブレード!」
バイオライダーが剣「バイオブレード」を手にした。彼がバイオブレードで、ガイナニンポーが振りかざす棒とぶつけ合う。
「おのれ、バイオライダー・・これでもくらえ!」
ガイナニンポーが棒の先から電撃を放つ。が、バイオライダーはバイオブレードを掲げて電撃を受け止めて、振り抜いてはじいた。
ガイナニンポーがいきり立って、バイオライダーに向かっていく。バイオライダーは刀身にエネルギーを集めたバイオブレードを振りかざす。
「ぐあっ!」
切りつけられたガイナニンポーが絶叫を上げる。
「おのれ、ライダーども・・だが我らの侵略計画は止められんぞ・・・!」
バイオライダーに断末魔を投げかけて、ガイナニンポーが倒れて爆発を起こした。
「サルの怪人もやっつけた!すごい、あの人・・!」
タイチが喜んで、バイオライダーに目を向けて感動する。
「でも何者なんだろう?・・あの人も、怪人もロボットも初めて見る・・」
ツバキは目の前で起こった出来事に次々に疑問を感じていた。ノゾムとバイオライダーが振り向いて目を合わせた。
「君が新しく現れた仮面ライダーだね。」
「仮面ライダー?」
バイオライダーが口にした言葉に、ノゾムが疑問を覚える。バイオライダーがRXの姿に、そして人の姿に戻った。
「マックスの戦いはオレも耳にしていた。ビースターと戦うビーストライダーだと。」
光太郎の言葉を聞いて、ノゾムも頷く。
“スリービースト。”
彼もマックスカードを取り出してビースドライバーの左上のボタンを押して、マックスへの変身を解いた。
「何なんだ、アンタは?今出てきたヤツらはビースターとは違っていた・・」
ノゾムが光太郎に疑問を投げかける。ツバキとタイチも彼らの話に耳を傾ける。
「ヤツらは“クライシス帝国”の戦士たちだ。地球侵略と人類抹殺を企んでいる。」
光太郎がガイナニンポーたちのことをノゾムたちに話す。
地球とは別次元に存在する世界「怪魔界」。その怪魔界を支配するクライシス帝国は、かつて国民を移住させるために地球支配と人類抹殺を目論んだ。
しかし怪魔界を支配していたクライシス皇帝はRXによって倒され、崩壊に向かっていた怪魔界と運命をともにした。
「クライシス帝国は滅んだ。だがヤツらはよみがえり、再び地球を侵略しようとしている。」
「そんなのが、地球を攻めてきているなんて・・!」
光太郎の話を聞いて、タイチが緊張をふくらませる。
「どうして、いきなりよみがえったんですか!?・・クライシス帝国の生き残りがいたのですか・・!?」
「それは分からない。再び地球を狙い、かつて自分たちを滅ぼし、侵略の邪魔になるオレたちライダーたちを倒そうとしていることは確かだ。それと・・」
タイチが口にする疑問に光太郎が答えていく。
「もう1つの組織と結託して、作戦を強化しようとしている。」
「もう1つの組織・・?」
光太郎が話を続けて、ツバキが息をのむ。
「暗黒結社“ゴルゴム”。地球の文明の破壊と支配を企み、オレの体を改造した張本人だ・・」
光太郎が目つきを鋭くして話を続ける。彼は自分が体験してきた悲劇を思い返していく。
「体を改造って・・ベルトか何か道具を使って変身しているのではなくて・・・!?」
ツバキが話を聞いて驚きを隠せなくなる。彼女は光太郎もビーストライダーか、何らかのアイテムを使って変身するライダーだと思っていた。
「オレは普通の人間ではない。ゴルゴムによって改造手術をされ、変身しなくても普通の人を超える力を持ってしまった・・」
光太郎が語りかけて、自分が見つめる手を握りしめる。
光太郎はゴルゴムによって拉致され、ゴルゴムの支配者である創世王の候補である世紀王の1人「ブラックサン」に改造された。しかし脳改造を受ける前に脱出し、彼は世界と人々の平和と自由のためにゴルゴムに立ち向かう決意を固めた。
ゴルゴムとの戦いを終えた光太郎は、クライシス帝国に捕まり、BLACKへの変身機能を破壊されてしまった。しかし体内のキングストーンが太陽エネルギーを取り込んだことで、彼はRXへと生まれ変わった。
「改造人間・・2度と元に戻らない体・・・」
光太郎のことを聞いて、ツバキが動揺をふくらませていく。肉体を弄ばれながらも、自由と平和のために戦っている彼に、彼女は心を動かされていた。
「だけどそれでも、人間として生きようとしている気持ちはあるんだろう・・?」
ノゾムが言いかけて、光太郎が小さく頷いた。
「確かに体は改造人間だ。仮面ライダーとして戦うことを選んだ。それでもオレは人間だと思っている。」
光太郎がノゾムに目を向けて、自分の思いを告げる。
「家族や親友と喜びや悲しみを分かち合う、夢に向かって命を燃え上がらせる。それが人間なんだ・・」
「家族・・オレには、そんな人間らしい家族はいなかった・・・」
光太郎の口にした言葉を受けて、ノゾムが歯がゆさを浮かべる。彼は光太郎たちに背を向けて歩き出す。
「ノ、ノゾム!」
ツバキが呼びかけるが、ノゾムは立ち止まることはなかった。
「彼も何か事情を抱えているようだね・・」
光太郎がノゾムのことを考えて言いかける。
「ノゾムの親は厳しい人だったんです。それで怒りがふくらんで、ノゾムは実の親に手を上げたんです・・」
「それからノゾムは他人が信じられなくなっていたんです・・考えを押し付けられたり無理やりをされたりするのが耐えられなくて・・
タイチとツバキがノゾムのことを光太郎に話す。
「人は誰しも正しいことをしているとは限らない・・自分たちのために、自分や家族を悪魔に売るマネをする人もいた・・」
ノゾムの心境を察しながら、光太郎は話を続けた。
ゴルゴムの怪人は5万年生きられる。ゴルゴムに所属していた人間は、ゴルゴムの恐怖からやむなく従っていた者だけでなく、怪人の永い寿命への欲望に駆られた者もいた。
「傷つけられる辛さ、ひとりぼっちのさみしさは、生易しいものではない・・ノゾムくんの気持ち、オレは痛いほど分かる・・」
自分の胸に手を当てる光太郎に、ツバキもタイチも戸惑いをふくらませていく。
「改造人間・・普通の人間とは違う孤独が・・・」
ツバキが光太郎の言葉を痛感して、胸を締め付けられるような気分に襲われる。彼女は光太郎が戦い続ける意味の重みを感じ取っていた。
「彼も辛さに負けない強さを手にして、前を進むことをオレも信じている。人の痛みを理解している限り・・」
光太郎はノゾムも本当の強さをつかむと確信していた。ツバキとタイチも微笑んで頷いた。
ノゾムたちと出会った光太郎。彼らの様子を見つめる怪人がいた。
コウモリの姿の怪人は光太郎たちが合流したのを確かめてから、その場から去った。
その直後、コウモリの怪人は光太郎たちから離れたノゾムを空中から目撃した。
「あれが新たなライダー、マックスか・・!」
ノゾム、マックスの存在も確かめて、コウモリの怪人は飛び去っていった。