GUNDAM WAR –Violent Emotion-
PHASE-08「ユウ」
地球に狙いを向けているオーディンの破壊に、アルバのフューチャーとリリィのソリッドも向かっていた。スナイパーたちによる防衛線を突破して、2機はオーディンに接近していた。
「見えた!衛星、まだ残っている!」
「キラとアスランがヴァルキリーのMSと戦っている・・・!」
キラたちを視認して、リリィとアルバが目つきを鋭くする。
「あのMSは2人に任せておこう。オレたちは衛星を破壊するんだ。」
「うん!」
アルバの言葉にリリィが頷く。2人はキラとアスランを直接助けることはせず、そのままオーディン破壊に向かった。
「あれはフューチャーとソリッド・・先に行かせるものか・・・!」
2人に気付いたレイアが追撃に向かおうとするが、キラの射撃に行く手をさえぎられる。
「このままアルバ・メモリアにいいようにさせん!まずはキラ・ヤマトを早急に倒す!」
「行かせない!僕があなたをここで食い止める!」
互いに言い放つレイアとキラ。グレイヴが振りかざすクレイモアを、フリーダムが素早くかわしていく。フリーダムの反撃、両翼から射出した攻撃端末「ドラグーン」を展開させてのオールレンジ攻撃を、グレイヴの素早くかわしていった。
アスランのジャスティスを、ユウのリヴァイバーがビームライフルで狙い撃ちする。しかし射撃の全てがジャスティスに素早くかわされていく。
「平和を取り戻すのが、このようなやり方では叶わないことは、お前には分かるはずだ!すぐに攻撃をやめるんだ!」
「そうはいくか!オーディンで平和の敵を倒すことの、何がいけないっていうんだ!?」
呼びかけるアスランにユウが憤りを感じていく。
「お前たちが何をやっても、平和が来るどころかますます戦争が激しくなるばかりじゃないか!だから僕自身が平和を取り戻すしかないんだ!」
「それが、お前たちが今やっていることが、本当に世界の平和になるのか!?ヴァルキリーの思い通りの世界を、お前も本当に望んでいるのか!?」
「そうしなきゃ平和にならない!お前たちが平和にできない世界を、僕が、僕たちが平和にするんだ!そしてカナを、ジンを・・!」
呼びかけるアスランに言い返すユウが、自分の本音を口にしたことを気にして戸惑いを覚える。彼の願っている本当の平和は、ジンとカナのいる世界だった。
「お前も・・誰かを守りたいという思いがあるじゃないか・・」
「お前に何が分かる・・戦争に振り回されている僕たちの気持ちが、お前に分かるはずがない!」
アスランに呼びかけられて、ユウが困惑して声を張り上げる。
「その気持ちを今、お前は利用されているんだ!お前が願っている本当の平和が何か、しっかりと見出すんだ!」
「僕は見出している!見誤っているのはお前たちのほうだ!」
さらに呼びかけるアスランに言い返すユウ。リヴァイバーがスピードを上げて、ビームライフルで射撃してジャスティスを追い詰めていく。
「くっ!」
アスランが反応して、ジャスティスがビームをかわしていく。さらにジャスティスがビームサーベルを手にして、両端からビームの刃を出して構えた。
ジャスティスがリヴァイバーに接近しようとするが、リヴァイバーは後退して距離を詰めさせないようにする。
「僕はもう迷わない・・誰かに頼りきりになるのはよくないから・・・!」
ユウがアスランとの攻防を繰り広げながら、自分の願いを募らせていく。
「僕自身の手で世界を平和にする・・僕がカナを、ジンを救ってみせる!」
自分の願いを包み隠さず、ユウが言い放つ。リヴァイバーがビームライフルを組み合わせて、レールガンにして発砲する。
ジャスティスがリヴァイバーのビームをかわして、背部に搭載していた「ファトゥム-01」を射出する。リヴァイバーが即座に動いて、ファトゥムをかわす。
「こんなものでやられるわけには・・!」
ユウが言い放った瞬間、リヴァイバーの前にジャスティスが飛び込んできた。ファトゥムでユウの注意をそらした隙に、一気に詰め寄ってきたのである。
「しまっ・・!」
声を上げるユウ。ジャスティスが振りかざしてきたビームサーベルをビームシールドで受け止めるも、続けて繰り出された右足のビームブレイドでリヴァイバーが両腕を切り裂かれてしまった。
レールガンを手放すことになったリヴァイバー。アスランに一気に追い詰められて、ユウが危機感を覚える。
「もうやめろ!これではもう戦えない!」
「まだだ・・まだ終わっていない!」
呼びかけるアスランにユウが声を張り上げる。リヴァイバーは損傷したままジャスティスに組み付いてきた。
「何を!?」
「僕のやり方が単純なビーム攻撃だけだと思わないことだ!」
声を荒げるアスランにユウが言い放つ。リヴァイバーは両肩のビーム砲「シヴァ」を放とうとしていた。ジャスティスとの交戦中、リヴァイバーはシヴァのエネルギー充填を進めていた。
「できればこんな体勢でシヴァを使いたくなかった・・僕まで命を落とす危険があったから・・でも、このままお前たちを行かせて、平和を壊させるぐらいなら!」
「よせ!それで命を落として、お前を大切にしている人がどんな思いをするのか、分かっているのか!?」
「悲しい思いをするって言うつもりか!?そうさせないために、僕はこの攻撃をためらわない!」
アスランの呼びかけを一蹴するユウ。シヴァのエネルギー充填が完了し、発射が可能となった。
「お前だけは、僕の手で!」
「こんなことで死ぬな!お前が守ろうとしているもののために!」
ユウとともに言い放つアスランの中で何かが弾けた。彼が感覚を研ぎ澄まして潜在能力を飛躍させて、ジャスティスがリヴァイバーの損傷している腕をつかみ返して、両足を振り上げる。
ジャスティスの両足のビームブレイドが、シヴァをリヴァイバーの両肩ごと切り裂いた。ジャスティスがすぐに離れた直後、エネルギーを充填させていたシヴァが爆発を起こした。
その爆発の衝撃に押されて、リヴァイバーの胴体が吹き飛ばされて隕石に追突した。その衝撃で意識を失うも、ユウは軽傷で済んだ。
「満足だったのか・・こんなことで・・・」
歯がゆさを感じたまま、アスランはキラとレイアの交戦に1度目を向けてから、オーディンの破壊に向かった。
交戦するキラのフリーダムとレイアのグレイヴ。フリーダムが連続で繰り出すビームをかいくぐって、グレイヴが一撃必殺を狙う。
「キラ・ヤマト、私はお前を最高のコーディネーターという認識するつもりはない。どれほどの力の持ち主であろうと、我々ヴァルキリーの理想郷に牙を向く存在ならば排除するのみだ。」
「僕たちはあなたたちの思い通りに世界にはいたくない!僕たちは自分自身の手で未来をつかんでいく!」
不敵に言いかけるレイアに、キラが真剣に言い返す。
「そのために理想郷を拒むと、己が誇示しようとする世界にいようというのか・・滑稽だ。」
レイアがキラをあざ笑い、グレイヴがクレイモアを振りかざす。フリーダムは素早く動いてクレイモアの一閃をかわしていく。
「お前たちのその滑稽が戦争を繰り返させることになっている。それを終わらせるためのヴァルキリーの理想郷なのだ。」
「違う!誰かが世界を思い通りにしたらいけないんだ!」
「そうしなければ争いは終わらない。戦争は続くことになる。お前たちが守ろうとしているのは、そのような愚かな世界ということになる。」
「あなたたちの世界でなくても、そうならない世界を作ることができる!僕たちがやってみせる!」
「お前たちが望んでも、他の者はお前が口にするその混迷の世界を望まない。少なくとも我々はな。」
「僕は戦う・・みんなを、みんなが傷つかない世界を守るために!」
レイアが投げかける言葉に言い返していくキラ。フリーダムが2つのビームライフルを発射するが、グレイヴは素早く動いてビームをかわしていく。
「これだけ攻防を繰り広げれば、いかに速くとも見切れないことはないぞ。」
レイアが勝機を見出して、グレイヴが徐々にフリーダムに詰め寄っていく。
「今度こそ終わりだ、キラ・ヤマト。あるべき世界から消えろ!」
レイアが言い放ち、グレイヴがフリーダムとの距離を詰めた。
「世界の誰も、傷つけさせるわけにはいかないんだ!」
決意を強めるキラの中で何かが弾けた。彼の五感が研ぎ澄まされ、視界がクリアとなる。
フリーダムのスピードが一気に上がった。グレイヴが振り下ろしたクレイモアを、フリーダムが紙一重でかわす。
「何っ!?」
フリーダムの動きにレイアが驚愕する。フリーダムが振りかざしたビームサーベルが、グレイヴの左脇を切りつけた。
切りつけられたことで、グレイヴの動きが鈍りだした。
「こんなことで、私はやられるわけには・・!」
レイアが毒づき、グレイヴがフリーダムに向けてクレイモアを振りかざす。が、フリーダムのスピードについていけず、空振りを繰り返す。
そしてフリーダムが振り上げたビームサーベルの一閃で、グレイヴが右腕を切り裂かれてクレイモアを手放す。
「もうやめろ!これじゃ戦えないはずだ!」
キラが戦闘停止を呼びかけるが、レイアは笑みを消さない。
「腕やクレイモアを失っただけでは、グレイヴは無力にはならない!」
レイアが言い放ち、グレイヴがフリーダムと向き合う。グレイヴの腰と両肩の4つの砲門にエネルギーが集束されていく。
「遠距離攻撃は貴様の専売特許ではないぞ!このラグナログで、お前をフリーダム共々、ヴァルキリーの理想郷の人柱としてくれる!」
勝機を見出すレイア。グレイヴがラグナログを外さないように、出せる限界までスピードを上げてフリーダムに近づく。
「せめてフリーダムだけは・・キラ・ヤマトだけは!」
キラへの敵意をむき出しにするレイア。グレイヴがフリーダムに向けてラグナログを発射する。
「守ってみせる!みんなのいるこの世界を!」
キラが決意を言い放ち、フリーダムがドラグーンを含めた全ての砲門を展開して発射した。
フリーダムのフルバーストがグレイヴのラグナログのビームとぶつかり合った。フリーダムのビームがグレイヴのビームを押し込んだ。
そしてフリーダムのビームがグレイヴの胴体を貫いた。レイアもグレイヴの爆発に巻き込まれる。
「まさか私が・・理想郷を築く前に果てるだと・・・!?」
理想郷実現どころかキラを倒すこともできないことに、レイアは絶望を痛感させられていた。キラがアスランに続いてオーディンの破壊に向かおうとした。
「認めない・・このまま世界を救えないなど、あってはならない!」
レイアがグレイヴを動かそうとする。グレイヴは動きを鈍らせながらも、フリーダムを追いかけていく。
「逃がさない・・逃がすものか・・必ず・・必ず世界に、理想郷を!」
絶叫を上げて、レイアがキラを追う。だが彼女の意思に反して、グレイヴから爆発が巻き起こった。
(一矢報いることもできないのか・・私は・・・)
完全に絶望したレイアが爆発の光に包まれる。グレイヴが爆発して、木端微塵に吹き飛んだ。
宇宙に散っていったレイアに、キラは辛さを感じていた。
「ラクス、ミーティアを!一気に進んで、衛星を破壊するよ!」
“分かりました、キラ。”
キラの呼びかけにエターナルにいるラクスが答える。エターナルに1度収容されていたミーティアを、フリーダムが再び装備した。
プラントを狙うオーディンの破壊に向かったルナマリア、ソワレ、マリア。だがインパルス、ゼロ、ルナに追いついて、バーンのヴァルカスが回り込んできた。
「これ以上は行かせない。ヴァルキリーの理想郷の実現は、誰にも阻ませはしない。」
バーンがルナマリアたちに言いかけて、ヴァルカスが2本のビームサーベルを手にする。
「マリアさんたちは先に行って!僕がコイツを食い止める!」
ソワレが呼びかけて、ゼロがトラスカリバーを手にしてヴァルカスを迎え撃つ。
そのとき、ヴァルカスに向けて一条の光が飛び込んできた。バーンは反応して、ヴァルカスがビームをかわす。
「今のビームは・・!?」
声を荒げるソワレ。バーンもビームが飛んできたほうに視線を向けた。
「お前も出てきたか、ジン・シマバラ・・」
バーンは冷静のまま呟く。ジンのフェイス、カナのブレイズが姿を現した。
「そこにいたか、スバル・・今度こそお前を!」
「ジン・シマバラ、お前までヴァルキリーの理想郷を壊そうというのだな。」
言い放つジンに、バーンが冷徹に告げる。フェイスが手にしていたストライカーからビームを放ち、ヴァルカスが素早くかわす。
「私がやらなければ、理想郷は築けない・・・!」
バーンは自分に言い聞かせて、ヴァルカスがもう1本のビームサーベルを手にする。ジンがいきり立ち、フェイスがヴァルカスに向かっていく。
ビームの刃を発したストライカーを振りかざすフェイス。ヴァルカスもビームサーベルを振りかざして、ビームの刃をぶつけ合う。
「お前だけは許してはおかない!ミリィを殺した罪を、必ず償わせてやる!」
「我々ヴァルキリーの目指す道を阻む敵は葬って当然。それを罪と口にすること自体が滑稽というもの。」
「お前たちのほうが滑稽なんだろうが!」
冷徹に告げるバーンにジンが激高し、フェイスが力押しでヴァルカスを突き飛ばす。しかしヴァルカスはすぐに体勢を整える。
「自分たちの目的のために、戦いをやめようとしていたミリィを、お前は!」
「敵はどこまでいこうと敵。変わることのない事実の上、排除される以外の末路はない。」
「お前たちの解釈で勝手に決めるな!」
「我々ではない。理想郷が敵を存在させることを拒んだのだ。」
「どこまでも勝手なことを・・やはりお前は、確実にこの世界から消さないといけないな!」
「消えるのはお前だ。ヴァルキリーを裏切り、世界をかき乱す存在のお前は、理想郷に不要だ。」
激高するジンと頑ななバーン。ストライカーとビームサーベルが立て続けに激しくぶつかっていく。
「ここでフェイスが出てくるとは・・ますます厄介なことに・・・!」
「でもこれは好都合と取るしかないわ。今は衛星破壊を最優先に・・」
毒づくソワレにマリアが呼びかける。
「迷っていられない・・急ぎましょう!」
ルナマリアが声をかけて、インパルスがオーディンに向かう。ソワレのゼロ、マリアのルナも続く。
「オーディンを破壊させはしない!」
バーンがオーディン防衛に向かおうとするが、ヴァルカスにフェイスの猛攻が迫る。
「邪魔をするな!オーディンを破壊されれば、世界に理想郷を築くことは不可能となる!」
「もうお前の思い通りにさせるか!絶対にお前をここで倒す!」
言い放つバーンとジン。ヴァルカスがフェイスのストライカーをかいくぐって、インパルスたちの追撃を試みる。
「誰が逃げていいと言った!?」
ジンが言い放ち、フェイスが一気にスピードを上げてヴァルカスの左足をつかんだ。
「このようなことで、ヴァルカスに触れるな!」
「逃げるな!お前はオレが倒す!」
さらに言い放つバーンとジン。ヴァルカスとフェイスがまたビームサーベルとストライカーをぶつけ合っていく。
「このままではスバルを倒せず、オーディンも守れない・・こうなれば!
バーンがいきり立ち、ヴァルカスがビームサーベルを組み合わせてビームソードにする。
「スバル!」
ジンも叫び、フェイスもストライカーを組み合わせてストライクセイバーとする。巨大となった光の刃を2機が振りかざしてぶつけ合っていく。
「オレはお前を倒す・・ミリィのいる天国にも行かせない!地獄に叩き落とす!」
ジンがさらに激高し、殺気をむき出しにする。ヴァルカスとつばぜり合いをするフェイスから光があふれ出してきた。
「この光・・意識に介入される・・・!」
フェイスの放つ光に危機感を覚えるバーン。ヴァルカスがとっさにフェイスから離れる。
「逃げるなと言っているのが分からないのか!?」
怒号を放つジン。フェイスがヴァルカスを追撃し、2機は次第にプラントのオーディンから離れていった。
プラントに狙いを向けているオーディンの前にルナマリア、ソワレ、マリアが駆けつけた。だがそこへスナイパーの部隊が駆けつけてきた。
「またヴァルキリーのMSが・・・!」
「ソワレくんは衛星を破壊して!ゼロなら衛星を破壊できる可能性が高いから!」
毒づくソワレにマリアが呼びかけた。ソワレは頷き、ゼロがオーディンに向かう。
インパルスがビームサーベルで、ルナが鎌「クレッセント」で向かってくるスナイパーたちを切りつけていく。
「これでもザフトの赤よ!私だってやれるんだから!」
「気合入っているわね。私も負けていられないわ。」
言い放つルナマリアに、マリアも気を引き締める。インパルスとルナの前に、スナイパーたちはオーディン防衛に向かうことができないでいた。
その間にゼロがトラスカリバーを手にして、オーディンに突き立てた。深く傷をつけられたオーディンが、チャージしていたエネルギーを傷口からあふれさせる。
ゼロに切りつけられて、プラントを狙っていたオーディン全てが破壊されて爆発した。
「やった・・これでプラントが攻撃されることはなくなった・・・」
ソワレがオーディン破壊を確認して安堵を覚える。
「そんな・・・オーディンが・・・!?」
「オレたち・・負けたというのか・・・!?」
オーディンを破壊されて、スナイパーのパイロットたちが絶望を感じていく。
「認めない・・・我々が負けるなど、認めてなるものか!」
パイロットたちがいきり立ち、スナイパーたちがインパルスたちに向かって突っ込んできた。しかしこの突撃は自暴自棄の行動でしかなかった。
「やめろ!そんなことをしても何にもならない!」
ソワレが呼びかけるが、スナイパーは思いとどまらない。ソワレはやむなくスナイパーを撃墜させようとした。
そのとき、1つの機影が飛びかかってきたスナイパーたちを切りつけてきた。切られたスナイパーが次々に爆発を起こして爆発していく。
「これは!?」
驚きの声を上げるソワレ。彼らの前にカナの乗ったブレイズが現れた。
「ヴァルキリーを裏切ったMS・・ヴァルキリーと戦おうと・・・!」
ソワレが声をかけるが、ブレイズはそのままゼロの前から去っていった。
「この近くにフェイスも来ているのね・・・!」
「あの機体が行った先に、フェイスもいるかもしれない・・!」
マリアとルナマリアがブレイズを見据えて声を上げる。インパルスがブレイズを追ってスピードを上げた。
スナイパーの強襲をはねのけて、キラのフリーダムとアスランのジャスティスがオーディンの前に駆けつけた。だが既にアルバのフューチャーとリリィのソリッドがオーディンを破壊していた。
「悪いけど、あなたたちばかりにヒーローをさせるわけにはいかないわ。」
リリィがキラたちに向けて声をかける。
「こっちの衛星は全て破壊した。アークエンジェルとエターナルにも助けられたが・・」
アルバが言いかけると、キラとアスランがアークエンジェルとエターナルの艦影を確かめた。
「プラントのほうの衛星も全て破壊したと、クレストから連絡が入った。」
「分かりました。1度シンたちと合流しましょう。」
バルトフェルドからの声にキラが答える。
「だがヴァルカスとフェイスが交戦している・・シンも向かっている・・」
そこへアスランが声をかける。各機のレーダーがフェイスとヴァルカス、デスティニーの動きを捉えていた。
「行こう!フェイスを止めて、戦いを終わらせよう!」
「ああっ!」
キラの呼びかけにアスランが答える。フリーダムとジャスティスが交戦するフェイスとヴァルカスに向かっていった。
「私たちも行って、フェイスを止めに・・!」
リリィがアルバに呼びかけて、キラたちを追いかけようとした。だがフューチャーとソリッドの行く手をスナイパーたちが阻んできた。
「その余裕はないようだ・・・!」
「こんなときに・・・衛星は壊されて、あなたたちの作戦は失敗したのよ!引き上げるなら手出ししないから!」
毒づくアルバと呼びかけるリリィ。しかしヴァルキリーは聞き入れず、スナイパーたちがフューチャーとソリッドに飛びかかる。
そこへエターナルからのビームが飛び込み、スナイパー数機を撃ち抜いた。
「これ以上の戦いは悲劇を生むだけです。みなさん、戦いをやめ、これからの道を探しましょう。」
ラクスが回線を開いてヴァルキリーに呼びかける。しかしヴァルキリーは耳を傾けようとしない。
「お前たちの進む道に平和は存在しない!」
「お前たちのような平和の敵に屈するぐらいなら、死に屈したほうがマシだ!」
パイロットたちが言い放ち、スナイパーが強襲を続ける。だがフューチャーがエクスカリバーで、ソリッドがビームサーベルでスナイパーを切りつけて撃墜させていく。
そこへヴァルキリアも現れ、砲撃を仕掛けてきた。
「言葉や思いだけで平和にならないことを分かっていないお前たちとは違う。我々は行動を起こし、我々自身の手で真の平和を勝ち取らなければならないのだ。」
ヴァルキリアにいるジャッカルがラクスたちに呼びかけてきた。
「どうしても止めたいのであれば、もはや力ずくでしかない・・」
「それで命を落としても構わないとでも言いたいのか・・・!?」
ジャッカルに言い返してきたのはアルバだった。次の瞬間、ヴァルキリアの左翼が爆発を引き起こした。
「ぐっ!」
爆発の衝撃に襲われてジャッカルがうめく。
「死んで何かが報われることなどない!思いを託してくれた人たちのためにも、生き抜くことは大事なことだ!」
アルバが呼びかけて、フューチャーがエクスカリバーでさらにヴァルキリアを切りつけた。機動力を失ったことで、ヴァルキリアがユウとリヴァイバーのいる隕石に不時着した。
「中にいる人たちは生きているはずだ、。救い出してやってくれ。」
アルバが通信で呼びかけると、マリューが真剣な面持ちを見せて敬礼を送ってきた。それを見てアルバが頷き、フューチャーとソリッドが改めてキラたちを追っていった。
ストライクセイバーとビームソードをぶつけ合っていくフェイスとヴァルカス。そこへルナマリアたちを追いかけてきていたシンのデスティニーが駆けつけてきた。
「お前たち・・これ以上戦いを広げるな!」
シンが言い放つが、ジンもバーンも戦いをやめない。
「お前たちがそのつもりなら、オレはこの力で、お前たちを止める!」
シンがいきり立ち、デスティニーがビームソードを手にして構える。スピードを上げて飛びかかったデスティニーがビームソードを振り下ろして、フェイスとヴァルカスの間に割って入る。
「デスティニー!・・ゼビルがやられたのか・・・!」
「アイツ、またオレを・・!」
毒づくバーンと、シンのデスティニーにも憤りを覚えるジン。
「お前たちのやっていることが、世界をムチャクチャにしているんだぞ!そんなこと、許すわけにいくか!」
「ムチャクチャにしているのはお前たちのほうだろうが!」
言い放つシンにジンが怒号を放つ。フェイスがデスティニーに攻撃の矛先を向けて、ストライクセイバーを構えて飛びかかる。
そのとき、一条の光が飛び込んできて、フェイスの行く手を阻んだ。キラのフリーダムがアスランのジャスティスとともに駆けつけて、ミーティアと併せての一斉砲撃を放った。
「アスラン!キラ!」
「フリーダム、ジャスティス・・レイア様がやられるなど・・・!」
シンが声を上げる中、バーンがレイアがやられたことに驚愕を覚える。
「認めない・・レイア様の、ヴァルキリーの理想郷は実現されなければならない・・・!」
バーンがシンたちに敵意を向けて、ヴァルカスがビームソードを構える。
「お前たちがいるから、世界はいつまでたっても狂ったままだ!」
ジンが怒りを膨らませて、フェイスが胴体から光を放出する。バーンが光を警戒して、ヴァルカスが1度フェイスから離れる。
フリーダムがフェイスに向けて腹部の「複相ビーム砲」を放つ。ジンが反応して、フェイスがビームをかわす。
「もうやめろ!衛星は全部破壊された!これ以上戦う必要はない!」
「戦う必要がないだと!?・・まだお前たちがいるだろうが!」
キラが呼びかけるが、ジンの怒りを膨らませるだけだった。
フリーダム、ジャスティスと交戦するフェイスを見て、ヴァルカスにいるバーンは戦況を見届けようとした。そこへシンのデスティニーが飛びかかってきた。
「衛星も破壊して、ヴァルキリーも壊滅状態になった!それでも戦おうっていうのか、お前は!?」
「私は戦いをやめるわけにはいかない。世界に理想郷をもたらすために、私はお前たち世界の敵は排除されなくてはならない。」
言い放つシンにバーンは無感情に言葉を返す。
「それがお前の答えか・・だったらお前は、オレが倒すしかないようだな!」
シンが意思を示し、デスティニーがヴァルカスに向けてビームサーベルを振りかざす。ヴァルカスは素早く動いて、デスティニーの一閃をかわす。
「そう敵対してくれたほうが相手にしやすい。倒せばいいというだけのことだから。」
バーンは表情を変えずに、ジンだけでなくシンの打倒も誓うのだった。