GUNDAM WAR –Violent Emotion-
PHASE-07「アスラン」
アテナにリンが要請したものが届いた。レーザーユニット、フェイトである。
「ついに来たね。コレがないとあの衛星を一気に叩くのが難しくなるからね。」
リンがフェイトを見て、笑みを浮かべて頷く。
「これがフェイト・・デスティニーを使ってレーザーを発射するものなんですね・・?」
「その通り。デスティニーのエネルギーとかけ合わせれば、1回の砲撃で衛星1機は確実に破壊できる。衛星のビームと真っ向勝負しても負けることはないわ。」
声をかけるシンに、リンが真面目に答える。
「でも前にも言ったように、エネルギーチャージに時間がかかるのが難点だからね。それは気を付けてね。」
「分かっています。十分気を付けます・・」
リンからの注意にシンが頷く。自分の腕に世界の運命がかかっていることを、シンは痛感していた。
「シン、私がシンを守るから・・撃つために動くことのできないシンの代わりに、私が戦うから・・」
緊張を感じているシンに、ルナマリアが声をかけてきた。
「ルナ・・オレのためにすまない・・オレがもっとうまく、ルナやみんなを守ることができたら・・」
「思いつめないで、シン・・これは私が私自身で決めたこと。守られてばかりの私じゃないことを、忘れないで・・」
互いに想いを伝えあうシンとルナマリア。2人はアルバたちの目をはばからずに抱き合って、ナトーラが動揺を浮かべ、リンがにやけ顔を見せる。
「フェイトのチェックを済ませたら発進するんだろう?アークエンジェルやクレストにおくれを取るぞ・・」
「そ、そうでした・・リンさん、お願いします・・!」
アルバが声を上げると、ナトーラが我に返って指示を出す。
「もうちょっと見届けたかったんだけどねぇ・・」
「リンさん、からかわないでください!」
肩を落とすリンに、ナトーラが赤面したまま注意をする。
「気を引き締めなおして、宇宙に行くとしようね。」
リリィが声をかけると、シンとルナマリアが真剣な面持ちで頷いた。
「アテナ、これより大気圏を突破して、宇宙に上がります!」
ナトーラの指示で、アテナも宇宙へと上がっていった。
ヴァルキリーとオーディンの動きと情報を細大漏らさず把握していくエターナル。そこへ地球から上がってきたアークエンジェルが合流してきた。
エターナルにキラとアスラン、ラクスとバルトフェルドがやってきた。フリーダムとジャスティスもエターナルに移送されてきた。
「状況はどうなっている?」
「衛星は発射のためのエネルギーチャージを続行中。ヴァルキリーの戦艦とMSが展開、防衛線を張っています。」
バルトフェルドの声をかけると、ダコスタが現状を報告する。
「チャージ完了までの無防備は、通常兵器でカバーか・・」
「レクイエムやジェネシスと同じです。世界を守るためでも、戦いに必要なものでもありません。ただ平和と未来を脅かすものでしかありません・・」
バルトフェルドに続いてラクスも言いかける。
「ヴァルキリーは理想郷を実現させるための力として使っているが、自分たちの思い通りにするための世界でしかない・・」
「一方的な平和の中で生きていくなんてできない・・僕たちは、僕たち自身で平和な未来を進んでいく・・」
アスランとキラが自分たちの意思を口にする。
「本当の正義のために・・」
「自由を勝ち取るために・・」
決意を口にし合って、アスランとキラが握手を交わす。ラクスたちも2人と決意は同じだった。
“アークエンジェル、エターナル、聞こえるか?”
そのとき、クレストにいるガルから通信が送られてきた。
“我々はプラントを狙っている衛星の破壊に向かう。お前たちは地球の周りにある衛星を狙え。”
「ですが・・」
“MSパイロットとエターナルのクルーはコーディネーターだが、オーブに組していることも事実。ならばオーブのある地球を先に守るのが道理。”
当惑を浮かべるラクスに、ガルが呼びかけていく。
“それとも、いいところを全部かっさらうヒーロー気取りでいたいのか?ちょっとはこっちにも世界を守らせろ。”
「そのつもりはありませんよ。平和と未来を守りたいという願いは、私たちとあなた方、同じなのですから・・」
ガルとの連絡を取り合って、ラクスは通信を終えた。
「ビンセント艦長にプラントは任せて、オレたちは地球を狙っている衛星に限定して破壊を行うとしよう。」
「えぇ・・時期にシンたちも来るはずです・・」
バルトフェルドが声をかけると、アスランが深刻な面持ちを見せて頷いた。
「アイツもヴァルキリーとフェイスに立ち向かおうとしているが、オレたちの味方ということでもない。アイツもアイツなりの答え、正義を見つけようとしている・・」
「運命を背負い、運命を切り開く・・それがシンの答え・・・」
アスランに続いてキラも思いつめた面持ちで言いかけた。
「向かおうとしている未来が違っていても、今守ろうとしているものは同じ。それを信じて、私たちは私たちのやるべきことをしましょう・・」
ラクスが微笑んでキラたちの呼びかけた。真剣な面持ちを見せて、キラとアスランが頷いた。
「こっちのキーパーソンはお前たち2人だ。頼むぞ。」
「はい!」
バルトフェルドの呼びかけにキラが答える。彼とアスランが発進に向けて動き出した。
「これよりアークエンジェルとともに前進します。」
ラクスの声とともに、エターナルがオーディン撃破に向けて動き出す。アークエンジェルもエターナルに続いて発進していく。
キラとアスランがフリーダム、ジャスティスに乗り込むと、エターナルのハッチが開いた。
「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!」
フリーダムとジャスティスがエターナルから発進した。
「ミーティア、リフトオフ!」
エターナルに搭載されていた2機のミーティアが射出されて、フリーダムとジャスティスに装備された。キラとアスラン、フリーダムとジャスティスがオーディン破壊に向けて先陣を切った。
フリーダムとジャスティスが地球の上のオーディン破壊に向かったのを、クレストのレーダーも捉えた。
「我々も衛星破壊に向かうぞ。ソワレ、マリア、お前たちを先行させる。」
「分かりました。直ちに行きます。」
「私がソワレくんの援護に回ります。ザフトの他の部隊も衛星破壊に乗り出してきていますし・・」
ガルの呼びかけにソワレとマリアが答える。
「行くわよ、ソワレくん。地球のほうはキラさんとアスランさんに任せればいいのよ。」
「思うところはいろいろありますけど、今は私情を挟んでいる場合ではないですからね・・」
マリアとソワレが声を掛け合って、発進のための準備に入った。
「自分たちの信じる平和を目指すこと。それが私とソワレくんの戦う理由・・」
「本当の平和はみんなが納得できるものでしか認められない。それはラクスたちやオーブ、地球連合が作るものとは違う・・ましてアルバがしていることとは・・」
ルナとゼロに乗り込んで、マリアとソワレが言葉を交わす。クレストのハッチが開かれて、ゼロたちの発進準備が整った。
「ソワレ・ホークス、ゼロ、発進する!」
「マリア・スカイローズ、ルナ、行くわよ!」
ソワレのゼロ、マリアのルナがクレストから発進していった。
クレストとアークエンジェルの飛翔とエターナルの前進に、ヴァルキリーも気づいていた。
「やはりオーディンの破壊に乗り出してきたか。だがそれを許す我々ではないぞ。」
レイアは呟くと、バーンたちに振り返った。ユウも緊張と困惑を抱えたまま、レイアの前に立っていた。
「これよりオーディンの防衛に出る。最悪でも次に発射を行うまでは破壊させるな。」
「はっ!」
レイアの呼びかけにバーンとゼビルが答える。ユウは困惑を抱えたままで、返事ができないでいた。
「頼むぞ、ユウ。理想郷を築くには、お前の力を欠くことはできないのだ。」
「レイア様・・僕の力が、世界に平和を・・」
レイアに言いかけられて、ユウが決意を強めていく。
「必ず救ってみせる・・世界を・・みんなを・・・」
決意を口にするユウを見て、レイアが笑みを浮かべた。
「私とユウは地球の、バーンとゼビルはプラントの周囲にあるオーディンの防衛に向かう。スナイパー部隊も全員出撃。オーディンを破壊させるな。」
「はっ!」
レイアの命令でバーンたちが動き出す。レイア、バーン、ゼビル、ユウがグレイヴ、ヴァルカス、カース、リヴァイバーに乗り込んだ。
「バーン・アレス、ヴァルカス、発進する!」
「ゼビル・クローズ、カース、発進する!」
ヴァルカス、カースが先にヴァルキリアから発進し、プラントに向かった。
「ではいくぞ、ユウ。私はお前の力を信じているぞ。」
「はい、レイア様・・」
レイアの呼びかけにユウが答えた。
「レイア・バルキー、グレイヴ、出撃する!」
「ユウ・フォクシー、リヴァイバー、行きます!」
グレイヴとリヴァイバーもヴァルキリアから発進していった。
地球を狙うオーディンの破壊に向かって、ミーティアを装備したフリーダムとジャスティスが進行する。その行く手をスナイパーの一団が阻んできた。
「ヴァルキリー、衛星を守りに出てきたか・・・!」
「行こう、アスラン!一気に突破しよう!」
緊張を募らせるアスランに、キラが呼びかける。フリーダムのミーティアから「高エネルギー収束火線砲」を発射して、スナイパー数機の頭部と腕、武装を的確に撃ち抜いた。
「あくまで戦いを止めることだけに留めるか、キラは・・・!」
アスランが呟きかけて、ジャスティスもミーティアを駆使して、対艦ミサイルを発射してスナイパーたちに命中させていく。
「くっ!何という破壊力だ!」
「それでもヤツらを進ませるわけにはいかない!」
フリーダムとジャスティス、ミーティアの威力に驚くも、スナイパーのパイロットたちは退かずに立ち向かう。だがフリーダムとジャスティスの機動力と戦闘力の前に、次々に戦力を削がれていく。
スナイパーの防衛線を切り崩して、フリーダムとジャスティスが前進する。だがジャスティスのミーティアの背後にスナイパーの1機がしがみついてきた。
「捕まえたぞ・・一気にコイツを破壊して・・!」
スナイパーがミーティアの破壊を行おうとしたが、ミーティアからの対艦ミサイルを受けて引き離された。
「やめろ!これ以上世界を混乱させたいのか!?」
アスランが呼びかけるが、スナイパーは戦闘をやめない。
「一気に衛星のところまで行こう!衛星を止めれば、ヴァルキリーは戦おうとする理由を見失うよ!」
「それ以外にヴァルキリーを止める方法はないようだ・・!」
キラの呼びかけにアスランが答える。スナイパーの迎撃をかいくぐって、フリーダムとジャスティスがオーディンに向かって突き進んでいった。
アテナも遅れて地球から宇宙へと上がってきた。ナトーラたちはオーディンを巡っての宇宙での戦況を確かめていた。
「アークエンジェルとエターナルは地球に、クレストはプラントに狙いを向けている衛星の破壊に乗り出しているね。」
「私個人としては地球は見捨てられない場所です・・ですがここアテナにはプラントに住む人もいます・・」
リンとナトーラが自分たちの打つべき手立てを探っていく。
「フリーダムとジャスティスはミーティアを装備している。ならフェイトによるレーザー照射は、プラント防衛のためにやったほうが効率がいい・・」
するとアルバがナトーラたちに提案を持ちかけてきた。ナトーラとリン、ルナマリアとリリィは彼の案に納得した。
「だけど、キラとアスランたちのいいようにさせても・・」
しかしシンはキラとアスランを気がかりとしていた。するとアルバがシンの肩に手を乗せてきた。
「ならオレがキラたちのところに行く。シンはプラントを守るんだ。」
「アルバ・・だけど・・・」
アルバが声をかけるが、シンは困惑を募らせていく。
「私もアルバと一緒に行くから、ルナマリアさんはシンくんのサポートをしてあげて。フェイトのチャージをしている間は、デスティニーが無防備になってしまうから・・」
「リリィさん・・もちろんそのつもりですよ。」
リリィに言われて、ルナマリアが笑みを見せた。
「どうしても2人のことを気にするなら、まずはプラントを狙っている衛星を破壊してからだ。一刻の猶予もないことは、シンにも分かるだろう・・」
「くっ・・仕方がない・・本当に、話はヴァルキリーを止めた後だ・・・!」
アルバに言われて、シンが迷いを振り切った。
「話もまとまったところで、みんな、よろしく頼むね。」
リンが呼びかけると、シンたちが真剣な面持ちを浮かべて頷く。彼らは各々のMSに乗り込み、発進に備える。
(やってやるさ・・オレ自身の手で、オレ自身の意思で、プラントを守る・・・!)
シンが心の中で決意を強めていく。
「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」
「アルバ・メモリア、フューチャー、行くぞ!」
「リリィ・クラウディ、ソリッド、行きます!」
シンのデスティニー、アルバのフューチャー、リリィのソリッドがアテナから発進する。ルナマリアの乗るコアスプレンダーも、チェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットと合体して、フォースインパルスとなった。
「フェイト、射出!デスティニーとドッキングします!」
ミルの声とともに、アテナからフェイトが射出された。デスティニーが両肩に接続させて、フェイトとドッキングした。
“シンくん、フェイトのエネルギーチャージのコントロールはこっちでやるから、シンくんはフェイトの標準と発射をお願いね。”
「分かりました!お願いします!」
リンからの通信にシンが答える。
「オレたちは地球にある衛星に向かう。プラントは任せたぞ!」
「行こう、アルバ!」
アルバとリリィが声をかけて、キラたちが向かっているオーディンの撃破に疾走していった。
「私も行くよ、シン!シンは私が守るから・・!」
「ルナ・・ありがとう・・・」
続けて呼びかけてきたルナマリアに、シンが感謝を返す。インパルスが先行して、先にオーディンを護衛しているスナイパーたちと交戦していたゼロ、ルナと合流する。
「ルナマリアさん!あなたたちも来たのね!」
マリアがルナマリアのインパルスに気付いて声をかける。
「シンがレーザーで衛星を撃ち抜きます!チャージが完了したら射線軸から離れてください!」
「シンくんが!?・・あれが、そのレーザーか・・・!」
ルナマリアの呼びかけを聞いて、ソワレがフェイトのエネルギーチャージを行っているデスティニーを視認した。
「それまでは僕たちでヴァルキリーのMSを退けるということか・・!」
「かなり危なっかしいけど、それが1番確実な方法のようね・・・!」
ソワレとマリアが声を掛け合う。ゼロ、ルナ、インパルスが向かってくるスナイパーたちを迎え撃つ。
ゼロとインパルスがビームライフルを発射して、スナイパーたちをけん制していく。そこへルナがレールガンを放って、スナイパーたちを撃墜していく。
ルナマリアたちの遠距離攻撃をかいくぐって、スナイパー数機が接近してきた。これに対してインパルスがビームサーベルを、ゼロがトラスカリバーを手にしてスナイパーを切りつけていく。
3機のMSを前に、スナイパーたちはこれ以上の攻撃に出られなくなっていた。
「フェイトのチャージが完了した!離れてくれ!」
そこへシンの声が飛び込んできた。ルナマリアたちがビームライフルとレールガンでけん制しながら離れていく。
「よしっ!」
ルナマリアたちが離れたのを見計らって、オーディンに狙いを定めていたシンがフェイトを発射させた。フェイトの銃口から高い出力のレーザーが放たれた。
「こ、この攻撃は・・うわあっ!」
パイロットが絶叫を上げて、スナイパーたちの大半がフェイトのレーザーに巻き込まれた。レーザーは直進して、その先にあるオーディン数機を撃ち抜いて撃破した。
「やった!一気に衛星を破壊した!」
「でもこれで全部じゃない!その先にまだ2機残っているわ!」
声を上げるルナマリアとマリア。
「またフェイトでやってやる!残り全部オレが・・!」
シンが再びフェイトのエネルギーチャージを行おうとした。
そのとき、上からビームが飛び込んできて、フェイトの右側面が命中されて爆発を引き起こす。
「何っ!?」
「えっ!?」
驚きの声を上げるシンとルナマリア。デスティニーの情報に、ヴァルカスがカースとともに姿を現した。ヴァルカスが胸部ビーム砲「グラディス」でフェイトを攻撃したのである。
「これ以上オーディンを破壊させはしない。これはヴァルキリーの理想郷のために必要なものなのだ。」
「ふざけるな!あんな破壊兵器では、平和どころか混乱を招く!それが分からないのか!?」
バーンが言いかけると、ソワレが怒りの言葉を返す。
「くっ!・・フェイトにチャージができない・・・!」
シンがフェイトへのエネルギーチャージを試みるが、フェイトの損傷でエネルギーを送れない。
「エネルギー回路がやられているわ!もう修理しないとフェイトは使えないわよ!」
リンからの呼びかけを受けて、シンが毒づく。デスティニーがフェイトを切り離して、ヴァルカス、カースと対峙する。
「この2機はオレが食い止める!ルナたちは衛星を破壊してくれ!」
「シン!」
シンが呼びかけて、ルナマリアが声を荒げる。
「僕もシンくんと一緒にあの2機の相手をするから、マリアさんたちは先に行って!」
「ソワレくん・・・!」
続けてソワレも呼びかけて、マリアも戸惑いを感じていく。
「シン・・・分かったわ・・ソワレさんも気を付けて・・・!」
シンとソワレに声をかけると、ルナマリアはインパルスを駆り、残りのオーディンの破壊に向かう。マリアもルナで動き出していった。
「行かせるものか・・ゼビルはデスティニーを食い止めろ。私がオーディンの防衛に向かう。」
「分かりました。」
バーンが呼びかけてゼビルが答える。インパルスとルナをヴァルカスが追跡し、ゼロもヴァルカスを追う。
「デスティニー、シン・アスカ、お前はここで倒す。ヴァルキリーに組しなければ、たとえ力のある者でも理想郷にあってはならない。」
「自分たちの目的で、たくさんの人たちの命を奪うお前たちを・・絶対に許さない!」
冷徹に告げるゼビルに、シンが怒りを見せる。デスティニーがビームライフルを手にして発射するが、カースは素早い動きでビームをかわしていく。
「速い!」
「カースのスピードはお前やフリーダムたちにも引けを取らない。」
毒づくシンに、ゼビルが低く告げる。カースがビームサーベルを手にして振りかざし、デスティニーも素早く動いてかわす。
デスティニーとカースが同時にビームブーメランを投げつける。2つのビームブーメランがぶつかり合い、相殺される。
その瞬間、デスティニーがビームライフルでカースを狙い撃つ。ゼビルが反応してカースがビームをかわす。
「このようなことで私を仕留めていると思っているのか?」
ゼビルがシンをあざ笑ったときだった。上方からデスティニーが飛び込んできて、アロンダイトビームソードをカース目がけて振り下ろしてきた。
「くっ!」
ゼビルが毒づき、カースが右足を振りかざして、発せられたビームブレイドでビームソードを受け止めつつ、デスティニーとの距離を取る。
(デスティニーは防御に問題があるが、攻撃力と機動力の高さでその弱点が補われている。回避が間に合わなくなれば、大破は確実だ。)
ゼビルがデスティニーの力を痛感して、警戒を強める。
(だが、それでも私は負けるつもりはない。レイア様とヴァルキリーの目指す理想郷こそが、世界のあるべき形なのだから・・!)
ゼビルは意思を強めて、カースがビームサーベルを手にしてデスティニーに向かっていく。
「理想郷を築ければ、世界は本当の平和を取り戻せる!お前たちはその平和を壊して、さらなる混迷をもたらすというのか!?」
「その理想郷っていうのが、人の命を弄ぶことになっていくんだ!そんなこと、オレは許すもんか!」
問い詰めてくるゼビルに、シンが自分の意思を言い放つ。
「オレは誰かが全てを決める世界には従わない!その運命、オレが切り開いてやる!」
「勝手なことを!」
揺るがない決意を秘めるシンに、ゼビルがいら立つ。
デスティニーがビームソードを構えて飛びかかる。振り下ろされるビームソードを、カースが素早く動いて回避していく。
(オレは戦う・・オレが受けてきた悲劇を繰り返そうとするヴァルキリー・・・!)
シンがゼビルやヴァルキリーに対する憤りを募らせていく。
「オレはお前たちのでたらめな平和をぶち壊してやる!」
言い放つシンの中で何かが弾けた。視界がクリアとなり、彼の五感が研ぎ澄まされる。
同時にデスティニーの動きと戦闘力がさらに高まった。残像を伴ったデスティニーのその動きは、ゼビルの反応やカースの機動力をも超えるものになっていた。
ゼビルが焦りを募らせ、カースが徐々にデスティニーに追い込まれていく。
「一瞬でこれほどのレベルアップを果たすなど・・!」
声を荒げるゼビル。次の瞬間、デスティニーがカースの眼前に一気に詰めてきた。
「かわせない!」
危機感を覚えるゼビル。デスティニーが振り下ろしたビームソードをビームサーベルで受け止めるカースだが、デスティニーのパワーに押されていく。
「私は負けられない!このままやられはしないぞ!」
ゼビルが言い放ち、カースがビームブレイドを発した右足を振りかざしてきた。ビームブレイドがデスティニーの腕目がけて迫る。
だが、デスティニーが左腕からビームシールドを発して、カースのビームブレイドを受け止めた。
「何っ!?」
防がれたことにゼビルが驚愕の声を上げる。デスティニーがカースの右足を払い、左手を突き出してパルマフィオキーナを放つ。
「ぐっ!」
パルマフィオキーナがカースの右腕に命中して破損させる。その衝撃にあおられて、ゼビルがうめく。
体勢を整えようとしたゼビルだが、デスティニーがカース目がけてビームソードを振り落してきた。
「ぐあぁっ!」
ビームソードにカースが切り裂かれて真っ二つにされる。
「私は、まだたおれるわけにはぁ!」
コックピットも爆発に襲われて、ゼビルが絶叫を上げて炎の中に消えた。カースが爆発を引き起こして、デスティニーの前から遠ざかっていった。
「オレはオレたちのやり方で、戦いを止めていく・・戦う運命を背負って・・・!」
シンは決意を口にしてから、オーディン破壊に向かったルナマリアたちを追いかけていった。
同じ頃、キラとアスランも地球に狙いを向けているオーディンの眼前にまでたどり着いた。フリーダムのミーティアが振りかざしたビームソードが、オーディンの1機を破壊した。
「よし!他の衛星も破壊していくぞ!」
「うん!」
アスランの呼びかけにキラが頷いた。
「これ以上お前たちの好きにはさせんぞ。」
そこへ一条の光が飛び込んできた。キラとアスランが即座に反応して、フリーダムとジャスティスが光をかわす。
2人の前に現れたのはレイアのグレイヴとユウのリヴァイバー。グレイヴのラグナログがフリーダムとジャスティスを狙ったのである。
「ヴァルキリー・・・レイア・バルキーか・・・!」
レイアとユウの登場に、アスランが声を上げる。
「キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、我らヴァルキリーの目指す理想郷を拒絶したお前たちは、この世界にあってはならない存在でしかなくなった。己の選択の過ちを後悔して、天に逝くがよい。」
レイアがキラ、アスランに向けて冷徹に告げる。フリーダムとジャスティスがミーティアを切り離して、グレイヴ、リヴァイバーとの戦闘に備える。
「邪魔をするな!世界を壊すつもりなのか、お前たちは!?」
「違う!これこそが本当の平和を築くために必要なことだ!」
アスランの呼びかけに言い返してきたのはユウだった。リヴァイバーが2つのビームライフルを発砲するが、ジャスティスが素早くかわす。
「動きが速い・・だったら!」
ユウがいきり立って、リヴァイバーが2つのビームライフルを組み合わせて、レールガンにする。キラのフリーダムも割って入って、同じくビームライフルを組み合わせてレールガンにする。
2機がレールガンを発射して、ビームがぶつかり合って相殺される。
「これがフリーダムとジャスティス・・手ごわいけど、負けられない・・本当の平和のために・・・!」
ユウがいきり立ち、リヴァイバーがレールガンをビームライフルに戻して射撃を仕掛ける。フリーダムに向かったビームを、ジャスティスが割って入ってビームシールドで防いだ。
「やめろ!これが本当に、お前たちが平和だと思っていることなのか!?」
アスランが通信回線を開いて、リヴァイバーにいるユウに呼びかけてきた。
「アイツ、また勝手なことを・・・!」
ユウがアスランに対して憤りを覚える。リヴァイバーがジャスティスに向けて、ビームサーベルでの射撃を続けた。