GUNDAM WAR -Mark&Ark-

PHASE-46「両翼の激闘」

 

 

 プラントに攻め込んできたキラのフリーダム。その行く手を阻んだのは、ドムを駆るアンジュが率いるザフトのMS小隊だった。

(お嬢様、プラントの防衛ラインは私たちが敷いています。もっとも、フリーダム相手では紙くず同然で、1秒でも長く時間を稼げるかだけでも奇跡と考えるほどですが・・)

 ソラたちのことを考えて、アンジュがフリーダムの動きに集中する。

「フリーダムをプラントから引き離します。ただし深追いは厳禁。予測以上に距離を取るようにもしてください。」

“分かった。だが部隊の指揮権はこちらにある。アンジュ・ブルースカイ、お前もこちらの指示に従うように。”

 呼びかけるアンジュに部隊の隊長が指示を出す。

「分かりました。ただしミネルバと合流後は、そちらの指揮下に入らせていただきます。」

 アンジュは頷いて、フリーダムに視線を戻す。

「誰にも邪魔はさせない・・全て滅ぼして、終わらせる・・・!」

 キラが低く言って、フリーダムがミーティアからビームを一斉発射する。

「回避!」

 隊長が指示を出して、MSたちが回避行動をとる。しかし回避が間に合わず、数機がビームに撃たれて爆発を起こした。

「くっ!・・回避もまともにできないというのか・・これでは時間を稼ぐことも・・・!」

「弱気になるのでしたら下がっていてください。余計に討たれる危険が高まります・・」

 一気に追い込まれた隊長に、アンジュが苦言を呈した。

「私が注意を引き付けるしかなさそうね・・突撃します!」

 アンジュがドムを動かして、フリーダムに突っ込む。ドムがスクリーミングニンバスを起動して、ビームサーベルを手にしながらビームバズーカを発射する。

 キラの駆るフリーダムがドムの砲撃をかわして、ビームで迎撃を仕掛ける。スクリーミングニンバスによってビームが弾かれ、ドムはさらに突き進む。

 フリーダムがミーティアのアームからビームソードを発して振り下ろす。アンジュが反応して、ドムが紙一重でビームソードをかわす。

(注意を・・ヤツの注意を引き付けて・・プラントから遠ざける・・・!)

 フリーダムの動きを見ながら、アンジュがドムを動かしていく。フリーダムがドムに振り返り、全ての砲門を開いた。

「撃ってくる・・!」

 アンジュが目を見開くと同時に、フリーダムがドムに向けてビームを一斉発射した。ドムは回避が間に合わず、左腕と左足を破壊された。

「ぐっ!」

 爆発と衝撃に襲われて、ドムが体勢を崩して流されて、アンジュが揺さぶられてうめく。キラは彼女にここでとどめを刺さずに、プラントに視線を戻した。

「確実に・・確実にプラントを、討つ・・・!」

 キラが敵意をむき出しにして、フリーダムが再びビームを放った。ビームがプラントのコロニー数基の先端に命中して、重力と圧力が乱れて、コロニー内の空気が外に一気にもれ出す。

 空気が外へ飛び出す風の急流で、建物や人々が外に投げ出されていく。

「しまった・・プラントが・・・!」

 損壊したプラントを目にして、アンジュが愕然となる。フリーダムがまたプラントに砲撃を仕掛けようとした。

 そこへビームがフリーダムに向けて飛び込んできた。キラが反応し、フリーダムが砲撃をやめてビームを回避する。

 フリーダムに向かって、シンのデスティニーが駆けつけてきた。

「シン・・!」

「キラ・・・プラントが!・・間に合わなかった・・・!」

 キラと敵意を向け合うシンが、プラントが撃たれたことに歯がゆさを覚える。

「シンさん・・申し訳、ございません・・キラ・ヤマトを止められませんでした・・・」

 アンジュが声を振り絞ってシンに謝罪する。

「気にしなくていいです、アンジュさん・・あなたは撤退を!すぐにミネルバが来ます!」

 シンが言葉を返して、ミネルバのほうに目を向ける。

「分かりました・・ミネルバと合流します・・・!」

 アンジュが力を振り絞ってドムを動かし、この場を離れた。

「戦火を広げて、ついにプラントまで・・・だけど、そこまでアンタを追い込んだのは、オレたちなんだ・・・!」

 シンがキラへの怒りを感じながらも、同時に自責の念も感じていた。

「オレは戦う・・アンタを倒して、全てを終わらせる!」

 シンが決意を言い放ち、デスティニーがビームソードを手にする。

「シン・・今度こそ、お前を倒す・・・!」

 キラが目つきを鋭くして、フリーダムがビームソードを振り下ろす。デスティニーは素早く動いて、ビームソードをかわす。

 ミーティアを装備したフリーダムは攻撃の破壊力が増したが、ミーティアの巨体故に大振りになっていた。その分デスティニーにかわされやすくなっていた。

「だったら、プラントからまず・・・!」

 キラがプラントに狙いを変えて、フリーダムがミーティアからミサイルをデスティニーに向けて連射する。同時にプラントに向けてビームを放とうとした。

 しかしシンのデスティニーは素早くミサイルをかわして、フリーダムに一気に詰め寄ってきた。

「そんなことでデスティニーを振り切れるか!」

 シンが言い放ち、デスティニーがビームソードを振りかざす。フリーダムがビームソードを掲げて、2つの刃が激しくぶつかり合う。

 ビームの刃の衝突の相殺で、デスティニーとフリーダムが離される。直後、フリーダムがカリドゥスを発射してきた。

「そんなものに!」

 シンが反応し、デスティニーがビームをかわす。デスティニーがすかさずフリーダムに向かっていく。

 だがそこにいるのはミーティアだけだった。フリーダムはミーティアを外して姿を消していた。

「いない!?

 シンが周囲に注意を向けてフリーダムを探す。彼はプラントに狙いを定めているフリーダムを見つける。

「そこか!」

 シンが言い放ち、デスティニーがビーム砲を構える。しかしシンは直後、周辺にドラグーンが展開されていたことに気付く。

 ドラグーンがデスティニーに向けてビームを放つ。シンが反応し、デスティニーが素早く動いてビームをかいくぐる。

 しかし縦横無尽に放たれるビームの連射をかわし切れず、デスティニーが撃たれる。

「くっ!」

 損傷は出なかったものの、デスティニーは爆発の衝撃に押されて、デブリの1つに叩きつけられる。

「くっ・・不意を突かれただけじゃない・・正確、迅速にオレを狙ってきた・・!」

 シンが狙撃されたことに毒づく。デスティニーが起き上がるが、フリーダムのプラントへの射撃に間に合わない。

 そのとき、フリーダムに向けてビームが飛び込んできた。キラが気付き、フリーダムがビームを回避してミーティアに近づく。

「シンさん、大丈夫ですか!?

 ソラがシンに向かって呼びかける。ハルとソラの乗るファルコンが駆けつけ、フリーダムのビーム発射を阻止したのである。

「僕たちが注意を引き付けます!その間にシンさんは・・!」

「気を抜くな!周囲にドラグーンがあるぞ!」

 呼びかけるハルにシンが注意を促す。フリーダムのドラグーンがファルコンにもビームを撃ってきた。

「ぐっ!」

 ハルが感覚を研ぎ澄ませて、ファルコンがスピードを上げてドラグーンのビームをかわす。

「くそっ!キラ!」

 シンが声を上げて、デスティニーがビームライフルを手にして発射する。フリーダムが回避して、再びミーティアを装備する。

 フリーダムがデスティニーに向けてビームを一斉発射する。デスティニーが素早く動き、ビームの撃ち合いを演じる。

「誰が何人出てきても、僕はお前たちを倒す・・!」

 キラがデスティニーとファルコンに目を向けて、フリーダムがさらにビームを放つ。ハルが必死に反応して、ファルコンが加速してビームをかわす。

「ハル、後退して!逃げ回るだけじゃそのうち攻撃を受けてしまうよ!」

「ソラ・・分かった!頼む!」

 ソラが声をかけて、ハルが頷く。彼はファルコンの操縦をソラに預ける。

「いつまでも逃げているつもりはないよ!」

 ソラが言いかけて、ファルコンが2つのビームライフルを手にして、フリーダムに向けて構える。しかしドラグーンからのビームに阻まれて、ファルコンはフリーダムへの射撃を仕掛けられない。

「どこまでもしつこく・・!」

 ドラグーンによるビームの包囲網に毒づくソラ。ビームの雨をかいくぐり反撃に転じられるのは、シンのデスティニーだけだった。

「どこまでも・・どこまでもしぶとく・・・!」

 キラも攻撃を当てられないことに激情を募らせていた。

 

 シンのデスティニーを追う形でプラントに向かっていたミネルバとネフィリム。ファルコンも先行した中、2隻はデスティニーたちの姿を捉えた。

「デスティニーとファルコン、フリーダムと交戦中!」

「各機発進!フリーダムの攻撃を食い止めるのよ!」

 マイの報告を受けて、ミーナが指示を出す。ドックにて待機していたルナマリアとアテナが発進に備える。

「アテナ、プラントを守って、私たちも生きて帰るよ・・」

「えぇ・・もう誰が死ぬのもイヤ・・私が死んでも、誰かを悲しませることになる・・・」

 ルナマリアの呼びかけに答えて、アテナが決意を思い返す。彼女はスーラとマキのことを思い出していた。

(スーラ、マキ、私、生きるから・・残された命を、生き抜いてみせるから・・)

 共に戦ってきた仲間の思いを胸に秘めて、アテナは戦いに備えた。

「アテナ・アルテミス、クレッセント、出撃する!」

「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」

 アテナのクレッセント、ルナマリアのコアスプレンダーがミネルバから発進した。コアスプレンダーが続けて射出された。

 

「ミネルバ、MSを発進させたぞ!」

 ネフィリムにて、ドギーがブラッドに向けて呼びかける。

「よし。オレも出るぞ。ただしダークス部隊は後方支援とネフィリムの防衛に専念しろ。絶対に前に出るな。」

 ジャッジに乗っているブラッドが、ダークスのパイロットたちに指示を出す。

「しかしブラッド、それではオレたちは・・!」

「前に出たところで、何もできずに撃墜されて死ぬだけだ。だから前に出るのはオレだけだ。」

 パイロットが声を上げるが、ブラッドは考えを変えない。

「自分たちに飛び火が来るとわずかでも思ったらすぐにこの宙域から離れろ・・いいな・・・!」

「ブラッド・・・分かった・・・!」

 ブラッドの指示にパイロットたちが答える。

「ブラッド・J・クロノス、ジャッジ、発進する!」

 ブラッドの乗るジャッジがネフィリムから発進した。それからダークスが次々と発進するが、ジャッジには続かずにネフィリムの防衛に回った。

 

 フリーダムのドラグーンのビームをかいくぐるデスティニーとファルコン。しかし2機は回避するのに手いっぱいになっていた。

「このままじゃ、アイツの注意をプラントから引き離すしかできない・・!」

 危機感を募らせていくシン。そのとき、フリーダムがデスティニーに向けて、ミーティアとドラグーンから同時にビームを発射してきた。

 シンが反応し、デスティニーが回避行動をとる。

 そのとき、2つのビームがミーティアに向けて飛んできた。キラが気付き、フリーダムがビームをかわす。

 その間にデスティニーとファルコンがフリーダムとの距離を取り、体勢を立て直す。

 インパルス、ジャッジ、クレッセントが駆けつけてきた。インパルスとジャッジがビームライフルを発射したのである。

「大丈夫、シン!?

「ルナ・・助かった・・ありがとう・・・!」

 心配の声をかけるルナマリアにシンが答える。

「気を付けろ、みんな・・油断すると命はないぞ・・!」

「分かっている・・フリーダムは宇宙のほうが力を発揮できる・・!」

 シンの呼びかけに答えて、ブラッドがフリーダムに目を向ける。

「他も来たなら、まとめて倒すだけ・・・!」

 ブラッドたちにも敵意を向けるキラ。フリーダムがミーティアを構えて、発射体勢に入る。

「回避しろ!撃ってくるぞ!」

 ブラッドが呼びかけた直後、フリーダムがビームを発射してきた。デスティニー、ファルコン、インパルス、ジャッジ、クレッセントが回避行動をとる。

「そこまで・・そこまでプラントが、世界が憎いっていうの!?

「そうまでして、何もかも自分の思い通りにしないと気が済まないの!?

 ルナマリアとソラがキラに向けて怒鳴りかかる。

「僕の全てを奪ったのはお前たち・・この世界だ・・だから全てを滅ぼして、全てを終わらせる・・・!」

 キラが敵意を募らせて、フリーダムがドラグーンでビームを放つ。インパルスとファルコンが回避行動をとるが、インパルスが左足を撃たれて爆発される。

「うっ!」

「ルナ!」

 ルナマリアがうめき、シンが声を上げる。

「もはやヤツは憎悪に駆られている!今まで以上に、オレたちや他のヤツの言葉に耳を傾けようとしない!」

 ブラッドが呼びかけて、ジャッジがフリーダムに向けてレールガンを発射する。フリーダムもビームを発射して相殺する。

 デスティニーがビームライフルを発射しながら、負傷したインパルスに近づく。

「大丈夫か、ルナ!?

「シン・・うん・・!」

 シンの呼びかけにルナマリアが答える。

「ルナは1度ミネルバに戻ろう!オレが付いてる!」

「ううん!シンは残って!私だけで戻るわ・・!」

 連れて戻ろうとするシンの援護を、ルナマリアが断る。

「私が連れていく・・」

 2人に声をかけてきたのはアテナだった。

「フリーダムを止められるのはシンとデスティニーだけ・・あなたの負担を軽くできるなら、私が・・・」

「アテナ・・・分かった・・ルナを頼む・・・!」

 アテナの意思を汲み取り、シンはルナを彼女に任せる。

「シン、アテナとすぐに戻るからね・・・」

「あぁ。絶対に、みんな一緒に合流するから・・」

 シンと声をかけ合ってから、ルナはアテナとともに下がった。

「これ以上、誰かを傷付けることは、オレが許さない!」

 キラに向けて怒りを叫ぶシン。彼の中で何かが弾け、感覚が研ぎ澄まされた。

 デスティニーがビームソードを手にして、フリーダムに向かって加速する。フリーダムがビームを放つが、デスティニーは残像を伴って素早くかわしていく。

 デスティニーがフリーダム目がけてビームソードを振り下ろす。フリーダムがミーティアのビームソードで受け止めて、衝撃が巻き起こり2機ともはじき飛ばされる。

「シンさん・・キラと激しい戦闘を・・・!」

「デスティニーの動きも速く正確に・・ファルコンさえも超えるスピードで・・!」

 ソラとハルがシンとキラの戦いに息をのむ。下手に介入しても援護どころかシンの足を引っ張ることになってしまうと、2人とも痛感していた。

(オレが終わらせる・・アンタの暴挙を、長く続いているこの戦争を・・!)

 決意を胸に秘めて、シンがさらに感覚を研ぎ澄ませる。彼とキラの激闘はさらに過激化に向かっていた。

 

 

次回予告

 

高い潜在能力を宿しながら、戦いに巻き込まれた者。

その戦いによって大切なものを奪われてきた者。

シンとキラ。

2人の少年のすれ違いと衝突。

彼らの思いは、もう1つにならない・・・

 

次回・「悲劇の過去、決意の未来」

 

虚無の激情、解き放て、フリーダム!

 

 

作品集

 

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