GUNDAM WAR -Mark&Ark-
PHASE-47「悲劇の過去、決意の未来」
シン・アスカとキラ・ヤマト。
戦火に巻き込まれ、戦いに身を投じた2人の少年。
しかし2人の意思は交わることはなかった。
2人の意思は強固なものとなっていたから。
オーブのコロニー「ヘリオポリス」の学生だったキラ。しかしザフトの襲撃によって、キラは戦いに身を投じることになった。
ザフトの一員となっていたアスランとのすれ違いと交戦。戦いの中で大切なものを失っていった2人の衝突は、激しさを増していった。
その後、アスランと和解したキラは、大切なものを守るため、戦いを終わらせるために戦った。
1度は束の間の平和の中で安息を過ごしていたキラだが、再び起こった戦いを終わらせようと奮起した。
命を奪わずに戦いを止めるよう、キラは力を振るった。戦う力だけを砕けば、戦いは止められると。
しかし戦いは止まるどころか混迷を極めていった。キラの殺さずの武力介入は、逆に戦火を増やしていった。
キラの攻撃で武装を破壊され、機動力をも奪われた機体は、本来の敵からの攻撃で撃墜される羽目に陥った。
戦況を混乱させたことで、キラは様々な勢力からの怒りを買うことになった。それでも戦いを止めようと、彼は力を行使した。
シンは妹のマユ、両親とともにオーブのオノゴロ島で安息の日々を送っていた。だが戦火は拡大し、ついに島にまで及んできた。
島から避難しようとしたシンだが、マユが落とした携帯電話を拾いに行った途端、彼女と両親は戦争の爆発に巻き込まれた。
家族を一瞬にして奪った戦争、そして何もできない自分の無力さをシンは強く恨んだ。
力を求めたシンは1人プラントに渡り、ザフトに入隊した。新たに起こった戦争の中、シンは秘められていた潜在能力を開花させていった。
しかしその戦いの中でも、シンは大切な人を失っていった。ハイネ、タリア、デュランダル、レイ、そしてステラ。
憎き仇であるオーブやキラに屈してしまったシンだが、言いなりになっている偽りの平和に反旗を翻した。
戦いのない世界のために戦う道を選んだシンと、戦いを終わらせるために力を使うキラ。
2人は更なる対立の渦の中に飛び込むことになった。
完全に迷いを振り払ったシンと、無意識に自分たちの思いを押し付けていたキラ。
大切な人、守りたいものを次々に失っていくことで、キラの心に傷が増えて深くなっていった。
揺るぎない意思を持ったシンの駆るデスティニーによって、キラはフリーダムを破壊された。シンの力に押し込まれたキラは、炎に包まれたエターナルにいたラクスをも失った。
この瞬間、キラ自身も死を迎えたと思い知らされていた。
しかしキラは生き延びていた。体の負傷が激しく、大掛かりな手術を施されることによって、彼は一命を取り留めた。
だが大切な人たちの死によって、キラの心は完全に崩壊していた。
シンたちや世界への怒りや憎しみに囚われたキラは、目に入るあらゆるものを討つ破壊者と化した。
キラのさらなる暴挙に憤るシン。しかし込み上げてくる怒りの中で、彼はキラをそこまで追い詰めたのが自分だと思っていた。
戦いを止めるには、世界に真の平和を取り戻すためには、キラを止めるしかない。
そう思ったシンは、終わらないかもしれない戦いを続けていくことを決意した。たとえ自分が救われることはないとしても、世界のためになるのならと思って。
感覚を研ぎ澄ませたシン。デスティニーが機動力を増して、フリーダムに詰め寄る。
デスティニーとフリーダム・ミーティア、2本のビームソードが激しくぶつかり合う。
「お前は僕たちから全てを奪った・・お前たちを倒さないと、みんながあまりにも辛すぎる・・!」
「そのオレから全てを奪ったのはアンタたちだ!自分のしていることを棚に上げて、他のヤツを力ずくで思い通りにしようとする!アンタたちは何も変わっていない!力と屁理屈で押し通すだけだ!」
敵意を向けるキラにシンが言い返す。
「だからアンタとオレの考えは、絶対に交わらない・・大切な人を守ろうとするのは同じなのに・・・!」
「その大切な人が違ったんだ・・僕のこの苦痛、お前に思い知らせる・・・!」
「あくまで自分たちがよければいいのか、アンタは!」
怒りをぶつけ合うキラとシン。フリーダムがミーティアを構えてビームを一斉発射するが、デスティニーは素早くかわす。
デスティニーがビームブーメランを手にして投げ飛ばす。ビームブーメランがミーティアの左腕に突き刺さった。
しかしフリーダムは怯まず、ミーティアを動かして右腕のビームソードを振りかざす。
「くっ!」
デスティニーがビームソードで受け止めるも押されて、シンがうめく。
「シン!」
ブラッドが声を上げて、ジャッジがビームライフルを連射する。キラはすぐに気付き、フリーダムがビームを的確に回避する。
「素早く動き回って!」
ソラが言い放ち、ファルコンもビームライフルを発射する。フリーダムはこの連射もかわす。
「そこを狙うしかないか・・・!」
ブラッドがビームブーメランが刺さっているミーティアの左腕に目を向けた。
「ソラ、援護してくれ!オレがヤツの隙を突く!」
「ブラッドさん!・・分かりました!」
呼びかけてきたブラッドにソラが答える。ファルコンがフリーダムを狙ってビームライフルを発射する。
フリーダムが難なくビームをかわして、ファルコンに向けてビームを発射する。さらにドラグーンからのビームもファルコンに向けて放つ。
ソラが反応して、ファルコンがスピードを上げて回避を繰り返す中、ブラッドがフリーダムとドラグーンの動きを見計らう。
「そこか!」
ブラッドが見極めて、ジャッジがビームライフルとレールガンを発射する。放たれたビームがビームブーメランが刺さっているミーティアの左腕に命中した。
損傷していたミーティアから爆発が起こり、左腕が折れた。
「やられたか・・だけどまだ、ミーティアを動かすことはできる・・!」
キラは毒づきながらも、攻撃を続ける。フリーダムがミーティアを動かし、右腕のビームソードを振り下ろす。
ジャッジとファルコンがビームソードをかわす。だが同時にドラグーンから放たれたビームによって、ジャッジが左のレールガンを撃たれて破壊される。
「くっ!やられた・・!」
「ブラッドさん!」
毒づくブラッドに、ハルが叫ぶ。
「この程度の損傷で、ブラッドは止まることはない!それよりも自分たちのことに集中しろ、ソラ、ハル!」
「ブラッドさん・・はい!」
呼びかけるブラッドにハルが答える。ジャッジとファルコンが体勢を立て直して、フリーダムの攻撃に備える。
「ブラッド・・・キラ、これ以上やらせるか!」
シンが言い放ち、デスティニーがビーム砲を構えて発射した。放たれたビームがドラグーン数機を破壊した。
「必ず止める!アンタをオレが!」
シンがキラのフリーダムを見て言い放ち、デスティニーがビームソードを手にして構えた。
負傷したインパルスがクレッセントに連れられて、駆けつけたミネルバに戻ってきた。
「ルナマリア、大丈夫なの!?」
「足をやられただけです!レッグフライヤーとデュートリオンビームを!」
「私たちはすぐに戻ります・・!」
ミーナが声をかけて、ルナマリアとアテナが答える。
「分かったわ!改めて言うけど、2人とも気を付けて・・!」
「了解、リアス艦長!」
ミーナが頷いてルナマリアが答える。
「デュートリオンビーム、照射!続けてレッグフライヤー、射出します!」
マイが声を上げて、ミネルバからインパルスに向けてデュートリオンビームを照射する。エネルギーが全快したインパルスが1度分離し、ミネルバから射出されたレッグフライヤーと合体をする。
「ありがとう、アテナ・・みんなのところへ戻りましょう・・!」
「あなたたちの力になれるなら・・」
感謝を口にするルナマリアに、アテナが微笑みかけた。
「ミネルバも極力接近して援護を行うわ。1人で戦おうとしないで。シンくんたちにも・・」
「分かっていますよ、艦長。私たち、きちんと話をしたから、お互いの考え、分かっているつもりです・・」
呼びかけるミーナにルナマリアが微笑んで答える。インパルスとクレッセントが戦線に戻り、ミネルバとネフィリム、ダークスたちが続いていった。
デスティニーに対して、フリーダムは執拗に攻め立てていた。ミーティアの左腕が破損した左側に、キラはドラグーンを集中させてカバーしていた。
「あくまで近づけさせないつもりか・・!」
「シンのデスティニーを接近させなければ、決定打を受けることはない・・そう考えているのか・・・!」
キラの行動にシンとブラッドが毒づく。
「そうまでして自分を生かして、自分を見せつけて押し付けて・・そんなあなたを野放しにするわけにいかない!」
ソラがいきり立ち、ファルコンがビームライフルを連射する。しかしキラは反応し、ビームをかわしていく。
「焦るな、ソラ!タイミングを合わせろ!」
ブラッドが呼びかけて、ソラとハルが頷く。フリーダムが放つビームをデスティニーとともにかわして、ジャッジとファルコンが散開する。
「今だ!」
ブラッドの声にソラが合わせる。ジャッジとファルコンが同時にビームライフルを発射した。
キラが動きを見計らい、フリーダムが上昇してビームをかわす。だがその先にシンのデスティニーが回り込んでいた。
「これ以上撃たせるか!」
シンが言い放ち、デスティニーがビームソードを振りかざす。キラが反応し、フリーダムがミーティアの右腕のビームソードで攻撃を受け止める。
「ブラッド、ソラ、ハルが作ってくれたチャンス、ムダにするか!」
シンが感情を研ぎ澄ませて、デスティニーが左手を突き出した。左手のパルマフィオキーナが、ミーティアの右腕に命中した。
右腕も破壊され、キラが毒づく。体勢を崩しているフリーダムに、デスティニーが追撃を仕掛けようとした。
「僕はやられない・・お前だけは、絶対に!」
キラも感情を高ぶらせて、フリーダムがミーティアを外して、向かってきたデスティニーに押し付けてきた。
「な、何っ!?」
ミーティアをデスティニーにぶつけられて、シンが驚愕する。身動きが取れなくなったデスティニーに対して、フリーダムが構える。
「まずい!シン、撃ってくるぞ!」
ブラッドがシンに向けて声を上げる。シンがデスティニーを動かし、ミーティアから離れようとする。
フリーダムが全ての銃砲を一斉発射した。ビームはデスティニーのそばにいるミーティアに直撃して、爆発を引き起こした。
「シン!」
「シンさん!」
ブラッド、ソラ、ハルがシンに向けて叫ぶ。ミーティアの爆発の先に、デスティニーの姿が見えない。
「シンさん・・デスティニー、どこに・・!?」
ハルがレーダーを確かめて、デスティニーの行方を探る。
「次はお前たち・・みんな、ここで倒す・・・!」
キラがブラッドたちに敵意を向けて、フリーダムが振り返りビームサーベルを手にする。
「今度は接近してくる気か・・!」
ブラッドが警戒を強めて、ジャッジが構える。
「ソラ、交代だ!接近戦に備える!」
「お願い、ハル!」
ハルが呼びかけてソラが答える。ハルが操縦を変わって、ファルコンがビームサーベルに持ち替える。
フリーダムが素早く飛びかかり、ファルコンとビームサーベルをぶつけ合う。
「ぐっ!・・さらに力が上がっている・・・!」
フリーダムの力を痛感して、ハルが緊迫を募らせる。
「ハル!」
ブラッドが声を上げて、ジャッジがレールガンを発射した。ビームはファルコンとフリーダムの間を通り過ぎた。
「迂闊に攻撃を受けるな!一瞬でやられるぞ!」
「スピードは互角でも、パワーと正確さはフリーダムが上・・!」
ブラッドが呼びかけて、ハルがフリーダムが発揮した本領について口にする。
「ソラ!」
そこへルナマリアが声をかけて、インパルスとクレッセントがビームライフルを発射してきた。フリーダムは難なくビームをかわす。
「ルナマリア、アテナ、戻ってきたか・・!」
「ミネルバもネフィリムも近くにいる・・!」
ブラッドとハルがインパルス、クレッセント、ミネルバ、ネフィリムの位置を確かめる。
「シンは!?シンはどうしたの!?」
「シンさんは、ミーティアの爆発に巻き込まれて・・デスティニーの反応はあるのですが・・・!」
ルナマリアが聞いてきて、ソラが深刻さを浮かべて答える。
「シンは戻ってくる・・すぐに体勢を立て直して・・・!」
アテナがシンのことを思って、ルナマリアたちに言いかけてきた。
「ミネルバ、シンに連絡を!デスティニーの位置も特定してください!」
「分かったわ。マイ、シンの捜索を。」
「はい!」
ルナマリアが呼びかけて、ミーナとマイが答える。
「シンさんは戻ってくる・・それまで私たちだけでフリーダムの相手をする・・!」
ソラが言いかけて、ハルがフリーダムの動きに集中する。
「ミーティアは失ったけど・・それでもプラントを討つことはできる・・・!」
「そんなマネはさせない!必ずここで止めてみせる!」
鋭く言いかけるキラに、ハルが決意を言い放つ。
「もうあなたにこれ以上、世界をムチャクチャになんてさせない!あなたのために、誰かが死ぬなんてこともさせない!」
「オレたちの平和を壊させないために、キラ・ヤマト、お前を倒す!」
ルナマリアとブラッドもキラに言い放つ。
「お前たちを倒す・・お前たちにも、僕が受けてきた苦痛を思い知らせる・・・!」
キラが敵意を募らせて、フリーダムがドラグーンを動かしてビームを放つ。
「回避!」
ルナマリアが呼びかけて、インパルスたちが回避を行う。
「そうまでして・・そうまでしてお前は!」
ソラのキラに対する怒りが頂点に達した。ファルコンがビームをかいくぐり、フリーダムに詰め寄る。
フリーダムがビームサーベルでファルコンとサーベルのぶつけ合いを演じる。ファルコンは立て続けに攻撃を繰り出すことで、つばぜり合いに持ち込ませないようにする。
だがフリーダムが2本のビームサーベルを同時に振りかざして、ファルコンの左手のビームサーベルをはじき飛ばした。
「ぐっ!」
ハルが衝撃に襲われてうめく。ファルコンが押された衝動を利用して、フリーダムの追撃を紙一重でかわした。
「とことんやるよ、ソラ!ファルコンが動く限り、僕たちがアイツを止める!」
「うん!私たちの速さと思いを、アイツにぶつける!」
ハルとソラが決意を言い合う。ファルコンが左手でビームライフルを手にした。
キラを止めプラント、世界を守るため、ルナマリアたちは意思を強く持った。
次回予告
友のために、仲間のために、世界のために。
偽りの平和の裏で戦い続けた戦士たち。
2度と光を失いたくはない。
ブラッドとドギーたちの戦いもまた、終わることはない。
漆黒の蹂躙、切り裂け、ジャッジ!