GUNDAM WAR SD

-神魔の銃剣士-

第4章「銃剣の交錯」

 

 

 リュウガとオータムを捜し続けるマーズが、疲れと共に焦りを増していく。
「どこにいるんだ!?・・早くしないと、2人は・・・!」
 マーズが不安を増して、痛みの出ている足を動かす。
 そのとき、爆発のような音を耳にして、マーズが振り返った。
「この音・・まさか、2人が戦いを始めたんじゃ・・・!?」
 不安を一気に増したマーズが、音のした方へ走り出した。

 オータムと戦い倒すことを決めたリュウガ。彼は飛び掛かり、紅龍刃を振り下ろしてきた。
 オータムがオータムリボンを剣の形にしてから、紅龍刃を回避した。しかし紅龍刃が地面に当たった衝撃に押されて、彼女が体勢を崩す。
 リュウガがオータムを見逃さず、紅龍刃を横へ振りかざす。紅龍刃がオータムが掲げたオータムリボンを打ち破った。
「キャッ!」
 オータムが突き飛ばされて、地面に叩きつけられた。体に痛みを感じて、彼女は起き上がることができない。
「直撃じゃないのに・・ここまでダメージが・・・!」
 苦痛を感じながら顔を上げるオータム。彼女のそばまでリュウガが近づいてきた。
「命を懸ける戦いだと分かって挑んできたんだ。とどめは刺させてもらう・・」
 リュウガが告げて、紅龍刃を振り上げる。
(死にたくない・・死ぬわけにいかない・・死んでたまるもんか・・・!)
 オータムが抗おうとして、力を振り絞る。
「最後の警告だ・・行きたければ退け・・戦おうとするなら死ぬ覚悟をしろ・・言葉ではなく、行動で決めろ・・・!」
 リュウガが言って、紅龍刃を持つ手に力を入れる。
「あたしはアンタを倒す・・あたしが選ぶのは、それだけだよ!」
 オータムが言い放って、自ら飛び込んでリュウガに組み付いた。直後に彼女はオータムリボンを伸ばして、自分と一緒に巻きつけた。
「これで剣も使えない!攻撃はできないよね!」
 オータムが笑みを浮かべて、オータムリボンに力を込める。オータムリボンの光のリボンが、輝きを強めていく。
「これがあたしの最後の手段・・あたしも巻き添えだけど、絶対に逃がさず確実に倒す切り札・・・!」
「力を膨らませて自爆する技か・・確かによけられないが、力の差がありすぎれば確実に倒せるとは言えないな・・」
「あたしの底力を甘く見ないでよね・・こうなった以上、アンタはあたしに確実に倒される!」
「オレは倒れるわけにいかない・・オレの敵を討つまでは、死ぬわけにはいかない・・・!」
 勝利を確信するオータムに対し、リュウガが力を振り絞る。
「どんなに抵抗しても、もうアンタは終わりなんだから!」
 オータムが言い放ち、オータムリボンに力を込める。オータムリボンの輝きがまばゆいものとなる。
(これで報われる・・兄さんは安心して眠れる・・・あたしも・・・)
 敵討ちが成功したと思い、オータムが安らぎを感じた。
「ダメだ、2人とも!」
 そのとき、マーズがリュウガたちを見つけて駆け込んできた。
「戦いをやめるんだ!話し合いで解決することだってできるはずだよ!」
「邪魔しないで!これはあたしの敵討ちなんだから!」
 呼びかけるマーズにオータムが反発する。
「こんなことをして、君の兄さんは喜ぶの!?兄さんもこれを望んでるの!?」
「分かったようなことを言わないで!そうしないと兄さんは犬死になってしまう!そんなの、絶対に耐えられない!」
 マーズからの説得に対し、オータムが怒りを募らせていく。
「大切な人が殺されたからって、争いを広げたり誰かの命を奪ったりしていいことにはならない!」
 マーズは対決を止めようとして輝きを増していくオータムリボンをつかんだ。
「うぐっ!」
 オータムリボンに込められた力で熱さのような痛みを感じて、マーズがうめく。しかし彼はリボンから手を放さずほどこうとする。
「何やってんの!?離れないと巻き添えになるよ!」
「2人を放っておくことは、僕にはできない!」
 叫ぶオータムの言うことを聞かずに、マーズが強引にオータムリボンを破ろうと力を込める。
「離れなさいって!ホントにアンタも死ぬことになるよ!」
「2人を見捨てて僕だけ生きているよりはマシだよ・・でも2人が助かって、僕も生きる!」
「バカなことだね・・でもそれでやめるほど、あたしのコイツへの怒りは軽いもんじゃない!」
「それでもこんなこと、2人のためにならない!」
 リュウガへの怒りを見せるオータムに言い返して、マーズが力を振り絞る。体から光があふれ出した彼が、オータムリボンを引っ張っていく。
「やめなさい!リボンが爆発する前に手が切れるよ!」
 オータムが注意するが、それでもマーズは手を放さない。
「この力・・また、あのときの高い力を・・・!」
 リュウガがマーズの潜在能力を感じ取り、緊張を覚える。
「本気でオレたちを止める気か・・止めることしか頭にないようだ・・・!」
 リュウガが危機感を覚えて、自分の力を振り絞る。
「オレは誰にもやられはしない・・こんなところで倒れるわけにはいかない・・!」
 言い放つリュウガの背中から赤い翼が広がり、オータムリボンの光のリボンを破った。炎が燃えるような形の翼である。
「ち、ちょっと・・何なの、その姿・・!?」
 オータムがリュウガの姿を見て驚愕する。
「本当はヤツらと戦うときに見せたかったが・・ここで倒れるくらいなら・・・!」
 リュウガが今の自分の姿について口にする。
「これはオレの切り札、“紅蓮態(ぐれんたい)”。持てる力の全てを引き出すことができる・・」
「紅蓮態・・この人の真の力・・・!」
 リュウガの見せた紅蓮態を目の当たりにして、マーズが緊迫を募らせる。
「まだそんな力を隠してたなんて・・あたしに手加減してたなんて・・どこまでふざければ気が済むの、アンタは・・!?」
 オータムがリュウガへの苛立ちを膨らませていく。
「これは負担が大きい。使い方を間違えれば自滅するほどに・・これを使うときは、使わないと死んでしまうと判断したときだけだ・・」
 紅蓮態のリスクについても告げるリュウガ。彼にとって紅蓮態は最後の手段である。
「オレの邪魔をするな・・すぐに逃げるなら追わないが、邪魔をするなら今のオレが息の根を止める・・・!」
 リュウガが忠告して、紅龍刃を振り上げた。彼が送る殺気に気圧されて、オータムが反論できなくなる。
「そんなことをしたらダメだよ・・争いをしたら、悲しみや苦しみが増えてしまう・・・!」
 マーズはリュウガを止めようとして、マルスカリバーを手にした。
「それでもオレの邪魔をするというのか・・戦いを恐れていたお前が、ここまでになるとは・・」
 リュウガがため息をついてから、マーズに鋭い視線を向ける。それでもマーズは退かず、リュウガを止めようとする。
「ならば、お前はオレに倒されることになる・・・!」
 リュウガがマーズを狙い、紅龍刃を振り下ろした。嵐のように飛ぶ赤い光の刃に、マーズが襲われた。
 力を高めたマルスカリバーで一閃を止めたものの、マーズは押されて地面を激しく転がった。
「なっ!?」
 リュウガの放った一撃と、それによって削れた地面を目の当たりにして、オータムが愕然となる。
「ここまでの力と威力・・いくらあたしでも、ここまでの力はさすがにないって・・・!」
 オータムがリュウガの本当の力に敵わないと痛感し、戦意を揺さぶられる。
「この紅蓮態の一撃でも倒し切れなかった・・やはりコイツの潜在能力は高い・・・!」
 倒れているマーズを見つめて、リュウガが毒づく。彼は紅蓮態から元に戻り、紅龍刃を背中に収めた。
「オレでもお前を倒すには至らなかった・・お前の力の高さが、オレを食い止めたんだ・・」
「ぼ・・僕が・・争いを止めたの・・・?」
 リュウガが投げかけた言葉に、マーズが戸惑いを覚える。
「お前と戦っては共倒れになる可能性が高い・・今は戦いはしない・・」
 マーズと戦えば致命的なダメージを負いかねないと思い、リュウガは今は戦わないことを決めた。
(オレも、もっと強くならないといけないようだ・・・)
 全力のマーズを確実に超える力を持たなければならないと、リュウガは心の中で自分に言い聞かせた。
「これで勝ったと思わないことね、紅蓮の銃剣士・・アンタはあたしが必ず倒すから・・・!」
 オータムが捨て台詞を吐いて、リュウガたちの前から去っていった。
(オレは認識している相手に、自分の意思でとどめを刺そうとはしなかった。だがオレの気が付かないうちに誰かの命を奪ったかもしれないことは否定できない・・おそらくあの女の兄は、その中でオレがやったかもしれない・・・)
 自分の過去を振り返り、罪の意識を覚えるリュウガ。
(いつかは償いとして向き合わなければならない・・だが今は、ヤツらを討つのがオレのやるべきことだ・・・!)
 自分の意思を曲げない彼は、意識を失ったマーズを見下ろす。
 敵を倒すためにもさらに強くならなければならない。紅蓮態も今以上に使いこなさないといけない。リュウガはそう思っていた。

 力を消耗して意識を取り戻したマーズ。彼の近くにリュウガもいた。
「あなたは・・今回は一緒にいてくれたんですね・・・」
 体を起こしたマーズがリュウガを見て、戸惑いを覚える。
「気が付いたか。回復も思っていたよりも早いようだ・・」
 リュウガがマーズに目を向けて声をかける。
「あの・・僕が邪魔したこと、怒っていますか・・・?」
 マーズが困惑しながら、リュウガに聞く。
「そんなことを聞くなら、最初から邪魔をするな・・」
「すみません・・でも、争いを止めなくちゃいけないって思ったら僕、無我夢中になって・・・」
 不満げに言うリュウガに、マーズが謝る。
「度胸があるのかないのか、分からないヤツだ・・・」
 彼の答えを聞いて、リュウガがため息をつく。
「お前の力を見て、オレもまだまだ甘いと思った。もっと強くならなければと思った・・」
「そうじゃないです・・ただ力を上げても、争いが広がったら悲しみが増えるだけです・・話し合いでも解決することはできるはずですよ・・」
「それが通じる相手ではない。オレもオレの敵も・・あのオータムという女も、言葉では止められなかった・・」
「それは・・・!」
 言葉で動じないリュウガに言われて、マーズが言葉を詰まらせる。
「言葉や思いだけでは何かを成し遂げることはできない。それができるなら、オレたちは何でもできてしまうからだ。」
「だから争いは間違っていないというのですか!?悲しみが増えるのがいいことだというんですか!?」
「戦いそのものは間違いではない。戦いによって悪いことが起こる。それが間違っているのではないのか?」
「悪いことが間違っている・・・」
 リュウガの投げかけた言葉に、マーズは戸惑いを感じていく。
「お前は世界の中で何をしようと考えているのか。その覚悟があるのか。自覚はできているか・・?」
「僕はただ、争いがイヤで・・それだけで・・・」
 リュウガに問われて、マーズは困惑を募らせる。マーズはリュウガやオータムのように自分の考えを貫き通そうとする意思が持てていないと思っていた。
「そのような半端な心構えで、オレに全力を出させたとはな・・」
 マーズの答えを聞いて、リュウガがため息をつく。
「このまま戦いをやめれば、敵に屈することになる・・オレはオレでなくなる・・」
「それでも、その戦いは悲しみを広げることに・・・」
「お前も強情なヤツだ。言葉で解決しようとしているのに、言葉を聞かない・・支離滅裂なことだな・・」
「そんな・・そんなことは・・・」
 肩を落とすリュウガに、マーズが動揺を見せる。
「お前が求めていたのは、力を高めることではない。自分の意思を力と合わせて貫き通すことだ・・」
「僕の意思を貫く・・でも、話し合いをしなくちゃ、意味がないですよ・・・」
「そのためにお前は何をした?ただやめろというだけなのか?駄々っ子のように言い張るだけか?感情に身を任せて、力に振り回されるままに剣を使うだけか?」
「そんなことはない!僕は本気で、争いがイヤなんですよ!」
 リュウガから問い詰められて、マーズが感情をあらわにする。
「ならばその意思を貫け。自分を見失わず、確固たる自分の意思で・・」
「僕の、確固たる意思・・・」
「戦いを止めるために戦う・・矛盾したことだが、それがお前の戦い方ではないか・・?」
「戦いを止めるために戦う・・僕がやろうとしていたのは、それなのでしょうか・・・?」
 リュウガに指摘されて、マーズが自分の気持ちを確かめていく。
「強くなりたいなら、まずはお前の中にある力を制御してからだ。見境なしに力をぶつけるようでは話にならない・・」
「あの強い力を思うように使わないといけない・・でも、それはどうやって・・・?」
「それは自分で見極めろ。自分に課せられた問題を乗り越えられるのは、自分だけだ。他のヤツがどれだけ手助けしたとしてもだ。」
「そんな・・・」
 リュウガから厳しく言われ、マーズが落ち込む。
「オレは暗黒の銃剣士として戦ってきたが、オレの意思を捨てていたとは思っていない。オレ自身が決めて、戦いを続けてきた・・」
「やっぱりあなたは、暗黒の銃剣士だったんですね・・それでたくさんの人の命を・・・」
「他のヤツらはどうだったか知らないが、オレはオレの認識している範囲では、とどめを刺すようなことはしていなかった。少なくとも抵抗する意思や力が残っていないヤツにはな・・」
「それじゃもしかしたら、オータムさんのお兄さんを殺していないかもしれないと・・・?」
「それは、詳しく調べる必要があるな・・そうすればアイツも思い知るはずだ・・」
「そう簡単な話じゃないみたいだけど・・・」
 オータムのことも気にするリュウガに、マーズは複雑な気分を感じていた。

 リュウガとの戦いから引き上げたオータムは、力の差を思い知らされ、屈辱を感じていた。
「紅蓮の銃剣士、あそこまで強かったなんて・・・!」
 リュウガの紅蓮態の力を痛感し、オータムが体を震わせる。
「もっと強くならなくちゃ・・もっと強い技も編み出さなくちゃ・・・!」
 彼女はリュウガを超える決意を強くして、備えることにした。

 リュウガが動き出したことを、青と赤の銃剣士が部下の報告で耳にしていた。
「リュウガの居場所が分かったみたいだね・・」
「相変わらず戦いに明け暮れているようだ・・」
 青と赤の銃剣士がリュウガのことを考える。
「そろそろ体を動かしたくなってきたよ・・この力を全力で試す相手がいなくてね・・」
 青の銃剣士が腕を動かして、リュウガのいるところへ出向こうとする。
「オレではお前の相手にならないと思っているのか?」
「仲間の君と全力で勝負するなんてできないよ。傷つけてしまったら大変だ。」
「気遣ってくれていると思っておこうか・・」
「ありがとう。僕も嬉しいよ。」
 赤の銃剣士がため息混じりに答えて、青の銃剣士が笑みをこぼす。
「というわけで行ってくるよ。君も行く、ロア。」
「もちろんだ。お前だけでは何をするか分からないからな、ソウマ。」
 青の銃剣士、ソウマ・ストライクフリーダムガンダムと赤の銃剣士、ロア・インフィニットジャスティスガンダムが声を掛け合う。2人はリュウガと戦うため、戦線へ赴いた。

 

 

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