GUNDAM WAR SD

-神魔の銃剣士-

第2章「砂漠の戦い」

 

 

 銃剣士の捜索と連行を命令されていたザクナイト、グフナイト、ズゴックナイトだが、リュウガに敗れて逃走する羽目になった。その中には、暗黒の銃剣士の本拠地に戻る人もいた。
「紅蓮の銃剣士を見つけたか。それはいい報告だ。だけど・・」
 怯えるザクナイトたちの前で、青い銃剣士が笑みをこぼす。
「尻尾を巻いて逃げてくるヤツに、オレたちの部下は務まらん・・」
 もう1人の赤い銃剣士が、ザクナイトたちへ冷徹に告げる。
「お、お許しください!今回は不意を突かれましたが、次は必ず、紅蓮の銃剣士を仕留めてみせます!」
「どうか、命だけはお助けを!」
 ザクナイトたちが銃剣士に助けを請う。
「その上見苦しい・・もはや滑稽だ・・」
 赤い銃剣士が剣を手にして、ザクナイトたちに鋭い視線を送る。
「う、うわあっ!」
 グフナイトの1人が生き延びようと考えて、斧を手にして赤い銃剣士に飛び掛かった。
「さらには力の差も分からなくなるとは・・」
 赤い銃剣士がため息をついて、斧を振り下ろすグフナイトに向けて剣を振りかざした。その一閃はグフナイトの斧よりも、確実に速かった。
 グフナイトが赤い銃剣士に斬られて倒れた。持っていた斧も刀身の真ん中から両断された。
「に、逃げろー!」
 ザクナイトたちが悲鳴を上げて逃げ出す。
「僕からは逃げられないよ・・」
 青い銃剣士が銃砲を構えて、ビームを発射した。ビームが拡散されて、ザクナイトたちに全員命中した。
「さすが命中率100%だな。」
「100%はさすがに言いすぎだよ。たくさんのものを狙い撃ちする自信はあるけど・・」
 赤い銃剣士が称賛して、青い銃剣士が苦笑する。
「でも、思ったよりも早く見つかるとはね・・」
「アイツは執念深いところがある。オレたちを敵だと認識しているなら、必ずオレたちのところへ来るはずだ。」
 2人の銃剣士がリュウガのことを考えて話をしていく。
「でも僕たちの部下や仲間はたくさんいる。僕たちと再会する前にやられる可能性もあるね。」
「いや、リュウガがただ者でないことは、お前も分かっているはずだ。」
 リュウガに対してからかう青い銃剣士に、赤い銃剣士が警戒を示す。
「僕にはどっちでもいいことだよ。僕の力が高まるならそれでいい・・」
「あくまで自分の力か・・オレもそうだが、お前の場合は自由気ままだ・・」
「君の方が真面目すぎるんだよ・・いつも真に受けるんだから・・」
「これくらいが普通だ。調子に乗って失敗するよりはよほどいい。」
 気さくな態度をとる青い銃剣士と、真面目に語っていく赤い銃剣士。
「さて、他の銃剣士は、リュウガを倒して手柄を挙げるかな。」
「今はヤツの動きを見届けることにしよう。」
 青い銃剣士が他の銃剣士に機体を抱いて、赤い銃剣士が冷静に状況を見届けることにした。

 サンドワールドの町を離れて、リュウガは砂漠を歩いていく。彼を慕ってマーズも付いてきていた。
 マーズは子供の頃から熱さと渇きには慣れていた。そのため、砂漠でも我慢強く歩くことができた。
 リュウガも平然と砂漠の長い道のりを進んでいた。
(すごい・・砂漠をかなり歩いているのに、この人は全然息を切らしていない・・僕の方が先に参りそうだ・・)
 リュウガの強さを改めて知って、マーズが戸惑いを感じていく。
「あの・・この先に何かあるのですか・・・?」
 マーズが疑問を感じて、リュウガに質問をした。
「ここが特に目的地というわけではない。オレは群れるのは好きではないだけだ・・」
「えっ?・・でもだからって、ここを通る必要は・・・」
「オレが他のヤツと関わり合いにならないようにするだけだ・・」
「それだけのことで、ここまでするなんて・・・」
 リュウガの考えを聞いて、マーズが困惑する。
「それに、銃剣士の話や暗黒の銃剣士の居場所を知るには、このようなところにもいかなければならない・・」
「誰もいないようなところにも、銃剣士が・・・」
「しらみつぶしに情報を集め、敵を討つ・・それが今のオレだ・・・!」
「そこまで復讐を果たそうとしているんですね・・・」
 暗黒の銃剣士を倒すことだけを考えているリュウガに、マーズは悲しみを感じていく。自ら辛い戦いに身を投じているリュウガに、マーズの心は揺れていた。
「僕は、争いは好きではないです・・争いは、悲劇しか生まないのを思い知ったから・・・」
 マーズも自分の経験と考えをリュウガに打ち明けた。
「僕は幼い頃から鍛錬を受けてきた。強い銃剣士になれるように・・でも僕は強くなれなかった・・鍛錬が足りなかったと言えばそれまでだけど・・戦争を引き起こす銃剣士を止めることができなかった・・・」
「お前のことはオレには関係ない。他のヤツのこともな。オレはオレの戦いをするだけだ。」
 自分のことを話していくマーズだが、リュウガは冷たくあしらう。
「力が足りなければ強くなるだけだ・・弱さを同情のための手段に使うつもりはない。」
「同情って・・そんなつもりは・・・」
 リュウガの投げかける言葉に、マーズが困惑を募らせていく。
「僕だって強くなりたい・・でも、どうやったら強くなれるのか、分からないんです・・何をしても、力が上がらない・・強くなる方法も思いつかない・・・」
 自分の力への渇望と苦悩を吐露するマーズだが、リュウガは答えることなく砂漠を進んでいく。
「あっ!そんなに急がなくても・・・!」
 マーズが慌ててリュウガを追いかけていく。2人は砂漠を抜けて、荒野に足を踏み入れた。
 そのとき、リュウガたちの耳にエンジン音が入ってきた。バイクに乗った数人の男たちが、2人の前に現れた。
「今日は獲物が獲れねぇと思ってたが、最後の最後で見つかったぜ。」
「しかも銃剣士じゃねぇか!かなりの武器を持ってそうだぞ!」
 男たちがリュウガたちを見て笑みをこぼす。彼ら盗賊は通りがかった人を襲って、持ち物を奪っていた。
「何もしなければオレも何もしない・・だが、邪魔をするなら容赦はしない・・」
 リュウガが男たちに向けて忠告する。
「テメェ、オレたちに逆らうつもりか!?」
「言うこと聞いときゃ痛い目にあわずに済んだのによ・・!」
 男たちが苛立ちを覚えて、数人がバイクから降りた。その数人がそれぞれ武器を持って、リュウガたちに迫る。
「ここらはオレらが仕切ってることを、よそ者のおめぇらに思い知らせてやるよ!」
「後で謝っても許してやらねぇぜ!」
 男たちがリュウガたちを攻撃しようと、持っている武器を振り上げた。
「くらえ!」
 男の1人が鉄の棒を振り下ろすが、リュウガが左手で軽々と止められる。
「何っ!?このー!」
 驚く男が力を込めて、鉄棒を押し込もうとする。しかしリュウガは全く押される、彼が力を加えたことで鉄棒が折れた。
「な、何だと!?」
「片手で簡単に折りやがった!」
 他の男たちがリュウガの力に驚愕する。
「手を出した以上、命を奪われても文句はないということだな・・・!」
 リュウガが目つきを鋭くして、紅龍刃を引き抜いた。
「やれ!コイツを徹底的に痛めつけてやる!」
 男たちがいきり立ち、リュウガに向かって突っ込んだ。リュウガが紅龍刃を振りかざして、男たちを吹き飛ばした。
「バカな!?こうも簡単に!?」
 男たちが畏怖を感じながらも、バイクを走らせて突っ込んできた。リュウガが紅龍刃を振りかざして、バイクを横に両断した。
「ぐあぁっ!」
 男たちが倒れて、バイクが爆発した。起き上がろうとした彼らの前まで、リュウガが近づいてきた。
「仕掛けてきたのはお前たちの方だ。命乞いで許してもらおうとは思っていないはずだ・・」
 低い声で告げるリュウガに、男たちが恐怖して逃げ出す。リュウガが紅龍刃を振り下ろして、光の刃を飛ばした。
 逃げる男たちが光の刃に巻き込まれて吹き飛ばされ、1人が生き延びた。
 完全に震えて動けなくなっている男に、リュウガがまた迫った。
「お前、暗黒の銃剣士の居場所を知っているか?この近くにアジトがあるといった情報でもいい。」
 リュウガが問いかけると、男が顔を大きく横に振って、知らないことを伝える。
「何も知らないか・・ならば消えろ・・・!」
 リュウガが冷たく言って、紅龍刃を振り上げた。
「ギャアッ!」
 彼の一閃を受けて、男が絶叫を上げて吹き飛ばされた。
「ぜ、全滅・・1人で・・・!」
 リュウガの戦いを再び見て、マーズが緊迫を覚える。
「非情だと考えても、オレの考えは変わらない。仕掛けてきたのはヤツらなのだからな。」
 リュウガは彼に振り向かずに、自分の考えを告げる。
「そうやって来る人をみんなやっつけていったら、暗黒の銃剣士と変わらないじゃないですか・・目的のために手段を選ばないみたいで・・・」
「言ったはずだ。オレは復讐のために戦っている・・邪魔をする者も容赦しないと・・」
 納得しないマーズに、リュウガが言い返す。困惑するマーズだが、リュウガにさらに言葉を掛けることができない。
「戦いを仕掛けるなら、相手の力を見計らってからにするか、必ず倒さなければならないという意思を持つかだ。」
「必ず倒さないといけないという意思・・・」
 リュウガの強い意思を聞いて、マーズが戸惑いを感じていく。
「戦いには戦う理由がある。自分の野望を果たしたいとか、力に溺れたとかも含めて・・理性を失い、暴走して見境をなくしたときは別だが・・」
「戦う理由・・世界中で起こっている争いも、何か理由があるって言うんですか!?」
「何らかの理由やきっかけは必ずある。自分と関係ないことでもな・・オレの敵を討つ理由が、ヤツらに裏切られたというように・・」
「関係ないことでもって・・本当に関係ない人が、争いに巻き込まれるのは・・・!」
 リュウガの話を聞いても、マーズは納得することができない。
「たとえ力ずくで止めようとしても、お前はオレを止めることはできない。ヤツらを倒すまでは、オレは止まらない・・」
「そんな・・・」
 自分の戦いを続けるだけのリュウガに、マーズは愕然となった。
「オレが許せないなら、ついてくる必要はない。力を求めるなら、他のヤツに頼ることだな・・」
 リュウガがマーズに告げて、1人歩き出す。
「確かに、あなたのその考えを認めることができません・・それでも、本当の強さをつかむために、あなたについていかないといけないと思っている・・・!」
 マーズが複雑な気分を感じながらも、正直な気持ちを口にする。
「勝手にしろ・・お前に教えることは何もないし、お前がどうなろうと知ったことではない・・」
 リュウガは止まることなく、マーズに言い返した。マーズは不満や苦悩を抱えたまま、リュウガについていった。
(この人についていって、本当に強くなれるか分からないし、どれにしても僕次第なのも分かっている・・それでも僕は、この人に希望があると思ってしまう・・・)
 強くなるためにはリュウガにすがるしかないと、マーズは思っていた。

 荒野も抜けて、町まであと少しというところまで来たリュウガとマーズ。疲れが増していたマーズだったが、町の明かりを見つけて笑みをこぼした。
「やっと、町に着いた・・これで休めるかな・・・」
 マーズが1度足を止めてひと息つく。リュウガも深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
「この町に、暗黒の銃剣士の話を聞く・・あのような規模だと、襲われている可能性は高くないが・・」
 リュウガが町を見据えて、これからのことを口にする。
「そこで狙っている敵の情報があればいいと・・」
「上級の暗黒の銃剣士の噂はそうそう流れるものではない。だが銃剣士を叩いていけば、ヤツらが表に出てくることになる・・」
 マーズが聞いて、リュウガが答える。リュウガは戦いを続けて、目的の敵を引きずり出そうと考えていた。
「まずは町に行って休みましょう。これ以上歩き続けるのは辛いです・・」
 マーズが町を見つめて言って、リュウガが答えずに町へ行こうとした。
「そこまでよ!紅蓮の銃剣士!」
 そこへ声がかかり、マーズが振り向いた。リュウガの前に1人の少女が姿を現した。
「やっと見つけたよ!今日こそ兄さんの仇を討たせてもらうよ!」
 少女がリュウガに言い放って、構えを取る。
「誰だ、お前は?オレの邪魔をするつもりか?」
 リュウガが目つきを鋭くして、少女に問いかける。
「直接会ったことはなかったね・・あたしはオータム!オータム・ノーベルガンダムよ!」
 少女、オータムが名乗って、リュウガを指さす。
「紅蓮の銃剣士、あなたはあたしの兄さんを手に掛けた!あたしたちは平穏に暮らしてたのに、兄さんは戦いを止めようとしただけなのに!」
 オータムが語りかけて、リュウガに憎しみをぶつける。
「戦いは勝つか負けるか、力が上か下か、その結果だけが残る。始めたきっかけが何であれ・・」
「それで兄さんが死んだのを許せって言うつもり!?ふざけないで!」
 リュウガが冷徹に告げるが、オータムの怒りを逆撫でするだけだった。
「アンタを倒さないと、兄さんが浮かばれないのよ!」
 オータムが怒鳴って、リュウガに飛び掛かる。しかしリュウガに軽々と蹴りをかわされた。
「このっ!」
 オータムが続けて蹴りを繰り出すが、リュウガに全て回避された。
「逃げるな!」
 オータムがリュウガを捕まえようと手を伸ばす。しかしリュウガにその腕をつかまれて、オータムが投げ飛ばされた。
「くっ!・・まだよ!あたしの力は、まだまだこんなもんじゃない!」
 着地したオータムが毒づいて、1つの武器を取り出した。柄から光が出て、鞭のように伸びた。
「“オータムリボン”を受けてみなさい!」
 オータムが武器、オータムリボンを振りかざして、光の鞭を伸ばした。鞭がリュウガの左腕に巻き付いた。
「う、うわっ!」
 リュウガを引っ張ろうとしたオータムだが、逆に引っ張られて地面に叩きつけられた。
「これでも引っ張ることができないなんて・・・!」
「これがオレとお前の力の差だ。銃剣を使うまでもなく、オレはお前をあしらうのは十分だ。」
 悔しさを浮かべるオータムに、リュウガが低い声で告げる。
「確かに力の差は明らかみたいだね・・でも、あたしのリボンに触ったね・・!」
 起き上がるオータムがリュウガに対し笑みをこぼした。
 そのとき、リュウガが突然体に痺れを感じて、思うように動けなくなる。
「どうしたんだ!?・・あの人の様子が・・・!?」
 マーズも彼の異変を目の当たりにして当惑する。
「あたしのリボンは電気を流すこともできる!触っただけで体全体が痺れるよ!」
 オータムがオータムリボンについて説明する。
「普通なら気絶するはずだけど、倒れもしないなんて・・ホントに力はあるってことみたいだね・・・!」
「そんな・・それじゃいくら何でも・・・!」
 微笑みかけるオータムと、リュウガを心配するマーズ。
「動きが鈍ったアンタに、兄さんの苦しみを思い知らせてやるんだから!」
 オータムがオータムリボンを硬化させて、剣のようにしてリュウガ目がけて振りかざしてきた。その瞬間、リュウガが跳び上がり、オータムの一閃をかわした。
「えっ!?」
 攻撃をよけられたことに驚愕するオータム。着地したリュウガが倒れないように踏みとどまる。
「そんな!?オータムリボンの電気ショックを受けて、そこまで動けるなんて!?」
「この程度で止まるわけにはいかない・・オレにはやらなければならないことがあるからな・・・」
 声を荒げるオータムに、リュウガが声を振り絞る。
「ふざけないで・・何が、やらなければならないことよ!あたしの兄さんを殺したヤツが!」
 オータムが怒りを募らせて、オータムリボンを構える。
「手を出してきたのはお前だ。命を失う覚悟はできているということだな・・?」
 リュウガがオータムに振り返り、問い詰める。
「何を言ってんのよ!?アンタが兄さんに手を出さなければ、それで済んだことよ!」
 オータムは怒りを膨らませ、再びオータムリボンを鞭のように振りかざす。リュウガが後ろに下がってリボンをかわす。
「オレはまだ倒れるわけにいかない・・お前がまだ戦いを仕掛けてくるなら、オレは容赦しない・・・!」
 リュウガが鋭く言って、紅龍刃を手にした。
「引き下がるなら今のうちだ・・だがこれ以上オレを狙うなら、ここで倒す・・・!」
 リュウガが忠告して、紅龍刃の切っ先をオータムに向けた。
「どこまでもふざけたことを・・倒れるのはアンタのほうだよ!」
 怒りを膨らませて、オータムが怒鳴る。彼女とリュウガの対立を見つめて、マーズは困惑していた。

 

 

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