GUNDAM WAR -Shine of Mebius-

PHASE-35「希望の架け橋」

 

 

 クサナギから発進し、カオスサイドとアリカたちの交戦する戦場に姿を現したアテナ。その姿に周囲の兵士たちが驚愕を覚える。

「な、何だ、あれは!?

 混沌軍の兵士が声を荒げる。アテナの登場にマイとナツキが笑みをこぼしていた。

 アテナのコックピットで、ジュンはひと呼吸ついていた。その中で彼はレナとミナミの面影と言葉を思い返していた。

(感じる・・母さんやミナミちゃん、たくさんの人たちの思いが、このアテナに込められている・・・)

 その思いを感じ取って、ジュンは真剣な面持ちを浮かべる。

「いくよ、母さん・・ミナミちゃん・・・!」

 思い立ったジュンに駆られて、アテナが動き出す。その動きは眼にも留まらない速さで、ビームサーベルを振りかざして、ワルキューレのポールアクスを持つ手ごとなぎ払った。

「なっ!?

 あまりに一瞬のことだったため、兵士は一瞬何が起こったのか分からなかった。それが兵士たちの戦意を削ぐ効果を招いていた。

 アテナは武器をビームライフルに持ち替えて、ワルキューレたちに向けて発砲する。またも素早い動きを併用しているため、次々とワルキューレの武装が撃ち抜かれていく。

 だがグフが放ったビームウィップがアテナの両腕両足を捉える。だがジュンは冷静に操作を行い、アテナが翼から突起物を射出する。

 アテナ・ホワイトメビウスに装備されている武装であるドラグーンは「ドライブドラグーン」と呼ばれ、本来の多方面砲撃だけでなく、突進で直接打撃を繰り出すこともできるものである。

 ドラグーンがビームを放ち、ビームウィップを撃ち抜く。アテナが手足を捉えている鞭を振り払い、ジュンがさらにドラグーンを操作する。

 ドラグーンが直接飛び込み、ワルキューレやザクウォーリア、グフイグナイテッドの武装を破壊していく。もはや並のMSにアテナを止めることはできなかった。

 

 マイのカグツチ、ナツキのデュランと交戦するカオススーツたち。そしてアリカのマイスターも、ニナの駆るオレイカルコスと一進一退の攻防を繰り広げていた。

 ビームブレイドとエクスカリバーがぶつかり合い、拮抗する戦況に歯がゆさを覚える2人。

「やめろ!」

 そのとき、アリカとニナは呼びかけを耳にして当惑を覚える。マイスターと交戦しているオレイカルコスに、アテナが突っ込んできた。

 衝突の衝撃で苦悶の表情を浮かべるニナとジュン。アテナとオレイカルコスが体勢を立て直し、互いと向き合う。

「あれは、アテナ・・・マシロさん、どうして・・・!?

 アテナの姿を目の当たりにして、ニナが驚愕する。

「アテナは私が破壊した・・マシロさんも無事では済まないはず・・・!?

「ニナちゃん、君がオーブを抜けたのも、カオスサイドに加わったのも、全部僕のせいなのは分かってる・・・」

 混乱しているニナに向けて、ジュンが声を振り絞って呼びかける。

「確かに僕は国の代表としては全然未熟だよ。僕がみんなのことを考えていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない・・・」

「だから謝ろうとでもいうの、いまさら・・・それで私の気持ちが治まると思ってるの・・・!?

 説得しようとするジュンに、ニナが反発する。

「あなたの言動と私自身のお父様への想いが、今の私の原動力となっているのよ・・私はカオスサイドのニナ・ウォン。あなたたちの敵なのよ・・」

「ニナちゃん!」

「もう遅いのよ、全てが!」

 ジュンの言葉をニナがさえぎる。オレイカルコスがビームブレイドを振り下ろし、アテナが機動力を振るってその一閃をかわす。

「あなたには、私を理解できない・・・」

 ニナは冷徹に言い放って、ジュンを敵視していた。

 

 アテナの登場に、アザトース艦内も動揺の空気が漂っていた。

「どういうことなのでしょうか・・・!?

「アテナは、ニナ殿が倒したはずなのに・・!?

「うろたえるな、お前たち!」

 困惑するオペレーターや兵士たちに、イオリが檄を飛ばす。

「アテナだろうと何だろうと、オレたちに恐れるものはない。ましてやオレイカルコスを相手にするなら、アテナには勝ち目はない。」

「しかし、今のアテナの力は以前を上回っています!いくらオレイカルコスでも・・・!」

「オレイカルコスの耐久力を忘れたのか?あの耐久力は、MSの攻撃では通用しない。陽電子砲レベルでないと、まず破壊できない・・・」

 イオリが不敵な笑みを浮かべて言い放った言葉を受けて、混沌軍が戦意を取り戻した。

「それに、もうすぐスミスが切り札を持って戻ってくる・・デッド・ライダーズは体勢を整えるのに手一杯。忍び込むには十分余裕がある。」

 イオリはさらなる野心を見据えて、歓喜の笑みをこぼしていた。

 

 カオススーツJ、Dと交戦するカグツチとデュラン。驚異的な力を発揮するカグツチとデュランに、フィーナとスワンは追い込まれていた。

 そこへトモエの駆るカオススーツFが、4機の間に割って入ってきた。

「邪魔よ、あなたたち!」

 いきり立っているトモエが言い放ち、カオススーツFが砲撃を繰り出す。カグツチとデュランだけでなく、他のカオススーツたちにも。

 カオススーツFが標的をカグツチに絞り、ドラグーンによる砲撃を行う。カグツチもそのビームの雨をかいくぐり、ドラグーンで迎撃する。

 ナツキの駆るデュランもマテリアによる砲撃を駆使して、カオススーツJ、Dの2機を相手に奮闘する。

 だが、その混戦の合間を縫って、体勢を整えようとしているデッド・ライダーズに向けて、アザトースが狙いをつけていた。

「まずい!このままじゃデッド・ライダーズが・・!」

「私が行きます!」

 ナツキが声を上げると、アリカの駆るマイスターがアザトースに向かう。その接近にアザトースも気付いていた。

(マイスターがこっちに来たときにはもう手遅れだ。間に合ったとしても迎撃が間に合わず、タンホイザーの直撃を受けることになる。)

 不敵な笑みを浮かべるイオリの見据える先で、アザトースが陽電子砲「タンホイザー」を発射する。その閃光で、デッド・ライダーズかマイスターが葬られるはずだと彼は確信していた。

 そのとき、アザトースが放った砲撃に向けて別の閃光が飛び込み、衝突する。その爆発に押されながらも、マイスターはすぐに体勢を整える。

 笑みを消したイオリがモニターに眼を向けると、ジーザスの姿があった。ジーザスの陽電子砲「ローエングリン」が、アザトースの砲撃を阻んだのである。

“やっほー♪お待たせー♪”

 ジーザスからミドリの気さくな声が、マイたちの耳に届く。

「遅いぞ、ミドリ。」

“ゴメン、ゴメン。これでも全力疾走で来たんだけどね。”

 ナツキが不満を口にしてみせると、ミドリが苦笑を浮かべる。そして彼女たちは、新たなる戦艦の姿を目撃する。

「九時の方向よりクサナギ!」

 アザトースのオペレーターの言葉に、イオリは眼つきを鋭くしていた。

「クサナギまで現れたか・・3つの勢力が完全にオレたちの相手として立ちふさがるか・・・」

 密集する敵勢力に語気を強めるも、イオリには恐れがなかった。

 

 ジュンの駆るアテナに果敢に攻めていくニナのオレイカルコス。だがニナには無意識に動揺を募らせていた。

「遅くなんかない!もしも打ち明けてくれるなら、僕はニナちゃんの気持ちを理解する!」

「いまさら何を言うのよ!たとえ打ち明けたとしても、もう誰にも私を止められない!」

 呼びかけるジュンだが、ニナはその声を聞こうとせず、攻め立てようとする。

「そんなことはない!ニナちゃん自身が止められなくても、僕たちがニナちゃんに手を差し伸べるから!」

 それでもジュンは諦めずにニナに呼びかける。

「やっと分かったんだ・・人の気持ちを理解するには、まず自分の気持ちを打ち明けるのが大事なんだって・・」

「それで相手が心を開くとでも・・」

「僕はニナちゃんとちゃんと向き合いたい。だから、もう1度一緒に始めよう・・間違ったって、やり直していけばいいんだから・・・」

 切実な思いをニナに向けて告げるジュン。アテナがビームサーベルを持っている手を下げて、敵意を消す。

「何度も言わせないで・・きれいごとを言わないでって・・やり直せばいい?・・これは私とあなただけの問題じゃない!そんなことを簡単に言わないで!」

「ニナちゃん!」

「あなたは国の代表でもある!そのあなたに、あの人を想っている私を止めることはできない!」

 それでもニナはジュンの言葉をさえぎり、感情をむき出しにする。

「今の私はお父様のために戦う!このオレイカルコスは、そのための力なのよ!」

「それがニナちゃんの戦う理由・・・なら僕はニナちゃんを止める!ニナちゃんを守るため、僕はその力を撃つ!」

 感情に駆られたニナ、決意を言い放ったジュンの中で何かが弾ける。五感が研ぎ澄まされ、視界がクリアになる。

 両腕のビームブレイドを振り上げたオレイカルコスと、ビームサーベルを構えたアテナが同時に飛びかかる。2機が素早い動きで刃を振りかざし、すれ違う。

 オレイカルコスの装甲は上位の耐久力を備えている。高出力であっても、ビームサーベルで傷つけられるはずがなかった。

 だが、オレイカルコスの両腕が突如爆発を引き起こす。その瞬間に対して、ニナが驚愕をあらわにする。

 オレイカルコスは確かに絶大な耐久力を備えている。だが関節部分まではその耐久力は備わっていない。アテナはそこを狙い、ビームサーベルで切り裂いたのだった。

 力とともに想いを崩されそうになり、ニナは愕然となっていた。振り返ったオレイカルコスを、ジュンは沈痛さを噛み締めて見つめていた。

 

 体勢を整えようとしていたデッド・ライダーズ。その合間を縫って、スミスが暗躍を開始していた。

 体制の立て直しのために本拠地の警備が手薄になり、スミスは簡単に忍び込んでいた。そしてついに、彼は探し求めていた切り札を発見する。

(ついに手にしましたよ。カオスサイドの最終兵器に欠かせない品物、ラグナログを。)

 箱に収められている球状の水晶を手にして、スミスが悠然とした笑みを浮かべる。無限のエネルギーをもたらすとも言われているエネルギー体「ラグナログ」。それがイオリが狙っていた、カオスサイドの支配を完全なものとする切り札だった。

 スミスを箱を持ってすぐさま本拠衣からの脱出を行う。小型艇に乗り込もうとしたところで、彼はデッド・ライダーズのメンバーに発見される。

「し、侵入者!?

「くそっ!こんなときに!」

 メンバーたちがすぐに銃を手にして、スミスに向けて発砲する。しかしスミスはその銃撃をかいくぐって、小型艇を発進させてこの場を後にした。

「イオリさん、例の品物を回収しました。すぐにそちらに戻ります。」

 アザトースに向かう小型艇から、スミスがイオリに向けて連絡を入れる。

“そうか。分かった。今回の戦闘はここまでだ。これ以上ライトサイドとオーブを同時に相手をしたら、勝てても無事では済まなくなるからな。”

「分かりました。」

 イオリの言葉にスミスが答える。アザトースから撤退を知らせる信号弾が放たれた。

「撤退!?

 その命令にこの場にいた全員が当惑を覚える。ワルキューレたちが撤退を始め、フィーナもスワンもアザトースに引き返していく。

 ニナの乗るオレイカルコスも、アテナに背を向けてこの場を離れようとする。

「ニナちゃん、待って!戻ろうよ、みんなのところに!」

「・・言ったでしょ・・もう全てが遅いって・・私は私の心のままに、自分の手を血で汚した・・・私はあなたたちの敵。それは、これからも変わらない・・・」

 ジュンの呼びかけに対して、ニナは冷淡に答え、歯がゆさを心に秘めたままこの場を後にした。ジュンもいたたまれない気持ちでいっぱいになり、顔を歪めていた。

「撤退・・冗談じゃないわよ・・このままやられっぱなしで何もできずに、のこのこと引き下がれるわけないでしょ!」

 アザトースからの命令に反発して、トモエが感情を爆発させる。カオススーツFがマイスターに向けて全てのレール砲を発射する。

「ぐっ!」

 アリカがとっさに反応し、マイスターが何とかその砲撃を回避する。そこへカオススーツFがビームサーベルを構えて飛びかかる。

「アリカちゃん!」

 そこへジュンの駆るアテナがカオススーツFに向かっていく。それに気付いたトモエが、標的をマイスターからアテナに切り替える。

「いつもいつも邪魔して!いい加減ウザいんだよ!」

 トモエがいきり立ち、カオススーツFがドラグーンを展開する。だがアテナは素早い動きで、そのビームの雨をすり抜けていく。

 そしてアテナがビームサーベルをカオススーツに向けて振りかざす。その一閃はカオススーツの左肩を切り裂き、爆発を引き起こさせた。

「なっ・・・!?

 トモエが驚愕して眼を見開く。アテナの攻撃に手も足も出ず、彼女は歯がゆさを覚える。

“引き上げだ、トモエ。連中を倒すのは次の機会に回せ。”

 そこへイオリからの呼びかけが入るが、トモエは怒りを抑えることができない。

“ムダに命を捨てたいなら好きにしろ。だがもし戻るなら、とどめを刺すチャンスをお前に与えてやる。”

「・・・分かったわよ・・だが、次は聞かないからね・・・!」

 腑に落ちないながらも、トモエはイオリの言葉を受け入れた。アザトースに引き下がっていく漆黒の機体を、ジュンたちはあえて追おうとしなかった。

 ライトサイド、オーブの前から姿を消していくカオスサイド。

「・・やった・・・勝った・・・」

 アオイが声を上げたのを期に、ジーザスとクサナギで歓喜が湧き上がった。押し寄せる苦境を跳ね除け、彼らはカオスサイドの猛威を退けることに成功したのだ。

「やりましたね、ミドリさん。援護を感謝します。」

「私たちはそんな大したことはやってないよ。マイちゃんやナツキちゃんのおかげだよ。」

 ユキノが感謝の言葉をかけると、ミドリが照れ笑いを浮かべる。マイ、ナツキ、アリカも安堵の笑みをこぼしていた。

(やった・・僕は、みんなを守れたんだね・・・)

 同じく安堵を感じたとき、ジュンは疲弊して意識を失う。パイロットの気絶で、アテナが体勢を崩して落下する。

「マシロちゃん!」

 アリカがジュンの異変に気付き、マイスターが落下していくアテナの手をつかむ。マイスターはアテナを支えて、クサナギに着艦する。

 マイのカグツチとナツキのデュランもジーザスへと帰還し、クサナギとともにこの場を後にした。戦闘体勢に入れなかったこともあり、デッド・ライダーズはクサナギとジーザスを追わなかった。

 2国の行動に対し、ジョージは疑問を感じずにはいられなかった。

 

 クサナギに戻ったジュンは、アリカの呼びかけとユキノの指示によって医務室へと運ばれた。意識を失った彼が被っているメットをアリカが外すと、彼の頭から血が流れていた。この戦闘で傷口が開いてしまったのだ。

 状態が悪化したものの、ジュンは命に別状がなかった。そのことにアリカやユキノたちは安堵を感じていた。

「一時はどうなるかと思ったわよ。人のことを言えないけど、ムチャをしますね。」

 医務室にて眠るジュンに、シスカが言葉をかける。するとアリカが物悲しい笑みを浮かべて、ジュンに対する心配を口にする。

「マシロちゃん、ニナちゃんやみんなのために一生懸命で・・私、マシロちゃんとちゃんと向き合ってみたいと思います・・私もマシロちゃんのことを、もっともっと知りたいから・・」

「アリカちゃん・・・そうね。私も知りたいかな。女王として頑張っている男の子のことをね。」

 シスカが言いかけると、アリカも微笑んで頷いた。

 

 カオスサイドとの壮絶な戦いから一夜が過ぎ、ジュンは医務室のベットの上で眼を覚ました。頭に痛みを感じながらも、彼は記憶を巡らせた。

「そうか・・僕はニナちゃんと戦って、その後で意識を失ったんだっけ・・・」

 戦いを思い返して、ジュンは表情を曇らせた。彼の脳裏にニナの心境と苦悩がよぎる。

「ニナちゃん・・今度こそ、ちゃんと理解し合って、もう1度始めていこう・・お互い、辛いことがないように・・・」

 ニナに対する思いを口にするジュン。彼はベットから降りて、ひとまず医務室から出ようとしたときだった。

 ドアが開き、ユキノがジュンの前に姿を現した。

「ユキノさん・・・」

「気が付いたようですね。でももうムチャは許しませんからね。」

 戸惑いを見せるジュンに、ユキノが微笑んで言いとがめる。

「シスカさんやみんなを守ることができましたが、ニナちゃんは・・・」

「ジュンくん・・・人は人でいる限り、全てのものを守ることはできません。それでもあなたは、大切なものを守ろうとした・・・」

 自分を悔やむジュンに、ユキノが優しく弁解する。そこへアリカ、マイ、ナツキ、シスカがやってきた。

「あ、眼が覚めたんだね、マシロちゃん♪」

 アリカがジュンに向けて笑顔を見せる。だが彼女はすぐに戸惑いの面持ちを浮かべる。

「やっぱり、マシロちゃんが男の子だと、何だか照れちゃうかな、エヘへ・・」

 アリカが照れ笑いを浮かべると、ジュンも戸惑いながらも微笑みかけた。

「アリカちゃん、これからもアリカちゃんと分かち合いたい。マシロ女王としてだけでなく、ジュン・セイヤーズとしても・・」

「・・それでも、私にとっては、マシロちゃんはマシロちゃんだから・・・」

 アリカの弁解に、ジュンは心の中の淀みが和らいだのを感じた。こうして気持ちが通じ合えることが、これほど気持ちがいいことだとは、彼は今まで感じたことがなかった。

「傷が治りきっていたいところ悪いんだが、みんなが待っているぞ、ジュン。」

「ナツキさん・・・」

 そこへナツキが声をかけ、ジュンが微笑みかける。彼は自分の力で歩き、アリカたちとともにクサナギから出る。

 外にはクサナギのクルーだけでなく、ジーザスのクルーたちも揃っていた。彼らは再会の喜びと束の間の休息を楽しんでいた。

「あ、マシロ姫のご登場だよー。」

 ミドリが気さくな態度でクルーたちに呼びかける。ユウがその中から飛び出し、マイに駆け寄ってきた。

「マイ・・マシロ姫はもう大丈夫なのか・・・?」

「ユウ・・うん。傷はまだ塞がってないけど、心のほうは大丈夫みたい・・」

 マイがユウに向けて答えると、ジュンも小さく頷いた。彼の眼前にいる面々が、自分に眼を向けていた。

(そうだ・・僕を支えてくれる人が、こんなにもいるんだ・・・)

 信頼を寄せる人々を目の当たりにして、ジュンは心の底から喜びを感じていた。

(みんなのこの思いを、絶対に壊しちゃいけない・・僕の気持ちを伝えて、みんなの気持ちも知る。それが国の代表のすべきことであり、僕自身がやらなくちゃいけないことでもあるんだ・・・)

 ジュンは足を前に踏み出し、クルーたちの中に進んでいく。

(僕は進んでいく。この希望の架け橋を・・だから見守っていて、母さん、ミナミちゃん・・・)

 未来へ歩き出す者、その未来に全てを託して命を散らした者たちのため、ジュンは決意を強めるのだった。

 

 

次回予告

 

「ライトサイド、オーブに申し渡す。」

「1体1の勝負を所望する。」

「兄さんの心を知りたい・・マシロさんが、みんなの心を知ろうとしているように・・」

「これが、あなたの心を導く力です・・・」

 

次回・「妹の願い」

 

 

作品集に戻る

 

TOP

inserted by FC2 system