GUNDAM WAR SD

-神魔の銃剣士-

第3章「復讐の矛先」

 

 

 突如戦いを挑んできたオータム。彼女を迎え撃つリュウガが、紅龍刃を構える。
「あなた、本気でその子を倒すつもりなんですか・・・!?」
 彼のこの行動に、マーズが目を疑う。
「オレに牙を向けるもの、オレの行く手を阻むものは、老若男女関係なく倒すまでだ。」
「そんな考えを持ってても、あたしがアンタを倒すことに変わりはないよ!」
 言いかけるリュウガに向けて、オータムがオータムリボンを伸ばす。リュウガが紅龍刃を振りかざして、リボンを切り裂いた。
「あたしのリボンを、簡単に切るなんて!?」
 リュウガの圧倒的な力を目の当たりにして、オータムが驚愕する。
「それでも、あたしは負けない!兄さんの仇、必ずとる!」
 オータムは諦めずに、オータムリボンを剣の形にして、またもリュウガへ飛びかかる。
「ダメだ!これ以上戦ったら、君が・・!」
 マーズが呼び止めるが、オータムは止まらずにオータムリボンを振りかざす。リュウガが紅龍刃に力を入れると、その刀身に当たったオータムリボンが折れた。
「このっ!」
 オータムが折れたオータムリボンを振り下ろす。リュウガが紅龍刃を振り上げて、彼女を吹き飛ばした。
 オータムが地面に叩きつけられて、仰向けで倒れて気を失った。
「君、大丈夫!?」
 マーズがオータムに駆け寄って、支えて心配する。
「その女もそれなりの力はあるようだ。気絶程度で済むとは・・」」
 リュウガがオータムの強さを理解する。
「いくら向こうから攻撃してきたからって・・ここまでやるなんて・・・」
「納得できないか?ならば大人しくやられれば満足するのか?」
 不満を浮かべるマーズに、リュウガが問いかける。
「オレは自らやられようとは思わない・・大人しくやられるのは、生きることを諦めるのと同等だからな。」
「そうじゃなくて・・倒さずに止めることだってできるはずですよ・・!」
「攻撃を止めるだけで戦いは止まらない。甘い考えは自分の首を絞めるだけだ・・」
「戦いが止まらないなんて・・そんなことないです!そんなこと・・!」
 考えを変えないリュウガに、マーズが愕然となる。
「ま・・まだよ・・あたしは、絶対に負けない・・・!」
 オータムが目を覚まして、力を振り絞って起き上がる。
「往生際の悪いヤツだ・・勝つか死ぬかのどちらかがいいとでもいうつもりか・・・?」
 リュウガがため息をついて、紅龍刃を構える。
「ムチャだよ!力の差があるのは、君も分かっているはずだ!」
「邪魔しないで!あたしは兄さんの仇を討たなくちゃいけないの!」
 マーズが呼び止めるが、オータムは戦いをやめようとしない。
「そこをどけ。巻き添えになりたいのか?」
 リュウガがマーズに言って、紅龍刃を動かして引き下がるように促す。
「そうよ!これはあたしが、アイツを倒す戦いなんだから!」
 オータムがマーズを横に突き飛ばしてから、リュウガに飛び掛かる。
(止めないと・・そうしないと、取り返しのつかないことになってしまう・・・!)
 リュウガとオータムの対立に、マーズが不安を募らせる。
(でも、僕の力でリュウガさんを止めるなんて・・・でも、僕がやるしかない・・・!)
 意を決したマーズが、左の腰にある武器を右手で持った。
(僕の・・僕の持てる力で、2人を止める・・・!)
 マーズが力を込めると、武器から光の刃が現れた。
 マーズの銃剣士としての剣「マルスカリバー」。普段は柄だけだが、彼が力を込めることで光の刀身が現れる。
「やめろー!」
 マーズが叫び、力任せにマルスカリバーを振り下ろす。マルスカリバーの刀身が大きくなり、リュウガとオータムの間の地面に叩きつけられた。
「えっ!?」
 割って入ってきたマルスカリバーを目の当たりにして、オータムが驚く。
「この力・・あの剣・・紅龍刃をも上回る威力だ・・それをアイツが・・・!?」
 リュウガもマルスカリバーに対して脅威を感じていた。マルスカリバーの刀身が消えて、マーズが疲れてその場に膝をついた。
(ものすごく疲れた・・しばらく使ってなかったからかな・・・)
 呼吸を乱すマーズが心の中で呟く。彼はマルスカリバーをしばらく使っておらず、剣の鍛錬も木刀などでしていた。
「お前、これほどの力を持ち合わせていながら、強くなるためにオレについていこうとしていたのか・・・?」
 リュウガがため息混じりにマーズに問いかける。
「僕、ここまで強い力を出せるはずは・・戦うことをよく思っていない僕が、こんな・・・」
 自分の力に疑問を感じていくマーズが、体を震わせる。これは体力の消耗ではなく、自分の力に対する恐怖によるものだった。
「ちょっと!邪魔しないでよ、あたしたちの敵討ち!」
 オータムが怒鳴って、マーズに詰め寄る。
「このまま戦い続けたら、どちらかが死ぬことになる・・そんなのはダメだ・・・」
「あなたもふざけないで!アイツを倒さないと、兄さんは浮かばれないんだから!」
「そうやって争いを広げても、悲しさや辛さが広がるだけだ・・君だって、その人の仲間や家族から恨まれることになる・・・!」
「それで兄さんを殺されたのを忘れろって言うの!?冗談じゃないよ!」
 戦いをやめるように言うマーズだが、オータムは聞こうとしない。
「それにアイツには、家族や仲間といったものはないよ・・暗黒の銃剣士の1人なんだからね!」
「えっ・・!?」
 オータムが告げたことに、マーズが耳を疑う。
「あなたが、暗黒の銃剣士!?・・・でも、暗黒の銃剣士の兵士たちと対立して、倒したんだよ・・僕はちゃんと見ていたんだ・・・!」
「そう言われても、ホントのことだよ!コイツが他の銃剣士と一緒に、あたしたちの住んでた町に来て襲って、あたしたちを守ろうとした兄さんが・・!」
 反論するマーズに、オータムがリュウガを指さして語っていく。
「だとしたら、どうしてあのとき、同じ暗黒の銃剣士と対立したんだ!?・・仲間割れって感じじゃなかった・・・!」
 マーズがリュウガに疑問を投げかける。
「暗黒の銃剣士は今はオレの敵だ。倒すことに何の躊躇いもない。」
 リュウガが低い声で言い返す。
「それじゃアンタ、暗黒の銃剣士を裏切ったっていうの・・!?」
「オレがヤツらを裏切ったのではない。ヤツらがオレを裏切ったのだ・・・!」
 オータムが聞いて、リュウガが言い返して、紅龍刃を持つ手を握りしめる。
「オレはオレの倒すべき敵を倒すために戦う・・邪魔をするなら、誰だろうと容赦しない・・・!」
「それで、兄さんを殺したことが許されると思ってるの!?アンタのことは、絶対に・・!」
 自分の意思を口にするリュウガに、オータムが怒りを膨らませてオータムリボンを構える。
「やめろと言っているのが・・分からないのか!」
 激高したマーズが再びマルスカリバーから光の刃を発した。その力の大きさを感じ取り、リュウガもオータムも戦意を揺さぶられる。
「ヤツはオレたち以上の力を持っている・・しかしその力をまだ制御できていないようだ・・・」
 マーズの力の大きさと現状を理解したリュウガが、紅龍刃を背中に戻した。
「どういうつもり!?何で剣を収めるの!?」
 オータムが疑問を覚えて、リュウガに対して声を荒げる。
「ここでオレたちが戦えば、最悪、コイツがオレたちを排除しに来るのを、お前も思い知ったはずだ。」
「それで見逃せと言いたいの!?それで引き下がるあたしじゃないよ!」
「戦うなら場所を変えてやるぞ。コイツの目が届かないところでな。」
「くっ!・・絶対に見逃さないから・・・!」
 リュウガに対する憎悪を抱えたまま、オータムは彼の前から去っていった。
「今は大人しく休んだ方がよさそうだ・・連戦でコイツを倒そうとしても、競り負ける危険がある・・・」
 もしもマーズが力を解放して立ちはだかったときに叩き伏せることができるよう、リュウガは万全を期すことにした。

 リュウガへの攻撃から1度引き上げたオータムは、悔しさを膨らませていた。
「倒せなかった・・兄さんの仇を・・・でも次は絶対に下がらない・・必ず紅蓮の銃剣士を倒してやるんだから・・・!」
 彼女がリュウガへの憎悪を強めて、両手を握りしめる。
「でもあたしたちを止めようとした人、ホントに厄介だった・・アイツの言う通りにするのは癪だけど、邪魔されたくないからね・・・」
 オータムは渋々、マーズのいないところでリュウガと戦うことを決めた。
「それじゃ、明日に備えて休まないと・・もう敗北は許されないから・・・」
 オータムは気持ちを切り替えて、町の中を歩いていく。彼女は宿泊場所を見つけて休むことにした。

 力の使い過ぎで意識を失っていたマーズ。彼が目を覚ましたとき、その場にリュウガの姿はなかった。
「あれ?・・あの人がいない・・僕を置いて、行ってしまったというの・・・?」
 マーズが周りを見回して、リュウガを捜す。
(僕はあの人を止められたんだろうか?・・僕に、あんな力があったなんて・・・!?)
 自分の中に秘めていた力に、マーズが困惑していく。
(そうだ・・僕は1度、ものすごい力を出したことがある・・それを僕は怖がって・・・だから戦いがイヤになったんだ・・・)
 マーズが昔のことを思い出して、不安を感じていく。
 マーズは幼い頃から銃剣士としての訓練を受けてきた。その中で彼は突如、得意の力を発揮した。
 その力によってそばの丘を破壊した。その自身の高い力に恐怖を覚えて。マーズは無意識に力を抑えるようになった。
 戦いをよく思わないという考えも相まって、それ以来マーズが高い力を発揮しなかった。
「僕が戦いたくなかったのは、僕が自分の力を恐れたから・・ものすごい力を出して、みんなを傷つけるのがイヤだったから・・・!」
 自分の力への恐怖を募らせて、マーズが自分の体を抱きしめて震える。
「僕が求めている強さは・・何もかも壊してしまう力じゃない・・もっと別の力のはずだ・・・!」
 彼が苦悩を深めて、顔を横に大きく振る。
「やっぱり、あの人のところに行った方がいい・・・」
 気持ちの整理がつかないまま、マーズは歩き出す。リュウガを追い求めて、彼は町へ向かった。

 マーズを置いて1人で町に来たリュウガは、宿屋に来て休息を取っていた。
(あの2人へ復讐することが、今のオレの目的・・だが、アイツがそばにいれば、何が起こるか分からない・・オレの戦いに支障が出る可能性が高い・・・)
 マーズの潜在能力への警戒を強めるリュウガ。
(オレの戦いにも、アイツを迎え撃つのにも支障が出る・・)
 彼は復讐の襲撃をしてきたオータムのことも考える。
(オレは目の前にいる相手にとどめを刺したことはない・・それはオレが、暗黒の銃剣士の一員だったときも同じだ・・・)
 リュウガが昔のことを思い出す。暗黒の銃剣士として力を振るっていたときのことを。
(オレたちを欺き、オレの仲間を手に掛けたアイツらを、決して許しはしない・・必ずヤツらを討つ・・邪魔をする者も含めて・・・!)
 自分も復讐のために旅をして戦う信念を、リュウガは貫き続けていた。

 マーズとリュウガが離れ離れになってから一夜が過ぎた。マーズは町の別の宿屋に泊まっていた。
「この町にいるはずなのに、あの人に会えなかった・・最悪、入れ違いになるかも・・・」
 リュウガのことを考えて、マーズが不安になる。
「町から出ていても、まだ遠くには行っていないはずだ・・早くしないと、あの子と戦って、倒してしまうかもしれない・・・!」
 焦りを覚えたマーズは、宿屋を後にしてリュウガを探し求めた。人に聞いて回るマーズだが、リュウガの居場所を知ることができない。
「どこにいるんだろう?・・もう街から出ていってしまったのかな・・・!?」
 リュウガとオータムが再戦することを危惧して、マーズが足を速める。彼は町の入り口に来て、再び周りを見回す。
(戦いが始まれば、その音を聞いて駆けつけることができるけど、それじゃ遅い・・その前に2人を見つけなくちゃ・・・!)
 焦りを膨らませるマーズが、無意識に感覚を研ぎ澄ませていた。
「この感じ・・・もしかして、あの人じゃ・・・!?」
 彼はその気配を頼りに、荒野の中を走り出した。

 朝早く町を離れたリュウガは、オータムが来るのを待っていた。
「逃げも隠れもせずに、わざわざやられに来たとはね・・・!」
 オータムが現れて、リュウガに声をかけてきた。
「お前のような性格のヤツは、何も言っても聞きはしないだろう。オレが兄を殺したとお前が言い張るなら、オレがケリをつける。」
「ふざけないで!あたしがアンタを討つ以外に、兄さんが救われる方法はないのよ!」
 決着を付けようとするリュウガに、オータムが憎悪を向ける。
「昨日は邪魔されたけど、今日はそうはいかない・・兄さんの仇、必ずとってやる!」
「オレにもやるべきことがある。ここで立ち止まるわけにはいかない・・・!」
 オータムが言い放ち、リュウガが言い返す。2人がそれぞれオータムリボンと紅龍刃を手にした。
「オレを確実に倒せる実力があるならかかってこい。自分と相手の力の差を把握できないのであれば、死ぬしかない。」
「あたしは死なない!アンタを倒すまでは、死んでも死にきれないんだから!」
 忠告をするリュウガだが、オータムは聞く耳を持たない。
「ならばオレは、行く手を阻むお前を倒し、オレの敵を討ちに行く・・・!」
 リュウガが鋭く言って、紅龍刃を構える。
「アンタの思い通りにはさせない・・あたしが、アンタを倒す!」
 オータムが言い放ち、オータムリボンを振りかざして光のリボンを伸ばした。リュウガが紅龍刃を振りかざして、リボンを切り裂いた。
「まだだよ!あたしの力はこんなもんじゃない!」
 オータムはさらにオータムリボンを伸ばして、リュウガを取り囲む。
「これで逃げられないよ!反撃しても上に逃げてもね!」
 オータムがリュウガに対して勝ち誇る。彼女はリュウガとその周囲にも注意を向けていた。
「さぁ、これで終わらせるよ・・あたしたちの悲しみをね!」
 オータムが言い放ち、オータムリボンを振りかざして、リュウガへの範囲を狭める。
「紅蓮旋風陣!」
 リュウガが紅龍刃を地面に突き立てて、炎を伴った旋風を巻き起こした。竜巻がオータムのビームのリボンを吹き飛ばす。
「ここまで追い込んでも、跳ね返してくるっていうの・・!?」
 オータムリボンによる包囲も破られて、オータムが驚きを隠せなくなる。
「これだけの力の差を見せつけられたなら、自分の目的を果たすためにも生き延びようとするはずだ。無様に逃げようとするのも手だ。」
「そんなことはしちゃいけない!逃げたらあたしはあたしじゃなくなる!」
 リュウガが投げかける言葉を、オータムがはねつける。
「たとえ絶対敵わないくらいに強い相手でも、アンタは許しちゃおけないんだよ!」
「そうか・・オレを倒せなければ、死んだほうがマシということか・・・」
 退かず戦いを挑む意思を崩さないオータムに、リュウガが肩を落とした。
「ならばオレはお前を倒す。お前が敗北を認めなくても、お前が何度立ち上がってきても、オレはオレの戦いをする・・・!」
「そんなこと、あたしは許さ・・!」
「許さないなら、言葉でなく力で止めてこい・・・!」
「コイツ・・・!」
 リュウガに言葉を遮られて、オータムがいら立ちを募らせる。
「行くぞ・・・!」
 リュウガが低い声で告げて、オータムに向かって突っ込んだ。

 

 

第4章へ

 

作品集に戻る

 

TOPに戻る

inserted by FC2 system