GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-48「黒き勇者」
メサイアでの戦いを最後に1度途絶えた戦い。クライン派が戦いを終わらせたとされていた。
その中で、ブラッドたちは軍との戦いを続けていた。
クライン派がもたらした平和は偽りのもの。戦って真の平和を取り戻さなければ、自分たちは生きながら死んでいるだけ。ブラッドたちはそう思っていた。
そんなブラッドたちの前にシンは現れた。
ブラッドたちとの邂逅と交流で、シンも再び偽りの平和への反感を取り戻すことができた。
シン、ソラ、アンジュによって、ブラッドたちは日陰者から脱することができた。
もう逆賊ではない。胸を張って、世界のために尽力することができる。
ブラッドとドギーたちの決意と意思は、さらに強固となっていた。
フリーダムが切り離したミーティアの爆発に巻き込まれて、デスティニーは大きく吹き飛ばされていた。デスティニーはその先のデブリの1つに落とされて、シンもそのわずかの間、気絶していた。
“デスティニー!シンさん、応答してください!”
マイからの通信で、シンは目を覚ました。
「気絶してたか・・ミネルバ、状況は・・!?」
“シンさん!・・みなさん、フリーダムと交戦しています!ホーク隊長とアテナさんも戦線に戻りました!”
応答するシンにマイが答える。シンが意識をはっきりさせて、デスティニーを動かす。
「オレも戻る・・みんなもムチャしないように・・!」
“分かりました、シンさん!”
シンの声にマイが答える。ミネルバとの通信を終えて、シンがプラント付近での戦闘に目を向ける。
「すぐに戻らないと・・これで終わらせる・・アイツの暴挙を・・!」
シンが目つきを鋭くして、デスティニーを動かしてルナマリアたちのところへ戻った。
キラとルナマリアたちの攻防は熾烈を極めていた。強大な戦闘力を発揮するフリーダムに対し、インパルスたちは踏みとどまっていた。
「僕は戦う・・お前たちを必ず滅ぼす・・・!」
「そうはさせない!絶対にあなたを止める!」
低く告げるキラにハルが言い返す。ファルコンがビームサーベル、ビームライフルを構える。
「僕を止めることはできない・・誰にも・・・!」
キラが言いかけて、フリーダムがレールガンを発射する。インパルスとジャッジが横に動いてビームをかわす。
その直後、フリーダムがファルコンに向かって飛びかかってきた。ハルが反応し、ファルコンがビームライフルを発射するが、フリーダムは素早くかわして詰め寄ってくる。
ファルコンがビームサーベルを振りかざして、フリーダムのビームサーベルを受け止める。しかしフリーダムがもう1本のビームサーベルを振りかざしてきた。
ハルがとっさに判断し、ファルコンがビームライフルを構えるが、フリーダムによって左腕ごと切り裂かれた。
「しまった!」
ファルコンを損傷され、ハルが声を上げる。フリーダムがファルコンに追撃をしようと、ビームサーベルを振り上げる。
「ハル!」
ルナマリアが呼びかけて、インパルスがビームライフルを発射する。キラが気付き、フリーダムがファルコンから離れてビームをかわす。
「ハル、今のうちに離れて!」
「ルナマリアさん!」
呼びかけるルナマリアにハルが答える。インパルスがさらにビームライフルを連射する。
「向かってきても倒すだけ・・・!」
キラが呟き、フリーダムがレールガンを発射して、インパルスのビームライフルを右腕ごと破壊した。
「ミネルバ、チェストフライヤー、フォースシルエット!」
ルナマリアがミネルバに向けて呼びかけてきた。
「させない・・!」
キラがミネルバに目を向けて、フリーダムがカリデュスを発射する。ビームがミネルバのインパルス専用のカタパルトに直撃した。
「ミネルバが!」
「これじゃフライヤーもシルエットも出せない・・・!」
ミネルバが攻撃されたことに、ハルとルナマリアが声を上げる。これでインパルスはミネルバの援護で再合体での修復が不可能に近くなってしまった。
「突撃したのが仇になった・・このままじゃ・・・!」
危機感を一気に募らせるルナマリア。インパルスが左手でビームサーベルを手にする。
「これで終わりだ・・僕が終わらせる・・・!」
キラが言いかけて、フリーダムがビームサーベルを構えてインパルスに飛びかかる。
「フリーダム!」
ハルが言い放ち、ファルコンがビームライフルを構える。そこへドラグーンのビームが飛び込み、ファルコンがインパルスの援護を妨害される。
「これじゃルナマリアのところへ行けない・・!」
「ルナマリアさん!」
ファルコンが回避を取る中、ソラとハルが叫ぶ。
「ルナマリアへの援護はオレがする!」
ブラッドが呼びかけ、ジャッジがビームライフルを連射する。しかしキラに気付かれ、フリーダムに軽々とかわされる。
フリーダムが加速して、ビームサーベルを構えてインパルスに迫る。
「ルナ!」
そのとき、シンの呼び声がルナマリアに飛び込んできた。デスティニーが戻ってきて、フリーダムに向けてビーム砲を発射してきた。
キラが気付き、フリーダムがビームをかわして、1度インパルスから離れる。
「大丈夫か、ルナ!?」
「ありがとう、シン・・私は大丈夫だけど、インパルスはもう・・」
心配の声をかけるシンに、ルナマリアが深刻さを込めて答える。シンもインパルスが負傷し、ミネルバもハッチを攻撃されて射出できない状態にあることに気付いた。
「ルナはミネルバのそばに付いていてくれ・・もうオレはやられたりしない・・・!」
「シン・・・分かった・・ゴメン・・・」
呼びかけるシンに答えて、ルナマリアが謝る。インパルスがミネルバの近くまで下がる。
「これで終わらせる・・アンタは、オレがこの手で止める!」
「終わらせるのは僕のほうだ・・全てを、僕がこの手で・・・!」
シンとキラが言い放ち、デスティニーとフリーダムがそれぞれビームソードとビームサーベルを手にする。2機が加速してビームの刃をぶつけ合う。
さらに激化するデスティニーとフリーダムの攻防に、ソラとハルは動揺を隠せなかった。
「ここまでのパワーとスピードを発揮してる・・スピードもファルコンを超えてきている・・・!」
「もう僕たちでも、シンさんとキラの戦いについていけないのか・・・!」
「まだ何かあるよ!シンさんを手助けする方法が何か!」
「悔しいけど・・もうこれ以上は、僕たちが介入できるレベルじゃなくなってるよ・・・!」
シンを助けようと思考を巡らせるソラだが、ハルは手を出せる状況でないことを痛感して、加勢に踏み出せなかった。
「シンさんが危ないと、ちょっとでも思ったら、すぐに駆けつける・いつでも踏み出せるように、僕たちは準備する・・!」
「そうだ・・オレたちがシンの勝機をもたらす好機、一瞬でも見逃すわけにはいかない・・!」
感覚を研ぎ澄ませるハルに、ブラッドも声をかけてきた。
「ブラッドさん・・・はい・・・!」
ハルが頷いて、ソラ、ブラッドとともにシンの戦況を見守った。
シンのデスティニーとキラのフリーダムの攻防は、激化が極まったものとなっていた。
ビームの刃、ビームブレイド、ビームの射撃がぶつかり合い、激しい衝撃をもたらして相殺される。それでもシンとキラ、デスティニーとフリーダムの激闘の勢いは衰えない。
「お前は僕が倒す・・今の世界を、僕が壊す・・僕からみんなを奪ったこの世界を、僕が・・・!」
「そんなことはさせない!アンタの、アンタたちの思い通りにはさせない!オレが戦いを終わらせて、世界を守る!」
キラが敵意を、シンが決意を言い放つ。デスティニーとフリーダムがビームソードとビームサーベルをぶつけ合い、つばぜり合いを演じる。
デスティニーがフリーダムから離れると同時に、ビームブーメランを投げつける。フリーダムがビームサーベルでビームブーメランを弾く。
そこへデスティニーが飛び込み、ビームソードを突き出してきた。
「何度も同じ攻撃は受けない・・・!」
キラがデスティニーの動きを注視する。フリーダムが屈んで、デスティニーの突撃をかわした。
直後、フリーダムが振り向きざまにビームサーベルを振りかざす。シンが即座に反応し、デスティニーが加速しつつ、ビームソードでビームサーベルを防いだ。
デスティニーが加速したまま、フリーダムと距離を取る。
「紙一重でかわすか・・それでオレに勝てると思うな!」
シンが言い放ち、デスティニーが再びフリーダムに突っ込む。デスティニーが勢いに乗せてビームソードを突き出す。
キラが反応し、フリーダムがビームソードの突きをかわす。だがその瞬間、彼はデスティニーが片手でビームソードを突き出していたのを目にした。
次の瞬間、デスティニーがビームブレイドを発した右足を振りかざしてきた。フリーダムもビームブレイドを出した右足を振りかざして、激しくぶつけ合う。
デスティニーとフリーダムが衝撃の相殺で互いに突き飛ばされる。
フリーダムがドラグーンを操作して、デスティニーに射撃を仕掛ける。デスティニーがビームライフルに持ち替えると同時に、高速で動いてドラグーンのビームをかわす。
デスティニーはフリーダムに弾かれて宙を漂っていたビームブーメランを手にして、フリーダム目がけて再び投げつける。続けてデスティニーがビームライフルを発射して、ビームブーメランにぶつけてビームを拡散する。
拡散されたビームによって、展開していたドラグーンが破壊されていく。
「これ以上は・・・!」
キラが目つきを鋭くして、フリーダムがビームサーベルを構えて飛びかかる。高速で飛び込んだフリーダムの一閃が、デスティニーのビームライフルを切り裂いた。
デスティニーがビームソードを振りかざして、フリーダムのビームサーベルとぶつけ合う。フリーダムが力負けして、デスティニーに突き飛ばされる。
(機体のエネルギーはお互い無限だけど、パイロットまではそうはいかない・・それなのに動きが衰えない・・・!)
(思いの強さが体を、MSを突き動かしている・・・!)
シンとキラが互いの底力を痛感する。しかし焦りにのまれることなく、2人も戦いに集中する。
デスティニーがビームソードを、フリーダムがビームサーベルを振りかざす。両機の刃が立て続けにぶつかり合い、火花を散らす。
デスティニーとフリーダムが、ビームブレイドの発する足を振りかざし、ぶつけ合う。2人とも、2機とも攻撃の勢いを緩めない。
フリーダムがデスティニーとの距離を取り、レールガンを発射する。デスティニーがビームシールドでビームを防ぎながら、フリーダムに突っ込む。
デスティニーが左手を前に出して、パルマフィオキーナを放つ。左手からの射撃が、フリーダムの左のレールガンを破壊した。
「くっ!」
キラがうめきながらも、フリーダムが即座にビームサーベルを振りかざす。この一閃がデスティニーの左のビーム砲を切りつけた。
双方力が拮抗した一進一退の攻防。負傷し始めても、デスティニーもフリーダムも勢いが衰えなかった。
フリーダムの攻撃で損傷したインパルスは、ミネルバのそばについていた。
「ルナマリアさん、1度ミネルバに戻ったほうが・・・!」
マイがインパルスにいるルナマリアに呼びかける。
「ありがとう、マイ。でももうインパルスじゃ、シンの戦いについていけない・・足手まといになるだけだと、分かっているから・・」
「ルナマリアさん・・そんなことは・・・」
答えるルナマリアにマイが弁解しようとする。
「艦長、プラントの動きは・・?」
「ザフト各部隊がプラント周辺に防衛線を張っているわ。しかし、フリーダムの前では紙同然なのでしょうけど・・」
ルナマリアが声をかけて、ミーナが冷静に答える。
「ここは信じるしかないわ・・世界の運命は、シンくんにかかっている・・」
「はい・・私も、シンを信じます・・・!」
思いを語り合って、ミーナとルナマリアはシンを見守ることしかできないことを痛感していた。
デスティニーとフリーダムの攻防は続く。シンとキラの体力は大きく消耗していたが、2人とも感覚を研ぎ澄ませたままだった。
(ドラグーンは全て破壊した・・レールガンも1つ・・それでも戦闘力が衰えない・・・!)
シンがキラの底力を痛感して毒づく。
(これがフリーダム・・これがキラか・・だけど、それだけの強さを、自分たちのために振るっている・・そのために世界を混乱させている・・・!)
「そんなこと、絶対にさせない!オレが絶対に止めてやる!」
それでもシンは引かずに、感覚の鋭利を維持してキラに立ち向かう。デスティニーが振りかざすビームソードを、フリーダムが素早くかわす。
デスティニーとフリーダムがビームライフルを手にして、同時にビームを発射する。連射されたビームが立て続けにぶつかり合い相殺される。
2機がビームを連射しながら、高速で距離を詰める。ついに2機のビームライフルが同時に撃ち抜かれて、爆発を起こした。
「まだだ・・まだオレはやられないぞ!」
「くっ!」
言い放つシンと毒づくキラ。デスティニーがビームソードを、フリーダムがビームサーベルを構えて、振りかざしてぶつけ合う。
「オレは終わらせる!この戦いを!アンタの暴走を!」
「終わらせるのは、この世界の愚かさ・・悲劇は、僕が止める・・・!」
シンとキラが感情をもぶつけ合う。2機のビームの刃が立て続けに衝突して、宇宙に衝撃がまき散らされていく。
(オレは戦う・・戦い続ける・・この戦いが、この先終わることのないものだとしても、オレは・・・!)
心の中で決意を強めていくシン。どのような状況になろうと、どうあっても戦いが終わらないと言われても、シンの決意は揺るぎなかった。
(全てを滅ぼす・・僕たちの全てを奪った、この世界の全てを・・この僕の手で、必ず・・・!)
キラも世界の打倒への意思を強固にしていた。デスティニーとフリーダムの激闘がさらに続く。
デスティニーもフリーダムも、徐々に損傷が多くなっていく。それでも2機の動きは衰えず、ビームの刃をぶつけ合う。
デスティニーとフリーダムが左足のビームブレイドをぶつけ合う。そのとき、ぶつかり合った2機の左足が爆発して破損した。
シンとキラが毒づきながらも、デスティニーとフリーダムはすぐに右足を振りかざす。再びビームブレイドがぶつかり合うが、2機の右足も爆発を起こした。
「機体のほうが限界に来たか・・・!」
「いくらエネルギーが尽きなくても、装甲までは・・・!」
搭乗機の胴体に限界が来ていることに、シンもキラも毒づく。
「それでも・・オレは退くわけにはいかない!」
「たとえバラバラになっても、この世界を必ず・・!」
それでもシンもキラも戦いをやめない。デスティニーとフリーダムは負傷した胴体を突き動かして、加速して突撃を仕掛けた。
次回予告
満身創痍になっても引き下がることのない2人の戦士。
彼らを突き動かすのは、揺るぎない意思と決意。
全ての悲劇を終わらせるため、本当の平和を守るため。
少年は戦士となり、果てなき宿命に終止符を打つ。
戦いの運命、切り開け、デスティニー!