GUNDAM WAR SD

-神魔の銃剣士-

第6章「蒼天の疾風」

 

 

 ソウマ、ロアと再会して、リュウガが憎悪を募らせていた。マーズはソウマを見つめて、動揺を隠せなくなっていた。
「久しぶりだね、リュウガ。僕は嬉しいよ。」
「オレはお前たちを決して許しはしない・・オレの親友を殺したお前たちを・・・!」
 無邪気に振る舞うソウマを、リュウガが鋭く睨みつける。
「殺しただなんて物騒なことを言わないでよ。それは君を庇っただけだって。」
 ソウマが困った顔を浮かべて言い返す。
「ふざけるな・・自分の犯した罪を棚に上げて・・・!」
 リュウガが怒りを膨らませて、全身に力を入れて衝撃波を発した。しかしソウマとオロは全く動じない。
「そんなに怒らなくたっていいのに・・」
「ソウマ、悪ふざけもいい加減にしろ・・」
 落ち込む素振りを見せるソウマを、ロアが注意する。
「リュウガ、我が主に歯向かうことは許さない。オレたちのところに戻ってこい。」
 ロアがリュウガに手招きをして呼びかける。
「お前たちには決して従わない・・お前たちを倒さない限り、オレの怒りは収まらない・・・!」
「愚かなことだ・・もはやこれが千載一遇の好機だったというのに・・」
 完全に敵視するリュウガに、ロアが肩を落とす。
「オレたちのところに戻らないというなら、排除するしかない。オレたちとあの方に仇名す敵として・・」
「オレとお前たちは既に敵だ・・オレたちを陥れたお前たちは、オレが倒す!」
 構えを取るロアに言い返して、リュウガが紅龍刃を手にした。
「待ってよ。リュウガの相手をするのは僕なんだからね。」
 ソウマが不満の声を上げて、ロアの前に出てきた。
「ソウマ、またわがままを言ってきて・・・」
「だってこのときを楽しみにしてきたんだから・・僕がリュウガと思い切り勝負するのを・・」
 ロアが苦言を呈すると、ソウマが無邪気さを消してリュウガと対峙する。
「待って、ソウマさん!」
 そのとき、マーズがソウマに近づいて呼び止めてきた。
「やめて下さい、ソウマさん!あなたとリュウガさんが戦うことはないんです!話し合って分かり合えばいいんですよ!」
「マーズ・・君もリュウガと一緒にいたのか・・」
 戦いを止めようとするマーズに目を向けて、ソウマが呟く。
「邪魔しないでね。今から僕とリュウガの勝負の時間なんだから・・」
「ダメだって、ソウマさん!戦ったらいけません!」
 言いかけるソウマに、マーズが必死に呼びかける。するとマーズの眼前の地面に光の球が飛び込んできた。
「邪魔をしたら、君からやっつけちゃうからね・・・」
「ソウマさん!?・・どうして・・どうしてこんな・・・!?」
 冷たく告げるソウマに、マーズが愕然となる。
「さぁ、思いっきり体を動かそうね、リュウガ。」
 ソウマがまた無邪気に振る舞って構えを取る。
「その子供のような態度は相変わらずだが・・それで許されるほど、お前たちの罪は軽くはない・・・!」
 リュウガが怒りを膨らませて、紅龍刃を振り下ろした。叩きつけられた地面を這うように、衝撃がソウマたちに向かっていく。
「ブルードラグーン。」
 ソウマが体から青い光の刃を大量に出して、その光が合わさって球状の壁になった。衝撃は壁にぶつかって共にかき消えた。
「強力だね。出ていく前と比べたらかなり強くなっているみたい。」
 ソウマがリュウガの力を確かめて、笑みをこぼす。
「でも強くなったのは僕たちも同じだよ・・僕のブルードラグーンは攻防一体の武器だよ・・・」
 ソウマが言いかけて、ブルードラグーンを操作して、リュウガに向かわせる。
「さぁ、これをどうよけるかな?」
 ソウマが笑みをこぼして、ブルードラグーンから一斉にビームを放った。リュウガが紅龍刃を振り上げて、衝撃でビームを弾いた。
「オレに小細工は通じない・・邪魔するものも全て、オレが吹き飛ばす・・・!」
 リュウガが鋭く言って、ソウマに向かって歩を進める。
「いいね。こうでないと面白くないよね・・それじゃ段々と攻撃を激しくしていくかな・・」
 ソウマが喜んで、再びブルードラグーンを操作した。ブルードラグーンが時間差でビームを発射していく。
「これじゃ一気に吹き飛ばすことはできな・・」
 ソウマが無邪気に笑おうとしたとき、リュウガが紅龍刃を振りかざして、円のような光の刃を飛ばした。刃の円はリュウガを中心にして広がり、ビームを吹き飛ばした。
「次はお前が直接来い・・でなければこの場からお前を仕留める・・・!」
 リュウガが紅龍刃の切っ先をソウマに向けて。忠告を送る。
「そうだね。次は剣で勝負することにしよう。」
 ソウマが言いかけて、2本の剣「蒼天刃(そうてんじん)」を手にした。
「パワーはそっちだけど、スピードは僕ってところかな・・でも、力の使い方も僕が上かな・・」
「減らず口や挑発もオレには通じない。油断にしかならない・・・!」
 笑みをこぼすソウマだが、リュウガは動じずに彼に近づいていく。
「そう・・それじゃおしゃべりはやめるかな・・・!」
 ソウマが呟いてから、リュウガに飛び掛かり蒼天刃を振りかざしてきた。リュウガが正確に紅龍刃を構えて、ソウマの斬撃を防いだ。
「すごいね。僕の動きを読んで正確に攻撃を防いでくるなんてね・・」
 ソウマが足を止めて、リュウガに振り向いた。
「・・と、言いたいところだけど、全部防いだわけじゃなかったよ・・」
 ソウマが呟いた直後、リュウガの両足に切り傷が付いた。
「くっ・・!」
「リュウガさん!」
 苦痛を覚えるリュウガに、マーズが叫ぶ。
「君もそれなりに強くなっているみたいだけど、僕たちの強化ほどじゃないかな。」
「強化!?・・あのときよりも強くなったというのか・・・!?」
 ソウマの口にした言葉に、リュウガが声を荒げる。
「オレたちはあの方から力を与えられた。通常の鍛錬では長い時間を要する力を・・」
 ロアが話に加わり、リュウガに語っていく。
「あの方とは・・まさか、メフィスト・・!?」
 リュウガがその人物のことを思い出し、目を見開く。
「そうだ。暗黒の銃剣士の中で上位に君臨する“魔神銃剣士”の1人、メフィスト・シナンジュ様だ。」
 ロアがその人物、メフィストのことを話していく。
「メフィスト様は裏切り者の君を見限って、僕たちを大事に思ってくれている。僕たちの力が、暗黒の銃剣士の勝利につながっているってことだね。」
 ソウマもメフィストのことを言って、笑い声をあげる。
「まさかメフィストが、コイツらに力を貸すなんて・・・!?」
 メフィストがソウマたちを信用していることに、リュウガが愕然となる。
「裏切り者のお前と、暗黒の銃剣士として従うオレたち。どちらが重要であるか、上の者は分かっているということだ。」
「お前たち・・オレたちを陥れ、メフィストたちに取り入るとは・・!」
 メフィストへの感謝を口にするロアに、リュウガが苛立ちを膨らませる。
「暗黒の銃剣士を抜けた君と、力を与えられた僕たちじゃ、力の差が開くのは当然だよね・・」
 ソウマが勝ち誇って笑い声をあげる。
「思い上がるな!たとえお前たちが力を付けようと、オレはお前たちを必ず倒す・・!」
 リュウガが言い返して、紅龍刃を構える。
「悪あがきも楽しければ大歓迎だよ・・」
 ソウマが再び飛び掛かり、蒼天刃を振りかざしてきた。リュウガが目を見開き、紅龍刃を振り下ろして地面を叩く。
「力任せにやっても遅いって・・」
 ソウマが呟いた瞬間、リュウガの両腕に傷が付いた。リュウガは痛みに耐えて、倒れず、紅龍刃を握り続ける。
「たとえどれだけ抵抗しようと、決定的な力の差は覆すことはできない。理解しなければ死あるのみ。」
 ロアが冷静にリュウガに忠告する。
「何度も言わせるな・・オレはお前たちを倒す・・お前たちは決して許しはしない・・お前たちに従うことは、死ぬことよりも地獄だ・・・!」
 リュウガが声を振り絞り、ソウマたちを睨みつける。
「それならさっさとやっつけて楽にしてあげるのが、友情ってもんだよね・・」
 ソウマが笑みをこぼして、またブルードラグーンを射出した。
「今度は速くてかわし切れないよ・・」
 彼が操作するブルードラグーンが、高速でリュウガを包囲する。
「それでオレを追い込んだつもりか・・・!」
 リュウガが憎悪を募らせて、全身に力を入れた。背中から赤い翼が広がり、彼は紅蓮態となった。
「その姿は・・・?」
「紅蓮態・・リュウガさんが敵を倒すために生み出した姿・・・!」
 紅蓮態を見てロアが疑問を覚えて、マーズが息を呑む。
「リュウガももっと強くなっていたんだね。そうじゃないと面白くないよね。」
 ソウマは紅蓮態を見て、期待を膨らませていた。
「どれだけ僕に近づいているかな・・!」
 ソウマがブルードラグーンからビームを放つと同時に、自身もリュウガに向かっていって蒼天刃を振りかざす。
「倒す・・・!」
 リュウガが紅龍刃を振りかざして、赤い光の刃を飛ばした。刃はブルードラグーンを破り、周囲に強い衝撃をもたらした。
「確かに戦闘力が大きく跳ね上がっている。今のオレたちでも油断ならないほどだ。」
 ロアが冷静さを保ったまま、紅蓮態の力を把握する。
「しかしオレには、力を無理矢理引き出しているように思える。体に大きな負担がかかるはず・・」
 彼は紅蓮態のデメリットについても推測していた。
「時間稼ぎをすればいいんだけど、それじゃつまんなくなるからね・・その力をたっぷりと楽しませてもらうよ。」
 ソウマは戦いを続けることを決めて、リュウガに向かって加速する。
「いくら力が強くても、当たらなかったら意味ないよ・・」
 ソウマがリュウガの横に移動し、蒼天刃を横水平に振りかざしてきた。
「速さは今のオレには意味がない・・」
 リュウガが低い声で言って、全身から衝撃波を赤い風のように放った。
「うおっ!」
 ソウマが衝撃波を受けて、ブルードラグーン共々吹き飛ばされる。
「あっ・・!」
 マーズが彼を見て、動揺を見せる。ソウマは着地して、リュウガに視線を戻して笑みをこぼす。
「次はお前を仕留める・・次の一撃でお前を倒す・・・!」
 リュウガが構えた紅龍刃の刀身に、赤い光があふれて輝きが強まる。
「紅蓮紅龍斬!」
 リュウガが振りかざした紅龍刃から赤くまばゆい光の刃が放たれた。刃は高速で飛び、ソウマに向かっていく。
 その瞬間、ロアが駆け付けてソウマを抱えた。ロアはそのスピードに乗って、リュウガの一閃をかわした。
「今の攻撃をよけた・・!?」
 ロアの高速に驚愕を覚えて、リュウガが目を見開く。
「ちょっとー!邪魔しないでよ、ロアー!」
 ソウマが起き上がって、ロアに文句を言う。
「あの威力は直撃すれば、お前でも致命傷になる可能性が高かった。それもお前だけで完全に回避できたとは言えない・・」
 ロアに的確な推測を言われるが、ソウマは不満を抑えられなかった。
「たとえお前に恨まれようと、オレはお前を死なせるわけにはいかない。」
「ロア・・しょうがないんだから・・でも僕のためを思ってのことだから、嬉しいよ・・」
 自分の考えを告げるロアに、ソウマが感謝した。
「次はオレが相手をする。ソウマ、お前のように相手の力を楽しむようなことは、オレはしない。」
 ロアがソウマに言って、腰に提げていた棒を手にした。棒は両端から光の刃を発した柄だった。
「疾風双刃剣(しっぷうそうじんけん)・・・!」
 ロアが剣「疾風双刃剣」を構えて、リュウガの出方を伺う。
「お前も、オレの倒すべき敵だ、ロア・・!」
 リュウガが紅龍刃を構えて、ロアに向かって突っ込んだ。
「紅蓮紅龍閃(ぐれんこうりゅうせん)!」
 リュウガが斜めに紅龍刃を振りかざす。同時にロアが高速で動き、リュウガの一閃をかわした。
「速い・・今のリュウガさんの攻撃も速いけど、あのロアという人の速さは、目にも留まらないってほどだ・・・!」
 マーズがロアの高速に脅威を覚える。
 リュウガがロアの動きを追っていたときだった。彼は手足に痛みを覚えてそれに耐える。
(紅蓮態の負担とは違う・・ロアに攻撃されている・・・!)
 ロアの高速の攻撃を受けていることを痛感し、リュウガが毒づく。
(接近して攻撃してくるなら、吹き飛ばすまでだ・・!)
 リュウガが紅龍刃を地面に突き立てて、爆発のような衝撃を巻き起こした。ロアがリュウガから離れて、衝撃をかわした。
「その手で反撃してくることは予測していた。」
 ロアが冷静にリュウガの動きを読んでいく。
「パワーはお前たちが上だが、スピードはオレが上。決定打を与えられなくても、確実にダメージを与えていけばいい。」
 リュウガとの戦いの対策を口にするロア。
「それと時間を掛ければ、お前は負担に耐えられなくなり力尽きることになる・・」
 ロアが呟いた直後、リュウガの背中の赤い翼が消え始めた。
「リュウガさん!?」
 苦痛を浮かべるリュウガに、マーズが叫ぶ。
(紅蓮態の負担が大きくなってきた・・これ以上戦ったら、リュウガさんが危ない・・・!)
 紅蓮態のリスクを考えて、マーズが不安を募らせる。
「そろそろ限界のようだな。お前はその高い戦闘力を維持できなくなる。」
「この程度で音を上げるわけにいかない・・お前たちを倒すまでは、オレは倒れん・・・!」
 冷静に告げるロアに言い返し、リュウガが紅龍刃を構える。
「ムダな抵抗をしても死ぬだけだ。オレたちに従うなら、命の保証はする。」
「お前も理解のないヤツだな・・お前たちに従うくらいなら、死んだほうがマシだ・・!」
 忠告するロアだが、それでもリュウガは戦いを続ける。
「ならば死ぬがいい。ただしすぐには始末しない。オレたちに逆らったことを、十分に後悔させてからだ。」
 ロアが疾風双刃剣を構えて、リュウガにとどめを刺そうとする。
「ダメだ・・その人を傷つけちゃいけない・・!」
 マーズが見かねてリュウガを助けに向かう。だがソウマが彼の行く手を阻む。
「邪魔をしたらやっつけちゃうよ・・」
「ソウマさん、やめて!この戦いをやめさせて!」
 脅しをかけるソウマに、マーズが呼びかける。
「ソウマさん、あなたは戦いを止めるために世界を旅してきたんじゃないんですか!?それが逆に戦火を広げるようなことを・・!」
「別に戦いを止めたいわけじゃないよ。ただやりたいようにやっていただけ・・メフィストのために戦うのが、今の僕にとって喜ばしいことなんだよ・・」
 辛さを見せるマーズに、ソウマが自分の考えを口にする。
「敵との戦いを楽しんで、それを君が戦いを止めているのだと勘違いしてただけ。僕は僕の思うがままにやっていくだけだよ・・」
「そんな・・あなたが、そんな自分勝手な人だったなんて・・・!?」
 悠然と語っていくソウマに、マーズが絶望する。
「ホントの僕を知ったからって、邪魔したらいけないよ。」
「やっぱりダメだ・・争って傷付け合って、悲しみや苦しみが増え続けるのは・・・!」
 冷たく告げるソウマの前で、マーズが震わせる体に力を入れる。
「止めないと・・絶対に止めないといけない・・・!」
「リュウガに負けない力を持っている僕に、君が勝てるわけないじゃない・・」
 自分の意思を強く持つマーズを、ソウマが嘲る。
「それでも止めるんだ・・もう、僕が止めるしかない!」
 マーズが言い放ち、マルスカリバーを手にした。
「そんなにやられたいのか・・せめてちょっとくらいは楽しませてね・・」
 ソウマが呟いて、蒼天刃を構える。
「たとえソウマさんでも、戦いを広げるのは許さない・・・!」
 マーズがソウマに向かってマルスカリバーを振りかざす。
「遅いよ。」
 ソウマが高速で動いて、マーズとすれ違い様に蒼天刃を振りかざした。ソウマはマーズを切り裂いたと思った。
 次の瞬間、ソウマが背中に激痛を覚えて目を見開いた。マルスカリバーの一閃が、彼の背中を捉えていたのである。
「そんな!?僕の方が攻撃を食らうなんて・・!?」
 攻撃されたことに驚愕するソウマが、ふらついて地面に膝をつく。
「やめてください、ソウマさん・・戦いを続けても、何もいいことはありません・・・」
 マーズが言いかけて、マルスカリバーの切っ先をソウマに向ける。
「油断したよ・・君がここまで強力になっているとはね・・・」
 ソウマがマーズに振り向いて、悔しさを覚える。
「ソウマ!・・今回は引き下がったほうがよさそうだ・・・!」
 ロアがソウマの危機に毒づき、撤退することを決める。
「ロア・・僕はまだやられるよ・・」
「この続きは次の機会だ。」
 戦いを続けようとするソウマに近づいて、ロアが肩を貸す。
「しょうがないなぁ・・次こそやっつけてやるよ・・リュウガも、マーズも・・・」
 ソウマは不満を抱えたまま、ロアに連れられて去っていった。
「待て・・!」
 2人を追いかけるリュウガだが、紅蓮態になった反動が乗りかかり、思うように動けなかった。
「この姿をまだコントロールしきれていない・・いや、紅蓮態になっても、ヤツらに決定打を与えることができない・・・!」
 自分の力がソウマ、ロアに及ばないと思い、リュウガが悔しさを噛みしめる。
「ソウマさん・・どうして、こんなことに・・・!?」
 マーズもソウマが暗黒の銃剣士として行動していることに、絶望を感じていた。
 暗黒の銃剣士としての力を見せつけたソウマとロアが、リュウガとマーズの前に立ちふさがっていた。

 

 

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