GUNDAM WAR SD

-神魔の銃剣士-

第5章「2人の敵」

 

 

 仲間の敵討ちのための旅を続けるリュウガと、彼についていくマーズ。
 自分の意思を持って、その上で力を制御し使いこなす。リュウガにそう言われて、マーズはその心の在り方を考えるようになっていた。
(自分で答えを出さなくちゃいけないとしても、この人についていくほうがより効果的のはず・・)
 それでもリュウガについていくという考えを変えていないマーズ。
(それに、この人の命を奪いかねない戦いを止めないといけないし、この人のことをよく知らないといけない・・オータムのことも・・)
 争いを止めようとする意思も変えずに、マーズはリュウガやオータムと向き合おうとしていた。

 旅を続けるリュウガとマーズは、「ウインドワールド」の首都「サイクロンシティ」を訪れた。
「ここがサイクロンシティ・・風車を電力のメインとして栄えた街・・」
 マーズが街の景色を見渡して、戸惑いを感じていく。
「ここで情報収集しながら補給をする。次の戦いに備える。」
 リュウガも周りを見ながら、これからのことを告げる。
「ところで、あなたの仇だという人は誰なのですか・・?」
 マーズが彼に向けて疑問を投げかけた。
「その人が誰なのか、僕も知ったほうがいいのかなと思って・・・」
「そうだな・・お前にも一応言っておく・・・」
 マーズの考えを聞いて、リュウガは打ち明けることにした。
「オレの敵はソウマとロア。天神の銃剣士だったが、新しく暗黒の銃剣士に身を置いた2人だ。」
「ソウマって・・ソウマ・フリーダムガンダムのことですか・・!?」
 リュウガの話を聞いて、マーズが驚きの声を上げた。
「お前、知っているのか・・?」
「僕が住んでいたフレアワールドに来て、親切にしてくれたんです。1ヶ月くらい滞在していました・・」
 リュウガが聞いて、マーズが記憶を呼び起こして答える。
「ソウマさんは1人旅を続けていて、その途中でフレアワールドに立ち寄ったみたいなんです。いくつかの依頼を受けて、それをこなしていたんです。僕にもとても親切にしてくれたんです・・」
「そうか・・どうやらアイツは、少なくともそのときはまともな心を持っていたということか・・」
 マーズの話を聞いて、リュウガがひと息つく。
「出会ったときのソウマもそんな感じだった。ロアも真面目だったが、仲間思いのヤツだった・・だがヤツらは裏切った・・オレとオレの親友を・・・」
 語り掛けるリュウガが苛立ちを浮かべる。
「ヤツらはオレたちを罠に陥れた・・大きな戦いが終わって体力を消耗していたところを狙って、部下を引き連れて不意打ちを仕掛けてきた・・」
「そんな!?あのソウマさんがそんなひどいこと、するわけがないです!」
「だが奇襲をされたのは事実だ。そのためにオレたちは深手を負い、親友はオレを庇って力尽きた・・・」
「あの人が・・本気でそんなことを・・・!?」
 リュウガの話が信じられず、マーズが困惑する。
「お前のよく知るアイツが、何かで考えを変えてしまったのか、それとも表向きでしかなかったのか・・どちらにしても、アイツらがオレの全てを奪った・・・!」
「だからあの人を敵として追ってきたんですか・・・」
 リュウガが話を続けて、マーズが困惑していく。
「やっぱり話し合って分かり合った方がいいですよ!・・相手がソウマさんなら、なおさらそうしたほうが・・・!」
「そんな考えが通じる相手ではない・・ヤツらは相手の話を聞こうとはしない・・聞いたつもりになって、自分の考えを押し付けるだけだ・・・!」
「それじゃどちらかが傷つくことになってしまいます・・!」
「ならば会ったときに止めに入るんだな・・アイツらには、他のヤツの言葉は届きはしない・・」
 制止を持ちかけるマーズに、リュウガが冷たく告げる。
「そんなはずはない・・ソウマさんが、悪いことをするなんて・・・!」
 マーズは納得ができず、ソウマを信じようとする。
「遅かれ早かれ、ヤツらはオレを狙って必ず現れるはずだ。だがオレは待たずに、ヤツらを倒しに行く・・・!」
 リュウガが言いかけて、ソウマとロアへの憎しみを募らせる。
「あなたはそこまで憎いということですか・・でも相手の1人はソウマさんなんです・・・!」
 マーズは困惑して体を震わせていく。
「お前が妨害する可能性がある。だからオレは今よりも強くなる・・紅蓮態も、自由自在に使いこなしてみせる・・・!」
 リュウガが力を求めて、両手を強く握りしめた。
「どうしてもオレたちを止めるつもりでいるなら、オレから離れないことだな・・」
 リュウガがマーズに告げて、再び歩き出した。
「そうだ・・僕が止めなくちゃ・・そのために強くならないと・・・」
 リュウガの戦いで被害が出るのを止めること、ソウマに真意を聞き出すことを、マーズは心に決めていた。

 リュウガとマーズがサイクロンシティに入ったのを、彼らの監視をしていたザクナイトが確認した。
「紅蓮の銃剣士を発見しました。サイクロンシティにいます。」
“分かった。引き続き監視を続けろ。”
 通信で報告するザクナイトに、ロアが命令する。
(あのお二方のため・・そのお二方が仕えるあのお方のために・・・)
 ザクナイトが忠誠心を強くして、リュウガたちの監視を続けた。

 リュウガは暗黒の銃剣士に関する情報を、サイクロンシティにいる人たちに聞いて回った。しかしある人は情報を持っておらず、ある人は暗黒の銃剣士を恐れて答えずに逃げ出した。
「みんな、暗黒の銃剣士や戦争を恐れているみたいですね・・」
 マーズがリュウガに言って、肩を落とす。
「どこかに手がかりはあるはずだ。小さなことでも、必ず誰かが手がかりを持っているはずだ・・」
 リュウガは諦めず、ソウマたちを追い続ける。
「リュウガさん、今日はもう休みましょう。ここに着いてから休憩もしていません・・」
 マーズが疲労を感じて、リュウガに呼びかける。
「泊まる場所を確保する。お前はそこで休んでいろ。オレだけで聞いて回る。」
「そ、そういうわけにはいきませんよ!もしソウマさんを見つけたら、あなたはすぐに戦うはずです!」
 リュウガが口にした言葉に、マーズが反論する。
「そういうなら、お前は休まずにオレについてくるしかないようだな・・」
 リュウガが言いかけて、周囲を伺う。
「この人は本当に、復讐を果たしたいと思っているんだね・・そうしないと我慢ができないくらいに・・・」
 憎しみに突き動かされているリュウガに、マーズは困惑していた。
「おい、お前ら・・いつまでもこの街をウロウロして嗅ぎ回ってんじゃねぇぞ・・!」
 そこへ3人の男たちが現れて、リュウガたちを挟み撃ちにしてきた。
「何だ、お前たちは?オレに何か用か?」
「オレたちはハンブラビ3兄弟!この街でふざけたマネをするヤツは許さねぇぞ!」
 問いかけるリュウガに男たち、ハンブラビ3兄弟の1人が言い放つ。
「もしかしたら暗黒の銃剣士の一味かもしれねぇ!」
「アイツらにここを荒らされたんじゃ、たまったもんじゃねぇぜ!」
 ハンブラビ兄弟の2人が、リュウガたちに疑いを向ける。
「違います!僕たちは暗黒の銃剣士じゃありません!」
 マーズが慌てて弁解をする。
「うるせぇ!嗅ぎ回ってるヤツの言うことが信じられるか!」
「口ではなく体から聞き出してやるよ!」
 ハンブラビたちは聞かずに、リュウガたちに襲い掛かろうとする。
「オレに戦いを挑むなら、命懸けになることを覚悟しろ。軽はずみな考えで仕掛けてくるなら、後悔することになるぞ・・」
 リュウガが忠告して、ハンブラビたちに鋭い視線を向ける。
「コイツ、どこまでもいい気になりやがって・・!」
「だったらオレたちの力を思い知らせてやるぜ!」
 ハンブラビたちがいきり立ち、散開してリュウガたちを包囲する。
「ダメですよ!話し合いもせずにこんな・・!」
 マーズが必死にリュウガとハンブラビたちを止めようとする。しかしハンブラビたちは敵意を消さない。
「この3人も説得できないのでは、言葉で戦争を止めることなどできるはずもない・・」
「そんなことはないです!そんなことは・・!」
 ため息混じりに言うリュウガに、マーズが言い返す。
「今度はゴチャゴチャとおしゃべりか・・どこまでもなめてんじゃねぇぞ!」
 ハンブラビたちが苛立ちを膨らませて、一斉にリュウガに飛び掛かる。リュウガが地面を強く踏んで、衝撃を巻き起こした。
「うわっ!」
「な、何っ!?ぐわぁ!」
 衝撃でマーズが上空へ跳ね上げられ、ハンブラビたちが吹き飛ばされる。
「くそっ!なんてヤツだ・・!」
「力はとんでもねぇぜ、アイツ!」
 ハンブラビたちがリュウガへの警戒を強める。
「怯むな!オレたちが息を合わせれば、どんなヤツも度肝を抜くぞ!」
 ハンブラビの1人が檄を飛ばして、他の2人が頷く。3人はリュウガを再び包囲して、周りを旋回する。
「パワーがそっちならスピードはオレたちだ!」
「隙を突いて攻撃を当ててやるよ!」
 ハンブラビたちが言い放ち、高速で動きながらワイヤーを伸ばした。ワイヤーがリュウガの体に巻き付いた。
「これで手も足も出ないぞ!」
 ハンブラビが言い放ち、他の2人もあざ笑う。
「リュウガさん!」
 マーズが叫んで、全身に力を入れる。感情に突き動かされて、彼は力を出そうとしていた。
(ダメだ・・また力を使ったら、今度こそリュウガさんを傷つけてしまう・・そんな力の使い方をしたらダメなんだ・・・!)
 争いや悲劇を増してはならないと自分に言い聞かせて、マーズは力を抑えていく。
「動けなければ反撃もできまい!身の程を思い知るんだな!」
 ハンブラビたちが腕に装備しているビームガンを構えて、一斉に発射した。
「この程度では、銃剣を使うまでもない・・・」
 リュウガが両腕に力を入れて、ワイヤーを断ち切った。彼は続けて地面を強く踏みつけて、土煙を舞い上げてビームを阻んだ。
「バカな!?・・オレたちのチームワークが通じないだと・・!?」
 ハンブラビたちがリュウガの力に脅威を感じて、動きを鈍らせる。
「これ以上戦うというなら、オレは容赦なくお前たちを倒すことになる・・・!」
 リュウガが忠告して、ハンブラビたちが気圧されて抵抗できなくなる。
「オレはある2人の銃剣士を捜しているだけだ。暗黒の銃剣士に成り下がった2人を・・」
「お前が、暗黒の銃剣士じゃないのかよ・・・!?」
 自分のことを口にするリュウガに、ハンブラビが声を荒げる。
「ソウマ、ロア。この2人を知っているか?」
「ソウマ?ロア?その名前はこっちでは聞かねぇ・・」
 リュウガに問われて、ハンブラビの1人が首をかしげて、他の2人も分からなかった。
「そうか・・ならば他を当たるまでだ・・・」
 リュウガがため息をついてから、ハンブラビたちの前から歩き出す。
「待ってくれ!オレたちも連れてってくれ!」
 するとハンブラビの1人がリュウガにお願いをしてきた。
「アンタの強さに惚れたッス!アンタのためなら何だってする!だから、オレも連れてってくれ!」
「ちょっと待った!オレたちはこの街を守るって決意しただろ!それをほっぽってどっか行くわけにいかねぇだろ!」
 彼をもう1人のハンブラビが呼び止める。
「だけど、こんなにすげぇヤツ、他に会えるかどうか分かんねぇよ!」
「だからって、この街のことを見捨てるわけにいくか!オレたちがいたから、この街は今も平和でいられるんだぞ!」
 リュウガにすがろうとするハンブラビを、他のハンブラビが説得する。
「3人でここを守ってるならそうしろ。オレはオレの目的のために行動している。他のヤツを引っ張り込もうとは思っていない。」
 リュウガは背を向けたままハンブラビたちに告げる。
「一緒にいれば死ぬかもしれない。命が惜しいならオレについてくるな。」
 リュウガがハンブラビたちに警告して、改めて歩き出した。
「リュウガさん、待ってください!」
 マーズが慌ててリュウガを追いかけていった。
「置いてかれちまった・・すっかり憧れ抱いちまったっていうのに・・・」
 ハンブラビの1人が落ち込んでため息をつく。
「アイツが強くて憧れるのは分かるけど、オレたちはオレたちの意思で、ここで戦うことを決めたんだ。そっちは諦めるしかねぇ・・」
「アニキ・・そうだな・・自分で決めたことを、自分で曲げるわけにいかねぇよな・・・」
「これからもオレたち3人で、この街を守っていくぞ!ここはここに住むヤツらのものなんだからな!」
 ハンブラビたちが気持ちを1つにして、サイクロンシティを守っていくことを改めて誓った。
「いいね。3人とも仲良しで。」
 そこへ声を掛けられて、ハンブラビたちが振り返った。彼らの前に現れたのはソウマだった。
「何だ、お前は?さっきのヤツらの仲間か?」
 ハンブラビがソウマに対して疑問符を浮かべる。
「そうだね・・でも、元友達、だけどね・・」
 ソウマが呟いて、腰にある銃剣「グロームビームガン」を手にして、銃の「ガンモード」にした。
「何だ、テメェは!?」
「テメェがこの街を荒らしに来たってヤツか!?」
 ハンブラビたちが目つきを鋭くして、ソウマに向けてビームガンを構えた。
「そんなんじゃ僕の遊び相手にもならないよ・・・」
 ソウマが呟いて、グロームビームガンで速射して、ハンブラビたちのビームガンに当てた。
「ぐっ!な、何だと!?」
「テメェ、いったい何モンだ・・!?」
 ハンブラビたちが痛みを感じながら、ソウマを問い詰める。
「僕はソウマ。今は暗黒の銃剣士に属しているよ・・」
 ソウマが自己紹介をして微笑む。
「お前が暗黒の銃剣士の1人!?」
 ハンブラビたちが息を呑んで、再びビームガンを構える。
「同じことばかりじゃ飽きちゃうよ・・」
 ソウマがため息をついてから、グロームビームガンを振りかざしながら連射した。大量に放たれた光の球が、ハンブラビたちを取り囲んだ。
「おいおい・・何なんだよ、こりゃー!?」
 ハンブラビたちが驚愕すると同時に、ソウマがグロームビームガンを振りかざした。光の球が一斉にハンブラビたちに向かって突っ込んだ。
「ギャアッ!」
 光の球の衝突と爆発で、ハンブラビたちが絶叫を上げて倒れた。
「すぐに終わっちゃったね。まぁ、準備運動には丁度いいかな。」
 ソウマがハンブラビたちを見下ろして笑みをこぼす。
「こんなところでムダな時間を費やして・・」
 ロアがソウマに追いついて声をかけてきた。
「だって待ち切れなくなっちゃって・・」
「またお前の気まぐれか・・お前のそれには困ったものだ・・・」
 笑みをこぼすソウマに、ロアが呆れる。
「それより、もうすぐリュウガに会えそうだよ。」
「またオレたちが目撃したわけではない。早く見つけ出すぞ。」
 期待を感じていくソウマに、ロアが真剣な表情のまま言いかける。
「慌てなくていいよ。見張りが今もチェックしてるから・・」
 ソウマが笑みをこぼして歩き出し、ロアが肩を落としてからついていった。

 ソウマたちに関する情報集めを続けていたリュウガ。その最中、彼は人気のない広場に来て足を止めた。
「どうしたんですか?ここには人はいないですよ・・?」
 マーズが周りを見回して、リュウガに問いかける。
「誰かがオレを見張っているな・・」
「えっ・・・?」
 リュウガが口にした言葉に、マーズが疑問符を浮かべる。
 リュウガが左腕を振りかざして衝撃波を放った。その先にある壁が爆発して、その裏からザクナイトが飛び出した。
「オレのことをずっとつけていたな?何を狙っている?」
「し、しまった・・見つかった・・・!」
 リュウガが振り返り、ザクナイトが慌てて逃げ出す。リュウガが再び腕から衝撃波を出して、ザクナイトが行く手を阻まれる。
「何を企んでいるのか、話してもらおうか・・」
 リュウガがザクナイトに近づいて問い詰める。
「オレは命令されただけだ・・お前を見張れとな・・・!」
 ザクナイトが緊迫を感じながら答える。
「見張れ?命令してきたのは、ソウマたちか・・・!?」
 リュウガが目つきを鋭くして、ザクナイトをつかみ上げる。
「その通りだよ、リュウガ。」
 そこへ1発の光の球が飛んできて、リュウガがザクナイトから手を放して回避した。彼らの前にソウマとロアが姿を現した。
「出てきたか・・ソウマ・・ロア・・・!」
 リュウガがソウマたちに視線を映し、憎悪を募らせて手を握りしめる。
「ソ、ソウマさん・・・!?」
 マーズがソウマを見て驚きを隠せなくなる。リュウガとソウマの対立を目の当たりにして、マーズは困惑していた。

 

 

第6章へ

 

作品集に戻る

 

TOPに戻る

inserted by FC2 system