GUNDAM WAR SD

-神魔の銃剣士-

第10章「戦友の消失」

 

 

 暗黒の銃剣士がグランドワールドを攻撃する1週間前のことだった。ソウマとロアが暗黒の銃剣士の仲間入りをしたいと志願し、メフィストを含む上位の銃剣士が了承した。
「ありがとうございます、メフィスト様。私たちを受け入れていただき、感謝しています。」
 ロアが感謝して、ソウマと共にメフィストに頭を下げる。
「お前たち2人はかなりの力を備えている。その潜在能力を見越して、お前たちを配下に迎えた。」
 メフィストが2人を部下にした理由を語っていく。
「だがその力と成果を、実際に見せてもらおう。私にも他の銃剣士にも。」
「分かりました、メフィスト様。」
「次の戦にオレたちも参加させてください。そのときにオレたちの力、お見せします。」
 進言するメフィストに、ソウマが答えて、ロアが戦いを志願する。
「お前たちの初陣となる出陣の時は追って伝える。それまでいつでも戦えるようにしておけ。」
「はい。」
 メフィストの命令に、ソウマとロアが答えた。
(オーガが王者として君臨する時代も終わりを迎える。その後を継ぐのは息子のライアンではない。この私だ。)
 オーガの後継者を狙うメフィストは、ソウマたちを有力な手駒に仕立てようとしていた。

 暗黒の銃剣士として戦いができることに、ソウマは喜びを感じていた。
「これで思いっきり力を発揮できるね、ロア。」
「浮かれるな、ソウマ。これが終わりではなく始まりだ。オレたちが力を高めるための。」
 上機嫌のソウマをロアが注意する。
「分かっているよ。ここから僕たちはもっと強くなる。」
「そのためにオレたちは暗黒の銃剣士を目指した。より強い力を手に入れられるからな。」
 ソウマは微笑んだまま答えて、ロアが自分たちの目的を口にする。
「そのためには、メフィスト様とその仲間以外の王者の後継者を排除しなければならない。」
「うん。でも例えば誰になるの?」
「現王者のオーガの子、ライアンが有力か。力があるだけでなく、指揮能力も高い。」
「なるほど。勝負してみたいね。」
 ロアがライアンのことを言って、ソウマが興味を持つ。
「それともう1人、王者の候補ではないのだが・・」
「ん?」
 ロアが次に切り出した話に、ソウマが疑問符を浮かべる。
「紅蓮の銃剣士、リュウガ。ヤツは暗黒の銃剣士の中でも指折りの力の持ち主だ。」
「あの紅蓮の銃剣士か・・あの人とも勝負してみたいな・・」
 ロアがリュウガのことを言って、ソウマが興味を強くしていく。
「しかもライアンがリュウガを仲間に引き入れようとしている。まとめて倒すことは可能だ。」
「さて、どういうことになるのかな・・」
 ロアがリュウガとライアンの両方を陥れることを企み、ソウマが期待を膨らませていく。
「その前に、メフィスト様たちにオレたちの力を見せておかなくては。」
「そうだね・・体がウズウズしてきたよ・・・」
 次の戦いに備えて、ロアとソウマが考えをまとめていた。

 その後、グランドワールドでの戦いの中で、ソウマとロアはリュウガとの戦いで敗北したフォールのとどめを刺した。
 自分たちの力をメフィストたちに証明するため、リュウガとライアンを陥れるため。
 その足掛かりとして、ソウマたちはフォールを討った。
「ちょっと不意打ちが過ぎたかな・・」
「いや、勝利につながるなら、不意打ちも罠も兵法だ。まして暗黒の銃剣士ならば、そうでなければならない。」
 苦笑いを見せるソウマに、ロアが冷静に言い返す。
「これでちょっとは功績になったかな?」
「これで慢心するな。オレたちの戦いは、まだまだこれからだ。」
 手応えを感じるソウマに言って、ロアは移動していく。
「ロアは真面目だね。でもそこがロアって感じだから、その調子が僕は好きだよ。」
 ソウマは笑顔を浮かべて、ロアを追いかけた。

 グランドワールドは暗黒の銃剣士によって制圧された。それから1日後に、リュウガとライアンはフォールが死んだことを耳にした。
「アイツが死んだ!?・・オレはとどめは刺していないぞ・・・!」
 リュウガがフォールの死に疑問を抱く。
「他の誰かがとどめを刺したようだ。」
 ライアンが来て、彼の疑問に答える。
「ただ手柄を横取りしただけならそれまでだが、何か陰謀が隠れているように思える・・」
「だとしても、打ち砕けばいいというだけだ・・」
 暗躍を予感するライアンだが、リュウガは戦い倒すことしか考えていなかった。
「どんな罠も真っ向勝負で打ち破るか。お前らしいな、リュウガ。」
「オレはこのやり方しか知らない・・戦って勝つだけだ・・」
 笑みをこぼすライアンに、リュウガが口調を変えずに言い返した。
(王者争いは日に日に激しくなる。不意打ちや騙し討ちを狙うヤツもいるはずだ。)
 自分への奇襲や暗殺を警戒するライアン。
(本当に卑怯なヤツは、何をしてくるか分からない・・オレたちの予想を大きく超えてくるくらいに・・・)
 彼は油断せずに、暗黒の銃剣士としての戦いと安息を過ごしていった。

 それから1週間が過ぎて、リュウガとライアンは新たな戦いへと赴いた。
 次の戦いの場は「クラウドワールド」。常に空が雲に覆われ続けている世界である。
 クラウドワールドには実力のある銃剣士が多数滞在していた。
 そしてリュウガはマスラオナイトとスサノオナイトの集団に囲まれていた。
「暗黒の銃剣士よ、我らの連携の前ではどのような相手でも敗北は免れないぞ。」
「我らの力を思い知り、地獄に落ちろ!」
 スサノオナイトとマスラオナイトがリュウガに言い放ち、刀を構えた。
「何人出てこようと同じだ。お前たち全員、オレが倒す・・・!」
 リュウガが低い声で言って、紅龍刃を振りかざす。スサノオナイトたちが素早く動き、一閃を回避する。
「1人1人の単純な力では、お前には敵わないだろう・・だが・・・!」
「速さはお前に勝るとも劣らん!」
「そこに数が揃えば、お前を倒すことは不可能ではない!」
 スサノオナイトたちが言い放ち、高速でリュウガの周りを駆けていく。
「速さも数もオレの前では意味を成さない・・・!」
 リュウガが冷静に言って、紅龍刃を振りかざす。
「ぐっ!」
 円が広がるように放たれた光の刃で、スサノオナイトたちとマスラオナイトたちが吹き飛ばされた。
「バカな!?・・これほどとは・・・!」
 マスラオナイトたちがリュウガの力を痛感して目を見開く。
「だが、無駄死にするオレたちではないぞ・・・!」
 マスラオナイトの1人が笑みをこぼしたときだった。スサノオナイトの2人が背後から近づき、リュウガの腕をつかんできた。
「攻撃はさせんぞ!」
「せめてお前の動きを押さえる!」
 スサノオナイトたちが力を込めてリュウガの動きを封じる。
「それでオレを止められると思っているのか・・・!?」
 リュウガが全身に力を込めて、スサノオナイトたちを振り払おうとした。そこへスサノオナイトたちとマスラオナイトたちが飛びかかり、彼を押さえつけてきた。
「これでお前に一矢報いる・・卑怯と罵られようと、我が国を守ることができるなら・・・!」
 倒れていたマスラオナイトが立ち上がり、リュウガを倒す意思を貫く。
「そこまでの覚悟ということか・・それでも・・!」
 リュウガがさらに力を込めて、全身から衝撃波を巻き起こした。
「うおっ!」
 スサノオナイトたちとマスラオナイトたちが衝撃波で吹き飛ばされた。力を大きく消耗して、リュウガが呼吸を乱す。
「くっ・・・倒すことはできなかったが・・・一矢報いたと言えるか・・・」
 マスラオナイトが声を振り絞り笑みをこぼす。
「これ以上ふざけたマネをするな・・次は容赦しないぞ・・・!」
 リュウガが忠告を言って、マスラオナイト、スサノオナイトたちから離れた。
「紅蓮の銃剣士・・暗黒の銃剣士であるはずなのに、我々を見逃すとは・・・!」
 マスラオナイトがリュウガの行動に憤りを感じていく。
「だがこれでは生き恥ではないか・・それこそ、我らにとっては屈辱だ・・・!」
「ヤツを追うぞ・・やられっぱなしというわけにはいかんぞ・・・!」
 スサノオナイトたちがリュウガを追おうと、力を振り絞って立ち上がる。
「ここからはオレたちが相手になるぜ!」
 そこへ暗黒の銃剣士であるザクナイトたちが来て、スサノオナイトたちに攻撃を仕掛けてきた。
「おのれ!他のヤツもいたのか!?」
「こんなところで、我々がやられるとは・・・!」
 スサノオナイトたちとマスラオナイトたちが絶体絶命を痛感しながら、ザクナイトたちと交戦した。

 ライアンもスサノオナイトたちの集団攻撃を退けるも、体力を消耗していた。
「クラウドワールド・・ここまでの猛者揃いだとは・・・」
 ライアンが焦りを感じながら、呼吸を整えていく。
「お前のところにも数で攻めてきたか・・・!」
 リュウガが来て、ライアンが振り返る。
「あぁ・・ここまで苦戦させられたのは、お前との勝負以来か。」
「まだ世界は広いということか・・強者がゴロゴロしている・・・!」
 ライアンとリュウガが言葉を交わして、互いに落ち着きを取り戻していく。リュウガは無意識にライアンを友であると実感するようになっていた。
「オレも君も消耗してしまった・・1度後退したほうがいい・・」
「そうだな・・・」
 ライアンの意見にリュウガが賛成する。2人は戦線から離れて体勢を整えようとした。
 そのとき、空から光の刃がリュウガたちに向かって飛んできた。リュウガとライアンが反応して、素早く刃をかわした。
「誰だ!?」
 リュウガが声を上げたときだった。次の高速の一閃が彼の背中を切りつけた。
「ぐっ!」
「リュウガ!」
 うめくリュウガにライアンが叫ぶ。
「こうして疲れてきたのを待っていたよ、2人とも。」
 2人の前にソウマが降り立ち、無邪気に振る舞ってきた。
「お前は、最近暗黒の銃剣士に入ってきた・・・!」
「うん。ソウマ・フリーダムガンダムだよ。よろしくね。」
 リュウガが声を荒げて、ソウマが自己紹介をする。
「この機に乗じてオレを亡き者にしようというのか・・!?」
「君だけじゃないよ。君たち2人とも。」
 問い詰めるライアンに、ソウマが微笑む。
「お前たちと真っ向勝負を挑んでも、オレたちの勝機は薄い。」
 ロアも続けて現れて、リュウガたちに声をかけてきた。
「ロア・ジャスティスガンダム・・お前たちがオレの首を獲りに来たのか・・・!?」
 ライアンがロアに振り向いて、双雷刃を構える。
「お前たちがいると邪魔になるのだ。オレたちにとっても・・」
「というわけで、強い相手を消しちゃうのはもったいないけど、今ここで倒させてもらうよ。」
 ロアとソウマが言って、リュウガとライアンに近づいていく。
「万全の状態なら、2人に負けないというのに・・・!」
「このときを狙っていたということだよ・・真っ向勝負では無事では済まないから・・・!」
 毒づくリュウガに、ライアンがソウマたちの狙いについて告げる。
「リュウガ、お前は逃げろ!オレが2人を食い止め、時間を稼ぐ!」
 ライアンがリュウガに言って、双雷刃を構える。
「待て、ライアン・・ヤツらの相手はオレがする・・・!」
 リュウガが紅龍刃を構えて、ライアンの前に出る。
「オレは親友には死んでほしくはないんだ・・!」
「お前は王者になる道があるのだろう!?死ぬべきでないのはお前のほうだろう!」
「だからと言って、自分の命を粗末にしていいことにはならない!」
「お前がそれを言うのか!?」
 ライアンとリュウガが言い合いをしていく。
「オレを見くびるな、ライアン・・オレは死なない・・死ぬつもりは全くない・・・!」
「リュウガ・・しかし・・・!」
 生きる意志を貫くリュウガに、ライアンが困惑する。
「気にしなくていいよ、2人とも・・どっちもやっつけるから・・」
「王者候補の1人と、そいつに会うまでは孤独の戦いを続けてきた銃剣士。厄介な存在が2人も消えるなら、好都合というもの。」
 ソウマが言いかけて、ロアが疾風双刃剣を手にする。
「ふざけたやり方に屈するわけにいかない・・お前たちは、オレが倒す!」
 リュウガがいきり立ち、ロアに向かって飛びかかる。リュウガが紅龍刃を振り下ろすが、ロアは素早く回避した。
「今のお前からは噂に聞く戦闘力は感じられない。オレでも十分に対応できる。」
 ロアが冷静にリュウガの動きを見て、正確に行動していく。
「今のお前では、オレに上手を取ることはできない。」
 ロアが一気にスピードを上げて、リュウガに向けて疾風双刃剣を振りかざす。
「うぐっ!」
 ロアの高速の斬撃で体中を切り付けられ、リュウガが激痛に襲われて目を見開いた。
「リュウガ!」
 前のめりに倒れたリュウガに、ライアンが叫ぶ。
「ちょっとロア、僕が相手するはずだったのに・・」
 ソウマがロアに目を向けて、不満を見せる。
「お前はライアンを倒せばいいだろう。」
「それもそうか・・ロア、今度は手を出さないでね。僕も思い切り体を動かすんだから・・」
 ロアに言われて、納得したソウマがライアンに向かっていく。
(このままではリュウガがやられてしまう・・救い出さないと・・・!)
 リュウガの身を案じ、ライアンがソウマとロアの出方を伺う。
「それじゃ僕も行くよ。」
 ソウマが笑みをこぼして、蒼天刃を振りかざしてきた。ライアンが回避して、リュウガを助けに行く。
「君の相手は僕だというのに・・・」
 ソウマがため息をついて、高速でライアンを追う。ソウマが振りかざす蒼天刃を、ライアンが双雷刃で受け止める。
「お前たちの相手をしている場合ではない・・!」
「そんなことを気にする必要はないって・・君たちは2人ともやっつけられちゃうんだから・・・!」
 うめくライアンにソウマが無邪気に言う。
「リュウガ、逃げろ・・オレが食い止めている間に・・・!」
「ライアン・・オレに構わず逃げるべきなのに、お前は・・・!」
 呼びかけるライアンに、リュウガが毒づいて起き上がる。
「お前たちを逃がすわけにはいかない。ここで始末しなければ、逆にオレたちが不利になるからな。」
 ロアが見逃さず、疾風双刃剣を振り下ろす。リュウガが紅龍刃を掲げるが、突き飛ばされて横転する。
「くっ・・・!」
 リュウガが紅龍刃を地面に突き立てて立ち上がる。
「長引かせるわけにはいかない。そろそろ終わりにする。」
 ロアは言いかけて、構えた疾風双刃剣に力を溜めていく。
「いけない!」
 ライアンが蒼天刃を双雷刃で跳ね除けて、リュウガのところへ駆け出す。
「突貫疾風刃(とっかんしっぷうじん)!」
 ロアが疾風双刃剣を突き出して、刀身から光の刃を伸ばした。リュウガは体勢が整わず、回避が間に合わない。
「ぐっ!」
 ライアンがリュウガの前に出て、ロアの光の刃を体に受けた。ライアンが体を貫かれて、激痛が駆け巡った。
「ライアン・・!?」
 ライアンがロアの手に掛かったのを見て、リュウガが目を見開く。
「くっ・・・ライジングドラグーン!」
 ライアンが痛みに耐えながら、体から光の刃「ライトニングドラグーン」を多数出して、ロアとソウマに向かって飛ばした。ロアたちがライトニングドラグーンを叩き落とすが、ライアンとリュウガから引き離される。
「リュウガ・・・今の・・うちに・・・」
 リュウガに向けて弱々しく声をかけて、ライアンが倒れる。
「ライアン!」
 リュウガがライアンに肩を貸して、この場から移動する。
「あっ!待て!」
 ソウマがライトニングドラグーンを跳ね除けて追いかけるが、リュウガたちを見失った。
「逃げられた・・もうちょっとだったのに・・・!」
 ソウマは悔しさを覚えて肩を落とす。
「いや。リュウガは仕留め損なったが、ライアンは致命傷を受けた。もう長くはない。仮に生き延びたとしても、他の銃剣士が王者を継ぐまでの復帰は不可能だ。」
 ロアが冷静に答えて、ライアンの死を確信する。
「それにここまでくれば、リュウガを追い込む算段は付けられる。」
「うまく考えているんだね、ロアは。そこも楽しみだね。」
 ロアが話を続けて、ソウマが喜びを見せる。
「2人の戦い、拝見しました。」
 そこへ2人のズゴックナイトが現れ、ソウマたちに声をかけてきた。
「オレたちを監視していたということか。オレたちの力を見計らうために。」
「そう思ってもらって結構です。あなたたちなら、上級の銃剣士として十分に認められるでしょう。」
 振り向いたロアに、ズゴックナイトが称賛を送った。
「あなたたちのことはメフィストたちに報告します。そしてライアン、リュウガの死をこれから確認しに行きます。」
「分かった。オレたちはこのまま、このクラウドワールドの討伐を続ける。」
 ズゴックナイトの言葉を受けて、ロアはソウマと共に戦線に戻った。
「これで認められたね、僕たち。」
「だがこれも始まりに過ぎない。オレたちがさらなる力を得て、最強の銃剣士に近づくための・・」
 喜ぶソウマにロアが落ち着きを払ったまま言い返す。
「でも今回で大きく近づいたね。その最強に。」
「あぁ。オレたちはまだまだ強くなる。そのためならどのような手も打つ。今回のように・・」
 ソウマが投げかけた言葉に、ロアも笑みをこぼして頷いた。2人のリュウガ、ライアンに対する奇襲は成功した。

 リュウガがライアンを連れて、戦場から離れた荒野まで来た。
「ライアン、しっかりしろ・・ライアン!」
 ライアンを横たわらせ、リュウガが呼びかける。
「リュウガ・・・何とか君を守れたよ・・・」
 ライアンがリュウガを見て微笑みかける。
「しゃべるな!すぐに手当てできるヤツのところに連れていく!」
「ムダだ・・この傷が致命傷であることは、オレにも分かる・・・体に、力が入らないんだ・・・」
 再び抱え上げようとするリュウガに、ライアンが返事をする。
「諦めるな!お前は王者になるのだろう!?暗黒の銃剣士を束ね、他のヤツらをまとめていくのだろう!?」
「みんなのことも自分のことも理解していくうちに・・自分の死も理解できるようになってしまったようだ・・・」
「諦めるなと言っている!死を受け入れるのは愚の骨頂だぞ!」
「リュウガ・・・お前は本当に生に執着するな・・・」
 必死に呼びかけるリュウガに、ライアンがさらに笑みをこぼす。
「そうだな・・・生きている限り、諦めるわけにいかないな・・・」
「少しの辛抱だ・・それまで気を抜くな!」
 気を引き締めるライアンを抱えて、リュウガが傷ついた体を引きずって、医者を捜しに行く。
「リュウガ・・お前と仲間になれたこと、お前が仲間を持てたこと・・オレは嬉しい・・・」
 リュウガとの友情を感じ、ライアンが安らぎを覚える。
「これからもリュウガと一緒に戦っていくぞ・・・お前のためにも・・オレは・・王者に・・・」
 リュウガと共にこれからも戦っていくことを心から誓っていたライアン。
 そのとき、ライアンが目を閉じて、力なく腕を下げた。
「ライアン・・・!?」
 リュウガがライアンに視線を向けて、目を疑う。
「目を覚ませ、ライアン・・生きろと言っている・・!」
 リュウガが呼びかけるが、ライアンは反応しない。
「死ぬな、ライアン・・生きろと言っている!」
 リュウガが叫び続けても、ライアンは目を覚まさない。
「ライアン・・・ライアーン!」
 リュウガの叫びがクラウドワールドにこだました。彼にとっての物心がついてからの初めての慟哭だった。

 

 

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